【クリフトの野望 (17)】
二人は互いにアリーナの部屋の中のテーブルについた。
アリーナ 「さて、と。 あなたは今日から軍事大臣はやめてもらうからね。」
クリフト 「ククククク… 姫さまにそんな権限はございませんよ。
大臣指名権は唯一、国王陛下のものです。」
「どうしても、私の命令は聞かない気ね? まるで独裁者気取りね。
…ハッキリ聞くわ。 何を企んでるの? 説明して。」
「祖国サントハイムの秩序と安定。 これ以外に何がありましょう。
この達成のためには、来たるべき戦国時代を乗り切らなくてはなりません。
そこで、かつての魔法国家としての栄華を復興させ、対立国の軍事力に対抗するのです。
お分かりですね? 軍備拡張も同盟条約も必然なのです。」
「じゃあ、お父様に毒を飲ませたり、ブライを無実の罪で投獄することも
必然だって言うの?」
【クリフトの野望 (18)】
クリフト 「サントハイムはかつて僧侶階級の指導の元、世界一の魔法国家として繁栄し、
荘厳な大寺院や魔法学園、魔術師を中心とする最強の軍隊が発達し、栄華を極めました。
しかし、僧侶階級を打倒したあなたがた王族の手によって、それらは崩壊の途を辿ったのです。」
アリーナ 「そんな大昔の事を言われたって…」
「私の願いは、政権奪取ではありません。
ただ、王族から僧侶へ、元通り政権をお返し願おうと申しております。
そして、かつて最も輝いていた頃のサントハイムを取り戻すのです。」
「そんなの国民が納得しないわよ!」
「それです。 国民世論は伝統的な王族支持派が多数ですが、
敬虔なサント教信者の中には、僧侶による政治の復活を望む者もいる。
今や国民世論はまっぷたつに二分されています。 そこで、この矛盾を解決する手段があります。」
「どうしようっての?」
【クリフトの野望 (19)】
クリフト 「ククククク… 王族と僧侶一族との一体化です。 これを『王僧合体の計』と申します。」
アリーナ 「そ・それって、もしかして……!?」
「王族の者と、僧侶一族の長となる者との婚姻です。 …つまり、あなたと私。」
「ふざけないで! お断りよ!」
「あなたは拒否できませんよ。 なにしろ国内を一つにまとめるにはそれしか手段が無いのですから。」
「冗談じゃない!」
「あなたも内戦の危険性を認識しているはずだ。 陸軍と海軍が衝突すれば、陸軍は壊滅状態でしょう。
その結果のアンバランスな軍隊がまともに陸で敵と戦えるはずがない。」
「私を恐喝する気?」
「現状説明ですよ。 ご理解いただきたい。」
「あんたには、口で言っても通じないみたいね。 ちょっとおしおきが必要かしら?」
アリーナは立ち上がり、戦闘態勢の構えを取った。
「私は基本的に暴力は好まないのですが…。 まあいいでしょう。 お相手になりますよ。」
【続く】