http://game.2ch.net/ff/は差別だ!
リュカとビアンカは手を繋いで、その絵の前に立っていた。
心を映すという絵。
この絵の前で強く願えば、過去に行けるという。
実際、リュカはそれを経験していた。
そして今、二人が並んで行きたいと思っていた場所は・・・
「じゃ、ちゃんと祈ってね?」
「もちろん。・・・ねえ、やっぱり夜?」
「・・・うん、そうね。その方が雰囲気出るし」
「オーケー。それじゃぁ・・・行こう。レヌール城へ」
二人は目を閉じ、繋いでいた手をしっかりと握り合った。
宙に浮くような、足元が揺らぐような不確かな感覚が二人を包み込む。
そんな感覚がふ・・・っと途切れ、次に二人の頬にひんやりとした風が吹きつけた。
リュカがゆっくりと目を開けると、目の前には古めかしい城があった。
あたりは暗い。
「ビアンカ・・・大丈夫?」
そう言いながら、握っていた手に力を入れ、リュカは驚いた。
いつもより小さく、いつも以上に柔らかく、滑らかな手。
「ビアンカっ!?」
慌てて隣を見ると、そこに居たのは幼少の頃の姿そのままのビアンカだった。
「・・・リュカ?」
彼女はきょとんとした顔でリュカを見上げていた。
「・・・あれ?リュカ、急におっきく・・・」
声も明らかに幼い。
「ビ、ビアンカ・・・」
「どうしたの?」
「格好が・・・」
「え・・・?」
ビアンカは自分の服に目を落とし、次の瞬間、甲高い声を上げた。
「えええええっっ!!??なにっ?これっ!???」
「そうかあ・・・そうすると、ビアンカはあの時の事を考えてたんだ・・・」
「うん・・・・・・あの頃の気分で、って思ってたの・・・
でも、まさか、ホントにあの頃の格好になっちゃうなんて・・・」
城の正門前の石段に腰を下ろし、リュカとビアンカは大きくため息をついた。
「戻れるかなあ・・・?ちゃんと・・・・・・」
いつもは気丈な彼女もさすがに不安が隠せないらしい。
幼いながらも、きれいな弧を描いている眉が悲しげに下がってる。
そんな彼女を見てリュカは胸が痛くなった。
けれど、彼はそんな自分の胸の痛みとビアンカの不安を取り去ろうと、
ぽん、とビアンカの肩を叩くと、声を大きくして口を開いた。
「大丈夫だよ。あそこに戻れば、ちゃんと元に戻れるさ。
それより、せっかく来たんだから、探検しよう。昔みたいにさ。」
ビアンカはそれを聞くと、まだ少し元気の取り戻しきれない笑顔でこくんと頷いて立ちあがった。
「そうだね。よし!じゃあ、おばけ屋敷の探検よ!・・・・・・もうおばけは退治した後みたいだけど・・・」
二人は正門の錠がかかっていないことを知っていたけれど、
自分たちがかつてそうした通り、城の横手にあるはしごから、城に入った。
一つ一つ部屋を辿りながら、一つ一つ当時のことを思いだし、二人は語った。
「あの時はすごくすごく広い城だって思ってたけど、今歩いてみるとそうでもないなあ・・・」
「え?そう?私はやっぱり広いと思うけど・・・ってリュカは大人だもん。
そう感じて当たり前じゃない?リュカも子どもに戻ればよかったのにぃ・・・」
いつものペースを取り戻したビアンカにリュカは笑いかけた。
「そうだね。確かにどうせだったら、俺ももどればよかったかも・・・
ああ・・・そうだ。こうしたら、ビアンカにもきっと城が狭く感じられるよ?」
そういうと、リュカはひょいっとビアンカを抱き上げた。
「きゃっ!?」
リュカの片腕に抱き上げられ、辺りを見まわすと確かに今までは何処までも続くかと思われた
廊下がとても短いものに思えた。
壁にかけてある、獣の頭や甲冑などもそれほど大きくは見えない。
ビアンカはなんだかリュカが頼もしく思えて、ぎゅっとその首に抱きついた。
いつも感じているけれど、それ以上に彼の首筋や肩が大きく頼り甲斐のあるものに感じられた。
「どうしたのさ?」
「ふふっ・・・リュカ、かっこいい・・・」
「えっ?ええっ??」
「やだー。そんなに照れないでよう。私まで恥ずかしくなっちゃう。」
「う、うん・・・」
頼もしいのに、照れるリュカを見てビアンカはそんな彼がいとおしくなった。
ちょっと顔を上げてほっぺたに口づけると、リュカはまた照れた。
「何でそんなに照れるのよ。」
「うーん・・・な、なんか変な感じ・・・
体はこのままだけど、俺も気持ちはあの頃に戻ってるのかも・・・」
リュカは目をそらしていたけれど、ビアンカはその言葉を聞いて、彼と想いが通じ合っていることを
実感して、また首筋に抱きついた。
リュカはもうなにも言わず照れたまま、また歩き始めた。
二人の夜の城内散歩はまだしばらく続くのだった・・・