☆☆FFDQ板最萌トーナメント一回戦Round8☆☆

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429バーバラ支援1/4
「ウィル!ウィルってば!」
 あたしは布団にもぐりこんだウィルをゆさゆさとゆすぶった。
 ウィルは毛布の下から眠そうに「うーん」と唸っている。
「ウィル〜!起きてよお。今日はみんなで天馬の塔に登るんでしょ!」
 そう言うと、ようやく起きる気になってくれたみたい。目をこすりながら、
ウィルは「わかった、起きるよ」と答えてくれた。
「早くね。もうみーんな支度をすませてて、あとは朝ごはん食べて出かけるだけ
なんだから」
 そういい残して、あたしは宿屋のウィルの部屋を出た。

 その日の朝食の席で、ウィルは寝坊を謝って、こんなふうに言い訳した。
「すごくいい夢をみてたんだ」
「あら、どんな夢?」
 そうたずねたのはミレーユ。
「楽しい夢だよ。それで……」
「ん?」
 ウィルはしばらく考えていたかと思うと、恥ずかしそうに笑った。
「忘れちゃった」
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桜の中のフローラたん。萌え。
外部支援です。
431バーバラ支援2/4:02/04/16 19:43 ID:5KOZ1yoQ
「おいおい、何だよ。まだ寝ぼけてんのか」
 ハッサンが呆れたように笑う。
「人間、起きたときには見ていた夢の八割は忘れてしまうそうですよ」
 そう知的に分析するのは、チャモロ。
 そのチャモロのセリフに、ウィルは頭をかきながらうなずく。
「そうみたいだね。楽しかったことは覚えてるんだけど、どういう夢だったかは
さっぱり思い出せないんだ」

 ……そうなのよね。夢ってそういうもの。
 見ている間がどんなに楽しくても、目が覚めればそこに待っているのは、大切な現実の生活。
 眠りの狭間にみた夢なんて、忘れてしまって当たり前だよね。
432バーバラ支援3/4:02/04/16 19:45 ID:5KOZ1yoQ
 実はあたし、さいきん考えてることがある。
 この冒険が終わったら、あたしはどうなるんだろうって。
 もうみんなと一緒にいられないんだろうなって、漠然とだけど、感じてる。
 もしも冒険が終わって、みんながそれぞれの生活に戻ったら、みんなは
この夢の世界でした冒険のことなんて忘れちゃうかな。あたしのことも、遠い記憶になっちゃうかな。
 ……明け方にみる、あわい夢のように。
 楽しかったことだけぼんやり思い出せる程度の記憶は、生活が忙しくなるにつれて、
どんどん薄れていく。
 昨日見た夢を、今日になったら覚えていないって、ありすぎるほどよくある話だもん。
433バーバラ支援4/4:02/04/16 19:46 ID:5KOZ1yoQ
「バーバラ?どうした、食欲がないのか?」
 食事の手が止まってしまったあたしに、ウィルが心配そうに声をかけてきた。
 あたしはハッとしてわれに返る。
「え?あ、ううん、そんなことないよ!」

 あわててにっこり笑ってみせる。

 ……やめようっと。
 物事を悪い方、悪い方に考えるのは。
 だってあたしはみんなのこと、絶対に忘れないもの。
 それだけは自信があるわ。数々の冒険の、ドキドキやワクワク、泣きたいほど悲しいことも、
やりきれない理不尽なことも。
 ぜんぶ一緒に乗り越えてきた仲間だもん。忘れない。きっと何十年経っても、色あせないまま
残る思い出だもん。
 だから、あたしもみんなを信じるよ。
 あたしがいなくなっても、みんなもあたしのこと、忘れないでいてくれるよねって……。