今更!! ギガスラッシュを偲ぶスレ

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94R@mi-kan
「遂にここまで、か?」
 視線と雪の冷たさが、真新しい傷にしみる。
「まだ、戦えるわ!」
 吹雪を予感させる風の中、倒れた仲間を背に立ち、ティファは、敵と対峙していた。
 雪の陰影に溶け込むような銀の影。赤いものが刀身を伝い流れる。
 セフィロスの姿は、北方の獣と同じものをまとっていた。
「いきがるのもいいが、もう夜が近い。じきに嵐も来る」
 遠くを見る風に、目を細めおとがいを上げた。
 視線がそらされた隙をつき、ティファは、懐へ飛び込んでいった。
「無駄に動くな」
 振りかぶった拳を、こともなさげに受け止めてみせた。
 片手にティファを掴んだ状態で、半身を捻り雪上に叩き落す。
「んうっ!」
 半凍結した結晶が悲鳴を上げ、冷気が露出した皮膚を突き刺した。
95R@mi-kan:02/06/27 14:17 ID:???
「どうした、まだ遊び足りないのか?」
「……そっちこそ、何を考えているの? 早くとどめを刺したらどう? いくら貴方でも、吹雪に巻き込まれたらたまらないんじゃない?」
 ティファの言葉をきっかけに、沈黙の時間が流れ始めた。
 遠くに木々が震える声がする。風も更に冷え込んできた。
 倒れるティファに背を向け、セフィロスが歩き出した。その先には、所々紅に染まった雪に埋まるようにして、気を失っているレッドXIIIがいた。
 赤い獣の首を掴むと、尾の先まで2メートル以上はある巨体を背に担ぎ上げた。
「ここから一番近い山小屋へは二時間はかかる。立てるのなら早くした方がいい」
「何故、私達を助けるようなことをするの?」
「一時休戦だ。嫌なら手出しはしないが?」
 セフィロスはそう言い、森へ踏み出した。
 風の中に、雪の断片が混じり始めていた。
96R@mi-kan:02/06/27 14:21 ID:???
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 クラウドとレッドXIIIが負った怪我は、外見から思っていたほど深刻ではなかった。
 止血と、回復を促す魔法の処置を終えると、物音で起こさぬよう、慎重に寝室を出た。
 居間には暖炉があり、それが小屋全体の暖房の役割を担っていた。
 まだ焚き付けたばかりの火に向かって、セフィロスが薪を投げ入れていた。角を刃物で削って逆立て、火が空気と触れやすくなるように加工してある。
「……ねえ」 
 絨毯に直に座っていたセフィロスが振り返る。
 銀の髪に翡翠の目。揺らめき出した炎に照らされて、微かに緋色を帯びている。
「私達、貴方を倒すために旅をしてきた。なのに、どうして貴方は」
「そんなに敵に助けられたのが嫌か?」
 鼻にこもるような微笑。
「違う。ただ……貴方のしていることの意味がわからないの!」
 薪が爆ぜると同時に、金色の火花が舞った。
 セフィロスが立ち上がった。
「……久しぶりだな」
「えっ」
「この距離で、お前と話すのは」
 目の前に立たれると、身長と長髪が、余計に威圧的に感じる。
「覚えているか?」
 忘れがたい記憶の底。
 クラウドと比べて、幾分低い調子の声は、ティファの心に、たやすく入り込んできた
97R@mi-kan:02/06/27 14:24 ID:???
 ソルジャー部隊がニブルヘイムに到着した日の夜、村の年頃の娘数人が呼び出され、兵士達の相手をするようにいいつけられた。遠方からの客人を女でもてなすのは昔からのことだともいわれた。当時はまだ、その手の悪習が地方には濃く残っていたのだ。
 少女達が二人か三人ずつ組になって、兵士等が泊まる部屋へ向かう中、ティファだけは、別の階に連れていかれた。
 一人残され、半ば怯えながら部屋のドアを引き、寝ている相手の顔も見ずにベッドに身を潜らせた。シーツで涙を拭い、肩を震わせていたティファを抱いたのが、セフィロスだった。
「もう一度、お前を抱きにきた」
 すかさず左からの蹴りを叩きつける。セフィロスはそれを腕で受け流し、強引に手を掴んでティファを引き寄せた。
 魔物の目を見てはいけない、と言われたことがある。
 邪悪な眼差しは心を迷わせ、魂を吸い取ってしまうからだ、と。
 碧色に浮かぶ、黒の三日月。
 ティファの体は、セフィロスの腕の中で力を失い、指先から唇まで絡め取られ、しなだれるように、絨毯の上に倒れた。