263 :
名無しさん@ピンキー:
見事な奇襲攻撃で優位に立ち、あと一歩という所までチャンピオンコング松本を追い詰
めたキューティー浅尾だったが、コングの卑劣なアナル攻めで攻勢を挫かれ、大チャンス
を逸してしまった。
「卑怯者!」
と罵ったが、もともとラフファイトが身上のコング松本にとっては、そんな非難など耳
に痛くもなかった。スタミナに不安のあるキューティーにとっては短時間での決着に持ち
込めなかったのは痛かった。長引くほど不利になってくる。
「この野郎!」
と、すさまじい形相で飛びかかってくるコングを危うくかわして逃げる。捕まって組み
伏せられたらおしまいだ。
「逃げまわってんじゃねえよ、そっちこそ卑怯者じゃねえか!」
とコングの罵声を浴びる。その通りである、逃げてばかりでは勝機は掴めない。いつか
は捕まってしまう。
――ああ、何か、何か手はないの?
少しずつ、キューティーに焦りが浮かんでくる。ギリギリの真剣勝負では、決して焦っ
てはならないのが鉄則なのだが。
そして、ここで致命的な勇み足を犯してしまう。
――よし、あの必殺技で勝負よ!
キューティーがコング松本用に訓練した必殺技、自分にとっては最後の切り札をここで
切ってしまったのである。
264 :
名無しさん@ピンキー:2007/11/23(金) 12:38:48 ID:/yrnsKyY0
いきなりコングに背を向ける。リングを対角線に駆けた。そしてコーナーのてっぺんま
で駆け上がる。そしてリング中央の王者に向ってダイビングしたのである。
「とおっ!」
両腕を開いて飛び込んでいく。大技フライングボディアタックだった。
「すごいっ!」
観客から驚嘆の声が上がる。華麗な跳躍。まるで大空を飛んでいるかのようだ。
――これで決まりよ!
キューティー浅尾の全身全霊をこめた必殺技だ。すべてを賭けた最後の切り札である。
交わされれば自爆に終わってしまう。だが、さすがのコング松本も、不意を突かれたせい
か逃げることはできない。
全体重をかけてコングの上体になだれ込んでいく。そしてそのままダウンを奪って、押
さえこんでスリーカウントのはずだった。ところが――
「ああっ! そ、そんな!!」
キューティーの悲痛な叫び声が響いた。彼女の乾坤一擲のフライングボディアタックは
コング松本に空中でガッチリ受け止められてしまったのだ。コーナー最上段からのプラン
チャを受け止めるとは、信じられない超人的パワーだ。
「グフフ、わかったかい、おめえの技なんぞ通用しねえんだよ!」
嘲ったコング松本は、ボディスラムでキューティーをリングに叩きつけた。
(い、いやっ! わたしの技が通じないなんて!)
リングのスーパーアイドルは絶望の底に叩き落とされた。激しいトレーニングでマスタ
ーした最後の必殺技も通用しなかった。彼女にはもうカードは残っていない。
「ああ……」
場内のキューティーの少女ファンたちからも、諦めのような溜息が洩れた。彼女たちも
悟ったのだ、自分たちのヒロインにはもう勝ち目がないことを。
試合は、マットの妖精の再度の陰惨な公開処刑へと変わっていく。