「ひっ、姫〜〜〜〜」
ズザザ――!!!
クリフトが戦闘中、大慌てで私を庇いに入る。
けれど、いっつも間が悪いのか、全然危なくないタイミングなのよね。
今回もひょいっとモンスターの攻撃をかわし、ズガッ、その反動で回し蹴りを叩きこむ。
するとあっさりと、かなりの巨体を誇るモンスターはその場に崩れ落ちた。
あれ? かわした時になんか変な音がしたわね……。
振り返るとクリフトが伸びていた。さてはさっきの一撃食らった……みたい。
さっきのモンスターの攻撃って私だからかわせたし、無傷だったけど、
普通に食らったら結構なダメージになるかな。気絶しちゃってても当然かも。
戦闘の方はブライの氷結系呪文でおおよその雑魚モンスターは倒し終えたらしく
勇者が残ったのと闘っているところだった。私にはもう、出番はなさそうかなあ。
…
……
………
「姫様、クリフトはまだ伸びたままかいの?」
「ぜ〜んぜん、起きるなんかまるで気配ないわ」
「しかしこやつも毎回だらしがないのお。パーティでの役割を分かっておるのじゃろうか」
「くすっ…、そうねえ。確かにだらしがないとは思うわ」
そのセリフを聞いたブライが何故かにやり、と笑みを浮かべた。
あの笑い方をするブライは大抵何か変なコトたくらんでるのよね……。
しかもこの状況だと反論するの厳しいわ……。
「ふむ、やはり姫様もそう思いまするか。全くもって王家の従者としての自覚がない!
今回も姫様を護衛する役を仰せ付かっていながら、闘いの途中で気絶すると言う失態を
晒し、且つパーティでの回復役としての勤めも果たせておらんかった。
これではいっそパデキアの根っこなぞ飲んで病魔から回復せずに延々とベッドで
寝ておった方がましじゃった!」
う〜、確かにちょっと情けない所あるし、今回のはまずかったと思うけど、言い過ぎなような。
でもここで反論するとブライに引っかかった事になりそう。が、我慢我慢。
「幼少の頃からこの者を見ておるが、やはり頼りにならなそうな目をしておった。
毎日姫、姫、とこのある事に姫の名を口にし、アリーナ様の後ろにくっついておったのお。
ロクに勤めも果たせずに後ろについて回るだけなら誰にでも出来るわい! 不肖このブライめが
あの頃から性根を叩き直していれば今はもう少しマシだったかもしれんのお。
姫様にも度々ご迷惑をかけたのではありませぬか?」
〜〜〜もう我慢出来ないっ!!
「ブライっ!!」
「おや、姫様、何かこのじいめがおかしな発言をしましたかな?」
「さっきのコトは当たり前だったから反論出来なかったけど、昔のクリフトに関しては言わせてもらうわよっ!!」
「なら、聞かせていただきましょう」
ブライは我が意を得たり! とばかりにこちらに耳を傾けた。
「あのねえ! 昔からクリフトは私が危ない所に出掛けてもちゃんとぎりぎりの所で止めてくれたし、
いたずらしてパパにしかられそうになった時も庇ってくれた! さっきは確かに情けないトコロを
見せたかもしれなけど、実はちゃんと修行してるのよ? クリフトの身体って傷だらけなんだから!!」
「成る程。そこまでこやつの事を理解しておられるのですか」
「そうよっ、だからこうしてちゃんと面倒みてるんじゃない!」
「ふむ…。面倒を見ると言うのはこの膝枕の事ですかな?」
「〜〜〜」
にやり、とブライが笑うのを見てしまった。ここでチェックメイトかしら……。実際私の顔もちょっと赤いし。
「こやつは姫様にここまで理解されて幸せ者じゃのお……ふぉっふぉっふぉっ」
そうなのよ、ちょっとクリフトが可哀想で気付くまで膝枕なんかしてあげようなかなあ〜、
なんて珍しい事考えたのがまずかったのよ! ……この後どうしようかしら?
―などと言いながら姫様はクリフトが気付く直前まで奴の面倒を見たそうじゃ。
もちろん気付く直前にはその場から離れておったがの。まあ、デスピサロを
追って、8人の勇者達が冒険を続けておる間のホンの一幕の出来事の話じゃ。―