今更!! ギガスラッシュを偲ぶスレ

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64スコール支援1
エスタから2キロくらい離れたところに、その草原はあった。
あの未来都市のすぐそばにこんな穏やかな場所があるなんて、俺は知らなかった。
「ラグナおじさんがね、自分のすぐ近くにレインを眠らせてあげたいって。
本当に、あの二人は…愛し合ってたんだよ。」
そう、語るエルオーネの表情に、微かな悲しみが見えたのは、気のせいなのだろうか。
…俺には、よくわからない。

あの戦いから2ヶ月。

ガーデンも、世界も元通りになり、穏やかに時は過ぎていった。
俺も、リノアやサイファー達も相変わらずで、今までと何ら変わりのない生活を送っていた。
…そんなときに、彼女が俺を誘ってきたのだった。

あなたの、お母さんの所へ行きましょう、と――

「まさか、スコールが誘いに乗るなんて思わなかったな。」
俺の隣を歩きながら、エルオーネがくすくすと笑う。
「…俺だって、自分の母親がどんな人なのか、気になる。」
俺のその発言にエルオーネは少し驚いた表情をする。
「変わったね、スコール。
・・・ううん、変わってしまったのは前までのスコール。私のせいで…私があの日、孤児院にスコールを置いて行ってしまったから…だよね。ごめんね…。」
彼女が、申し訳なさそうに俺を見る。
俺は、なんと言って良いかわからずに、黙って下を向く。
すると、彼女は足を止め、俺に微笑みかけた。
65スコール支援2:02/06/24 22:02 ID:???
「……ここよ。
ここに、あなたのお母さん…レインが眠っているの。」
そこは今までと変わらない草原の風景。
そこにポツリと、墓石が立っていた。
刻まれている文字はレイン・レウァール。
…間違い無く、俺の母親の名前だった。
そしてそこには、まだ新しい花束が添えてあった。
「…ラグナおじさん、どんなに忙しいときでも必ず毎日ここへ来て、花を取り替えてるのよ。
今日も私達より先にここに来たみたいね。」
エルオーネはそう言うと、ずっと持っていた白い花を、その花束の横に添えた。
「…あなたのお母さんはね…」
静かに、優しくエルオーネが語り出す。
「本当に、本当に優しくて…私を、実の子供みたいに育ててくれたの。
ラグナおじさんが来た時だって、誰よりも、ラグナおじさんの心配をしていたのよ。」
そう、レインのことを語る彼女の表情は凄く穏やかで優しい。
しかしその表情の影には、先程のような微かな悲しみがあるのだろうか。
いつも穏やかなエルオーネに、そんな表情をさせる、レイン。
あの能天気なラグナが、本当に愛していたという、レイン。
そして、俺の実の母親である、レイン。
いったいどんな女性だったのだろうか。
彼女に育てられたら俺は、どんな人生を送ることになったのだろうか。
「・・・そんな顔、しないの。」
エルオーネがふわりと、優しく微笑む。
その表情にはもうあの哀しみは無く、いつもの”エルオーネお姉ちゃん”の彼女だった。
「今の貴方には、ラグナおじさん、大切な仲間…そしてリノアさんがいるでしょ?
…ま、私が言えたことじゃないんだけどね。」
エルオーネがはにかみ笑う。
俺は、どんな表情をして良いのかわからなくて、下を向いた。
しかし、確かに彼女に言いたいことがあった。
前までの俺なら、このまま黙ったままだっただろう。
言いたいことを内にためて、自分の殻に閉じこもってしまってただろう。
だけど…
66スコール支援3:02/06/24 22:03 ID:???
「…俺は…正直に言うと、あんたのこと恨んだこともあった。
置いてきぼりにされた時も、結構…恨んだ。…けど…俺は、その倍はあんたに感謝している。
…ありがとう。」
今の俺なら、言える。
自分の本当の気持ちを。
本当に伝えたい言葉を。
自分を出すのは決して怖いことではないと、リノアに教えてもらったから。
エルオーネはそんな俺を、驚きもせずに優しく見つめる。
「……うん。そうだね…スコールにそういってもらえると、私すごく嬉しいよ。ありがとう。」
彼女の言葉に、夏のにおいが纏う。

「ねえ、もっと、お母さんのことについて、聞きたいことない?」
彼女が嬉しそうに俺に質問する。

それから、俺はずっと母親について思っていたことを彼女に話した。

草原で、二人、幼い頃にそうしたように…。

はいおしまい。