☆☆FFDQ板最萌トーナメント二回戦Round10☆☆

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51オヴェリア支援SS
城を抜け出して馬を駆り、俺は一人、ゼルテニア城教会跡地にやってきた。
用意してきた薔薇の花束を、雪解け水で濡れた地面にそっと置く。一年前に受け取って貰
えなかった誕生日の贈り物を、今日改めてお前に贈ろう。
……オヴェリア、聞こえるか?
早いものだな。あれからもう一年だ。俺がここでお前を刺し殺してしまったあの日から、
そんなにも時が経ってしまったんだな。
畏国王ディリータ。イヴァリースを救った英雄。そう呼ばれることに、俺の体はまだよく
馴染まない。

まだ平民だった頃、俺は貴族に利用され、妹の命を奪われ、時代と権力を激しく憎んでい
た。戦乱に乗じて全てを引っ繰り返し、「利用される者」から「利用する者」へのし上がろ
うと躍起になっていた。
「亡き王女の身代わり」として、生かされ続けているお前に出会ったのはそんな時だ。
利用されても泣くことしか出来ない無力で哀れなお前に、俺は自分の影を見た。同じ痛み
と悲しみを持つ人間として、お前を幸せにしてやりたいと思った。
やめてやれよ!
53オヴェリア支援SS2:02/04/20 20:44 ID:???
「……そうやってみんなを利用して!ラムザを見殺しにしたように、何時か私も見殺しに
するのね!」
あれは一年前のお前の誕生日。この場所で薔薇の花束を差し出そうとした俺に、お前は憎
悪でぎらぎらした瞳を向けた。
次の瞬間、お前は俺に体ごとぶつかってきた。一瞬の間を置いて、俺の胸に鋭い痛みが走
り、生ぬるいものがどろりと腹の方に伝わった。
刺された。
そう思うより早く、俺は体から短刀を抜き取り、お前の胸を深く抉っていた。戦いに次ぐ
戦いの日々で培われた防衛本能が、一瞬にしてお前の命を奪ってしまったんだ。

あの日お前は、どうして俺を刺したんだ?
そんなにも俺が信じられなかったか?そんなにも俺が憎かったか?
俺がお前を利用しているだなんて、どうしてそんな風に考えたんだ?

……いや、分かっている。お前をそこまで追い詰めたのは俺だ。
お前は怯えていた。また誰かに利用されるのではないかと、何時もびくびくしていた。俺
はそんなお前の不安定な気持ちに気付きながら、傍にいてやろうとしなかった。
頂上を目指して走り続ける俺の強引なやり方に、お前は何時しか不安と戸惑いを覚え始め
たんだろう。一人で悶々と悩むうち、俺に対する疑念は、どうしようもなく膨れ上がって
しまったに違いない。
確かにお前には「王女」として価値があった。俺が「王女」であるお前を利用し、のし上
がろうとしていると……そう考えたんだな?
[[FD20-08mY7Fic]]
ターニア「えっ じゃあ これからも
  ウイルにいちゃんって よんでも
  いいのね。
ターニア「ウイルにいちゃん
  だーーい好きっ!!

<<ターニア>>
誤爆(・∀・)デシタ!
56オヴェリア支援SS3:02/04/20 20:44 ID:???
だがそれは誤解だ。信じてくれ。
俺はただ、一刻も早く手に入れたかっただけなんだ。誰にも利用されることのない、俺達
二人が治める王国を。

尤も今考えると、お前は自分の王国なんて望んでいなかったのかもしれない。
何時だったか、お前は窓の外を眺めながら、ぽつりとこんな呟きを漏らした。
『鳥になれたら素敵なのに……』
『鳥?』
『そうよ。鳥になって、あなたと二人で、何処か遠くの国に飛んでいきたい』
俺はお前の子供っぽい言葉に、思わず失笑した。
『鳥になんかなったら、豪華なドレスも綺麗な宝石も身に付けられなくなる。美味いもの
も食えないし、いい酒も飲めない。それでもいいのか?』
『……そんなものなくたって……』
お前は俯いて、それっきり何も言わなかった。
今の俺には分かる。お前が本当に欲しかったのは、豪華な屋敷でも贅沢な食事でもなく、
ただの平凡な幸せだったんだろうと。
俺もお前も、貴族の世界で生きるにはあまりにも不器用すぎた。こんな時代、こんな世の
中で出会ってなかったら、俺とお前には違った未来が広がっていたかもしれない。
57オヴェリア支援SS4:02/04/20 20:45 ID:???
今更こんなことを言っても信じて貰えないと思うが、俺はお前を愛していた。この命、お
前の為なら失っても惜しくないと思っていた。
皮肉だな。俺達は一体、何処で行き違ってしまったんだろう。
俺はあれほど焦がれていた、「利用する者」の立場に立った。だが俺の心は、何時もぽっか
りと穴が開いたように満たされない。

オヴェリア、それでも俺は生きていく。
お前が生きた証を俺が語り継ごう。オヴェリア・アトカーシャの名を後世に伝えよう。
お前は歴史の中で、身代わりにされた惨めな女などではなく、正当な血を引く王家の娘と
して、畏国王の妃として燦然と輝き続ける。
それが俺がお前にしてやれる、たった一つのことだ。

俺はふと、小鳥の鳴き声が随分と近いことに気付いて顔を上げた。
一羽の小鳥が、囀りながら俺のすぐ傍へ舞い降りた。晴れ渡った空の色を掬い取ったよう
な美しい青い小鳥だ。
小鳥は囀りながら、俺がお前に捧げた花束の周りを嬉しげに飛び周る。
その光景に、俺はふと頬を緩ませた。こんな風に自然に笑うのは、お前が死んでから初め
てのことだ。
お前の少し寂しげな笑顔が、ふと俺の前を過ぎったような気がした。
「……オヴェリア。またくるよ」
小鳥は一際高い声で囀り、晴れ渡った空へ飛び立った。
俺の行く道を示すように、高く高く空の彼方へ……。