☆☆FFDQ板最萌トーナメント二回戦Round12☆☆

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……エアリス……
きっとあなたは、こうしている今も私達を見守ってくれているのね。
私達、いよいよホーリーを解放しにいくわ。
あなたが命と引き替えに唱えてくれたホーリー。この星を破壊しようとするメテオに対す
る究極の白魔法。
たくさんの想いが込められたホーリーが発動するのを、あなたの命を奪ったセフィロスが
阻んでいる。私は決して許さない。私達からあなたを奪い、あなたの想いを踏み躙ろうと
しているあの銀髪の男を。

夕日が、今日最後の光を撒き散らしながら地平線へ沈んでいく。
淡い紺色の闇が淡い紅の輝きを覆い、空はほんのり菫色。

この空を見ていると、あなたと一緒に飲んだカクテルを思い出す。
覚えている?コスモキャニオンのバーで、二人で飲んだあの夜のこと。
4302:02/04/25 02:13 ID:???
「この紫のカクテル、バイオレット・フィズ、っていうんだ」
あなたは綺麗な指でグラスを持ち上げ、店の光を透かして目を細めた。細かくカットされ
た菫色の光が、あなたの白い頬の上に踊った。
「そういえば、ティファって、バーのマスターやっていたのよね。私、ティファの作った
お酒、飲んだことないよ?」
大事なことを忘れていたといわんばかり、あなたはきゅっと眉を顰めたわ。
「クラウドやバレットが、とっても美味しいって言ってた。私も、飲んでみたいな」
「今は無理よ。道具がないもの。そのうちにね」
私がウィンクすると、あなたは子供のように唇を尖らせた。
「つまらないなあ。私だけ、ティファのお酒の味を知らないなんて」
「ふくれないで。今度、エアリスだけのカクテルを作ってあげるから。私、好きな人には
オリジナルのカクテルを作って、名前をつけてプレゼントしてるの。エアリスにも是非プ
レゼントさせて貰うね」
嬉しそうな笑顔で頷いた後、あなたはふいに悪戯っぽく首を傾げた。
「クラウドにも、プレゼントした?」
多分その時の私は、オレンジ色の明かりの中でも分かるくらいに真っ赤になったんだと思
う。そんな私を見て、あなたはくすくすと笑ったのよね。
ちょっと意地悪な冗談だとは分かっていたけど、私は少しむっとした。俯いて、そのまま
押し黙ってしまった私の耳に、あなたの少し慌てた声が届いた。
「ティファ……怒っちゃったの?ごめんね?」
私は敢えて何も答えない。あなたは更に心配げに私の顔を覗き込もうとする。次の瞬間、
私は顔を上げると、思いっきり舌を出してにやりと笑った。
「もう!ティファったらひどい!怒ったふりなんかして!」
「これでおあいこよ」
私達は一瞬睨み合った後、ぷっと吹き出して笑った。
4313:02/04/25 02:14 ID:???
それから続いた他愛ないお喋り。楽しくて楽しくて、このまま時が止まってしまえばいい
と思ったっけ。
「ね、ティファ。分かっていると思うけど、私、クラウドが好きよ」
夜も大分更けた頃、あなたはグラスに唇を寄せながらそう言った。
「私、遠慮しないね。どんどんクラウドにアピールしちゃう。私はね、ティファも大好き
なの。だから、こそこそしたくない。敢えて宣言しとくね」
普段は押し黙ってしまう私だけど、その時はアルコールが入っていて、少し気持ちが大胆
になっていた。私は前からの疑問をあなたにぶつけてみたの。
「エアリス、どうしてあなたはそんなに積極的になれるの?失敗したらどうしようとか、
傷ついたら怖いとか、考えたことないの?」
「ない……というのは、嘘。私だって傷つくの、嫌よ。でも後から後悔するのは、もっと
怖いの。あの時こうしていればよかった、なんて思っても始まらないでしょ?だから私、
今出来る精一杯のことをしたい。だって明日、自分がどうなるか分からないし」
そしてあなたは、呟くようにこうつけ加えた。
「命って、儚いから。ひょっとしたら次の瞬間にも、消えてしまうかもしれないから」
『明日ね』『今度ね』……それが口癖だったあなた。誰よりも未来を楽しみにしていたあな
た。何時も前向きなあなたらしくないその台詞に、私は戸惑いを感じていた。
きっと……星の声を聞くことが出来たあなたは、命の儚さを常に肌で感じていたのね。だ
からこそ今日を懸命に生き、それに続く明日を楽しみにしていたんだわ。
淡く微笑むあなたの横顔はとても綺麗で、今にも消えてしまいそうに幻想的だったことを
覚えている。私は急に不安になって、気付けば夢中でその手を握りしめていた。
あなたが、そのままいなくなってしまうような気がしたの。
「いきなりどうしちゃったの、ティファ?だいじょぶ?」
目を丸くしながらも、あなたは手を握り返してくれた。その時はもう何時ものあなたに戻
っていて、私は内心ほっと胸を撫で下ろしたのよ。
4324:02/04/25 02:15 ID:???
……エアリス……
あの時握ったあなたの手、あんなにも温かかったのに、あなたはもうこの世界の何処を探
してもいない。
思い出って綺麗だけど残酷だね。あなたとの楽しい思い出は、思い出す度に温かい気持ち
になれるのに、同時に辛くて堪らない。勝手に涙が溢れてくるの。
私、切ない。とっても切ないよ。

今、私はあなたの言葉を胸に、決して後悔することのないよう、毎日を精一杯生きている。
足が竦むことがあるわ。体が震えることもあるわ。でももううじうじ悩んだり、めそめそ
泣いたりしない。
私だって明日はどうなってしまうか分からない。でも最後の意識を失う瞬間、これで良か
ったんだと思える生き方をしていきたいの。
私、少し強くなったと思わない?
まだまだよ、なんて笑わないでね。

もしこの戦いから生きて帰って来ることが出来たら、私は約束通り、あなたのカクテルを
作るね。
とびっきり美味しくて、気持ちよく酔えて、素敵な夢を見ることの出来るカクテル。
あなたの瞳の色に合わせた、エメラルド色に輝くカクテル。
カクテルの名前は、『コスモキャニオンでの思い出』
永遠の親友であるあなたへ、想いの全てを込めて贈りたい。