☆☆FFDQ板最萌トーナメント四回戦Round22☆☆

このエントリーをはてなブックマークに追加
935AS
グランバニア王女のSS支援です! フローラ視点での話に3レス分使わせていただきます。
王女の名前は、なりきりフローラの子供たちの名前を拝借しました。
イラストも描いていたのですが、消えちゃいましたっ!!! くやしい……
 主人公「ケイン」 王子「シード」 王女「エリシア」 です

1/3

 ―――……お母さん

 まだ幼い少女の声が、耳に残る。泣きながら寝入ってしまったその少女を見つめ、
フローラは瞳を伏せた。
 10年。石化から戻ってみれば、それだけの時が過ぎていたことが信じられない。
この両手に抱きしめた、生まれたばかりのわが子もすでに大きくなっていて、あの時の
小さなぬくもりが夢のような気さえする。
 けれど、初めて母と呼んでくれたその声で、一瞬にして自分の子だとわかったのだ。
 寂しかった、と泣いて縋りついてきた双子を抱きしめた時、胸に去来した愛しさを
言葉であらわすことなんて出来ない。
936AS:02/05/18 20:44 ID:nhq0mTIo
2/3
 エリシアと名付けた王女の髪を優しく撫でた時、暗かった室内に光が差し込み、
フローラは扉のほうを見た。音をたてないように、そっと飛びらが閉じられて
グランバニア国王ケインと、王子シードが静かに入ってくる。
「……もう寝たか?」
 かすかな声に、フローラは微笑んで頷いた。
「寂しい思いをさせてしまいましたわね……。わたくしと同じ思いをさせまいと、
そう思っていたのですけれど……」
 清らかな心を育てよ、と幼い時にフローラは修道院に送られた。それからサラボナへ
戻り、夫となるケインと出会うまで、フローラには両親とと過ごした思い出がほとんどない。
 海辺に近い修道院のその一室で、誰にも知られぬように寂しさに耐えかねて泣いた日々。
 どれほど母に、父に、甘えたかっただろう。―――たとえ、本当の親でないとしても。
 子供が生まれた時に、フローラはそんな寂しい思いをさせたくはないと誓ったというのに。
「お母さん、あのね。僕ね、あんまり寂しくなかったよ。エリシアがいたから」
 そばでエリシアの寝顔を覗き込んでいたシードが、笑って言った。その声に、フローラは
はっとして顔を上げる。
937AS:02/05/18 20:44 ID:nhq0mTIo
3/3
「僕ね、きっと一人だったらどうしたらいいかわからなかったと思うんだ。でも、エリシアが
いてくれたから。絶対お父さんもお母さんも見つけてやるって、そう約束したんだよ」
「シード……」
「僕は勇者だったけど、エリシアがいないとたぶん泣いちゃってたかもしれない。お母さん、
僕ら二人を産んでくれてありがとう」

 切ないほどに幸せな感情に胸がしめつけられるようで、間断なく涙がこぼれた。あふれる
思いが言葉にならず、フローラはただ、シードを抱きしめた。その肩を、ケインの温かな
大きな手が、優しく励ますように抱きしめる。
 ようやく……ようやく、10年の時を経て一家がそろったのだ……!
 あるべき形にやっと戻った気がして、フローラは心の中で神に祈りの言葉を紡ぐ。
 そして、眠っているエリシアの頬に、そっと口吻けた。シードもケインもキスをする。

      ―――おやすみ
      ―――……おやすみなさい、愛しい子
      ―――おやすみ、いい夢を

「……これからは、ずっと一緒よ。……エリシア」