(そんな! 違うわ! 濡れるなんて嘘よっ!)
キューティーにもビキニパンツがおのれの愛液で濡れ出したのはわかっていた。頭で
は官能の指戯に逆らおうとするのだが、肉体の方は自然と反応していくのだ。しかし、そ
の事実を受け入れられないでいた。
「アンッ! ン! ンン!」
相変わらず喘ぎ声を出すことを強いられ続ける妖精であった。そしてその蜜壷からの
秘液は、ますます大量に溢れ出し、遂にはパンツを濡らすだけでは足らず、浅尾の股間
からポタポタとコングの上腕部に垂れだしたのだった。
「グフフ、ジュースが外に漏れ出したか。濡れすぎだぜキューティーよ。よほど普段から
溜め込んでるらしいな」
とコングはキューティーの傷に塩を塗りこむような言葉責めで畳み込んだ。
「やだっ、何あれ! パンツが濡れてるじゃない!」
「いやらしい! 淫乱すぎるわ!」
「なんて恥知らずな女なの!」
少女ファンは口々にキューティーを罵り、逆に男性ファンは、一斉に股間を更に硬くして、
この光景を歓迎した。
かつての自分の崇拝者からの、嘲り、軽蔑の声は容赦なくキューティーの耳にも入って
来ていた。
(ち、違う! わたしそんな淫らな女じゃない!)
頭の中だけでは懸命に否定はしたものの、はしたなく喘ぎ続け、あまつさえ自分の愛
液がどんどん溢れ出しているという現実の前では、スーパーアイドルキューティー浅尾
が最低の淫乱女だと、貶められる事を否定する事はできなかった。
(も、もうわたしダメね、ファンの子たちを裏切ってしまった……)
この期に及んでようやく、かつてのファンが自分を痛烈に批判している現実がキューテ
ィーの身にしみじみと感じられた。かつての無敵の女王を支えてきた闘争心の灯ももは
や消え去ろうとしていた。
「アアッ! ン! アン! アン!」
だがそんな思いとは裏腹に肉体の方は激しく反応し、喘ぎ続けていた。やがて、キュー
ティーの脳裏に一つの恐れが現実味を帯びて迫ってきた。
――このまま、イカされてしまうのではないか?
という恐れだ。これまでプロレス一筋の青春を過ごし、完全な男断ちを続け一度もセッ
クスしたことのないキューティーだった。若さならではの性的欲求は、激しいトレーニン
グで昇華させ解消してきた。オナニーすらほとんど経験がなかったのだ。当然、性的絶
頂がいかなるものかを経験したことはない。
――オーガズム? 絶頂? 昇天?
雑誌などでしか見た事のない淫らな言葉の数々が頭の中にグルグルと渦巻き始めていた。
頭では否定してみても、肉体の方はどんどんヨクなっているのは確かなのだった。
完全に身体は反応させられている。もう抵抗できない。
――完全にイッてしまったら失神するらしい。
そんな事を読んだことがある。
(いやっ! そんな姿、絶対見られたくない!)
失神したらその時点で負けである。さりとて、丸坊主にされる事も簡単に容認はできな
い。要するに今のキューティーには、このまま官能に身を委ね昇天させられて負けるか、
ここでギブアップするか、というどちらかの選択しか残っていなかった。
もう絶頂近くまで追い詰められていた。
(ああ、もうダメっ!)
同じ負けるなら、恥の少ない方がましだ、と浅尾は考えた。もう自分はすべてを失って
しまったのだ。刀折れ矢尽きた元女王の口からとうとう屈服の一言が漏れた
「ギブアップ……」
これで試合は終了となった。だがマットの妖精が受ける恥辱は、まだまだ終わらないの
であった。
リング上でコング松本は勝利の勝ち鬨を上げた。
「さて、てめえら、これからキューティー浅尾の丸刈りショーを始めるぜ!」
と高らかに宣言した。
「ウォー!」
と場内も応える。リングでうつ伏せになったままこのやり取りが耳に入ってきたキュー
ティーに、大観衆の面前で丸坊主にされる恐怖がひしひしと迫ってきた。
「いやあああっ!」
と叫ぶと、最後の力を振りしぼってゴロゴロ転がって場外に飛び出た。恥も外聞もなく
またしても逃げ出そうとしたのである。
「逃げたぞ、捕まえろ!」
コングが命じた。数メートルも逃げることはできない。場外は極悪軍団のレスラーばか
りである。たちまちリング上に連れ戻されてしまった。キューティーのこの往生際の悪い
行動に場内は大ブーイングに包まれた。
「いやよっ! 丸坊主になんかしないで!」
とわめき散らすキューティーのこの行動を、チャンピオンはまるで予想していたかのよ
うであった。
「諦めの悪いヤツだな、フフフ、逃げようとした報いに罰ゲーム追加だ!よし、例のモノ
を出せ!」
極悪軍団の下っ端に命じた。そしてリング下から取り出されたものを見てキューティー
浅尾は凍りついた。それは3mほどもある大きな木製の十字架であった。
「罰ゲームとして磔の刑だ! キューティー、お前は磔にされて丸坊主になるんだ!」
美しいマットの妖精が、これから巨大な十字架に磔にされるのである。