何が起こるのかと素直に従い黄色い線を越えた瞬間、轟音が響いた。
間近でジェットのエンジンが、噴射するかのような轟音に振り返って見ると火柱が上がっていた。
青白い高温の火柱は穴から3m程に一瞬吹き上がり、あっという間に消え去った。
それでも中に入れた物を灰にするには十分であった。
赤く輝きながら振り落ちる繊維屑は、あっという間に輝きを失い灰へと変化した。
その瞬間、俺はこの場所で全てを失った様に思った。
自分を証明する一切が灰になってしまった、この場所には一人の人間が立っているだけだ。
シャコン、その音と共に穴が塞がれる、その蓋には小さな穴が開いてはいた。
次にこの場所の周囲からゆっくりと暖かい液体が注ぎ込まれる。
周囲全体からゆっくりとゆっくりと流れ込んでくる、それはいつの間にか軽い渦を作り出していた。
小さな穴は必死でその液体を吸い込んではいたが、流れ込んでくる量には敵わなかった。
ゆっくりと俺の脚は液体に飲み込まれて行った、液体の渦に足を掬われてこけてしまった。
溺れる事は無かった、深さは四つんばいになれば顔を上げることが出来た。
それでも渦は容赦なく俺を転ばせて、全身を何度も液体の中に沈める羽目になった。