http://game.2ch.net/ff/は差別だ!
(あれ・・・?ここどこだろう?なんだかキレイなところ)
どこかのお城?わからないな。でも知ってるような・・・やっぱり知らないような
あれ?あそこでウロウロしているの、父さんじゃないか?どうしたんだろう?
・・・でも、すごく立派な服を着てる。何だか父さんらしくない。別の人?
「パパス様!パパス様!お生まれになりました!」
「そ、そうかっ」
やっぱりパパスって言った・・・父さんの名前じゃないか。それに誰が生まれたって?
あ。あのお父さんみたいな人嬉しそう。すごく慌てて部屋に入っていくよ
ん・・・一緒にいるベッドで寝ている人、誰だろう?すごく優しそうな人だなぁ・・・
「でかしたぞ、マーサ。おうおう、こんなに元気で。
さっそくだがこの子に名前をつけなくてはな!・・・う〜〜〜む・・・」
あはは、気むずかしい顔してるけど楽しそう。名前か。この子につく名前ってどんなのだろう?
「よしこれだ!『トンヌラ』というのでどうだろう?」
え!?トンヌラ?何それ!?
「まあ、素敵な名前ね。勇ましそうで優しそうで・・・でも、わたし決めていたのです」
「そうなのか、どんな?・・・なるほどそういう名前か。しかしどうもパッとしないような・・・
いや、しかしお前がいいというのならそれにしよう!その名前がいい!!
よし、決まったぞ!息子よ!今日からお前は」
(・・・!)
ボクの名前だ・・・パパスという名の人が赤ん坊を抱き上げてボクの名前を呼んでる
じゃあ、やっぱりこれはボクで、あの人達はお父さんと、お母さ・・・?
「まあ、あなたったら嬉しそうに・・・ゴ、ゴホッ」
「な・・・?おい!どうしたんだ!」
(!?)
え?どうしたの?どうしてそんなに苦しそうなの?ねえ!起きて!目を開けてよ!
(お母さん!・・・あれ?)
「おう、目が醒めたか、息子よ」
目を開けた少年の横に父・パパスがいる。間違いなく、いつもの格好の父だ。
「何?夢を見た?何だか知らないお城の中だっただと?」
父は息子の話に目を丸くした。まあ当然の反応かなと、幼い少年でも思う。夢の中の話なんだから
「うん。それでさ。その夢の中の父さん、おかしいんだよ?
最初はボクにトンヌラっていうヘンな名前をつけようとしてたんだ」
「ぬ・・・ははは、まだ寝ぼけているみたいだな。眠気覚ましに外の風にあたってきたらどうだ?」
「う〜ん。そうだね、じゃ、ちょっと行ってくるよ」
「父さんはここで待っているから、気をつけて行ってくるんだぞ」
うん、とうなづいて息子が船の個室から出ていくのを見守りながら、父は何かを考えていた
(まさか、な。あの頃のことを覚えてるとは思えないが・・・しかし、
では、母のことも。マーサのこともあるのか?お前の心の片隅に)
父は少年に母は、お前を産んで間もない頃に死んだと告げてある
少年はそう思っているはずだ。・・・それが事実と異なることを、知らないはずだ
だけど、父が本当は何であったか、それも彼は知らないはずなのだ
なのに、あんなことを言う。ひょっとして、まさか・・・と思わずにはいられない
(どちらにせよ。いつか本当のことを話してやらねばならんのだろうな)
いつか言わねばなるまい、真実を。父の旅の目的を。
それにしても・・・
(そんなにトンヌラという名前は変か?)
わしとしては会心の出来のつもりだったんだがな・・・
「うわぁ・・・」
少年は扉を開けた。日差しを浴びてキラキラと輝く波がその瞳に飛び込んでくる
潮の香りがする。風が心地いい。空が、あんなに青く高く見える。旅をするには絶好の日和だ
「よう!君か!もうすぐビスタの港だよ。といっても何にもないところだけどね
あんな港に君たちのために行くなんて、うちの船長も変わったことするよなぁ」
「へぇ・・・」
(そうなんだ。父さんとボクのためにわざわざ寄って行ってくれるのか)
・・・何でそんなにしてくれるんだろう?そこまで考えると夢の中の話が急に頭に浮かんできた
(父さんが、ホントに偉い人?・・・まさかね)
あの夢の姿が、また思い浮かんできた。今のところ何のヒントにもなってはくれなかったが
「ガオオオーーーーー!!」
「うわっ!?何?」
「おお、泣かなかったじゃないか。偉いぞ坊主!」
奇声を上げた張本人が今度は驚いた顔をする。この人もこの船の船員の一人だ
「う・・・うん。大丈夫だよ。急だったんでビックリしたけどさ」
「そっか。いいか坊主。どんなことがあっても泣くんじゃねえぞ。
逞しくなれよ、お前の自慢の父さんみたいに
俺たちとは、あの港に行けばもうお別れだけどさ。元気にやるんだぜ
それから・・・たまには俺たちのことも思い出してくれよなっ」
そう言って、周りのみんなが笑ってくれる。彼らなりの、少年への別れの挨拶だったのだ
「うん。ありがとう!約束する!ボク泣かない!絶対元気で頑張るよ!」
少年は笑顔で言った。今までお世話になった人たちに、心からの感謝を込めて
「船がつくぞー!碇を降ろせー!帆をたためー!」
舵取りの大きな声が船中に響く。新たな旅の始まり。これでこの船の人とはお別れ
旅は別れ、そしてまた出会い。一つの旅の終わりは、また新たな旅の始まりでもあるのだ
「港についたか!村に戻るのは2年ぶりだな。
お前はまだ小さかったから、村の様子のこと、覚えてはいまい?」
到着を伝えに来た息子がうなづくのを見て父は少し胸をなでおろす。息子にわからない程度で
そうだ。覚えていないのは当たり前だ
それに、覚えていない方がよい。自分の母が、魔物に連れ去られた記憶など
しかし・・・やはり、いつまでも隠し通すことでもない。
いつか話せる時も来るだろう。だけど今はまだ、早いのだ
母の元へ辿り着ける道はまだ遠すぎる。息子にとっても、父自身にとっても
この子がやがて大きくなって、一人で旅立つまで。
自分で考えて、自分の足で歩き出す時まで、父は傍にいてやりたいと思う。
旅は別れ、そしてまた出会い。人生もまた、一つの旅。全てはその繰り返し
この父とも、息子はいつかは別れることになるに違いない。
だから願わくば、少年が一人の大人になり、己の手を離れて生きていける時まで
それまでは見守ってやりたいのだ
それだけが、母を守ってやれなかったこの父に、唯一できることなのだから
そんな想いを抱いた父について歩く少年は、その大きな背中を見つめていた。
夢で見た立派な姿もいいけど、この剣を背負った逞しい姿も、少年は好きだった
この背中は彼の憧れだった。いつか・・・こういう背中を持つ男に自分もなりたいと思う
旅の目的を少年は知らない。だけど、知らないけどいつか父を助けられる男になりたいと思うのだ
見慣れた父の後ろ姿と、見覚えのない新しい場所。新しい空と大地にその目を映す少年
その視線の先、足の行く末。少年の前にこれから広がっていく運命は何か?
それを知る者は、まだ誰もいない。だから今は一生懸命前に進むだけ。
夢と絆と思い出と、そしてほんの少しの勇気をその背に乗せて
少年は遙か彼方に広がる世界を見つめて歩き続ける。
やがてめぐりあう、これからの道に想いを馳せて。今はただ歩き続けるのだった