だらしなくも、イカされて失神したキューティー浅尾の頬を、コング松本はパチパチ
と叩いた。
「ん、ううん……」
ようやく、キューティーは目を覚ました。すぐには状況が飲み込めない
「ああっ! わたし、どうしたのかしら?」
「フッ、キューティー、お前はイッちまったんだよ。 お客さんの前で潮を吹きやがっ
て、ホントにスケベな女だ!」
コングの言葉にキューティーは、ハッとなった。身体中を責め立てられ、官能の波に
溺れそうになったところまでは覚えていた。だが潮を吹いた、とは?
「嘘言わないで!」
と即座に否定する。
「やれやれ、まだ女王きどりかよ。淫乱のくせに」
とゴングはあきれたように言うと、撮らせていたビデオカメラを、キューティーの前
で再生しはじめた。
「これを見なよ」
そこには、誇り高い元女王がけっして認めたくないおのれの姿が映っていた。十字架
に縛り付けられたまま、あちこちの性感帯を責められ、
「ンッ! ンッ! アアンッ!」
と、はしたない喘ぎ声を上げ続ける姿、そしてよがり、悶えまくったあげく、
「アアアッ!」
と大声を上げて失神し、それと同時に股間から液体を噴き出した姿、どれもまぎれも
ないキューティー浅尾の姿だった。
「いやっ!」
とキューティーは、ビデオカメラから顔をそむけたが、観衆の面前で昇天失神したの
も、潮を吹かされたのも事実であった。いくら否定しても逃れることはできない。
――そ、そんな! 嘘だわ!
キューティー浅尾はおのれの誇りを守るために、懸命に否定しようとしたが、たった
今見せつけられた画像は、その誇りを粉々に打ち砕くものだった。
そして次の瞬間、マットの妖精は更なる羞恥地獄に突き落とされた。身につけている
リンコスに何か違和感を感じたキューティーは、頭を起こして自分の姿を確認した。す
ると
(ああっ! 何よこれは! は、恥ずかしいっ!)
たちまち、キューティーは強烈な恥じらいの感情に襲われた。気を失っている隙に、
タンクトップの上着とビキニパンツが剥ぎ取られていた。磔にされたまま純白のブラジ
ャーとアンダーパンティしか身に着けていない姿にされていたのだ。
日頃からビーチバレー選手と同じ様な格好で戦っているキューティー浅尾であるが、
下着はつけていないとされるビーチバレーとは違い、もっと激しい動きのプロレスラー
の彼女は「危険防止」のためにリンコスの下に下着を穿いていた。それが白日の下に晒
されようとしていたのだ。
(いやっ! いやっ! 恥ずかしい! 見られたくない!)
キューティー浅尾は恥じらいに苦しめられた。それも道理で、彼女の二枚の下着は男
の股間を硬くさせるエッチな布に過ぎなかった。
ブラの方は、大きな両乳房が揺れるのを抑えるために二枚の三角の布を当てているだ
けの極小ブラだ。生地は薄いレースなので、乳首と乳輪まで透けてしまう。
パンティは更に過激だった。局部を隠すだけの白い逆三角の布の各頂点から出た細い
紐がつながっているだけのGストリングス。白いふんどしと言ってもさしつかえない形
状だ。細身ながらナイスバディのキューティーが、このエッチ過ぎる下着のみで磔にさ
れた姿を、男どもは今や遅しと待っていた。
「コング、早く十字架を立てて、見せてくれ!」
「早くキューティーのパンティを見せろ!」
ハアハアと呼吸を早くした男たちが、コング松本を急かしたてる。
「見せろ! 見せろ!」
美人アイドルレスラーのブラパン露出を期待する場内の男たちから大コールが沸き起
こった。
(いや! いやよ! ショーツだけは見られたくない!)
この観客の反応に、キューティーは激しく拒否反応を起こした。これまで何冊も写真
集を出し、過激なビキニ写真を見せたり、裸になり乳首と局部を手で隠しただけのセミ
ヌードすら撮らせている彼女だったが、なぜか下着姿だけは撮らせてこなかった。
それはパンティに関してのキューティー浅尾のトラウマからである。彼女の本名は浅
尾朋美という名前であるが、中学時代から美少女として有名で、学校のアイドルであっ
た。その朋美が三年だったある時、低俗な投稿写真誌にパンチラ写真を載せられてしま
ったのである。仲間三人で制服で体育座りをしている時に純白パンツを盗撮されたのだ
った。目隠しはされていたが、学校の者が見たら誰でも朋美のパンチラだとわかる写真
だった。しかも間抜けな事に撮影者に向けて笑顔でVサインを掲げていたのだ。
「すげえ、あの朋美のパンチラだよ!」
たちまち雑誌は学校中の男たちのオカズになった。知らぬが仏の朋美が、友人からそ
の事実を教えられた時、あまりの恥辱に彼女は泣き崩れたのだった。
卒業までそしらぬ顔で登校していた彼女は、密かに誓った。これからは結婚する相手
にしか下着は見せないこと。そしてわたしをスケベな目でしか見ない男どもに負けない
強い女になることを。
(ダメ! ダメッ! あの時誓ったのに……)
それ故、キューティーにとってこんな風に磔にされた姿でブラジャーとパンティを観
衆に晒すことなど、絶対に許される事ではない。
ニヤケ面を浮かべながらコング松本が近づいてきた。
「そろそろ出番だなキューティー! 客がお前のパンツを見たいとうるさいんだよ」
それを聞いた、キューティーの美貌が泣きベソ状態になった。
「お願い! お願いだからショーツ姿だけは許して! 晒し者にしないで!」
誇り高き元女王がプライドを捨てて、宿敵に哀願して許しを乞うた。だが、コングは
鼻で嘲笑った。
「もう遅えんだよ! 十字架を立てろ!」
と号令を飛ばす。
「いやあああああっ!」
というキューティー浅尾の悲痛な悲鳴とともにリング中央に十字架が立てられた。そ
こには美しいマットの妖精が下着姿で磔になっている。