オレ、爆弾岩
オレ、岩だから転がる。爆弾だから爆発する
爆発したらみんな終わり。オレも終わり
だからみんな怖がる。オレの傍から離れてしまう
オレ、ちょっと、さみしかった
でも、そんな寂しさとも、もうお別れだ
オレが『あいつ』に会ったのは、溶岩の沸き立つ火山の中
魔物は人間と戦うもの。だからオレはあいつに飛びかかった
強いやつだった。オレは思わず『あの力』を使いそうになる
体が徐々に赤くなる。熱気と共に、これで何もかもとおさらば・・・のはずだった
でも・・・すると、あいつは急に寂しそうな瞳をオレに向けた
怯えたんじゃない。悲しそうだったんだ。何故、そんな目で、オレを見る・・・?
そしてあいつ、オレに言った。「もっと命を大事にしないか?』と
よくわからなかった。オレ爆弾岩。オレ自爆する。それが使命
爆弾は爆発してこそ、爆弾。自爆しなかったら、それオレじゃない
そう思った。変なことを言うヤツだと思った
・・・でも変わったヤツだと思ったから、オレは自爆するのをやめた。
命を大事にするってどんなことか、砕け散る前に、オレ、知りたくなったから
そして一緒に歩いてみて知った。
『こいつはいっぱい色んな死を見てきたヤツだ』ってこと
だから、命が消えていくことの空しさを知っていた。そして教えてくれた。その身をもって
そうだ。魔物である、爆弾である、このオレにさえも
そこまで聞いて、そこまで見て、オレ、初めて生きたいと思った
この体がある限り、こいつの生き方についていきたいと思ったんだ
そして今・・・
オレ、まだ生きてる。生きて旅をしている。
砕け散って終わりだったはずのオレ、まだ動いている
自爆するために作られた、この固い岩の体は、仲間を守る盾になる
壊すためのこの体が・・・初めて、何かを守る役に立ったのだ
そうか。オレには、こんな生き方もあったのか・・・
傷つくことももちろんあるが、岩のオレにも仲間は治療してくれる
「無理するんじゃないぞ」って言ってくれる
もう誰も怖がらない
『メ』がつく言葉を言うとびっくりするけど、でも誰ももうオレを独りぼっちにしない
オレはもう、一人じゃない。オレはここで生きていける
・・・でも、いつか、戦いの中でこの力が必要なことがあるのなら
もし、そうなら、その時はオレ、使うつもりだ
使命なんかじゃなく、自分の意志で。オレはあいつらを生かしてやりたい
あいつらのためになら・・・オレ、砕け散ってやってもいい。そう思ってる
オレ、爆弾岩。でも、もう爆弾だけの岩じゃない
オレ、すごく嬉しい
あいつに逢えて、オレすごく嬉しかった
今日はあいつの大事な日。オレ、応援する。
みんな、あいつのこと、どうか助けてやって欲しい
そして見届けてやってくれ。この旅の行方を・・・どうか、頼む