(磔にされるなんていやよっ!どうしてわたしが磔にされないといけないのよ!?)
コング松本から突然磔刑を宣告されたキューティー浅尾は激しく動揺した。再びリング
に連れ戻された彼女は、極悪軍団の三下に両側から腕を拘束されコング松本の眼前に
引き出されたのである。
「どうだキューティー、これからお前を磔にするんだが、ものは相談だ、場合によっちゃ
やめてもいいぜ」
と告げた。そして絶望の底に落とされたキューティー浅尾の目に、少し希望の灯がとも
ったのを見ると
「三回回ってワンと吠えろ。そうすりゃ許してやる」
そう言うと、コングと極悪軍団の取り巻きどもは、ガッハッハと哄笑を上げた。キュー
ティーはそれにカッとなった。いまだに元女王のプライドだけは高いキューティーは、コ
ングの顔にペッと唾を吐きかけて
「みくびらないで! わたしを誰だと思ってるの!」
と言い放った。
☆☆大ピンチ! キューティー浅尾☆☆
「グフフ、相変わらずこしゃくな女だな。自分の立場をわきまえてないらしい」
頬に飛んだ唾を手でふき取ったコングは、命令を下した
「よし、この女を十字架に縛り付けろ! 磔にして晒し者にするんだ!」
キューティー浅尾の磔ショーが開始された。
「何をするの! やめなさい!」
嫌がるキューティーは、必死に叫んだが何の抵抗にもならない。つい先日まで、女子プ
ロレス界に泣く子も黙る女王として君臨していたキューティー浅尾、近づくのさえはばから
れるはずのスーパースターの身体を、極悪軍団の下っ端たちは抱きかかえ、十字架の上
に横たえた。
「ああっ! いやっ! いやっ!」
いまや半ベソ状態の元アイドルにできることは、泣き叫ぶことだけである。
「お前ら右腕を縛れ、そっちは左だ!」
コングはテキパキと指示を飛ばす。左右に大きく開かれたキューティーの両腕がそれぞ
れの手首のところで縄できつく縛り付けられた。両脚はそろえて台の上に乗せられ、両足
首まとめて、これまた縄で縛られたのだ。極悪軍団はまるで練習でもしていたかの様に手
際よく作業を進めていった。
「よし、終了!」
コングの合図で極悪軍団が離れた。あっという間にマットの妖精の十字磔が完成したの
である。十字架のサイズもまるでキューティーのために用意されていたかのようにピッタ
リであった。勘の鋭い彼女は気づいていた
(十字架なんかいきなり出てくるはずがないわ、わたしをワナにはめてハリツケにするた
めに最初から用意されていたに違いない。ひょっとしたら試合そのものも筋書き通りだっ
たというの?)
浅尾の脳裏に疑念が沸いた、これは誰かの書いたシナリオだったのではないか。そし
て目的は、わたしを辱めて人気や威信を剥ぎ取るため。
(ああ、いやっ! 磔にされて晒し者にされるなんて絶対いやっ!)
だが、事態は急を告げていた。
「フフフ、惨めだなキューティ!」
コングは磔にされたキューティー浅尾を仁王立ちで見下ろしながら嘲った。
「何なのよ、これは! こんなのプロレスじゃないわ! すぐ放しなさい!」
浅尾は、相変わらず高飛車な態度で猛抗議した。コング松本は相手にせず冷笑を浮
かべながら、残忍な宣告を告げた。
「そのとおりだよ、キューティー! もうプロレスの試合じゃないよ。これから始まるのは
元女王・キューティー浅尾主演の羞恥ショーさ!」