FF7の小説

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1
職人さん、たのんます!
むり
>>2
職人さんですか?
メテオ
むり
6闇影者 ◆R/NF5j7. :02/03/07 23:27 ID:???
ふう…
7だけでなくFF全体小説スレのほうがいいと思う
ハラヘッタ・・
フレア
プチメテオ
10闇影者 ◆R/NF5j7. :02/03/07 23:28 ID:???
職人不足
11シャル ◆JOJOHIHI :02/03/07 23:28 ID:B4uVkegd
 
サイレス
13民明:02/03/07 23:29 ID:???
キャラ萌えスレでたまーにコソーリ書いてくつもりですが…
こうゆうところでは書けない…ゴメソ
14ジヲスゲイノ ◆AIRFFFAc :02/03/07 23:29 ID:???
ポーリー
ホーリー
クエーサー
ジヲスゲイノ久し振り。
ファイダ
おばけのホーリー
>>13
ミコト萌えスレで書いておくれよ・・・
題指名すればいいんじゃない?
思いついた人が書く・・・
アポカリプス
23ジヲスゲイノ ◆AIRFFFAc :02/03/07 23:32 ID:???
>17
やあ
FFM見た人ー?
25俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:32 ID:???
うううぅぅ・・・
26俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:32 ID:???
FFM?????
バハムート
28民明:02/03/07 23:33 ID:???
>>20
FF、\だけ触れてもいないんだよ…したがって書けぬ。ゴメソ
29俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:33 ID:???
あらら・・・
うわあ
>>21
一行ずつみんなで書いていくとか。
32闇影者 ◆R/NF5j7. :02/03/07 23:35 ID:???
ぐぼぁ
33俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:35 ID:???
一行ずつの皆で作るストーリー

うんうんいいかも・・・
オチュー
35俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:37 ID:???
攻撃
がティファを襲う!!
天国に一番近い島
すかさずリフレク
39俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:40 ID:???
こ、このままでは・・・
と、そのとき!!
いきりたったバレットが
42闇影者 ◆R/NF5j7. :02/03/07 23:41 ID:???
モルボル大爆発!!
43俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:41 ID:???
モルボル参加
俺マネーはクラウドの頬をひっぱたいた!!
俺マネー「お前何したいんだYO!!
_______________________________________
                ,-‐,,ii||||||||||||ii、-、
 `゛!!!iiiiiiiiiiiiiii;;;;;;;;;;,,,,,-‐/ i||||||||||||||||||||||||i ヽ‐-、,,,,,;;;;;;;;;;iiiiiiiiiiiiiii!!!"´
    '''''!!!!!|||||||||||||/   i|||||  |||||||||||||||||i   ヘ|||||||||||||!!!!!'''''
       ''''''''!!!!!I/   ||||||  ||||||||||||||||||   `iI!!!!!''''''''    /Vー-へノ\ノ\ノ\ノ\
           ヽ,   !|||||||||||||||||||||||||!"   〈      ノV               \
─────----了     ゛!!||||||||||||||!!"     `ヽ---─く
 |    |    | `ゝ.__       ̄Y ̄     ___ノ   ノ
 |    |    |  ,| ]下ミ ̄`。、_|_;'。´ ̄7エ"┬| |  ノ  ぜったいゆるさんぞジヲスゲイノ!!!!!!
 |    |    |  |└、 トミミi─'´<_,l、三´,E=|#ナノ |  )
 |    |    |  | | `ヽトミ||^=====^|E彡/  ' | | |<   じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!!!!
、 |    |    |  | | ーヾミ||]⌒i⌒「|ソ‐'-─/ / |  )
  ヽ、  |   /^‐━, \_ `、`===='',/  _/ /\ |  └、
    ヽ、 | /ノ―、='、 \_二二`─´二二_/    \   Vヽ
      ヽ/´ /  / ̄`i、    ̄|| ̄        / \    ヽ/ ̄ ̄ヽノ⌒Vー-、/⌒V
      ノ  丿   l   | `i---┼-----------'´
      |   〈 l   〈 〉  |
      ゝ         ,/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
46俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:42 ID:???
>>44
何気にワラタ
47ジヲスゲイノ ◆AIRFFFAc :02/03/07 23:43 ID:???
>45
うっせばかああ
>>46
何で叩いたの?
49俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:43 ID:???
>>45
喝!!!
クラウド「えっと、それは・・・
51俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:45 ID:???
「俺の百列ビンタをくらうが良い」
ビシビシビシビシ!!!
レッド「ガルルルルル
ゲレゲレ「グルルルルルル
クラウド「殴ったね。親父にも殴られたことないのに!!」
あ〜れ〜
55俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:46 ID:???
キャー!!
56闇影者 ◆R/NF5j7. :02/03/07 23:46 ID:???
ミコト「バカなことを!!
57俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:47 ID:???
あふーん
バラバラだね
さっさと描け
60俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:47 ID:???
>>56
ハァハァ・・・・
61闇影者 ◆R/NF5j7. :02/03/07 23:48 ID:???
かみは バラバラになった!
クラウド等とセフィロスの戦いを
大げさにかいてみて
そこへかの有名なナチョナルさんが!
>>61好きだね、それ
65俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:49 ID:???
クラウド「えい」
セフィロス「逝きます」
>>65
ワラタ
67俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:49 ID:???
セフィロス!逝きます!!
セフィロス「くらえ!
セフィロスのあなをほる!!
69闇影者 ◆R/NF5j7. :02/03/07 23:53 ID:???
セフィロスのドリルくちばし!!
70ロック:02/03/07 23:53 ID:???
天才ですから
71俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:53 ID:???
セフィ「俺をセルフィと勘違いしただろう」
「おねぇちゃんぼくひとりぼっちだよ」
「まだ生きていたのか!!」
「はぐはぐ」
「・・・eeD」
72俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/07 23:54 ID:???
バレット「ムハァァァァーーーーン・・・・」
73ロックスレからのコピペ:02/03/07 23:55 ID:???
どかっ
マッシュ「7発だぞ、7発
だこん
ごだあん
マッシュ「今のはセリスの分
マッシュ「次はティナの分だ
どこん
ストラゴス「ぐっ!!
マッシュ「これはロックの分
ぴし!
ロック「あんにゃろう・・・
ストラゴス「クソがァ
マッシュ「そしてこれは・・・
マッシュ「兄貴の分!!
がぼん
ストラゴス「がああっ!!
リルム「もういいよ・・・、もういい
リルム「もういいだろ・・・
どかあっ
マッシュ「まだだ・・・
74することないんで・・・・:02/03/08 05:07 ID:???
イデアのバトルテーマ聞きながらルールーの壁紙見てたら妙にマッチしてた
んでルールーがスコールたちとバトルするイメージを想像する

 6人で束になっても勝てないFF8のショボーなキャラたち、頼みの綱のエンドオブハートも
600 560 617 ・・・ としょぼい数字が続く、ルールーは戦闘が始まると同時に
デスを唱えた、即死するセルフィ、ルールーの後ろではユウナが異界送りをしている
即行で異界送りにされるセルフィが幻光虫となって舞い上がっていく・・・
ルールーが微笑を浮かべ余裕をかます「さぁて、どうしようかな?」
打つ手がないスコールたち。焦りの色を隠せないアーヴァインの横でバシッ
という鈍い音が響いた、その瞬間ゼルが悲鳴をあげた、まるで断末魔のようだった
ふと見るとモーグリらしきぬいぐるみがルールーの元へピョコピョコと走っていった。
そして、なおも踊り続けるユウナはゼルの魂を異界へと誘っていった。
スコールはルールーを睨み付け、ガンブレードを握り締めた。戦闘に参加したキスティスが
オーラを放った。すかさずスコールがアーヴァインに叫ぶ「ショット!早く打て!打つんだっ!!」
速射弾を込めアーヴァインはクイックショットを放つ!!200 200 200 ・・・ダメージが重なる!
しかしルールーの表情には痛む顔すら現れない。「なにしてるっ!波動弾を使えよっ!」
スコールは怒声を上げた、「だめだ、一発もないよ!どうすれば・・・」
キスティスがスコールたちに叫んだ「次がくるわよ!!」身構えるスコールたち
ルールーはぬいぐるみと同時に両手を大きく振りかぶった「天の光に砕け散れ!サンダガ!」
光と一緒に大きな稲妻がアーヴァインを貫いた。崩れるアーヴァインから
幻光虫が舞い上がる。リノアが駆けつけスコールに言い放つ「攻撃が効かないならガーディアンっ、
ガーディアンフォースを呼んでっ!!」






75つづき:02/03/08 06:13 ID:???
 GFを召喚したスコールはじっと身構えた、「GFが来るまで、何とか食い止めましょう」
キスティスがリノアに促した、リノアはじっとルールーを見据えると深くうなずいた。
「アンジェロッ!インビジブルムーン!!」リノアに駈けて行くアンジェロの前に白いけものの
ぬいぐるみが立ちふさがる。ルールーの腕からはいつの間にかモーグリ魂がいなくなっていた。
”ダメージ限界突破”を身に付けているそのモーグリはアンジェロに99999のダメージを与えた!
さらに狂ったように踊り続けるユウナのもと、アンジェロまでもが幻光虫となって異界へと消えていく
アンジェロを待つリノアの横をピョコピョコとモーグリが通り過ぎた。「あらあら…」とルールーが
リノアの後方で異界送りになるその主人のところまでいけなかった哀れな犬を見て微笑んだ。
ルールーの視線に気づくリノア、振り返れば最後の幻光虫が空へと消えていった。
怒りに震えたリノアは腕に装備しているシューティングスター を乱射した。
しかしルールーの前にことごとくかわされてしまった。「さぁどうする?」ルールーはさらにパーティーに
プレッシャーをかけていく。その瞬間あたりが暗くなった。巨大な魔方陣が空に浮かび、飛空挺とも取れる
生き物が姿をあらわした。エネルギーが急激に高まっていき、その生き物の前に集中した。
まさしくそれは最強のガーディアンフォース”エデン”の姿だった。”エターナルブレス”と呼ばれる
エデンの息吹はすべての敵を消滅させるといわれる、いまここにその息吹がルールーへと発射された。
巨大な爆発音とともに超エネルギーの波動がルールーへ襲いかかった。スコールたちは勝利を確信
するに十分すぎるほどの手ごたえを感じた。しかしスコールたちが晴れていくひかりの中で見たものは
両手を振り上げ何かを唱えているものだった。スコールはその2つの大小の影から唱える声をかすかに
聞いた。「味わえ、最大最強の黒魔法!アルテマ!!」そして次の瞬間、幾重にも重なる虹と爆発
そして絶えがたい衝撃が3人を襲った。その衝撃が7度目を数えて終わるころ、何百匹の幻光虫となって
舞い上がるスコールたちの前で「おつかれさま・・・・」と投げかける黒魔道士と役目を終えた召喚士の姿が
広い平原にあった。
76:02/03/08 18:21 ID:???
何か書こうかなぁ…
FF7やったのだいぶ前だしあんまり覚えてないけどちょっとだけ書いてみたよ。

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アバランチは少数の戦闘員で構成されているのだが、
それぞれの戦闘力はソルジャークラスといっても過言ではなかった。
ついにミッドガルの一区を破壊してまでもアバランチを
壊滅に追い込むことはできなかった。
しかし女戦士を一人、仲間と別行動を取らせることに成功した。

夜。尾行者の気配に気づいた時には遅かった。
「アバランチだな?」
女戦士…ティファ・ロックハートは5人のソルジャーに囲まれていた。

ティファは様子を伺いながらも冷静だった。
ソルジャー二人が同時に斬りかかる。武器は防御が困難な刃渡りの大きなバスターソード。
ティファは二つの剣線を紙一重でかわし、他の3人の様子を見る。
変わった様子はない…二人に同時に拳を叩き込む。
鈍い音と共に二人はその場に崩れ落ちた。
あと3人。余裕だわ…ティファが確信したその時。
「え…!?]
ティファはその場にへたりこんだ。意識はあるが身体に力が入らない。
「油断したな、お嬢さん。まさか俺たちが魔法を使えるとは思ってなかった
 みたいだな? しばらくは身体が動かないぜ」
首から下がまるで自分のものではないような感覚。
全く動かせない。動けない。
「あんたたちのせいで罪も無い人々が死んだんだぜ。
 そのおとしまえをつけてもらわないとな」
おとしまえ…? 何のこと?
「しかしいい身体してるなお嬢ちゃん。
 あんなすげえパンチするくせによ?」
確かにティファはトップモデルとして世界に通用するぐらいのスタイルを持っている。
女優顔負けのルックス、誰もが目を奪われるほど豊満な胸。
男の手がその豊満な胸を撫でた。
「さ、さわらないでよ!」
悪寒が走った。しかし手を払いのけようにも身体は動かない。
男はティファの後ろに回り込み、両手で二つの乳房を掴む。
「うあ、やめてよ…」
「やめるわけねえだろ!」
強引に胸を揉む。服の上からでもその感触は堪能できた。
「くそ、いいなあ。じゃあ俺は下かな…」
他の男がそう言うと、ティファの両足を広げた。
するとミニスカートをはいているティファの下着が丸見えになる。
「キャアア、へ、変態!」
「白かよ、清純そうな顔してるもんな。
 でももう清純じゃなくなるんだけどな…ハハハハハ」
保全sage
期待age
クラウド「食らえっ、超究武神覇斬!」
スコール「・・・・エンドオブハート」
 
 
 
 
 
 
 
 
後に残ったのは塵だけだった
83名前が無い@ただの名無しのようだ:02/03/13 00:20 ID:8P0ur6zm
ユフィきぼん
84 ◆eXrwkyb6 :02/03/13 00:31 ID:???
ティーダ「『全てを越えし者』はエース・オブ・ザ・ブリッツじゃぁ
ビクともしないのか!?これじゃぁヤラれるのも時間の問題じゃねぇか」
アーロン「うろたえるな・・・・・」
ティーダ「うろたえるな・・・・・ってぇ・・・・・んなこと言う前に
何か考えろよ!!」
アーロン「考え中だ・・・・・」
ワッカ「・・・・・そうだ!おもしれぇコト考えたぜ」
ティーダ「・・・・・・なんだよ・・・・・・・?」
ワッカ「もう一度ODが溜まったらな」
三人は強力な攻撃を必死に耐えた。
そして三人のODがMAXになる・・・・・
ティーダ「ゼェゼェ・・・・・・んで?なんだよ、良い考えって・・・・?」
ワッカ「もう一度エース・オブ・ザ・ブリッツをしろ」
ティーダ「・・・・・?なんでだよ・・・・・?」
ワッカ「良いから早くやれ!・・・・・ボールを投げるのは俺に任せろ」
ティーダ「解った・・・・・・いっくぜぇ!!」
85続き ◆eXrwkyb6 :02/03/13 00:41 ID:???
ティーダ「エース・オブ・ザ・ブリッツ!!」
ティーダのアルテマ・ウェポンが連続で全てを越えし者を斬りつける。
全てを越えし者「ぐおおおぉぉぉ・・・・・」
ティーダ「よっとぉ!!・・・・・・ワッカぁ!!」
ワッカ「いくぜぃ!!良いかぁ!!全部蹴れよぉ!!」
ティーダ「全部・・・・・?」
ワッカ「ホレ!!アタック・リール!!」
ティーダ「えええええええええ!!!????」
リールが回りだす。オール2HITで12連続だ。
ティーダ「え!?おい!!ちょっとタンマ!!」
なんとか3発は蹴ったものの残りは全弾命中。
ダメージ限界突破によりティーダは絶命した。
ワッカ「なにやってんだ!!全部蹴れって言ったろ!!」
その声もティーダには届かなかった・・・・・
アーロン「まずいな・・・・・・」
全てを越えし者が「世界最後の日」を使おうとしたその時!!

じぃさん「ほわちぃやぁ!!」
バキィィィ!!!
訓練所のじぃさんの鋭い跳び蹴りが炸裂した。
その場に大きな音を立てて倒れる全てを越えし者、
じぃさん「主ら、大丈夫じゃったか?」
笑いながら話しかけるじぃさん。アーロンは冷静に話しをしていたがワッカは・・・・・・
何者んだあのじぃさん・・・・・・!!?
と一人ビビッて居た。
その夜、ワッカはおもらしした。
-完-
86俺マネー ◆0THzDc9A :02/03/13 21:41 ID:???
ふぅ・・・
>>86
どした?
大空洞突入前夜の話きぼん
89なにげない日常:02/03/15 08:32 ID:???
とあるサイトからのコピペ。まぁセフィクラもんなんだけど。あまりに面白かったので。

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……頼むから……―――頼むから勘弁してくれ。
さすがに……さすがにセフィロスは声を出して泣きたくなったという。
まず第一の原因は……訓練後の着替えにあったという。
「……セフィロス」
「ん?」
午前中の訓練から帰ってきたクラウドがおずおずとコーヒーを差し出してくれながら名前を呼ぶ。
もう休み時間に入っているというのにまだ午前中に仕上げて起きたかった書類が仕上がらなかったセフィロスは書類に眼を落としたまま差し出されたコーヒーを礼を言って受け取り、口付けた。
「あ、あのね」
「なんだ?」
「……あのさ」
「ん」
実は先からこの繰り返しだ。
どうやら何か言いたいことがあるのに躊躇っているらしい事が手にとるように解る。
「何かあったのか?」
セフィロスはとうとう書類から顔をあげてクラウドを見た。
「……あの、実は」
「ん」
「……会社でこういうこと聞くの……ちょっとケジメないかなって思うんだけど」
「……」
「でも、今休み時間だし……その、ずっと気になってるし……」
クラウドはまるで百面相の如く、焦ったような顔をしたり困ったような顔をしたり、真っ青になったり……かと思えば真っ赤になったりと忙しい。
見ていて飽きない、と書類を机の隅に置きながらセフィロスはつくづく思った。
90なにげない日常:02/03/15 08:35 ID:???
「……で、なんなんだ?」
「……セフィロス……俺のこと……そ、そのちょ……ちょっとは……」
「……?」
「大切……とか、お……思ってくれてたり、したり……する?」
自信なさげに言ってクラウドはぎゅっと眼をつぶった。
「……」
セフィロスは閉口してしまう。
「……」
「あのな……」
頭を抱え、クラウドを見る。
「……う、うん」
不安そうな瞳は……所在無さげにしている。
どこか庇護欲を沸き立たせるその様にセフィロスがわずかに息を呑む。
本人がどこまで意識しているのかは定かではないが、クラウドの表情はなにげないものでも時には凶器になりうるのではないかと思うほど、はっとさせられるものが多い。
元々人見知り……と本人に言えば機嫌を損ねるかもしれないが……クラウドは他人に対してはとことん作ったような無表情しか見せないくせに……懐けば懐いたでまさに警戒無しの無防備といっていい。
まあ、もっとも……元々繊細な容姿のせいもあり、陶器人形のような無表情さのままでも十二分に人目を引く存在なのではあるが、感情をともしたあどけない表情になるとまた違う意味で人を捕らえる。
「……〜〜〜〜な、なに?」
……特にそれが自分に向けられていて……更にこんな不安そうで泣きそうでしょうがないような表情をされるとなおさらだ。
「バカ」
セフィロスはそういって溜息をつく。
91なにげない日常:02/03/15 08:35 ID:???
少し難しそうな……それでいてバツが悪そうなその表情は覚えた感情を照れ隠すときのセフィロスの癖だった。
「少しどころか……───大切じゃないわけないだろう」
そのセフィロスの言葉を聞いた瞬間の、クラウドの表情は……セフィロスから見たら思わず抱きしめたい程度……まさに文句なしにかわいらしいものだった。
「……っ!!!ホント?」
「ああ」
「……ホントに?」
「ああ、ホントに、だ」
セフィロスはそういってクラウドの頭に手を置いた。
額の髪の生え際から髪の毛を梳くようにして、安心させるように少し笑みを浮かべる。
「……」
クラウドが少し照れたのか、はにかんだようにしてセフィロスの袖の裾をつかんだ。
「じゃあ……」
クラウドがじっとセフィロスを見る。
「ん?」
セフィロスが返事をし、クラウドが口を開くと同時に……来室を告げるブザーと扉が開く音が部屋に響いた。
「失礼します、こちらに……」


「セフィロス、コンドームとかっていうの使ってくれてるよね?」

「……ルー……───ッ????」
折りよく部屋に入ってきたツォンと、
「……─────────ッ???」
「というか、コンドームって何?セフィロス、知ってる?」
セフィロスは……クラウドの言葉に……思わず石のように固まってしまった。

92なにげない日常:02/03/15 08:41 ID:???
「……だって訓練終わったあとに、他の同僚とか先輩が話してた!」
「……」
「……」
「あのね、なんかある先輩が恋人ができたんだって。それで、なんか色々話してて、その先輩の友達とかが恋人のこと大切だったら、つけとけ、とかっていってた。
ホントに大切で長く付き合おうと思うなら、ちゃんと……ええと、何だかよく解らないんだけど、ちゃんとしといた方がいいって」
「……」
「……」
「でも、他の先輩が言ってたんだ。その先輩は一夜限りの遊びだったら使わないことも多いって。で、その先輩は面倒だしなんか感触?が嫌だからって言ってた。でも違う先輩は遊びでも使うのが礼儀だって」
「いや……もう、何といっていいのか解らないのですが……」
ツォンが頭を抱える。
おそらく彼の言葉は本心だろう。
セフィロスも同じように”なんと言っていいか解らない”気持ちを複雑な心境でかみ締めていた。
「ねえ、セフィロスはしてる?してくれてる?」
「……」
「……」
「それよりも、コンドームってなに?」
無邪気というか……無知はある意味罪だと眼の前のクラウドを見て、セフィロスもツォンも心中に呟いた。
二人とも押し黙ったまま、複雑な面持ちだ。
どうやらセフィロスが自分の質問に答えてくれないと解ると、クラウドはむっと膨れっ面をして、そしてその矛先をツォンにと向けた。
93なにげない日常:02/03/15 08:43 ID:???
「ツォンさんは?」
「……は?」
「ツォンさん、知ってます?コンドームって何なんです?」
「いや、その……できればそういうことはセフィロスに聞いたほうが」
ツォンがしどろもどろになりつつ言った。
「……だって、セフィロス、聞いても教えてくれないし」
「……」
「セフィロス、ねえ、コンドームってなに?」
……かつてこれほど頭を痛くさせたクラウドの質問があっただろうか。
二人とも、まさに”なんと言っていいか解らない”という顔のまま……終始冷汗をかいて、視線は虚空を彷徨っている。
この状況でクラウドの質問に答えることはかなり考え物だ。
だが二人の反応にクラウドは二人がそれがなにであるか知っているのだろうと判断し、二人の答えを待つ。が。
二人とも無言のままだ。
「じゃあ……ツォンさん、ツォンさんは使ってます?」
「は……?」
クラウドのとっぴな言葉にツォンの声が裏返る。
「な、何でわたしに振るんですかッ!!!」
普段の冷静沈着なタークスの主任からはとても想像がつかないほどの慌てふためいた声だが、セフィロスもその気持ちが解るぶん笑えはしなかった。
「え、だって、ツォンさんも使ってるかなと……」
「セフィロス、こういうことはちゃんと教えておくか何とかしておいてくださいっ!!!」
「……」
ツォンがそういってかなりポーカーフェイスを崩したようにセフィロスに食って掛かった。
セフィロスは頭を抱える。
頭を抱えるのはクラウドの言動もだが……ツォンの言葉もまたなんと言っていいか解らないほど混乱したものだったからだ。
「あのな、クラウド……その話は帰ってか……」
そのときだった。
「おーい、英雄さん。こっちにサル来てねーか、と」
再び来客……今度はレノの声がインタホンから響いた。
94なにげない日常:02/03/15 08:47 ID:???
「ていうか、と」
レノが、溜息をつく。
「問題はちゃんと(?)教える教えないとかじゃなくって……そういう知識がないお子様な状態のチョコボ頭にあんたが手を出したことがそもそもの原因じゃないかと思うんだけどな、と」
ある意味混沌と化していたセフィロスの執務室の新たな客は、同じようなクラウドの質問に会った後、今までの経緯と……頭を抱えている二人を見て、もっとも正しいだろう言葉を吐いた。
「……」
が、セフィロスはますます頭を抱える。
「いわゆる、一般的に見て犯罪とかいうんだぞ、と」
『そういう知識がない=お子様』、というレノの発言にクラウドがむ〜〜〜っと頬を膨らませた。
本人も知らないと子ども扱いされるだろうと思って、わざわざ訓練室の先輩や同僚に……ではなくセフィロスに聞いたのだ。
もっとも、そんな場所で他人に聞こうものなら……今以上にセフィロスの顔は青くなっていただろうが。
クラウドはニブルヘルム出身だ。
確かに閉塞された田舎であるからそう言った知識はあまり飛び交っていなかっただろうし、友達といえる友達はいなかったといっていたから……同年代が知っているような知識がないことも……
更に重ねて言うのならばミッドガルに出てきてからは……ザックスという親友ができたが、ザックスはクラウドとはかなり歳が離れていて親友というよりは兄であり……クラウドはそう言った話題にあまり触れ合う機会がなかった。
それに加えて……レノの言う通りろくすっぽな知識もない状態でセフィロスの手がついてしまい……いわゆるそう言った知識にクラウドは無縁なままだったのだ。
だから自分の発言が意外に問題発言であることも……そして、自分たちにそれを当てはめて考えた場合にはかなりずれてしまっているという事実が……全然解っていないのだ。
「クラウド……もういいからその話は後だ」
セフィロスは溜息をつく。
後だ、といいはしてもどう説明していいかなんて検討もつかなかったのだが。
「帰ってから教えてやるから」
「嫌だ!今知りたい!」
子供扱いされることに神経質なクラウドが頑として首を振る。
「だから……」
頼むから、とセフィロスは言いかけた。
半分泣き出したい気持ちになりながらセフィロスは何とかクラウドに納得させる手段はないかとそれこそ、仕事以上に真剣に頭を使い始める。が。
考えれば考えるほど混乱して頭は働かない。
95なにげない日常:02/03/15 08:48 ID:???
要するにセフィロスはセフィロスなりにパニックにいまだに陥っているのだ。
「で、セフィロス。どちらなのですか?」
「は?」
「いえ、クラウド君じゃありませんがつけてるんです?つけてないんです?」
クラウドの矛先がずれたツォンはしかしセフィロスとは違い、すでにいつものモードに戻ってしまっている。
「……あのな」
セフィロスは頭を抱えた。しかしツォンはなんということない顔をしている。
「つけてない」
かなりやけくそ混じりにセフィロスはツォンの問いに短く答える。
が、それを聞いたクラウドのほうは大問題だった。
「……え?」
一瞬、呆然としたような表情を作った後、じゃあ、とセフィロスを見る。
「……”大切だったらつける”って先輩とかいってたのに、じゃあセフィロスは俺のこと……」
「っ!ちょっと待て、クラウド。それは根本的に違う!」
その青い瞳が見る見るうちに潤んでいくのを見て、セフィロスが慌てふためく。
「まあ……クラウド君が聞いた話とはこの場合かなり状況が違いますからね」
ツォンが溜息をついて、必死にクラウドをあやそうとするセフィロスを見る。
「あ〜〜〜〜っと、いちゃいちゃするのは結構なんだけど、と」
レノが溜息をついた。
セフィロスからしたら心中穏やかじゃないこの状況も、本人たちの自覚があるかどうかは別として傍目に見たらただのバカ二人だ。
「俺、用事済んだらすぐ消えるから、いちゃいちゃすんの後にしてくれないか、と」
どこがいちゃいちゃなんだろうと思いながら、泣き出しそうなクラウドに構いつつ、セフィロスが何なんだ、と問う。
「ああ、そういえばわたしも用事が……」
ツォンが思い出したように言った。
「ルーファウス様、こちらにきませんでしたか?」
「ザックスがどこいるか、知らないか、と」
二人同時の言葉に、一生懸命クラウドの涙を拭いながら、セフィロスは、
「はあ?」
と素っ頓狂な声をあげた。
96なにげない日常:02/03/15 08:53 ID:???
「じゃあ、絶対帰ってから教えてね」
「……ハイハイ」
「絶対?」
「ああ、絶対絶対」
「それからさっきツォンさんが言ってた事情が違うってなに?」
「……」
「セフィロス?」
「……それも後」
いまだ頭を抱えたい気分のまま、セフィロスはクラウドと共に治安維持部の廊下を歩く。
片手に持ったPHSはザックスのPHSの番号が発信されているが、返答はない。クラウドはクラウドでルーファウスを探している。
要は二人とも、ツォンとレノを手伝ってルーファウスとザックスを探しているのである。
ルーファウスの方は1時からN社への訪問があるというのに迎えに行った運転手が部屋には不在だったとツォンに泣きついたのだ。
そもそもルーファウスのN社訪問と重なるようにして会議があるせいでルーファウスと共にN社に向かわなかったツォンは……おかげで会議の日程を延ばすことになって本末転倒といってもいい。
そしてザックスのほうは、自分のパソコンが処理を行っているので、急ぎの仕事をレノのパソコンを借りて並行してやっていたのだが……なにをどうしたらそういう騒ぎになったのか……
レノの作ったミッションの概要の記されたファイル等をフォルダごと消去してしまい、怒り狂ったレノから逃げ惑っているらしい。
二人ともろくでもないことをしてくれるな、とセフィロスは溜息をつく。
まあ、おかげでクラウドの追求から一時的に逃れることができたといってもいいのだ……が。
ルーファウスのおかげでツォンの会議……これはセフィロスも関わっていた……が延びてしまったし、ザックスのおかげでレノが作っていた書類……
このミッションはツォンの言っていた会議でセフィロスが最終的にチェックすることになっていた……も遅れることになったのだ。
「にしても……ザックスの奴、出ないな」
延々と聞こえる呼び出し音に、セフィロスは溜息をつく。
「……どこに行ったんだか。仕方ない。クラウド、一旦帰るぞ」
セフィロスがそういってPHSを切った。
「ツォンさんのほうは副社長、掴まったかな」
セフィロスと同じようにルーファウスにPHSをかけているだろうツォンのことをクラウドがそう言ったときだった。
「英雄さん、ザックスいたか、と」
「セフィロス。先ほど運転手から連絡がありました。少し遅れることになりそうですが、ルーファウスさまは現在きちんとN社に向かっている最中らしいです」
と後方からそれぞれが声をかける。
97なにげない日常:02/03/15 08:55 ID:???
「じゃあ、残るはザックスだな」
セフィロスが溜息をついた。
「PHSは出んぞ。もっともあいつはあまり持ち歩いたりしないがな」
「……あのくそバカ、と。見つけたら一センチ四方に切り刻んでやる、と」
レノがそういって眉根を寄せた。
「にしても、どちらにしろその書類がないと話になりませんね。会議で使う予定だったし」
「ツォンさんもあのサル探してくれっ、と!大体、なにをどうやったらフォルダごと消去という恐ろしい事態になるんだ、と」
ぶつぶつというレノと、今度は会議について頭を悩まし始めたツォンと共にセフィロスとクラウドもセフィロスの執務室に戻っていく。
「仕方ないだろう。ザックスを見つけて、あいつに全部元通りにさせるんだな」
「あ、じゃあ、関連した資料とかもう一度用意しておいたほうがいいよね」
「甘いぞ、と。チョコボ頭!今度はあいつに一人でやらせるべきだぞ、と」
「それは困るぞ、レノ。急いで処理しないといけない仕事だし」
「そういえばその書類は処理案だけのものが一度俺のところに眼を通せと回ってきたな。あれが確か……」
「あ、それ、ちゃんとのけてる!黄色いファイルの中!」
「マジか、と。チョコボ頭!」
「はい。一応セフィロスのところに来た書類は全部コピーしておいてますから」
「うわ、めっちゃ助かるぞ、と!」
いつもどおり……いつもどおりのなんということない光景が治安維持部の廊下で繰り広げられる。
……が。
セフィロスの執務室の三度目の来訪者によって、この平和というか……なにげない日常の風景はことごとく打ち砕かれることとなった。
98なにげない日常:02/03/15 08:56 ID:???
「ん?なんか……泣き声が聞こえないか、と」
「……?」
レノの言葉にみなが眉根を寄せる。
「なんか……」
自分たちの足の向かう先……セフィロスの執務室の方からだ、とレノは言って首をかしげる。
「……なんか部屋の前にカゴみたいなのが置いてあるようなのですが?」
廊下の突き当たり、セフィロスの執務室の前まで来てツォンが扉の前にある大き目のカゴを見てそう言った。
「……しかも泣き声するぞ、と」
何だろう、とクラウドは駆け寄ると、
「……あれ?」
と首をかしげて、後方にいるセフィロスを振り返った。
「……赤ちゃんがいるよ?」
「……はあ?」
セフィロスが素っ頓狂な声を出す。が。
確かに。確かにそこには乳児がいた。
「……あ、マジ……ホンモノの乳児だぞ、と」
セフィロスの執務室の扉の前に、乳児の入れられたカゴ。
赤ん坊は真っ白なシーツにくるまれたまま大泣きをしている。
「うわ!な、何で泣いてるんだ?」
カゴを覗き込んだクラウドが、火がついたようにより一層の激しさを増して泣き始めた赤ん坊を見てあたふたとする。
「……ちょっと貸してください。おなかがすいてるかおしめかな?」
ツォンがそういって赤ん坊を抱え上げようとした。かつてルーファウスの世話でなれているせいか、意外にも堂に行った仕種だ。
が、赤ん坊は泣き止まない。
「だ、大丈夫かな?この子、病気とかじゃないですよね?」
ツォンと一緒に、赤ん坊にかかりきりのクラウドがおろおろとツォンを見る。
99なにげない日常:02/03/15 08:56 ID:???
「いえ、熱もないみたいですし……」
「ていうか」
レノが溜息をついて、セフィロスを見る。
「……そもそも会社にこんなガキがいるのも……もっと言うなら治安維持部にあまりにも似つかわしくない風景な上に……なんであんたの部屋の前にこんなガキが置かれてるんだ、と」
元々子供が嫌いな上に、子供の泣き声のうるささに辟易として耳をふさいでいたセフィロスが眉根を寄せる。
「そんなことはこっちが聞きたいくらいだ」
「まさかあんたの子だったりしてな、と」
レノがそういって、にっと笑う。
「バカを言うな、そんなへまをするはずないだろう。いいからその子供をまずどこかへ……」
セフィロスが全てを言い終わる前に、
「ぎゃあああああんっ!!!」
と怪獣のような叫び声を揚げて、子供が一層泣き叫ぶ。
「……〜〜〜〜〜」
四人とも、そのあまりの声の大きさに耳をふさぎかけた……が。
「……?あれ、ツォンさん。こいつが入ってたカゴになんか、紙が入ってるぞ、と」
レノがカゴの中にある紙切れに手を伸ばす。
「何か書いてあるのか?」
子供のうるささに辟易としたセフィロスが耳をふさいだポーズのままレノに問う。
「……え、あ……と」
レノは紙のある文面に眼を走らせた後、気まずそうにセフィロスと……そしてクラウドを見た。
「……『セフィロスへ。あなたにこの子を預けるので可愛がってあげてください』……とあるんだけどな、と」
「……っ?」
「え?」
「……おや」
名指しで呼ばれたセフィロスだけでなく、その場にいた全て……恐らく火がついたように泣き叫んでいる赤ん坊以外がぴしっと……それこそ氷つけにされたようにして固まった。
100なにげない日常:02/03/15 08:59 ID:???
 宇宙において───。
 星の進化の過程において、太陽よりも大きな超重量級の超巨星がその生涯を終えるときに、最後に大爆発が起こる。
 これは寿命によって恒星内部の核反応がなくなると、それによって生まれるエネルギーが生み出されなくなるからである。
 恒星自体の重力とエネルギーによる圧力のバランスのつりあいが崩れてしまい、星自身の重力による崩壊が起こる。
 このとき恒星内部は強く圧力を受けて圧縮されてしまうために密度が高くなり、想像を絶する超高温にとなってしまい、よって最終的に大爆発にと導かれる。

 これを超新星爆発……またはスーパーノヴァともいう。

 新星、という名とは裏腹に超新星とは星の最期を指し、ものすごいエネルギーによる大爆発を言う。
 このときに放出されるエネルギーは太陽の数億倍から数百億倍に匹敵する。
 またその多大なエネルギーは一気に放出されるので、まさに、想像だにも出来ない大爆発……もう手のうちようのない……周りの一切合切を巻き込みまくる、超……まさに超級に傍迷惑な大爆発といってもいい。
101なにげない日常:02/03/15 09:01 ID:???
多大なエネルギーを一気に放出しつつ、一気に何もかもを巻き込む。
しかも、華々しい。……というかこれ以上ないほど派手。
下手をしたら、破壊行動にと発展し、それすらも華々しすぎる。
そんなところが、クラウド君の怒りというのは、あの天体現象スーパーノヴァとよく似ているかもしれない。
と、まあそんなことをぼんやりとツォンは思い出していた。
まさに、いま、ここでそんな”周りを巻き込みつつも、その中身はというともう想像を絶することとなっているだろうが、とりあえずものすごい事になってそうだ”という超新星爆発並の大爆発まで後一歩という状況だ。
執務室になんともいえない、まさに一触即発の空気が漂う。
「ふえ゛〜〜〜〜ん゛。え゛〜〜〜〜〜う、う゛ーーー」
びくっとクラウド以外の誰もが、その声に震えた。
赤ん坊の声は、まさに起爆剤に思えたのだ。
だが、まだクラウドは静かなままで、爆発なんて起こしていない。
ほっと、ツォンは息をついて赤ん坊を見た。
「あーーー、と、その……おそらくは、一歳にも満ていないと思うのですが」
ツォンはそういうと、カゴに入ってぐずっている赤ん坊から視線を外す。
そして茫然自失のセフィロスと……恐らくは静かに……あたかも水が流れるように静かに静かに時を待つが如く怒っているクラウドを見る。
情けない……。
これが率直なツォンの感想だった。
だが、まあセフィロスに限らず、こういう時、男であれば誰でも……特に身に覚えがあるかもしれないような素行の悪さを今までに誇っているものならば誰でもこうなるだろう。
それくらい、セフィロスは茫然自失としている。
反対にクラウドはといえば……セフィロスと、その赤ん坊をじっと見ている。
奇妙な静けさが辺りを支配する。
なんとも気まずいその空気に、石を投げ入れたのは、クラウドだった。
102なにげない日常:02/03/15 09:02 ID:???
「この子、セフィロスによく似てるね」
にっこりと……この上なくにっこりと笑ってクラウドが言った。
その言葉が波紋を作るように、セフィロスが真っ青な顔のまま反論する。
「待て!俺の子供じゃない!大体どこが似てるというんだ?」
「だって、眼と耳も二つあるし、口と鼻も一つずつちゃんとついてるし、髪の毛もあるし」
「それは哺乳類の特徴だろう!」
クラウドの言葉はしかし……絶対に本気だ。
表情は笑っているのに、眼がちっとも笑っていない。
「というかこんな子供は知らないからなッ!俺は!」
「ふーん、この子かわいそうだね。父親に無責任なこといわれて」
「だから!!!!……確かに昔は多少なりとも遊んだかもしれないが……」
「へー、多少なんだ。多少……ふーん」
「いや……ホンの少し遊んだかもしれないが……だがいい加減に子供を作るような真似をするほど……」
「……じゃあこの子はいい加減に作られちゃったんだ……へ〜〜〜」
「……クラウド」
恐ろしいほど慌てふためいているセフィロスがそこにはいた。
今まで散々クラウドのおかげで”今までのセフィロスらしくないセフィロス”を目の当たりにしてきたツォンやレノだったが、今日はまた格別だった。
情けないというか、ダメダメというか……へたれというか。
そして、二人のやり取りに参戦するように、また再びカゴの中にいた赤ん坊が泣き喚く。
執務室は一気に混沌にと突き落とされたかのようになってしまった。
「セフィロス、いくらなんでもかわいそうですよ」
カゴから赤ん坊をツォンが抱き上げて、セフィロスに渡そうとした。
103なにげない日常:02/03/15 09:03 ID:???
「はい、パパですよー」
「あ゛ーーーー」
 赤ん坊は泣きじゃくりながら、セフィロスに手を伸ばそうとする。
「ほら、子供には罪はないんですから」
「お前はどっちの味方なんだ!言っとくが俺にだって罪はないぞっ!」
 だがセフィロスはそれを拒否して、首を振る。
「あ゛うーーーーー」
 途端に赤ん坊は悲しそうにまた泣きはじめた。
「よしよし。折角セフィロスに懐いているのに、残念だったね」
 ツォンは赤ん坊をあやしつつ、溜息をついた。
「……へーーこんなでも、カンかなんかで父親が解るのかな、と」
 レノが肩をすくめる。
「……〜〜〜〜〜〜おまえらな」
 確実に……確実にツォンもレノも自分の味方でないことだけはセフィロスにははっきりと解った。
 味方じゃないどころか、敵と言ってもいい。いやむしろ迫害者か。この二人の発言はそれをうかがわせる。
 いつもならば、全身全力で反撃に出るのだが……今はそれどころじゃない。
 はっと、セフィロスはクラウドを仰ぐ。
「……く、クラウド。落ち着け」
 後景に真っ赤な炎を見た気がした。
 超新星爆発レベルの怒りまでもう僅かだ。
「落ち着け?」
「……」
「セフィロスは、こういう時に、落ち着けって言われて普通に落ち着けるって思ってるわけ?」
 クラウドの声が尖る。
104なにげない日常:02/03/15 09:05 ID:???
「い、いや、だから……」
「今落ち着かないでいたら、一体、俺はいつ落ち着かないでいられるって言うんだ?ちゃんとTPOをわきまえた落ち着かなさだと俺は思うけど!」
「……それはごもっともですね」
ツォンがぽそっと呟いた。
だが、もっともいつもあまりTPOはわきまえていない気がするが……と心中のみで呟くのも忘れない。
「セフィロスなんか……ッ!」
きっとクラウドがセフィロスを睨む。
「やば!ツォンさん、避難警報だぞ、と!」
レノに言われて、さっとツォンは赤ん坊のカゴを抱えて、退避した。
クラウドがきれると、どうなるかなんて、付き合い上解っている。
クラウドが”キレた”状態にと過去に何度か遭遇しているが……まさにどれもこれも超新星級、スーパーノヴァといってもいいほどの大爆発だったのだ。
多大なエネルギーの放出と共に、周りの一切合切を巻き込む……それ。
「大ッ嫌いだ!」
「っ!」
大ッ嫌い攻撃と一緒に、分厚い書類のファイルがセフィロスの顔面にヒットする。
「ま、待て!」
「色情魔!」
「色じょ……ッ?」
辞書、パソコンのキーボード、時計、観葉植物……クラウドが座っていた机の上にあったありとあらゆるものがセフィロスに向かってとんでいく。
セフィロスはというと、それを避けてはいるが、明らかに何個かは彼の顔にヒットしていた。
105なにげない日常:02/03/15 09:07 ID:???
「……ツォンさん、止めなくていいのか、と」
「こういう時に手を出すほど、命知らずじゃない」
「……一回チョコボ頭のせいで、治安維持部崩壊しかけたけど、今回はどこまで行くかな、と」
「……セフィロスの執務室の崩壊程度ならば見逃すが……またあの大騒ぎはちょっと……ガラスや白熱灯の修理に今度は口実がつけられないというか」
クラウドの一方的な攻撃を見ながら、ツォンは溜息をついた。
「セフィロスなんて……別れてやる!」
「ちょっと待て……ッ!」
この時の、セフィロスの”ちょっと待て”というのは、クラウドの”別れてやる”発言に向けられたものなのか、それともクラウドが手にしていた大きな椅子が飛んでくるかもしれない恐怖によるものなのかどちらかは定かではなかったが……
「何の大騒ぎなんだい?またテロリストでも入ったかのようだよ?」
合図もなしに扉を開いた、ルーファウスの唖然とした言葉に、この混沌の世界は一瞬時を止めた。
106なにげない日常:02/03/15 09:08 ID:???
「副社長!」
椅子を抱え上げたまま……情けないが本気で真っ青になっているセフィロスに向けてそれを投げつけようとしていたクラウドが、ルーファウスを見て泣きそうな顔をした。
「……どうかしたのかい?」
ルーファウスがクラウドの表情に眉根を寄せる。
「……それがそのだな、と」
言葉を発した瞬間、泣きそうなクラウドの代わりに、レノが肩をすくめたまま、ツォンの足元にあるカゴを顎でしゃくるようにして指し示した。
「セフィ、ロスが〜〜〜〜〜ッ」
クラウドがもはや嗚咽混じりに、抱えあげていた椅子を下におろしてそれをぎゅーーっとしたまま、セフィロスを非難するように言った。
「……だから、俺には身に覚えがないといってるだろう!」
もはやこちらも泣きそうな有様だが……セフィロスも、必死に反論する。
「覚えがなくても、セフィロスに預けるって、子供のお母さんがカードに書いておいていったのは事実じゃないか!」
「だから……何かの間違いかもしれないだろう!」
「あれだけの状況証拠が揃っていて、どこをどう見たら間違いだっていえるんだ?」
「本当に、知らないんだ!記憶にない!」
「ダメな政治家みたいなこと言っても、ごまかされないんだからなっ!」
「だから、クラウド……落ち着いてちゃんと俺の話を聞いてくれ!」
「セフィロスなんて、このこと一緒に、女の人のところに行っちゃえ!」
ぎゃんぎゃんと喚く二人に、ルーファウスは、肩を落とす。
107なにげない日常:02/03/15 09:09 ID:???
「……というか、この子供を置いていったのは女性じゃないよ」
ルーファウスの言葉に、ぴたっとまた皆が固まった。
「だって、その子供をセフィロスの部屋の前においていったの、僕だし」
ルーファウスは、カゴの中でぐずっている赤ん坊を見下ろしつつ、しれっとして答えた。
「おい……お前だったのかっ?」
充分誤解を受けるような内容のメモを残していったルーファウスに、セフィロスは半ば殺意のようなものを抱いてしまった。
ルーファウスが書いた『セフィロスへ。あなたにこの子を預けるので可愛がってあげてください』というメッセージのおかげで、更に誤解が誤解を呼んで、セフィロスは散々だったのだから。
「一体なんだって、俺の部屋の前にこんなものを、あんなカードといっしょにおいて行ったんだ?何の嫌がらせのつもりだ?」
セフィロスは疲労も隠せないというような声音で呟く。
身に覚えがないとは言わないが……だが、あやうく大事になるところだったのだ。
セフィロスはだが、それよりも勝る安堵の息をついて、先まで泣きそうな顔をしていたクラウドのほうを見た。誤解がこれで解けたことを確信しながら。
が。
そこには、セフィロスの期待を裏切ったかのようにまだ先以上に顔を真っ青にしているクラウドと……そしてツォンがいた。
108なにげない日常:02/03/15 09:11 ID:???
「じゃあ、これって副社長の子供なんですか?」
「なんですってっ!!?ルーファウス様?」
「セフィロスに預けるって……じゃあ、セフィロスと副社長の……?」
「ルーファウス様、わたしはそんなことを聞いていませんよ!どういうことです?」
「ねえ、クラウド君もツォンも、ちょっと落ち着こうよ……」
ルーファウスが食って掛かってくる二人に唖然とする。
明らかに混乱している二人に、セフィロスはもう泣きたいくらいに真剣に頭が痛くなった。
クラウドもツォンも……今この段階では、セフィロスが認識している常識の範疇から大いにはずれた言動をしている。
「というか……常識で考えて、僕に子供が生まれるはずないだろう。男なんだから」
ルーファウスの言葉に、ツォンと……特にクラウドは思考を整理するかのように固まった。
それにはもう、たっぷりたっぷり時間がかかった。
「……あ、そっか」
「あ……」
そしてようやく二人が、まともな思考に行き当たったのか、納得したように呟く。
「……お前たち、どこまで本気だったのか知らないけど、ものすごくバカのようだったぞ」
セフィロスは小さく呟いた。……もうめちゃくちゃ心の底からの台詞を。
「……じゃあ、この赤ん坊は誰の子供なんだ、と?」
レノがぎゃんぎゃん喚いている子供を見る。
「案外まじで英雄サンの子供とかじゃないのか、と?」
「おい!」
先ほどの修羅場にと一気にかえっていけるような、とんでもないレノの言葉にセフィロスが顔を青くする。
109なにげない日常:02/03/15 09:13 ID:???
「ああ、実は、知らない女性が責任を取ってくれと神羅にやってきて、セフィロスに預けてくれ、といって僕に渡して……」
ルーファウスが神妙な顔で頷いた。
「っ!」
クラウドがまた、泣きそうな顔をした。
「ちょっと待て!俺はそんなへまはしない!……はずだ」
セフィロスが慌てて言い張る。もっとも最後は少し語尾が小さくなっていたが。
「副社長、ホントですかっ?」
「ルーファウス、冗談だろう?」
今にもセフィロスに引導を渡しそうな迫力のあるクラウドと、むしろ冗談であって欲しい、そうでないと困るといわんばかりのセフィロスに詰め寄られて、ルーファウスはおもむろに、息を、一つ吐いた。
「……実は」
ルーファウスの口調がやけにゆっくりと、そして表情が神妙になる。
誰もが次の言葉を待って、息を飲む。
が、ルーファウスはなかなか次の言葉を紡ごうとしなかった。
そして。
「冗談」
と、ややあ、とばかりに告げる。
「……」
「……」
一瞬、時が止まった。
110なにげない日常:02/03/15 09:17 ID:???
「……へ?」
「は?」
クラウドもセフィロスも、間の抜けた声で問い返す。
「だからウソだよ。冗談なんだ。心配しなくてもセフィロスの遺伝子なんてこの子供には入っていないよ。絶対に。アハハハ、よかったね、セフィロスのDNAなんて1%でも入っていたら、まともに育ちそうにないし」
ルーファウスは、嬉しそうに、それはそれは無邪気そうににっこりと笑う。
……むしろ無邪気さを装っているその表情に絶対的な邪気が漂っているのだが。
だが明らかに邪気があるといっていいその言動に……現在の余裕のないセフィロスはますます怒りの募らせた。
が……それ以上に疲労感にぐったりとしてしまう。
もう立ち上がる気力もないとばかりに、ソファに座ったセフィロスは自分の掌が冷たくなっているのに気付いた。なんとなく背筋にも嫌な汗が伝っている気がする。
「……」
あははは、とそれはそれは愉快そうに笑っているルーファウスに、覚えてろよとセフィロスは心中で毒づいた。
クラウドも気が抜けたのか、セフィロスの横に座る。
そして……ちょっと、困ったような表情で小さく「ごめん」と呟いた。
「いや……もういい……どうでも」
セフィロスは疲れきった、というかのように溜息をつく。
「……じゃあ、この子は一体誰の子なんだ、と」
レノの問いにルーファウスは、ああ、と頷いた。
「実は……」
111なにげない日常:02/03/15 09:18 ID:???
 ルーファウスは考え込むようにセフィロスを見る。
「……まあ、セフィロスとの血縁関係は僕が保証を持って否定してあげるけど、どっちにしろ、セフィロスに預けるのが得策かなと思うんだけど?」
「おい、言っておくが俺に関係ないなら、絶対にこんな災いの種なんて預からないからな」
 その途端。
 再び、ぎゃーーーと子供が火がついたように泣きはじめる。
 セフィロスはうるさい、とばかりに耳を指でふさいだ。
「チョコボ頭、パス」
 大音量に辟易しながら、レノがそういってソファに座っているクラウドに赤ん坊を預けた。
「ええ?」
 クラウドがワタワタと赤ん坊を受け取る。
 それは、いやにふにゃふにゃとしていて、クラウドの体温よりもかなり高かった。
「泣きやませろよ、と」
「そ、そんな俺に預けられてもどうしたらいいかなんて……ツォンさんの方が……」
 レノの言葉にクラウドは冷汗をかいた、が。
「……あう〜〜〜あ、ぶ」
 しゃくりあげながらも、だが明らかにクラウドの腕の中で赤ん坊は安心したように泣き喚くのをやめた。
「……」
「あぶ……だーーー」
 赤ん坊は涙をいっぱいためたまま丸まった掌をにぎにぎとし始める。
 そして、クラウドの服のちょうど胸の辺りを掴むようにして、指をしゃぶり始めた。
「……カワイイかも」
 ぽそっとクラウドが呟いた。
112なにげない日常:02/03/15 09:19 ID:???
「はあ?」
 セフィロスが素っ頓狂な声を上げる。
 明らかに人間というよりはサルに近そうな子供に「カワイイ」と言ったクラウドの顔は冗談なんていっているような感じではなかった。
 先まではその物体を巡って、自分に観葉植物や……あまつさえあたったら確実に危ないだろう椅子まで投げつけようとしていたというのにクラウドの顔は、その柔らかな物体にちょっと戸惑ってはいるようだが、それ以上にどこか愛しさのようなものが感じられた。
「……冗談だろう?」
「……あ、だって……その……あっと、それより、な、なんかみ、ミルクとか欲しいんじゃないのかな?おなかへってるとか……」
 セフィロスの言葉に、クラウドは慌てふためく。
「あ〜〜〜……どうしましょう?粉ミルクを買ってきましょうか?」
 ツォンが言う。
「粉ミルク……とかでいいんですか?」
 クラウドが赤ん坊を抱いたまま首をかしげた。
「……そりゃこの場にいる誰も、母乳なんて出ませんし。粉ミルクで代用するしか……」
 全くもって正しいツォンの切り返しに、ルーファウスは嘆息しながら、
「ほら、こうやってクラウド君も母性に目覚めている事だし、やっぱりセフィロスに預けた方がいいと思うんだけど?」
 とセフィロスを見た。
「冗談じゃない」
 辟易、というようにセフィロスは呟いた。
 確かにクラウドは、自分の腕の中にいる”物体”が気に入ったようだ。
 カワイイ、といったときのクラウドの顔は本気だったし、言葉も思わず洩れたという感じだった。
113なにげない日常:02/03/15 09:20 ID:???
 ルーファウスのいうように母性がどうこうとかいうのはともかくとして、このままだとクラウドも赤ん坊を預かるという事に賛成しかねない。
「お断りだ。そんな手間のかかる物体はうちでは飼わない」
「そんな!」
「……いや、飼うってその表現は適切じゃないかと……」
 色々と赤ん坊の事についてやり取りをしているクラウドとツォンが、セフィロスの言葉にセフィロスを非難するように見た。
「そんな!セフィロス!いいじゃん、ちょっとくらい」
「ダメだ」
「俺、ちゃんと面倒見るし!」
「……絶対ムリだ」
「そんなことない!」
「最終的に俺が餌を与えたりする事になるに決まっている」
「そんなことないもん!」
「いえ、ですからその表現は……」
 クラウドのセフィロスのやり取りにツォンは頭を抱える。
「だったらセフィロスはこんな小さい子をダンボールにいれて『拾ってください』って言うカードと一緒に捨てろとかって……そんなひどいじゃん!」
 だが、続いたクラウドの言葉に、ツォンは更に頭を抱えた。
「クラウド君……君の表現も、ちょっと……一応、人間の赤ん坊なんですが」
 赤ん坊を抱きしめたまま泣きそうな顔をしているクラウドにセフィロスはきっぱりと首を振る。
「ダメだ、元の場所に捨ててこい。この話はもうこれ以上話し合う余地はない。その物体だって飼いたいという奇特な家に行った方がいいに決まっている」
 セフィロスのきっぱりとした言葉に、クラウドはきっとセフィロスを睨む。
114なにげない日常:02/03/15 09:21 ID:???
「〜〜〜じゃあいい。俺もこのこといっしょに、飼ってくれるって人の家に行く。寒い道路にでもずっと立って、誰かが拾ってくれるの待つもん」
 この言葉に、セフィロスが今までとは打って変わって、掌を返したかのようになった。
「……待てっ!」
「……」
「話し合おう!クラウド」
「これ以上話し合う余地はないって言ったくせに」
「……〜〜〜〜百歩譲って、俺たちは、まだ充分に互いに冷静に話し合いに臨んでなかったと思う」
「……」
 この二人のやり取り……と言うかセフィロスの情けなさを見ていたルーファウスが溜息をつく。
「いや、でも僕もクラウド君の意見に賛成だな。飼ってあげてよ。まあ、道端に捨てる事はないけど、もといた場所っていうと、宝条のところになるし」
 ルーファウスはそういうと、クラウドの腕の中にいる赤ん坊の頭を撫でた。
「え?宝条博士の?」
「……おい、あいつのところからだと?まさかそのうち、翼が生えて巨大化した挙句、攻撃してくるなんてことはないだろうな!?モンスターは飼うつもりはないぞ!なんと言われても!」
 クラウドとセフィロスの問いに、ルーファウスはおもむろに口を開いた。
「んーーーー話せば長くなるんだけど……某人物は会社の用事で、今日N社に行かないといけなかったんだが、N社は余り元々経営サイドの態度が悪いので行きたくないので、そのまますっぽかそうかと、約束の時間になっても車には乗り込まずに、会社内をうろうろしていたんだ」
「……某人物とはあなたの事ですね?ルーファウス様」
 ツォンが冷ややかに言う。
115なにげない日常:02/03/15 09:23 ID:???
「……そして、まあ、仕事にうるさい堅物の側近が、うるさく探しているだろうという事を予想した某人物は……」
 だが、ルーファウスはツォンの皮肉は全く聞いていないとばかりに、あまつさえも皮肉までつけて、しれっとした顔で続ける。
「側近も見落とすだろうと思う、化学統括部門のフロアに行ったんだ。そこで……まあ、同僚のフロッピーを間違って消してしまって、その同僚に殺されんばかりの勢いで追いかけられているとかいうとある人物と顔をあわせたんだ」
「……とある人物とは、ザックスのことですか、と」
 レノが眉根を寄せた。
「まあ、二人とも利害が一致したので、大人しくそこに潜伏する事にしたんだ。相変わらずそのフロアの主はどうしようもないが、しかし面白そうなものばかりを……
言ってみれば研究費は勿体無いが、ただ純粋に面白おかしいものばかり、もっとありていに言えば役には立たないがマニアックなものばかりを研究開発していて……」
「……宝条の事だな?」
 セフィロスは相変わらずだな、というように溜息をつく。
「それで、まあ、ただただ潜伏しているのもつまらないので、フロアの主もちょうど手が空いていたので、あちこち案内してもらいつつ見て回っていたんだ。……が、もののはずみである試薬に行き当たったんだ。
某人物は、フロアの主の眼が離れた隙に、それを見ていたところ、手が滑って……とある人物の顔面にかかってしまい、どうも口唇についたそれを舐めてしまったらしいんだ……」
 ルーファウスは溜息をついた。

116なにげない日常:02/03/15 09:25 ID:???
「……まあ、そのとある反応が起こって今更ながらに試薬がとんでもないものだ、と気付いた某人物は、試薬によって変化してしまったとある人物を、まあ、彼の上司の部屋の前に置いて……逃げた、とはいわないが。
……まあ、フロアの主に預けっぱなしというのもさすがに気が引けたし……それにまあ、某人物も正直言って……とある人物が試薬によって変化したとはいえ、赤ん坊が苦手だったし」
「……え?」
「おい?」
「……”とある人物”が……赤ん坊に変化?」
「……って事はこれは、と」
 一同は眼を丸くして、クラウドの腕に抱かれている赤ん坊を見た。
 まさか、と思いつつ、今、先ほどルーファウスが言ったことを繋ぎ合わせてみれば、結論は一つしかない気がする。
 ようするに……。
 ようするにこれは……。
「……だあ?」
 クラウドともルーファウスのものとも違う色合いの青い眼に、黒い髪の毛。
 言われてみれば人好きしそうなその容姿。
「ザ、ザックスっ!!?」
「……冗談だろうっ?!」
「あ゛ーーーーーう」
117なにげない日常:02/03/15 09:27 ID:???
 つまり、N社への訪問をすっぽかそうとしていたルーファウスと、レノから逃げ回っていたザックスは盲点といっていい宝条のフロアを潜伏先に選び、そこで……
どうも宝条が関った何かの試薬を浴びてそれを体内に入れてしまったザックスが赤ん坊にとなってしまったので、困ったルーファウスはあのセフィロスを苦しめたメッセージと一緒に赤ん坊ザックスをセフィロスの部屋の前において、逃げるようにN社にといった。
とそういうことらしい。
 事の経緯を再認識したクラウドたちは顔を真っ青にした。
 冗談のようだが、眼の前には確かな現実がある。
「ちなみに、フロアの主、というか……まあ正直にネタを明かせば宝条に、一応対策は聞いたんだ」
 まだ呆気にとられている皆の耳に、続けて、まだまだまだ、とんでもない言葉が入ってきた。
「その……彼が舐めた宝条が作った試薬は、若返ってしまうらしい事はもう解っていると思うけど、その試薬はまだ開発途中のせいか、解毒剤はないらしいんだ。
いつ出来るかも解らないらしい」
118なにげない日常:02/03/15 09:33 ID:???
 事の発端となった研究室をルーファウスと共に訪れたセフィロスとクラウド
……とクラウドに抱かれている赤ん坊のザックスはあいも変わらず、マッドサイエンティストな研究室の主を見た。
 不気味にカクカクと揺れている、頬のこけた男。
 宝条だ。
 何が面白いのかさっぱりわかったものではないが、カクカクと揺れつつ笑っている。
「それで……いつ効き目が切れるんだ!」
「この神羅の誇る天才わしが作ったものだぞ?効き目が薄くなるなんてことはない、クックックッ……わしも見くびられたものだ」
「〜〜〜〜〜じゃあ、あくまで”自称”神羅の誇る天才とやらに聞こうか?解毒剤はいつ出来るんだ?」
「何しろその薬自体が、偶然の産物に近いもので、どんなに同条件下にしても二度と作れないものなんだ。
この薬は面白いからお遊び程度に、研究こそ続けてはいるがな。解毒剤は見通しすら経っていないのだぞ、クワックワックワッ」
「……お前の事を本気で殺したくなってきたぞ、おい!このヘボ三流科学者っ!!」
「何をおこっとる?良かったではないか、ひと舐めで。もっと体内に入れていたら、胚の段階まで逆行していたのかも知れんのだぞ?
全体的な不幸よりも、眼の前のささやかな幸福を見出す事が大切だとは思わんかね?」
「お前こそ、もう一回胎児にもどって、人生と脳内の構造をやり直せ!!!その方が世界人類のためだ!」
119なにげない日常:02/03/15 09:35 ID:???
 宝条の言葉にセフィロスは明らかな殺意が自分に宿るのを感じた。
 むしろ、先ほどの超新星級の怒りを見せたクラウドのように、この研究室のありとあらゆるものを破壊してやりたいという気持ちにさえ駆られた。
 正宗を気持ちのままに振り回して、この研究室を大破できたらどんなにすっきりするだろう、と本気で思う。
 ようするに。
 ようするに……ザックスは赤ん坊のまま元に戻る見込みが一向にない、というのだ。
「……まあ実際に、責任と取って、わしが預かってもいいがな。赤ん坊の面倒を見る事は得意だぞ?クワックワックワッ」
「ほら、セフィロスに預けた方がいいと思ったのも解るだろう?」
 ルーファウスがこれ以上ないほどの説得力を持った言葉で、セフィロスを宥める。
「くわっくわっくわっ……おお、よちよち、かわいいものだ、クックックッ……」
 クラウドの腕の中にいたザックスが宝条に”よちよち”と不気味にあやされて、ひくつきながら泣き声を上げる。
「……セ、セフィロス」
 クラウドもザックスを抱いたまま真っ青になっている。
「あ゛ーーーーーー」
 ザックスは泣きながら、しっかりとクラウドにとしがみつき、赤ん坊とはいえ宝条の恐ろしさがわかるのか逃げようとしている。
「ん?まだあやしがたらんか?ほ〜〜〜ら。べろべろばあ、だ〜〜〜あ、でちゅよ〜〜〜〜」
「う、う゛ぎゃあああああん!!」
「……う」
 べろべろばあ、にザックスだけでなくクラウドまでもが泣きそうな顔をする
120なにげない日常:02/03/15 09:37 ID:???
「……博士、それは僕も怖い」
 ルーファウスが小さく呟いた。
「……セ、セフィロス。俺、ザックスのこと好きだし、心配だし……」
「そうだよ、セフィロス……。ザックス君は……そりゃあ、いつもはお騒がせ男でもあるけど……
 いつもあなたたちの事を心配しているんだし、こんな姿になったからって放り出すのは人としてどうかと思うよ?」
 クラウドとルーファウスの言葉に、セフィロスは頭を抱えた。
「〜〜〜〜〜〜」
「ほ〜〜〜ら、もう一回……”べろべろばあ〜〜〜〜”でちゅよ〜〜〜。くわっくわっくわっ」
 更に追い討ちをかけるかのような宝条の言葉が続く。
「あ゛ーーーあ゛う゛ーーーーーーっ」
「セフィロス……」
「……」
 可哀想な事に……。
 もはや、セフィロスに選択権はないも同然だった……。

続きはまた後日。まだまだ続く。
……結構笑える。続きもよろしく。
122なにげない日常:02/03/15 22:55 ID:???
 いっそ、何かの衝撃が加わった瞬間、眼が醒めて……シーツに包まれて眠っているという事にでもならないだろうか。
 だが、これが現実なことはもう充分セフィロスは理解していた。
 大体、何かの衝撃が加わってこの現実感のない現実から抜け出せるのなら、彼は、倒れるまで頭にでも壁を打ち付けただろう。
「……」
 泣きたいのかそれとも現実逃避したいのか、もう何が何だか解らないというのがセフィロスの現状だった。
 なんだか足元が恐ろしいくらいにおぼつかないし、なんとなく眼の前が暗い。
 ひょっとしたら知識程度にしか知らないが、これは貧血という症状ではないだろうかとすらセフィロスは思い始めた。
 繰り返し流れている、童謡やアレンジされた柔らかなクラシックは耳の奥でかなり大きく反響して、頭痛がまさに嵐の如く巻き上がる。
 店内はどこもかしこもが、ピンクやブルーや黄色の薄いパステルカラーで仕立てられていて、なんだか情緒不安定になりそうだった。
 おまけにどことなく甘ったるいような匂いがする。もっとも、甘ったるい、といっても柔らかな甘さではあるが。
 どれもこれもに、セフィロスは……本気で眩暈を覚えた。
123なにげない日常:02/03/15 22:57 ID:???
 それは、空中に吊るされている音楽とと共にくるくる回る赤ちゃん用の商品を、ぼんやりと見ていたせいだけは決してない。
 絶対に、この空気自体が作用しているのだと思う。
 もっと言えば
 もうどうしようもないくらい所在無いような心地……。
 居心地の悪さ、というべきか。
「……」
 あれから……事情が事情なのでセフィロスもクラウドも、ツォンの勧めもあって急遽早退という形をとり、家の途中にあるベビーランドにと足を踏み入れたのだ。
 たまにウィンドウに映る自分の姿が眼に入る。
 会社帰りなので制服ではない。
 スーツとメガネをかけているが……それでも……それでも恐ろしくこの空間に自分が不似合いというか、”浮いているという一言で表されているのが解る。
 出来の悪い合成写真のようだ。
 自分はこの空間に絶対になじめないし、なじまない。
 浮いている。
 が。
「哺乳ビン、こっちの方がいいかな。うさぎがついてるし、かわいいし!ねえ、こっちにしようよ!」
 傍にいるこの存在は、全くもって不思議な事にこの空気にと馴染んでいるというか、溶け込んでいて違和感がない。
124なにげない日常:02/03/15 22:59 ID:???
 なんだって同じような立場にあるくせに……つまりはこんな場所に縁がないくせに、
 この空間にこんなにも容易く溶け込んで風景の一部の如くなじんでいるのか、セフィロスはクラウドを見ていて本気で問うて見たくなった。
 なんともいえないが、何が一体どうなってお前は違和感を感じさせないんだ、と。
 大きな、丈がくるぶし辺りまであるファーのついたフード付きの真っ白いコートを着たクラウドは、セフィロスから見たらかなり……
 いや、絶対に楽しげに商品を物色している。
 店内入口にあった子供用のベビーカーではザックスが穏やかな寝息を立てて眠っているし、
 少なくとも自分以外はこの空間にしっくりきていることをセフィロスは十二分に理解していた。
 ようするに自分ひとりが浮いていて、更に居心地の悪さを強めてくれる。
 所在無い、そして……なんとなく疎外感のようなものすら感じながら、セフィロスは溜息をつく。
 クラウドが押しているベビーカーとは別に、セフィロスはカートを押している。
 絶対に自分には縁がないと思っていたものばかりが散々詰め込まれたそれは、眼に入るたびに、セフィロスに溜息をつかせる。
125なにげない日常:02/03/15 23:01 ID:???
 大体。
 大体、悪いのは、宝条で、そして……宝条の実験室になんて入り込んで試薬なんかを手にしたザックスなのだ。
 自分が責任を持つことはない。
 ここまで精神的な苦痛をおってまで、何とかしてやる事はない。
 だが。
 だからといって宝条にザックスを預けておくには、セフィロスにとってクラウドと同じように、ザックスは大切な存在だったといってもいい。
「後、粉ミルクと……えーと、それから服だって必要だよね?あと毛布と……よだれかけとかいるのかな?あ、紙おむつってどのくらい買ってたらいいんだろう」
 ショッピングカートは、時間に比例するかのようにベビー用品が積み重なっていく。
 絶対に……絶対に自分とは縁がなかったと思われるこの手の種の店を歩きつつ、カートを押すセフィロスの顔色はこの上なく悪い。
「あ、こういうのもいるのかな?」
 ツォンにとりあえず必要なものなどをメモしてもらったクラウドだが、それ以外のものにも充分心を奪われて、この店での買い物を満喫している。
126なにげない日常:02/03/15 23:02 ID:???
 クラウドがセフィロスに差し出したものは離乳食だった。
「離乳食なのに麦茶とかウーロン茶まである?あ、シチューとかも」
「味が薄くしてあるんだろう」
「なんで?シチューとか俺たちが食べてるのでいいじゃん」
「乳児の胃には負担が大きいからじゃないのか?」
「……よく解らないけど、いつごろこういうのって食べ始めるのかな?」
「適当に自分から食べるとか言い出すんじゃないのか?」
「そうなのか?」
「さあ、言葉を話し始めるとか、歩き出してからとか適当でいいだろ。それにこいつの事だから、そのうち、肉や魚をくれとか自分で言い出しそうな気がする」
 セフィロスは、溜息をついた。
 考えてみたら……この赤ん坊になったザックスを預かるという件に乗り気なクラウドに、決してこの件に関して絶対的に不可欠な知識があるとは思えない。
 というか、皆無に違いない。
 クラウドが一人っ子だった事はいつだったか聞いた事がある。
 おまけに、自分だって、こういったことは不得手だ。
 大体、マテリアの種類や兵法の知識は自分にとって必要だが、「離乳食はいつから始めるか」なんて不必要、もしくは無用としか言いようのない知識だ。
 だから当然……この件に関して必要不可欠な知識はセフィロスもない。
127なにげない日常:02/03/15 23:03 ID:???
 ……なんだって俺が知識も縁もない乳児の世話をしないといけないんだ?
 セフィロスは今日、何度目か解らないそんな言葉を心中に呟きながらも、
 仕方ない、というように溜息をついて、どこかで知識を仕入れるしかない、と、そう諦めの感情と共に考えた。
「どうかした?」
「いや……なんでもない」
 セフィロスは溜息をつきつつ、ふっとあるコーナーに差し掛かった。
 それは、育児雑誌などが大量に置かれているコーナーだった。
 仕方なく、本当に仕方なく……セフィロスはその一つに手を伸ばす。
「セフィロス、じゃあ俺、これレジに持って行ってくる」
「解った」
 相変わらず眉根がきつく寄っていてかなり嫌そうな顔のまま雑誌ををめくり始めたセフィロスに、
 クラウドはザックスの乗ったベビーカーを預けると、カードを受け取って大量にベビー用品が乗ったカートを手にし、レジにと向かう。
 セフィロスはなにげなしに、ぱらぱらとページをめくっていたが、やがて、ますます眉根を寄せて、ある記事を嫌に真剣にと眼で追いはじめた。
128なにげない日常:02/03/15 23:05 ID:???
初めての育児 :::離乳食はいつ頃から与えたらいいのかしら?:::
 赤ちゃんは大体、5ヶ月くらいから離乳食を食べ始めます。
 遅いからといって、不安がる事はないのですよ?赤ちゃんたちにだって、個人差があるんですからね。
 何ヶ月、といわず、お父さんやお母さんがお食事をしているときに、赤ちゃんが食事中に口をもごもごし始めるならば、初期の離乳食を用意してあげましょう。
 大体お米を10倍の水で煮ておかゆを作ってあげましょう。液体に近いくらい、トロトロに煮てあげましょう。
 初めはスプーンに一杯二杯くらいしか赤ちゃんは食べません。徐々に量を多くしていくのです。
 もっとも初めは一口だってかもしれません、初めて固形物を口にするんですものね。
 時間をかけて作った離乳食をなかなか赤ちゃんが食べないからといって、怒ったりしちゃダメですよ?
 難しいかもしれませんが、あくまで楽しく、そして愛情をもって接する事が大事です。
 お粥も、慣れてきたら米の比率を増やしてください。
 また、野菜のスープなどは、野菜をきちんと裏ごししてペースト状にしたものを使いましょう。
 たんぱく質は初期離乳食では植物性たんぱく質のみにしておきましょう。赤ちゃんのデリケートな胃には白身魚などの動物性たんぱく質などはまだ早いのですから。
129なにげない日常:02/03/15 23:06 ID:???
 これらの記事を見たセフィロスは、顔を青くした。
 離乳食は言葉を話し始める辺りか歩き始める頃からだろうと思っていたが、とんでもない。
「……」
 だが、こんな知識ははっきり言って、はじめて知るものなのだ。
 ”ぴよこくらぶ”と書かれた雑誌に、書いてある様々な情報にセフィロスは顔を青くした。
 絶対に、この手の知識がこれから必要になってくる事は眼に見えている。
 たまたま開いたこの、たった1ページに眼を通しただけで、こんなにも眩暈がするのに……俺は今からどれだけの事を知識として頭に入れておかないといけないんだ?
 冗談じゃない!
 なんだって俺が、こんな知識をすすんで取り入れないといけないんだ?
 セフィロスは心中で思いっきり毒づいたが、しかし……溜息を一つ代りについて、この雑誌を購入する事に決めた。
130なにげない日常:02/03/15 23:07 ID:???
 他にも「食べた後は縦だっこをしてげっぷをさせる」とか、「一ヶ月過ぎた辺りからミルク以外のお茶、二ヶ月辺りから果汁などを飲ませてみる」とか、
 「離乳食には初期中期後期がある」とか、その他もろもろ知らないことばかりが、雑誌には掲載されている。
 どう考えても、この手の雑誌の購入は必要だった。
 だがまた、違う雑誌を取って、同じ離乳食に関する項目を読んでみると、今度は離乳食は生後何ヶ月から始める、という記述はしてないのだ。
 体重が7キロあたりではじめる、とそう書かれてあるのだ。
 セフィロスはすっかり混乱してしまった。
「どっちが正しいんだ?」
 セフィロスは顔を青くしてから、とりあえず、ベビーカーで眠っているザックスの体重を確かめようと、手を伸ばした。
「あ゛ーーーー」
 だがザックスはむずがる。
「……」
 セフィロスはしばらく考えた後、ザックスにもう一度手を伸ばして体重を計ろうとした。
 ふにゃふにゃとしたような声でザックスはそれを嫌がる意志を伝えようとするが、だがセフィロスはそれを聞かなかったふりをして、ベビーカーからザックスを出す。
「あ゛ーーーーーーう」
「いいから大人しくしていろ」
「うぎゃう〜〜〜〜〜」
「……おい」
 普通に考えてみれば、大人しくしろといわれて、今の状態でザックスが大人しくするはずなんてない。
 だが、セフィロスは大人しくしろ、といったのに泣きはじめたザックスに、なんと言っていいか解らずに、眉根を寄せたまま舌を打った。
131なにげない日常:02/03/15 23:08 ID:???
「あ゛うーーーーーんぎゃーあああああーーーーん〜〜〜〜〜」
 そして……ザックスがとうとう本格的に泣きはじめた。
「……お客様」
 にっこり笑った男性に、クラウドは声をかけられた。
「はい?」
 制服なのだろう。黒いスーツを着た中年の男性店員が、商品とクラウドを見比べつつ、そう切り出した。
 にっこり笑ってはいるが、内心はかなり不審がってはいる。
 性別がいまいちつかめないような容姿はともかくとして……どうも年齢に引っ掛かりを覚える。
 もっともクラウドも容姿に加え、まだ年齢が年齢だからなのか、他人から見たら性別が解りにくいのではあるが。
「その失礼ですか……」
 ニコニコと笑みを絶やさないままに店員が問う。
「はい?」
「……どちらかに贈り物でしょうか?」
「……?いえ、全部うちで使うんですけど」
「うちで、と申しますと……」
 店員の笑みが段々とほどけてきた。
「お客様のおうちで、でしょうか?」
「そうですけど?」
 店員の……なんともいえない不思議そうな顔に、クラウドも不思議そうに答える。
 もっともクラウドは店員のこの態度が何ゆえか全く解らないからなのだが。
132なにげない日常:02/03/15 23:09 ID:???
 が、きょとんとしたその仕種はますますクラウドを幼く見せた。
 だから、ますます、店員は不思議そうな顔をする。
 だがまあ、それももっともではあった。
 セフィロスが先ほど思ったように、クラウドは何故かこの手の店の空気には違和感なく溶け込んでいる。
 が、しかし、どう見てもまだ、子供にしか見えない。
 そんなクラウドが、こんなに……しかも実用的な紙おむつや粉ミルクやその他もろもろの大量のベビー用品を購入するのは、店員サイドからしてみたら、不思議としかいいようがなかった。
 だが、店員は再びニコニコと営業スマイルを浮かべつつ、問う。
「おうちで、お母さまに、弟さんか妹さんがお生まれになったとか?」
「いえ?」
 また段々と店員の笑みはほどけていった。
 段々と、とある疑念が湧いてくる。
 つまり……眼の前のこの子供が親なのか、とそんなことを考えたのだ。
「……失礼ですが、お客様はお一人でご来店でしょうか?」
「違いますけど」
「誰かお連れさまと?」
「はい、えーと……」
 クラウドがそういっているときだった。
133なにげない日常:02/03/15 23:11 ID:???
「あ゛うーーーーーんぎゃーーーーー〜〜〜〜〜」
「……ザックス?」
 ちょうど、セフィロスに体重を計られようとしていたザックスが、大泣きする声を聞いて、クラウドは振り返った。
 すいません、と一言残して、カートはそのままにそちらにと向かおうとした、が。
「あ、セフィロス」
 眼の前に子供を片手に俵抱きにして現れた相手に、クラウドはほっと息をついた。
 だが、
「……ッ?」
 店員は眉根を寄せたまま、固まってしまった。
「おい、このうるさいのを何とかしてくれ。鼓膜がいかれる」
 セフィロスが眉根を寄せて、ザックスをクラウドに渡す。
「わっ。もうちょっと丁寧に扱わないと!」
 クラウドはセフィロスから渡されたザックスを横抱きにするようにしながら、溜息をついた。
 泣いたせいか、瞼がはれ上がっているザックスを見て、クラウドはよしよし、とあやしつつ、瞼にちょん、と口唇をつけた。
 ザックスはクラウドに気付いたのか、小さな手を伸ばしてクラウドに抱きつこうとするようなポーズをとる。
134なにげない日常:02/03/15 23:12 ID:???
「にしても、びっくりした、いきなりザックスの泣き声が聞こえるし」
「んぎゃああああああん〜〜〜」
「……びっくりしたのはこっちだ。何だってこいつはこんなになってまで聞き分けが悪いんだ?」
「う、うええええええええ」
「……?なんかあった?」
「ひ、あ、あうううううううーーーーー」
「別に」
「え、ええええーーーーーん」
「どうしたんだろう。おなかが減ってるとかかな?早く家に帰った方がいいっぽい?」
「ひ、っく、え……え、え」
「ザックス、もうちょっと待とうね」
「え、え……えう〜」
 ようやくまた落ち着いてきたザックスに、セフィロスはまだまだきつく眉根を寄せたまま、溜息をついた。
 一方。
 店員は……真っ青なまま固まってしまったままだった。
 大量のベビー用品を前に、質問に対して、クラウドが”うちで使う”とか”弟や妹のでない”というようなことを言った時には、随分と若いが……まさかこの若さで妊婦ではないだろうと、そう思いつつそんな疑念を抱いていたのだが。
 眼の前にザックスが現れた瞬間、その疑念の真偽は晴れた。
 彼にとって、先ほどクラウドに抱いた疑念は、ある意味間違っていてある意味正しかったという事になる。
135なにげない日常:02/03/15 23:14 ID:???
 なぜならば、この店員にしてみたらクラウドは、どうみても……この光景ではどこをどうどう見ても、泣いている赤ん坊の母親にしか見えない。
 ……もっとも充分クラウドも、店員から見たら子供にしか見えないのだが。……まあ、実際に年齢も子供なのだから……
 どう見ても年端の行かない子供が親になっているというようにしか受け止められないのだ。
 だが、それ以上に……
「……」
 店員は、セフィロスを見て、パカっと口をあけた。
 どう見ても……どう見ても、歳が離れすぎているようにしか見えない。
 が、この状況では店員は、眼の前の三人が家族関係にあり、血縁関係にあるのだろうという結論しか導く事が出来なかった。
「は……ハンザイなんじゃ……」
 そして、あまりの事に、心中に思った言葉は思わず、口から洩れてしまった。
 どう見ても歳が離れすぎている上に子供にしか見えないクラウドと、そして……まあ店員の勘違いではあるがその赤ちゃんにしか見えないザックス……
 二人のおかげで、充分に、この店員にとっては、セフィロスはこれ以上ないほどの犯罪者のようにしかうつった。
136なにげない日常:02/03/15 23:15 ID:???
 ザックスをあやしているクラウドには聞こえなかったのだろうが、セフィロスは思わず洩れた店員の言葉を聞いて眉根を寄せた。
 が。
 この状況で自分がどんな誤解を受けるかなんて、セフィロスの方がよほどよくよく解っていた。
 もう疲労も限界まできているのか、馬鹿馬鹿しすぎるからなのか……訂正する気にもならない。
「ついでにこれも頼む」
 セフィロスは、そういうと、持っていた大量の雑誌をカートにと入れた。
 ぴよこくらぶ。
 こんにちは赤ちゃん。
 初めての育児。
 離乳食のバリエーション
 あかちゃん119番!!
 どれもこれも、そういう系統の雑誌だ。
「あ、は、はい。あ、ありがとうございます」
 我に返った店員が、その誤解を確信にと変えたのは言うでもなかった……。
へたれ英雄ワロタage
138:02/03/15 23:40 ID:???
>89-136
ぐはぁっ(吐血)




…ここにこんなブツがあるとはビクーリしました。なんか恐くて全部読めないです。
お子様が見ても教育上問題無しデスか。恐いよーママー!!
139民明:02/03/16 07:46 ID:???
ツォンがそういって赤ん坊を抱え上げようとした。かつてルーファウスの世話でなれているせいか、意外にも堂に行った仕種だ。

おまえ、年いくつだよ!?
>>138
多少クラウドが吐く血ですがそうゆうものと割り切って読めばわりと面白いモノです。
エロ無しだし。
140なにげない日常:02/03/16 09:10 ID:???
「首はすわってるし、勿論自分でじゃムリだけど、座らせる事も出来る。1歳には満ちてませんが、確実に離乳食の時期ですね、これは」
「じゃあ、食事は離乳食とミルクで?」
「そうですね、んーー歯茎も結構硬くなっているし、もうすぐ歯も生えるかな?もう一人で寝返りがうてる頃かもしれないから、ハイハイをして”後追い”も始るかもしれませんね」
「あ、じゃあ、床にアイロンとか置かないようにしないと」
「……」
 この眼の前の光景は決していつもの”日常”からは、かなり遠く離れた場所にある。
 いつもなにげない日常が展開されるここセフィロス宅では、現在セフィロスにとって、異様な日常が繰り広げられていた。
 セフィロスはなんともいえない気分で、雑誌に眼を落とす。
 が、眼の前の余りに珍しすぎる光景に、思わず眼を上げては、また雑誌に眼を落とす、の繰り返しだ。

141なにげない日常:02/03/16 09:11 ID:???
「今のでおしめのかえ方はわかりましたね?大体、三日でワンケース無くなるから、まだまだ買っておいた方がいいかもしれませんよ?大体スーパーの特売などのときにまとめて買い込んでおくとか」
 案外所帯くさいことをツォンが言う。
「はい」
 が、クラウドは結構真剣だ。今にも今朝の新聞の折り込みチラシなどをチェックしそうだ。
「オムツとかは気をつけないと、すぐかぶれてしまうから、ウェットティッシュやローション等も使ってあげてくださいね」
「はい」
 どう見てもクラウドは不器用だ。
 それに比べて、ツォンは元々器用だからか、すいすいとこなしていく。
「それから、お風呂は……うーん……ちょっとクラウド君じゃ難しいかな?結構力がいるし」
「あ、子供用の浴槽かってきました。後、アヒルちゃんとか!如雨露とかも」
「ならまずはそれで、大体こんな感じで……」
「一応ローションとかベビーオイルとか、赤ちゃん用の買ってきましたけど。パウダーとかもありますよ」
「お風呂から上がった後に使いましょう。湯冷めしないように室温に気をつけて。手早くしないと風邪を引いてしまいますし」
 アヒルちゃんや、如雨露や、お湯にふれると温度差によって色の変わるヌイグルミや……決して必要品とはいえないものまでもが所狭しと、小さな浴槽の周りに広がる。
142なにげない日常:02/03/16 09:13 ID:???
「んーーー、でも、湯冷めするって言っても、エアコンの風が直接あたらない方がいいですよね?」
「そうですね。だから、部屋をあらかじめ暖めておかないと。
 そして暖かい日にはゆっくりとローションでマッサージなんてしてあげてもいいと思いますよ?」
「はい」
「それから後はミルクかな。ああ、それから哺乳ビンは滅菌はまめに、きちんとしてあげてくださいね。それから大体ミルクは人肌くらいで」
「人肌って大体これくらいです?」
「そうそう、ミルクを与えるときは横抱っこをして、「ヨシヨシ」とか「イイコイイコ」とかいいながら、おちついて」
 クラウドが色々と動き回る横で、ツォンが指示を与え始める。
 段々と、クラウドも慣れてきたのか、先程よりはまだてきぱきと動いているほうだ。
「手伝わなくていいのかい?セフィロス?」
 ソファに座ったまま呆然としているセフィロスに、紅茶を優雅に飲んでいたルーファウスが問うた。
「……〜〜〜〜〜〜いっておくが俺は、お前のところの犬と違って子育ては不得手なんだ」
「ふーん……理解のない父親で赤ちゃんもかわいそうに」
 やれやれ、というようにルーファウスが溜息をついた。
「おい、何の嫌がらせのつもりだ?あれはザックスで、俺は……」
「最近じゃ、子育てに不協力なパパは、ママにも愛想をつかされて、嫌われるんだって聞いたよ」
 しれっとした顔で言ったルーファウスに、セフィロスは頭を抱えた。
「……〜〜〜〜〜〜〜あのな」
「ホントだろ」
 ルーファウスの言葉に、セフィロスは苦い顔で、紙面に眼を落とし、そして更に深く息をついた。
143なにげない日常:02/03/16 09:14 ID:???
初めての育児 :::新米パパさんたちへ:::
 パパたちは、「子育てなんて出来ない。そんなのママの仕事だ」なんて思ってはいませんか?
 ママはおなかを痛めて生んだ子だから、赤ちゃんがかわいくてかわいくてどうしようもないです。
 それとは反対に、確かに、パパたちは自分がおなかをいためて生んだ子供じゃないんだから、パパになった実感なんてないデスよね?
 残念な事に、新米パパの中には、自分の子供に思えない、なんてパパもいるようです。
 赤ちゃんが自分の”知らないモノ”に見えてしまったり、ママをとられてしまって、寂しくて、ついつい赤ちゃんによそよそしいパパに、あなたはなっていませんか?
 でも大丈夫。
 あなたはパパなのです。
 パパになった実感……それはホンの些細な事でやってきたりするものなのです。
 しかし、だからなのでしょうか?世の中のパパたちはママに子育てをまかせっきりになる傾向が多いです。あなたは違いますか?
 ママだけの赤ちゃんじゃない、パパの赤ちゃん、二人の赤ちゃんなのです。
 二人で協力して、赤ちゃんと大事に大事に育てていきましょう。
 何も子育てに協力するからといって、ママのようになることはないのです。
 パパが出来る、パパの子育て、というものもあるはず。
 例えば、赤ちゃんがミルクを飲んだ後に、げっぷをさせるときは、縦に赤ちゃんを抱いてあげてから背中をさすってあげますね?これは力のないママには結構大変なのです。
 そして、お風呂も大変重労働です。
 一緒にお風呂に入って、赤ちゃんとコミュニケーションをとってあげたりなどしながら、パパも子育てに参加しましょう!!
144なにげない日常:02/03/16 09:16 ID:???
 と、そこまで読んで、セフィロスは雑誌を閉じて、溜息をついた。頭がくらくらしてきたのだ。
 この文章はセフィロスにとっては、大層な破壊力を有している。
 ……異次元。
 まさに異次元なのだ。他に言葉なんて見つからない。
 誌面上だけでなく、異次元が眼の前で展開されている。
 この上、俺にザックスにミルクを与えたり、風呂に入れたりしろとか言うのか?
 おい、冗談じゃない!
 視界に、こんな謎の物体が入るだけでも、言葉がない俺に?
 セフィロスは冷汗をダラダラダラダラと流す。
 絶対ムリだ。ムリに決まっている。
 大体……この手の雑誌に書いてあることの殆どが意味不明なのだ。
 だからなのかどうなのか……セフィロスには、眼の前のクラウドの現状とやらもちっとも理解できなかった。
 この雑誌を引用するならば、クラウドだって、”自分がおなかをいためたわけじゃない”のになのに……まるで本当の親の如く、ザックスにかまけている。
 だから、ザックスを抱いている……クラウド自身にはちっとも違和感がない。
 が、その背景が自分の家のリビングだというのは、何かのたちの悪い冗談のような気がしてならなかった。
 まるで、出来の悪い合成写真のようなその光景は、はっきり言って悪夢のようだ。
145なにげない日常:02/03/16 09:17 ID:???
 だが、現実問題としては、いつものリビングは、あっという間に全く何がなにやらの異次元にと変わってしまっている。
 どんなに振り払っても、これは消え去る悪夢ではない。
 これが現実だ。
「ヨシヨシ、ザックス……イイコイイコ……」
 クラウドはそういいつつ、おっかなびっくりというようにザックスを横抱きにして哺乳ビンをくわえさせようとする。
「ふや゛〜〜〜ん……?あうーーー」
「つ、ツォンさん、ザックスミルク飲みませんーー!!!」
「落ち着いて。大丈夫、もうおなかがすいている頃だから飲みますよ」
「だって……」
「ほら、そんな顔をしていたらザックス君だってびっくりするでしょう。まずはクラウド君がリラックスして、にっこり笑いながらミルクを与えてあげてください」
「こう見ると……ツォンさんが、パパに見えるぞ、と」
 レノがぼそっと呟く。
 が。
「……と、なんでもないぞ、と」
 むっ、と面白くなさそうな顔をしたルーファウスに、慌てて咳払いする。
 だが、事実、セフィロスにもツォンは、先ほど読んでいた雑誌に書いてあったような”よき父親”そのままのように見えた。
 もっとも……ツォンはクラウドに、基本的な育児というものを指南しているだけなのだが。
146 なにげない日常:02/03/16 09:22 ID:???
 また、セフィロスは眼の前の光景に頭を抱えた。
 やはり現実感のない現実感に、溜息しか出てこない。
 冗談のような冗談でない展開が眼の前で起きていて、眼の前が暗くなるような……それでいて確実に眼が醒めるような、そんな心地だ。
 なんだか今日一日の出来事を、もう一度反復しなおした今ですら、セフィロスには、眼の前でクラウドがザックスにミルクを上げているのか、そして、そんなクラウドにツォンが育児指導をしているのかが解らなかった。
 自分でも情けない、とは思うのだが……。
 が、気を抜いたら、この現状の何もかもが解らなくなるのだ。
 しかし、このタークス主任ときたら、セフィロスが驚くくらいにこの手のことに関して手馴れていた。
 クラウドが何時間かけてもオムツ一つかえれなかったのに、このタークス主任と来たら、ほんの数分間のうちにザックスのオムツをかえ、風呂の準備をし、ミルクの用意、エアコンの風が直接あたらない場所にザックスのベット用のカゴをおいたりなんだりと…
…ともかく恐ろしいくらいに、この件に関しても有能さを発揮した。
 だが、もっとも、クラウドも、そしてセフィロスからしても、かなり助かったのだが。
 はっきり言って、自分だったらあそこまではやれなかっただろう、とそんなことを思う。
147なにげない日常:02/03/16 09:23 ID:???
 クラウドと、そしてこの混乱の原因であるザックスと共にセフィロスがようやく帰宅して数分後に、心配してやってきてくれたツォン……と恐らくは興味半分で見にきたのだろうルーファウスのレノ、と言うように、現在セフィロス宅はかなり人口密度が高い。
 そして……セフィロスからしたら”地に足がついていない”空気の濃度も。
 ……かなりとても高い。
 セフィロスはそんな異常な日常を眼の前に、もう何度目か解らないほどの溜息をついていた。
 が。
 突如、哺乳ビンをくわえていたザックスが、うえ、っと蛙が潰されたような声を立てて、ミルクを吐き出した。
「ツォンさん、ザックス、ミルク吐いた!!!病気なんじゃ……」
「い゛やい、やいやいーーーーーえ゛うーーーー」
「あーーー落ち着いて、吐いたって言っても、それは胃からじゃなくって、口に入れていたものを吐いただけですから。大丈夫ですよ」
「だーーーーあ、あ、え、えうーーーーー」
 すっかり泣きモードに入ったザックスに、クラウドが慌ててあやし始める。
148なにげない日常:02/03/16 09:24 ID:???
「おい、近所迷惑だぞ」
 セフィロスは余りにも大きい泣き声にそう言った。
「ごめん、だってーーーー!!!ザックス、どうした?なんかあった?」
 クラウドがあたふたしながら、ザックスをあやす。
「え゛ーーーええん」
「ど、どうしよう、わかんないよーーー」
 よりいっそう声を大きくして泣き出したザックスに、クラウドが困ったように涙をためる。
 いつもならセフィロスだって、クラウドがこんな表情をしていたら放ってなんておかない。
 だが、今日は事情が大きく違う。
 セフィロスは為す術もないまま、黙りこくってじっとその光景を……見ていた。セフィロス自身も困惑しているために、少々きつい眼つきで。
「案外、あなたの態度の悪さというかそういうのを感じ取って泣き喚いているんじゃないのかい?」
 ボソッとルーファウスがセフィロスにだけに聞こえるように小さく呟く。
 こちらは、といえば先ほどのレノの失言のせいで、ザックスに負けず劣らずに機嫌が悪いのか、完全にセフィロスに八つ当たりモードだ。
「僕から見ても、セフィロスの眼つきは異常に悪いくらいだし、子供が怖がるのも当たり前だよね」
「〜〜〜〜〜」
 セフィロスが溜息をつくのと同時に、またザックスが泣き声を上げる。
149なにげない日常:02/03/16 09:25 ID:???
「うぎゃああ、うぎゃあああん。あ、あああああん!!!」
 ザックスを抱いていたクラウドが怯むくらいのその大声に、ツォンが苦笑する。
「ちょっとご機嫌が悪いようですね。でも、こういう風に夜泣きをし始める事も珍しい事じゃないので、そんな顔をしなくてもいいですよ?」
 確かにツォンの言うとおり、泣き喚いているザックスよりも、よほどクラウドの方が泣きそうな顔をしている。
「だ、だって……〜〜〜〜〜〜〜」
「こういう時は、ご機嫌がなおるまであやすしかないですし」
 苦笑しつつ、ツォンはザックスを抱いていたクラウドの肩にと大きなショールをかけて、ザックスごと包むようにした。
「ちょっと夜道を散歩してきたらどうです?そのうちにザックス君も機嫌が直るかもしれませんよ」
「ほ、ホントに?」
「ええ、その間にわたしは、風呂の道具とか色々と片付けておきますから」
 ツォンはにっこり笑いつつ、リビングの扉を開ける。
「僕もついて行こう。クラウド君だけじゃ心配だし」
 ソファに座っていたルーファウスが弾かれたように、ソファから立ち上がる。
 まだまだこちらの方こそご機嫌が斜めなのか、ツォンの傍を通る際に、ツンっとそっぽを向きながら、まだ泣き喚いているザックスを抱えて自分の方が困惑のまま泣きそうなクラウドの後に続く。
「……ってことは、俺が三人の子守り……いやいや、ガードだな、と」
 レノは溜息混じりにそういって、立ち上がった。
 ルーファウスの理不尽な態度に、唖然としていたツォンだが、
「……あ、ああ。じゃあ、頼む。夜道は危ないから。冷える前には帰らせてくれ」
 と、そういって、三人を見送った。
150なにげない日常:02/03/16 09:26 ID:???
 そして……そして大量のベビー用品と、表面上は不似合いなくせにだが、育児に慣れているのでメチャクチャその大量のベビー用品をバックにしても違和感がもはや感じられないタークス主任と……セフィロスが残された。
「……何か手伝う事があるか?」
 浴槽やアヒルや、その他もろもろの片付けにと取り掛かったツォンに、セフィロスが気まずそうに声をかける。
 落ち着いてみると、部屋中がなんだかミルクくさい気もしてきた。
「いえ、特にあなたの手を借りなくてもこちらは大丈夫ですよ?」
 ツォンはにっこりと笑いながら答えた。
「それよりも……」
 が、そう切り出したツォンの”にっこり”は先ほどと少し違っていた。
「もう少し、あなた自身も積極的に参加してクラウド君を手伝ったらどうです?」
「……ムリに決まってるだろう」
「ムリというよりは、あなたの方が敬遠しているように思えますけど?そんな……」
 ツォンはそう言うと、セフィロスが片手に持っていた雑誌を取り上げる。
「おい!」
「ほら、”そんな”雑誌を読んでるわりには」
151なにげない日常:02/03/16 09:27 ID:???
「〜〜〜〜〜〜〜〜」
 セフィロスが手にしていた雑誌……つまり育児雑誌を取り上げて、パラパラとめくりながら、にっこりと、この上なくにっこりと笑う。
 もう既に、セフィロスには反撃の手立てがないも同然だ。
「なんですか、そんなに顔を真っ青にして」
 ツォンは、セフィロスを覗き込む。
「何かわたしがこの雑誌を指摘して、まずい事でも?」
 それほどにセフィロスの顔色は、はっきり言って血の気もうせて蒼白だった。
「別に構わないと思いますよ。こういう雑誌も、初めての育児には必要と思いますし。ただ、理論的にこういう知識を取り入れたとしても、実行しないと意味はないとわたしは思いますが」
「〜〜〜〜〜あのな」
「はい?」
 ルーファウス曰く、”異常に眼つきの悪い”セフィロスの睨みなんてツォンにはきかない。
 というよりも、この間抜けすぎる状況だからこそ逆効果なのか。
 セフィロスがいくらきつい眼つきでツォンを睨んでも、ツォンはニコニコにっこりと、含みのある笑みを返してくるだけだ。
 クスクスと、セフィロスからしたらこの上なくいやな笑いをもらしつつ、ツォンは雑誌をパラパラとめくっていった。
 そして。
152なにげない日常:02/03/16 09:32 ID:???
「……しかし……これって、全部あなたの事みたいですね」
 ツォンは、先ほどセフィロスが見ていたページを見て、溜息をついた。
「本当にもっと育児に協力したらどうです?」
「……」
「まあ一生懸命なクラウド君には悪いけど、彼一人に赤ん坊を預けておくのはどうも無謀というかなんと言うか……とても不安ですし」
「……」
「どう思います?”新米パパ”さん」
 嫌がらせのように、雑誌に記されていた単語を口にして、雑誌を自分を交互に見ながらニコニコ笑っているツォンに、セフィロスは舌打ちをする。
「言っておくが、俺は父親じゃない」
「けど、母親でもないでしょう?……───〜〜〜〜何、変な事いうんです、変に想像してしまったじゃないですか」
「あのな」
 セフィロスはツォンの言葉に、溜息をついたが、
「元々、あの物体は……ザックスなんだぞ?」
 と、ツォンの切り返しに、セフィロスはそう返す。
 が、ツォンは「何を言っているんだか」と言うように……呆れの色の強い吐息を吐き出した。
153なにげない日常:02/03/16 09:34 ID:???
「血が繋がっていないと、家族じゃないというわけでもないでしょう?」
 ツォンはそう言うと、現に、と浴槽を壁に立てかけつつ言った。
「あなたにとって、クラウド君が家族のように」
「……それとこれとは違う」
「違いませんよ。たまたまザックス君が、事故で赤ん坊になって、あなたが預かることになった。やっぱりこうなると、この場合におけるザックス君の位置付けは、あなたの家族じゃないんですか?」
「……」
 セフィロスはバツが悪そうに、舌を打った。
 ツォンはそれを見て、クスクスと笑う。
 会社内で見る彼はいつもは理論的で、決して誰が相手でもやり込められるなんてことはないのに……プライベートで、特にこういうことに関してやり込められると、よくこういう態度を見せる事をツォンは知っているからだ。
「……にしても、あなたのほうこそ、子供のようですね、たまに」
「うるさい」
「大方、この記事どおり、クラウド君が、あまりにもザックス君にかまけているので、余計に面白くないんでしょう?」
「……そんなことはな……」
「……”そんなことは”なくはない、でしょう?」
 セフィロスに最後まで言わさずに、にっとツォンは笑う。
 セフィロスはもう反論の言葉を口にしなかった。
 今、何を言っても逆効果な事くらいよく解っているのだ。
 だが、黙り込んだセフィロスに、
「どうなんです?」
 と、ツォンが重ねて問うてくる。
154なにげない日常:02/03/16 09:36 ID:???
「……仮に、それが正しいとしても、だ」
 仮に、という部分をやけに強調してセフィロスがいう。
「……はい?」
「かわいいなんて思えるはずはないだろう」
「おや、どうしてです?血が繋がっていないから?」
「そういう問題じゃないだろ……バカらしい」
 まるで、昼のメロドラマのような事を聞いてきたツォンに、セフィロスは溜息をつく。
「あれはあんな格好をしているが、ザックスで……」
「それで?」
「元々俺は……こういう……事は苦手なんだ、どう対処していいかなんて解らない」
 なんと言えばいいのか、セフィロスにもよく解らなかった。
 ただ。
 今までクラウドと共有していたよりももっと……ある意味まだ濃度の濃い、”家族”という空気。
 まだ喋れもしない乳児がいるという家の空気。
 これは、自分が今までに一度も……自分自身がそうであった頃から体験した事がない空気だ。
 だから、戸惑ってしまう。
 馴染まない。
 ある意味、自分も警戒してしまうような心地になる。
155なにげない日常:02/03/16 09:37 ID:???
「仕方ないだろう。大体、解決策が見つかるまでは俺のところでなく、どこかの施設にいれた方がよっぽどザックスのためにも……」
 言いかけたセフィロスに、ポンっとツォンは雑誌を返した。
「バカな事を言っていないで、そこどいてください。その辺りに、ザックス君のオムツや服やなんかを置いておきますから」
 ツォンの言葉に、セフィロスは苦い顔をして……そして、溜息混じりに、ソファから立ち上がった。
「まあ、大丈夫ですよ」
 にっこり笑ったツォンに、なにがだ、とセフィロスが不貞腐れたように言った。
「わたしはあなたは結構マイホームパパタイプになると思っていますから」
「……はあ?」
「そのうち、かわいくなりますよ、ザックス君が。今度はそれこそクラウド君が拗ねる程度には」
 こう見えても、人を見る眼だけはありますから、といったツォンにセフィロスは眉根に深い皺が刻まれるほど顔をしかめた。
「とりあえずこの件が片付くまでは、あなたの出張を、キャンセルしますね」
「別に今までどおりで構わない。むしろ、逃げ出したくらいだ」
「本当にあなたも解らない人ですね」
 まるで拗ねたようなセフィロスの言葉に、ツォンは溜息をつくと、やれやれ、と小さく言った。
156なにげない日常:02/03/16 09:41 ID:???
 結果的に、夜の散歩から四人が帰ってきたあと、ザックスはミルクを少し飲んで寝てしまった。
 リビングで寝たザックスを見ていたクラウドも、さすがに疲れたのか、電池がきれたようにその場で眠ってしまい、ツォンやルーファウス、レノはセフィロス宅を後にした。
 セフィロスは仕方なく、クラウドにと毛布をかけ、バスルームにと向かう。
 昼間、ベビーランドでザックスを抱えたときに、ザックスがつけた涎のせいで、髪の毛がどこかパリパリしている。
 今からこんなめが続くのかと思うと、本ッ気でセフィロスは出張でもなんでもいいから逃げたくなった。
 だが。
 セフィロスはゆっくりと浴槽に身を浸す事も出来なかった。
 シャワーを浴び終えたところで、また……。
 また、ザックスの泣き声が聞こえたのだ。
 しかも……
「?」
 それが一向に小さくなる気配もなく、更に大きくなっていっている。
 セフィロスは溜息をついて、バスローブを纏い、リビングに向かった。
 そして、
「うや゛い、やい、ああああん!!!!」
 そこでは……ザックスがまた、この小さな体のどこにこんな力があるのだろうというほどの大声で泣き喚いていた。
157なにげない日常:02/03/16 09:43 ID:???
「……クラウド?」
 セフィロスはクラウドの名前を呼んでは見るが、信じられない事に、クラウドはこの大音響の中でもスース−と眠っている。
 恐らく、これでも眼が醒めないほど疲れているのだろう。
「うぎゃあああ〜〜〜〜〜ん、ああああん」
「あーーーうるさい!」
 セフィロスは指で耳栓をするようにしながら、溜息をついて、泣いているザックスを見た。
「う、え、ええっく、ええん、ええーーーーん」
「ザックス、いいから黙れ」
「え、えええん、えーーーーっく、えええん」
「……〜〜〜〜〜」
 言い聞かせても無駄な事など解ってはいるが、だが……セフィロスは初めて意思疎通が出来ない相手とのコミュニケーションを苦々しく思った。
 だが思ったところでどうしようもない。
 ザックスの泣き声は更にひどくなるばかりだ。
「全く……俺は本気でお前をどこかのちゃんとした施設に預けた方がいいと思うぞ、お互いのために」
「え゛ーっく、え゛ーっく」
 泣きすぎて、声がかれかけたザックスは、瞼も熱を持っているようにぽってりとはれてしまっていた。
 どこか、それは……それはクラウドを思わせた。
「……と言う事はクラウドの泣き方は乳児と同じか?」
 クラウドも、いつも泣くときは、声がかれるまでなくし、瞼が真っ赤にはれるまで泣く。
 こうなると、セフィロスにも手がつけられない。
 セフィロスは、疲れているせいで眠りこけているクラウドを見て、溜息をついた。
158なにげない日常:02/03/16 09:43 ID:???
 本人が聞いたらまた怒るだろうが、ザックスのこの泣き方はやはりクラウドの泣いている姿を思い出させる。
 そしてセフィロスは、溜息混じりにザックスの赤くなった瞼に触れてみようとする。
 が。
「あ゛ーー───」
「……?」
 触れようとしたセフィロスの指を、ザックスが取った。
 小さい手が、セフィロスの人差し指を握り締めて、にぎにぎとおぼつかないような仕種で、握りなおしたりしている。
「おい」
 セフィロスは眉根を寄せた。
「……離せ」
「あう〜〜〜〜〜?う?」
「ザックス」
 セフィロスが困ったように、顔をしかめてもザックスはセフィロスの指を離そうとしない。
 たった一本の人差し指を握り締めたまま、それを口に持っていった。
 よだれがついてしまい、セフィロスは眉根を寄せる。
 セフィロスはそれを振り払おうと思ったが……
「あうーうやい、やい……あーーーう」
「……」
 何故かそれが出来ずに、溜息をついてザックスを抱えた。
「うきゃ?」
「いいか、暴れるなよ?暴れて落ちても俺のせいじゃないからな。落ちて痛い思いをしたときは自分の聞き分けのなさを恨め」
 ムチャクチャな事をセフィロスは乳児に言い聞かせながら、哺乳ビンと、ミルクの缶を取った。
159なにげない日常:02/03/16 09:46 ID:???
”余りミルクを飲まなかったから、またすぐにおなかがすくかもしれませんから。泣いたらミルクをあげてくださいね”
 ツォンがそう言ったのを思い出して、セフィロスはザックスをそのまま片手に抱えるようにして、哺乳ビンやミルク缶を持ってキッチンへと向かった。
「きゃっきゃっきゃっ。うきゃあ〜〜〜〜」
 だが、何故かご機嫌のザックスは、セフィロスに片手で抱えられたまま、嬉しげな声を上げて、ばたばたと手足を動かす。
「おい、暴れるなといってるだろう?」
 セフィロスはミルク粉末の分量を量り、お湯を暖めた。
 そして、大体人肌になった辺りで、哺乳ビンにお湯を注ぐ。
「……」
 人肌、という温度が大体何度なのかを疑問に思いつつ、セフィロスはビンを自分の頬に当ててみた。
 熱くもなく冷たくもない……生ぬるいくらいだ。
「こんなものか?」
 と、そういいながら、リビングに戻ってソファに座り……ザックスを膝に置くようにして、横抱っこをしながら哺乳ビンをくわえさせた。
「いやい、や゛いーーーー」
「……食事じゃないのか?」
「あうーーーーーーー」
 セフィロスは眉根を寄せる。
 意志の疎通が図れないことは、はっきり言って……何も解らないし困る。
「あ゛うーーーー」
 先までは、機嫌よく笑っていたくせに、また今にもぐずり出しそうなザックスに、セフィロスは渋い顔をした。
160なにげない日常:02/03/16 09:47 ID:???
 すでにザックスの眼にはまた新しい涙が溜まっている。
「どうしろというんだ?」
「いやい、いやいーーーーー」
「……」
 セフィロスは溜息をついた。
 が。
 なんともいえない気分で、言葉をゆっくり紡ぐ。
「よ……」
「あう?」
「よ……ヨシヨシ……でいいのか?」
 小さく、そう問うように呟く。
 勿論、ザックスから返事が帰ってくるはずはないのだが。
「ヨシ……ヨシ……」
「あ゛ーーーう?」
 ザックスが泣くのをぴたりと止めて、不思議そうな顔をした。
「ヨシヨシ……」
 自分でも、何をやっているんだと、そんなことを思いながら、ヨシヨシ、を繰り返す。
「あ゛だーーーーーーーきゃーう」
「……」
 ザックスがちょっと笑った気がした。
「……んく」
 そして、哺乳ビンに口付けて、喉を鳴らして飲み始める。
「んくんくんく」
 セフィロスは息をついた。
 だが、それは確かに安堵の息だった。
161なにげない日常:02/03/16 09:49 ID:???
「うきゃーーーー」
 ほっと息をついたセフィロスを見て、ザックスが哺乳ビンから口を離して、今度は明らかに嬉しそうに笑う。
「……いいから、さっさと飲め」
「んくんくんく……あーう」
 セフィロスは苦い顔をしたままだったが。
 が。
「うきゃーーーーー」
「ザックス、いい子だから、早く飲め」
 が、ザックスの眼に映るセフィロスの眸は、確かに穏やかだった。
162なにげない日常:02/03/16 09:50 ID:???
 縦だっこをして、背中を何度もなでないうちに、ザックスはけぷっと小さく息を吐き出した。
「……」
 セフィロスは、ほっと息をついてから、ザックスが寝ていたカゴにとザックスを横たえる。
 が、ザックスは眠くないのか、起こせとでも言わんばかりに手を伸ばす。
 セフィロスが仕方なしに、膝の上に乗せると、何が楽しいのか、セフィロスの髪の毛を引いて遊び始めた。
「あーう」
「……」
 すぐ横では、クラウドも寝息を立てている。
「ん〜〜〜〜〜」
 クラウドは小さく寝声を上げると、モゾモゾと動いて、セフィロスが座っている傍までやってきてから暖かさを確認したかと思うと、また寝息を立てはじめる。
「……」
 セフィロスはしばらくそうしていたが……ふっと、リビングにおいている電話の子機を手にした。
 そして……ナンバーを押し始める。
『どうかしたんですか?こんな時間に。ザックス君が何か?』
 コール音がいくつもしないうちに、先までここにいたタークス主任の声が受話器の向こうから聞こえてくる。
「そうじゃない」
『……?』
「その……」
 セフィロスは溜息を一つつくと、ザックスを縦抱っこしたまま、受話器の向こうにいるツォンにといった。
163なにげない日常:02/03/16 09:51 ID:???
「悪いが、やはりしばらく……その出張を全部キャンセルしてくれないか?」
「あ゛うーーーーー」
「ミッドガルを出ないようにしてくれ」
『……』
 自分でも、何を言っているんだとかそんなことを思いはしたが。
 確かにザックスは自分の子供でもないし、こんな風に一番自分に縁がなさそうな”育児”なんて面倒どころか迷惑だと先も思っていたのに。
「……頼めるか?」
 また、どこかバツが悪そうなセフィロスの言葉に、受話器の向こうでツォンはくすっと笑った。
 心配していたがどうやら、その”実感”の瞬間がきたらしい、と。
 そしてツォンは、穏やかな声で、
『解りました。全てあなたの出張はキャンセルしておきますよ』
 と、そういう。
「あう、あ゛ー──────ー」
 セフィロスに抱っこをされたまま、セフィロスの髪の毛を掴んでは遊んでいるザックスの、ちょっと嬉しそうな笑い声がリビングに響いた。
164なにげない日常:02/03/16 09:54 ID:???
取りあえず今うpされてる分はここまで。またうpされしだいうpします。
セフィロス育児日記か?
……斬新でたのしいかも
166:02/03/16 21:48 ID:???
…読みました。
なんとか大丈夫だったみたいです。




一呼吸おいて爆笑しました。育児かよ!!
しかも、乳児はザックス。
168なにげない日常:02/03/18 17:50 ID:???
 ザックスが現在、どうなったかを知らされてはいない。
 一応は神羅の科学部門の責任問題と言う事なので、極秘扱なのだ。
 しかし。
 ここでは、極秘扱だと言う事は、みなが知っていると言う事に他ならない。
 が。
「うやいーーーーーーーーああああん!!」
 ぐすっていたから、やばい、とは思っていたのだ。
 セフィロスは、机の上に書類と共に置いているザックスのベビーカゴの中からあがった声に、仕方なしに溜息をつく。
「あああん、ああああん」
 全身全霊を込めて泣き喚くザックスを抱き上げて、セフィロスはあやし始めた。
「ハイハイ、頼むから泣き止んでくれ」
「ぎゃああん、ぎゃああん!!!」
「いいからもう泣き止め。ほら、イイコイイコ」
「えーーーっく、えーーーーっく」
 泣き喚く赤ん坊をセフィロスがあやしつづける。
「……ミルクかな?」
 クラウドが常に持ち歩くようになったバックから哺乳ビンを出そうとする。
 この中に哺乳ビンや、ミルク缶、オムツ、後は、クラウドがザックスをおぶる時の”おんぶ紐”などが入っているのだ。
「まだ飲んだばかりだ」
 セフィロスはそういいつつ、ザックスを縦抱っこして、背中を撫でつづけた。
169なにげない日常:02/03/18 17:51 ID:???
「オムツは?」
「いや、まだだ」
「じゃあ……なんだろう」
 クラウドがあたふたとする。
「ね、熱とかないよね?」
「触った感じはいつもと変わらないぞ?」
「だって……どうしよう、耳で測る体温計もやっぱり持ってきとけばよかった」
 言い募るクラウドに、セフィロスは仕方ないと言うように、ザックスの額に自らの額を当てた。
「やっぱりない。大丈夫、いつもどおりだ」
「じゃあ何でだろう……。どうしよう、俺、早退してお医者さんのところに連れていくっ!」
「落ち着け」
 セフィロスが席を立とうとするクラウドを引き止める。
「大方、知らないヤツばかりで気難しくなっているんだろう」
 セフィロスは溜息をつく。
「……」
「前も一回あっただろう?近所の店に連れて行ったときに」
「……」
「あれと一緒だ」
「そうなんだ……」
 セフィロスの言葉に、クラウドがほっと息をつく。
「どうしよう、でも泣き止まないね。声がかれてきてる」
 室内に響き渡る声に、セフィロスは肩を落とした。
 クラウドの言うとおり、泣きすぎてザックスの声は枯れてしまっている。それでも泣きつづけるので、もう聞いているほうは気を揉むばかりだ。
170なにげない日常:02/03/18 17:53 ID:???
「ちょっとそれを貸せ」
 セフィロスは言うと、クラウドが持っていたバッグをさぐる。
「どーするの?」
 クラウドが首をかしげながら問うと、
「ガラガラを出す」
 と、短い答えが返ってくる。
「……そっか、ザックス、セフィロスにガラガラやってもらうの、好きだもんね」
 セフィロスはザックスを横抱きにすると、空いた片手に”がらがら”を持って、それを振り始めた。
「ほら。ザックス、見ろ、お前のお気にいりのガラガラだ。イイコだから泣きやめ」
「う゛ーーーー」
「ほら、イイコだから」
 ぐずっていたザックスが、ガラガラの音に反応して、そちらにと眼をやった。
 セフィロスの手が揺れるたびに、ザックスがそれをじっと見る。
「う゛やーーー?」
「ヨシヨシ」
「うきゃーーーーーー」
 セフィロスの手にある……いやにかわいらしいガラガラが音を立てるたびに、ザックスの機嫌は直っていった。
「きゃっきゃっーーーだーーーー」
 ほっと、セフィロスもクラウドも息をつく。
「よかったねーーザックス。セフィロスにガラガラやってもらって……」
「……俺はあんまり良くない」
 ガラガラを振りながら、セフィロスは呟いた。
「何で?ザックスもご機嫌だよ?ねーー、ザックス」
「……」
「きゃーーーう」
171なにげない日常:02/03/18 17:54 ID:???
 セフィロスは頭を抱える。
 実は。
 実は……。
 ザックスが泣き出したのは、治安維持部の会議室で……会議中での出来事だったのだ。
 当然、会議中なので、たくさんのソルジャーや一般兵がいる。
「ガラガラだって……」
「セフィロスさん、ガラガラ振ってるよ……」
「ガラガラ……───ダメだ、俺、いろんな意味で眩暈が……面白おかしすぎて」
 セフィロスは、溜息をついた。
 ”眼は口ほどにものを言う。”
 会議室中のソルジャーたちの眼が、自分になんと言う言葉を浴びさせているか、セフィロスは解った気がした。
 明らかに噴出しそうな眼。
 なんともいえない眼。
 などなど。
 声に誰も出さない分、余計に痛い。
172なにげない日常:02/03/18 17:55 ID:???
「……いや、慣れましたね、セフィロス」
 ツォンだけがクスクスと……と言うか、今にも声を立てて笑いそうに言った。
「そうしていると、子煩悩な父親のようですよ?」
「冗談でもやめてくれ」
「いや、本当に」
 にっこりとツォンは笑う。
「クラウド君、セフィロスはちゃんとザックス君の子育てに手を貸してくれますか?」
「ハイ!俺よりも、セフィロスの方がザックスのオムツかえるのうまいんですよ」
「へえ」
「……〜〜〜〜」
「けど、前、セフィロスオムツ返るときにザックスに引っ掛けられちゃって」
「おや、ホントですか?」
「でも、セフィロス、お風呂に入れるのはすごくうまくなったんですよーーー」
「……頼むから二人とももうやめてくれ」
 セフィロスは周りの聴衆の興味津々と言うよりは、明らかに楽しげな態度に辟易としながら溜息をついた。
 そして、困った、とばかりに頭を抱える。
 この様子では、これ以上会議を続ける事の方が難しい───。
173なにげない日常:02/03/18 17:56 ID:???
「んくんくんくっ」
 ザックスがリビングのソファに座ったクラウドの膝の上で、ミルクを飲んでいる。
 リビングの机の上には一枚の書類がある。
 これが、先ほどからクラウドの機嫌を損ねている。
「やっぱり、俺はやだ」
 それは、セフィロスが今日取り寄せたものだ。
「俺、ザックスのこと、手放すなんて出来ない」
「クラウド」
「どうしてもって言うなら……」
「クラウド、いいから話を聞け」
「だって……」
「何も難しい事をいているんじゃない」
「難しいこといってるじゃん。俺、絶対にザックスのこと、手放さないからっ!」
「あのな……」
「セフィロスだって、ザックスのこと手離すの嫌なくせにっ!」
「クラウド、だから話を……」
「今日だって、一緒にお風呂に入って……二人とも楽しそうだったじゃん」
「……楽しそうだったのはこいつ一人だ。俺は散々苦労だけをさせられた」
「……ウソだ。なんやかんや言って、セフィロス、当たり前のようにザックス連れてお風呂に入って……結構楽しそうだもん」
「〜〜〜〜〜〜あのな」
「セフィロスのバカ。〜〜〜以前は、あんなに言ってたのに……俺には最近入ろうっていってくれないくせに」
 ぽそっとクラウドが言った言葉に、ガウン姿でセフィロスは飲んでいたビールを噴出しそうになった。
174なにげない日常:02/03/18 17:57 ID:???
 気管に入ったのか、咳き込みながら言う。
「なっ……前はどんなに言ってもお前の方が嫌がっただろう?」
「……〜〜〜〜〜なっ……聞こえ……」
 セフィロスに聞こえないように言ったつもりなのか、セフィロスの切り返しにクラウドが顔を真っ赤にする。
「別に嫌がったわけじゃないよっ!いや、違う、そうじゃなくて……ッ」
「嫌じゃないなら何故そういわない?……全くなんだってお前はそう素直じゃな……」
「セフィロス、は……話がずれてるッ!!!それにザックスの前でッ!」
 話が妙な方向に転がりそうになったのを、無理やりにクラウドが修正した。
 そして、しどろもどろにも
「と、ともかく……俺はザックスのこと、手離すの、やだッ!」
 と、そう言い張る。
 リビングの机の上にある、一枚の書類。
 クラウドはそれを面白くなさそうな顔で見ている。
「クラウド……何もザックスをずっと、手離せと言っているんじゃない」
 セフィロスが溜息混じりに言った。
「就業中は、託児所に預ける、といってる、それだけだ」
175なにげない日常:02/03/18 17:58 ID:???
 たったそれだけのことなのに、しかし、クラウドは納得がいかないらしい。
「セフィロスはザックスを知らない人に……ベビールームに預けたほうがいいって言うの?」
「……仕方ないだろう?本来なら乳児は入れないところを、折角ルーファウスが口を利いてくれるということになったんだ」
 セフィロスはそう言うと、缶を机の上に置いて、溜息をついた。
 哺乳ビンから口を離して、そろそろ眠気に身を任せ始めたザックスを縦抱っこして、背中を撫でながら、クラウドがむーっと眉根を寄せる。
 食事の後はげっぷをさせないといけない。
 これには”縦抱っこ”という、抱き方をして背中を撫でてやるといいのだが、もともと躰の小さなクラウドにはこれが結構大変らしい。
「貸せ」
 セフィロスは短く言って、ザックスを手に取ると、縦抱っこして背中を撫で始めた。
 初めの頃と違って、結構手馴れたものだ。
 ザックスはセフィロスの肩に頭をもたげるようにして、うとうととしている。
「クラウド、よく考えろ。何もずっとザックスを預けておくというわけじゃない。就業中だけ託児所に預けておこうといってるんだ」
「だって、ザックスをまだこんなに小さいんだよ?寂しがって泣くかもしれないじゃん」
 セフィロスがクラウドに見せたのは、神羅ビルの中に入っている24時間オープンの託児所の入所許可書だった。
 神羅のような巨大な企業には、多くの社員が勤めている。
 中には、まだ手のかかる子供を抱えたまま働く共働きの夫婦などもいる。
 だからそういった社員のために、託児所が設けられているのだ。
 本来ならば、乳児などの入所は断っているらしいが、ルーファウスの口利きのおかげで許可が下りたらしい。
176なにげない日常:02/03/18 17:59 ID:???
「考えてみろ、俺もお前もザックスが職場についてきたら仕事にならない」
「……」
 無言のクラウドに、セフィロスは溜息をついた。
「そんな顔をするな。解るだろう?」
「〜〜〜〜解ってるけど……でも、執務室で大人しくしてるかもしれないじゃん」
「今日のように俺が会議のときはどうするんだ?見てみろ、ザックスはもう後追いが始っている。こっちの眼がないところで這いまわって危険な目にあったらどうするつもりだ?」
「……で、でも」
「食事の問題だってあるし、それに、おぶって毎日のように会議室や他部署に連れて行くわけにはいかないだろう?」
 そこまで言ってセフィロスは自分の発現に頭を抱えた。
「〜〜〜〜〜〜」
 ザックスをおぶったまま、毎日会議室、他部署に出かける自分……。
 どう考えてもしゃれにならない。
 治安維持部中、神羅中からどんな眼で見られるか、想像しなくたって解る。
「だったら……セフィロスが忙しい時は俺が見てるからっ!ザックス背負って仕事する!デスクワークばかりだから大丈夫だよ!ミルクやオムツだって大分上手になったし、セフィロスがいなくても一人で平気だってば!」
「俺の会議とお前の講義や訓練が重なったときは?今日のように二人とも会議に出席するときは?」
 セフィロスの切り返しに、クラウドは今度こそ黙りこんだ。
「ザックスを背負って、講義に出たり、兵学の訓練に出るつもりか?下手したらザックスの首が落ちるぞ?接着剤ででもくっつけて、後から謝るつもりか?それじゃ遅いんだぞ?」
「……〜〜〜〜で、でも」
「……クラウド。子供じゃないんだ。聞き分けのない事を言うな」
「〜〜〜〜〜〜〜っ」
 クラウドがうりゅっと涙を滲ませる。
177なにげない日常:02/03/18 18:00 ID:???
「……ッ。待て!クラウド、言い過ぎた!」
 セフィロスが慌てて、それを止めようとする。
 だが、セフィロスの言葉が終わるよりも早く……
「うぎゃあああああん」
 セフィロスに抱っこされていたザックスが先に泣き声をあげる。
「……〜〜〜〜〜二人とも頼むから勘弁してくれ」
 セフィロスは頭をまた抱える羽目になった。
 ここ数日、こうなのだ。
 クラウドが何か泣きそうな気配をチラッとでも見せると、どんなに機嫌よくミルクを飲んでいても、眠っていてもザックスが連鎖反応を起こしたかのように大泣きし始めるのだ。
「うえ〜〜〜〜〜〜〜」
「うぎゃあああん、うぎゃあああん」
「頼むから、二人とも泣き止んでくれ!!!俺が悪かったッ!!!!」
 セフィロスの方がよっぽど泣きそうな声で叫んだ。
 が、セフィロスには泣いている暇なんてない。
 このまま、二人が本泣きに……クラウドもザックスも……止めないと瞼が真っ赤に晴れるまで声を限りに、いや声が枯れてもまだ、泣きつづける。
178なにげない日常:02/03/18 18:02 ID:???
「確かにザックスがいたら、仕事に支障が出るし、かといって有給あんまり使うと、他のところで支障が出るし、仕方ないって解ってるんだけど」
 鼻をすするようにしながら、クラウドがザックスを抱いたまま、拗ねたように呟いた。
 クラウドを泣き止ませようと、クラウドの機嫌をとるようにココアを入れたり、
 ザックスを泣き止ませようと、ザックスの機嫌をとるようにガラガラを鳴らしたりとしていたセフィロスは、極度に疲労感を感じて、ぐったりとしていた。
「でも、ザックスはまだ小さいし……」
「……それは解っているがな」
 セフィロスに散々ガラガラを振ってもらったザックスは、今にも寝そうに、うつらうつらとしている。
「この何日かで解っただろう?今のザックスには誰かがついていないといけないんだから、昼間は託児所に預けておくしかない。ザックスがいると仕事にならないのは事実だ」
 現にセフィロスだってこの数日間の仕事の遅れを取り戻そうと、仕事を自宅で片付けようとはしていたが……が、ザックスのおかげでちっとも進んでいないと言うのが現実だ。
「それに、一人で寝返りが打てて、後追いが始ってるんだから後は早いぞ?あっという間に立って歩き出す」
「……」
「その分、危険と触れ合う機会が多くなる。絶えず眼を離せなくなる」
「解ってる……」
「だから昼間だけだ。就業時間あとはすぐに迎えに行って、一緒に帰ればいいだろう?」
「……うん」
「ゴリョウカイ?」
「うん、ゴリョウカイ」
 セフィロスの言葉に、クラウドは仕方なさそうだが、こくっと頷く。
179なにげない日常:02/03/18 18:03 ID:???
 セフィロスはほっと息をつくと、ポンポンっとクラウドの頭に手を置いた。
「さて」
 セフィロスはそう言うと、溜息混じりに立ち上がった。
「もう一回シャワーを浴びてくる」
「なんで?」
 ごしごしと手の甲で涙を拭っていたクラウドがきょとんとした顔で、セフィロスを見る。
「こいつを泣き止ませようと、抱いていたおかげで、風呂に入ったばかりなのに、涎と涙でぐちゃぐちゃだ」
 肩の辺りのなんともいえない感触に、セフィロスは溜息をつく。
 もうとっくに慣れっこしだがさすがにこれでは、ベットに入る気にはなれない。
「で、どうする?」
「へ?」
 セフィロスはきょとんとしているクラウドの手をとった。
「どうするって?」
「一緒に入るのが嫌、というわけじゃないんだろう?」
「……?」
 少し意地悪そうな笑みを浮かべたセフィロスに、クラウドはまだきょとんとした顔をしていたが、やがて意味が解ったのか、顔を真っ赤にした。
180なにげない日常:02/03/18 18:04 ID:???
「うぎゃああああん!!!!」
「セフィロス、やっぱり……俺っ!!」
「……あのな」
 セフィロスは頭を抱えた。
「おはようございます、大変ですね」
「……毎朝毎朝、申し訳ない」
「いいえーーー。初めだけですよーーー後は、いつもご機嫌で遊んでらっしゃいますからーーー」
 保母さんも困ったように、ザックスとクラウドを見て、そして気の毒そうにセフィロスを見た。
「何度も説明してもらっただろう?泣くのは初めだけで、ザックス自身、機嫌よく遊んでるんだ」
「だって、泣いてるもん!!」
「うやああああああ」
 クラウドの腕を掴んで離さないザックスが、クラウドと一緒に泣き声を上げる。
 もう託児所にザックスを預け始めて、一週間。
 毎朝がこうだ。
 クラウドと離れたくなくて、そして、まだ慣れない場所に一人で置いていかれるのが嫌でザックスが泣き喚く。
 それを見ているクラウドが、ザックスを連れて行こうとする。
 それをセフィロスが止める。
 が、実際に、クラウドが5時ごろに迎えに来て見ると、ザックスはご機嫌に遊んでいるのだ。
181なにげない日常:02/03/18 18:05 ID:???
 ザックスが大泣きしてしょうがないのは、託児所に置いて来るときだけで、あとはよく食べるし、よく遊んでいるらしい。
 なのに。
 なのに……毎朝、こんな風にザックスは泣き、クラウドも聞き分けのない事をいい……
「いいから、いい加減、聞き分けよくなれ、二人ともっ!」
 セフィロスがこうやって、クラウドからザックスを離し、保母さんに預け、クラウドの首根っこを捕まえる事になる。
「後はよろしくお願いします」
 セフィロスは溜息混じりに、泣き喚いて暴れいるザックスを抱いている保母さんにそう言った。
「いえ……大変ですね」
 苦笑混じりの心のやけにこもった言葉に、セフィロスは「本当に大変だ」と答えるわけにもいかず、
「5時くらいに、迎えにきます。ほら、クラウド、お前もいいから行くぞ」
 と、そういって、クラウドを捕まえたまま、治安維持部に向かう。

182なにげない日常:02/03/18 18:07 ID:???
「……と言いつつ、あなたが一番気にしていませんか?」
 ツォンがクスクス笑いながら、セフィロスの顔を見る。
「何?」
 セフィロスは眉根を寄せる。
 しかし、手は止まっていない。
「最近は5時ごろになると毎日、あわただしく着替えるくせに」
「……〜〜〜〜〜〜あのな」
「はい?」
 ニコニコとツォンは笑う。
「あれは、少しでも遅れると、ザックスがうるさいからだ」
 セフィロスは苦虫を潰したかのような表情で憮然と呟いた。
「だから、いい事だと思う、といっているのに、何をそんなに怒っているんです?」
 クラウドは現在、特別講義だ。
 5時前に終わるらしいので、そのまま、ザックスを迎えに行くといっていたクラウドが、毎朝ザックスと一緒になって、聞き分けのない事を言うと、ツォンにうっかり愚痴混じりにこぼしてしまった自分をセフィロスは心の底から呪った。
 ツォンは明らかに、今はここにいないザックスでもクラウドでもなく、自分を話のネタに楽しむつもりだと言うのが解るからだ。
「このところ、仕事のペースが速くて助かります」
「……」
「出来るだけ、残業をしないようにしているんですね。いいことだと思いますよ?」
 ツォンはそう言うと、セフィロスの机の上にあった、時計を見た。
「もう五時ですが?」
「……」
「先も言ったように、このところ、仕事のペースが以前に比べたら、もう信じられないほど格段に」
 にっこりと、またツォンは笑う。
183なにげない日常:02/03/18 18:07 ID:???
「本当に眼を見張るほど早くなってますので、今日はここまでで充分ですよ?もう着替えて、ザックス君を迎えにいってはどうです?もう五時を10分以上も過ぎてますよ?」
「〜〜〜〜」
 今までのセフィロスの就業態度への皮肉も忘れないツォンに、セフィロスは頭を抱えながら、いい、と首を振った。
「おや、無理をする事はないのですよ?」
「ムリなんかしていない」
 今日は、とセフィロスは溜息をついた。
「クラウドが、講義の後、すぐに迎えに行くと……」
 セフィロスが最後まで言い終わるか終えないかの時だった。
 セフィロスのPHSに着信が入る。
 クラウドからだ。
 セフィロスは眉根を寄せると、それをとった。
『セフィロス?』
「どうかしたのか?」
 慌てふためいたクラウドの声音に、セフィロスが問う。
『うん、セフィロス……その』
「何かあったのか?ザックスは?」
 時間的には、もう託児所についているはずのクラウドの後ろで、ザックスの声が聞こえない。
 セフィロスは疑問に思いつつ聞く。
『その、講義の最後で、実地があって、足をくじいちゃって……ごめん、ザックスのこと、迎えに行って!!もう約束の時間過ぎてるから、ザックス、絶対に大泣きしてる』
「お前は大丈夫なのか?」
『うん、くじいただけだから』
 クラウドはそう言うと、それより、とちょっと情けない声を出した。
『ザックスのこと、迎えに行ってあげて』
184なにげない日常:02/03/18 18:08 ID:???
 クラウドのカンは果たして大当たりだった。
 託児所が見えない辺りから、ものすごいボリュームの泣き声が聞こえる。
 ザックスだ。
 ツォンににっこり笑われながら、仕事を打ち切って、着替えたセフィロスは、これでも充分に急いで託児所にと来たのだが……。
「うやいーーーーーーーやああああん」
「……」
 まさに怪獣のように、ザックスが叫んでいる。
 おまけに、絵本やなんやを投げまわしている。
「うぎゃああん、ぎゃああん」
「ザックス君、もーすぐ、お迎えくるから泣かないでーーー」
 さすがに、保母さんたちも困ったように、ザックスを交代であやしている。
「ザックス」
 託児所の中に入ると、セフィロスは溜息をついてザックスを呼んだ。
「あ、ザックス君、お迎えだよーーーー」
 助かったと言わんばかりの保母さんたちと、セフィロスの声に、床に座り込んで……というかほぼ突っ伏するようにして泣いていたザックスが顔を上げる。
「うやああああん、やあああん」
 ザックスはセフィロスを確認すると、立ち上がろうとした。
 が。
「バカ……ッ!あぶな……」
 案の定、べったーん、とものすごい音がして、ザックスが顔から床に倒れこむ音が響いた。
 まだ、ザックスはハイハイが出来るくらいで、つかまり立ちの気配さえないのだ。
 更に泣くだろう、と誰もが恐れおののいたが、意外にもザックスは泣かずに、ハイハイで、セフィロスにと向かう。
 かなりの時間をかけて、一生懸命にセフィロスの足元まで辿り着くと、そこではじめて、ザックスがまた声を立てて泣きはじめた。
「うぎゃああああん」
「あ───ハイハイ。悪かった、イイコイイコ」
 セフィロスは溜息をつくと、ザックスを抱え上げた。
185なにげない日常:02/03/18 18:09 ID:???
「うやあああん、あああああん」
「すいません、5時になってから、ザックス君、泣き出しちゃって」
「いや、こちらこそ。諸事情で迎えに来るのが遅くなって……」
 セフィロスは、託児所の惨状を見て、心の底から謝罪の言葉を口にした。
 ザックスが暴れたせいで、絵本やなんかがもうしっちゃかめっちゃかだ。
 セフィロスは泣いているザックス……恐らく言っても解らないだろうが、それを叱りながらも、溜息をつく。
「ザックス君は、怒ると暴れん坊だね───。どっちに似たのかなーー?」
 保母さんがそういって、笑うのを見て、セフィロスは心の中だけで答える。
 ザックスは、クラウドの泣き方とそっくりだし、キレた時のクラウドの行動もまた、そっくりだ。
 とりあえず、手当たり次第、自分に物をぶつけてくるクラウドの怒り方と。
「じゃあ、ザックス君、明日もまたね───バイバイ」
 セフィロスは託児所を後にしながら、クラウドがいる医務室に向かいつつ、溜息をまたついた。
 結構気に入っていたこのネクタイ、スーツも、もうザックスの涙と涎でデロデロだ。
「全く……何だって、お前はそういう困ったところばかり、クラウドに似ているんだ?」
 しかし、怒る気になれずに、セフィロスは、しゃくりあげているザックスを見て、問う。
 勿論、答えはないとは知っているが。
186なにげない日常:02/03/18 18:10 ID:???
 勿論、泣き方や、怒り方もあるが……。
 先ほどの、痛い思いをしているのに泣かずに懸命に自分の元までやってきてから、足元にしがみつくようにしてからまた泣いたザックスは、やはりどこかクラウドを思わせた。
「うやーーー?」
「おい、口に入れるなッ!」
 落ち着いたザックスがネクタイをおしゃぶりのようにしているのを見て、セフィロスは顔を真っ青にした。
 全く、と呟く。
 全く、クラウドではないが……確かにあんなふうにされたら、置いて行くのが苦痛になるな、と、そんなことを思いながら。
 本当に、クラウドもザックスも……泣いて自分を困らせるところだけはよく似ている。
保全age
188名無し:02/03/21 20:09 ID:???
スマソ、この小説のサイト教えて。
直リンじゃなくて。
愛が飛ぶサイトか。
セーラー服で四つん這いのクラウドがバナーになってるあのサイトか!

サイト名で検索したらえらい事になった。URL晒していいかどうかの判断は自分には無理です。
変な所で口挟んでスマソ。
190名無し:02/03/22 00:01 ID:???
>>189さん、見ただけでどえらいところだと判りました。

でも(好奇心が)せめてサイト名だけでも教えてくれると嬉しい。
>190
女々しいクラウドが嫌いならやめた方が無難だと思う・・・
801サイトですよ? 好奇心は猫を殺します。

「セフィクラ」ってググルで検索掛ければどこかに引っかかる筈です。
でも、あまり辿り着いて欲しくない・・・。
ちょっと古いが、7のも幾つか混ざってるんで貼っておく。
http://piza.2ch.net/ff/kako/983/983102056.html
ヘタレ英雄ワラタ

俺も何かねーかなーと思い探してきたので貼ります
某サイトからのコピペ
「セフィロスの恋人」(タイトルが凄い)

――英雄セフィロスに恋人がいる。



 まことしやかに流れるこの手の噂は、無責任な兵士たちの口に上るだけで本当のところは謎のまま。
相手は、年上だったり、少女だったり、スレンダーだったり、グラマーだったり、その時々でセフィロスの好みは多種多様に変わるらしい。
だが、共通点がただ一つ。お相手と疑われた者達は、みな揃って既にこの世にはいないということ
――あの英雄が今度は肯定したって話聞いたか?
街灯がその灯りを宿すころ、石畳の上を人目を引きながらもそれを気にする様子も無く仲睦まじく寄り添い歩く男女がいる。
突然降り出した雪に彼女の方は困惑気味で、立ち止まり空を見上げて何言か呟いた。ゆるく三つ編みされた長い金髪に白い雪がはらはらと落ちる。
彼より2,3歩遅れたため慌てて踏み出すその1歩が段差に躓き、危く転びかける。
「そそっかしいな」
抱きとめられた腕の中で彼女は黙って俯いている。
「足が凍えているのだろう?」
その彼女の視界をサラサラの銀髪が遮り、また歩き始めた時には彼女の首に彼のマフラーが巻かれていた。
――殺されなきゃいいが。





【俺、身も心も冷えてきた】
通信機からザックスの声。セフィロスは内ポケットに入っているそれを取り出さずに会話をしている。
ザックスの声で鼓膜が破れそうになった前回の轍を踏まないようかなり改良されたらしい。
【なんでお前らだけ茶店に入ってんの? 俺だけこんな寒空に置いてさ】
「では帰るか?お前だけ」
【どーしてそおゆう冷たいことがさらっと言えるのかな、だいいち俺が帰ったら困るだろ】
ウェイトレスがにこやかに注文を訊きに来る。
英雄セフィロスをうっとりと眺めてから、その連れである彼女の方をまじまじと見つめ、
かなり納得した顔をして「ご注文は?」と遅れ馳せながらに言った。
「クゥは、もう決めたのか?」
優しく彼女に尋ねる。
「私、…ホットミルク…が、いい」
こんなもの頼んではあなたが恥ずかしい? 彼女の顔は明らかにそう言っていた。
「今日は砂糖の塊はいらないのか?」
「…ケーキ…のこと?……夕食あんなに食べたら…」
彼女は少しふくれっ面をしてみせ、意地悪な言い方をしたセフィロスを責めるような目で見る。その様子が可笑しくて、
「では、私はコーヒーを」
クスッと笑んでセフィロスは言った。ウェイトレスはその笑顔に多少驚いてはいたが、
「お受けしました」とだけ言うと素直に奥へ伝えに行く。
セフィロスに顔を近づけて、
「食べてみたいって言うから一口やったんじゃないか」
小さな本当に小さな声でクラウドは言った。セフィロスも身を乗り出すように
「食べたことがない、と言っただけだ」
クラウドに顔を寄せて言う。
「食べたかったんだろ?」
「無理に食べさせておいてその言いぐさはなかろう」
どんどん2人の顔が近づいていく。
【おいっ、こっから見てるともうすぐキスでもするんじゃねえかって雰囲気だけど】
「聞こえているのだろう?……した方がいいのか?」
セフィロスの冗談ともとれるこの問いは、実は真剣に訊いているのだとザックスにはわかっている。
【そーは言ってない】
なんだか気分が悪い、とザックスは思っていた。最近ずっと気分が悪い。クラウドに接するセフィロスは演技の域を越えている。
女とまともにつきあったことなどないはずなのに、自然に『恋人』になっているのだ。精一杯の皮肉を込める。
【どこに出してもおかしくない仲のい〜い普通のこいびとどうしに見えるって言ってんだよ】
「俺、そんなにうまく女に化けてるか?」
相変らずズレているクラウドにザックスはコケそうだったが、
【そう変わってない。変わってないのに女に見える、もともとが男装の麗人って感じだからなあ】
ためにザックスがここにいる。クラウドを知っている人間を近づけないために。
「お前なに言っ………髪が濡れてしまって少し寒いの」
テーブルを叩きかけた手で髪を触り、クラウドが女言葉に戻ったのはウェイトレスが近づいてきたからだ。
女言葉、女らしい仕種などそれら全般のレクチャーはザックスに受けた。変なことに器用な男である。
彼によれば文字通り雌雄を分ける目安となるべきクラウドの声は中性的でその顔に非常に良く合い、声色を変えなくても大丈夫とのことだった。
それが妙に悔しいクラウドでもあったのだが。
【セフィロス、俺ちょっとツォンをからかってくるからさ】
「物好きだな」
【こんな寒い夜は、寂しい者同士で暖め合ったっていいだろ】
ザックスはこの2人のデートの間、ずっとある一人の男の動きをも監視していた。
タークスで一番恐れられている男、ツォンの動きを。



「よお!ツォン!」
ザックスはわざとらしく手を上げてから、馴れ馴れしく彼の肩を叩く。ツォンはザックスが現れた事に全く動じた様子は無く、迷惑そうな顔をして、しっしと手で追っ払う動作をしただけだった。
「おまえ、こんなとこで何してんだ。大事なご主人様はどーした?」
百も承知なその答えを聞くつもりはザックスにもない。黙ったままのツォンの顔を覗きこむ、ある種の憐れみを込めて、
「本意じゃないってツラしてるぜ」
ツォンは表情を変えない。
「それでおまえはいいわけ?ふーん、そっか。黙ってりゃ傷も浅くて済むわな」
挑戦的な年下のソルジャー、怖いもの知らずで、礼儀知らずで、自信たっぷりで、そして、あくまでも真っ直ぐで。

「貴様のような奴にわかったふりなどされたくはない」

思わず口をついて出た言葉にツォン自身が驚いているようだった。
「いいねぇ、そーゆうの。人間らしくって」
にたっと笑うザックスからツォンは視線を外しそれなり押し黙ってしまった。
その様子をしばらく興味深げに眺めていたザックスだったが、ひょいひょいとまた物陰へ隠れる。
もうその必要もなさそうなものだが、この場合ツォンの立場もある。


【お出ましのようだぜ】


2人がその喫茶店から出て、再び石畳の歩道へその両足を乗せたとき、白い大きな車から凛とした青年が降り立った。いつの間にそこへ行ったのだろう、
ツォンが後ろに控えるという構図になっている。セフィロスはクラウドをかばうように1歩前へ踏み出す。
「僕には紹介できない、ということか?」
その青年は冷笑を浮かべ言った。
「プライベートだ。干渉するな」
無表情のセフィロスが答える。青年は額にかかる金髪を鬱陶しそうに振り上げた。
「はっ、プライベート? 初耳だ、あんたにそんなものがあったのか」
言いながら無遠慮な眼差しをクラウドに向けた。クラウドは気持ちセフィロスの後ろへ隠れるような所作をみせる。
「大丈夫だ。怖がらなくてもいい」
セフィロスは包み込むような優しげな瞳でクラウドに微笑みかけ、その髪にかかる雪を払い落とす。壊れ物を扱うがごとく、そっと。
ザックスはまたここで、できすぎっ、と思ったのだがそれはさておき。
焦れた青年は足早にセフィロスの後ろへ回りこむようにしてクラウドに歩み寄り、うやうやしくおじぎをする。
「僕はルーファウス神羅。以後お見知りおきを」
そう言う彼の目は鋭く、なぜだか挑戦的にも見える。
「貴女のお名前をうかがいたい」
クラウドはセフィロスの袖を掴み頼り切った瞳でみつめる。
「クゥの好きなように」
セフィロスの言葉に少し考えるような素振りを見せてから、
「クラフティ・ヴィクスンと申します。クラフか…、いいえ、クラフと呼んで頂ければ」
『クゥ』はセフィロスだけが呼ぶ名前、その瞳がそう語っている。ルーファウスは作り笑顔で頷くと、クラウドの手の甲を引き寄せる。
「ルーファウス、クゥが困っている」


間髪いれずセフィロスがルーファウスの手を払いのける。
「挨拶ぐらいさせてくれてもいいだろう。…困っているのはあんたの方か」
何も答えないセフィロスにルーファウスは皮肉めいた笑いを浮かべ、
「本気か? 手慰みに使うんだったらもっとそれっぽい女にしたらどうだ。ベッドの上じゃ面白みに欠けそうだ。それとも、その名の通り、なのか」
言うなりクラウドの顎をクイッと持ち上げた。瞬間ルーファウスの体は宙を舞い路面に叩きつけられる。
「去れ」
セフィロスの言葉でルーファウスはようやく自分が投げ飛ばされたことに気づく。支え起こそうとするツォンを振りほどき立ちあがる。
「ず・いぶんと・ご執心のよう・だな。冷徹なあんたが珍しいじゃないか」
ルーファウスの声が震えている。それに対するセフィロスの答えはまたも、ない。
「できないことは何も無いって顔だな。なにもかも自分の思い通りってことか!ムシズが走る、戦争屋ふぜいが!」
言葉を発するに従い興奮も増長していく。怒りのままに握り締めた拳に血の気は無い。
「人並みの幸せなどおまえが望めるとでも思ってるのかっ」
すいっとルーファウスの眼前にツォンが進み出る。
「ルーファウス様。言葉が過ぎます」
ルーファウスは下を向き肩で一呼吸ついた。拳の力は抜けないままだったが、
そのままセフィロスに視線を合わせることなく踵を返し再び車に乗り込む。
「敢えてケンカを売りに来たってとこだな」
ザックスはやれやれといった感でセフィロスに言った。
「確かめたかったんだろう、私が本気かどうか」

 セフィロスとクラウド、ついでにザックスは、『クラフ』が滞在しているホテルのスイートルームに戻っていた。
ダイニングキッチンまであるそこは、さしづめ高級マンションといったところ。

「そりゃも大丈夫だろ。俺ですらお前が本気なんじゃないかって思ったくらいだ。…って、こらっ、クラウドっ、いくらなんでもそれはないだろが」
2人の前を横切るクラウドは首から上は女のまま、後はトランクス一枚。
「戦闘用サポーターはもう外してもいいんだろう? あれだけぴったり体に張り付いてたら気持ち悪い」
「だから、そおゆう問題じゃ…」
ザックスは言いながらクラウドが付けているウィッグを取り外し、Tシャツを上から被せるように着せた。
「不気味なもん見せるなよ、せっかくいい女だったのに」
「そんなことはどうだっていいだろ」
クラウドはぶつぶつ言いながらとっととバスルームへ急ぐ。それを目で追いながらセフィロスが言った。
「私は今日からここに泊まる」
「な…んでだよ、…今までは帰ってたじゃないか」
ひきつりそうな顔でザックスはようやく声が出せたようだ。
「チェックメイト、といったとこだ。あと2,3日で結果が出る」
「なんだ、そういうことか。で、俺は?」
「好きなようにしろ。私がここに居ればお前が居てもおかしくはない、だろう?」
「そうだな、じゃ俺もここに泊まる」
おかしいに決まっているが訂正する気などザックスにはさらさら無かった。その道に暗い奴はこういう時には便利だな、と思うだけで。

「もう行くの?…その娘はあなたになびくのかしら?」
「力づくでもかまいはしない」
「本命でしょ、英雄の」
「だからこそだ」
女はクスクスと笑った。
「全く、あなたときたら。今度はいつ来るの?私にも都合があるのよ」
「しばらく会えない」
「そう。じゃ、またその気になったら電話して」
「お前のそういう物分りのいいところが好きだ」
「それ、誉め言葉?」
そうしてまたクスッと笑った。
「起きろって」
優しく額にキスをする。ぴくりともしない。
「起・き・ろ」
瞼にキスをする。全く反応なし。
「いいかげん起きろよっ」
ザックスはクラウドから毛布を引きはがす。そして隣の部屋へ行き、同じくセフィロスの毛布を引きはがした。
「ったく、野営のときとはえらい差だ。この低血圧ども!」

文句を言いながらも、買っておいた材料で朝食を準備し始めた。どこで覚えたのか不思議なくらい器用に手早く進めている。セフィロスが気だるそうに起きてきて、ダイニングのイスにこれまた気だるそうに座る。
「…お前、低血圧な女とばかりつきあっていただろう。料理もうまくなるはずだ」
イヤな男だ、すぐに図星をついてくる。だが、ザックスは反論しない、負けるに決まっているからだ。とんとんとんとテーブルに皿を置いて、さあ、と思ったが、クラウドがまだ来ない。
ザックスは無言でクラウドをベッドから引きずり出すと、イスにきちんと座らせた。クラウドの皿にたくさんのサラダとハムとスクランブルエッグと、これまた器用に見栄え良く取り分けていく。
「朝飯はちゃんと食わなきゃ大きくなれないぞ」
ハーブトーストとシリアルと…。全部食べろよ、と言おうとして絶句する。クラウドはセフィロスの膝を枕にすやすやと眠っていた。
セフィロスはそれを気に留める様子もなく長い指で額を支えるようにテーブルに肘をついている……こちらもどうやら寝ている様子。
「くぉら! 今だって任務の最中なんだぜっ」
言いながらまたクラウドをきちんとちゃんと間違いなくイスに座らせた。セフィロスは煩そうにようやく顔を上げる。
「それだけ、安心しているということだろう。こいつは」
「あんただろ、それ…」
クラウドはそれだけ言うと目をこすり始めた。ザックスは「2人ともだ、ばか」と呟いて、仕切り直しとばかりに元気良く言った。
「さっ、食おうぜぇ」
部屋の空気と混ざり合うコーヒーの香り。
「クラフちゃんはミルクたっぷりで良かったかな?」
「うるせ」
セフィロスとクラウドは当初、もそもそと食べていたが、次第に頭が冴えてきたらしい。
「クラウド、そんな寝起きの悪さでは命がいくつあっても足らんぞ」
「あんたが言うか。試しに今度あんたの寝首をかいてやる」
「やれるものならやってみればいい。手加減はしない」
がっくりと肩を落としたザックスが口をはさむ。
「お前ら2人とも……何言ってもぜんぜん説得力ない」
「なに拗ねてるんだよ?」
クラウドの言葉にさらに肩を落とす。
「ぶえつにいぃぃ」
昨日の晩、朝食の材料の買出しから帰ってみれば、暖かい部屋に点けっぱなしのテレビ、ふかふかのソファの上にはクラウドとセフィロスが仲良く…寝ていた。寝ぼける2人を無理やりベッドへ押しこんだのはザックスで、
今朝もご覧の通りの有様で。クラウドに添い寝をするつもりなどなかったのに、寝顔を見てたら幸せでそのまま、ふと目醒めたときには朝になってた、という次第。
「いったい何に安心してんだか。……俺もか」
一人納得したようなしてないような顔をしているザックスに、はあっとため息をついたクラウドが言う。
「今日は、俺は一人でぶらぶらするんだったよな?」
「そっそ、俺も今日はデートの番人しなくってもいい」
「………器用だなザックス、なんでこんなに料理上手なんだ?」
「クラウド、それじゃ会話になってねえよ」
「そうか? で、どうしてこんなに上手なんだよ? 補給部隊にいたことないんだろ? いたからってうまくなるもんでもないけど」
「そっ、そういや、なんで、あのお坊ちゃんは、あんなにセフィロスを敵視すんのかね。女をわざわざ横取りするなんざ、陰険そのものだよな。
俺らがこんな手の込んだマネしなきゃなんないのは、みんなあいつのせいだ」
ザックスは、あくまでも料理にこだわるクラウドをかわすため、いかにも思い出したようにセフィロスの肩に手を掛けた。
「そうやっていつも話をそらすんだな」クラウドの呟きは聞こえないふりをしている。セフィロスは意味深な眼差しをザックスに向けて少し笑い、クラウドに視線を移す。
「おまえならわかるだろう、クラウド。私も一歩間違えばあいつの二の舞だからな」
「知らん」
「ナンだよ、ちゃんと教えろよ!」
「おまえなあ…」
ザックスは自分のことはすっかりさっぱり棚に上げ、真っ直ぐな瞳で詰問する。
クラウドはこの瞳に弱い。大抵、根負けして、目をそらしてしまう。「しかたないな」小さく呟いて、観念したように話し始める。
「あいつ、いろいろセフィロスに叫んでただろ、あれ責めてるんじゃなくて、あれがあいつの理想なんだ。そうであって欲しいという…。言葉にするのって、難しいな…
一人でしか生きられないと思いこんでいるああいう奴は、一人で生きている強い奴に憧れて、そいつにはずっと一人でいて欲しいと思うんだよ」
「わっかんねえな、俺そういうの」
「お前にはわからないよ、たぶん」
「どーしてそーゆうかわいげのないこと言うのかね」
ザックスはクラウドのこめかみを拳でぐりぐりと締めつける「まだ目が醒めてないんだっ、起こしてやろっと」と言いながら。セフィロスは苦笑し、
「…ザックス、少し加減しろ。…わからないで済めばそれに越したことはない。お前が今まで幸せだった証拠のようなものだ」
「ますますわからないぞ、それ」
ぱたっとクラウドを解放する。痛い頭で自分がそうだったから、と付け加えるのをクラウドは止めておいた。これ以上はザックスを混乱させるだけであり、
加えてセフィロスの『二の舞』の言葉など彼はとっくに忘れているのでそれでも構わないだろう。
少し大きめのコート、セーターに膝丈のタイトスカート、ソックスにローファー、長い髪は風になびいている。
ショーウィンドウに映る自分は、自分ですら少しばかり上品な女の子に見える。「情けない」呟く。
そのショーウィンドウに、ルーファウスの姿も映りこむ。
クラウドはそろそろといかにも恐ろしげに振り向いた。
「クラフ、そのコートは英雄には似合いませんよ」
その言葉に虚を突かれたクラウドは、再度向き直り、ショーウィンドウの本来の目的である商品を見る。
そこには子供っぽいダッフルコートがペアで明るく華やかにディスプレイされている。
脱力感とともにこれを着たセフィロスが頭に浮かぶ。爆笑、を必死に押さえ、
「そうね、彼はきっとこういうの嫌よね。でも、私は着せてみたいと思うわ」
吹き出しそうな顔でルーファウスに答える。そのあまりに邪気の無い笑顔にルーファウスは瞬間つまったが、
「今日は僕とご一緒しません?」
「えっ、あの…。」
「ヒマだ、と顔に書いてある」
「そんな…私、叱られる」
「君が告げ口しなきゃ大丈夫だ」
でも、とためらうクラウドの手を強引にとりさっさと歩いていく。

【板についてきたよな〜、安心してみていられるもんな、セフィロス】
ザックスは、物陰から、セフィロスに話しかける。
「安心している場合ではない、玄人がいる。そこからツォンは確認できるか」
【ルーファウスの後ろだ。プロだと?】
「傭兵かもしれん。性急だな」
【あいつ殆ど丸腰なんだぞ!】
「だがこれでケリがつく」
【俺が出る。お前はそこから指示してくれ】
「複数だ。私もここから降りる…まずいっ、ザックス急げ!」
セフィロスはビルの屋上から外階段を駆け下りていたが、途中でふわりと飛び降りた。


「ツォン!」
ザックスの自分を呼ぶその言い様にツォンはすばやく反応し、ルーファウスとクラウドを抱えて大きな消火栓の後ろに隠れた、はずだった。
爆発音のような音とともにその形はなくなり、水が滝のように勢いよく流れ出している。既にツォンは2人を抱え、建物の陰へと走っている。
ザックスは悲鳴とともに逃げる群衆の流れに逆らい、3人の元へ急いだ。

「バカが! 街中でキャノンとはな。ここに居ろ。お前は防御だけでいい」
ザックスはツォンへ目線を向ける。
「お前達の戦争ごっこに僕を巻き込むとは、いい度胸だな、えっ?」
頷くツォンの腕の中で、ルーファウスは不愉快そうだ。しかし、ザックスはそれには答えない。バスターソードに手をかけたまま動きを止め、様子をうかがっている。
クラウドは長い髪を適当に束ねると、スカート側面を裾から上まで裂き、靴とソックスまでも脱ぎ捨てた。
裸足の戦闘は危険だが、足をとられるよりはいいと判断したのだろう。バッグから、護身用でしかない銃を取り出しスカートのベルトに挿む。
あとは何も持っていないことは、ザックスにもわかっている、だが。
「じゃ、ね。敵の狙いは、この私」
クラウドは、にっこり笑い、ばっと踊り出る、狩られる狐のように。
「ここは頼んだ!」
ザックスはツォンへ叫ぶと自分もクラウドの後を追う。

「英雄の女、だけのことはあるな…」
ルーファウスは呟いていた。
既にセフィロスは戦闘状態。ザックスが加わるとそれは見事なコンビネーションに変わる。互いにわざと作った隙を互いが埋めあう。右へ行けば左に、上へ行けば下に。
クラウドはそれを悠長に眺めているひまも無く、ひたすら逃げまくる。クラウドに仕掛ける者はことごとくその2人に倒される。その後、方針が変わったのだろう、セフィロスとザックスを直接攻撃し始めた。


 
見れば年若い女が一人静かにルーファウスのモトへ歩いていく。それに気づいたクラウドは、跳ぶように急ぎ走った。
「こんなところで何をしている? 行け」
女へ向けた、ルーファウスの冷たい声が、走りよるクラウドの耳にも響く。

 ふふっ

その女は笑い、クラウドに銃口を向けた。
「私は物分りのいい女じゃないわ。目移り癖はいつか治る、いつか私を迎えてくれると信じて待ってた、はずだったのに…。人殺しってクセになるのね、知らなかった。
いつからかあなたが興味を示す女を殺し始めて、途中で自分が何をしたいのかわからなく…なった」
クラウドに向けられていた銃口がルーファウスへとゆっくりと移動する。ツォンの右手もゆっくりとスーツの内ポケットへと。
「英雄セフィロスの彼女はお優しいこと」
そう言うと、女はかばってくれたその胸を銃で撃つ。クラウドは後ろへ吹っ飛び壁に当たって血反吐を吐いた。同じ銃口がルーファウスに向けられ、容赦無く2発3発と撃ちこまれていく。ただし、その前に立ちはだかるツォンへと。
銃弾の衝撃の度に足がグラつくが、決して倒れない。反撃しようにもすでに両手がきかないのだ。呆然とツォンへ駆け寄ろうとするルーファウスの足首をクラウドは掴み、転ばせた。変わりによろけた足で立ちあがる。
「こっち…だ」
僅か8発の弾などとっくに使いきっている。注意をそらすだけでしかない空っぽの銃を女へ向ける。
「私だって、愛されていれば優しくもなれた…」
女は銃を構えなおし、クラウドに狙いを定める。ツォンはそれでもだらりと下げた両手を肩で持ち上げながら女の方へ向かって歩き続けている。ルーファウスは今度こそ駆け出していた。
「行くな、ツォン!」

振り向かないツォンの動かぬはずの掌だけがルーファウスへ向かって開かれた。
「…いいこ…です…から…そこに…いて…くだ…」

制止するその掌から綺麗な赤い雫が零れ落ちる。

――幼い頃、眠れぬベッドで
――大きな掌が胸で優しくリズムを刻む
――ぬくもりで心の中が満ちるころ
――深い眠りに落ちていく


呼応するかのごとく大きく見開かれたルーファウスの瞳から透明な熱い雫が零れ落ちる。

――取り残された小さな自分
――おもちゃを全部投げ捨てて
――泣いて叫んで求めたものは
――その掌ではなかったか


 いつの日もいつの時も、一人ではなかったと。
また、頭上で何かが光る。バスターソードによってその光が遮られ、キャノンと共にぐしゃりと何かが落ちてきた。
ほぼ同時に、ツォンに背を向けた英雄の音もなく振られたその長剣が、女の首と胴体を切り離していた。

時を止めていたツォンが安心したかのように崩れ落ち、同時にルーファウスの悲痛な叫びが響いた。
「ツォン! だめだだめだ、目を開けろ。置いていくなっ。…一人にしな…いで…イヤだ…お願い……」
涙は瞳に任せるままに、漏れる嗚咽もはばからず、ツォンの胸に顔をうずめる。

「まったく、どいつもこいつも…」
小さく呟きながら、セフィロスはツォンに歩み寄り、膝をついた。そして、回復マテリアを使う、何度も、何度も。
「頑丈な奴だな。重症には違いないが、命は恐らく大丈夫だろう。私にできるのはここまでだ」
嗚咽の止まらないルーファウスは、しゃくりあげながらも、セフィロスをにらみつけ、
「礼は…ィック、言わ…ヒッ…な…フィッ」
「それでいい」
立ち上りかけたセフィロスはもう一度膝をつき、
「おかしなプライドなど捨て、防弾チョッキぐらいつけておけ。……死にたがる奴の面倒はみきれん」
ツォンの耳元で囁くように言った。
ザックスはクラウドを抱えて、あたりかまわず怒鳴り散らしていた。
「どーするつもりだったんだっ、ばかっ」
避けるつもりに決まってるだろ、とクラウドは言いたかったのだが、喋ると痛いので為されるがままに黙っていた。
非常に不機嫌そうなセフィロスが、チラリとクラウドの服をめくる。いくら戦闘用サポーターといえど、あの至近距離では火傷は免れ得ないが、防弾としてはその役目を果たし、弾はあばらにめり込むだけで済んでいるようだ。
「お前もな…」とだけ言い、回復マテリアを手にするザックスに向かって
「ツォンを本部に連れていってやれ」
「なんで、俺が…」
「クゥは、私が預かる。」
ザックスの手からクラウドをモノのように取り上げた。
「早く行け」
「お前っ、ク…、くっそー。行きゃいいんだろっ」
歩きかけて振り向く。
「早く手当てをしてやってくれ」


ザックスはツォンを担ぎ車の後部座席に乱暴に放りこんだ。「うっ」と小さくツォンが呻く。
「この野蛮人め、もっと丁寧に扱え!」
噛みつかんばかりにルーファウスが怒鳴る。ようやく調子が出てきたらしい。それでもその手はすぐさまツォンの手を握る。
「そんなに大事ならもっと早くから大事にしてやれ」
ザックスは小さな声で言う。が、それどころではないルーファウスの耳には当然届いていない。
 走行中、少しでも揺れると罵声が飛び、その度に、にったあ、とザックスが笑う。
ハタで見ているツォンのなんとも複雑な表情が(それが痛みという要因を差し引いても)、ザックスのニタニタ顔に拍車をかけていることは、もちろん、ザックス以外にはわからないことだったろう。


「ツォン、悪かったな。お前にも今回のことは話すわけにはいかなかった。でも、良かったな、なんかうまくいきそーで」
医務局のベッドにツォンを降ろしながらザックスは言った。
「何の…こと、だ…」
ツォンは首を少しあげて、苦しい息のしたでザックスに問う。
「とぼけんなって。俺もお前といっしょだからな。はねっかえりのじゃじゃ馬なんて好きになったらもうどうしようもない。それが良くもあるんだけど、な」
傍若無人なそのソルジャーの笑い声は、今のツォンの耳には心地良かったらしく、彼もまた、つられたように笑顔をこぼした。

「自分でやるからいい」
セフィロスを振りほどこうとしたその手は逆に掴まれてしまう。
「敵に情けをかけ自分が殺されるのか」
セフィロスは咎めるわけではなく、ただ少し寂しげな翠の瞳でクラウドの青の瞳を覗きこんだ。そう、クラウドにとってそれが傷よりなにより一番痛い。
そのせいでツォンも撃たれたのだから。
「癒着を剥がすが、少し痛いぞ」
「いっ…」
それでも実際、傷の方が痛い。サポーターに付いた肉片がセフィロスの瞳を曇らせた。
「自業自得だ、痛い目を見なければ考えることすらできんのだろう?」
言いようとは反対の優しい手がクラウドの傷を覆う。みるみる内に治っていく傷口を眺めながら、
「つい、条件反射だったような気がする」
珍しく反省の色をみせているクラウドに、
「そうでなければ何なのだ、あの女をかばう必要などないのだからな」
身もふたもない追い討ちをセフィロスはかけた。
「……初めから見てたのか?」
「標的となっているおまえから目を離すはずなかろう?」
クラウドは素直に小さく「ごめん」とだけ言った。
もともと、プレジデント直々の依頼なのだ。最近続けて、ルーファウスが軽く口を聞いただけの通りすがりの女までもが殺されている。
一人や二人ではない。ルーファウス自身、記憶の断片にも残っていない女なのに、だ。セフィロスの女とは、即ちルーファウスにも目をつけられた女なのだ。
エスカレートし始めていた。このままでは、やがてルーファウスの命も危いだろう。
プレジデントは息子を守るためにセフィロスに頼んだ。そして、セフィロスは餌をまく。始めにルーファウスがかかり、次に犯人がかかる。
しかし、今回は英雄の本命。追いつめられた女には、傭兵に頼るしか道はなかった、自滅への道だということを承知のうえで。

 あのケガ人も今ごろは幸せだろう、でも、押し倒すのも一苦労だよなとザックスはのんびりと欠伸をしながら思っていたが、ふと、疑問が湧く。
「あんな親でも、子供の危機はわかるもんなんかねえ」
セフィロスは可笑しそうに笑ったあとで、
「単なる偶然だ。殺された女の中に、プレジデントの愛人がいたのだろう、それで血眼になって調べたら自分の息子に行き当たった、そんなところだ」
「どーして、そう思う?」
「事情を言わない、それが証拠だ」
「ふーん。でもお前、いくら向こうから言い寄ってきたとは言え、関わりのある女が次々殺されて、今までよく動かなかったな?」
「関わり?誰が?」
「あっそ」
ザックスは眉間に皺をよせた。このまま不毛な会話に突入するのは目に見えている。
「そういや、あのルーファウスがクラフは大丈夫か、だってよ。さすがセフィロスの女だ、とか言ってやがんの。ツォンは感づいてるかもな、言わねぇだけでさ」
さっさと話題を切替えた。セフィロスとは長いつきあい、こんなことはザックスにとっては日常茶飯事のことなのだろう。
「セフィロス、俺、クラフはもうやらなくてもいいよな?」
ため息交じりでクラウドはセフィロスに尋ねた。
「さあな」
セフィロスの笑いをかみ殺したような返答に、一抹の、いや、かなりの不安を覚えるクラウドだった。
おそまつ。

しかし長かった。読んでくれる人はお疲れ様。

作者も大変だったろう。
217191:02/03/23 20:39 ID:???
今考えるととてつもなく恐ろしい提案をしてしまった。
190殿スマソ。真っ白に燃え尽きたりなんぞしていませんように・・・。

>216
そこのサイトの話はかなり好きだ。はねっかえりなクラウドが(・∀・)イイ!
さらにへたれ英雄
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 その日、セフィロスは本気で”ついていな”かった。
 それこそ、気の毒なくらいに。
 珍しくセフィロスは欠伸をかみ殺す。
 メガネをかけたその、眼には、僅かに欠伸をかみ殺したときにこみ上げてきた涙があった。
 眠い。
 セフィロスは先から何度も繰り返される欠伸をかみ殺しては、朝刊の文字を追う。
 頭がぼんやりしてきて、細かい字を追っていると、また眠気が襲う。
 普段、セフィロスは、寝起きは悪くない。
 というか、クラウドに比べたら断然いい。
 大体、セフィロスは、今日朝の目覚めに、問題があったのだ。
 突如として、セフィロスが安眠を奪われたのは、目覚ましのベルがなる2時間以上も前だったのだ。
 ……もっともそれは、クラウドのせいだったのだが。
 本来、余り寝相が良くない……はっきり言えば、最悪のクラウドが、何をどう間違ったのか寝返りを打った途端に、ぐっすり寝ていたセフィロスの鳩尾に、思い切り、かかと落としをくらわせてくれたのだ。
 さすがにこれには息が止まって、セフィロスは涙ぐみながら咳き込むはめとなった。
 そして……そのまま眼が醒めてしまい、息苦しさと睡眠不足のまま……こうしてセフィロスは、今ごろになって、かすかな眠気と戦うことになっている。
 「あ、俺、今日、結構運勢いいんだ」
 クラウドはトーストにかぶりつきながら、TVの占いの結果に、嬉しそうに言う。
 セフィロスから見たら”砂糖の固まり”にしか見えない、シュガートーストを食べているクラウドの眼は、TV画面に注がれている。
 特に、クラウドは世界情勢や株式市場や、政治に興味があって、朝、この時間TVを見ているわけではない。
 最後の最後に”今日の12星座の占い”というのがクラウドのお目当てなのだ。
 もはや、この時間にこのチャンネルで、この占いを見るのはこの家の習慣といってもいい。
 セフィロスは、そういったものを信じない上にはなっから小バカにしているのだが、クラウドは何故かちっとも信じてなさそうなくせに占いを気にする。
 特に”いい占い”ならば信じる傾向があるらしく、今日のクラウドの星座は12星座のうち、一番いいようで、機嫌がいい。
「自分の思わぬ面を外にさらして、ライバルたちに差を見せ付けるチャンスだって……けど、なんだろう。今日、特にマテリア学の講義と通常業務以外、何もないのに」
 クラウドは眉根を寄せて考える。
 いい運勢、はいい運勢であるのだろうが、全く思い当たる事がないのだ。
「そんなものだろ」
 セフィロスはエビアン水を片手に、新聞を見ながら溜息をつく。
 大体、この世の中の約12分の1は、クラウドと同じしし座なのだ。
 はなからあたるはずがない、といわんばかりのセフィロスに、クラウドは口唇を尖らせた。
 だが、本人もそこまで真剣にとっていないので、文句も言わずに熱いミルクティーをすする。
 しかし、
「あ!」
 クラウドがびっくりしたように立ち上がった。
 「な、なんだ?」
 その突然の行動に、セフィロスは思わず……寝惚けていたせいで余計に……びっくりして聞き返す。
 片手に持っていたグラスが思わず揺れて、セフィロスはネクタイや、シャツにたっぷりエビアン水をかけるという羽目になった。
 指にはさんでいたタバコの日も消えているくらいだ。
 「セフィロス、セフィロス!!!セフィロスの星座、今日、ワーストワンだ!気をつけないと!!!
 ”オフィスでのあなたを見る他人の眼に注意。みんなのあなたについての認識が変わるかもしれない”だって言ってるよ?」
 「……」
 「どうする?」
 「……どうもしない」
 そう真面目な顔をしたクラウドの言葉に、なんと返していいかわからずに、溜息をついた。
 「しかも、今日、セフィロス”水難の相”だって。気をつけないと」
 「……」
 セフィロスはしみになったネクタイを解きながら言う。
 「水難なら、たった今……あった」
 「……?」
 その皮肉が通じたのか通じてないのか、しかしクラウドは、
 「セフィロス、今日、なんか、水の近くに寄る事ってあったっけ?」
 ときいてくる。
 「さあ、特に何もなかったと思うが?」
 確か、朝一で会議が入っていて、後は通常通り、デスクワークのはずだ。
 思い切り水をかけてしまったので、セフィロスは着替えるために、立ち上がった。
 だが……。
 だが、このセフィロスが小バカにしている占いは……今日のセフィロスのついていない一日を象徴する幕開けとなったのだ。
 「……」
 セフィロスは睡眠不足に加え、いまや胸焼けとも戦いながら、会議用に配られた書類を見ていた。
 寝不足は頭痛を引き起こし、胃もたれは、精神的にもムカムカを連れてくる。
 ツォンや、他のソルジャーもよっぽどセフィロスに退室を勧めようかと思うほどの顔色の悪さで、セフィロスは、殆ど投げやりなまでの速さで会議を進めていた。
 恐らく現在はマテリア学の講義室にいるクラウドがこの場にいたならば、退室を促して、この場をツォンに任せただろう。
 それくらい、セフィロスの顔色は悪かった。
 「……次、さっさと説明してくれ」
 セフィロスは口元に手をやったまま、死にそうな声で言う。
 「あ、は、はい」
 慌てて、ソルジャーの一人が報告のために立ち上がった。
 原因は、いっぱいのコーヒーにあるのだ。
 もっとはっきり言えば、ザックスに。
 朝一の会議に出席するはずのザックスの姿がなく、しかもご丁寧にPHSをきっているザックスをセフィロスは探しまくるという羽目に出勤早々陥ったのだ。
 どうも残業でそのまま会社に泊まりこんだらしく、それならば大人しく自室で眠ればいいものを、ご丁寧に仮眠室で寝ていたザックスを叩き起こすこととなった。
 その際、寝起きのザックスが、自分用と、お詫びのしるしにおごるといって寄越した喫煙コーナーのいっぱいの紙コップコーヒーが、全ての元凶だった。
 機械の設定にミスがあったのか、セフィロスの手元に渡ったブラックコーヒーには……たっぷりとシュガーシロップが入っていたのだ。
 自らも寝不足のためにセフィロスは、ザックスの好意に甘えて、そのコーヒーに口付けたのだが……結果的にその砂糖水としか思えないほどの甘さに、たった一口とはいえ、胸焼けを覚えてしまった。
 ほぼ顔面蒼白で、しかも、死にそうなほどの声で会議を進めるセフィロスに、ツォンは横で溜息をついた。
 この上なく機嫌が悪そうなセフィロスに、誰もがたじろいでいる。
 「……解った」
 ちっとも解ってなさそうな……いわゆる、早いところ話を終えてしまいたいという態度もありありのセフィロスは頷くと、ザックス、と他のソルジャーたちと席を並べているザックスの名前を呼んだ。が。
 「お、おい、ザックス……ッ!!!」
 他のソルジャーがザックスを揺すり起こす。
 ザックスは、やはり昨日の残業がこたえたのか、コックリコックリと、一番前の席なのに、度胸がいいことに居眠りの真っ最中だ。
 しかも、幸せそうな顔で……寝言まで言っているのだ。
「……そのサルを叩き起こせ」
 セフィロスの言葉に、ザックスの隣のソルジャーが、「え?」と素っ頓狂な声を上げる前に、セフィロスは書類の束をザックスの額に向かって投げた。
 フリスビーのようにそれはクルクルと空中で回りながら、目標物に向かう。
 「いてっ!!」
 周囲のソルジャーたちがそれを避け、一人、それにあたったザックスが眉根を寄せて、眼を開ける。
 「……ン?なんだ?」
 「……人の真ん前で眠るとはいい身分だな、ザックス」
 セフィロスはにっこり笑う。
 声も低い上に、顔色も悪く……恐ろしく怖い。
 「……あ、い、いや……これは、その……眼を閉じて、このミッションにおける戦略を考えたというか……」
 「……」
 「や、やっぱ、一ソルジャーとして……色々な事態に対応できるように……予備の戦略なんか……」
 この上なく恐ろしい、顔色の悪いにこやかなセフィロスの微笑みを間近にザックスが、すいません、と小さく呟いた。
 「……さっさと、昨日預けた兵器開発部から回されてきたサンプルを出せ」
 セフィロスはそう言うと、それから、とザックスを見て、もう一度極上のにっこりとやらを見せる。
 「折角戦略とやらを幾つか考えてくれたようだし、それを、きちんと書類にして提出してくれ。まだちっとも戦略なんて考えていなかったから、俺としては助かる」
 「う……鬼……」
 ザックスはセフィロスに負けず劣らず真っ青になりながら、ポケットの中にあった小型のサンプルを取り出した。
 プラスチック製のそれを片手にザックスがそれを、セフィロスにと放り投げようとした瞬間、
 「バ……!!ザックスッ!!」
 「ザックス君、規定値以上の衝撃を与えてはっ!!!」
 空を舞った小型サンプルに、セフィロスとツォンが同時に真っ青になって叫ぶ。
 「え……あ……そっかッ!!!やばっ!!!!」
 きょとんとした顔のザックスが、それに気付いて真っ青になった。
 が、もう遅い。
 ザックスの手から離れた、兵器開発部が持ってきた新型サンプルは……一定以上の振動に反応すればある、反応を出すものなのだ。
 「あ……成功じゃん」
 「呑気なことを言ってるな、バカッ!!なんでもいいから消すから早く手伝えッ!!!」
 ザックスの感心したような言葉に、セフィロスの過密間ばかりの声が響く。
 セフィロスの眼の前にあった資料やなんかは……そのサンプルの発火により、真っ赤な炎を上げていた。
 ソルジャーたちが慌てて、前に駆けつけてそれを消そうとするが。
 ばしゃっ。
 「あ……」
 「……」
 「……」
 「……」
 「……」
 会議室は嫌な沈黙に包まれた。
 ザックスも、他のソルジャーも……ずぶ濡れになって、呆然としているセフィロスを前に、声がないのか……真っ青だ。
 ぼたぼたと水がセフィロスから滴り落ちている。
「……その、消すのを手伝えとのことでしたので」
 功労者というべきかどうなのか、火を消した、ツォンの声が嫌に大きく響いた。
「それに何でもいいとおっしゃいましたし」
「……」
「あ、ほ、ほら、にーさん、水も滴るいい男っぽくていいって、なあ」
「……あ、う、うん、そうデスよ。セフィロスさん」
 ザックスや他のソルジャーたちは、びしゃ濡れセフィロスに言った。
「すいません、つい……」
 消火のために、セフィロスの真上から火を上げている書類に……中身がたっぷり入った水差しをまっさかさまにして、水をかけたツォンが……水差しをコトンと机の上に置いた。
「にーさん、ほら、ツォンも気が急いていたんだしさ!」
「そ、そうですよ。臨機応変でしたよ、ツォンさんの行動!さすが、タークスの主任!!!」
「……そう、セフィロスも思ってくれると嬉しいのですが……」
 ザックスや、ツォン、他のソルジャーの声をセフィロスは、既にどこか、遠くで聞いていた。
 もはや、呆然とするしか、セフィロスには術がなかった。
「ほらほら〜〜〜〜〜にーさん。こんなじゃ、風邪引くし」
 ザックスがそういって、わざとらしいにこやかさでもって、濡れに濡れたセフィロスの顔を拭いてやる。しかも、ぎしぎしとめいっぱいで……痛いくらいに。
「……それ、ここの備え付けの雑巾ですよ」
 ザックスがそこらからとった雑巾を見て、ツォンが小さく呟く。
「え?あ!!!わ、わるい、にーさんっ!!!」
 だが、もうセフィロスには怒る気力もなかった。
 眠たさに頭痛に胃もたれに……この事態……どうにでもしてくれ、というような思いで、ただただ黙りこくっている。
 だが、逆にそれは周りの恐怖を駆り立てるのか、皆が、ゴクッと息を飲んだときだった。
 コンコン、とノックがして、そして。
「なにかあったのかい?」
 会議室に入ってきたルーファウスがセフィロスの周りに出来た人垣と、異様な空気に眉根を寄せて、問う。
「あ、ルーファウスサマ」
 どうかなさったのですか、とツォンが問う。
「会議はまだ終わっていない?ちょうど、良かった」
 ルーファウスはそう言うと、ポケットから、何か取り出す。
「今日、治安維持部のソルジャーたちが会議をするのを思い出してね。これも取り上げてもらおうと思って持ってきたんだ」
 ルーファウスの手にあるのは、小さな、丸いガラスのケースだった。
 中に、何かがはいっている。
 白い粉のようなものと、ガラス一枚隔てた液体があった。
「何?これ、ケッコー綺麗じゃん」
 ザックスガはそれを受け取ると、白熱灯にすかして見せた。
 白い粉は、どこか光にさらすとオレンジ色に見える。
「取り上げるとは、これも何かの開発途中の兵器なのですか?」
 ツォンの言葉に、ルーファウスは溜息をついて頷いた。
「余りお勧めじゃないけどね、一応、勧めてくれと言われているから、一応ね。兵器開発部と、宝条が一緒に開発したものだから」
「ほ、宝条?」
 ルーファウスの言葉に、ザックスは真っ青になった。
「あ……わッ!!!」
 そして。
 その拍子に……そのちいさなガラスのケースはザックスの手を離れ……
「っ!!やばい!!皆、離れるんだっ!!!!」
 焦ったルーファウスの声が響くと同時に、まだ呆然としているセフィロスの眼の前に落ちた。
 そして、それと同時に……パリン、というガラスが割れる音がし……白い気体が上がる。
 そして、その気体は段々と大きくなり……眼の前にいたセフィロスが気体の向こうに見えなくなった辺りで、
「どくんだッ!!!水をかけないとッ!!!」
 ルーファウスが、その気体に向かって……先ほどツォンが手にしたのとは違う水差しを手にとり……同じように中にある水を、勢いよくそれにぶっ掛けた。
「……」
「……」
「ガラスが割れて、ガラスのケースの中の粉末と液体を混ぜ合わせると、催涙ガスが飛び出るという代物なんだが……いかんせん、規模が大きくてね」
「……」
「……」
「実践向きにはならないかなと思って。……だが放っておいたら、この本社中に高濃度の催涙ガスが蔓延するところだったよ」
「……」
「……」
「しかし、まあ、もっとも初期段階で水でもなんでもいいから液体にくぐらせれば、それ以上の催涙ガスの発生は押さえられるんだが……」
「……」
「……」
「その点を考えても、少し兵器には向かないと僕は考えているんだけどね」
 ソルジャーたちも、ザックスも、ツォンも……誰も何もいえなかった。
 嫌な沈黙に、ルーファウスの説明が響く。
 だが、やはりこの会議室は……怖いくらいの静寂にと飲み込まれていた。
 ルーファウスの言葉どおり、水をくぐらせると、発生していたガスは見る見るうちにしぼんでいく。
 そして。
「に……にーさん、だ、大丈夫か?」
「せ、セフィロスさん?」
「……大丈夫ですか?」
「……あ、離れろといったのに、離れなかったのかい?セフィロス?」
 全身先以上にずぶ濡れ……そして……
「……」
「……」
「……」
「ちょっと、かわいいね。泣いているセフィロス」
 ルーファウスの言葉どおり、涙をボロボロこぼしているセフィロスがそこにいた。
 みな、なんと言って言いか解らないというように、黙りこくっているが……
「ぷ……ッ!!わ、わりい、に、にーさん」
 ザックスが、もうたまらない、というように噴出した。
 ぶつっとセフィロスは何かが切れるのを感じた。
「うるさい!それ……が!ッ、わ、る……いとおも、ってる……ッ、う……っく……た、いど、か!」
 しかし……本気で眼が痛く、涙が後から後から出てくるせいで、言葉にも力が入らない。
 それどころか、ザックスやツォンや、ルーファウスを睨もうにも、眼に力が入らないのだ。
 針で刺したような痛さが眼の奥にある。
 それのせいで、後から後から涙が出てくる。
 言葉も眼も……涙のせいでどうしようもないほど、弱々しくなる。
「……うわ、セフィロスさん、カワイイ」
 ソルジャーたちからそんな言葉がぽそっと洩れる。
 セフィロスはそれが誰かは知らないが、顔を上げて睨んでやろうとしたが、やはりそれは逆効果だった。
 顔を上げた途端、また、あの翠の眸からは、大きな涙が落ちていく。
「にーさん、今、何やっても逆効果だって。かわいすぎ」
 ザックスがそういって、笑う。
「っく、う……るっ……さ、いっ!」
「んな、俺ばっか怒るなよ〜〜ツォンだって、副社長だって……」
「うる、さいっ!おま……え……ッく……もっ」
「だ、だから、わ、悪いと……思ってば!」
 ザックスはそういって謝ってはいるが、何分肩が震えている。
 ……セフィロスからしたら、ものすごく説得力がない。
 そして、ザックスはとうとう、噴出しやがったのだ。
「ぷっ……く、だ、ダメだ!だって、思ったよりも、か、カワイイーーーあんたの泣き顔―――ッ!!!普段のあんたからすると犯罪級にかわいい〜〜〜っ」
 ザックスはそう言うと、ずぶ濡れのまま、ボロボロと大粒の涙をこぼしているセフィロスを見て、本気で笑い始めた。
 本気でセフィロスはザックスをぶってやろうかと思ったが、涙はボロボロこぼれるし、何よりも……眼が、とてつもなく……それこそ、焼けるように痛いのだ。
 全ての景色は、涙の向こうにあり、不透明なフィルターを通したかのようだった。
「いや、笑い事じゃないでしょう」
 ツォンはそういって溜息をついて、何とかとりなそうとしているが、幾分彼もまた、肩が震えているので言葉に説得力なんていうもの本のひと欠片すらも見受けられなかった。
「わ、悪い……セフィロス……本社中の被害を考えた場合にはどうしても……嫌、でもそれ以上に、まさか”英雄セフィロス”のそういう顔が見れるとは……クックック」
 ルーファウスは容赦がない。
 いかにも楽しげに笑っている。
「ルーファウスサマも、ザックス君も笑ってる場合では……セ、セフィロス……ク、クク……だ、大丈夫ですか?医務室に行きますか?」
「そ、そうだよな……ク、ックッ……と、とりあえず、医務室に……っ、く〜〜〜っ」
「え?まだもう少し、これ、見ていたいんだが……」
 笑いの含まれたツォンの言葉に、ちっとも悪びれていないザックスの言葉に、もう好き勝手なルーファウスの言葉。
「……〜〜〜〜〜ッ!!!もういいっ!!!」
 セフィロスはそう言うと、一人で医務室に行こうと、立ち上がり、会議室を出ようとした。
「ああ、セフィロスさん、危ないですよ!!ついて行きますって!!!」
 ソルジャーの一人がそういった瞬間だった。
 ごんっ。
 視界が悪いセフィロスは見事に会議室の扉にぶつかった。
「……?」
 クラウドは不思議そうな顔で、向こうからのどよめきのような、ざわめきのようなものに眉根を寄せた。
 執務室に帰ろうとしたクラウドは、マテリア学の教本を抱えたまま、そちらに眼を向けた。
 いやに、一般兵やソルジャーがざわついているのだ。
「なんかあったのか?」
 クラウドは顔見知りの一般兵を捕まえると問う。
「あ。クラウド、それがさ、セフィロスさんが……」
「……?」
「なんか、泣いてるって」
「は?」
 その言葉の意味を捉えかねて、クラウドは素っ頓狂な声を上げる。
「あーーークラウドじゃん」
 どよめきが大きくなったかと思うと、自分を呼ぶ声に、クラウドはそちらを振り向いた。
 クラウドを呼んだのはザックスだった。
 ツォンやルーファウスの姿もそこにはあり、クラウドはそちらに向かいかけた……が。
「……セ、セフィロス?」
 顔を手で覆うように……正確には眼をだが……しながらセフィロスがこちらに歩いてきているのを見て、クラウドはギョッとした。
 慌てて駆け寄ると……何故か全身びしゃ濡れの上に……
「ちょ!!なんがあったんだ?」
 覆った手の間から、ボロボロと涙がこぼれている。
「……クラウ、ド?」
 セフィロスが顔を上げ……
「〜〜〜〜〜つッ」
「セ、セフィロス!!!だ、大丈夫?」
 見事、壁にぶつかった。
 クラウドはセフィロスを覗き込んだ。
「な、なんで泣いてるんだ?」
「っ、こ……れ、は」
 セフィロスが僅かに顔を赤くし、そして涙声で何か言おうとするが、よく聞こえない。
「ッ、……っく」
「え、ちょっと!!」
 また眼の奥を指す刺激に、セフィロスの眼から、涙がボロボロとこぼれては床に落ちる。
「何?なんがあったんだ?」
 クラウドが慌てる。
「いや、事情は簡単なんだけどね……」
 ルーファウスが溜息をつく。
「ちょっと、催涙ガスを浴びたというか……。ねえ、セフィロス、ホントにあなたはうちのトップソルジャーなんだよね?
 離れろ、といって、他のソルジャーたちはすばやく避けたのに、あなただけぼんやりしてて」
「は?」
 ザックスやツォンが、まさに水難としか言いようのないセフィロスの周りで起こった事情を、一から説明すると、クラウドはぽかんと口を開けた。
「んで、医務室に行くっていうから連れて行ってやるって言うのにさ〜〜自分で行くって駄々こねてさ」
「うる、さいっ!!お前らに連れて行かれるくらい、な……らッ、自分、で……っつ〜〜〜〜〜!!」
「あーはいはい、まだ眼、痛いんだろ?ムリすんなよ。おかげで、幾度となく壁にぶつかっときながら」
「〜〜〜〜ッ!!!」
 ザックスの言葉に、セフィロスがまた眼を尖らせる、が。
「セフィロス、先も言ったけど、今、どんな事をしても、いってもカワイイの一言に尽きるよ?」
 ルーファウスがクスクス笑って、追い討ちをかける。
「……っ」
 セフィロスは何か言いかけたが……また眼の痛さに、涙が溢れてくるのを感じて、ただ俯いた。
 銀色の長い睫毛が震えて、濡れた翠色の双眸から、また新たな涙が生まれる。
 少し苦しげにセフィロスの眉根は寄せられていて、既に濡れている頬をつたって、透明な涙が落ちていく。
 涙は綺麗な首筋をつたって、身体にも落ちていく。
 セフィロスが苦しそうに瞬きをするたびに落ちていく涙。
 どこか苦しそうに洩れる声。涙が少し混じっているのが解る。
 それはまるで、彫刻や、絵画のように時間が止まったかのようだった。
「……〜〜〜〜〜〜〜いた……っ」
 よほど痛いのか、セフィロスはかすかに眼に手をかざすようにして、痛い、とそう小さく呟く。
 ざわめいていた廊下に、何故かその声は響いたように思われた。
「……セフィロスさん、結構かわいいかも」
「うん、かわいいかも……」
 どこからともなく聞こえてきたその言葉に、セフィロスは構っている余裕は今はなかったが、だが……クラウドは別だった。
 ようするに。
 ようするに……この廊下に集まっている一般兵やソルジャーたちはセフィロスのこの姿を見るがためにここにいるのだ。
 廊下だけじゃない、廊下に面した執務室の窓や戸、果ては階段……あちこちから視線を感じる。
「……あ?クラウド?どしたって───……???」
 ザックスが一気に空気の変わったクラウドを見る。
 元々、クラウドは端整な顔立ちをしている。
 繊細そうな眉根は深いそうに寄せられ、大きな眼は細められていた。
 おかげでいつもよりも、どこか少し大人びたような空気が、クラウドにはあった。
 何よりも、全くの他人に見せる冷たさとも、ザックスたちに見せる柔らかさとも違う……もっと攻撃的な冷たさ。
 それを纏ったクラウドに、気付いたのはザックスだけではなかった。
 ルーファウスやツォン、そして、セフィロスの後についてきた会議室にいた他のソルジャーたちも、それに気付く。
 クラウドが……普段は全くその欠片すらも思わせないのに、たまに見せるこういう冷たい空気は、他者を圧倒させるような何かがある。
 が。
 その空気は、また一瞬にして、氷解し、暖かな柔らかなものとなった……。
 ……───ような気がした。
 表情だけは、やさしげなものとなったのだが。
 だだ……───。
「セフィロス」
 そしてその途端に、クラウドはにっこり笑って、セフィロスの名前を呼んで、セフィロスを覗き込んだ。
「……?」
 セフィロスが涙のフィルターの向こうにクラウドを捕らえる。
 すると、クラウドはにっこり笑ったまま、セフィロスに、少しかがんで、とそう言った。
「……?」
 セフィロスが言われたとおりに少しかがむと、クラウドはセフィロスの頭を抱くようにして、自分の胸に抱くようにした。
 クラウドの兵服に押さえつけられて、涙がジンワリとそれに滲む。
「な、んだ?」
 相変わらず涙声でセフィロスが、何が起こっているか解らないとばかりに問う。
「だって、今、俺ハンカチもってないし」
 クラウドはそう言うと、幾分か自分のサイズより大きな兵服をハンカチ代わりに、セフィロスの涙を拭うようにした。
「ちょ……ッ。待て、どうせ……とまらな、い、から……それに……」
 セフィロスが慌てて身体を起こそうとするが、クラウドはそれを許さずに、
「いいから、じっとしてなよ。いい子だから」
 といって、セフィロスの涙を拭った。

 にっこりと笑ってはいるが……その空気は明らかに、あの、ナイフのように鋭い冷たさがあった。
 表情とは裏腹には、その青い瞳には、冷たさがたたえられている。
 その容姿が端正なぶん、それは迫力があり、容易に他のものを圧倒する。
「おい……ッ!」
 セフィロスもさすがにまだ抵抗をする。
 泣いているところを見られただけでも、余り嬉しくないのに……クラウドに涙を拭われるなんて、冗談じゃないとでもいいたげに。
「いいから、じっとしてってば。泣き虫のくせに」
「……は、あ?」
「セフィロスがボロボロ泣いてるのは事実じゃん。泣き虫」
 クラウドはそう言うと、まだにっこりと笑ったまま、まだまだ溢れてくるセフィロスの涙を親指の腹で拭ってやる。
「あの……なッ。誰が……」
「うそ、ほら、イイコイイコ。あ……ちょっとは涙おさまった?また泣き虫になる前に、医務室に連れて行こうか?」
 セフィロスの言葉をにっこりと、柔らかに……あまつさえ余裕をもって遮って、クラウドは微笑む。
 いつもの両者の立場が逆転したように、クラウドがセフィロスを上手くあしらっているその光景に、一同は唖然とした。
 依然、クラウドは微笑んだままだが……しかし実際は決して……そんなことはない。
 セフィロスは何も感じないのか、だが……周りにいたソルジャーたちは、それを感じ取り、冷汗をかいた。
 恐らく、この場にいた誰もが……息を飲んでいた。
 ……───クラウドの冷たい空気に。その恐ろしさに。
 もっとはっきり言えば、笑顔の真意に。
 にっこり笑っているだけに、剥き出しの冷たさよりもそれは、もっと他者を恐れさせた。
 「……にっこり笑ってるけど、全然眼が笑ってねー。すげー怒ってるわ、クラウド」
 ザックスがぼそっと呟いた。
 セフィロスをかがませて、自分の胸で抱くようにして涙を拭いてやっているのも。
 服を掴んで、涙を拭いてやっているのも。
 まるでセフィロスを子供扱いしているように上手くあしらうのも。
 あれは何もかも……牽制なのだ。
 セフィロスの事を”カワイイ”と判断して、セフィロスを見ている他の皆へ向けた、意思表示なのだ。
「すごい牽制だね」
 ルーファウスも溜息をつく。
「普段ああなのに……いざとなったら、やりますねえ。クラウド君も。今のセフィロスよりもよっぽど男前ですよ?」
「……うん」
 ザックスは複雑な心境で頷いた。
「けど、ちょっと、にーさんがこの後かわいそうかも」
「……?」
 ザックスの言葉に、ルーファウスが首をかしげる。
「多分、にーさんがカワイイ、っていうのが他の皆にあるからこそ、クラウドのあの思惑というか計算なんだろうけど……」
 まあ、クラウドのあの怖さを前に、いくら”カワイイ”ても、にーさんを誰もどうこうしようとしないっていうか、普段のにーさんが怖いって言うのもあるし、クラウド怖いしで、したくてもなにも出来ないだろうけど、
 と……ザックスはそう言ってから溜息をついた。
「それ前提で、余計にクラウドのあの男前見せられて……なんか、二人の関係が……色々逆転してるって勘違いされてそうで」
 ザックスの言葉を聞いていたルーファウスはしばらく黙ってその意味を考えていたが……
「ああ、なるほどね。色々か、そうだね……色々誤解が生まれてそうだ」
 泣いているセフィロスのかわいさ見たさに廊下に集まっていたソルジャーや一般兵たちの視線の中に、色々と……複雑な彩が含まれ始めるのを見て、納得したように頷いた。
 一人、セフィロスだけが、何も知らず、クラウドに手を引かれ、またボロボロと涙を流しつつ医務室に向かう。
 ───”オフィスでのあなたを見る他人の眼に注意。みんなのあなたについての認識が変わるかもしれない”。
 ───”パパとママ、どっちがいい?”
 扱いにくい、もしくは、単純すぎて複雑。 単純なくせにクラウドの精神構造というのはセフィロスにはいまいち……と言うか、ちっとも解らない。
 クラウドの見かけと言うのは、恐らく綺麗、な部類に入るのだろうと思う。
 黙っていれば、クラウドは硬質の、どこかピンと張り詰めた冷たい空気がある。
 冷たい、そして繊細な美貌だ。
 出来のいい陶器人形のような、静かな表情はセフィロスの眼から見ても、確かに端正だと思う。
 静かな表情の中で、吸引力の強い、見るものを引きこまんばかりの深い青がじっと深さをたたえるかのようにそこに在る。特にその青が凛としている。
 しかし、そんな端正な美貌には、どちからと言えば、男性的という言葉は当てはまらない。
 かといって完全に、女性的、というわけでもないのだが。
 どっちつかずの曖昧な美貌は、ただ一言でいうと、”綺麗。”なのだろう。
 ただ、クラウドはその言葉を余り好んでいないのも事実だ。
 また、表情を出したときのクラウドと言うのは、恐らくは”カワイイ”に分類されるのだと思う。
 見ているこちらがはっとするような表情をして見せるクラウドのそれは、クルクルと変わり、確かにカワイイ、のだと思う。
 普段……人見知りするせいか、感情を隠すようなところがあるくせに、一旦懐くと、感情をストレートにぶつけてくる。
 そういうところがセフィロスは気に入っていたし、カワイイ、とそう思う。
 ただ、クラウドはその言葉をを余り好んでいないのも事実だ。
 「綺麗」だの「カワイイ」だのと言う言葉をクラウドは「女性に使うものだ」と言うように認識しているらしい。
 この辺りが、いまいち言葉では説明しづらいのだが、セフィロスに「カワイイ」と言われる分には、そう嫌でもないようなのだが、他人にその言葉を自分に言われる事をひどく厭い、神経を尖らせる。
 つまりは、クラウドは自分の性別が「女性」だと信じて疑われない事にある意味、コンプレックスをもっているらしい。
 服装も、結構気を使っている節があるし、一度……まだこんなになる前に、ザックスと一緒に入った店か何かで
 「水曜日は女性の方にはサービスとして、食後にケーキをプレゼントいたします」と言われたときには、流れる水の如く静かに怒りながら自分の性別を訂正したらしい。
236なにげない日常。↑もです。:02/03/26 09:10 ID:???
 クラウドは、セフィロスに「カワイイ」と言われるのだけは別として……ともかく”女性”に勘違いされるのを嫌う。
 「近所のスーパーと隣り合わせになっている薬局で、オムツが安売りらしい。」
 クラウドが入手したその情報は、その日のセフィロスとクラウドの帰りの行動を決定した。
 セフィロスは入手ルートである、朝刊の折込チラシを、死ぬほど恨み、毎朝とっている新聞をやめようかと真剣に考えたほどだ。「あら、かわいいわねーーー」
「あーーーう?ばあ」
「あらあら、そうなの〜〜〜〜……」
 さっと、眼がクラウドに移る。
 そして、次にセフィロスに移る。
 なんともいえない、何を考えているか解らない表情で、その女性はにっこり笑った。
 むしろ、それは”含み笑い”といった方が適切だろうか。
 セフィロスにはその含み笑いの意味はもう充分解っていた。
 どうせ、自分に対して犯罪だとかそんなことを思っているに違いない。
 セフィロスは……まあ自分でも認めたくないが前からではあったが、この数日で、そんないかにも”犯罪だ”といわんばかりの視線にあってきたのだ。
「……ママたちと一緒にお買い物なのねー。よかったわねーーー」
 店内ですれ違った見知らぬ女性が、表面上だけは微笑ましそうに言った言葉に、セフィロスはなんと答えていいものかと考えた。
 情けない事に、実際、両手にザックス用の紙おむつを三つも四つも抱えながら、返答に困るセフィロスというのも、なかなか間抜けではあったが。
「まだママって言わないかしらね、このくらいだと」
 クラウドの腕の中で、指をしゃぶっているザックスにかけられた問いに、代わりにクラウドが答える。
「はい、まだです。……ね、だよね」
 クラウドが今度はセフィロスに同意を求めるが、セフィロスは答える術など持っていなかった。
 というか、困惑が強すぎて言葉がなかったと言うべきか。
237なにげない日常:02/03/26 09:11 ID:???
「あらーーーそうなの。早くママって言って欲しいでしょ?ほら、”マンママンマ”。いってごらん?”マンマ”」
「あーーーう?」
「やっぱりまだムリかしらね?」
「うやあ〜〜?」
「大体どのくらいで、言葉とかいうんです?」
 眼の前で展開される世界に、セフィロスはますます黙りこくるしかない。
 機嫌よくクラウドは応じているが、一体どこまでこの眼の前の女性の言っている事……及び間違った認識を理解しているのだろうとセフィロスは考えた。
 明らかに、子育てを自分も体験したと言う女性が、後輩に声を掛けたと言うこのシチュエーションは、普段のクラウドからしたら表情を一気に冷たくして訂正でもしそうなのだが。
 もっともセフィロスは、それ以上に……少しも地に足がついていないという、このシチュエーションに言葉を失っていた、というのもあるのだが……。
 いつもの会社帰りまではいい。
 私服のクラウドに、スーツ姿にメガネをかけたセフィロス。
 二人のいつもの会社帰りだ。
 が。
 やはり、現在セフィロス宅で”赤ちゃんをやっている”なんていう愉快な状態にあるザックスをはじめとして、セフィロスの手に、お特用ムーニーちゃんが大量にあるなど、この事態はまさに……。
 まさに、今までセフィロスが体験した事のない異常さが付き纏ってはいるのだが。
 いくらセフィロスでも、結構かさばる紙おむつを必死に4つも抱えている様は……さすがに情けなさを通り越して、もはや滑稽だ。はっきり言っておかしい。
 絶対に会社の他の誰かに見られたくない姿ではあるが……この薬局に隣接しているスーパーは、今日に限っていつもよりも治安維持部の人間を多く見かけた気がして、セフィロスは本気で泣きたくなった。
 どうせ、明日辺りにはお徳用オムツをセフィロスが抱えていたことが治安維持部中に回る事くらい、セフィロスは十二分解っている。
 そして、もう、この泣きたい気持ちとやらは、セフィロスは本当にいやと言うほど味わい尽くしているのだ
 だからもう、呆然として、
「ザックス、マンマって言ってみて。ほらほら。マンマ」
「大体うちの子はどのくらいだったかしらねー。でもね、赤ちゃんにも個人差があるのよ?」
 というやり取りが眼の前で繰り広げられているのを、ただただ見ることしか出来ない。
238なにげない日常:02/03/26 09:13 ID:???
「でも、まあ頑張ってね。ママって、坊やが早く言ってくれるといいわね。初めはね、わたしは色々大変だったけど、ママって言われると嬉しかったわよ。頑張ってっ!!!」
 ようやく、話が終わったのか、その見知らぬ女性が眼の前から去っていく。
 セフィロスは、知らぬうちに大きく息を吐き出していた。
「ママだって」
 クラウドが、笑って言う。
「……そう見えるんだろ」
 セフィロスは曖昧にそう言ったが、しかし次の瞬間、クラウドから帰ってきた言葉に……一気に眼が醒める思いも味わった。
「そうかな?そう見えるのかな。セフィロスって俺には女の人には見えないけど」
 かなりピントのずれた言葉に、セフィロスは、持っていたお得用ムーニーちゃんを全部床に落としてしまった。
「わ!セフィロス!何……?」
 クラウドが驚いて、それを拾い上げようとする。
 ちょっと待て、とセフィロスも数個オムツを持ったまま頭を抱えた。
「どうして俺が女になるんだ?」
「え?なんで?」
「”何で”は、そっちの台詞じゃないだろう」
「あーう」
 セフィロスの言葉に、だって、とクラウドはザックスをあやしつつ、ケロンとした顔で答えた。
「さっきの女の人、セフィロスの事、ママってよんでたじゃん。ママと一緒にお買い物、って」
「……絶対に俺のことを言っていたんじゃないと思うが?」
「え?なんで?」
「……お前のことを言っていたんだと思うぞ?」
「まさか、俺、男だよ?」
「いや、だから」
 セフィロスは頭を抱える。
「今のは絶対お前に言っていたんだぞ」
 セフィロスの言葉に、クラウドが眉根を寄せる。
「絶対、俺じゃないよ!セフィロスが言われたんだってば!」
「……絶対、お前だと思う」
 本人が嫌がる嫌がらないは別として、客観的に見た場合、性別が曖昧な容姿のクラウドがよく女性のように見られるのは事実なのだ。
 おそらく、何もせずに歩いているだけでも、誰も兵役についている少年だなんて思っていないだろう。
239なにげない日常:02/03/26 09:16 ID:???
 おまけに……こうやって……ザックスを抱いていて、自分が横にいれば、何故かみな、ザックスのことを弟や親戚の子供と言うような認識はしないらしい。
 クラウドの事を”かなり若い母親”というように認識するようだ。
 ……───そして自分はいいところ犯罪者だ。
「ザックス、ザックスはどう思う?絶対、今の人”ママ”って、セフィロスのこといっていたよね?」
「あ゛ーーーう?」
「ほら、ザックスだって、そのとおりだって言ってるじゃん」
「今のは絶対言っていない。というか、今のこいつには解っていない」
「解らないじゃん、ね、ザックス」
「うきゃーーーーー」
 クラウドが口唇をザックスの頬に寄せて言うと、ザックスが嬉しそうにキャッキャッと笑う。
「ほら」
 クラウドが勝ち誇ったように言った。
240なにげない日常:02/03/26 09:17 ID:???
 が。
「……絶対、さっきの”ママ”とやらは俺じゃない」
 セフィロスは紙おむつを抱えなおして断言した。
「大体、俺のどこをどう見たら、女に見えるんだ?」
「そうかな?見えるよ、セフィロス、性格は悪いけど顔だけはいいじゃん」
「あーう」
「ほら、ザックスも”そうだ”って言ってるよ?」
「絶対違う、大体、俺の場合は身長が合わない」
「……なんかのスポーツ選手と思われたかもね」
「ムリがありすぎる」
「セフィロス、着やせするから、体格もそう……」
 そうムリじゃないよ、とクラウドはいおうとしたが、が。
 が、190センチ以上の身長はともかく、ファーストソルジャーとしてのセフィロスの体格はどう見ても女性には見えはしない。
「ムリに決まってるだろう、どう見ても」
「う゛ーーー?」
 ザックスが面白くなさそうな顔をしたクラウドを見て、首をかしげる。
「じゃあ、さっきの人、何で”ママ”って言ったんだ?」
「だから、さっきも言ったが、お前のことを言っていたんだと思うぞ?」
「……そんなことないもん!」
「じゃあ、誰に言ってたんだと思う?俺か?ザックス本人にか?」
「〜〜〜〜〜〜」
 クラウドはむーーーッとしかめっ面をした。
241なにげない日常:02/03/26 09:18 ID:???
「───この件に関しては、ふとした……いや確たる疑問が沸きあがるんだが、それは、俺は一体どういう風に対処すべきだと思う?」
 セフィロスはずっしりとした重さを抱えつつ、深く深く溜息をついた。
「一般的な幸せ、かつ、非常に安定した幸福を前に、それは愚痴という言葉を借りたノロケか何かですか?」
 ツォンが書類の束を一枚一枚チェックしていき、ファイルにと収めていき、冷静に切り替えした。
「……〜〜〜〜〜違う」
「ツォンの意見に賛成だね。現にセフィロス自身、きちんと保証された身分だ。僕がいうのもなんだが……つくづく思うんだが良かったと思わないかい?うちが実績さえ残せば、性格面には眼をつぶる職業を提供する企業で」
 こちらは手伝うつもりはきっとないのだろう。
 ルーファウスがピラピラと書類を空に泳がせながら笑う。
「……」
「それに歳の離れた幼な妻に」
「お前、それは自分で言っていて、その表現が少し……いや、かなり違うと思わないか?」
 セフィロスの言葉に、そうですか?とツォンが問い返す。
「それに、健康で憎たらしいほど……いやいや、元気でかわいらしい子供。さっきしばらく抱いていたら、腕が痛くなった……全く」
「〜〜〜〜〜〜〜そっちはもっと違う」
 少しイライラとしたセフィロスの言葉に、ルーファウスは深く息を吐き出して、当たりのくせにとそういった。
 そして、セフィロスの腕の中で一人平和に、食後の睡眠にと入っているザックスを見る。
「全く何が不満なんだか……全く、我侭だよ、セフィロス」
「……」
 ルーファウスの言葉に、セフィロスは息を深く吐き出して、黙り込み、再び仕事にもどり始める。
 勿論、膝の上にザックスを抱え、片腕で固定して、だ。
「ああ、そういえば」
 セフィロスから渡された書類に眼を通していたツォンが、肩をすくめた。
「前から言おうかと思っていたのですが、あなたと違ってクラウド君はザックス君相手にご機嫌ですが、ただ、ちょっと……」
「……?」
「一応ザックス君も乳児ですし、聞かせる歌は選んだ方がいいかと思うのですが」
 いいにくそうなツォンに、セフィロスはあれか、と溜息混じりに呟いた。
 クラウドは機嫌のいいとき、たまに歌を歌う。
 別に珍しい事でもない。
 何かをしているときに歌うのはクラウドのくせだ。
242なにげない日常:02/03/26 09:20 ID:???
 洗濯物をたたんでいるときや、食器を洗っているとき、ザックスにミルクを与えているときなどもに歌う。
 ただ、その内容はツォンの言うとおりに、余りいい内容だとはいえない。
 ”息の根を止めておけばよかった” だの ”冷たく閉ざされた世界に落とされた変わらない痛みを味あわせてやるさ” だの ”腐食していく身体” だのといったいわゆる物騒なものが多いのだ。
「ああ……それは僕も聞いた。なんだか、ザックス君を寝かしつけるときに、”鉄の柵で作った折に閉じ込める”だの”首輪と足かせでもこしらえて”とかっていう曲を歌っていたよ?ザックス君はそれを聞いてすやすや寝てたけど」
「……わたしは、ミルクを与えるときに”あなたの使命はわたしのために太ること”だの”ソーセージにする”だの”一滴の血も残さないで”食べるだのと言う曲なら聞きましたが。
 ああ……ザックス君はそれを聞きながら、すぐに泣きやんで、ミルクを飲んでましたよ、そのときは」
「……少し聞くが」
 セフィロスは書類から顔を上げて、真剣な眼でツォンとルーファウスを見た。
「俺にはいまいち解らないんだが、あの歌はどうなんだ?ザックスに聞かせていても特に何の影響もないのか?」
「……」
「……」
「どうなんだ?」
「……今度、乳幼児に聞かせる音楽ばかりを集めたCDでもプレゼントしますね」
 ツォンがセフィロスの問いには答えずに、ただただ、にっこりと笑った。
「それで……話を戻すけど」
 ルーファウスが吐息を吐き出した。
「別に、そんなことで喧嘩する事もないと思うんだけど?」
「そうですね、どっちがパパでもママでもいいじゃないですか」
 ツォンが賛同する。
「……おい、だが、俺は事実を言っただけだぞ?なのになんで……」
 なんで、あんなに怒ってるんだ?
 と、セフィロスは心中に続けた。
 クラウドは昨日の一件で、どうもかなりご機嫌が斜めらしい。
243なにげない日常:02/03/26 09:21 ID:???
 昨日から、ザックス相手にはニコニコ笑っていても、セフィロスにはニコリとも笑わない。
「クラウド君が女性に勘違いされるのを嫌っている事くらい、あなたの方がよく知っていると思うけど?」
 ルーファウスがくすりと笑う。
「……だが、どう考えてもこの状況で俺の方が”ママ”とかいう愉快な立場じゃないと思うぞ?」
「何をあなたもムキになってるんですか、大体……」
 恐らく自分なりに引っかかるのだろう、言い募るセフィロスに、ツォンが肩を落とした。
「表面上があなたのいうように、そう、だったとしても、わたしはクラウド君の方がいざというときにしっかりしていると思いますけどね、あなたよりは。いざというときはへたれなあなたより、クラウド君は男前ですし」
「ああ、それは確かにいえてるね」
「〜〜〜〜〜〜〜」
 セフィロスは再び頭を抱える。
 だが、反論の余地は情けない事にちっともない。
「大体、そんなことで喧嘩するなんて、クラウド君はクラウド君らしいといえばそれまでだけど……あなたも大概大人気ないですよ、セフィロス」
 ツォンがのんびりと、書類のやり直しをセフィロスにとつき返しながら言った。
244なにげない日常:02/03/26 09:22 ID:???
「ザックス、帰ろうか」
 講義が終わって、執務室に帰ってきたクラウドが、そろそろ眼がさめていたザックスを抱きかかえる。
 ツォンもルーファウスも、もう既にいない。
 ソファの上のカゴの中で眠っていたザックスは、クラウドに抱きかかえられると、完全に眼がさめたのか、楽しげな声を出す。
 が。
 クラウドはセフィロスのほうを見ると、
「?」
 べーっと、舌を出して見せた。
 どうも、まだ”ご機嫌斜め”が続いているらしい。
 セフィロスは溜息をつく。
 が、それは意外にも室内に大きく響いた。
「言っとくけど」
 ザックスを抱っこしたまま、その溜息に対抗するようにクラウドが言葉を発した。
「昨日のは!!」
「……」
「俺は絶対認めない……からね」
「……」
 セフィロスはもう一度溜息をつく。
 クラウドはこうなるとガンコ、というよりは強情、強情と言うよりはかたくなだ。
「勝手にしろ」
 セフィロスは、そう言った後に、ふっとツォンの言葉を思い出した。
 確かに自分も大概大人気ないのかもしれない、とそんなことを思いつつ。
 セフィロスの言葉に、クラウドがむっとまた眉根を寄せる。
 その時だった。
245なにげない日常:02/03/26 09:23 ID:???
「あ゛うーーーーーんぎゃーあああああーーーーん〜〜〜〜〜」
 ふっと、二人の気配を察したのか、それまでクラウドに抱かれてご機嫌だったザックスが、いきなり堰を切ったように泣きはじめた。
「ザ、ザックス?どうかした?どっか痛い?」
 クラウドがあたふたとザックスをあやしつつ、オムツやなんやを確認する。
「おい、うるさいぞ、何とか……」
「解ってるけど……でも、何で?いきなり……」
 執務室中にザックスの大声が響きわたる。
「ど、どうしよう、セフィロス……ミルクかな?」
「違うだろう、おい、貸せ」
 セフィロスがそういってザックスを受け取ると、抱っこして揺すり、あやす。
 クラウドが心配げにザックスを覗き込む。
 二人に抱っこされるような形になったザックスのおかげで、セフィロスもクラウドも先程よりも近い位置にと寄り添う事となった。
 そして。
「……」
「……」
 段々とザックスの泣き声が弱まるにつれ、ふっと、セフィロスもクラウドも互いの眼を見る。
 気まずいような、どこか照れくさいような……そんな空気が二人の間に流れた。
「う゛えっく」
 先ほどまでのどこか尖った空気が、段々と氷解されるにつれ、ザックスはその泣き声を収めた。
「……」
「……」
 互いに無言のまま、どうしたものかと言う顔だ。
 その微妙な沈黙を先にセフィロスの咳払いが破った。
「悪かった」
「……〜〜〜〜俺も」
 ごめん、とクラウドが小さく呟く。
「〜〜〜〜〜〜〜もう、仲直りしよっか。いつものようにザックスがストップ、かけてくれたし」
 クラウドはそう言うと、ザックスを抱いたセフィロスの服の袖をきゅっと引いて、苦笑した。
「そうだな」
 肩を落としながらしながらセフィロスがそれに賛同する。
246なにげない日常:02/03/26 09:25 ID:???
「あーーーう」
 ザックスがしゃくり上げるような、それでいて、どこか満足そうな声を上げる
 それにしても、とクラウドが、セフィロスに縦抱っこされたザックスの背中を撫でながら言った。
「前からそうだったけど……ザックスって、赤ちゃんになってまで、結構苦労性かもね」
「……」
「あ゛うーーーーー」
 ”全くあんたらって、手がかかるよな”
 自分を見て、言葉になってない言葉を発したザックスに、いつものザックスが自分たちに言っていたそんな言葉を思い出して……セフィロスは溜息をついた。
 喧嘩したときに、いつもストップをかけてくれていたのは、考えてみればザックスだ。
「セフィロス、一緒に……かえろ」
 クラウドが少し困ったような笑みを浮かべて、セフィロスを見上げた。
 喧嘩が終わったときの、謝るような、そしてどこか……セフィロスに甘えたような……そんなあまやかな表情で。
 セフィロスがよく知っていて……そしてセフィロスが好む、こういう時の、クラウドが見せる独特の甘さが、空気に滲む。
「そうだな」
 セフィロスも苦笑を浮かべ、クラウドの頭に手を置こうとした……───が。
「あ!ついでに、今日は帰り道のディスカウントによってかえろーよ!今朝、広告見たんだけど、ベビー用品が半額なんだって」
「……」
 ……───セフィロスはやっぱり、毎朝とっている新聞を変えてやろうかと、本気で思った。
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まだまだ続く。

転載すんなよ…
職人でもなんでもないじゃんココ
そろそろやめとけ
>>247
かも。
しかし、続きも読みたいと思う自分は逝ってよしですか?
249名無し:02/04/01 17:06 ID:iIs+dfx6
ロシアンルーレット 一か八かの勝負さ運命をかけてみろ そうさ LIVE OR DIE 
堕ちるとこまで堕ちたら何も恐くないはず がんじがらめ 篭の中の鳥みたいに生きてくつもりかい? 目を覚ませよ 腹をすかした狼の気持ち忘れるなよ 
熱いヤツほど馬鹿をみる嫌な時代 だからこそ誰にも真似の出来ない 生きざまを見せてやれ クールな眼差しで 
自分貫いて倒れるなら本望さ 自分捨てちゃって 生きてるヤツラよりはマシ 
ROCK’N ROLL!!! どうせ見るなら魂で夢を見ろ 笑うヤツラは笑わせておけばいい マジなヤツほど馬鹿をみる嫌な時代 だからこそ誰にも真似の出来ない 笑顔を見せてやれ
ワイルドばらまいて自分信じてボロボロになってもいいさ 自分ごまかして ヘラヘラ生きるよりはマシ 
自分貫いて倒れるなら本望さ 自分捨てちゃって 生きてるヤツラよりはマシたった一度の人生さ 生きるも死ぬもオレ次第 最後に笑うのは誰だ?
晒す
人様の小説まるごと転載するなよ……。
大好きな所なのに、さすがにやりすぎ。

……ってか、1週間も前で止まっていたのを晒すな。>250
こうしてエアリスはクラウドの子を宿した