☆☆FFDQ板最萌トーナメント二回戦Round9☆☆

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878オヴェリアSS1
淡い蝋燭の光に満たされた寝室。
私は大きなベッドの傍に立って、昏々と眠り続ける一人の男の顔を見つめている。
男の名はディリータ・ハイラル。混乱に陥っていたイヴァリースを平和に導いた英雄。
この国を治める畏国王。

彼は私を一番幸せにして、一番不幸にした人。
彼は私がこの世で一番憎んで…一番愛した人…。

あなたに告げたいことがあって、私はさっきからここにこうしている。
でも私はあなたに触れることはおろか、声をかけることも出来ない。
何故なら私は、あなたに刺されて死んでしまったから…。

死んだ王女の身代わりとして、王位を継承させる人間…ただそれだけの存在であった私。
王女であることが唯一の誇り、唯一の生き甲斐であった私は、自分が何処の誰とも知れ
ない身代わりだと知った時、生きる気力さえも失った。
 泣くことしか出来ない私を、厳しく励ましてくれたのは、まだ一介の騎士に過ぎなかっ
たあなた。
「オレを信用しろ、オヴェリア。おまえに相応しい王国を用意してやる!オレが作ってや
る!おまえの人生が光り輝くものになるようオレが導いてやろう!」
あなたは亡き妹の名にかけて、そう誓ってくれた。
879オヴェリアSS2:02/04/20 03:04 ID:???
私達を結んだのは、「利用され続けた者」としての共感。
あなたもまた貴族に利用され、最愛の妹を奪われ、権力を憎んでいた。
乱世の波に翻弄され、大きな権力の駒として利用され続けていた私達は、「時代」とい
う共通の敵を持ち、想いを同じくすることが出来た。「同病相憐れむ」そんな言葉がぴった
りの結びつきだった。

 私はあなたを信じた。信じようとした。
 だけどささいな行き違いが原因で、あなたに対する疑惑が生じた。あなたもまた、「王女」
である私を利用しようとしているに過ぎないのではないか…一度そう疑い出すともう止ま 
らなくなった。疑惑は私の中で雨雲のように膨れ上がり、何時しか私は、あなたに対する
信頼を失っていった。
……いいえ、あなたの所為にするのは間違っているわね。
あなたは必死なだけだった。この国を手に入れる為に。私の為の王国を作る為に。
あなたの言葉を信じられなかった私が愚かなだけ。

結局、私はあなたを信じることが出来ず、ゼルテニア城の教会跡地であなたに短刀を向
けた。
「……そうやってみんなを利用して!ラムザを見殺しにしたように、私も見殺しにするの
ね!」
そう叫んで刃を突き立てた私を、あなたは信じられないような瞳で見つめ…次の瞬間、
私を短刀で刺し返していた。あれはあなたの意思というより、戦士としての本能が起こし
た行動だった。
880オヴェリアSS3:02/04/20 03:05 ID:???
その時のあなたの顔を、私は忘れられない。
迷子になった子供のような、途方に暮れた表情。呆然と見開かれた瞳。あなたのあんな
顔を見たのは、あれが最初で最後だわ。
大地に伏した私は、暗くなっていく視界の中で、あなたが持ってきた薔薇の花びらが風
に舞うのを見た。
あなたは、その日が私の誕生日だったことを覚えていてくれていた…。

私が刺した傷が深く、あなたは昏睡状態が続いている。
あなたが苦しそうな息の中で私の名を呼ぶ度、私の胸は痛くなる。

どうして時間は、巻き戻すことが出来ないのかしら。
一度でいい、もう一度あの日に戻ることが出来るのなら…私は花束を受け取って、あり
がとうと言えるのに。あなたに向かって、にっこりと笑えるのに。
 二人で幸せになれるのに。

…馬鹿ね。今更こんなこと考えてもどうにもならない。私は死んでしまったんですもの。
長くはここにいられない。いかなくてはならないの。

さようなら、ディリータ。
でも最後にこれだけは言わせて。
私はあなたを愛していた。私の人生は嘘で塗り固められた、お芝居のような人生だった
けど、その気持ちだけは本当だったの。それだけは何時か分かって欲しい。

何時か私は、小鳥になってあなたの元に帰ってくる。青い翼を持った小さな鳥になって
あなたに春の歌を捧げたい。
だからディリータ、その時は微笑んで、私の名前を呼んでね。