聖剣伝説1総合スレッド

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注:ヒーロー=グラン ヒロイン=フロル  です。

俺はフロルの救出に失敗し、飛空挺から落ちた時旧友アマンダに救われた。
だが、フロルから預かっていた大切な『マナのペンダント』を何故か盗まれた。
そこで、俺はアマンダを追って『やしのきはちのじ』の謎を解き、砂の迷宮に来た。

「アマンダ!!ペンダントを盗んだな!!」
「ごめんよ、グラン。弟を人質に取られて仕方なくやったんだ・・・。」

アマンダはグランスの奴隷剣闘士時代の仲間だった。
弟を守るため身代わりとしてグランス兵に捕らえられたと言っていた。
グランスは付近の町や村を侵略していたから、アマンダと同じ境遇は多かった。
――俺と親友・ウィリーはグランスの主・シャドウナイトを殺すのに失敗してここにいるのだが。


俺がウィリーの死とマナの危機知ったを切っ掛けに脱出したすぐ後で、アマンダも逃げたらしい。
以来、故郷のジャドの街で弟・レスターと暮らしていた。
だが、レスターがジャドのボス・デビアスに逆らい、捕らわれた。
デビアスはアマンダにペンダントを要求し、望みが達せられるとレスターをオウムに変えてしまった。
アマンダは元に戻す『メデューサの血』を求めてここ、砂の迷宮に来たのだった。

俺はペンダントを帰してもらったらすぐにヒロインを助けに行くつもりだったが、
こんな危険な場所に一人で行かせるわけにはいかない。
何よりペンダントは既にデビアスの手に渡ってしまった。
結局、俺達は共に『メデューサの血』を探す事にした。
「嬉しいよ。頼りにしてるよ!」
アマンダが笑いながら言った。
342326:02/07/04 04:06 ID:???

「少し休もうよ」
かなり奥深くに入ってから、アマンダが声を掛けた。
俺も魔力が空っぽだったから文句なく賛成した。
迷宮の部屋の真ん中で火を起こしている俺を見て、アマンダがククッと笑う。
「なんか、しばらく見ない間に強くなったね。」
「そりゃそうだろうな。これでも、俺は結構冒険しているから。」
「空から落ちてきた時はビックリしたよ。」

俺達は同時に笑ってしまった。

「グランスの飛空挺に・・・俺の守らなきゃいけない人が攫われたんだ。」
「守らなきゃいけない、か。あんたもすっかり騎士になったね。」
火がパチパチと音を立てる。静かな洞窟で、俺達の声が妙に大きく聞こえた。
「すまないね、ペンダント盗んで。」
「仕方ないさ。君だって守らなきゃいけない人がいる。
 そろそろ行こうか。こんな不気味な場所、長居したくない。」
俺達は立ち上がった。守るべき人を守るために。


メデューサは最下層にいた。
頭部で無数の蛇が蠢き、隙あらば俺達を石にしようと飛びかかってくる。
アマンダは石化治しが得意だったから、俺は何度も世話になりつつ
ウインドスピアで奴の体を滅多刺しにしようとした。
が、近づけばそれだけ蛇に襲われる。
「あたいが囮になるから、その隙に攻撃しなよ!!」
アマンダがそう言うのと同時に、パッとメデューサの正面へ飛んだ。
メデューサは咄嗟にアマンダに攻撃を集中する。
俺は後ろから奴の首を思い切り突き刺した。

その時、メデューサは苦しさの為か、目の前のアマンダの腕を噛みついた。
アマンダの顔が苦痛で歪む。その直後メデューサは絶命した。


メデューサが倒れた瞬間、辺りがいきなり暗くなった。そして、不気味な声が・・・。
「ホホホッ、私の生血を採りに来たのでしょうけど、そうはいかないよ!!」
343326:02/07/04 04:07 ID:???
「グラン!一滴も血が残っていない!!ああ・・・!!」
明るくなってから、俺達はすぐに異変に気が付いた。
メデューサの死体も、血も、何もかも残っていないのだ。
「ひとまず、ここを出よう。街に帰って別の方法を調べるんだ。きっと何かあるさ。」
俺は出口に向かおうとした。その時、アマンダが苦しそうに胸を押さえた。
「うっ・・・」
「アマンダ?どうしたんだ?」
「さっき・・・メデューサに噛まれた時・・・感染しちまったみたいだ・・・。ついてないよ。」
「なっ!!」
メデューサの持つ毒は、相手を同じメデューサに変えてしまう力を持つ。
アマンダの顔は青くなり、今正に魔物に変化しつつあった。
「しっかりしろ!!くそっ!ヒールは効かないのか?!」
「グラン、あたいを殺して、血を弟に、飲ませてやってよ・・・。」

アマンダは肩で息をしながら、細い声で言った。

「何を言うんだ!!そんなことっ・・・!」
「お願いだよ、もうすぐあたいはモンスターになる・・・。
 そうなれば、例えあんたでも、見境無く襲ってしまうよ・・・。
 レスターへの、最後の愛を、叶えさせておくれよ・・・。
 愛する人を、この手で殺させるような事、させないでおくれよ・・・。」

アマンダは激しく咳き込んだ。口から、血が吐き出される。
344326:02/07/04 04:09 ID:???
「アマンダ、そんな、そんな事俺には・・・!」
「ごほっごほっ!・・・ほら、もうあんたが獲物に見え始めたよ・・・」

そう言って俺を見つめるアマンダ。
その目は悲しげで、彼女にまだ人間の心が残っている事がわかった。
俺のウインドスピアを持つ手が震えた。
ここで、彼女を殺さなければ、俺が殺されるだろう。
そうなれば誰が彼女の最後の願いを、レスターを救う事ができるのだろうか。
しかし、アマンダは・・・俺の苦しかった時のかけがえのない仲間なのだ。
それをこの手で殺すなんて!!!

アマンダの口が、少し動いた。
(お、ね、が、い・・・)
確かに、そう動いた。もう、声も出ないようだった。



「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


俺は叫びながら彼女の心臓に槍を突き刺した。
ぐっとアマンダの口から声が漏れる。
俺は溢れてくる血を素早く瓶に詰めた。

「アマンダ・・・」
俺は静かに名を呼んだ。
「許せ、許してくれアマンダ・・・!!」
ウインドスピアが手から離れ、軽い音を立てて地面に落ちた。
がっくりと膝をつく。
俺は泣いていた。剣闘士時代でも泣いた事は無かったのに、今は涙と嗚咽が止まらなかった。
345326:02/07/04 04:12 ID:???

アマンダはさっきまでの苦しみとは別人のように、穏やかな死に顔だった。
が、モンスターと化した彼女は、さっ・・・と黒い霧となって消えていった。

(レスターへの最後の愛を、叶えさせておくれよ・・・)

悲しみの中にある俺の耳にアマンダの言葉が聞こえた気がした。
思わず顔を上げたが、誰もいない。
でも・・・
「・・・そうだな、お前の願いを必ず聞き届けるよ、必ず。」

今は俺に出来る事をしよう。悲しみに暮れている時間はない。
アマンダの意思を決して無駄にはしない。
俺は悲しみを胸の奥にしまい込み、この呪われた迷宮を後にした。

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以上、アマンダのイベントからのSSです。