http://game.2ch.net/ff/は差別だ!

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わたしはいつからここにいたんだろう。意識がはっきりしないからよくわからない
でももう何年も、わたしはここに立っている

わたしはここを動けない。魔物によって施された、冷たく固い、石の束縛
朝が来て、昼が過ぎ、やがて夜の闇、そしてまた朝
春、夏、秋、冬・・・そしてまた春
時は無情に過ぎていく。どれだけ願っても、どれだけ望んでも
石のこの体はピクリとも。まばたきすら、わたしに許してはくれない

眠ったり目覚めたり。おぼろげとはいえ意識はあるのに。・・・いやあるから逆に辛い。
何もないなら、何も考えないで済むのに。何も見ないで、聞かないで済むのに
ここは神殿の中。『光の教団』とは名ばかりの、奴隷たちが集められてくる場所
そんな彼らの嘆きを、彼女はただ、黙って聞くだけ
心がある。感情がある。なのに体は動かない。哀しい現実。泣きたくても、涙も出ない

「守り神様、守り神様・・・どうか僕を守ってください
 そしてどうかパパとママに教えてください。ジージョはここで生きていますって
 どうか、お願いします・・・守り神様」

そんなわたしの前に、いつもあの子はやってくる。神殿の仕事を終えた夜の時間に
魔物によってさらわれてきた小さな男の子・・・『あの子達』と同じくらいの歳の子が
汚れた奴隷の服を着て、いつも熱心に祈っている。石像のわたしを、守り神と思って

   でもね、ごめんね。わたしにはあなたを助けてあげられない
   せめてその頬に触れて、慰めてあげたいけど、それすらも、できないの・・・

「辛いです・・・哀しいです。会いたいのに、会えないなんて・・・
 ・・・イヤだよぉ・・・こんなところで、死にたくないよぉ・・・!」
最初は神様に祈る思いで捧げた祈りが、やがて悲しみに転化し、そして嘆きの涙
今までに、何度も見てきたこの子の姿

   ごめんね、辛いよね。哀しいよね。わかるよ。自分の大事な人に、逢えないなんて
   『大事な人』・・・そう、きっとわたしの子ども達も、
   もうこの子のように大きくなっているでしょうね。無事に暮らしているのかな?
   育ててあげられなくて、ごめんね
   そして・・・ねえ、あなたは、あなたは今、どこにいる?
   あなたも、わたしのように石になったまま、どこかで辛い思いをしているの?
   それとも・・・元に戻れた?呪いが解けた?
   もし、そうなら、せめてあなただけでも生きていてくれたなら、とても嬉しい
   もしそうなら・・・お願い。わたしの分まであの子達を見守ってあげて
   悔しいけど、わたし、ここから動けない

   『素敵なお父さんとお母さんになりたいね』
   二人が生まれた時、わたし、あなたに、赤ん坊だったあなた達にそう言ったのに
   ごめんね。わたし、素敵なお母さんになれそうにないよ・・・

   ごめんね、あなた。ごめんね、わたしの子ども達
   ごめんね、みんな・・・

「守り神様・・・?」
(・・・?)
   なに?どうしたの?どうしてそんな不思議そうな目でわたしを見るの?

「守り神様も、なんだか、寂しそうだね・・・よく、わかんないけど、そんな気がする
 守り神様も、誰かに会いたいの?ボクみたいに、誰かに逢いたいの?
 もし、そうならさ。守り神様も一緒に祈ろうよ。みんなにまた逢えますようにって
 ボクには力がないから、まだ、祈るしかできないから
 だから、せめて祈ろうよ。また逢えるようにって一緒に祈ろう」
(・・・)
このくらいの歳の子は、物にも命があるように感じる頃があるという
そんな少年の、本人にはあまり深い意図はなかったかもしれない言葉
だけど、その言葉を受け取った彼女の方は、心の奥に何かが光るような思いを感じていた
   そうだね。諦めちゃ、いけないね。動けなくても、まだこうして生きているんだもの。

   こんなこともあるんだね。大人になっても、子どもから教えられること
   こうやって大人が子どもに、子どもが大人に、色々なことを教えあって
   そして素敵な家族になっていくのかな・・・
   『素敵なお父さんとお母さんになりたいね』
   あの時の気持ちは忘れていない。その気持ちも変わってはいない
   わたしは、あなたに、あの子達に、・・・逢いたい・・・
   祈ることしかできないなら、ならせめて祈ろう。心から、精一杯の気持ちを込めて

「守り神様、守り神様・・・」(神様、神様・・・)

   ・・・どうか、わたし達の大切な人たちが元気でいてくれますように
   そして、いつかまた・・・あの人達に、会えますように・・・

・・・
・・・
体が光り輝く、そして目覚め。あの子も、彼女も。神殿の全てが、解放されるとき
今まで硬直しきっていた体が徐々に暖かな肌の色を取り戻していく
「みんな・・・みんな・・・!」

   逢えた、やっと、逢えた・・・
   何て言ったらいいの?この気持ち。どうやって表現したらいいのか、わからない

「あれ?あ、あは、あはは・・・」
   哀しくなんかないのに、目から涙が出てくる。嬉しいときにも涙は出るんだね・・・
   おかしいね。どんなに哀しくても泣けなかったのに、今は嘘のように涙があふれてくるよ

(あったかい・・・あったかい・・・ありがとう、みんな・・・わたし、嬉しいよ・・・)
心が・・・溢れてくる。暖かいそれは・・・喜びの、涙