http://game.2ch.net/ff/は差別だ!

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 でも……でもね。
 あのころは、なんのてらいもなく、あなたと手をつなげた。嬉しければ抱きつくことができた。
 好きだと伝えても、誰に咎められることも、誰かを不幸にしたり、迷わせてしまうこともなかった。
 昔とは、涙をこらえる理由が違うの。
 怖いのはお化けじゃない。……そんな無邪気な理由では、泣けなくなってしまった。
 いま怖いのは、不用意な言葉で、幸せを手にしかけているあなたを迷わせてしまうことだけ。
 幼馴染みという絆で、あなたを縛ってしまうことだけ。
 だから、リュカ。もう行ってちょうだい。お願いよ。
 好きだから、大好きだから、あなたの幸せだけを願っているの。
 ――どうか、わかって。
 扉が閉まる。
 わたしは長く息をついたあと、頬を熱い涙がすべっていくのを感じていた。
 月明かりの窓を背にして立っているわたしの足元には、おぼろな影が落ちている。
 振り返って月を見上げると、空にはさっきと同じように満月が静かな光を放っていた。
 ……あの月は、十年前に、レヌール城へと向かうわたしたちを照らした月と、同じ月。
 ただ。
 その月に照らされるわたしたちは、もう昔と同じままではないの。
 月明かりの下、手をつないで寄り添うようにリュカとあるいたあの日は、遠い遠い、
むかしの話……