http://game.2ch.net/ff/は差別だ!

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 空には、まあるい満月。
 ……あの夜も、こんな月が出ていたね。
 ふくろうの声に怯えて、草を揺らす風の音に泣きそうになりながら、暗い夜の道を
二人でたどったっけ。
『泣いたら、だめよ。泣き虫はお化けに連れてかれちゃうんだから』
 そんな馬鹿馬鹿しいことを、そのときは本気で信じてた。
 だから泣きそうになるリュカを必死でなだめて、わたし自身もいっしょうけんめい
涙をこらえて、レヌール城へと足を運んだ。
 でたらめな歌を大声で歌いながら、手はしっかりつなぎあって。
『怖くないわ、怖くないのよ』
 ……そう、震える唇で、呪文のようにくりかえしていた。

 ――それももう、十年以上前の話。
「フローラさんと結婚したほうがいいに決まってるじゃない」
 わたしは声が潤まないように、明るい声でリュカに言う。油断したら、
涙があふれてしまいそう。
 ……泣いちゃだめ。しっかりしなさい、ビアンカ。
「わたしは一人でも大丈夫。これまでだって、一人でやってきたんだもの」
 何か言いかけるリュカの声を、わたしは笑顔でさえぎる。
「さ、リュカは疲れてるんだからもう眠ったほうがいいわよ」
 もうこれ以上そばにいないで。
 でないと、泣き出してしまう。言ってはいけない言葉を、言ってしまうわ。
 リュカの全てを見透かすような、澄んで静かな瞳が、わたしをじっととらえた。
 わたしも鏡をのぞきこむように、その瞳を見つめ返す。
 想いの堰が切れて、何もかもが流れ出していきそうで――でも、リュカの瞳から
目を離すことはしたくなかった。リュカとこんなふうに見つめあえるのは、もう
これが最後かもしれないから。
 ……ねえ、リュカ。
 わたしたち、ずいぶん長い月日を歩いてきてしまったわね。
 その間、失ってしまったものは、なんて大きいのかしら。
 サンタローズの村であなたと再会したときは、母さんがいて、パパスさんがいて、
みんな幸せに暮らしてた。
 小さなわたしたちにとっては、毎日が発見の連続で、世界中にはまだ見つけて
いない宝物がたくさんあるような気がしてたわ。
 夢中で、楽しくて、幸せで。
 空はどこまでも高くて、風は穏やかに澄んで、周りの人々は暖かくて、優しかった……。
 ……ううん、今が不幸せなわけじゃないの。
 子供のころは得られなかったものを、たくさん手にしているもの。