〜〜FFDQ板最萌トーナメント!! Round1〜〜
バレンタインターニア
僕達の長い冒険も遂に終焉を迎え、デスタムーアとの対決を残すのみとなった。
僕達は最後の戦いを前に、そろぞれの時間を過ごそうと一時パーティを解散し、
僕はライフコットへと戻る事にした。
ルーラを唱え、ライフコットへと戻ろうとした時、バーバラが僕に声を掛けてきた。
「はいっ、チョコあげるねっ」
「チョコ?」
バーバラが突然僕に、可愛くラッピングされたチョコを手渡してくれた。
「んもう、ニブイのねぇ。今日はバレンタインデーでしょ」
そうか、今日は2月14日だったんだっけ…
「私からも貴方に渡しておくわ。」
そう言うと、ミレーユも僕にチョコの入った包みを渡してくれた。
「二人ともありがとう。それじゃあ、僕は行くね。ルーラ」
場所は変わってライフコッド
「ターニア、ただいま」
久し振りに帰ってきた僕の家。
「おかえりなさい、おにいちゃん」
そしてそこには、変わらぬ笑顔で迎えてくれる僕の妹がいた。
「あれ?今日はバーバラさん達は一緒じゃないの?」
「うん。いよいよ大魔王との戦いが始まるからね。
みんなそれぞれ、自分達だけの時間を過ごそうって事になったんだ」
「それじゃあ、今日は魔王を倒す前祝いという事で、腕によりをかけて夜ご飯を作るからね」
「楽しみにしてる」
ターニアの作った夜ご飯でお腹が満たされた後、僕は表に出て、草の上に横になって
夜空を見上げながら、今までの冒険の事や、これからの事を考えていた。
「うふふっ、おにいちゃん。食べた後横になると牛になっちゃうよ」
「牛になったらターニアに世話してもらうからいいや…」
「もうっ、おにいちゃんったら…」
ターニアはティカップを持って、寝そべっている僕の隣りに腰を下ろし、お茶をゆっくりと飲む。
そういえば食後のお茶を飲むのを忘れていた。臭いからすると、どうやらココアのようだ。
ターニアは紅茶党のはずだけど、ココアを入れるなんて珍しいな。
食後のお茶を飲んでいない事を思い出すと、急にターニアのお茶が飲みたくなった。
「ターニア、悪いけど僕にもお茶をくれない?」
「うん、ちょっと待っててね…」
ターニアは一口、お茶を口に入れ、ゆっくりと寝そべっている僕の口へと顔を近づけ…
って…ええっ!
と、思った瞬間にはもう、ターニアと僕の唇は重なっていた…
こくん…こくん…と僕の口の中には甘いココアの味が広がる…
互いの唇が離れると、ターニアは俯いて真っ赤になってしまった。
かく言う僕も、真っ赤になっているとは思うけど…
僕達はしばらくお互いの手を握りながら、無言で夜空を見上げていた…
「いよいよ、おにいちゃんの冒険も終わりなんだね…
でも、魔王を倒したらおにいちゃんは戻って来てくれるんだよね?
おにいちゃんは、遠い所に行ったりしないよね?」
「もちろんだよ。僕は必ずターニアの所へと帰ってくるさ」
優しい笑顔で僕の事を見つめる。
この笑顔を僕は必ず守らなくてはいけない。
この笑顔を守る為に僕は闘う。
「約束だよ、おにいちゃん」
「うん、約束する」
翌日、僕はターニアに見送られ、仲間達と待ち合わせをしている場所へと飛んだ。
「どう、久し振りの家族団らんの時間は楽しかった?」
僕が待ち合わせ場所に一番最初に着いたかと思ったが、バーバラが既に来ていた。
「うん。いい時間を過ごせてとても楽しかったよ」
「それで、ターニアちゃんからはどんなチョコを貰ったの?」
「チョコ?ターニアからはそういえば貰っていないな…」
「あら、ターニアちゃんって、意外と冷たいのかしら?」
「たまたま忘れていたんじゃないかな?毎年欠かさずに貰っていたんだけど、
今年は僕もあんまり家にいなかったしね、用意を忘れちゃったんじゃないかな?」
「毎年あげていたなら忘れるって言うのも変ね〜
はは〜ん、おにいちゃんの知らないうちに、ターニアちゃんに男が出来ていたりして…
久し振りに見たターニアちゃん。昨日、何か変な所は無かった?」
にやにやとしながら、バーバラが僕に詰め寄ってくる。
「うーん、変な所か…強いて上げると…」
(ココアを口移しで飲まされた事くらいかな…って、こんな事、人には言えないしなぁ…)
「あっ、ココアと言えば、いつも食後のお茶が紅茶なのに、昨日は特製のココアだったかな。」
「なーるほどね。じゃ、よかったじゃない」
「えっ?どういう事?」
何が良かったのか僕には分からないんだけど…
「あら、これで分からない?ターニアちゃんも世間知らずの兄を持って可哀想ね〜」
ますます意味が分からないが、バーバラは僕の追求を無視して、ファルシオンの世話を始めた。
そして、デスタムーアを倒し、バーバラと別れることになった日に、
僕は始めて、ココアのもう一つの名前を知ったのだった。