天井の遥か先にきらめく物、それは星や太陽ではなくシャンデリアであった。
さっきの天井と比べても遥かに広大な範囲に広がるシャンデリア、見覚えがあった。
ぼんやりと見上げるシャンデリア、後方に何かを感じて振り返った、そこには大きな影があった。
その影は徐々にこの空間を覆い丸い全体を現していた。
俺はその場にへたり込んで、声も無くそれを見つめ、同時に見つめられていた。
それは良く知っていた物であった、知っているだけに理解が出来ずにいた。
「こんばんわ、あなた」
やさしい口調で美しい唇が動き、周囲の空気を振動させる、妻の顔がそこに浮かんでいた。
その何気ない行動ですら、遥かに強大で絶対の力を感じさせた。
美しい美貌はそのままで10m程はありそうな大きな頭、全身を想像するには想像力が足りなかった。
その時、妻の顔の下の金属部分に3D映像で厨房の様子が写しこまれた。
多くのコックが調理にいそしんでいる、妻は超のつく資産家の娘であった。
家は巨大な御殿、レストランを3つ片手間に賄える程のキッチンには有名シェフが働いていた。