「どうしよう……まだ見つからない……」
ルーシアは青ざめた。自らの過失で城から紛失してしまった天空の剣を探すため、
かれこれ2日は下界にいる。世界樹の辺りに落ちた、ということまでは
分かっているのだが。さすがに千年も前から存在しているだけあって、
世界樹は葉の量も枝の太さも普通の木とはまるでスケールが違う。
あたり一面に広がる緑の葉や複雑に別れた太い枝に邪魔され、
天空の剣の探索は困難を極めた。おまけにルーシアは、探し物が大の苦手なのだ。
剣が見つかるまでは、天空城に帰ることも許されない。
マスタードラゴンは非常に厳しいことで有名だった。
これまでに過ちを犯した天空人の中には、地上に追放されたまま
戻らない者もいるという話を、ルーシアは聞いたことがあった。
「このままじゃ私、一生天空城に戻れないかも……」
もう日はだいぶ西に傾いている。結局、今日も天空の剣は見つからなかった。
腕や足のあちこちには、枝を分けて探した時についた傷がいくつもできている。
ルーシアは途方に暮れて、赤く染まった空を見上げた。
と、木の上の方で何かがキラリと光ったような気がした。
ルーシアは目を凝らし、頭上に広がる緑を見た。
「何だろう……?」
不思議に思いながらも、ルーシアは羽根を広げて木の上へと向かっていった。
枝をかき分け、世界樹の葉が生い繁る中へと入っていくと、
ちょうど枝と枝の間にうまい具合にひっかかっている剣があった。
剣の刀身は不思議な輝きを放つ金属でできており、柄は竜が模してある。
それはまさに、ルーシアが探し求めていた剣そのものだった。
「天空の剣だ!」
剣は夕日を受け、普段とはまた違う不思議な輝きを放っていた。
ルーシアが剣に触れると、かすかに剣の持つ暖かさが伝わってきた。
「良かった……もう大丈夫だからね」
ルーシアは剣を抱き抱えた。天空の剣は彼女との再会を喜ぶかのように、
ほんの少しだけ明るく輝いた。
「さてっと、急いで戻らなくっちゃ」
緑の葉のトンネルを抜けて、ルーシアは羽を広げて飛び立った。
2日もかかったけど、これでようやく城に戻れる。
そう考えるだけで、ルーシアの顔は自然とほころんでいった。
だが、世界樹の頂上を通りすぎた時のことだった。
じゃらじゃらという音とともに、何かがルーシアの体に巻きついた。
「きゃっ!」
ルーシアは驚いて巻きついたものを見た。それは、巨大な鎖だった。
輪のひとつひとつが異様に大きく、鎖の先にはトゲのついた大きな鉄球がぶら下がっている。
そしてルーシアは、そのまま何か強い力によって世界樹の方へと引っ張られた。
「ああっ!」
ルーシアはバランスを失って世界樹の頂上に叩きつけられた。
「叩きつけられた」とは言っても、それほど高くない所から落ちた上、
幸いにも葉がクッションの役割を果たしてくれたため、
あまり大きな衝撃を受けずにすんだのだが。
もしも下が太い枝で頭を打ったりでもしたら、即死だったかもしれない。
天空人といえど、羽と強い魔力を持っている以外には、
地上にいる普通の人間とは全く変わらないのだ。
(よかった……何とか助かったみたい。だけど……)
ルーシアは自分の体に巻きついている鎖を眺めた。これは一体なんだろう?
その時、がさがさと葉を踏みしめる音が聞こえた。
「誰!?」
音のした方向を向くと、筋肉が異常に発達した緑色の魔物が1匹、
ゆっくりとこちらに近づいてくる。あれは確か天空城の本で見たことがある。
オーガーだ。そういえば自分の体に巻きついている鎖は、
オーガーが持ち歩いているものに良く似ている。
ルーシアはようやく、自分の置かれている状況を悟った。
(最悪……こんなところで魔物につかまっちゃうなんて)
思いながら、ルーシアははっとなった。
自分は今、天空の剣を持っている。これが魔物に奪われたりしたら……
彼女の悪い予感は、どうやら当たってしまったようだった。
オーガーは、ルーシアが大事に抱えている剣を見て不気味に笑った。
そしてルーシアの鎖を、ルーシアが逃げ出せない程度に少し緩めてから、
彼女から天空の剣を力任せに奪い取ってしまった。
(ああ……なんてこと……)
この魔物は、天空の剣をどこか天空人の手が届かない所に隠してしまうだろう。
あるいは、魔族の王の所に持って行ってしまうかもしれない。
いずれにせよ、天空の剣は勇者から遠く離れた所に追いやられてしまう。
全部自分のせいだ。もっと早く剣を見つけていれば、こんなことにはならなかったのに。
ルーシアは自分の無力さを呪って唇を噛んだ。
オーガーはしばらくの間、剣を手にとって不思議そうにじっと眺めていた。
だがすぐに、自分たちにとって最大の脅威とも言える天空の剣を放り出し、
それっきり剣の方には見向きもしなくなってしまった。
(え……?)
ルーシアは、予想もしていなかったオーガーの行動に驚いた。
自分がつかまったのは、てっきり天空の剣のせいだとばかり思っていたのに。
魔族にとって、天空の剣ってそんなに大事じゃないのかしら?
いや、でも……
そんなことを考えていると、不意に目の前が暗くなった。
髭面のオーガーがいきなりルーシアを見下ろすように覗きこんだのだ。
ルーシアはぎょっとした。
(え……なに……ちょっと……)
ルーシアは嫌な予感がした。まさか。魔物の目的は……
不安そうな表情を浮かべるルーシアを見て、オーガーは不気味に微笑んだようだった。
魔物は、鎖の間から飛び出していたルーシアの羽をぐいっとつかむと、
自慢の怪力でそのままへし折ってしまった。
「っっ!!」
ルーシアは声にならない悲鳴を上げた。
天空人にとって、羽は肉体の一部。折られれば当然痛みはある。
そしてその痛みは想像を絶するものだった。
オーガーは、翼を折られた痛みに顔を歪めているルーシアを、
足場がより安定している幹の上まで無理矢理連れて行くと、
彼女の鎖を素早くほどいて引き倒した。
丸太ほどもある太い腕に抑えつけられ、ルーシアは身動き一つとれなかった。
もっとも動けたとしても、翼を折られている彼女が逃げ出せた可能性は
ゼロに等しいのだが。
(いや……!)
ルーシアは必死にもがいた。
これから自分の身に起こることはたやすく想像できる。
その恐ろしい想像が現実のものとなるのを、何とか防ぎたいと考えた。
しかし、魔族の中でもとりわけ力の強いオーガーが相手では、
戦い慣れしていない非力なルーシアにはどうすることもできなかった。
「やめて……やめて下さい!」
ルーシアは叫んだ。
オーガーはルーシアの言葉を理解していないようだったが、
例え彼女の言葉を理解していたとしてもやめなかったであろう。
2枚の布を簡単につなぎ合わせただけの簡素な天空人の服を、
オーガーは力任せに引き裂いた。
「いやあっ!」
ルーシアは泣きながら悲鳴を上げて抵抗した。
「誰か! 誰か助けてぇっ!」
形の整った白い乳房があらわになると、ルーシアは腕で胸を覆い隠そうとした。
だが、オーガーはゴツい外見に似合わず素早い反応を見せた。
彼女の細腕を簡単に払いのけると、そのまま彼女の肩口を片腕一本で抑え込み、
空いている方の手でルーシアの果実を乱暴にわしづかみにした。
「いたっ……!」
痛みがルーシアの乳首を襲った。
オーガーは痛がるルーシアの様子を全く気にとめることなく、
彼女の胸のふくらみを乱暴に揉みしだいた。
「あんっ……ああっ……んっ……!」
ルーシアは最初、痛みだけしか感じていなかった。
だが徐々に今まで感じたことのない感覚が生じるのを感じ取っていた。
ふくらみの頂きはすっかり硬くなり、股間の最も大切な部分も熱くなっている。
もちろん、こんな下卑た行為に、しかも魔物相手に快感を感じているなど、
ルーシアは認めたくなかっただろう。
だが、天空上で生まれ育ち男を全く経験したことがないルーシアの身体は、
生まれて初めて生じた感覚にいともたやすく反応してしまった。
彼女が声を上げまいとしても、花のような唇からは自然と甘い喘ぎが洩れてしまう。
ルーシアにはこんな自分が情けなく、また天空人として恥ずかしく感じられた。
彼女の両目からは大粒の涙が零れ落ちた。
そんなルーシアの表情は、オーガーをさらに欲情させた。
オーガーは彼女の両膝を力ずくで押し開き、
かなり濡れてきている彼女の秘所に指をこじ入れようとした。
「いやっ!!」
ルーシアは顔を真っ赤にして膝を閉じようとしたが、
オーガーの怪力にあっけなく屈してしまった。
彼女の股間が十分に濡れているのを確認すると、
怪物はゆっくりと自分の指を差し入れてかきまわし始めた。
くちゅ……くちゅ……くちゅ……
オーガーが指を動かすたびに、いやらしい音が辺りに響き渡った。
「あふっ……んん……はあはあ…………っん……あああっ……!」
ルーシアは魔物の指の動きに合わせて身体を捩らせ、激しく喘いだ。
彼女が身体をくねらせるたびに、冷え冷えとした世界樹の幹が彼女の背中に当たった。
オーガーの指を動かすペースが徐々に上がっていくにつれて、彼女の興奮も高まっていった。
やがて耐えきれなくなったルーシアは、早くも絶頂に達してしまった。
「あああああっっ!!」
ルーシアの身体が激しく揺れ動く。指をこじ入れられた隙間からは愛液が噴き出した。
花園から蜜を出し尽くすと、ルーシアは完全に脱力した。
ルーシアが脱力した後も、オーガーはなお指を動かしつづけた。
だが彼女が動かなくなったのを見ると、魔物は手を止めて指を引き抜いた。
そして、すぐそばに生い繁っている世界樹の葉を何枚か乱暴にむしり取ると、
それらを無理矢理ルーシアの口に含ませた。
「む……!」
放心状態だったルーシアは、世界樹の葉の苦味を感じて我に返った。
搾り出された葉の汁がルーシアの喉を伝って胃に広がっていく。
すると、冷えた身体が再び熱くなり、秘部が疼き始めた。
信じ難いことに、一瞬にして絶頂前の状態に戻ったのだ!
(うそ……)
愕然とするルーシアをよそに、オーガーは自らの着衣を脱ぎ、
体同様に巨大な男根をルーシアの目の前に晒した。
緑色の男根は透明な汁を垂らしながら見事なまでにそそり立ち、
乙女の中に入る瞬間を待ち焦がれるようにひくひくと動いていた。
オーガーは、足を大開きにしているルーシアの秘部に一物をあてがうと、
そのまま一気に彼女の中へと侵入していった。
「ああうっ!!」
股が裂けるような痛みを、ルーシアは覚えた。
彼女の花園は侵入者を拒むように固く締まったが、
それはオーガーにとってまったくの逆効果だった。
オーガーは、苦痛に顔をひきつらせるルーシアなどお構いなしに、
本能の赴くまま激しく腰を動かした。すでに興奮は最高潮に達し、
オーガーの男根はルーシアの中でさらに硬く太くなっていった。
ルーシアは肩ではぁはぁと息をしながら、
地獄のような時が終わるのをただひたすらに待つしかなかった。
オーガーの激しい息遣いが耳のすぐ横で聞こえる。
頬にオーガーの熱い息がかかるたび、ルーシアは顔をのけぞらせた。
そしてついに、オーガーの先端から濃い精液が飛び出した。
「あああああああっ……!!」
同時にルーシアも2度目の絶頂を迎えた。
ルーシアの秘部はオーガーの多量の精液を完全に受け止めることができず、
隙間からは白濁した液が溢れ出た。
オーガーは発射を終えると、ゆっくりと一物をルーシアから引き抜いた。
そうしておもむろに手を伸ばすと、すぐそばに生えていた世界樹の葉を
2、3枚つかみとり、自らの口に含んだ。
すると、勢いを失いつつあった男根がたちまち元通りになり、
再び天を向いてそそり立った。オーガーは休むことなく、
今度はルーシアの口の中に竿を捻じ込んだ。ルーシアはなす術もなく、
放心状態のまま口でオーガーの巨大なものを受け止めるしかなかった。
夕日はすでに落ち、代わりに丸い月が昇り始めていた。
やがて夜が更けたころ、さすがのオーガーも飽きたのか、
何十回と白濁液を浴びて全身がすっかり汚れたルーシアをそのまま放置して、
どこかへ行ってしまった。悪夢からようやく解放されたルーシアだったが、
そのことを喜べるはずも無かった。
堕ちた天使はもう2度と天空城に戻ることを許されないだろう。
それ以上に、魔物に処女を奪われたルーシアの心は深く傷ついてしまった。
もう私は、天空人として生きていくことができないんだろうか。
ルーシアは1人涙にくれ、空に浮かぶ満月を見上げていた。
同じ頃。世界樹の根元にあるエルフの村は、奇妙な噂話でもちきりだった。
「そうそう、誰かが木のてっぺんにいるみたいなの。
『助けてぇ!』って叫んでたけど……」
「あ〜、あたしも聞いたよ。なんかとってもせっぱつまった感じだった」
おしゃべりなエルフたちの噂話は、
この日この村を訪れたばかりの旅の一行の耳にも入った。
その一行こそ、地獄の帝王を滅ぼした勇者たちだった。
後に彼らはルーシアと共に天空城を訪れることになるのだが、
それはまた別の物語である。
-----了-----