【機械化】サイボーグ娘!十四人目【義体化】

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1名無しさん@ピンキー
サイボーグ娘に萌えるスレです。
人工皮膚系・金属外骨格系どちらも(それ以外も)OKです。
事故や病気で体を失って機械化した娘、特殊な作業に特化した体を得る為に機械化した娘、萌えるじゃないですか!
無理やり機械の体に改造されてしまった娘も、自分の機械の体で悩む娘も、能天気な機械化娘も、萌えるじゃないですか!
そんな趣旨のスレです。

アンドロイド娘とはかなり方向性が異なるので別スレにしてみました。
アンドロイド娘は完全人工な娘、サイボーグ娘は生身だったのを機械に改造した娘です。
区別の目安としては、脳味噌が生身か造り物か、という事になります。

前スレ
【機械化】サイボーグ娘!十三人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1162439193/

前々スレ
【機械化】サイボーグ娘!十二人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1159573979/
前々々スレ
【機械化】サイボーグ娘!十一人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1156433128/
21の続き:2006/12/27(水) 02:41:12 ID:R1Jo+hio0
【機械化】サイボーグ娘!十人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1151160523/
【機械化】サイボーグ娘!九人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1144849034/
【機械化】サイボーグ娘!八人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1134767816/
【機械化】サイボーグ娘!六人目【義体化】 (実質七人目)
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1126369982/
【機械化】サイボーグ娘!六人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1120438550/
【機械化】サイボーグ娘!五人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1115785525/
【機械化】サイボーグ娘!四人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1109861097/
【機械化】サイボーグ娘!三つめのパーツ【義体化】
http://pie.bbspink.com/feti/kako/1082/10828/1082827604.html
【機械化】サイボーグ娘!二回目の手術【義体化】
http://pie.bbspink.com/feti/kako/1064/10645/1064515330.html
【機械化】サイボーグ娘!【義体化】
ttp://wow.bbspink.com/feti/kako/1062/10626/1062698217.html
サイボーグ娘スレッドSS保管庫
http://www.geocities.jp/hokuman_hailaer/hokanko/
33の444:2006/12/27(水) 11:15:57 ID:A1LGi5zF0
>>1
スレ立てありがとうございます。
学園祭の続きは、夜にアップします。
43の444:2006/12/27(水) 17:45:22 ID:A1LGi5zF0
ttp://www.geocities.jp/hokuman_hailaer/story/20.htm
投稿間隔が空いてしまい、今までの話の展開を忘れているかと思いますので
とりあえず、こちらに既投下分をまとめてみました。
5名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 19:08:59 ID:0jxmjYq00
1さん乙です
保守
63の444:2006/12/28(木) 00:25:41 ID:g+mju2Y40
  軽快なドラムのリズムに合わせてノリにノッたギターの音色が、私のところまでかすかに響いてくる。聴く
人の心をうきうき沸き立たせて心拍数を20は上げちゃうようなアップテンポの曲。でも、誰もいない教室に一
人取り残された今の私にとっては、イライラのタネにしかならない。かろうじて聞えるメロディーにあわせて歌
詞を口ずさんでみても空しいだけ。
  ちょうど体育館では学校中の生徒を集めて毎年恒例の大ライブが開催されているところ。大ライブなんて
いうだけに、毎年プロのアーティストを呼んで結構本格的にやっている。もちろんプロのアーティストっていっ
ても学園祭の予算なんてたかが知れてるから、中里忠弘とか夢崎ひなたクラスの大物は呼べっこない。いつ
もなら、音楽に詳しい人なら聞いたことがあるかなっていう程度の駆け出しのインデイディ−ズバンドでお茶
を濁すのがいいとこ。でも、今年は違うんだ。テンホイラーって知ってるかなあ?ほら、「穢れなき悪魔」とか
「果てしなく後ろ向きにバンザイ」とかで有名な五人組の。去年の紅白にも出てた。今、体育館でライブやっ
てるの、そのテンホイラーなんだよね。実は、ウチの高校って彼らの出身校なんだって。それが縁で、ありえ
ないくらい格安で学園祭ライブを引き受けてくれるたんだって。ウチの学園祭実行委員も、テンホイラーも、
なかなかヤルよね。
  でもね・・・いくら有名バンドが来てくれたってさ、私が見に行けなきゃしょうがないよ。みんな、お化け屋敷
をやってる最中は、私のおかげでこんなにお客さんが入ってくれた、こんなに写真が売れたって、あんなに私
を持ち上げて大喜びしてたくせに、いざライブがはじまったら私のことなんかそっちのけで体育館に一目散だ
もん。さんざん私を利用しておいて、コトが終わったらまるでフィルムのなくなった「撮れルンです」みたいに私
をポイ捨て?薄情なもんだよ。
  おかげで私は誰もいなくなってしまった薄暗い教室のベットの上で、相変わらずのバラバラ姿で放置プレ
イ中。私だって、テンホイラー見るの、楽しみにしてたのに。サビのところで、みんなで一緒になって後ろ向い
てバンザイしたかったのに。
73の444:2006/12/28(木) 00:26:38 ID:g+mju2Y40

  はじめはふてくされていたせいか、こんなカッコで暗い部屋に一人っきりってコト、余り意識していなかっ
たけど、だんだん時間が経つにつれて、忘れかけてた恐怖心が心の底からちりちり湧き出してくる。
  なにしろ今私がいるのは教室とはいえお化け屋敷。独りでに歩き出す理科室の骸骨とか、夜中に葬送行
進曲を奏でる音楽室のピアノなんてものが、薄いカーテンの仕切りを隔てて私のすぐ隣に置いてあるんだ。
薄気味悪くないっていったら嘘になる。
  クラスメートの中にはオカルトの類にはまっている人もいるけど、私はお化けや幽霊なんて非科学的なも
のはこれっぽっちも信じちゃいない。この教室にあるセットだってフツーだったら笑い飛ばすようなくだらない
物ばかり。でも、黒いカーテンで仕切られた光の差し込まない教室の中に身動きもままならず一人ぼっちで
いなきゃいけないとなったら話は別だよ。標本用の骸骨が勝手に動いて私の首を絞めてきたらどうしよう、と
か、ピアノが独りでに鳴り出したらどうしようなんて、普段は想像力のカケラもないくせに、こんなときばっか
り、まるで三流ホラー映画のワンシーンのようなありえない妄想が次から次へと頭に浮かんできちゃう。だか
ら、ここから脱出すべく、なんとか自力で手足をくっ付けようとあがいてみたけど、コード一本を残して義体か
ら切り離されて床に転がっている手をうまく操って、ベットの上までよじ登らせるなんて芸当、やっぱり私には
無理だった。結局、今の私にできることといったら暗い部屋の片隅で、誰かが私がいないってことに気がつ
いて探しに来てくれるのを溜息混じりにじっと待つことだけなんだ。

  (あーあ)
  天井に向かって何回目かのため息をついた、ちょうどそのとき、
”てん、てん、てん”
  いったいどこからやって来たのか、赤いまりが、ゆっくり弾みながら私の寝かされているベットに近づい
て、そしてベットのへりに当たって跳ね返り、傍らに置いてあった椅子にぶつかって動きを止めた。
(これって・・・さっきまで川崎君が使っていたまりじゃないか)
83の444:2006/12/28(木) 00:27:22 ID:g+mju2Y40
  私は、ごくりと息を飲み込んで、恐る恐るまりが転がってきた方向に視線を辿っていく。視線の先にあった
のは隣の部屋と、私のいる部屋を仕切っている黒い厚手の布切れでできたカーテン。このまりは、あそこか
ら、つまり隣の小部屋から転がってきたってことだ。でも、まりがひとりでに転がるわけないよね。つまり、あ
のカーテンの向こうに誰かがいるってこと。
(ひょっとして、例のまりつきの少女の霊?)
  とっさに思い浮かんだのはさっきまで川崎君が演じた空襲で焼け死んだっていうまりつきの少女の霊。彼
女のホンモノが現れて、一人ぼっちの私をまりつき遊びに誘ってる?

__________________________________________
  放課後の教室に一人っきりでいると、どこからともなくおかっぱ頭に吊りスカートをはいた少女が現れま
す。少女の霊は人懐っこく笑いかけたあと、まりをあなたに向って放り投げるのです。
『一緒に遊ぼうよ』
  少女が欲しいのはお友達。自分と永遠に遊び続けてくれる相手を求めて夜の学校を彷徨っているので
す。でも決して一緒に遊んではいけません。まりを受け取ってはいけません。
  もしも・・・まりを受け取ってしまったら・・・。
  一心不乱にまりをつくあなた。まりに魅入られたあなたに他のものは、何も見えません。
  まるで意思があるかのように独りでに弾むまりに導かれるように、あなたは、まりをつきながら階段を登
って、気がつけば学校の屋上へ。
『こっちで一緒に遊ぼうよ』
  柵の向こう側で楽しげに微笑む少女。
  まりは、あなたの手を離れて大きく弾んで柵を越え、柵の向こう側の虚空に浮かぶ少女のもとに、まるで
地面があるかのように転がっていきます。
『お姉ちゃんもこっちに来てよ』
  まりを小脇にかかえながら、あなたに向って手を差し伸べる少女。
  少女に魅入られたあなたは、何の疑問ももたずに柵を乗り越えて少女のもとへ。
93の444:2006/12/28(木) 00:35:16 ID:g+mju2Y40
  ・・・行けるはずがない。
  翌日の朝、6階建ての校舎の屋上からコンクリートの地面に叩きつけられて、血まみれになったあなたの
死体が発見されるのです。
__________________________________________

  これがうちの高校に伝わる手鞠つきの少女の幽霊のお話。ちっとも怖くなくって、はっきり言って怪談バ
ナシとしては三流もいいとこ。でも、実際にこんなふうに私以外に誰もいないはずの教室でいきなりまりが転
がってきたとしたら話は別。どうしたって、少女の霊の存在が頭をチラリとよぎってしまう。
  でもね、まさか、そんなことあるはずないよ。あれは下らない作り話。これ、きっと川崎君の仕業に違いな
いんだ。川崎君が私を驚かそうとして、こっそり教室に入ってきたんだ。そして、ふざけてまりを転がしてみ
た。そうだ。そうに決まってるよ。
「そこにいるの、川崎君なんでしょ?そんな馬鹿なことやめてさ、早く私を助けてよう」
  私は、まりの出所に向かって、頭に染み付いた恐怖を振り払うように勢いよく声を張り上る。でもカーテン
の向こう側からは何の返事もない。部屋の壁にかけられた時計のコチコチ音が、不気味なくらい大きく聞こ
えるだけで、教室は相変わらずしーんと静まり返ったまま。
「ちょっと。川崎君、そこにいるんでしょ。いるなら意地悪しないで返事してよう!」
  苛立ち半分、恐怖半分、いつの間にか私の声は悲鳴に近くなる。
  
  かさかさかさっ。
  乾いた布が触れ合う音がして、部屋を仕切る黒いカーテンが遠慮がちに少しだけめくられて、夕暮れ時
の光が薄暗い部屋に差し込んで、白い壁を黄色く染め上げる。その光の向こうに影絵のように逆光で浮か
び上がるヒトガタのシルエット。生身の目なら、影の主が誰だか分からないだろう。でも、私の機械の目にか
かればまる分かり。カーテンの隙間から半分顔をのぞかせて、じぃーっと黙ったまま私のことを見つめてるの
は、川崎君じゃくて、おかっぱ頭に吊りスカートっていうまるで古い白黒写真からそのまま抜け出してきたよう
なイデタチの小さな女の子。
103の444:2006/12/28(木) 00:37:33 ID:g+mju2Y40
(女の子?)
  私の背筋にぞぞぞーっと悪寒が走り、全身が総毛だったような気がした。もう、そんなことを感じられる感
覚器官なんか無くなっているはずなのに・・・。
(女の子って、まさか、まさか・・・)
  多分これは目の錯覚に違いない。幽霊なんているわけないんだ。無理やりそう自分に言い聞かせた私
は、いったん目を閉じてから、祈るような気分でもう一度目を開く。私の期待に反して女の子は相変わらず、
その場に立っていた。
「お姉ちゃん。一緒に遊ぼうよー」
  可愛らしい無邪気な少女の声。でも、今の私には死神の死刑宣告にしか聞こえない。
  ぺた、ぺた、ぺた。
  少女は、たどたどしい足取りで歩き始め、夕陽に照らしだされた少女の長ーい影が私の顔にかかる。
「嫌――っ!嫌々っ!来ないでっ!誰かっ!助けてっ!誰かあーーーーっ!」
  私は恥じも外聞もなく悲鳴を上げてベットの上でのたうちまわった。今すぐにこの場から後ろを振り向か
すに逃げ出したい。でも、私の手足は床に転がったままでたらめに跳ね回るだけで何の役にも立ちはしな
い。
  ホントは、私はフツーの人よりずーっと強いんだっ!リミッターを外しさえずれば義体出力は150馬力で、
幽霊にだって怖くなんかないんだ。そんな私が幽霊なんかに殺されるなんてっ。
(時間よ止まれ。止まってください。お願いしますっ。神様っ、仏様っ)
  結局私にできることはガタガタ震えながら神仏にすがって奇跡が起こることを信じるだけ。そして、そんな
私の祈りが天に通じたためしは生まれてこのかた、一度だってありはしない。今だって・・・
「お姉ちゃん。どうして遊んでくれないの?」
  ・・・気がつけば少女は、ベットのすぐそばで私を見下ろしてる。
(殺されるっ)
  恐怖の余り、私の人としてのプライドはたやすくへし折られる。
113の444:2006/12/28(木) 00:38:48 ID:g+mju2Y40
「わっ、私、人間じゃないんですっ。人間みたいに見えるけど人の形をしてるだけの人形なんだよう!」 
  人形だなんて、普段の私ならゼッタイ自分からは言えないコトバ。でも、恐怖に負けた私は苦し紛れに思
わず口走ってしまう。命さえ助かれば人間としてのプライドなんてちっぽけなもの。どうせ、私にとって人間で
ある部分なんて無いに等しいんだ。お願い。私のこと、見逃して。私は人間じゃないんだから。お願いっ。     
「だだだだから私と遊んでもゼンゼン面白くないんだ。人間なら、体育館にたくさんいるんだ。お願いだからそ
っちに行ってよう!」
  少女に向って必死に震えながら命乞いするバラバラ死体。なんて滑稽な光景なんだろう。ハタから見た
ら、可愛らしい女の子より、手足バラバラのくせに痛がりもせず、こんなふうに喋りまくる私のほうがよっぽど
薄気味悪い存在のはずなのに。
  そう、私は薄気味悪い喋る人形。幽霊だってもとはただの女の子だもん。ひょっとしたら、こんな私の姿を
恐がってくれるかもって、ちょっぴり期待した。
  でも、駄目でした。 
「お姉ちゃん、人間じゃないの?ひょっとして私の仲間?」
  私のコトバはお化け少女の好奇心をますます煽っただけみたい。
  つつっと、のの字を書くように頬の上を少女の指先が這いまわる。
  私の頬は、手のひらとか足の裏と同じように温度を感じ取れる数少ない箇所。だから、女の子の指が、
人間の指ではありえないくらい、まるで氷みたいに冷たいってことをはっきり感じ取ってしまった。
「ぎやああああああああああああああああああ!ぎゃあああああああああああ!」
123の444:2006/12/28(木) 00:55:33 ID:g+mju2Y40
本日はここまでです。

manplusさん
特殊公務員ネタはリハビリ編で避けて通れないんでいつか必ず書かなければ
ならないですね。
でも、私の知識ではうまく書けるか自信がないのです…。
13名無しさん@ピンキー:2006/12/28(木) 01:14:13 ID:s7b9AxCz0
>>12
いつも乙です

>テンホイラー

(・∀・)ニヤニヤ
14名無しさん@ピンキー:2006/12/28(木) 19:44:29 ID:uttI15h00
>もちろんプロのアーティストっていっても学園祭の予算なんてたかが知れてるから、中里忠弘とか夢崎ひなた
>クラスの大物は呼べっこない。いつもなら、音楽に詳しい人なら聞いたことがあるかなっていう程度の駆け
>出しのインデイディ−ズバンドでお茶を濁すのがいいとこ。

すいません、私の母校には売れ始めた頃の浜崎あゆみが来たことがあります。
しかも、結構盛り上がってたのが歌が始まったとたんに静まり返ってしまいました。
浜崎がテンションを上げれば上げるほど、観客席は静かになっていきました。
挙句の果てに「上手いか?」「下手だなぁ」「前座の人たち(ゴスペラーズ)のほうが良かった」などと、
小声で会話を始めてしまいました。ごめんなさい。
ちなみに、私の母校には武田鉄矢も来たことがあります。
15名無しさん@ピンキー:2006/12/29(金) 17:20:57 ID:6lV/QcjV0
>>14
歳がばれる。& スレ違い。だけど、

町の公民館にいまいちメジャーになりきれてなかった森高が来た。満席どころか前1列のオッカケだけが客で
地元の大学生やら地元高校やらそこらへんからサクラとして狩り出された。
MCのとき、「来るとき○○(地元の観光地)が高速道路から見えました。」に
「見えへん。見えへん。」と大声でヤジまで飛び交っていた
16名無しさん@ピンキー:2006/12/29(金) 18:28:54 ID:F98SMlqE0
地元の大学にデビュー直後のモー娘。が来たときは大騒ぎだった…
173の444:2006/12/29(金) 18:41:52 ID:TUNuq0m90
なんだ。
「チュリー」や「ひな」クラスの大物も学園祭に普通に来るものなんですね。
いいなあ。
18名無しさん@ピンキー:2006/12/29(金) 18:44:12 ID:tH8Ef8kk0
通っていた大学にプリンセスプリンセスがきたときには(ry

その後モー娘。がきてもなんとも思わなかった
19名無しさん@ピンキー:2006/12/29(金) 19:54:40 ID:44vmBbUA0
通っていた大学に林原めぐみが
学祭実行委員会も偏った人選を・・・w
20pinksaturn:2006/12/30(土) 17:21:51 ID:R2Rd0yZp0
(オプションパーツの続きです。)

−− (34)アイス・キーパー −−

(経済特区 地底アイスワールド分園)

ミキ:「16回転ジャンプ...あれっ?。!Σ( ̄□ ̄|||) ガビーン! 。4回転になってしまった。
低かったなあ。おかしいわ。何でパワーが出なかったかね。」

観客:「( ゚д゚)ポカーン???。」「なんかおかしくない?。」「お腹でも壊してるのかな?。」「サイボーグが病気?。まさかぁ。」「破壊工作じゃ?。( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` )」

マオ:「(ミキの奴、不調だな。今日はいただき。)高速13回転ジャンプ!決まった...
(ズルッ)あっ、足首関節の角度制御が追いついてないわ...はは、冗談冗談...
ふむ、ステップシークエンスは普通にスイスイと出来るな。さっきの動作遅延は何だったのかしら。
連続8回転ジャンプ、今度こそ決まった???...えっ?また...ぐきっ。
ぎゃっ...あっ(((( ;゚ρ゚)))アワワワワ ...足首取れちゃったorz。」

観客:「おおお。すごい。今日の目玉はメカバレショウでつか。(*'A`)ハァハァ 。もっとやってぇ。」

マオ:「(゚д゚)マズー 。何とか誤魔化さねば。理美、ハル、みどり、予定変更。すぐ出て!。」

ハル:「そんなあ。いきなり何をやったらいいんですか?」

マオ:「理美はカロンでやったとおりで良いわ。ハルとみどりはM字開脚滑走でもやって見せて。
こうなったら、今日はお笑い&エロ路線で誤魔化すしかないわ。」

みどり:「えーっ、ここでやるのぉ。トホホ。」

マオ:「M字開脚滑走しながら散らばった部品を拾うのよ。私はとにかく一旦引き揚げなきゃ。
よいしょっ、片足滑走...なんとか保ってくれよ。」

理美:「あーっ。ショックアブソーバーのオイルまき散らさないで下さい。氷の掃除が大変です。」
21pinksaturn:2006/12/30(土) 17:23:05 ID:R2Rd0yZp0
(地底アイスワールド 控え室)

ミキ:「マオ、またしてもドジッたわね。こんなの http://pinksaturn.fc2web.com/miki-yuusyoukinen.htm#kokemao ネットに貼られちゃったがね。」

マオ:「あんたこそ、突然膝のリニア牽引帯で力が出なくなってジャンプしょぼったじゃない。」

ミキ:「くっ、事前のテストでは何も問題なかったのに...。」

理美:「本番ではどうしても力みで余計な負荷がかかりますから、マージンが不足したのでしょう。」

マオ:「どういうこと?。」

理美:「私たちは全身サイボーグといっても小脳や脊髄が天然ですから、緊張すれば力みは生じます。
身体制御CPUでは緊急時の運動を考慮して瞬間的な過負荷指令にはリミッターをかけていません。
だから、力みによる無理な運動命令はそのまま関節や駆動回路に過負荷をかけることになります。
サイボーグ体は各部品にマージンがあり、通常考えられる短時間の過負荷で故障することはありません。
しかし、長年の訓練によって人外の高度な技を体得したミキさんやマオさんの場合は別です。
おまけに、技の都合に合わせるため足首関節を変則的な構造にしているから急速に壊れたんです。
ミキさんが突然出力低下に見舞われたのも駆動回路のパワーICが急速に劣化したせいでしょう。
関節の自由度を増やすためにリニア牽引帯のストロークを延長した分、駆動回路が苦しいんです。」

ミキ:「それもそうね。しかし、足首関節が標準品だと、なかなか見せられる技はねえ...。」

マオ:「何か良い対策がないかな。やりすぎを検知してリミッターが効くように出来ないかしら。」

理美:「パパの研究によると、運動が起こってから急にリミッターを効かすとかえって危険です。
やはり、命令を発する側で末端の機器に加わる負荷を計算して限度内に収めるしかありません。」
22pinksaturn:2006/12/30(土) 17:23:56 ID:R2Rd0yZp0
ミキ:「それが出来るように猛練習しとるがね。それでも力みが完全には除けんのよね。」

理美:「技が高度化しすぎて練習でどうにかなるレベルを超えてしまったのでしょう。
真に有効な対策は小脳と脊髄を機械化して完全に計算された運動命令を生成することです。
でも、まだ未完成の技術ですし、仮に成功しても最初は脊損者のQOL改善が精一杯でしょう。
今できる対策は、過負荷が避けがたい事を前提に全身バランスを計算した脚構造にするだけです。」

ハル:「そういえば、お母さんが小競り合いの際に入手した北米サイボーグのデータを解析してたね。
酉山博士の研究とは補完関係になりそうなので、近々組み合わせて見たいとか言ってたわ。」

理美:「パパもその話をしていたわ。冬子大尉の望む使い方なら可能性があるって。」

マオ:「冬子さんが使えるかどうかって状況だと私らがあてにするにはまだまだねえ。」

理美:「ええ。私もパパに再改造して貰うのは楽しみなんですが、随分先の話みたいです。」

みどり:「今から実験開始だと、成果が判る頃は私たちカロンに行っているんですね。
お母さんの体が良くなって、また一緒に宇宙で活動できるようになったら良いなあ。」

理美:「冬子大尉が復帰してくれると私ら耐高加速操舵員のローテーションが楽になるわ。
パパには頑張ってもらわなくちゃね。」
23pinksaturn:2006/12/30(土) 17:27:31 ID:BTOEIboa0
(酉山科学研究所)

冬子:「ごめん下さい。」

酉山:「あ、冬子大尉。北米連のデータとこちらの収集したものを比較する件ですね。」

冬子:「そうです。我々が手に入れた北米サーボーグの身体制御データのコピーを持ってきました。」

酉山:「送っていただいた解析結果の要約は既に読みました。
そのデータは物を掴む、歩く、走るといった基礎的な運動を入念に収集してあるのが特徴ですね。
最初に素体の手足がある状態で並列接続したボディの運動制御を校正しているようです。
しかるのち手足を切断して感覚を機械による感覚だけとした状態で再校正したのでしょう。
脊髄に頼らず手足を円滑に動かすという目標に対してはよく考えられた取り方をしてありますね。

冬子:「ええ、その代わり重い巨体を前提にしたためか跳ぶといった急な運動が入っていません。
内蔵バーニアで代替するから跳躍力は必要ないという考え方に基づいて構築された身体制御系です。
おまけに、宇宙艦操舵員に欠かせない性感については全くデータがないのです。
そちらで収集した理美のデータで補完できるのではとのご提案にはなんとお礼を言ったらいいか。」

酉山:「理美が世話になった元素体教官の貴女にデータを使って頂くのはむしろ光栄ですよ。
ただ、正直なところ理美の性感には重大な欠陥があります。操舵員としての機能なら問題はありません。
しかし、低年齢でサイボーグ化したため脊髄が未成熟な性器の感覚しか経験していません。
そのために、性的に成人になれないのです。自慰のやり方なんか小学生丸出しなんですよ。
事故のためサイボーグ化時期を選べなかったというハンデだけはどうにもなりません。
そのデータを2度の自然出産歴がある貴女にインストールすることは精神衛生上のリスクが大きいです。
あと、量が非常に多いので帝国の身体制御CPUアーキテクチャでは扱いづらいのも問題ですね。
これについては私が独自に考えたCPUアーキテクチャを使えば解決できそうです。
案自体は以前からあったのですが、利用できるデバイス技術が無くてお蔵入りしていました。
あなた方が工場衛星で使っているプロセスならサイボーグに搭載できるかたちで製造できそうです。」
24pinksaturn:2006/12/30(土) 17:29:02 ID:BTOEIboa0
冬子:「性感が幼いという問題は時間をかけて成長の過程を辿りなおすことで克服するつもりです。
私には協力してくれる夫もいますので、いずれやり直せると思います。
CPUの生産に関しては脊髄障害を持つ特例志願兵が共同出資してラインを借り切る予定です。
既に出資の受け皿となる匿名組合が設立されていて、私が資産管理者に選任されています。」

酉山:「それは心強いです。しかし半導体ラインの私用借り切りは宙軍兵さんでもきついでしょう。」

冬子:「帝国の障害者福祉に寄与するというので、悲田院も出資してくれるからできるのです。
それにこれが成功してCPUが軍の公式品に採用されれば逆に利益が取れる可能性もあります。」

酉山:「そうですか。皇室も乗り気ですか。成功させて、当研究所の商品にも使いたいですね。
手足の特装品に関して輸出事業の許可を貰ったのですが、難しい注文ばかり来て困っています。
例えばケンタウロスに憧れた金持ちのメタロリ娘から来た馬型下肢の製作打診には参ってます。
人間の神経は脚2本分の命令しか出せないのに、それで4脚を円滑に動かせと言うんですよ。」

冬子:「軍の方でも同様の課題はありますね。18式試作重機の歩行制御で困っています。
今のところ2人がかりで動かすことになったのですが、息が合わないと難しくて。」

酉山:「重機の巨体なら搭載制御装置も余裕がありそうですが従来技術では難しいんですか。」

冬子:「1人で4脚を動かすことが日常化できないとソフトウェアの改良が進みません。」
25pinksaturn:2006/12/30(土) 17:30:20 ID:BTOEIboa0
(カロンに向かう定期便 高速連絡艦”なると”)

マサ:「2度目となるとみんな慣れてきたのか余裕がありますね。」

真理亜:「油断が怖いわ。特に藻前は危ない。」

マサ:「有栖はどうしているかな。」

真理亜:「公家の執事に任せておけば万事うまく行くのよ。今は任務に集中しなさい。」

ハル:「格納庫の巡回終わりました。加速による荷崩れはありません。」

真理亜:「ご苦労さん。」

ハル:「大型隕石移動装置を7基も詰め込んでいるので、ちょっと心配でしたね。」

知子3世:「輸送も大変だけど、組み立てるときは凄まじく忙しいわよ。」

マサ:「降下艇無しで18試重機2機だけに頼るってのも気がかりですね。
結局、今回の任務では後ろ足の自動追従が間に合わなくて2人がかりですからね。」

真理亜:「そのために日常から一緒に行動している者を集めているから何とかなるわよ。
特に、マオーミキ組とハルーみどり組は休暇中も氷の上で組んでいたんだからね。
それに理美も一緒にやっていたから誰かが都合悪くなっても交代できるでしょ。」
26pinksaturn:2006/12/30(土) 17:31:41 ID:te/moyS50
みどり:「おかげで初めてカロンにいけるのは楽しみです。」

マサ:「金星に出来た水たまりを保たせるために5万dの氷1個は超特急だからね。
移動装置3基をまとめて設置するのは前回重機4機でやってもきつかったわ。
配置が悪いと制御し辛くなるしね。今回はあんまり風景を楽しむ余裕なんか無さそうよ。」

ハル:「あの地点は周囲との温度差が600度もあるために凄い渦が発生してたでしょ。
予想を上回るペースで溶けてますよね。急いでも4,5年後で間に合うんでしょうか?。」

真理亜:「塵で太陽光が遮られたせいで最近は周囲温度が20度ほど下がっているわ。
クレーターの深さが1`ほどあるから減ってきても底の方は溶けにくいでしょう。
つなぎにメインベルトで探した大きめの氷も毎年入れているし、なんとかなりそうね。」

マサ:「メインベルトの高々1000d弱の氷隕石じゃ焼け石に水なのでは?。」

真理亜:「水の量だけならね。でも、速度を上げれば塵を舞い上がらせる効果は大きいわ。
それに気圧が高いから少しでも温度が下がると降水が起きるでしょう。
降水が続けば周囲の地殻が冷却されるし、少しは地下に浸透して溜まるでしょう。」
27pinksaturn:2006/12/30(土) 17:32:24 ID:te/moyS50
(金星大気圏外 降下カプセル)

リエ:「これより大気圏に突入、第一プラットフォームに降下する。全員慎重に行動せよ。」

マミ:「幾重にも安全装置があるとはいえやっぱり怖いですね。」

リエ:「まあ、落ちたら確実に焼け死ぬからね。」

ユミ:「万一の時は、氷隕石のクレーター付近に降りれば助かりませんか?。」

リエ:「温度差で渦が発生しているせいで風が凄いからパラシュートが保たないわ。
仮に着陸時は生きていたとしても脱出手段がないし、じわじわと硫酸の雨にやられるだけね。
とにかく、余計なことを考えないで降下軌道の制御に集中することよ。さあ、減速始めて。」

マミ:「カプセル姿勢、仰角120度。針路、赤道に対し北3度。底部バーニア噴射。」

ユミ:「減速順調。針路キープできています。アイスシールド損傷ありません。」

リエ:「よし。降下続行。」

マミ:「仰角30度に戻します。大気抵抗出てきました。外壁温度はまだ変化無しです。」

ユミ:「第一プラットフォーム誘導信号捉えました。高度差70`。針路乗っています。」

リエ:「大気抵抗でずれることもあるから、いつでも修正できるようにして。」

マミ:「ノイズで誘導電波切れました。アイスシールド厚み残り1b。外壁温度0度です。」

ユミ:「姿勢、針路変化無し。」

マミ:「アイスシールド消失。対地速度マッハ5。」
28pinksaturn:2006/12/30(土) 17:34:18 ID:te/moyS50
ユミ:「誘導電波回復。高度差20`。」

リエ:「低めだね。念のため噴射で3`ほど針路を上げて余裕を取ろうか。」

マミ:「底面バーニア噴射。落下速度減少。想定針路プラットフォーム直上2.7`。」

ユミ:「いまの噴射で速度が音速を割りました。パラシュート使えます。」

リエ:「早すぎると気球で寄せなきゃいけなくなるから30秒後で良いわよ。」

マミ:「予備パラシュート放出5秒前、4,3,2,1,出します。」

ユミ:「想定針路、プラットフォーム直上2`に落ちました。」

リエ:「50秒後にメイン開いて。念のため続けて気球も出すのよ。」

マミ:「メインパラシュート放出10秒前、9,8,...放出。気球ハッチ開けます。
水素ガス注入...。浮き出しました。メインパラシュートの上に達しました。」
29pinksaturn:2006/12/30(土) 17:35:26 ID:Nfml0Y2q0
ユミ:「速度200`に落ちました。このままだと手前過ぎますね。」

マミ:「後部バーニアちょっと噴射します。...これでどうです?。」

リエ:「良さそうね。」

ユミ:「速度90`。外部カメラにプラットフォームがはっきり見えてきましたよ。」

リエ:「あとは自然減速で降りられそうね。」

マミ:「落下速度45`、逆噴射少しかけます。速度15`。着床します。」

ユミ:「停まりました。」

リエ:「想定外の気流で滑り出さないように、出る前に電磁吸着かけて。」
30pinksaturn:2006/12/30(土) 17:36:06 ID:Nfml0Y2q0
(プラットフォーム上)

リエ:「分解のため電源落とさなきゃならないから、全カプセルにもやい綱かけるのよ。
最初は乗ってきたやつからね。うん、そっち側持って。かかったら貨物カプセルもね。
かけ終わったカプセルは電源切って良いわよ。」

マミ:「これだけ沢山あっても風船1基分と骨組みが0.1基分だけか。結構大変だわ。」

ユミ:「でもこの第一プラットフォームを浮かべるまでの失敗続きよりは気楽ね。」

リエ:「工事は明日からにして、今日はここの施設を点検するわよ。
しばらくここで暮らすんだから、酸素製造機や宿泊施設が壊れていたら困るでしょ。」

マミ:「水耕施設から出た酸素も備蓄しているのでは?。」

リエ:「計画通り暮らしに余るほど採れているかは保証の限りじゃないからね。」

ユミ:「水耕タワーの水位は正常そうですね。藻に泡が付いてるから生育してますよ。」

マミ:「エアロック開きました。入ってみましょう。」

リエ:「中の空気はどうかな?。ふむ、呼吸できそうね。履歴は...まあまあかな。
この酸素増加率なら豚1頭は余裕で飼えそうね。艦から取り寄せようか。」

ユミ:「豚が搬入できればいくらでも滞在できるから安心ですね。」

マミ:「酸素が足りても餌は藻だけで大丈夫でしょうか?。」

リエ:「実験で1年は大丈夫だったそうよ。念のため米も降ろすけどね。」

ユミ:「だけど、こんな巨大施設ですら藻が4d育つ程度じゃ気が遠くなりますね。」
31pinksaturn:2006/12/30(土) 17:36:38 ID:Nfml0Y2q0
リエ:「1基だけならね。組み立てたプラットフォームを次の拠点にできるでしょ。
拠点が増えればもっと多くの人員を投入して指数関数的に増設できるからね。
なにしろ、地球軌道上に資材が有り余っているから手があれば1万基まではすぐよ。
この藻は重量当たりの炭酸同化作用が地上の雑草の10倍あるからバカにできないわ。
いずれこの環境で生育できる穀物が開発されれば食料輸出もできるだろうし。」

マミ:「でもここは重力があるから搬出コストが大きいですね。」

リエ:「農業廃棄物から固体燃料を作れるからエネルギー的には赤字にならないわ。
工場衛星で不足がちな炭酸ガスが多くて困るほどだし、大気中の水蒸気も多いのよ。
設備と適切な植物があれば工場衛星より生産性が良くなる可能性は十分あるわね。
あとは我々の人件費が賄えるかどうかね。」

ユミ:「地球の食糧難がもっと酷くなれば採算性は良くなりますね。」

リエ:「ほどほどの高騰ならね。払えない奴らが戦争始めたら商売にならないわ。
みんなが満漢みたいに国力を達磨っ子政策にでも注いでくれれば良いんだけどね。
貧しすぎたり、宗教にこり固まった国は戦争で食料を奪い合う方に行くからなぁ。」

マミ:「ここは電力に余裕があるから大気中の水蒸気を凍らせて投下しては?。
空中でちびちび植物を増やすより水面維持に対して即効性があると思いますよ。」

リエ:「それも良い鴨ね。地上を冷やす手段は手当たり次第にやった方が良いわ。
プラットフォームが数基できたら実験してみるべきね。」

マミ:「賛成していただけますか。では、冷凍装置の輸送を手配しておきますね。」
32pinksaturn:2006/12/30(土) 17:47:53 ID:UUB4cGFI0
(アリババ大砂漠 人工オアシス形成実験地近くの観測シェルター)

聖戦士隊員:「間もなく落下予定時刻だ。観測準備は良いか?。」

アリババ連盟の地質学者:「地震計からの信号はOKです。」

アリババ連盟の気象学者:「小娘帝国軍事衛星からの映像入ってます。」

聖戦士隊・憲兵:「予定地周辺の侵入者居ません。まあ、居ても死ぬだけですがね。
しかし、観測衛星くらいあの妖しげな帝国に頼らず、自前でやりたいなあ。」

気象学者:「ああ、映像は氷隕石を買った国へのサービスでタダなんですよ。我々は衛星に金をかけるくらいなら砂漠緑化に回すべきですからね。」

憲兵:「ふーん。タダならしかたないなあ。」

気象学者:「あの国は、衛星を打ち上げてるんじゃなくて素材から宇宙で作るでしょ。
素材も余り物を使っていて原価がバカみたいに安いからおまけに使えるんですよ。
あ、隕石が大気圏に突入しましたね。ふん、約束通り落としてくれたようだな。地震が来るから気を付けて!。キター。」

聖戦士隊員:「お、お?。大した揺れじゃないな。」

地質学者:「砂が深いから衝撃が吸収されると予想してましたが小さかったな。」

憲兵:「小娘帝国の奴ら、約束より小さいのを落としたんじゃないのか?。」

気象学者:「大気圏突入時の映像からするとそんなことはないでしょう。
2,3時間して舞い上がった砂が収まれば直接確認できますよ。
私としては気候に大きな影響が出て外国からけちを付けられる方が心配でした。」

聖戦士隊員:「落下地点はちゃんと予定通りだったのか?。」

地質学者:「地震計の記録がほぼ均等に出たからちゃんと真ん中に落ちてますよ。」
33pinksaturn:2006/12/30(土) 17:49:10 ID:UUB4cGFI0
(経済特区 アリババ連盟合同総領事館)

総領事:「現地は窪地の底に水たまりが出来たので、契約通り原油による支払いをします。
我が政府は今回の結果を受けて、10`間隔で直線状に人工オアシスを形成する方針です。
これを繋げて緑化地帯のベルトを形成すれば、我が国の食糧事情も改善できます。
引き続きご協力をお願いしたい。」

弥生:「保水が成功したのは喜ばしいですね。私どもは、支払いさえ頂けば氷を用意しますよ。
ただ、一つだけ注意願いたいことがあります。落下時は周囲数10`が埃に覆われます。
したがって、耕地化するのは並べる人工オアシスが数個先まで出来てからにして下さい。」

総領事:「それは当方の地質学者も指摘していました。当面は雑木程度しか植えません。
国内では少しでも耕地が欲しいという声も強いのですが、何とか折り合いを付けました。」

弥生:「それから、私どもの予測ではオアシスが数年で枯れる可能性も指摘されています。
いざというときのため200`毎に再度氷を落とせる余地を残すことをお勧めします。」

総領事:「それは緑化地帯の直線から外れた場所に設けても構いませんよね?。」

弥生:「そこまで給水車の往来する道路か鉄道を余分に整備なさるおつもりなら良いですが。」

総領事:「貴国では鉄が余剰気味なのでしょう?。レールを安く売ってくれると助かりますね。」

弥生:「宇宙では余っていますが、地上に降ろすコストが高いんですよ。
でも、この件は氷隕石の購入と関連した事業ですから精一杯努力はしましょう。
その代わり、レール以外の車両や施設の購入についてもご検討下さい。」
34pinksaturn:2006/12/30(土) 17:50:34 ID:UUB4cGFI0
(帝都宮殿 御前会議)

朝子8世:「定例会議を始めます。まず、アリババの人工オアシスの件について報告を。」

弥生:「最初の実験成功に気を良くして、列状にオアシスを作ると言っています。
時間経過で枯れることもあると指摘したところ列を外して予備の落下地点を設けるそうです。
そこからの水輸送ルートに敷設するため鉄道資材の安価な供給を求められました。
車両や施設も抱き合わせでなら採算性があると思いますが、請けて宜しいですね?。」

朝子10世:「相当金星に回しましたがまだ鉄は余るので赤字にならないなら賛成です。
氷隕石補充の際に砂をかぶるので覆いを付けるよう勧めればその資材も売り込めるでしょう。」

財部大臣:「バーターの原油はいくらでも転売先があるので財部省としても賛成です。」

朝子8世:「宙軍大臣の提案も含め採算性に留意して進めて下さい。
ところで、列状に落とすとなると冥王星方面の氷隕石採取は間に合いますか?。」

朝子10世:「候補になる隕石は十分見つかっていますが、輸送のほうが厳しいです。
従来の便では重機2機と降下艇1隻を積むために1回に輸送できる隕石移動装置は5基でした。
いまカロンに向かっている”なると”は、18試重機で降下艇を代替し7基搭載しています。
これがそのまま継続できれば良いのですが、新型重機の歩行制御に問題があります。
マニピュレーターと4足歩行の制御が1人で出来ないため2人がかりでやっています。
今回は、歩調を合わせられそうな乗員の組を揃えたのですが、毎回は難しいでしょう。
一人で腕と4足歩行を同時に制御できる身体制御システムが出来ないと本格運用は無理です。」

文部大臣:「人間は本来2足歩行です。それは脊髄を人工的に作るのと同じ課題なのでは?。」

朝子10世:「その通りです。無脊髄サイボーグ身体制御改善の研究が成功すればいいのです。
それが自在に出来るならソフトウェアのバリエーションとしてケンタウロスも可能になります。」
35pinksaturn:2006/12/30(土) 17:52:40 ID:FcO26HgE0
文部大臣:「しかし、その研究自体が難航していると伺ってますが。」

朝子10世:「実際、北米連のサイボーグから入手したデータの解析には手こずりました。
データ量がむやみに多いのと、性感に関する部分が欠落していたことが難航の原因です。
最近、経済特区の酉山科学研究所が協力するようになってからはだいぶ進展しています。
あそこが補完関係になる研究成果を提供したので脊髄障害者用としての実用化は近いです。」

文部大臣:「酉山?。ああ、特区に移転する前に鳥のサイボーグ化を成功させた機関ですね。
確かにあの技術は小脳や脊髄の機械化に適していそうですね。
筋は良いですが、脊髄障害のQOL改善とケンタウロスではかなり条件が違いませんか?。」

朝子10世:「実寸のケンタウロスを軽快に走らせるとしたら、もちろんまだ無理です。
しかし、重機の歩行というのは人で言えば脊髄障害者並みに鈍いので大差ありません。」

刑部大臣:「このような重要技術を特区の民間研究機関に依存して大丈夫なのですか?。」

朝子10世:「ある宙軍兵の個人的事情に関わるので詳しい理由は言えませんが信頼できます。
この件に関しては皇室、正確には私自身が直接関わっていますので、全責任を負います。」

刑部大臣:「東宮様ご自身が直接監督されるなら問題はありませんね。」

朝子8世:「この件は東宮に任せるので極力早期に実用化なさい。次に金星の状況報告を。」

朝子10世:「最初の大隕石と大気の温度差が大きいため予想を超える大渦が生じています。
このため、氷が溶けるペースが計画より速く、小隕石の追加投入で保たせている状態です。」
36pinksaturn:2006/12/30(土) 17:53:11 ID:FcO26HgE0
財部大臣:「メインベルト隕石で補ったのではかなりコスト増になりますね?。」

朝子10世:「その通りです。大きさ、温度、水含有率のいずれも良くないので非効率です。
水含有量の割に重くて核の冬が伴うためアリババの人工オアシス用に回せないのですからね。
こっちをアリババの計画に使えればカイパーベルトでは大隕石収集に専念できたんですけど。
幸い代替案について浮遊プラットフォーム増設現場から良い意見具申がありました。
プラットフォームの日照が予想より強いので太陽電池が発生する電力が余っています。
これを使って大気中の水蒸気を凍結させクレーター内水面に投下するというものです。
氷塊の大きさは小隕石の1%程度ですが、プラットフォームが増えれば頻繁に投下できます。
隕石よりも供給は安定するので水面の消失を防ぐつなぎの手段として有望です。」

財部大臣:「数が多くなると冷凍装置にも相当なお金がかかりますね。」

朝子10世:「コストの大半は製造費より輸送費です。冷凍装置は氷隕石より嵩張りません。
半導体冷却素子なので一度持ち込めば半永久的に使え、氷投下量当たりのコストは有利です。」

文部大臣:「外部から持ち込む氷と違い金星大気に放熱しますね。」

朝子10世:「冷凍装置が放出する赤外線は極力上に向けて放射するように配置します。
外に放射される赤外線の分だけは金星に熱を残さずに済みます。」
37pinksaturn:2006/12/30(土) 17:54:48 ID:FcO26HgE0
(カロン上空)

ハル:「減速始めるからみどりも正確に脚を揃えてよ。よし、噴射始め。10分間連続ね。」

みどり:「こんなにカロンが大きくなって...寒そう。お姉ちゃん、降下速くない?。」

ハル:「速く見えても、18試重機の減速率ならこれで良いはずよ。」

マオ:「月より遙かに小さいし、こっち側からは冥王星の引力もブレーキになるからね。
初めての時は、私らも見た目でつい慎重になっちゃって、降りるのに余計な時間かかったわ。」

ミキ:「レーダーの数値で落下のペースをプロットしてご覧よ。」

みどり:「地表までの距離...うーん、さすがに重力小さいですね。こんなものか。」

ハル:「残り2`、着地用意。位置調整、前方へ1`。」

マオ:「採水ドーム前の氷原はなるべく踏み荒らさないでね。」

みどり:「この忙しいのに滑るつもりですか?。」

ミキ:「あんたたちは、積み荷を降ろしたらすぐ帰るけど私らは降下艇の給水待ちだがや。
酉山研で試作した磁気サス足首ジョイントがカロンでも通用するか速く確かめたいしね。」
38pinksaturn:2006/12/30(土) 17:57:10 ID:B4HVFiDW0
(カロン地表 採水ドーム前)

マオ:「連続35回転ジャーンプ!。よーし決まったぁ。磁気サスは極低温でも効くわね。
連続ステップの加減速も悪くないし、これなら完璧な演技が可能だわ。
これで先日のネット落書き犯人も http://pinksaturn.fc2web.com/miki-yuusyoukinen.htm を修正する羽目になるわ。」

ミキ:「好調なのは良いけど、回しすぎで氷が抉れたがや。」

マオ:「帰りがけに降下艇の試運転を兼ねてエキシマビームで凸凹を溶かしていくわ。」

ミキ:「そおねぇ。ここは極低温だから表面を溶かしておけばすぐ真っ平らに凍るからね。
カロンって、氷の整備が楽だからスケートやるにはいい環境だわ。」

マオ:「ちょっと遠いのが難点だけどねえ。もっと手軽に来れればいいのにねえ。
早く核パルス推進艦が建造できるようにならないかな。あれなら10日でしょう。」

ミキ:「建造されたら乗員に志願するの?。再改造って怖くない?。」

マオ:「そりゃまあ、小脳なんて奥まったところにあるから切り取るのはやっぱり怖いなぁ。
生命維持装置の制御には関係ないけど昔は脳幹が潰れたら脳死って事になってたんだしぃ。
でも私らに適用できるようになるのは、冬子さんや理美が成功したあとの話でしょう。
ここまで技が高度化しちゃうとスケート続けるならどうせ脳改造は避けて通れないわ。」
39pinksaturn:2006/12/30(土) 17:57:51 ID:B4HVFiDW0
ミキ:「うーん、確かに最近怪我が多くなっているし仕方ないのかなあ。
私、今日も脚の調子は良かったけど遠心力で肩関節が外れかけたのよ。
やっぱり、部分的な強化が追いつかなくなってるから全身の統括制御は改善が必要よね。」

マオ:「そうだったの。くく、もうちょっとであんたも腕がもげてメカバレだったか。
お、採水施設の給水完了信号が来たわ。人柱どもも真面目に働いているようね。
どれ、うん、ちゃんと満タンになっているわ。よし、さっさと重機乗っけて帰ろうよ。」

ミキ:「リンクの整備忘れちゃダメじゃん。」

マオ:「おっと、そうだったわ。氷原の整備も人柱に押しつけられればいいのにね。」

ミキ:「あいつらにエキシマビームなんか与えたら、ぼこぼこに荒らされるわよ。」
40pinksaturn:2006/12/30(土) 17:58:50 ID:B4HVFiDW0
(金星成層圏 第7浮遊プラットフォーム 製氷施設)

マミ:「しっかり固まったわね。これでやっと50個揃ったか。手間かかったなあ。」

ユミ:「渦周辺の風が強くてプラットフォームを真上に移動できないのがきついわね。」

マミ:「まさか200`も先から氷を大砲で撃ち込む事になるなんて想定外だったわ。」

ユミ:「でも方法があって良かったわ。無人飛行船も危なくて近づけないなんてね。
せっかくのアイデアも、投下方法が無いんじゃあ一時はもうダメかと思ったわ。」

マミ:「でも、あの大砲ってすごく古い資料を元にして作ったんでしょう。
昔あった、戦艦っていう水上兵器で実績があった最大の砲身の模倣品だそうよ。
地球上での射程が50`だって言うし、本当に2dの弾が200`も届くのかな。」

ユミ:「ここの高度と気圧ならそれくらい飛ぶって言う計算を信じるしかないわね。
それに昔の射程距離って、動く目標に当てられる限界だから飛ばすだけなら行くわよ。
でも、昔の人はこれをレーダー無しで当てられる照準器まで作ったんだってね。
ディジタル回路もない時代に船の揺れまで補正して飛ばすなんて、よくやるよね。」

リエ:「発射準備は出来たか?。」

マミ:「氷の砲弾50個は保冷式自動装填器にセットしました。火薬はこれからです。」

リエ:「火薬袋の扱いは慎重にね。今どきの薬筐と違って小さな火花で誘爆するのよ。
もし誘爆したらこの巨大なプラットフォームだってばらばらになるわ。
特に静電気は厳禁だからね。入念に体の準備をしてから始めなさい。」

マミ:「承知しています。体の静電対策にかかります。」
41pinksaturn:2006/12/30(土) 18:00:54 ID:Ive5Wsx80
ユミ:「あーあ。これをやる度に新品のメタルスキンに換えた上で全身金メッキか。
しかも氷を扱うときはメタルだとひび割れしやすいから低温用人工皮膚でしょ。
うんざりするわね。」

マミ:「このために頭を坊主にするのも憂鬱よね。」

ユミ:「SM用の電気鞭頭髪なら導電性だからOKよね。今度取り寄せようよ。」

マミ:「あれって、風俗営業税課税扱いの贅沢品よ。高く憑くわ。」

ユミ:「公務上必要ってことで管給品にしてくれるんじゃない?。」


(火薬庫)

マミ:「よいしょっ、これで200袋目。やっとセットが終わったわ。」

ユミ:「しかし贅沢よね。この火薬袋って全部天然シルクなんでしょ。
高級ドレスが何着出来るやら。氷の製造より遙かに高く憑いてるんじゃないの。」

マミ:「どうかな。満漢や印度では随分安いらしいし軽いから輸送費は無視できるわ。
昔の大砲だから静電対策もそのままやるって言うのは、いまいち納得できないけどね。
誘爆したらプラットフォームもろとも一巻の終わりだから冒険は出来ないのかな。」

リエ:「火薬のセットは出来たか?。」

ユミ:「たったいま、搬送装置に並べ終えたところです。」

リエ:「良いタイミングね。クレーターまで250`の地点に来たわ。
そろそろ風が強くなるから、砲台脇の監視所に入って揺れに注意していて。」
42pinksaturn:2006/12/30(土) 18:01:37 ID:Ive5Wsx80
マミ:「どうやら、撃ち終わるまでこの格好悪い外装を元に戻すヒマが無さそうね。」

ユミ:「どうせリエさんが許してくれないわ。緊急時に火薬袋を触ることもあるって。
まあ、製氷作戦のアイデアは自分らの提案だし、高額ボーナスも貰ったから我慢ね。」

マミ:「氷の投下は私らのアイデアだけど、ださい大砲は一体誰が考えたのやら。」

ユミ:「ださいって言えば、口径46aって半端よね。何で50aとかにしないかな。」

マミ:「昔の尺貫法かなんかだときりが良かったのかな。白人って保守的だからね。」

ユミ:「この大砲の資料って、大東亜のデータベースから拾ったんじゃないの?。」

マミ:「白人が開発したのを無理矢理大型化したから半端なサイズになったそうよ。」

リエ:「クレーターまで200`、プラットフォーム指向よし。衝撃注意。発射!。」

ユミ:「うわあ。聴覚回路壊れそう。」

リエ:「砲身冷却。監視所、異常はないか?。」

マミ:「給弾装置、火薬装填装置とも不具合ありません。弾着はどうです?。」

リエ:「まだ飛行中よ。方向は良いみたいだけど、反動で揺れたから距離が心配ね。
プラットフォームの姿勢は大きく乱れなかったけど、昔の戦艦ほど重くないからね。」
43pinksaturn:2006/12/30(土) 18:02:17 ID:Ive5Wsx80
ユミ:「まだ届きませんか?。」

リエ:「あ、落ちたわ。中心から2`だからクレーターの斜面には入ったわね。
斜面がかなり急だから溶けずに転がり落ちるはずだわ。よし初弾命中っと!。
これなら毎週しつこく撃ち込めば水面を維持できそうね。どんどん撃つわよ。発射!。」

マミ:「毎週これをやるのぉorz。大砲の代わりになるリニアカタパルトが欲しいわ。」

ユミ:「本国で実験したけど飛距離が大砲の半分しか無かったらしいのよ。
金星の気温が少し下がれば渦も小さくなるから、それまで大砲で間に合わせる気ね。」

マミ:「気温が少しって、いつの話かしら。こりゃ当分は毎週メタルスキンヘッドか。
前陛下の遺言実行は大事だけど、トホホだわ。」

ユミ:「せいぜい火薬袋でシルクの感触でも楽しむしかないわね。」
44pinksaturn:2006/12/30(土) 18:10:29 ID:L7JuayeB0
(冥王星ーカロン重力均衡点の”なると”艦橋)

マサ:「本国から指令です。金星で製氷作戦が成功したので氷隕石輸送計画変更だって。
大隕石に設置する移動装置を3基から2基に減らして、低速で移動するのを増やせと。
降下艇が1隻しかないのに設置場所が別れると時間がかかりますね。」

真理亜:「今回は手間がかかるけど、今後のローテーションが楽になるでしょ。
休みが取りやすくなるんだから良いじゃないの。早速作業員を集めて頂戴。」

マサ:「隕石移動装置設置班は全員艦橋に集合せよ。」

マオ:「どうしました?。予定変更ですかぁ。」

マサ:「金星の方がうまく行ったので移動速度を落として数を増やせって。」

ミキ:「すると工事箇所が別れるから推進剤の補給も多くなりますね。」

マサ:「あれ?。面倒になるのに、あんたたち嬉しそうね。」

マオ:「えへへ。給水待ち時間のお楽しみってやつですよ。脚の調子がいいし。」

ハル:「休暇中は無理矢理引き込まれて大変だったけどカロンで滑るのは楽しいわ。」

みどり:「そうそう。観衆の前でM字開脚滑走とかしなくて良いですし。」

真理亜:「なるほど。カロンじゃそれくらいしか楽しみもないから、まあ良いけど。
だけど、あんまり頻繁に体を壊さないようにしなさい。予備部品足りなくなるわよ。
この艦は、重量制限がきついから、必要最小限しか積んできてないのよ。」
45pinksaturn:2006/12/30(土) 18:12:22 ID:L7JuayeB0
ミキ:「お父さんの影響か、最近は理美が休憩時間に部品の再生をやっています。
けっこう安くやってくれるので、便利ですよ。今日も肩を修理して貰ったんです。
再生品といっても、あの娘才能があるから新品より性能が出るくらいですよ。」

真理亜:「ふーん。理美はそんな能力もあるのか。採用して大当たりだったわ。
マサに比べると随分お買い得だったわねえ。」

マサ:「えーん、また苛められたよぉ。」

マオ:「副長、お気を確かに。では、私らは隕石移動装置の搬送にかかります。」

真理亜:「マサも出なさい。マーク済の氷隕石に異常がないか先行確認よ。」

マサ:「私一人でですか?。」

真理亜:「90式が上がってきてるでしょ。藻前はあれが得意機種だろうが。
18試重機は2機とも隕石移動装置の輸送と設置に使うし降下艇は機関長が使う。
これから採水施設を酷使するため原子炉をよく手入れしないといけないからね。
藻前ならパワー不足の90式でもここらで自在に飛び回っていたから大丈夫だな。」

マサ:「このごろ歳のせいか寒いのが苦手になりまして...。」

真理亜:「おバカなこと言ってないで、さっさと行って来い!。」


(金星可住化事業の開始以来、帝国の娘達は氷にまつわる苦労が尽きなくなりました。まあ、中には私用で勝手に苦労を増やしている娘も居ますけど。
現実世界のフィギュアスケートは能力・年齢など、まるで素体審査会を見ているようです。徴兵担当官を派遣したくなりますが、妄想世界から現実世界に渡る手段がないのが残念です。
妄想世界ではマオにお姉さんが居なかったり、情報の欠落はあるものの、やはり現実世界の戦況が妄想世界に影響を与えるのでゴール寸前で迷走していましたが、次回は本編最終回(35)「屯田兵」の予定です。)
46manplus:2006/12/31(日) 17:23:53 ID:HC2tn2XX0
「それにしても寒かったよね。これじゃ東京も夜には雪だよ。成田なんかすぐに空港閉鎖になっちゃいそうだよ。
早く飛行機が離陸しないと空港泊まりになっちゃうよ。移動用のスーパーF1マシン専用サイボーグドライバー用
移動時メンテナンスキットは、もう飛行機に積んじゃったから、今日の宿泊中の身体のメンテナンスが心配だし。」
「瞳さんは、さすがですよね。理屈から言うと一日ぐらいメンテナンスしなくてもいいんですよね。真理子さん。」
「理論的には、スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーのメンテナンスは、一ヶ月程度は
メンテナンスフリーですから、いくら機械と電子部品の身体といっても、そんなに神経質にならなくても
大丈夫なんですが・・・。」
「そんなこと言ったって、標準人体ではなくなって、人間が作った身体になってしまったんだよ。万が一のことを
考える必要はあるし、自分の身体に慎重にならないといけないんだよ。」
「やっぱり、瞳さんは凄いなぁ。」
「だって、エマちゃん。標準人体の時だって、毎日ボディーチェックをしていなかった?」
「そう言えば、体重や血圧などをチェックしていました。」
「それと一緒だよ。だからメンテナンスをしなきゃならないんだよ。それが、
スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーの日課だよ。」
「凄いな。やっぱり、私のお慕いする瞳さんだ。」
「ご主人様。普段、自分から毎日メンテナンスマシンに乗りたがっていましたっけ?
自分が機械になったみたいだから嫌だって言って愚図っていませんでしたか?」
「つぐみさん!普段は普段だよ。施設の整っていないところで万が一のことが起こったら大変じゃない。」
「さすが!瞳さん。」
「エマ、だまされちゃいけないよ。つぐみの言うとおり、ただ愚図ってるだけだからね、こいつは。
瞳、あんたたちが乗る予定のオーストリア航空の126便は、定刻通りの出発だってよ。」
「わ〜〜い!よかった。空港の待合室に足止めされなくてすんだ。待合室で待つのが苦痛なんだよね。
よかった、よかった。機械の身体になったことを感じなくて好かったっ!早くウィーンに行きたいなっ!」
47manplus:2006/12/31(日) 17:24:32 ID:HC2tn2XX0
「ほらね。馬鹿娘の考えそうなことだわ。フライトが確定しているとなったら、サイボーグ体のメンテナンスなんて
頭から飛んでしまってるんだからね。」
「監督、来てくれたんですね。」
「うん。エマがこの馬鹿娘に振り回されないように、こいつに釘を刺しに来たのよ。」
「恵美さん。私は、誰も振り回していませんよ。ねっ、エマちゃん。」
エマが少し口籠もる。
「ほら、エマが、答えに困っているだろうが!出発前から、こんなに愚図ってどうするんだ!ウィーンはもっと寒いんだぞ!」
「恵美さん、そうだよね。何でこんなくそ寒いときにウィーンに呼ばれるんだろうね。
マリアの奴は、私たちを石にするのに飽き足らなくて、雪だるまにしようとしているに違いないのだ。まったくっ!
夏はメデューサで冬になると雪女になるんだから!」
妻川が頭を抱えている。
「瞳さん。せっかく、マリアが私のランク入りと瞳さんの優勝を祝して、ウィーンでクリスマスパーティーをしようと
言ってくれているんですから。そんなこと言わない方が・・・。」
「自分の祝勝会も兼ねてるに違いないのよ。きっとそうだよ。私たちをスープに入れて食べてしまうかもしれないのよ。
エマちゃんも気をつけた方がいいわよ。」
「エマ。瞳は、要するに寒いところに行きたくないのよ。東京がこんなに寒くて、まいっているのに、もっと寒いヨーロッパは、
大雪の厳冬ときているから行くのが嫌になっただけなのよ。現地に着いてしまったら、
言うことが変わってはしゃぎ出すに違いないわ。」
「恵美さん、そんなことないですっ!やっぱり大和撫子は、おせちとお雑煮でお正月を迎えるのがしきたりですよ。」
「それもこたつで丸くなってね。もっとも、手脚のないおまえにこたつで温まる身体部分はないんだけれどね。」
「そんなことないです。こたつの上のおせちとお雑煮とミカンを見るだけで、暖まった雰囲気になるんです。」
「そう、雰囲気だけだよね。こたつがあってもなくても、ましてや、寒かろうとそうじゃなかろうとサイボーグに
なったおまえにとって、いつも一定の体温と体感温度が得られるようになっているでしょうが。
サイボーグに寒いも暑いも関係ないのよ。」
48manplus:2006/12/31(日) 17:25:09 ID:HC2tn2XX0
「でも、寒いものは寒いんです。ヨーロッパの寒さなんて耐えられない。」
「ほら、本音が出たね。体感温度として感じなくても、寒いというデーターを受け取ることによって、本来寒がりの瞳は、
寒いところにいること自体が本能的に耐えられないから愚図っているんだよね。」
「う〜〜〜ん。」
「図星だろ。エマも、つぐみも、こんな馬鹿で我が儘な女なんて、見捨てておやり。世の中にはもっといい女は一杯いるわよ。
何なら、私が紹介してあげるわ。」
「瞳さんを悪く言わないでください。」
「そうです。エマさんの言うとおりです。ご主人様を悪く言わないでください。」
「そうですよ。瞳さまがかわいそうです。エマとつぐみの言うとおりです。」
「いつの間にっ!真理子まで毒牙にかけおったんだ!この魔女めがっ!リネカーがメデューサなら、瞳は魔女か・・・。」
「私、真理子さんを毒牙になんかかけてないよ。」
「嘘をおっしゃい!真理子が瞳になついているではないか。」
「瞳さんのせいじゃありません。監督、私の方から、お願いしたのです。エマと一緒にお仕えしたいと言ったんです。」
「真理子・・・。いったい、いつの話?」
「はい。日本グランプリが終わって、その日曜日の夜に、エマとつぐみの了解を取って、カミングアウトしました。だって、
私も、エマの器官の一部として、瞳さんの愛を受け入れれば、エマに瞳さんの心をもっと詳しく伝えられると思ったんです。」
「全くっ!3人そろって魔女の毒牙にかかったって言うわけね。もういいわ。」
「私は魔女じゃないっ!」
「魔女じゃなければ、物の怪か?狐か?」
「監督も、瞳さんもやめてください。VIPの待合室でみっともない。二人とも、サイバーヒューマン社が、
火星探査用サイボーグのドナーを募集していますから、そっちへ送ってあげましょうか?
そうすれば地球が平和になります。」
石坂が待合室に入ってきて、強烈な一発を瞳と妻川にかました。瞳も妻川も耐えきれずに共同戦線で文句を言う。
49munplus:2006/12/31(日) 17:51:51 ID:HC2tn2XX0
「鬼医者!」
「マッドサイエンティスト!」
「監督も、瞳さんも言うだけ言いなさい。チームも地球も平和になるのなら、そっちの方がいいように思います。」
さらに石坂には強烈な援軍が付いていた。
「石坂ドクターの言うとおりですよ。幸いに、チームのエースをエマに任せてもいいぐらいエマもこのシーズンで育ってくれたし。
二人には、人類の発展のために火星に行ってもらいましょう。火星の往復の3年間で心いくまで喧嘩できるでしょうしね。」
「美由さん。それだけは勘弁してください。恵美さんと3年も一緒なんて、気が狂っちゃいます。」
柴田の攻撃に泣きを入れる瞳。そして、妻川も溜まらずに泣きを入れる。
「美由まで、私をいじめるんだからっ!石坂ドクターも、美由も、私は、こんな馬鹿娘と3年も四六時中一緒にいたら、
気が狂っちゃうわ。」
「恵美さん、それは私の言う台詞です。」
「瞳、違うわ。私が言う台詞よ。」
「瞳さんも、監督もやめてください。エマも真理子もつぐみまで震えていますよ。」
「柴田チーフの言うとおりです。大人しくしてください!二人とも顔を合わすとこれなんですから。
二人にはじゃれ合いでも、他人からは怖く見えるんですよ。」
『すみませ〜〜ん。』
瞳と妻川が声をそろえる。
「わかればよろしい。」
柴田が、さらに追い打ちをかけて、
「あっ、瞳さんも、エマもつぐみも真理子も、搭乗時間になったわ。急いでボーディングブリッジに向かうのよ。
監督、私たちは、見送りにきたんですよ。わかっているんでしょうね。喧嘩をしにきたんじゃないんですよ。」
50manplus:2006/12/31(日) 17:52:28 ID:HC2tn2XX0
「わかっているわよ。美由。でも、釘を刺しておかないといけないと思っていたんだけれど、瞳が我が儘言っているから・・・。」
「一緒に、我が儘言ってどうするんですかっ!」
「恵美さん、美由さんに怒られましたね。」
「瞳さんもよ。駄々をこねてみんなを困らせているんじゃないのよ。」
「・・・。」
「瞳、一緒に怒られちゃったね。」
「ええ、恵美さん、行ってきますね。」
「気をつけて行ってくるのよ。それから、このことを言いにきたんだけれど、むやみにリネカーを拉致してくるんじゃないのよ。」
「監督、どういうことなんです?瞳さんがリネカーを拉致なんて?」
「美由も知らなかったわね。この馬鹿娘は、F1時代にもウィーンでリネカーと二人で、クリスマスパーティーやってね。
一日中二人で飲んだくれた御乱交の末、今度は日本の正月に招待するとか言って、リネカーを連れて、
そのまま誰にも言わずに二人で日本に来ちゃったのよ。フェラーリの関係者がリネカーがいないと言って
大騒ぎしていたら、東京の居酒屋で二人して飲んだくれてブッ潰れていたのよ。ウィーンで飲んだくれて、
飛行機の中でも飲んだくれて、東京でも飲んだくれた末に、新宿の居酒屋で酔いつぶれていたところを
カンダのスタッフに発見されて保護されたのよ。フェラーリの監督に私は、無茶苦茶怒られたんだからね。
たまたま、カンダが、フェラーリとの業務提携の話があったんだけれど、それすらご破算になるくらいで、
溝口社長も平謝りで、事を納めたという経緯があるのよ。この馬鹿娘に匹敵するくらいリネカーも無茶するから、
二人を一緒にしておくとろくなことがないの。二人ともどんなことしでかすかわからないから、それ以来、
プライベートでリネカーと会う時は、必ず釘を刺しておくことにしているのよ。」
「さすがに、魔女とメデューサですね・・・。開いた口が塞がりません。監督が瞳さんをののしりたくなる意味も
少し理解出来るようになりました。」
51manplus:2006/12/31(日) 17:53:08 ID:HC2tn2XX0
「美由さんまで!恵美さんの肩を持つのね。」
「お黙りなさい!瞳さん、当たり前ですっ!少しはものを考えて行動するんですよ。モータースポーツ界の
至宝といわれる“プリンセスヒトミ”としての自覚を持ってくださいね。監督が心配するのも当然ですっ!」
「うっ!さあ、みんな、飛行機に乗ろうか?楽しいクリスマスが待っているわよ。」
「瞳さんっ!話をそらすんじゃありません。分かっているんでしょうね。」
「・・・。」
「美由、馬鹿娘に何を言っても無駄よ。それより、エマもつぐみも真理子も、あんたたちがしっかりするのよ。
それから、マルローにも言っておいて、御乱交を始めそうになったらみんなで、瞳とリネカーを止めるのよ。
二人を殴り倒してでも、サイボーグの身体のメイン電源を緊急モードにしてしまって、仮死モードにしてしまっても
構わないから、とにかく止めるのよ。生体脳が生きていれば、何とかなるんだから。」
「監督、申しつかりました。エマさんも、真理子もいいわね。」
『はい!』
妻川の言葉につぐみがサポートヘルパーとしての本来のモードで約束をし、それに、エマも立川も承諾した。
瞳包囲網がしかれてしまった感じだった。
「みんな、裏切り者〜〜っ!」
そう叫ぶ瞳を有無を言わさず、森田が搭乗機のボーディングブリッジへ運び始めた。
「瞳、行っておいで、楽しいクリスマスを過ごすのよ。」
妻川がそう言って見送った。瞳は何かを叫んでいたようだったが、森田は構わず運んでいってしまった。
隣でエマを運んでいる立川が、エマと一緒に瞳をなだめている姿が横にあった。
「やれやれ、やっと行ったか。ドクター、美由帰ろうか?」
『はい。』
52manplus:2006/12/31(日) 18:06:50 ID:HC2tn2XX0
妻川たちが踵を返した。
「監督、何事もないといいですね。」
「そうね。美由、それを祈るしかないわね。」
「監督一つ聞いてもいいですか?」
「何?ドクター。」
「ええ、瞳さんの記憶領域を整理していて、御乱交事件のことをデジタル化していたんですが、
瞳さんとリネカーの他に日本で暴れていた人間がいるんですが、人名が第三者に検索されないように
プロテクトされているんですが、一緒にいた人間はまさか・・・。」
「ドクター、下手な詮索はしないようにすること。さあ、帰るわよ。」
「ドクター、瞳さんが連れて行かれる前に監督に言っていた言葉の意味が何となくわかりました。」
「確か、『一人だけいい子になるな!』とか『マリアと復讐を誓うぞ!』だったような・・・。」
「私もそのように聞き取れました。つまり監督も・・・。」
「美由もドクターも詮索しないの。あんな馬鹿娘の言うことを真に受けないのよ。ドクターも美由も
カンダスーパーガールズに残りたいんでしょ。」
そう言って妻川はさっさと歩き出してしまった。
『妻川監督もそのことに一枚噛んでいる。』
二人はそのことを確信していた。残された石坂と柴田は、何か悪いことが起きなければと願うばかりであった。
53manplus:2006/12/31(日) 18:24:02 ID:HC2tn2XX0
季節柄というわけではないのですが、瞳たちの年末年始のドンチャン騒ぎを投稿します。
題名は、『クリスマスパーティー〜レーシングガール外伝1〜』
としておきます。
本編では書けなかったレギュレーションのことや森田やエマなどの話や新キャラクターの
作品を順次書いていきたいと思っています。
この作品は、本編と、他の外伝の作品をつなげるためのいろいろな話題を散りばめた設定になっています。
瞳とその仲間たちの馬鹿騒ぎとその中心の瞳のお馬鹿さが目立って、皆さんにはお叱りを受けるかもしれませんが、
本編や他の外伝との関連性を持たせる重要な作品となると思います。
瞳の馬鹿さ加減は大目に見てやってください。

杏奈の物語は、もう少しで書き上がると思いますが、新年の早い時期になると思います。
瞳にしても、エマにしても、今までよりもテンションの高いキャラを書いてきたので、
なかなか頭の中から出ていってくれない物で・・・。
瞳の外伝の方が先の投下になってしまいました。

pinksaturn様
現実世界のフィギアの結果が反映されているような・・・。
たのしみに読ませていただきました。

3の444 様
リハビリ編期待しています。特殊公務員ネタ、3の444様なりの設定を楽しみにしております。

ということで、来年もよろしくお願いします。
次回投下は、新年早々になると思います。
それではよいお年を!!
543の444:2007/01/04(木) 22:17:28 ID:29oo3o1o0
ちょいと遅くなってしまいましたが、スレのみなさま新年明けましておめでとうございます。
今年もヤギーを可愛がってあげてください。本年も宜しくお願いします。

さて、イソジマ電工製義体を使っているのは今のところ女性がほとんどなんですが、
なんでかなあと考えてみました。いや、このスレはサイボーグ娘スレだから必然的に女性
ばかりになるのはあたりまえなんだけれども、設定として女性が多いという裏付けが欲しい
なあと思ったので。

で、以下がその理由付け。
イソジマ電工は特殊公務員の分野にも進出をはかろうとしているけれども、今のところ
まだその分野ではギガテックスにおされ気味で、どっちかというと民生用として発展して
きています。
特殊公務員みたいな分野はどっちかというと男性中心の職場であるからして、どうしても
その分野に強いギガテックスは男性型義体が売り上げの中心になり、逆にその分野に
弱いイソジマ電工義体は女性型義体が売り上げの中心になっている。
なんて、どうでしょう。
55adjust:2007/01/05(金) 21:36:12 ID:2Y0yhgOb0
あけましておめでとうございます

正月の民族大移動も終わり、何とか復帰してきました。
皆さんの作品をまとめて読ませていただきました。

3の444 様
幽霊話になるんでしょうか。女の子がどういう立場なのか、期待しながら読ませていただきます

pinksaturn 様
フィギュアスケートの制御ですか。瞬間的にはとんでもない力がかかりそうですね。
速度と力、プロだと、素人には想像も出来ないような微妙の制御もやっていそうです

manplus 様
レーシングスタッフの掛け合い(漫才?)が楽しそうです。本能的に寒さを嫌がるのは
私も一緒かもしれません。もっとも夏は夏でいやですが


ギガテックス話を宇宙ネタで書こうとしていたのですが、なかなか進まないため、
書きかけの分を投下します。初期設定ばかりでドラマが無い....orz
今後ドラマになるようにしたいと思いますが、...できるのかしら <俺
設定ばかりになって申しわけありません。また設定が世界観を壊すような恐れがある場合は
遠慮なくご指摘ください。よろしくお願いします。
56adjust:2007/01/05(金) 21:39:40 ID:2Y0yhgOb0
 「JC8601、チェック終了、分離許可をお願いします」
 「OK、JC8601、フライトプラン認可した。分離を許可する。」
 河原崎重工製のKC-4B型宇宙往還機は、高度1500Kmを回る生産技術衛星、ふそう、から切り離された。生産技術衛星
ふそうは、世界的には、米国が打ち上げた産業用衛星についで2番目、日本が打ち上げた産業用衛星としては最初のも
のとなる。今のところのふそうの生産品は、レーザー通信用送受光素子に使われる無欠陥単結晶材料である。この材料
は無重力、高真空、低振動の環境を利用して作られる。この材料は基本的には地上で作成できず、同じ大きさのダイヤ
モンドより高価であった。そのほかに、超高強度の単結晶チタン合金が生産されている。これはジェットエンジンなど
に使われる、高速回転タービンの支持軸受け部に使用されている。
 「分離終了、位置補正、帰還シーケンス起動します」
 木原良子は機長の指示に従い、KC-4Bの航法制御装置を操作した。あらかじめ入力された目的地に従い、再突入軌道
が決定される。今のところ気象条件に問題はない。決定された軌道はNAXAや河原崎重工の運行管理室に送信され、最終
的に全ての運行を管理するNACAがGOを出したところで、運用が可能となる。
 「GOでました。運用可能です」
 「了解、機動開始」
 機長が航法制御装置の動作を許可すると、姿勢制御装置のノズルが数回噴射される。音も無くふそうから離れていく
KC4Bはある程度の距離をとると、くるりと回って進行方向と逆にメインエンジンを合わせた。
 しばらくして、タイミングを計った航法制御装置はメインエンジンを点火させる。ふそうと同じ速度で飛んでいた
KC-4Bは、徐々に速度を落として高度を下げた。無重力状態から、徐々に加速度によるGを感じ、やがて大気圏に突入
すると地球の重力が彼女らを押し付ける。窓の外の漆黒の闇がプラズマによってオレンジ色に発光する。そのオレンジ
色が収まって明るい水色が窓を満たすとき、KC-4Bはその大きな主翼を役立たせることが出来るようになるのである。
57adjust:2007/01/05(金) 21:41:16 ID:2Y0yhgOb0
 軌道往還機は米国、ロシア、ESAを筆頭とするが、日本も2社が軌道往還機の製造能力を持っている。現行の機種と
しては三橋重工のMR-200、河原崎重工のKC-4が上げられる。このほかに、国際宇宙ステーションや米国の産業技術衛
星との連絡輸送を行う軌道輸送機CC-12をNTL.ACが納入している。無重力の軌道上を移動するための機器であり、その
大きさは軌道往還機よりはるかに小さい。一応、緊急事態のための大気圏突入ポッドを装備しているが、それ自身が軌
道まで上昇する能力は有していない。NTLとしては軌道往還機にも参入したいのだが、そもそも、大量に需要があるわ
けではないことと、2強に対して採算の取れる見込みが無く、納入には至っていない。ちなみに宇宙往還機のエンジン
はいずれも、複合サイクルエンジンを石川山播磨重工業が製造している。
 
 静止衛星を別として、多くの衛星や宇宙ステーションは高度300Kmから1000km程度に集まっている。ふそうは高度
500Kmの経済軌道圏に存在する。国際宇宙ステーションは高度400Km程度、高度を上げると燃料が余分に必要であるの
はもちろんだが、高度2000km以上に存在するバンアレン帯の影響で放射線が増加するため、多くの衛星がこの範囲内に
収まっている。しかも、バンアレン帯のシールド効果により、この高度では逆に放射線の影響が比較的小さいことも、
この高度に集まる理由であった。
 
 KC-4Bが着陸し、全てが順調であることを確かめると、木原良子はヘルメットを外した。合成繊維の髪がさらりと流
れ落ち、笑みを浮かべた穏やかな表情が姿を見せる。
 「ご苦労さん、いいフライトだったね」
 「お疲れ様です。全て順調でした」
 パイロットがにやりと笑い、ピースサインをする。木原もちょっと不敵な笑顔でそれに応じた。
 KC-4Bはゆっくりとターミナルに向かう。ターミナルで搭載した貨物を降ろし、貨物のチェックが終了したところで、
木原の仕事は終了となる。貨物コンテナに搭載されている各種センサの情報も、特に問題となるような数値は記録され
ていない。
58adjust:2007/01/05(金) 21:42:28 ID:2Y0yhgOb0
 窓の外では別の宇宙往還機が離陸を待っていた。スケジュールを見ると、同じギガテックスコスモサービスの同僚が
乗り込んでいることがわかる。名前は黒田翔子、同じ完全義体の同僚である。この業務に従事している全身義体、完全
機体の人間は多い。パイロットでは2割程度、木原のようなミッションスペシャリスト、フライトアシスタントでは、
半数が完全義体である。特に重要なのが、産業技術衛星の常駐スタッフや宇宙ステーションのスタッフである。生身の
人間を長時間宇宙に滞在させるためには、環境を維持するための多くの物資が必要である。また、時折発生する太陽風
などによる放射線の影響も非常に大きい。そのため、宇宙開発関係では積極的に完全義体、全身義体のスタッフを登用
している。また、それだけでは足りず、ロボット等も利用しているが、それらを管理するためにも完全義体のスタッフ
が有効である。
 内之浦と種子島を統括するNAXA宇宙センターは、日本の軌道往還機やロケットを打ち上げる最大の空港である。垂直
発射型軌道往還機、または大型ロケットは主に種子島から打ち上げられる。水平発射型軌道往還機の離陸、及び全ての
往還機の着陸地点として内之浦空港が使われる。もちろん気象条件が合わない場合は他の空港に着陸することもあるが、
その場合は天候が回復してから、何らかの手段で内之浦に帰ってくることになる。
 ギガテックスコスモサービスは、宇宙作業に関係する完全義体者のサポートをするための会社である。木原良子は全
てのミッションが終了したことを確認すると、コスモサービスに顔を出した。
 「木原です。ミッション終了しました。」
 「お疲れ様です。しばらくお待ちください」
 窓口の受付嬢が木原からIDカードを受け取って、なにやら操作する。ピッと音がして、またそのカードを木原に返す。
 「はい、終わりました。チェックルームへどうぞ。きれいになってくださいね。ごゆっくりー」
 顔見知りの受付嬢は初めて笑顔を見せると、軽く手を振った。
 木原も、にこりと笑顔を返す。
 「今日は定時?」
 「ええ。定時です。あとでうかがいますね」
 「わかった、じゃ、あとでね」
 「はい、ごゆっくりどうぞ」
59adjust:2007/01/05(金) 21:44:35 ID:2Y0yhgOb0
 終業後の約束をして、木原はチェックルームに向かった。チェックルームでは義体の洗浄、各種整備、調整が行われ
る。その後は次のミッションの計画の詳細を聞いて、自由時間となる。コスモサービスの近くに用意されている自室も
あるし、コスモサービス内の厚生施設を利用することも出来る。特にミッション中は緊張の連続なので、緊張を緩める
ことが出来る厚生施設は欠かせない。
 洗浄と整備を終え、木原は厚生施設の中のある部屋に向かった。といっても重要なものがあるわけではない。女性専
用の部屋ではあるが、その部屋はただ単にクッションやぬいぐるみなどが詰まっているだけである。
 明るい照明と柔らかな音楽がかすかに流れるこの部屋で、リラックスするのが木原のいつものパターンであった。
 「はふ」
 ため息をついてクッションの中にもぐりこむ姿は異性には見せられない。ギガテックス義体は体感センサの数はそう
多くは無い。それでも、体に感じる触覚は木原の心を解きほぐす。ちなみに、この部屋は女性陣には好評で、多いとき
には、まぐろというか、たれパンダというか、そんなものがごろごろしているときもあるようである。
 クッションに耳を押し付けると、ブーンというポンプ音がかすかに伝わってくる。生身のときのとっくんとっくんと
いう音をまだ何かの弾みで思い出す。仕事中や遊んでいるときにはほとんど意識しないそんな違和感を、リラックスし
ているときに思い出すと、たまらなく悲しくなることがある。
 「最後に心臓の音を聞いたのはいつだったかな」
 クッションに埋まりながら、半分意識が飛んでいく。義体化に伴う脳改造の結果、激しい感情の爆発や食欲、性欲は
ほとんど感じない。心を何かにコントロールされていることは、実感としてわかる。義体と生身のギャップはイソジマ
電工義体の話を聞く限り、かなり激しいものであるらしい。人によってはそれに耐えられずに自殺を図るものもあると
いう。ケアサービスなどのサポートがかなり重要らしい。
 「私は死ねない。何とか生きていかなくちゃ」
60adjust:2007/01/05(金) 21:46:30 ID:2Y0yhgOb0
 義体改造の際にどのような義体を望むかと聞かれた。大規模災害により、一瞬にして家族と生活を失った彼女は、生
きていくために義体を生かす道をとることしか方法が無かった。その道を生かすためのギガテックス義体。軍事、宇宙
などの特別公務員向けの義体を製造するこのメーカーは、その特殊環境のための生存性を最も強く打ち出しているメー
カーでもある。
 もともとがかなり優秀な成績を維持してきた彼女にとって、宇宙関係に進むことはさほど困難ではなかった。いくつ
かの講習を受け、適性を認められたことで、NAXAの宇宙作業従事者として採用されている。この分野では報酬もかなり
高額の部類であった。しかも、宇宙作業従事者として働いている限りにおいては、義体の整備、バージョンアップなど
は全てNAXA及びギガテックスコスモサービスで負担される。 現在の業務が定着したのはこの1年ほどのことであった
が、仕事に集中していたこともあり、一部の趣味と生活以外に金を使うことは無かった。
 ぽーん、と小さな音が耳に入った。入室者のベルである。
 「木原さん、いらっしゃいますか?」
 「はあい、いますよお」
 すこし沈んだ気分を消し去るように、おどけたような声で木原が返す。
 受付嬢がドアから少し顔を出して覗いている。
 「お仕事終わりました。今日はどうします?」
 「近所だけ軽く回りましょうか」
 受付嬢、相沢美奈子、彼女も完全義体者である。彼女は地上任務として、完全義体者の管理を行う業務についている。
まだ経験が浅い相沢は、やがて宇宙作業従事者の資格を取ることになるかもしれない。
 「もう夕方ですからね、あまり遠くへはいけないですしね」
 「それじゃ、ぶらぶらしましょうか」
 
61adjust:2007/01/05(金) 21:49:03 ID:2Y0yhgOb0
 二人の趣味は自然探索、野山の風景を観察調査し、動物や虫の調査を行っている。木原自身は当初あまりそのような
分野に興味が無かったが、ここに来て、手持ち無沙汰に散歩していたところを相沢に誘われ、野山の美しさに開眼した
のである。相沢自身は業務上、なかなか溶け込めない木原に声をかけたのであるが、今では、親友といっても良いほど
野山を行動する重要なパートナーとなっていた。ついでに、内之浦は野山の散策や調査を行うには最高の自然が残され
ている場所でもある。ただし、少しばかり自然(密林?)がありすぎるかもしれない。


今回はここまでです。ありがとうございました
続きは出来次第投下させていただく予定ですのでよろしくお願いします
62名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 21:55:04 ID:BPWTKAZx0
ギガテックス義体は感情もコントロールされちゃうんですね。
義体と生身のギャップの激しいリハビリの大変なイソジマ義体。
ギャップは少ないけどそのかわり人間らしさのよりどころすらあやふやなギガテックス義体。
どちらの義体で生きていくのも大変みたいですね。
63名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 22:13:52 ID:8m+WDxOK0
ttp://www.giga-techs.net/index2.html
ギガテックスって会社、実在するようです。
64高田聖矢:2007/01/08(月) 01:35:28 ID:wujsLcZN0
美少女ロボット計画
日本初の公式美少女ロボットweb

http://blog.zaq.ne.jp/copamaid/
未来技術板の「もし美少女ロボットが自作できるなら」スレにもカキコしてます。
65名無しさん@ピンキー:2007/01/08(月) 01:46:31 ID:OQGBcjdX0
>>64
そもそもスレ違いだし、あなたは21歳未満のようですね。
よってここに書き込むのはもちろん、見るのもダメ!
さようなら。
663の444:2007/01/08(月) 23:52:14 ID:OQGBcjdX0
「ぎゃああああああああああああああああああ!ぎゃああああああああああああああ!」
  喉のスピーカーが壊れてしまうくらい大きな私の悲鳴。
  もう駄目。私このままこの子に取り憑かれて、この子の言いなりのまま校舎の屋上から飛び降りちゃうん
だ。それで、地面に叩きつけられて手足はバラバラに飛び散って・・・。そのあとは、想像したくない。もういっ
そのことサポートコンピューターの電源が落ちちゃえばいいのに。もし逃げられなら、私以外誰もいない感覚
遮断の真っ暗闇に逃げ込みたい。身動きできないままユーレイに身体をぺたぺた触られるくらいなら、いっ
そのこと目も耳も触覚も、ぜーんぶなくなってしまうほうがずーっとましだよ。
  ピカッ!
  追い打ちをかけるように私を容赦なく包み込む強烈な白い閃光。
「ぎゃあっ!」
  たまらず私は、もう一度、子供に踏み潰されたヒキガエルみたいな悲鳴を上げる。
  なんで私が、こんな目に遭わなきゃいけないんだっ!私が一体何をしたっていうんだよう!悪い奴なら世
の中にたくさんいるじゃないか。あるなとかあるなとかあるなとかあるなとかさ。ああ、もう、駄目だ。何された
か分からないけど、今の怪光線で私ゼッタイ死んだ。おじいちゃん、ごめんね。本当にごめんね。先立つ不
幸をお許し下さいっ!
  って・・・・・・あれ?
  女の子が手にしているモノが目に入り、ふと我に返る私。
  彼女が手にしているのは、ピンク色の可愛らしいデザインの小さなデジカメ。その、レンズの先はしっかり
私のほうを向いている。ってことは、今の光って殺人光線じゃなくって、ただのカメラのフラッシュ?私を写真
に撮っただけ?きょうびのユーレイはカメラも持っているんだろうか?技術が進歩するならユーレイも進歩す
るってこと?
「撮っちゃった、撮っちゃった。お姉ちゃんの写真、撮っちゃった」
  何が起こったのかよくわからなくってボーゼンとしている私を尻目に、ユーレイの少女は楽しげに、歌うよ
うな調子でそう言うと、私に向かってにいっと白い歯を見せた。
673の444:2007/01/08(月) 23:53:03 ID:OQGBcjdX0

  ぱち、ぱち、ぱち、ぱち、ぱち。
  静まりかえった教室にだしぬけに響く拍手の音。さっき幽霊の女の子が登場したところから、売れっ子司
会者みたいな気取った足取りで颯爽と教室に入ってきたのは・・・あるなだっ!
「あるな姉ちゃん、ほら、ほら、ほらあ」
  幽霊少女は、一直線にあるなに向かって走りよって、まるで100点の答案を親に見せびらかすみたいに
得意げにカメラを差し出した。
「よしよし。よくやった」
  あるなは、カメラに収まっている画像を満足げに確認したあと、幽霊少女の目線までしゃがみこんで頭を
くしゃくしゃなでつける。
「おててが冷たい」
「うーん、ちょっと氷で冷やしすぎたね」
  口を尖らせて不平を言う女の子の手をぎゅっと握りしめるあるな。
(あるなお姉ちゃんって、この子あるなの何なの。手を氷で冷したって一体何なのさ。この子の手が冷たいの
は、この子が幽霊だからじゃなかったの?)
  幽霊少女と親しげに話すあるな。目の前で繰り広げられる理解不能な光景に頭が混乱する私。
  だけど、よくよく二人の会話を聞いていれば、いくら馬鹿な私だって、自分が何をされたのかよく分かった
よ。
  私が幽霊少女と思っていたのはごくフツーの女の子。きっと、あるなの親戚か何かなんだろう。ご丁寧に
学校七不思議にでてくるまりつきの少女の霊そのままのカッコをさせて、手を幽霊みたいに冷たくするため
氷で冷した。そういうことだね。私はものの見事にそれに騙されて、ぎゃーぎゃーわめいて醜態を晒したって
わけだ。悔しいっ!悔しいっ!
「あっ、あるなっ!」
「あら、お人形さん。そんな恐い顔してにらんじゃって、どうかしたの?」
「私は人形じゃないっ」
「σ◎◎¬ホホウ!! さっきあなた『人間みたいに見えるけど人の形をしてるだけの人形なんだよう!』って半べ
そかいてなかったっけ」
683の444:2007/01/08(月) 23:53:42 ID:OQGBcjdX0
「うー、そ・・・それは・・・」
  私の声色を真似て揶揄するあるな。私はとっさに言い返す言葉を失って唇をかみ締めた。あるなの奴、
影からこっそりさっきの私と女の子のやり取りの一部始終を聞いていたんだね。
「そんなことより、あなたに面白いもの見せてあげる」
  うふ、と笑いながらあるなは私のベットに腰掛けると、先ほど女の子から受け取ったデジカメを枕元に置
いた。
(うへえ)
  デジカメのディスプレイに映っていたのは、まるでムンクの叫びの絵から飛び出てきたみたいに歪んだ顔
つきで悲鳴を上げている、つい今しがたの私。我ながらひどい顔。
「この写真をどうするつもり?」
  私を見下ろすあるなを上目遣いににらみつける私。
「へ?決まってるじゃん。学校一の臆病者ってタイトルで、今日あなたが撮ってた写真と一緒に明日廊下に
張り出すのよ。もちろん、この写真を一番でっかくするけどね。いやあ、みんなの反応が楽しみだなあ」
  人をコバカにするような薄笑いを浮かべるあるな。
  こんな写真一枚撮って私に恥をかかせるるためだけに、ご丁寧に学校七不思議にでてくるまりつきの少
女の霊そのままのカッコをさせて、手を幽霊みたいに冷たくするため氷で冷したってわけ?あきれた。本当
にあきれたよ。
「くっだらない。張り出したきゃ、そうすればいい。馬鹿みたい」
  この写真をデカデカと廊下に貼られるのは確かに恥ずかしいよ。でも、こんなふうに泣き喚く私の姿を見
たら、みんな私のことをみんなと同じニンゲンって思ってくれるはず。私にとってこんなこと、嫌がらせでもな
んでもないんだから。
「なーんだ。もっと泣き喚くと思ったのに、つまんないな。じゃ、もっと面白いことしよう。たとら。ちょっと、こっ
ち来なさい」
  あるなは、そんな私の態度に失望するでもなく、ぱんと両手をたたくと、ぽけっと突っ立って私たちのやり
取りを眺めている女の子を呼びつける。
693の444:2007/01/08(月) 23:59:41 ID:OQGBcjdX0
「このお人形さん、手と足をくっつけて欲しいんだって。たとら。手伝ってあげなさい」
「はーい」
  たとらと呼ばれた女の子は、ベットの下に転がっている私の義手を、うんうん唸りながらも小さな両手で抱
え上げ、ベットの上にどすんと転がした。
  あるなの言う面白いことって一体何なのか、ちょっとドキドキしたけど、なんだ、私の手足を元通りにしてく
れるってこと?あるなも意外と親切なトコあるんだ。なんて一瞬でもあるなのこと見直した私が馬鹿でし
た・・・。
「じゃあ、これから、しゅじゅつ、します。しゃきーん」
  子供向けアニメみたいな効果音混じりに、私に見せ付けるようにポケットからドライバーを取り出すたとら
ちゃん。ドライバーの先っちょが蛍光灯に反射して、まるで尖ったナイフみたいにキラリと光る。おまけにたと
らの目まで、掴まえた獲物をいたぶる肉食獣みたいにきらりと光った気がした。
(なんで手足をくっつけるのにドライバーがいるのさっ!)
  なんだか、とても、嫌な予感がする。
  私は壁際に追い詰められた鼠のような怯えた目であるなのほうを見つめた。
「あっ、そうそう。言い忘れたけど、従妹のたとらはね。お人形さんで遊ぶのが大好きなの。中でもお医者さ
んごっこが大好きでね。手術手術っていって、今までいくつの人形をゴミ箱行きにしたかなあ。うふ、うふ、う
ふふふふ」
  あわてふためく私の反応を楽しげに観察しながら、声だけは優しげに私に耳打ちするあるな。
「ひ、ひ、ひ、ひぃぃぃぃぃぃっ!」
  バラバラに分解されたみじめな自分の姿を思い描いて、今日何度目かの悲鳴を上げる私。
「わっ、私、人形じゃないんですっ。人形みたいに見えるけどニンゲンなんだよう!助けて、お願い。助けて。
助けて。誰かあっ!」
「安心して。まだコンサートの真っ最中だから、しばらく誰も戻ってこないよ。うふ、うふ、うふふふ」
703の444:2007/01/09(火) 00:00:28 ID:M2Iuug4Z0

  ちょうどその時だよ。
  がらがらと勢いよく開かれる教室のドア。
「八木橋さんっ!やっぱり、まだ、ここにいたっ!」
  教室に入ってきたのは廣瀬さん。そう叫ぶなり、あるなにもたとらにも目をくれず、たとらがドライバー片
手にいじくりまわしていた私の義手をひったくって、私の身体に取り付けだした。
「ちぇ」
  不意の闖入者に自分の計画を邪魔されたあるなが忌々しげに舌打ち。さすがのあるなも一心不乱に私
の腕の取り付けをしている廣瀬さんの剣幕に気おされて、遠巻きにつまらなそうに眺めるだけで、何も言うこ
とができない。ざまあみろ。
「廣瀬さん、ありがとう」
  廣瀬さんの額に浮かぶ玉のような汗を見ながら、私は言った。
  今日、廣瀬さんに助けられるのは、これで2回目。
  廣瀬さんは、こんな時に感謝の涙一つ流すことのできない機械女のために体育館からここまで走ってき
てくれた。そう思ったら、嬉しくて、胸がいっぱいになった。
「廣瀬さん・・・あの。私たち・・・」
「なに?」
「ううん、なんでもないんだ。助けてくれて、本当にありがとう」
  ホントは友達だよねってホントは言いたかったんだけど、すんでのところでその言葉を飲み込む。廣瀬さ
んと私は、今日、ほんのちょっぴりお話しただけ。まだまだ友達なんて言える間柄じゃない。それに、廣瀬さ
んだって、本心ではこんな全身義体の機械仕掛けの身体なんて気持ち悪い、そう思っているかもしれない。
私のこと、自分のゲージュツ作品を完成させるためのセットの一つくらいにしか思っていないかものかもしれ
ない。そう思ったら、友達だ、なんて恐くてとても言えないよ。わざわざ友達だなんて浅はかな期待して、後で
裏切られて傷つきたくないよ。
  ごめんね。私は素直じゃないんだ。こんな親切にしてもらってるのにね。ごめんね。 
713の444:2007/01/09(火) 00:01:04 ID:LfaC8ByX0

  かちゃり。
  金属同志が触れ合う硬い音がして、右腕が義体にくっつく。同時に義眼のディスプレイに「右腕が接続さ
れました」と緑色の文字が浮かんだ。
「ふーっ」
  緊張が解けたのか、廣瀬さんが大きな溜息を漏らして額の汗を拭った。
  ベットに寝たままの格好で、ぐるぐる右腕を回してみる。腕が自分の思ったとおりに動くっていう、当たり
前だけど、でも久しぶりの感覚をしばらく楽しんだあと、私は右腕一本をうまく操ってもぞもぞと身体を起し、
壁にもたれかかる。
「右手さえつけてもらえれば、あとは自分でできるから。廣瀬さん、ありがとう」
「お礼はいいの。そんなことより、すぐに体育館に行かなきゃ」
「えと、あの、私を体育館のコンサートに連れて行ってくれるの?そのために、わざわざ教室に来てくれたの?」
「そうだよ」
  誇るでもなく、ぶっきら棒にそう言いながら残りの義手や義足をベットに並べる廣瀬さんは、なんだかとて
も眩しくてカッコイイ。女の私でも、あんたに惚れた。
  廣瀬さん、私を体育館に連れて行くために、わざわざ教室に戻ってきてくれたんだ。そう思ったら、嬉しさ
の余り、もう流れることのない涙が作り物の機械の眼からこぼれ落ちたような気がした。
  あなたのこと、ちょっとだけ信じていいですか?
  口には出さないけど、あなたのこと友達って思っていいですか?

  廣瀬さんのおかげで、ようやくのことで五体満足の身体に戻れた私。でもその場で足踏みしたり、バンザ
イしたり、手を握ったり開いたりっていうカンタンな義体の動作確認をする暇もなく、廣瀬さんに手を引かれる
ままに廊下を駆け出していた。
723の444:2007/01/09(火) 00:10:29 ID:M2Iuug4Z0
「まだ、コンサートは続くんでしょ。そんなに急がなくたっていいじゃないかよう!」
  階段を二段飛ばしにぴょんぴょん駆け下りる廣瀬さんの背中を見ながら、ぶつくさ不平を言う私。でも、廣
瀬さんの苦しい息遣いを聞いて、返答はあきらめた。今の私は、全速力で走ったって息が乱れることなくフツ
ーに会話ができちゃう。機械の身体なら、いくら走ったところで電気を消費するだけで疲れを感じることも、息
が上がっちゃうこともない。でも、生身の身体は違うもんね。こんな些細なことで暖かい生身の身体と冷たい
機械の身体の差を感じて落ち込み、さらに全速力で走ってもなお、こんなことを考える余裕があるってことに
落ち込む私。もう、頭を真っ白けにして、何もかも忘れて風と一緒に走る、なんてことはできないんだろうな
あ。

  コンサートのために窓に暗幕を張られて真っ暗になった体育館の中は、ちょうど演奏の合間なんだろう
か、思った以上にみんなのおしゃべりで、わいわい、がやがや騒々しい。
  折角テンホイラーが来てくれてるのに、おしゃべりなんてもったいない。もっとちゃんと聴いて、一緒になっ
て盛り上がらないと失礼じゃないかっ。私はちょっぴり憤慨しながら、そんな喧騒の中を駆け抜けて最前列
へ。
「八木橋さん、こっち、こっち」
  廣瀬さんに導かれるままに、そのままステージに駆け上がる。廣瀬さんは、ライブの学校側のスタッフに
選ばれている。だから彼女と一緒にいればステージの真横、テンホイラーと同じ目線でライブが見れるんだ。
ひょっとしたら、サインももらえるかもしれない。すごいよ。実行委員会の権力はダテじゃない。
  私は東京に出てきたばかりのイナカモノみたいにきょろきょろステージの方を見回した。だって、私のすぐ
そばに、テンホイラーのメンバーがいるんだよ。ボーカルの榎本アキラの鼻のほくろだってはっきり見えるん
だよ。うきうきしながら廣瀬さんに手を引かれるままに、ステージの上を歩く私。視線はもちろんテンホイラー
に釘付け。
「じゃあ、八木橋さん。ここに立って」
733の444:2007/01/09(火) 00:11:06 ID:M2Iuug4Z0
  廣瀬さんのコトバにはっと我に返って、後ろを振り返る。私の眼の前に広がるのは観客席。私が立ってい
るのは、隅っことはいえ、ステージの上。突然ステージにのぼった私にみんなの視線が集まっている。
(え?え?舞台袖から、ライブを見るんじゃなかったの?)
「ああああの、私なんでこんなとこに・・・」
  なんで、こんな場所に立たないといけないのさ。ゼンゼン意味が分からない。
  みんなに見られてる。そう思うと800メートル走のスタート直前みたいに緊張で身体が強張った。私は救い
を求めるように、廣瀬さんを見つめた。
「やあ、いらっしゃい。待ってたよ」
  突然、榎本アキラが、私に向かって手を上げた。
  えーっと、今の、確かに私に向かって、だよね。夢じゃないよね。
  胸が突然苦しくなって、天井がぐるぐるまわる。
  思わず深呼吸を繰り返す私。もう呼吸なんて必要ないのに。落ち着け。落ち着くんだっ!
  私のこと待ってたって、もしかして私、テンホイラーと一緒に歌を歌わなきゃいけないんだろうか?ムリム
リ。私、そんなの絶対ムリだよ。有名アーティストと同じ舞台に立てるなんて光栄だけど、私なんかじゃ役不
足。みんなの前で体育館のステージの上に上がるなんて経験は小学校や高校の卒業式くらいでしかしたこ
とないし、そのときだって右手と右足が一緒になって動くようなありさまだったんだから。
「あのう、わたしっ、テンホイラーの歌はだいたい歌えるけど、でも、あっ、あのあのあの。やっぱり、私には
ムリだからっ。歌はヘタだし、上がり症だし・・・」
「八木橋さん。何を勘違いしてるかしらないけれど」
  廣瀬さんは、くすりと笑った。
「八木橋さんの仕事、歌うことじゃないから」
  余りの気恥ずかしさに、かあっと耳が熱くほてった気がした。ひどい勘違いだ。全く、うぬぼれるにもほど
がある。そうだよね。私なんかが、テンホイラーと一緒に歌を歌えるわけがない。でも・・・
743の444:2007/01/09(火) 00:23:03 ID:M2Iuug4Z0
「じゃ、じゃあ、なんで観客席のほうを向かなきゃいけないのさ?あっ・・・そうか。次の曲って『後ろ向きにバ
ンザイ』なんだね。それで、みんな、後ろを向いて立たなきゃいけないんだ。もちろん私達も。そうなんでしょ」
  『後ろ向きにバンザイ』はライブでは必ず一番最後に演奏することになっている名曲中の名曲。この曲の
始まる前に、みんな後ろ向きに座り直すのがお約束になっている。
「うーん。そうではなく」
  廣瀬さん。困ったように首を捻った。
「実は突然スピーカーが壊れて演奏できなくなっちゃった」
  そう言われてみれば、ステージ横に置いてあるスピーカーのまわりに、マネージャーらしき人や、ジャンパ
ーを着たスタッフらしき人たちが集まって何やら相談をしている最中。テンホイラーの演奏が止まって、体育
館の中がざわついていたのはそういうわけか。でも、それと私と何の関係があるの?テンホイラーのメンバ
ーがさっきから私をちらちら見ているのはどういうわけ?
  わけが分からず、私はぽかんと廣瀬さんを見つめた。
  廣瀬さんは、何だか言いにくそうにもぞもぞ口ごもったあと、ようやく口を開いた。
「だから、えーっと、あのね。これを、八木橋さんに繋いでいいかなあ」
  私の首をちらちら見ながら、廣瀬さんが差し出したのは、黒い電源コード。コードの先端には小指の先ほ
どのコネクターがついていた。あわてて、指先で首筋をぴたぴた確認する私。あわてて走ってきたものだか
ら、カムフラージュシールを貼り忘れて端子カバーがむき出しのままだった。
「な、なにこれ。わ、私に何をしろっていうんだよう」
  首をおさえて反射的に後ずさる私。なんだか嫌な予感しかしない。
「うん。八木橋さんの身体についてるスピーカーを借りられないかなあって思って」
  ぴたっと両手を合わせてお願いのポーズを作る廣瀬さん。
753の444:2007/01/09(火) 00:24:21 ID:M2Iuug4Z0
  やっぱり、そんなことですか・・・orz
  榎本アキラが待っていたのは私じゃなくて、壊れたスピーカーの代わりですか・・・orz
  私の声は、生身の頃の声そっくりに再現されてるけど、実際は、コンピューターの作り出す電気合成音を
喉の奥の小さなスピーカーから流しているだけ。だから、サポートコンピューターの設定をいじって外から入
ってくる音声データを義体のスピーカーにつなげば、当然のことながら元の音声データを忠実に再現した音
を義体スピーカーから流すことができる。でもね。それって・・・
「えと、その、つまり演奏中ずーっとステージの上から観客席に向かってカバみたく大口を開けて、立ってろっ
てこと?」
「・・・うん」
  なんだか申し訳なさそうに下を向きながらうなづく廣瀬さん。
「・・・・・・」
  お化け屋敷の人形、使い捨てカメラときて、次はスピーカーですか?はは。
  私はれっきとしたニンゲンなんだよう。電化製品じゃないんだよう。嫌嫌っ、もう嫌っ!

  でも、スピーカー役、やりましたよ。ステージのすみっこで、大きな口あけて。
  だって、私だって、テンホイラー見たかったんだもん。
  生テンホイラーが見れたこと。それだけは良かったよ。
  
  バンザイ。
  限りなく後ろ向きにバンザイ。

  とほほ。

  お し ま い
763の444:2007/01/09(火) 00:26:29 ID:M2Iuug4Z0
ヤギーの学園祭、これにて終了です。
ちょっと救いのない話になってしまったかもしれませんね。
77adjust:2007/01/09(火) 23:05:14 ID:UfP8gZfm0
>>62
>どちらの義体で生きていくのも大変みたいですね。

実際のところ、そのとおりだと思います。もし現実に全身義体のようなものが
可能だとしても、ギャップを感じるのは避けられないでしょう。まず間違いなく
生身の感覚を再現できないでしょうから
でも、それを乗り越えてでも生きたいと思うのもまた人間の(生き物の)悲しい
性でもあります。それでも生きるか、生きるのを放棄するか、感情を完全に失った場合
生きる意欲が存在するか疑問です。これは精神科の領域ですかね

>>66-76 3の444様
完結おめでとうございます。でも...orz カワイソス
なぞの女の子は人間でしたか。以前の作品で高校時代は暗い時代のような記述があった
と思いますが、おもちゃにされているのは確かにつらいですね。

しかし、人と心の書き方がすごくうまいですね。読者がつらさを感じるというのは、それだけ感情
移入できるからなので、このような文章がかけることを素直にすごいと思います。

78pinksaturn:2007/01/10(水) 01:25:27 ID:AiiF09IH0
あけおめ。新年早々の投稿ご苦労様です。

adjust様
ギガテックス娘、ついに来ましたね。
職種による脳改造度の微妙な違いなど、期待してます。

3の444様
ヤギーが道具にされたのは、ソーター、手書き型コピー機、自動調理機、カメラ、マイクの5品種達成ですか。
後はどんな用途があるのでしょう。会議の録音、移動電源などは未出ですかね。
電合成の容量が余っていれば酸素発生器にはなれるかな。
さすがにウォータークーラーには成れないでしょうね。
79manplus:2007/01/10(水) 02:12:05 ID:+r9hEdiJ0
明けましておめでとうございます。

 3の444様
ヤギー、新年早々、こんなに悲惨すぎていいのでしょうか?
さすがに悲惨な高校生活なんですね。
幽霊話のオチがこの様になるとは・・・。


adjust様
ギガテックス義体編、続きが楽しみです。
木原嬢もさることながら、相沢嬢が今後、どの様な職業に
従事していくのかも楽しみです。

スーパーF1スタッフの掛け合いは、まだまだ続くことになります。
しばらくは、掛け合い漫才?を楽しんでみてください。
80名無しさん@ピンキー:2007/01/11(木) 00:52:04 ID:AGZxnukL0
イソジマ電工入社から数年後
新しく開発された人工消化器官を試験的に搭載されるヤギー。しかし技術の限界からまだデンプン以外の物は消化できない。
数日後、某全自動住宅では内臓電源でご飯を炊く女性型サイボーグの姿が...

とか妄想
81名無しさん@ピンキー:2007/01/11(木) 08:28:29 ID:wPH4U2YB0
高齢者の方々と共に朝粥をいただくヤギー
ほのぼの
それを見て嫉妬の炎を燃やすアニー
殺伐
82名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 01:45:25 ID:xE0AVsbi0
>>80
サイボーグに女性「型」という表現はナンセンスのような稀ガス
別に女性の姿に作られたから女性な訳じゃなくて、最初から女性な訳だし。
なんか「女性型」とか言われると「じゃあ中に入ってるのは野郎なのか」とか思ってしまう漏れガイルorz
83名無しさん@ピンキー:2007/01/12(金) 01:58:11 ID:MxIYJiBn0
>>82
「女性型義体」だったら中の人の性別に関係なく単に入れ物をあらわす言葉ってことで
問題なさそうだけどね。
84adjust:2007/01/12(金) 20:30:42 ID:hthlGqOb0
>>61からの続きを投下させていただきます。
当方の本業のほうが今、いっぱいいっぱいなので、全部完成させるまでとなると、
いつまでかかるかわからないので、今回も途中までです。
細切れで恐縮ですがよろしくお願いします。

>>78 pinksaturn 様
>>79 manplus 様

暖かい書き込みありがとうございます。
よろしくお願いします
85adjust:2007/01/12(金) 20:31:25 ID:hthlGqOb0
 
「よいしょ、ここをおりるわよ」
 「はい、そこ崩れそうです」
 「大丈夫、足場確保したから」
 森を進み、いくつかの岩場を越える。深い森の中は湿度が高く薄暗い。よく見えずに足を下ろすことに躊躇する相沢
の手をとり、安全なほうに誘導する。
 「もうすこしね。」
 「多分このまま下まで降りたら、海が見えると思いますよ」
 濃い密林の気配が変化して、なんとなく明るくなり、波の音がかすかに聞こえてくる。においがわかれば、潮の香り
も感じたかもしれない。
 小さな花びらをたくさんつけた黄色い花に独特の模様の蝶が舞い降りる。
 「あ、あれなんだっけ、あれこの辺にしかいない蝶よね」
 あわてて相沢の肩をたたく。
 「ああ、ツマベニ蝶です。この辺というわけではないですが、宮崎くらいまでだったと思います」
 さっと、カメラを出して構える木原、シャッター音とほぼ同時に飛び立つツマベニ蝶。
 「まにあった...かな」
 「よかったですね」
 相沢はにこりと笑う。普通の人間であればへとへとになりかねない森の散策も二人には苦にならない。木原は平静を
装いながらもすこし頬が緩んでいる。
 「もうちょっとです。がんばりましょう」
 「ええ、いきましょう」
 岩場の多い地形を二人はゆっくりと下っていった。森の端に近づくと、しっとりとした土から乾いた砂に変わってい
く。
 「この岩場を越えれば海です。たしか、こっちのほうに降りるところがあったような...」
 岩の間を見回して、海まで降りられるところを探す相沢。岩場の向こうには砂浜が見える。
 「こっちからなら降りられそうよ」
86adjust:2007/01/12(金) 20:32:33 ID:hthlGqOb0
 「そうですね」
 木原の示す方向に降りられそうな空間がある。相沢もうなずいてその方向に向かう、やがて、岩場が尽き、静かな砂
浜が広がってきた。
 「やったあ、到着」
 木原が砂浜に足を下ろすと、軽くぽんと飛び跳ねた。
 「あー、やっとつきましたね」
 少し遅れて、相沢も砂浜に降り立った。
 木原がくるりと周りを見渡した。砂浜に幾筋かの線が付いている。
 「あれなにかしら」
 砂浜の筋を木原が指差す。相沢はきらりと目が光った。
 「あった、やったあ、初めてみつけたっ」
 相沢が飛び跳ねながら、砂浜の筋までダッシュする。
 「???」
 相沢の方へ歩いて、砂浜をよく観察する。バイクでも通過したような筋の左右に戦車のような模様が見える。
 「ひょっとして!」
 「わかりました?」
 口に人差し指を当てていたずらっぽく見つめる相沢、何であるかを理解して、目を細める木原。
 「海亀でしょ」
 「大当たりー」
 とろけるような目つきで、ちょっとふにゃふにゃとした足つきで海亀の付けた筋をさかのぼる相沢。
 「ここに海ガメが産卵するということは聞いていたんですけどねー、タイミングが悪くて見たことが無かったんです
よ。」
 「この、移動の後は新しいわね。ここに夜中までいたら、上陸が見られるかもしれないわね」
 「今回は無理そうですけど、いつかは見に来たいですね...ここかな」
 海ガメのつけた跡が途切れるところに来る。少し大きい範囲で砂がかき回された後が見える。
87adjust:2007/01/12(金) 20:36:48 ID:hthlGqOb0
 「多分、ここにたまごがありますね。」
 「ああ、」
 感慨深そうに木原がうめいた。相沢は海を見つめている。
 「ここから、また命が生まれて旅立っていくんですね」
 「そうね...」
 木原が、同じ海を見つめた。すこし日が傾き、森の影が砂浜に落ちる。
 「たくさんの命が生まれて、生きて、そして消えていく...どうしても自分のことを考えてしまうわけです」
 少しゆがんだ笑顔を見せる。
 「生きていくのはいいな、すばらしいな、と考えている自分と、だからこそ、生死も自然に任せるべきじゃないかな
と思う自分がいます」
 「うん...」
 「いつまで、生きていられるかわからないけど、そもそも私は生きているのかわからないけど」
 「大丈夫、あなたは最高に生きてるわよ、そして私も」
 脳改造のためか、感情が爆発しそうな自問自答にも妙に冷静だった。自分の生死に思いを馳せるときにも、あるとこ
ろで、興奮が収まってしまう不自然さを感じる。
 「生きていくのは大変だけど、それでも生きていく。ここまで、先人たちが技術を積み上げて、やっと生かしてもら
えてるんだから...ほんのちょっと運がいいだけ」
 「そうなんですか、たくさんの生きたくても生きていけない人たちに、いや、それ以外の命にも、ごめんなさいとい
いたいです」
 「そうね、でも私たちにはどうすることも出来ない。出来ることは今から生まれてくる命にお返しをすることだけ。」
 「できるんでしょうか」
 「どんなことが出来るのかを考えるのも私たちの仕事と思う」
 「はい」
 じっと海を見つめながら、考え込む相沢であった。木原が相沢の肩をそっと抱き寄せる。ふたりはいつまでもじっと
海を見つめ続けていた。


88adjust:2007/01/12(金) 20:37:41 ID:hthlGqOb0
 「シーケンス121、OK、修正ベクトル値は範囲内です。」
 「了解、遷変位軌道に乗りました。内之浦、位置計測お願いします。」
 「こちら内之浦、位置計測終了、いまのところ正常範囲、どうぞ」
 「JC8621、了解、次の通信は1200、ありがとう」
 「内之浦、了解、サンキュー」
 KC-4B型宇宙往還機は、極軌道を通る地球観測衛星、ジオスコープ2に向かっていた。多くの衛星は地球の自転と同
方向の軌道をとるものが多い。地球の自転を加速の一部として使えるからである。ジオスコープ2は地球観測衛星であ
り、地球全体をスキャンするため、地球の自転方向から90度傾いた、極を通る軌道を取っている。この軌道は通常の
軌道ではないため、ジオスコープ2に向かうならば、少しずつ軌道の方向を変えながら極軌道に少しずつ遷移していく
ことになる。そのため燃料と時間が多く必要となる。
 ジオスコープ2に向かうだけであれば、軌道連絡機などの小型機のほうが本来は有利である。しかし、大気圏突入能
力を持たない軌道連絡機はいくときにかかる時間と同じ時間をかけなければ元の軌道に戻ることは出来ない。しかし、
大型で燃料消費も激しい軌道往還機は、ミッションが済んだらすぐに大気圏に突入すれば、帰りの時間が非常に小さく
なるといった利点があった。
 時間と燃料が多く必要なため、少しでも必要物資が少ない完全義体の2人が今回の任務に選ばれていた。故障したジ
オスコープ2の修理に向かったのは、パイロットの資格を持つ黒田翔子とミッションスペシャリストの木原良子であっ
た。完全義体者のパイロットもいるが、ほとんどは男性である。完全義体者で、パイロットの資格を持ち、しかも女性
という組み合わせは、日本では希少である。もともと、ギガテックス義体の使用者は男性が多い。特殊公務員向けの仕
事は男性的な仕事が多いため、使用者も必然的に男性の割合が多くなる。
 黒田は軌道往還機の操作を終えると、いくつかのスイッチを操作して自動モードに切り替えた。航法制御装置はそれ
を受けて、全ての制御を自動で行う。極軌道での同期作業までは大きな機動はもう無い。
 「さて、作業終了ね」
 黒田が、シートを戻して背伸びをする。
 「こちらも終わりです、しばらく退屈になりますね」
89adjust:2007/01/12(金) 20:39:01 ID:hthlGqOb0
 小刻みに軌道修正を繰り返して、極軌道に遷移するためには72時間が必要である。普通の人間であれば、その間の酸
素、食料、水、温度の管理が必要であるが、彼女たちの場合、義体を維持する電力と脳を維持する栄養と酸素だけがあ
ればよく、その負担は非常に小さい。しかも、宇宙用に改造されている彼女たちは、酸素と栄養のパッケージを一日一
回変えればよいだけである。
 いったん軌道に乗せてしまえば、あとはほとんど自動制御で行われるので、その間は機器のチェックぐらいしかする
ことが無い。
 「ああ、ゆううつ、3日も暇つぶしするなんて、考えただけでぞっとするよ。」
 黒田が、モニターをネット配信番組に切り替える。
 「とりあえず、一眠りします?、それとも何かほかのことでも?」
 木原が私物のかばんから本を数冊取り出しながら、聞いた。
 「そーねー、時間はたっぷりあるからぼーっとしながら考えよう」
 「了解です」
 それっきり、モニターの番組に集中する黒田、木原は軌道往還機の教本を開く。しばらく無言で二人が時間をつぶす。
不意に黒田が語りかけてきた。
 「ねえ、」
 「はい」
 「それって、パイロットの教本よね」
 「そう、パイロットになるかどうかはわかりませんが」
 「そうなんだ」
 片手で器用に姿勢を変えながら黒田が木原に近づく。
 「パイロットもあんまりいいもんじゃないよ。やっていることはいつも同じことだし、ところで木原さんはフライト
は何回くらいやった?」
 「もう大台越えました、今回で11回目」
 「じゃ、ベテランだね」
90adjust:2007/01/12(金) 20:41:27 ID:hthlGqOb0
 「ベテランというほどのことも無いけど、ミッションスペシャリストは毎回ミッションが違うし、黒田さんはどのく
らい?」
 「私は、20は行ってないな、14〜5回位、パイロット前のフライトも合わせるとだけど」
 黒田がため息を付くようなしぐさをして、操縦席の前の窓に顔を向ける。地球から見て逆さの姿勢になっているため、
青色の地表が窓の上に張り付いていた。
 「あっ」
 黒田が声を上げると、はっとして木原が目を上げた。
 「いま光った」
 「え」
 さっと緊張が走る。翼端の標識灯やコクピットのパネル以外で光るものは基本的に無い。もし光るものがあれば、多
くの場合あまり良くない結果が待っていることが多い。
 「何が光ったんですか?」
 「わからない、今一瞬窓の外でぱっと」
 慎重に窓の外へ目を走らせる黒田、木原は機体の異常を知らせる警告ランプを探す。
 「なんだったのかな」
 しばらく、見つめ続ける黒田の顔が、一瞬だけぱっと照らされた。その光を目で捉え、その目が大きく開かれる。
 「なにかわかりました?」
 「わかった、大丈夫、木原ちゃんも、見てみて」
 怪訝な顔で、窓の外を覗き込む木原、視線を地球に向けた瞬間ぱっと光が飛び込んでくる。
 「あ、これって...すごい」
 通常の軌道から外れた機体は、地球を斜めに見下ろすような角度で飛んでいる。その見下ろすもやのかかった大気圏
に大きく光のカーテンが通り過ぎていく。
 「オーロラね、地上ですら見たことないのに、こんなところで見ることになるとはね」
 地球を地磁気の盾で放射線から守るバンアレン帯は、極である北極や南極では吸い込まれるように落ちていく。その
ため太陽風によって運ばれる放射線の一種である荷電粒子も、大気圏にまで到達し発光するのである。
91adjust:2007/01/12(金) 20:43:48 ID:hthlGqOb0
 「荷電粒子が増えていることになるんで、あまりいいことでもないんですけどね」
 「そうね。でもきれい...ここは素直に見物しましょう」
 「ええ」
 しばらく、なりをひそめたかとおもうと、ふわっと不意打ちで現れる。そうかとおもうと、いつまでも小刻みに光り
続けるときもある。
 「この風景を直接見られる人間はそうはいないわ。私たちだけの特典よ」
 「普通の軌道では極点までは見えませんからね。」
 「よし、元気出た。しばらくがんばれそう。」
 黒田が壁から手を離すと、ふわりと浮かんだ。そのなかでガッツポーズをする。
 「疲れない程度に、ほどほどにがんばりましょうね」
 静かに答えた木原の目にも大きく流れているオーロラが写っていた。そのオーロラもまた静かに遠ざかっていく。次
の周回にはまた少し極に近づくことになる。この次はもっとよく見えるのだろうか。


今回はここまでです。ありがとうございました。
続きは、また出来次第投下させていただきますので、よろしくお願いします。
 
92名無しさん@ピンキー:2007/01/13(土) 00:34:51 ID:867FZEQA0
adjustさん、情景の描写がお上手ですね。
南九州の海岸と宇宙の対比がよいです。海岸(自然)と宇宙(ハイテク)は人間と機械の
関係(サイボーグ)を暗示しているようで。
93名無しさん@ピンキー:2007/01/14(日) 00:35:47 ID:1fD0dqUf0
ずっと昔から人間が見続けてきたありのままの美しい風景と、科学が進歩することに
よって手に入れることのできた美しい風景。どちらも素晴らしいではないですか。
海洋調査のときにも感じましたがadjustさんの書く地球と科学と人間の関係は、
子供のときに見た図鑑に描かれた理想の未来世界のようで、読んでいてわくわく胸躍ります。

それはともかく!サイボーグ娘が生きている意味を自問自答するのはやっぱり萌えますね!
94adjust:2007/01/15(月) 20:56:47 ID:DYV0I/rA0
>>92
感想ありがとうございます。
人間と機械の関係と読んでいただけましたか。彼女たちもサイボーグという特殊な、ハイテクな環境
にありながら、それでも普通の人間ですよという意図を持たせたつもりです。
もともとの当方のSFのテーマが機械と人のつながりをずっと書いてきたのでこんな表現になりました。
もっとも、このスレッドに出会う前は、サーボーグ娘ではなかったのですが、機械と人のかかわり、
それも機械とそれを作る側の思いと、使う側の思いが自分の方向と合っているような気がしたので、
ご迷惑だと思いますが、投下させていただきました。本当にありがとうございます。

>>93
感想ありがとうございます。
ごく最近ですが、出所は忘れましたが、衛星から見たオーロラの写真というのを見て、このような表現に
なりました。だいぶまえに書いたと思いますが、基本的に科学技術は力であり、信頼の元に使えば善と
なりえるものだという、脳内お花畑の前提条件があります。だから理系に進んだともいえますが...
たしかに、明るい未来というイメージは子供のときの本か何かでよく見ていました。それが自分の人格
形成に大きい影響を与えているのかもしれません。それといわゆる悪人の心理状態を想像できないので
(したくないので)人の軋轢などを書くのが基本的に苦手です。

>それはともかく!サイボーグ娘が生きている意味を自問自答するのはやっぱり萌えますね!
このあとも、いくつか出てくると思いますが...がんばらせていただきます m( _ _ )m ぺこり
95pinksaturn:2007/01/15(月) 23:32:10 ID:3R9oBKcs0
>>90-91 見下ろすオーロラは、やっぱり極軌道飛行の醍醐味ですよね。
私の描いた極軌道飛行は、ミサイル迎撃やデブリ獲りに追いまくられるろくでもない任務だったので、美しいものの存在をすっかり忘れてしまっていました。
死神博士やドクター・ボーグに憧れて理系に進んでしまったせいか、発想が汚くて美しいものが書けないorz。
96manplus:2007/01/16(火) 01:31:46 ID:mlLjDXWW0
adjust様

南九州の砂浜に注ぐまばゆい太陽と白い砂浜や残された美しい自然が
目に浮かぶようですね。サイボーグという人間が作り出した超人的人間
が、そのような美しい日常にいることで、彼女たちが普通の人間なんだ
ということを主張しているようで、ほほえましくさえ感じられてしまいます。

また、オーロラという超自然現象と人間が作り出したハイテクな装置でも
あるサイボーグとの両極の存在が、宇宙という同じ場所にいることが、
人間が作り出した機械の及ばない世界を考えさせられるような気がしました。
そして、そのオーロラを見て美しいと感じる彼女たちは、間違いなく、
機械ではなく人間であることを強く感じてしまいました。美しいものを愛おしむ
心の美しさが、余計美しく見えました。

続きが楽しみです。
という投稿を書きながら、諸々の事情で作品の続きを投下できない私が・・・。
97adjust:2007/01/16(火) 23:01:57 ID:jD9m3QKR0
>95 pinksaturn 様
ドクター・ボーグの方は、たまたま見ていなかったのか、よくわかりません。すみません
しかし、理系であれば、死神博士等を目標にするのは当然です。(きっぱり)
ミサイル迎撃、デブリ獲り、まじめに考察するといいネタになりそうです。
暴走する悪の組織の博士、それを技術的に補強していくとおもしろいかも
それも、否定的にではなく、肯定的に悪の組織の武器や作戦を考えていくと、
ヒーロー側がどうやっても歯が立たない、なんてこともありえてわくわくします。

>96 manplus 様
細心の注意を払われて作られた超人的なサイボーグも、宇宙のような空間では
、無力に近い存在なんですね。むしろ技術を重ねて、やっとここまで手が届いた
というべきでしょうか。そういう世界では、機械と人が協力して生きていかなければ
やっていけない世界です。機械はもちろん人のためにあるわけですが、少なくとも
人間も機械の能力や限界を知って、扱ってやらなければうまくいかないわけです。
その、人の部分は意志と感性となりますが、この部分をある程度コントロールするのが
ギガテックス義体なのかな。なんて考えてます。

pinksaturn 様、manplus 様 感想ありがとうございます。
すぐに出せる状況ではありませんが、出来次第投下させていただきたいと思っています。
よろしくお願いします。
98名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 01:13:51 ID:OYAcUCqW0
※ヒーローという単語に思わず妄想※

汀でーす。レッドを担当させていただいておりまーす。
深町です。ブルーとしての使命を全うするまで。
佐倉井です。イエローとのことなので、よろしゅう。
松原ですっ。グリーンですが何か?
ジャスミンです。みんな聞いて聞いて。私ピンク。ピンクだよー。
五人あわせて、ヤギレンジャー!!

で、私は・・・。うー、主役である、この私は何をやればいいのさ。

うーん。
……
リーダーって柄ではない。
クールでもない。ギャグは寒い。色気もない。
機械の身体のくせにメカに弱い。
うーん。
……
ヤギーは怪人役ということでおながいします。
99名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 08:30:10 ID:O7JLt4x00
連鎖的に妄想

怪人役なんてひどいよ
わたしだって、もっと何か力があれば、みんなの中に入れるのに

「力が欲しいか?」 <-古堅
「え、」
「力が欲しいか?」
「え、いいいえ、何も欲しくありません、ただみんなと一緒に...」
「そうか、それでは、力を与えてやろう。」 <-聞いていない
「開発部のものたちよ、ヤギーを我が基地までご案内せよ」
「キー!」

さあ、お仕事お仕事
100名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 16:02:29 ID:x+br3kW10
>>99
ではさらに続きを妄想してみる。

ヤギー:「あのあのあの。この変なモノはなんですか」
古堅:「新作ハダカデバネズミ怪人のボディだ。今回は自信があるッ!」
柏木:「ではさっそく換装手術をはじめましょう」
ヤギー:「嫌ーーーーっ!!」

古堅:「手術おわり。ゆけいッ!ハダカデバネズミ怪人!ヤギレンジャーを倒すのだッ!」
ヤギー:「こんな身体いやだよう。元に戻してよう。ぐすんぐすん」
古堅:「ヤギレンジャーに勝ったらごほうびにタコ焼きをやろう」
ヤギー:「分かりました。約束ですよ。うそつかないでくださいよ」
柏木:「頑張れやー。どうせ今回も負けるから、せいぜい脳みそだけはやられないよう気をつけてなー」
諏訪:「どうせ今回も負けるから回収作業めんどくさいっす」
古堅:「どうせ今回も負けるから次の怪人の製作にでも取り掛かるとするか」
101pinksaturn:2007/01/18(木) 00:03:07 ID:qNPZVNlO0
>>99 タイムボカンシリーズの歴代やられメカ製作者が目に浮かんでしまいました。
102名無しさん@ピンキー:2007/01/19(金) 21:05:10 ID:OAk0pfLg0
〜本日のトリビア〜
NHKの大河ドラマの合戦シーンは何台ものカメラを使って撮影されるが、
うっかり他のカメラに写ってしまっても支障が無いようにカメラマンも甲冑を着る。
(そのせいで、うっかりカメラマンに突撃してしまう役者さんもいる)


「という訳で、カメラお願いね」
「えっ!?」
103無名:2007/01/20(土) 16:37:48 ID:0Pextk9g0
 …作業からすでに4時間が経過していた。すべての人工筋肉と神経を付け終えた私達は、問題の内臓関連に着手した。
内臓は本来の内臓と人工細胞で構成された内臓を組み合わせて行う。もちろんこれも慎重に行わなればならない。精密な作業に助手達の顔にも緊張が走った。
 まず、本来の内臓である子宮とその周辺の内臓を取り付けていく。パックに包まれている子宮に傷をつけないように慎重に義体に取り付け、周辺の内臓を取り付けていった。
そして残りの内臓を順番に取り付け、人工筋肉でカバーした。
 「あともう一息だ。みんな、がんばろう」
 いよいよ肝心の場所である脳の取り付けに入った。脳の取り付けには特に細心の注意をしなければいけない。
これには取り付けるのにかなりに手間と時間がかかった。こういうことには私は何回もやっているので手際よく進むことが出来たが、まだ慣れていない助手の場合、手順を組むのに戸惑ったり、神経を繋ぐのに手間取ったりして悪天苦闘していた。
神経をつなげ終えて、頭蓋骨をつけて特殊ジェルを頭部に充填する。そして頭皮と毛髪を貼り付けて頭部の手術は終了した。
 「これで患者の移植手術は終了だ。後は定着プールに入れて病室に運ぼう」
 長かった義体移植手術もこの工程で一応の終了になる。私達は出来上がったかなの義体を定着液が入った水槽に入れた。その水槽を病室に運ぶのを助手達に頼むと、私は外にあるベンチに座り込んだ。
…いつもの事だが、長時間の手術はかなりの体力と精神力を奪っていく。そのため私は手術後、ベンチに休むようにしている。今日はいつもより疲れたので、私はそのまま眠りに入ってしまった。
104無名:2007/01/20(土) 16:38:55 ID:0Pextk9g0
 手術から数日後、通常の病室に移されたかなの体調は順調に回復していった。
義体交換後は身体を慣らすために5〜7日はリハビリを受けるために入院する。それでも昔と比べて入院日数がかなり短縮されているので、
人間ドック並みの入院日数で退院できるようになった。
宮木の指導によってかなの身体は順調に慣れていったので、新しい義体に慣れるまでの時間はそんなにかからなかった。 
 そして、かなの退院の日がやってきた。
 「大丈夫か、かなやん」
 「身体の調子は大丈夫?」
 友達の和真君や祐喜ちゃんたちが、かなのお見舞いにやってきた。
 「うん、平気だよ。むしろ丈夫になった感じだよ」
 誇らしげに話すかな。心配だった感染症も起きず、無事に退院できるので、私は安心して見守っていた。
 「お兄さん、無事に終わってよかったですね」
 病室の入り口にいる私を見つけたまさる君が私に話しかけてきた。
 「私だけの力だけじゃない、ここの病院のスタッフが団結したから成功したのさ」
 「僕も義体だけど、お兄さんの仕事を見ていると義体医師になりたいと思ってしまうんです。でも僕は義体患者です。医師になれるかどうか…」
 寂しげなまさる君に、私は励ましながらこんな事を話した。
 「生身でも義体でも関係ないさ。現に義体の医師もいるんだ。まさる君も一生懸命がんばればきっと出来るはずさ」
 「…そうですか、僕も義体医師の勉強、がんばってみようかな」
 まさる君は少し照れながら答えた。
 義体医師の仕事に限らず、医者の仕事は患者の命を預かる仕事だ。患者の命を守ったり救ったりするのは医者としての誇りでもあり、使命でもある。
私達は今日も患者を救うために闘い続けるのだ…。
105無名:2007/01/20(土) 16:47:08 ID:0Pextk9g0
皆さんこんにちは、無名です。
「思いがけない憂鬱」の後編をお送りしました。
まずお詫びを言わなければいけません。
今年の初めといっていたはずが、今頃になってしまいました。
皆さんにご迷惑をおかけしてすいませんでした。
さて次回のお話ですが、2月下旬か3月辺りに掲載する予定です。
内容はまだ決まっていませんが、楽しみに待っていてください。

新しい作品が入ってきましたので、皆さんの作品の感想を書きたいところですが、
まだ拝見しておりませんので、あとで書き込もうと思っています。


106adjust:2007/01/24(水) 22:53:10 ID:f7ifNIBV0
>103-105 無名様
かなちゃんの義体は生身にかなり近い構造のようですね。医師の仕事が現実に近いため、
義体といえども、大変そうな雰囲気が伝わってきます。
実際の救急病院の医者なんかも大変だと思います。しょっちゅう運び込まれてくる患者が
みんな大変な状態だったら疲れてしまいます。
まさるくんは、どんな医者になるのでしょうか。

みなさん、忙しいようで書き込みが減ってしまっていますね。
当方もあまり書き込む時間がありません。
今は現実逃避中です。...orz



107名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 23:26:57 ID:nwvRUzNo0
サイボーグと言えば「火の鳥・生命編」にでてきたのが悲惨で記憶に残ってるな。
萌えないけど
108pinksaturn:2007/01/25(木) 00:13:21 ID:e04GaCyp0
>>107 手塚治虫はリアでドクターだったせいか、大胆な機械化とか鬼畜目的の改造は描いてないから、大物の割にこのスレでは影が薄いですね。
辛うじて近い線を行ってるのは、ピノコとかなちゃんの生い立ちくらいですかね。
109名無しさん@ピンキー:2007/01/25(木) 21:31:45 ID:rfWjxohP0
そういえば、手塚治虫の学位論文を科学雑誌で見たことがあるが、
顕微鏡映像のスケッチが手塚タッチだった。
人工心臓の話は何回かあるが、全て失敗に終わるところがリアルだった。

ところで、誰も読んだことが無いDr中松の学位論文 シュールである
110名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 23:29:47 ID:Gd4NQAWy0
"僕の彼女はサイボーグ"という韓国映画が製作中で来年公開されるとか。
八木橋さんみたいな話を期待しますけど、どうかな?
111名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 07:49:51 ID:4bX/+zAR0
彼女をサイボーグに改造する話ってわけではなさそうです
某所からのコピペですが
>さえない男ジロー(小出)はファミレスで1人寂しく自分の誕生日を祝っていた。
>その時、ファミレスジャックに遭遇し、頭部に銃弾を受けて、ほぼ全身不随に。
>一方、買っておいたロト宝くじが大当たり。
>多大な資金で事業を始めると大成功し、一大コンツェルンを築き上げる。
>80歳を超えて死期が近づくと、全財産をつぎ込んで美しいサイボーグとタイムマシンを造る。
>そしてあの忌まわしい出来事から自らを救い出すため、あの日のファミレスに‘彼女’(綾瀬)を送り込む。
112名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 09:47:58 ID:OttOLzZl0
っていうか映像作品にありがちなサイボーグとアンドロイドの誤用のような・・・

113名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 11:34:12 ID:m2d9HmK30
>110
 韓国映画なの?。監督が在日なだけで日本映画ナノ鴨。
http://news.livedoor.com/article/detail/3003459/
主役、綾瀬か。改造手術シーンのため、2回目の剃髪とか無いかな。
114adjust:2007/01/31(水) 22:52:31 ID:YH65kuu/0
>>91 からの続きを投下させていただきます。
勝手に歴史を作ってしまっています。すみません
問題があれば、ばっさりと無かったことにしたいと思うので、問題があればご指摘お願いします。

歴史の部分で世界観を壊すと判断されたら遠慮なく指摘してください。よろしくお願いします。



 ギガテックス義体開発部長の尾上は、新型義体の量産試作機をじっと見つめていた。義体開発部長に就任してから3
年、極限環境に対応した義体を作り始めてからは10年近くになる。もともと、ロボットメーカーとして設立したギガテ
ックスは、極限作業ロボットの開発と共に成長したメーカーである。初期のロボットはいわゆる腕だけの産業用多関節
ロボットから始まっている。そのころはロボットそのものの信頼性が低く、数時間の作業を続けるだけの耐久性も持た
ない始末であった。
 最初に産業用多関節ロボットに参入したのは河原崎重工業のUNIMATEや安樺電機のモートマンなどであるが、これら
のメーカーがじりじりと改良を加え、耐久性を持たせることに成功したのである。しかし、これらの技術は産業に特化して
しまい、いわゆる人間型のロボットとしてのルーツにはなっていない。人型のロボットに繋がるためには、さらに多くの研究
や開発が必要であった。その研究プロジェクトのひとつが極限作業ロボットの研究プロジェクトである。政府系組織の主導
で原子炉建屋内や海底などの作業をこなすことを目標にする極限作業ロボットプロジェクトは、計算機の能力の不足など
もあって数台のロボットを試作しただけで終わったが、その研究をルーツとするロボットが計算機の能力向上と共に現れて
きつつあった。その結果、いわゆる人型ロボットが自動車メーカーや電子系メーカーで開発されている。
115adjust:2007/01/31(水) 22:54:05 ID:YH65kuu/0
 その頃、完全義体の必要性を主張したのが日本ロボット工学会の初代会長を務めた帝東大の藤江教授である。理科学
研究所と帝東大医学部で実用にこぎつけた、脊髄神経の電気的結合手法によって完全義体の可能性を示したのである。
しかし外見は、今のように人と区別が付かないように似せることは不可能であった。そのため藤江教授は、健常者と同
じ生活を目指すのではなく、生身では出来ない極限作業において積極的に完全義体者の存在意義を求めることになる。
 ロボットの研究でギガテックスと関係の深い藤江教授は、ギガテックスにおいて完全義体の実用化を進めた。その直
弟子が尾上であり、ともに完全義体のプロジェクトを進めてきた仲間でもあった。
 しかし、問題も非常に多かった。初期の完全義体では健常者とのあまりの違いのため、精神的に安定を得られない患
者が続出した。また健常者と同等の仕事に付くことが出来ない業種もかなり多い。そのため、特殊公務員としての義体
の高性能化、高出力化、そして不本意ではあるが、一部の脳改造を行うことになる。脳改造については反対の意見も非
常に根強いものがあったが、多くの自殺者又は自殺未遂者の発生という現実により、許容せざるを得なかったのである。
 
 尾上が見た新型義体は、次の義体展示会用の量産規格品であった。初期の義体は特別費用をかけても生身の人間との
違いは歴然としていた。しかし、今の義体は量産規格品でも見かけは人とほとんど変わらない。動きについても人の動
きの研究が進み、ちょっとした動きも人と酷似するようになってからは、区別をつけるほうが難しいほどになっていた。
最新の義体ならば、義体をよく知る人間が注意深く観察してやっとわかるほどである。
 「よく、ここまで来たものだ。プロジェクトが消える可能性はいくつもあったんだが...」
116adjust:2007/01/31(水) 22:54:46 ID:YH65kuu/0
 工学を修めた技術者にとって、医学の世界は別世界であった。工学は割りと狭い分野を深く掘り下げる傾向があるの
に対して、医学は実際の人間を相手にするだけに、あまりにも広い世界であった。もちろんその中でそれぞれの分野が
存在することになるのであるが、それでも工学の人間には敷居が高い。また、人の生死を扱う分野だけに、自殺者や故
障による死亡が発生したときの多くの批判にも耐えなければならない。いくつかの死亡事故が発生し批判の渦の中、ギ
ガテックスが存続の危機にさらされたときもある。そのとき新規参入を表明したのがイソジマ電工であった。イソジマ
電工はギガテックスに問題ありとして参入したのかもしれないが、尾上にとっては共に十字架を背負う仲間が現れたよ
うに見えた。幸いにもそのニュースのおかげで、批判の波は消え去ったのである。もっとも、企業間競争ではもちろん
イソジマ電工に負けるわけには行かない。
 外国では軍事用途としてサイボーグが推進されていたが、日本の場合、軍事を正面に出すのは難しい。その壁を破っ
てまで突き進んでいったのが藤江教授である。同様の研究自体はいくつも行われていたとはいえ、ここまで強引に実用
にこぎつけたのは彼だけである。彼がいなかったら、いまだにそれぞれの要素技術の開発だけで終わっていたかもしれ
ない。
 
 人と区別の付かないという技術は、ギガテックスの主力製品である人型ロボットにも応用されている。工事などに使
われる重作業用、工場などの中作業用ロボットは人型である必要はないが、人のサポートを行う軽作業用ロボットは見
かけは人とほとんど変わらないように作られている。軽作業用といっても力、速度は常人よりはるかに高性能である。
基本的には人の指示で動作するものであるが、人の意図する指示を読み取り自分で計画を立てることや、会話による意
思疎通の能力は年々向上している。レストランの給仕などの限定作業であれば人と見分けが付かない程度まで作業をこ
なすことも可能になってきている。新たな人工知能の開発も進んでおり、AI研究室では試作試験中の女性型ロボットを
研究室の補助としてテスト運用している。たしかクララベルと呼ばれていた。ロボットのハードウェアとしての開発コ
ードネームはあやめだったはずだが...。
117adjust:2007/01/31(水) 22:59:48 ID:YH65kuu/0
 「ロングレンジレーダーで反応あり、ジオスコープ2と思われます」
 「了解、ターゲットへの姿勢制御続行」
 黒田は、レーダー上の光点を目標にあわせ、その光点に近づくように航法制御装置をセットする。相対ベクトルの違
いを読み取ると航法制御装置はベクトルをあわせるように制御ノズルを噴射する。
 「ターゲット正面に来ます。ビーコン確認、近接レーダー作動、ジオスコープ2です」
 「OK、このまま接近するわ、JC8621より内之浦、ターゲット捉えました。現在接近機動中、どうぞ」
 「内之浦、了解、気をつけて」
 「JC8621了解、今から逐次状況を流しますのでよろしく」
 「内之浦、了解、受信続行します」
 マイクのスイッチを常時に切り替えて、黒田は操縦桿を握りなおした。木原は近接レーダーを操作して、ジオスコー
プ2の位置を監視する。
 「距離20km、方向そのまま」
 「そろそろ見えてくるわよ」
 「はい」
 ギガテックス義体の高感度CCDは生身の目の数倍の感度がある。星空を背景とした闇の中、いくつもの星の光の中か
ら少し毛色の違う光点を選び出す。
 「あ、あれでしょうか」
 しばらく凝視し、一定の時間で濃淡が変化していることを確認する。
 「みつけました、正面若干右下」
 「こっちも見つけたわ、JC8621より内之浦、ターゲット視認、現在、相対速度10m/sで接近中、どうぞ」
 「内之浦、了解、カメラ映像送信できますか、どうぞ」
 木原は機載カメラをジオスコープ2に向ける。通信回線が確保されていることを確かめ、データ転送を開始する。
 「送信します。映像確認お願いします」
 「内之浦、映像確認中、ええっと、映像確認しました。ズームしてください」
 「了解」
 木原が答えて、カメラのズームを調節する。大口径のカメラはかすかな点にしか見えない衛星を何とか形がわかるま
で拡大した。
 「JC8621、ジオスコープ2確認した。接近作業 GOです」
 「了解、接近作業開始」
118adjust:2007/01/31(水) 23:02:31 ID:YH65kuu/0
 黒田がいくつかのスイッチを切り替えると、KC-4Bが姿勢制御ノズルを光らせる。そのたびに以外に身軽に姿勢を変
え、ジオスコープ2に近づいていく。
 「距離1万m、問題なし」
 接近シーケンスプログラムを作動させた航法制御装置は、レーダーに映る衛星に向かって確実に近づいていく。状況
が許せば、完全自動航法も可能な航法制御装置とKC-4Bの組み合わせは、それ自体がひとつのロボットとも言える。
 ロングレンジレーダーと、近接レーダーを備え、あらかじめ対象となる衛星の情報を与えれば、完全無人航行も可能
となっている。もっとも、カメラからの光学観測、分析能力はあまり高くないため、接近相手の情報が乏しい場合には、
今のところ完全自動化は難しい。
 「よし、近づいてきた。横付けするわよ」
 「了解、距離300m、右下です」
 航法制御装置から制御を取り上げ、黒田が操縦桿を操作する。右手のスティック型の姿勢制御装置を操作して、ジオ
スコープ2の傾きとあわせ、そのまま惰性で近づいていく。
 「ようし、もうちょっと」
 ちょんと操縦桿をつついて、微妙な速度を調整。そして、いくつかの動作を経て、KC-4Bはジオスコープ2から、50m
の点で静止した。
 「ようし、到着、内之浦、接近作業終了、距離50mでホールド中、次の指示願います」
 「内之浦、了解、1時間の休憩後、衛星格納作業を予定しています。手順については後ほど送りますので、休憩に入
ってください。」
 「あれ?」
 内之浦の通信担当者が、いつのまにか男性から女性の声に変わっている。聞いたことがあるなと一瞬首をひねった後、
声の主に思い当たる。
119adjust:2007/01/31(水) 23:04:22 ID:YH65kuu/0
 「相沢さん?」
 「はい、通信担当替わりました。今からは私が通信を担当します。よろしくお願いします」
 「あー、美奈子ちゃんだ、はろー」
 「あ、黒田さんもよろしくお願いします」
 「美奈子ちゃんもおつかれ、じゃ通信担当しっかりお願いねー」
 「は、はい、よろしく...」
 「よろしく、それじゃ、JC8621休憩に入ります。次の通信は04:30 以上」
 「内之浦、了解」
 接近作業はさすがに疲労するのか、黒田は通信終了と共に、シートに体を引っ掛けて目をつぶる。
 修理作業はミッションスペシャリストの木原の役目であり、もっとも重要な仕事のひとつである。修理作業が始まれ
ば、木原もなかなか休めなくなる、この後の作業のため、木原も目をつぶることに決めた。


今回は以上です。ありがとうございました。
細切れで申し訳ありません。よろしくお願いします
1203の444:2007/02/01(木) 03:03:25 ID:CMCKK/PD0
  なけなしの貯金をはたいて星ヶ浦のブティックストリートで買った、とっておきの服に袖を通して、女性誌NANAの「キレ
イになりたいお姫サマ」っていう特集記事と睨めっこしながら入念に化粧をして、滅多に塗らない口紅なんかも塗っちゃっ
て。
  そして、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、オトナな女性にヘンシンしているコトを期待しながら鏡を見る。
  でも、口をついて出るのはため息ばかり。鏡に映った自分の姿は、どう見ても大人のフリをしたくて無理して背伸びし
てる高校生にしか見えない。ちょっとはマシになるかなって思って、眼鏡を外してみたけれど、かえって幼さが際立つばか
りで全くの逆効果。
(あーあ)
  鏡の向こうで、ちょっとませたカッコの高校生が膨れっ面で溜息をついた。これなら、すっぴんのままのほうが、まだ清
純ぶれていいかもって思う。
  私、これでも21歳の立派な成人なんだけどね。っていうか、あともう二ヶ月ちょっとで22なんだけどね。でも・・・誰もそ
んなふうに見てくれやしない。今年大学に入りたてのコにタメ口をきかれるのもしょっちゅう。けど、そんなことに目くじら立
ててもキリがない。だって、私のこと知らなければ私に向かってタメ口聞くのも無理ないんだもの。
  五年以上たった今でもたまに夢に見る、高校二年の夏の、私から全てを奪ったあの忌まわしい事故。運命のカミサマ
は私から親兄弟だけではあきたらず私の人間としての肉体まで奪い取ってしまった。私に残されたのは1kgちょっとのち
っぽけな脳みそだけ。今の私の身体は、ぱっと見は生身の身体そっくりにできているけど、16歳の時の私の姿をマネした
だけの機械仕掛けの作り物。社会的には義体化一級っていう身体障害者扱いだけど、なんのことはない、うんと精巧な
マネキン人形の中に閉じ込められた、ただの脳みそ。それが今の私だ。
  義体なんて、いくら生身そっくりだっていっても所詮機械だから、古くなって壊れることはあっても、成長するなんてこと
はない。だから私の外見はもうすぐ22歳の今でも16歳のまんま。たぶん、この先もずっと、ずうっとね。
(バっカみたい)
  鏡を見てたらだんだん腹が立ってきた。
1213の444:2007/02/01(木) 03:04:57 ID:CMCKK/PD0
  女性誌の化粧特集のモデルになっている、いかにも同性ウケしそうな知性溢れるオトナなイデタチの女性から、「あな
たには私みたいな真似は逆立ちしたってムリでしょ」ってあざ笑われたような気がして、思わず怒りにまかせて本を床に
投げ捨てる。

  今日、これから宮の橋に行って、この前、菖蒲端で私にお金を貸してくれた若い駅員さんにあって、借りたお金を返す
ことになってる。そう、借りたお金を返す。ただ、それだけのつまらない用事。
  なのに、こんないい服を着て化粧までしているのはなぜ?どうして、オトナな私を無理やり相手に印象づけようとす
る?だいたい、今日はただ借りたお金を返すだけであって、それ以上のことなんかあるわけないっていうのに私は一体
何を期待してる?
  「あなたはあなたでしょう」なんて、どうせその場限りのリップサービスに決まってるし、そもそも彼が義体化一級ってい
うコトバの意味を分かっているかどうか怪しいもんだ。それなのに、ちょっと優しい声をかけられたくらいで電話がかかっ
てくるのを心待ちにして、電話が来たら来たで、デートにでも行くみたいに、こんなふうにオトナっぽく着飾ってるなんて、よ
く考えたらどんだ道化者だ。どうせ顔色が良くなることも悪くなることもない機械女の私にとって化粧なんてほとんど意味
ないのにさ。ホント、バっカみたい。

  「ヤギー君は染色体がXYだったら相手は誰でもいいのかね」って以前友人の佐倉井にからかい混じりに言われたこ
とがある。その時は腹が立ったけど、よく考えれば私のカレシと称する男が短い期間にくるくる目まぐるしく入れ替わるも
のだから、佐倉井からしたらそう見えたのも無理はない。でも反省はしない。だって、どうせこんな身体じゃ普通に結婚な
んてできるわけなんだ。陳腐な少女マンガじゃあるまいし、真剣にお付き合い、なんて考えただけでもバカバカしい。
1223の444:2007/02/01(木) 03:05:58 ID:CMCKK/PD0
  身体だけでつながったセフレって関係でも私は一向にかまわないって思ってる。したいときにしたいことをして、ちょっ
と気持ちよくさせてくれれば私はそれでいい。それ以上のことなんて求めないし、期待もしない。そもそも男なんて信頼す
るもんじゃない。電マなんかと同んなじで、ただのストレス解消の道具。心の奥底で私のことを不気味な機械女って思って
いても、私の前でそれを隠し通して、私をうまく騙してくれる人なら、それでいい。相手が避妊不要の便利なダッチワイフ
がわりに私を利用して、私も相手をストレス解消の道具として利用して、それでお互い様。
  そんなことだから関係が長続きしたためしがない。飽きたら別れて、あと腐れなし。でも、それでいいと思ってる。愛し
たり、愛されたりなんて無駄な感情はなくていい。いくら私の身体が汚されたって、どうせこんなの私のホントの身体じゃな
いから、私はそれで全然かまわない。
  だって、もう私、これ以上傷つきたくないもの。裏切られたくないもの・・・って、だから、なんで私、こんなこと考えなきゃ
いけないのさ。今日は、ただ、お金を返すだけ。それだけなんだってば。
  全く、今日の私はどうかしてる。
1233の444:2007/02/01(木) 03:19:54 ID:CMCKK/PD0
私も忘れられないうちに出だしだけでも書いておこうと思いました。
なんとなく久しぶりに悩めるヤギーを書きたくなり、ひたすら独白させてしまいました。

adjustさん
設定を考えるのが苦手な私にとっては、こんなふうに脇を固める設定を肉付けしていただけるのは
大歓迎です。逆に私のほうでもいつかどこかでadjustさんの考えた義体史を生かせればと思います。
ギガテックスなりの理念とか、ギガテックス義体開発部長さんのイソジマ電工に対する考えとか、
いいですね。こういうのを読むと今まで設定だけの企業だったギガテックスが急に存在感がでてきた
ような気がします。
突然のクララベルが登場のにも意表をつかれました。こんなマイナーキャラまで覚えていただいて
ありがとうございます。
124adjust:2007/02/02(金) 00:32:00 ID:T0uinQoX0
>>123 3の444 様
切ない導入部のようですね。
今まで、いっぱい傷ついてきて、もうこれ以上傷つきたくない心の中が
見えるようです。でも、本当はは人を信じたい、素直でやさしい
まっすぐなヤギーが、正面から信じあい愛し合うことに裏切られてきた、
そんな情景が目に浮かびます。幸せなエンディングだといいなあ

ギガテックスを含めた、ロボット、義体開発史みたいな雰囲気になって
しまいました。ほとんど説明で、ドラマにせずにはしょってしまったことと
書き方が稚拙なため、読めるものになっているかどうか心配でした。
ありがとうございます。

AI研究室の須永さんのような立場は、技術屋としては、かなり共感が持てる
設定です。アニー、クララベルのお話は、自分にとってかなり印象に残っています。
自分的にはメジャーなエピソードです。
125名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 02:39:52 ID:saT72FXO0
>>124
>幸せなエンディングだといいなあ
( ゚∀゚)つ【その駅員の名は「藤原」】
126adjust:2007/02/04(日) 00:34:47 ID:s1ZREKpX0
>>125
>( ゚∀゚)つ【その駅員の名は「藤原」】
そうですね。ヤギーの心を溶かすことができる初めての男性かもしれません
どうなるのでしょうか。wktkですね。

>>119からの続きを投下させていただきます
少し時間ができたので、少しでもと思い進めてみました
またこま切れになっています。いつ終わるのだろう?<-無責任


 しゅっ、という小さな音と共に、エアロックに残されたわずかな空気が逃げていく。木原は、ハッチをゆっくりと押
し上げて、KC-4Bの後部貨物室に降り立った。すでに開放済みの後部貨物室からはほんのわずか地球が顔をのぞかせて
いるのが見える。木原が身に着けている銀色の反射材が塗布されたごく薄い宇宙服は、直射日光による高温を防ぐため
のものである。宇宙用に整備されたギガテックス義体は、真空には十分対応している。しかし、何もさえぎるもののな
い空間では、太陽の直射光は人工皮膚を焼き焦がすほど強力であった。
 頭部を保護するヘルメットと腰につけたいくつかの道具類を除けば、裸とほとんど変わらないくらいに体のラインが
露出している。もう船外作業を何度かこなした経験を持つ木原は、大きく盛り上がる胸と尻を特に意識することもなく
作業を始めた。
 「外に出ました。始めてください」
 「了解、回収工程に入ります」
 真空中では音は聞こえないが、姿勢制御ノズルが噴射する断続的な振動が、つかまっている手先から伝わってくる。
 横方向の移動から回転方向の移動に変化する。地球に変わって太陽が顔を見せると、周り全体から激しい光にさらさ
れる。その責めにしばらく耐えると、太陽も不意に消え、ジオスコープ2が、木原の頭上に現れた。
 「衛星、直上に入ります。もう少し回してください」
 「了解、これ位でどう?」
 「秒読みします、...5,4,3,2,1、停止」
 停止の声と共にノズルが光る。その光がやむと共に衛星がその場に静止した。
 「静止しました。位置も許容範囲です」
 「了解」
  
127adjust:2007/02/04(日) 00:37:14 ID:s1ZREKpX0
 「衛星格納作業開始します。ロボットアーム展開」
 後部貨物室の横に畳み込まれているロボットアームがゆっくりと伸びてくる。手元のコントローラーで引っ掛けない
ように注意しながらアームの先端を衛星に伸ばす。命綱が繋がっていることを確認してから、木原は軽く足元を蹴った。
 意外と鋭い速度で衛星まで飛んでいく。衛星直前で、ガス銃を噴射してブレーキをかける。
 「アームを衛星に繋ぎます」
 返事を待たずに、アームの先端の金具を衛星の構造材に差し込む。無重力で力が余りかからないとはいえ、衛星を固
定する場所はそう多くはない。
 「固定完了、整備タグをつけます」
 いくつかのプラスチックのプレートを所定の位置に差し込んでいく。衛星が持つ4点の姿勢制御エンジンはこのタグ
が差し込まれると燃料が供給されなくなる。暴走によるエンジン点火を防ぐための処置だ。
 「タグを付け終わりました。格納します」
 手元のコントローラーを操作すると、ゆっくりと衛星本体が貨物室内へ進む。大きく開いた太陽電池パネルをぶつけ
ないように姿勢を調節しながら、貨物室に収めていく。
 アームを軽く蹴って一足先に貨物室に戻ると、今度は、貨物室の金具に衛星を固定する作業に移る。十分に近づいた
ことを確認して、アームの力を抜いた。最後の1m程は手でゆっくりと衛星を動かして、取り付け位置にあわせる。無
重力といえども、1.5tの質量を持つ衛星を片手で思い通りに動かすのは難しい。義体の高出力で、比較的容易ではある
が、1.5tの慣性を抑えるためには慎重に作業を行わなくてはならない。
 何点かの固定ポイントで確実に衛星が止まっていることを確認すると、始めてほっとした表情を見せる。
 「格納作業終了しました。全て問題なしです」
 「了解、JC8621より内之浦、衛星格納作業終了、修理作業に入りますか?」
 「内之浦、了解、調査工程A始めます。目視による外観チェックをお願いします。 31エリア付近に特に注意してく
ださい。」
 故障発生時点で、いくつかの故障発生要因はすでに検討されていた。想定されている故障のうち、可能性の高いもの
から順に要因を突き止めていく。
128adjust:2007/02/04(日) 00:38:19 ID:s1ZREKpX0
 「目視チェック行きます。11エリア、異常なし、12も異常なし...」
 衛星の外板を見回して、エリアごとに損傷の後がないか慎重に観察する。外観上の損傷は特には見当たらない。
 「目視チェック全て終了しました。全て損傷箇所はありません」
 「内之浦、了解、故障分析班が検討中です。しばらくお待ちください」
 外からの損傷が無いことで、デブリによる故障の可能性は無くなった。内部の部品の故障の可能性が高い。内之浦の
故障分析班はデブリ故障の可能性を削除し、残った内部故障の原因を検討する。
 「内之浦よりJC8621、作業を伝えます。調査工程、D2を行います。衛星の電源を入れて、チェックターミナルをシ
グナルバスに接続する工程です。調査工程D2です」
 「JC8621、D2、了解」
 木原が、義体のコンピュータに記録されたデータから工程表のD2を呼び出す。視界内にD2の手順書が表示され、そ
の手順のとおりに衛星を再起動していく。衛星の再起動を確認した後、木原の持つチェックターミナルを衛星に接続、
所定の操作で、衛星のコンピュータが記録するエラーログがターミナルに表示された。
 「ターミナル読み上げます。メイン推進剤タンク、圧力25、補助推進剤タンク1、圧力0、補助推進剤タンク2、圧
力18、触媒タンク圧力5...」
 内之浦の故障分析班とJC8621の木原との間でいくつかのやり取りが行われる。地上ではその情報を元にシミュレーシ
ョンを行い、故障場所を特定していく作業が行われている。
 「内之浦より、JC8621,故障箇所特定したようです。修理工程E31、31エリアのパネルを取り外す作業を行います。あ、
その前に、生活班より要請、義体電力残量と、酸素グルコースパッケージの残量を確認してください。これは、2人と
もです」
 「JC8621了解、木原です、電力残量、60%、酸素残量72%、グルコース残量、40%」
 「えー同じく黒田より、電力53、酸素50、グルコース62」
 「内之浦、了解、休憩の必要はありますか」
 「木原です。今のところ休憩の必要ありません」
 「黒田、同じく問題なし」
129adjust:2007/02/04(日) 00:39:32 ID:s1ZREKpX0
 相沢が誰かと話している声が漏れ聞こえてくる。いくつかの漏れ伝わってくる会話の後で相沢は通信を再開する。
 「失礼しました。作業続行します。修理工程E31、31エリアパネル取り外し作業です」
 「JC8621、了解」
 木原が腰のバッグから、工具を取り出す。工程表に指示されている場所の止め具を工具を使って外していく。数点の
とめ具を外すとパネルは容易に外れた。浮遊するパネルを針金で別の場所に結わえて、パネルを外した衛星の中を覗き
込む。
 チタンやアルミ合金のパイプが走り回っている内部で、違和感のある変色が確認される。ふと気づいて、外したパネ
ルの裏側を見ると、何かが吹き付けられたような変色がある。
 「JC8621より内之浦、衛星内部に変色あり、何かが漏れたような跡があります。」
 「内之浦、了解、えー、はい、カメラ撮影できますか、映像送信お願いします」
 「準備します」
 カメラを有線でKC-4Bの貨物室内のソケットに接続する。カメラについている照明灯も点灯させ、内部を照らしなが
ら撮影していく。黒田が操縦席から、映像信号を内之浦へ送るように手はずを整える。
 「内之浦、みえますか?」
 「内之浦よりJC8621、映像来ています。見える範囲をぐるっと一回りしてください」
 「JC8621、了解」
 カメラを全体が見渡せるように前景を入れてから、近づいて全ての部分が入るようにカメラを動かす。
 「JC8621,故障分析班が話をしたいといっているのですが、代わっていいでしょうか」
 「了解、代わっていいですよ」
 「ありがとうございます、故障分析です。左側の縦に走っているパイプですが、ええっと、黒っぽく変色しているや
つです。それは、損傷しているのでしょうか、それとも他のパイプの損傷で、変色しているのでしょうか、わかります
か?」
 「確認します」
130adjust:2007/02/04(日) 00:44:05 ID:s1ZREKpX0
 対応するパイプの周りをじっと観察する。パイプの変色は回り全部に広がっている。むしろその出所はそのパイプで
はなく、奥のところからの何かの漏れが、そのパイプに付着した可能性が高い。
 「そのパイプの損傷ではなさそうです。あ、そのパイプではないのですが、後から損傷した可能性があります。亀裂
らしいものが見えます。破れてはいないようです。」
 「映像送れますか」
 「送ります」
 カメラを問題の場所に向けて、わかりやすいようにズームする。その映像は若干の遅れを伴って地上に送られるはず
である。
 「亀裂出てますね、わかりました。あと、元になった漏洩位置はわかりますか?」
 「こちらからでは、見えにくいところからのようですね。そこから、パネル側に吹いたような跡があります」
 じっと奥を覗き込むが、他のパイプや機器の陰になっていて、漏洩位置は見えない。見えないなと姿勢を変えていく
うちに、ふと視界が白っぽいもやのようなものでさえぎられかけていることに気づいた。
 「なにか、ガスが漏れているようです。何か白いものが広がっていきます。」
 「え、まだ何か漏れていますか!」
 驚いたような声が届けられる。白いもやはその濃度を増していく。
 「全てのバルブは閉じているはず、タグもついています。対処の指示願います」
 一度開放されたガスは、その勢いを増していく。勢いが勢いを呼び、ついにはガスの流れがわかるほどの密度となっ
て噴射する。
 「直ちに、離れてください。推進剤の可能性があります。」
 「了解」
 床を蹴って、貨物室から飛び出す。しかしいくらも行かないうちに命綱で引き戻される。
 「命綱外します。」
 返事を待たずに、命綱のラッチを外して放り投げる。ガス銃でさらに加速し、ハッチの影に入り込む。
131adjust:2007/02/04(日) 00:45:16 ID:s1ZREKpX0
 衛星のロケット燃料は、機器の複雑さによる故障を防ぐため、点火や混合の必要性がない1液型ロケット燃料を使っ
ている。その燃料と触媒をあわせれば、自然に点火するようになっている。また触媒が無くてもわずかな刺激があれば、
容易に点火させることが可能である。
 「ロボットアームで、衛星を放出してください。急いで!、爆発の可能性あり」
 返事無しで、ロボットアームが大きく動き出す。操縦席から黒田が操作するロボットアームは、想像の出来ない速さ
で衛星を適切につかんで持ち上げる。しかしその努力が実を結ぶことは無かった。。
 
 放出する直前、衛星の周りを漂うロケット燃料は、青白い光に変化し、その莫大なエネルギーを放出した。そのエネ
ルギーは、無事だったメイン推進剤も餌食にして、新たな爆発を引き起こす。補助推進剤タンクとは桁が違うメイン推
進剤タンクの燃料は、爆発と共に、KC-4Bを炎の海に変える。それだけではなく、爆発の衝撃と破片が、KC-4Bの貨物室
を引き裂いた。ハッチの影にいた木原は、ハッチがそのエネルギーを受け止め切れずに四散したと同時に、爆風で宇宙
に放り出された。
 
 直前まで、故障箇所を映し出していたカメラが、爆発の瞬間を内之浦へ送り続けた。その直後、通信途絶。声も無く、
その映像を見つめるNAXA担当者。最初にわれに返ったのは誰だったのだろうか。気が付くと、相沢美奈子がJC8621に
呼びかけを行っていた。
 「JC8621,応答願います、こちらは内之浦宇宙センター、JC8621応答願います」
 運用計画総指揮を務める後藤は、しばらくの放心状態からいち早く立ち上がった。
 「非常事態を宣言する。全職員を集めろ。情報収集、状況を出来るだけ早急に把握しろ。」
 コントロールセンターの各部署はいっせいに動き出した。
 「飛行計画班、乗員が無事だった場合の救助計画を再検討、考えられるだけの条件で救助計画が実行できるように考
慮せよ」
 「飛行計画班、了解しました。元の救助計画とあわせてプランを再調整します」
 「観測班、考えられる限りの観測方法で目標を観測、情報収集」
132adjust:2007/02/04(日) 00:48:01 ID:s1ZREKpX0
 「もうはじめています。まもなくカナダの天文台のエリアに入ります。観測を依頼中」
 「通信班、通信状態は回復できるか?」
 「回復は絶望的、JC8621の通信機能に障害が発生した模様です。反応ありません」
 「くそっ!」
 後藤は手を握り締めた。直前の映像がリアルタイムで入り、それを見る限りでは、機体が無事ですむはずがない。彼
女たちにも被害が発生しているはずだ。しかも、無事だとしても通常の遷移軌道では3日は必要である。できるだけ早
く打ち上げるとしても、準備に最低1日、合計で救助には4日かかる計算になる。それまで持つか? 酸素グルコース
パッケージ、または電力、そのどちらかが底をつけば終わりだ。機体が無事であれば、その両方が供給できる。しかし、
機体の損傷がひどければ、あとは義体本体の生命維持装置の容量に頼ることになる。
 何か打開策がないかと、あたりを見渡す。先ほどまでの、どちらかといえばけだるい雰囲気と打って変わって、管制
室では緊張感と絶望が同居している状態であった。いつもならば管制室に研修と称して出入りしている相沢美奈子、彼
女の笑顔は管制室の緊張感を解きほぐす癒しとなっていた。しかし、彼女らとの交信を務める相沢は、返事のない相手
に必死に呼びかけを続けている。
 「!!!!」
 後藤はその相沢の表情を見てぞっとした。その表情は能面のような凍った表情。脳改造により最大限に感情を消去さ
れた人形の表情であった。


今回はここまでです。ありがとうございました
こまぎれで申し訳ありません。
次がいつになるのかわかりませんが、出来次第投下させていただきます
よろしくお願いします。
133pinksaturn:2007/02/04(日) 10:02:20 ID:/pwBawKt0
強烈な直射日光とか迫真ですね。
時節柄、中国デブリか?と思ったら推進剤漏れでしたか。
そういえば、はやぶさの故障はどうだったんでしょう。見れたらいいのに。
化学エンジンの推進剤が漏れてもイオンエンジンは動いていたということは、運良く爆発しなかったのかな。
以前、シャトルで衛星捕獲修理ってやった例があったけど、もしこんな事故になったら乗員全滅ですね。
134manplus:2007/02/04(日) 17:58:42 ID:Psy5zB1/0
 ボーディングブリッジには、オーストリア航空のキャビンアテンダントが待っていた。
瞳たちの搭乗は、混乱を避けるために一般客の搭乗の前に行われるのだ。
「速水様、鈴木様、森田様、立川様。お待ちしておりました。座席までご案内します。」
瞳たちは、飛行機の前部のファーストクラス、ビジネスクラス専用の搭乗口から飛行機の中に入った。
総2階建てのエアバスA−420の機内には、エレベーターがついていて瞳たちは、そのエレベーターを使い、
アッパーデッキの前部にあるファーストクラスへ案内された。この飛行機のファーストクラスは、
オープンデッキの座席とVIP対応のためのの個室形式の特別室に分かれていた。
特別室は、個別対応の専属のキャビンアテンダントが配置されているのだ。
瞳たちは、当然のように個室に案内された。個室の中は、瞳とエマのために特別に取り付けられた専用の座席と、
それぞれの専用座席の隣にかなり広めのベッドになるような構造のファーストクラスの座席が配置され、
個室の後方中央にはバーラウンジや個室専用のサービスカウンターがついていた。
とても飛行機とは思えない広くて贅沢な空間であった。
「本日、この個室をご利用の速水様たちを専属で担当いたします。アシスタントチーフパーサーの三咲好恵です。
ウィーンまでの12時間半の空の旅を満喫してください。」
この部屋専属のキャビンアテンダントまでついていることにエマは驚いていた。
「瞳さん。さすがにファーストクラスですね。楽しい空の旅になりそうですね。」
「エマちゃん、そうだね。三咲さん、彼女初めてですからよろしくお願いしますね。」
「はい。鈴木様がおくつろぎいただけるように頑張ります。
当機が安定飛行に移り次第、機長とチーフパーサーもご挨拶に伺うと申しておりました。
それでは旅のお支度をいたしましょう。」
三咲がそう言うと、もう一人のキャビンアテンダントが入ってきた。
森田と三咲が瞳を、立川ともう一人のキャビンアテンダントが鈴木の身体を抱き上げてそれぞれの
専用シートに移す作業を開始した。
スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーが、一般旅客機に乗る時は出来る限り事前に予約しておき、
専用に開発されたシートに座席を付け替えて搭乗させることになっているのだ。
135munplus:2007/02/04(日) 18:00:57 ID:Psy5zB1/0
その他の長距離交通機関も同様なのだが、手脚が無く、特別な介助を必要とするスーパーF1マシン専用
サイボーグドライバーには、交通機関各社が国際自動車連盟との申し合わせにより、スーパーF1マシン専用
サイボーグドライバーに不便の無いような処置を申し合わせているのであった。
国際自動車連盟としては、特別な存在であるスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーに最大限の配慮を
約束しているからなのである。
しかし、緊急の移動の場合には、普通の座席を使用させることも例外的な処置としてあるのだ。
利用する座席に関して、飛行機や船の旅で、ファーストクラスを使用出来るのは、トップドライバーの特権であり、
各ワークスが瞳やディクソン、マリアなどごく限られたトップスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーとの
契約の時に、移動手段の条件として、特別に契約書に記載されるものなのである。
エマのように大部分のスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーは、その下のクラスに専用席を設けられるのが
普通である。
従って、ファーストクラスでの移動は、トップドライバーである瞳にカンダが与えた特権なのであった。
カンダとしては、瞳に対しての契約条項で、瞳に同伴する全ての同伴者にも、瞳と同等の権利を約束する契約を
結んでいるのだ。
だから、瞳と同伴している限り、エマにも、瞳と同様のクラスでの移動が与えられるのである。
 瞳は森田と三咲に抱き上げられて、専用シートに納められた。森田はまず、瞳の下半身の服を脱がせ、
下半身を露出させた。
その上で、レースの時に着用するのと同じタイプのおむつを履かせた。
その上でおむつの前の部分に開いている穴にシートから伸び出している採尿ホースを差し込み、
アタッチメントを瞳の股間に貼り付けた。
更にもう一本のホースを肛門の排便アタッチメントバルブに接続した。
さらに、瞳の下半身に三咲が手渡した毛布を被せた。そこまでの処置が完了すると、
今度は、三咲が瞳の身体がシートからずれたり動いたりしないようにシートベルトで完全に固定していった。
136manplus:2007/02/04(日) 18:02:05 ID:Psy5zB1/0
瞳たちの専用シートは、長時間固定されて動けないスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーの身体を
保護するために、流体クッションを使用したボディーホールドシートとなっていて、どんなに長く固定されても
床ずれが起こらないようになっていた。
更に、飛行機が事故にあったというような緊急事態の時は、シート全体がシールドカバーで自動的に覆われるように
なっていて、エマージェンシー用の保護カプセルとなるようになっていて、飛行機が墜落しても、
カプセル内に納められている
瞳たちスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーの生命を守るような処置が講じられているのだ。
そして、瞳たちの股間に装着されたホースは、言わずもがなだが、
瞳たちがトイレに行かなくても排泄を行えるようになっていたのである。
排便に関しては、離陸後安定飛行に移り、機内食が配られる前と着陸直前に排便システムが作動し、
残された生体部分の腸と排泄物貯蔵タンクを洗浄するようになっていた。
瞳たちの日常の排泄の習慣に極力あわせての処置である。
瞳とエマとっては、移動の時にはつきものの処置なので、下半身を他人の前に露出されても文句を言うこともなく、
恥ずかしいと思うでもなく、淡々と進められる森田と三咲の処置を受け入れていたのだ。
もちろん航空会社も、女性ドライバーにはなるべく同性のキャビンアテンダントをつけるように配慮していたのである。
「速水様、恥ずかしかったでしょうがご勘弁ください。いつもの事ながら、快適な空の旅のための処置なのです。」
「三咲さん。気にしていませんから大丈夫ですよ。いつものことですから。手脚のないダルマになった身体では、
長時間の旅のためには必要な処置ですし、スーパーF1サーカスでの長距離移動のように荷物扱いでの移動より、
人間としての旅が出来るから嬉しいんです。」
「そう言っていただけると嬉しいんですが、ご不便がありましたら、何なりとお言い付けください。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
「それではシャンパンのご用意をして参ります。ご用命のプールブリコのピンクをご用意してきますので
しばらくお待ちください。」
137manplus:2007/02/04(日) 18:11:53 ID:Psy5zB1/0
「嬉しいな。やっぱり、クリスマスだから、ロゼで雰囲気を作らないとね。」
「速水様、そうですよね。」
「三咲さん、後で一口飲んでくださいね。個室内で素面の人がいても面白くないし・・・。」
「私は、業務中ですから、ご遠慮します。」
「そうか・・・。残念。」
三咲がシャンパンの用意のためにカウンターに向かて行った間に、森田も瞳の隣の座席に腰を下ろし、
離陸の準備のためにシートベルトを締めた。
立川も、エマの支度が終わっていたらしく、森田より一足先にシートに座って離陸を待っていた。
「瞳さん、慣れているんですね。搭乗前に飲み物をリクエストしているんですか?」
エマが何もかもが初めてのファーストクラスに面食らいながら、瞳にたずねる。
「そうよ。個室だと、料理のリクエストも受け入れてくれるの。エマちゃんのためにウィーンらしい料理も
リクエストしておいたの。それから、お楽しみもね。」
「お楽しみですか?」
「そうよ。みんなへのサプライズなんだ。楽しみにしていてね。」
「なんだろうな。早く知りたいです。」
「でも、瞳さん、どうしてこんなにファーストクラスにとけ込んでいるんですか?」
その質問に瞳の代わりに立川がエマの横で答えた。
「瞳さまは、カンダとの契約で、たとえ今日みたいにプライベートの旅行でも移動や移動先の施設は、
最上級の施設をカンダが手配することになっているのです。それも生涯なのです。トップドライバーとして当然の待遇なの。
このような待遇を受けているのは、たぶん、スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーでは、瞳さまと、マリアさま、
ディクソンさん、ミラーさん、ロッキネンさんぐらいだと思います。エマたちも、移動がビジネス以上で、
かなり広い部屋を移動先で使えるのですから、かなりの優遇された待遇なんですが、瞳さんたちのように、
超がつくトップクラスは、国際自動車連盟のレギュレーション通りの待遇に更に優遇された待遇が約束されているのです。
瞳さんは、生涯カンダの特別役員もしくは、顧問の肩書きで、カンダに残ることも確約されているんですよ。」
138munplus:2007/02/04(日) 18:21:30 ID:Psy5zB1/0
「そうだったんだ。超トップドライバーって、やっぱり破格なんだね。」
「そうですよ。今日みたいに、瞳さまと一緒の移動だと、同行のメンバー全員が、瞳さんと同じ待遇を受けられるのですよ。」
「移動カプセルでの移動以外だと差がつけられているんだね。瞳さんが羨ましくなっちゃった。
また、瞳さんに対して恋人関係をやめて、拗ねちゃおうかな。」
「エマちゃん、それは勘弁してよ。今の関係が正常とは言わないけれど、又ギスギスした関係になりたくないよ。」
「エマさん、そうですよ。ご主人様だけじゃなく、ご主人様とエマさんの関係をみんな心配していたんですからね。
みんなが逆戻りすると悲しみますよ。」
「瞳さんも、つぐみさんも、冗談ですから安心してください。私は、我が儘を言って瞳さんに捨てられたくないですから。
私、自分の操を通すとしたら一途な性格なんです。今は、瞳さんを愛する気持ちで自分は心の中が一杯ですから。
それに、瞳さんのような待遇は、自分で勝ち取らないといけないことは、スーパーF1グランプリの2年間で
十分理解しています。
早く瞳さんの足下に行けるように努力します。まずは、マリアさんを目標にしたいと思っています。」
「それがいいよ。エマちゃんなら、あんなメデューサなんかすぐに抜いちゃうよ。あいつの走りには悪の影が見える。」
「マリアさんは、瞳さんのマシンには影がないとか、黒魔術を瞳さんが賭けているところを見たとか言ってましたが・・・。」
「おのれ〜〜〜っ!自分は怨霊のような走りをしおってからに!今度サーキットであった時はギタギタにしてやるわ。」
「エマさん、なんかエマさん自身が墓穴掘っちゃったみたいですね。ウイーンについてからが怖いような気がします。」
「つぐみさん、そうかなあ、だって、私はどんなことがあっても、瞳さんに付いていくもの。瞳さんに付いていけば、
ファーストクラスにスイートルームだもの。どんなことがあっても瞳さんへの純愛を貫くぞ!瞳さん、
マリアさんになんか負けないでくださいね。」
「エマちゃん、まっかせなさい。」
手脚のないダルマの機械人形が2体で盛り上がるのを見て、
139manplus:2007/02/04(日) 18:22:07 ID:Psy5zB1/0
「つぐみ、エマが一番怖いかもしれないね。かわいい顔で、なつっこそうに見えるんだけれど、
実は、一番底意地の悪いのはエマなんじゃないかなって思ったんだけれど・・・。」
「私もそう思った。これからはエマさんのことを魔法使いの若オババと呼ぶか?」
「賛成!」
「何か言いました?つぐみさん。毒入りリンゴでも食べますか?」
「オッと、魔法使いの若オババの本性が・・・。」
「エマちゃんをいじめないでね。つぐみさん。」
「ご主人様までだまされてます。目を覚ましてください!」
「つぐみさん。冗談に決まってます。」
「好かった、殺されないのね。」
「当たり前です。つぐみさんを殺したら、瞳さんが悲しむし、瞳さんが困っちゃうじゃないですか。」
4人が話に夢中になっているところに三咲が戻ってきて、シャンパンをサービスした。
「4人とも話の内容は怖ろしいんですが、仲がいいみたいですね。明るくしゃべられていますね。」
シャンパンを立川に飲ませてもらいながら、エマが、
「そうなんです。私たち3人は、瞳さんに愛を受け止めてもらっているんです。私たち共通のご主人様で恋人が、
瞳さんなんです。」
「オイオイ、エマちゃん、誰彼かまわずカミングアウトしちゃダメだよ〜〜。恥ずかしいじゃないの。
私たち変態だと思われちゃうよ。」
「瞳さん。私たちの愛を受け入れているのは事実だし、女王様であるのも事実なんですから、
カミングアウトじゃないですよ。」
瞳は頭を抱えたくなってしまっていた。その光景をほほえましく見つめて三咲が、
140manplus:2007/02/04(日) 18:23:14 ID:Psy5zB1/0
「そろそろ、離陸の時間です。お食事の時間までごゆっくりとおくつろぎください。」
と社交辞令のような台詞を言って、部屋の後ろのキャビンアテンダントの控え室に消えてしまった。
瞳の真実を完全に誤解する人間がまた増えてしまったと瞳は心の中で恥ずかしい思いをふくらませるのだった。
 そんな瞳たちを乗せたオーストリア航空126便は、東京に降り出した初雪が激しくなる中を定刻通り1100時に、
マリアたちの待つウィーンへ離陸したのだった。
 瞳とエマのシートは、離着陸時に一時的にカバーが自動的に出てきて、
シートに取り付けられたスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーを完全に密閉するカプセルになるようになっている。
事故の確率が高い離着陸時のリスクから、スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーを完璧に守るため、
スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーのために作られたシートは、
スーパーF1マシン専用サイボーグドライバー専用移動用カプセルと同等の性能を持つようになっているのである。
 機内の離着陸時のベルト着用のサインが消えると同時に、フードが開き、シートは元の状態に戻るようになっている。
また、緊急時には、フードが閉まり、中のスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーを
墜落時の衝撃や墜落後の火災などから守るようになっていて、緊急時に自動的に
スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーを入れたカプセルだけが機外に射出されるシステムもついているのである。
そして、墜落現場周辺で回収されるまで、スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーを
保護し続けるようになっているのだった。
141manplus:2007/02/04(日) 18:54:56 ID:Psy5zB1/0
私も、忘れられないうちにできあがった分を投下します。
クリスマスパーティー〜レーシングガール外伝1〜
1月に投下すると言っていながら気がつけば、2月になってしまいました。
完全にクリスマスからは時期遅れですね。
ご勘弁ください。
なかなか、仕事の関係もあり、続きを書くことが出来ませんでした。
次は、なるべく早く投下します。

adjust様
宇宙空間での事故のシーン、迫真で萌です。
木原と黒田の運命はどうなるのでしょうか?
地上基地の対応はどうするのか、続きが楽しみです。
相沢の脳改造による感情が制御されている人間でありながら、
人形になってしまったサイボーグという存在の描写も萌えました。

3の444様
導入部の切なさに、ヤギーワールドに引き込まれてしまいます。
今度は、ハッピーエンドがいいと思っています。  
1423の444:2007/02/05(月) 02:29:39 ID:PxFYG2070
>>132
身体が壊れたっていいじゃないか
脳さえ無事ならいいじゃないか 
サイボーグだもの
みつを

となることを祈っております。
1433の444:2007/02/05(月) 03:11:44 ID:PxFYG2070
>>141
ファーストクラス移動だけでなく専用シート付きとはすごいです。
同じサイボーグでも貨物扱いで運ばれたヤギー(@修学旅行)とはえらい違いですね。
144adjust:2007/02/05(月) 20:46:55 ID:wKr0CClV0
>>133 pinksaturn 様
>時節柄、中国デブリか?と思ったら推進剤漏れでしたか。
デブリの選択肢もあったんですが、あまりにもタイムリーすぎるので、別の理由にしました。(涙)
はやぶさも、不屈の探査機ですね。予定では、地球にカプセルを落とした後はまた飛んで
行ってしまうようですが、相対速度が違いすぎるのかな。出来れば回収して欲しいものです(無理)
それにしても、始めてはやぶさがニュースになったとき、イオンエンジンというのには驚きました。
「そんなものがいつ実用化されたあ!!」とマジに突っ込んだものです。

燃料はほとんどが高圧タンク充填のため、微量の漏れはどのロケットでも多少はあるもののようです
というか、太陽光等による異常な温度上昇のための圧を抜く機構が必ず付いているようです
特にはやぶさは、推進をイオンエンジンで行っているので、燃料タンクの信頼性を後回しにした可能性
があります。また、燃料の種類によっては、暴発しないものもあります。その分点火が面倒になります
点火系が壊れてもおしまい。暴発してもおしまい。難しいものです。
145adjust:2007/02/05(月) 21:24:34 ID:wKr0CClV0
>>141 manplus 様
意地でもダルマ人形状態を維持し続けてますね。それと排泄シーンは絶対外せない。
フェチ板の本領発揮というところでしょうか。セクシー&レズ?のほほえましいシーン
というのも不思議な組み合わせですね。それにしても...Hだ(爆)

感想ありがとうございます。相沢の変化は、衝撃の大きさを逆説的に表したつもりです。
それでも、最後の最後まで仕事をし続ける、脳改造のサイボーグ娘たちの姿でもあります。
その、脳改造に対する評価、重い評価だと思います。

>>142 3の444 様
この表現、どこかでみたなと思って、ちょっとぐぐって見ました
あまりドラマの類を見ないので、忘却していましたが、最近ドラマになっているんですね。
何年か前に何かの雑誌に載っていたのを見たことがあります。

基本的に、あっと驚くようなアイデアを出す能力が無いので、知恵と努力を積み重ねながら
がんばるようなやり方しか出来ません。いままでのものを見ていただければわかると思いますが
、起承転結ではなく、起承承承承結みたいな...「転」がない書き方になってしまいます。
もっとも、開発現場で「転」になってしまうと、大変なことになってしまいますが...
なんとか、彼女たちを生還させるように努力する姿を伝えたいと思います。
146名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 21:14:32 ID:rLtKTEWu0
文士待ちage
147pinksaturn:2007/02/09(金) 21:11:21 ID:DLNJv9yG0
(本編最終回がなかなか出来ないので、ちょっと一服)

−−(増刊)暴走おむつ飛行士−−

(北米宇宙局 プレスルーム)

北米宇宙局長:「一昨日、当局の女性飛行士が殺人未遂で逮捕されたとの報道につきましては、遺憾ながら事実であります。
詳細は現在調査中ですが、片思いの同僚が女性と会う約束をしているのを妨害しようとした模様です。」

記者:「襲撃予定時間に間に合わせるため、おむつを憑けて1600`を車で爆走したそうですね。
その飛行士は3児の母だそうじゃないですか。おむつなんて、障害もない大の大人が使う物じゃないでしょう。
どこかの後進国の産む機械じゃあるまいし、そんな恥知らずの変態を採用した責任はどうお考えですか?。」

北米宇宙局長:「戦闘機における長時間洋上飛行や宇宙における船外活動では使用しております。
当該飛行士は海軍航空隊の出身ですから職務上そういう処置に慣れていました。変態行為ではありません。
詳しく取材したいのでしたら、専門家 >>135 を紹介します。」

記者:「今後の再発防止策について伺いたいのですが、宇宙飛行士に脳改造を義務づけるのですか?。」

北米宇宙局長:「それはちょっと話が飛躍しすぎでしょう。当局にそんな計画はありません。」

記者:「しかしですね。こちらの飛行士はまだしも愛国民兵会のサイボーグが暴走したら危険でしょ?。
重火器まで内蔵しているのですよ。規制をかける必要はないのですか?。」

北米宇宙局長:「民間宇宙保安官の人事について当局は関与しておりませんので直接取材して下さい。
武器の内蔵については北米連憲法をお読み下さい。うちは役所だから、空気よりも憲法読むんですよ。」
148pinksaturn:2007/02/09(金) 21:12:39 ID:DLNJv9yG0
(愛国民兵会会長の牧場)

記者:「...ということでお話を伺いたいのですが、よろしいですか?。」

愛国民兵会会長:「実にくだらん話だがちょっとなら構わぬぞ。
そもそもだな、我が愛国民兵会は軍出身のへたれ飛行士とは出来が違うのだよ。
横恋慕で暴力だなどとそんな軟弱者は一人もおらんよ。」

記者:「はあ。ところでサイボーグの安全装置について伺いたいのですが。」

愛国民兵会会長:「そういう技術的なことはスージーとリンダに直接聞きなさい。
おーい、スージー、リンダ。記者さんがお前達の安全性について聞きたいそうだぞ。」

スージー:「ふーん、何が知りたいの?。」

記者:「ズバリ伺いますが、貴女方には暴走を防ぐ安全装置が装備されていますか?。」

スージー:「運動の途中で気絶したときなんかは緩やかに減速して停まるはずね。」

記者:「激高してしまったときの安全機構はないのですか?。
宇宙で安全に行動するには、感情を抑える脳改造が必要だとの意見もありますが。」

スージー:「それは実現が難しいわね。激しい感情を脳の出力信号でどう定義するのかな。
脳の出す信号を運動に対応づけるのも、体を動かしながら測定を繰り返してやっとできたのよ。
例えば怒りの感情だけ検出するにしても脳のどこを観測すべきかが未知なのよ。
実際に怒らせてみて信号がどこに現れるか測定してみないとわからないって訳ね。
この体になってから滅多なことでは危険も苦痛も感じないから怒らせるのは難しいわよ。
仮に場所がわかったとしても脳深部なら新たな電極の設置が必要だし、取り出しも問題ね。
私らはこういう http://pinksaturn.fc2web.com/noutekisyutu-hokubei.htm 風に、脳の上をびっしり感覚器官と身体制御用の電極が覆っているのよ。
これ以上取り出しを増設するのはは無理だと思うな。」
149pinksaturn:2007/02/09(金) 21:13:53 ID:DLNJv9yG0
記者:「北米宇宙局の飛行士がおむつで爆走した事件についてはどう思われますか?。」

スージー:「この体には性器や尿道が無いせいか性的興奮って感じないのよ。
オッパイバズーカだって撃って快感って訳じゃなくて、手順通り粛々と撃つものだし。
だから理解不能ね。そういう話はリンダの方がまだ分かりそうかしら。リンダ、どお?」

リンダ:「私は生まれつき金属製の物体だけに性的興奮を覚える性質なのよ。
だから今は常時自慰してるような状態で欲求不満の余地って全くないわ。
安全を重視するなら宇宙飛行士はメカフェチだけを採用してサイボーグ化すれば理想的ね。
でも今のところ生命維持装置の制約からサイボーグになれる娘が少なすぎるわ。
結局、技術力と宇宙飛行士を支える社会システムの進歩がないと解決できないわね。」

記者:「例の帝國のサイボーグ宙軍についてはどう思われますか?。」

リンダ:「あいつらって、随分贅沢な暮らしで、それでも満足できずに休暇中は売春してるわね。
やっぱり、メカフェチでもない娘を大勢強制的にサイボーグ化するのは無理があるのよ。
でも、それで国家が成り立ってしまうような社会システムを築いたというのは立派なものだわ。
まあ、実際のところどうなのかは本人達に取材って...無理か。あはは。」
150pinksaturn:2007/02/09(金) 21:15:45 ID:DLNJv9yG0
(ハルの店・カロンの天然氷 http://pinksaturn.fc2web.com/bar.htm#haru-sinsou

いつものオサーン:「うーい。ハルちゃんのおしっこはいつも美味しいねえ。」

ハル:「ありがとうございます。体内酒造システムのコンディションには細心の注意を払っています。」

いつものオサーン:「ところでさあ、北米連でおむつ宇宙飛行士が爆走したでしょ。
ハルちゃん達も宇宙遊泳の時はおむつ憑けるの?。」

ハル:「帝國宙軍はそんなださいことしませんよ。私らは裸で真空中に出られるんです。
だから、船外作業の時もレオタードか水着しか着けないのですぐに脱げるんですよ。
それに、宇宙に出るときは胴体機器を組み替えるから基本的に排泄は不要です。
ごくまれに耐真空オイルが劣化して廃棄する場合は、脱いで尿道から放出しちゃいますね。」

いつものオサーン:「わあ、いっぺん放出するところが見たいなあ。」

ハル:「別に面白くはないですよ。廃油だから飲めないし。」

いつものオサーン:「飲めないのか。ザンネン。でも見たいな。」

ハル:「お客さんは宇宙服着けなきゃ行けないから、おむつ着用必須ですよ。」

(おそまつでした。本編難航スマソ。)
151名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 19:44:13 ID:LHRcJIdL0
「三沢」
「……はい」
「茂木」
「ハイッ!」
「八木橋」
「はい」
「よーし、全員いるな。冬休みはどうだったかな。みんなの元気な顔を見られて、先生嬉しいぞ」

片桐先生は、教室中を見渡しながら、いつものごとくのんびりした調子で、新学期の最初のホームルームを
始めた。先生の雪焼けした真っ黒な顔を見ていると、きっと休みの間は私達のことなんて忘れ果てて、思う存分
羽を伸ばしてきたんだろうなあ、なんて思っちゃう。私も、一度くらいはスキーに行きたかったなあ。高1の時に
家族で行ったスキー旅行は本当に楽しかった。今はそんな贅沢、とてもじゃないけどできないなあ。

「今日から三学期だな。風邪が流行っているようだが、身体に気をつけてしっかり勉強してくれよ」
ここ数年、この時期には毎年のようにインフルエンザが大流行してる。去年は学級閉鎖で全滅した学年も
あったくらい。まあ、私の機械の身体は何をしたって病気になんかならないんだ。風邪も腹痛も歯痛も生理痛も、
みーんな私の頭の上を通り過ぎちゃう。生きているって実感が薄くなっていくばっかりだ。病気知らずで
羨ましいってよく言われるけど、私はむしろ、風邪をひけるみんなが羨ましいくらいだよ。

「それから、一つ、嬉しい知らせがあるぞ。如月、入って来い」
先生の声と同時に教室のドアが開いて、女の子が入ってきた。

ウチの高校の制服はセーラー服だけど、その女の子はブレザー型のとても洗練されたデザインの服を着ていた。

転校生、だよね。

「今日から、三学期が終わるまで一緒に勉強することになった如月だ」
そう言いながら先生は、黒板にあまり綺麗じゃない字で『如月 遥』と大きく書いた。
152名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 19:48:48 ID:LHRcJIdL0
「如月、自己紹介をしてくれ」
「はい」
その女の子は教壇に立つと、教室の中を一渡り見回してから口を開いた。

「皆さん、初めまして。私、如月遙と申します。父の仕事の関係で、3ヶ月間だけ、みなさんと一緒に過ごすことに
なりました。東京は初めてで、分からないことだらけです。短い間ですが、よろしくお願いします」
そう言って、深々とお辞儀をした。

物腰といい、言葉遣いといい、どうみてもイイトコのお嬢さんって感じだね。あの制服、確か清滝女学院のモノだよ。
全国でも指折りのお嬢様学校だ。私はお嬢様なんてガラじゃないし、あの制服を着たってゼンゼン似合うわけがない。
でも、女の子なら、一度は着てみたいなあって思う服なんだ。如月さんはその制服を、ごくごく自然に着こなしている。
やっぱり、凡人の私なんかとは違うよね。

なんでそんなコが、こんな学校に来たんだろうね。東京にだってお嬢様学校はいくらでもあるのにね。家庭の事情とか
なんとかがあるんだろうか。ま、そんなことを詮索したってしょうがないけどさ。

「席は……八木橋の後ろが空いてるな」
「はい」

私の席は、窓際の後ろから二番目だ。窓際は、夏は暑いし、冬は寒い。教壇から距離が離れているっていう利点は
あるけど、あんまり人気のある席じゃない。でも、機械の身体の私は、暑いとか寒いとかはカンケーない。私の目は、
もともと義眼の調整機能を使ってわざと悪くしているだけだから、眼鏡をかけていれば黒板の字だってばっちり見える。
たまには窓の外を眺めて疲れた心を癒すことだってできるんだ。私にとっては十分快適な席なんだよ。
隣の席にいるのがあるなじゃなかったら、ね。

あるなのヤツ、席替えの時にわざわざ私の隣を希望した。私のそばにいて、四六時中、私をねちねちと
苛めようっていう魂胆だ。実際、授業中にも休み時間にも、義体の不自由さを聞こえよがしに喋ってる。それも、
私に直接向けてこないところが一層腹立たしい。もしも如月さんと仲良くなれたら、あるなももう少しおとなしく
なるかもね。ま、たいして期待できないけどさ。
153名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 19:53:16 ID:LHRcJIdL0
如月さんは、女の私でさえも見とれるような綺麗な歩き方で、軽く会釈しながら私の脇を通りすぎると、同じく
優雅な物腰で席に着いた。首を曲げてその様子を見ていた私と、如月さんの目があった。

にっこり笑う如月さん。如月さんの性格がそのまま表に出ているような、穏やかで見る人の心を温かにする笑顔。
つられて私も笑顔を返す。

こんなに素敵な笑顔の持ち主なら、私が義体だっていうことを知ったって、変わらない笑顔を向けてくれるかも
しれないよ。ほんのちょぴりだけ、期待が私の心の中に芽生えてきた。

「みんな仲良くしてやってくれよな。じゃあ、これでホームルームを終わるぞ」
ホームルームを終えて、片桐先生は教室を出て行こうとする。授業が始まるまでのつかの間の喧騒が教室を
満たそうとしていた。

「ねえねえ、如月さん」
早速、あるながちょっかいを出してくる。
「はい? なんでしょう?」
「如月さん、知らないでしょ? 前の席に座ってるヤギー、八木橋さんってサイボーグなんだよ」

「あるなっ!」
あるなのヤツ、まさか、ここで私の身体のことを言うなんて。

私の身体は作り物。私は義体化一級の障害者。外見では分からないけど、この身体は元の身体そっくりに
作られたニセモノなんだ。それはクラス中の誰もが知っている事実だよ。先生達も、みんな知っているし、
他のクラスの中にも知っている子はいるだろう。ある意味では私って、結構有名人だよね。

だからって、こんな時に言わなくたっていいじゃないか。あるなのヤツは、真っ先に自分の口から爆弾を落として
如月さんの反応を見たいんだろうけど。せかっくの期待が台無しになっちゃった。苛立つ私は、あるなに一言
言ってやろうと口を挟みかけたんだ。でも……。
154名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 19:59:00 ID:LHRcJIdL0
「サイボーグ?」

如月さんの大きな声が教室中に響き渡った。その声の調子には、みんなが一斉にこっちを振り返ったくらいの
刺々しさが含まれていた。爆弾を落としたあるな自身、如月さんの反応は予想外だったらしく、目をまん丸にして
私と如月さんを見つめてる。

「あなた、義体なの?」
如月さんは、私を睨みつけながら、低い声を私に向けてきた。さっきの穏やかな物腰や笑顔からは想像できない
厳しい声。

「あ、あの」
「答えなさいっ!」
鞭が空気を切るパシッっていう音が聞こえるような気がするくらいの激さで、如月さんが私に言葉を叩きつける。

「は、はいっ!」
「等級は?」
「え、えと」
たたみこむような如月さんの言葉に、おろおろする私。えと、えと、何級だっけ。
「何級なの!」
「い、一級です」
「……完全義体なのね?」

完全義体? 全身義体のことだろうか? 如月さんの気迫に押されて、言葉も出ず、壊れた人形みたいに首を
縦に振ることしかできなかった。

「先生」
ゆっくりと立ち上がった如月さんは、教室から出て行きかけて、ドアのところで成り行きを見守っていた片桐先生に
向かって、静かに、でもはっきりと声をかけた。
155名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 20:04:19 ID:LHRcJIdL0
「如月?」
「こんなこと聞いていません」
「如月、一体どうしたんだ?」
「こんな物と同じクラスだなんて不愉快です。クラス替えを要請します」
言葉とともに私を指差す如月さん。

……モノ? 如月さんにとって、私はニンゲンじゃなくて、ただのモノなの?

静まりかえった教室の中、私に向けられた如月さんの瞳は氷のような冷たさをたたえていた。

***

午前中、私の後ろの席はずーっと空いたままだった。

午後になって、先生と如月さんが再び教室に入ってきた。クラス替え、なし。席替え、なし。

今は落ち着いて成り行きを興味深々の態でにやつきながら見守っているあるなと、私を空気のごとく綺麗
さっぱり無視する如月さん。対照的な二人の囲まれて、私は何がなにやら分からず、途方に暮れるだけ。

こうして、私の二度目の高2の三学期が始まったんだ。
156名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 18:37:57 ID:gOihWrBV0
>>155
ヤギーの高校時代が語られている話は少ないので、暗黒の高校時代がどんなものか気になっています。
明るいヤギーも可愛いですが、機械であることを非難され悲嘆にくれるヤギーもとっても萌えなので、
これからどんなふうにヤギーが虐げられるのか興味深深です。
遙タンは機械化率がヤギーほど高くはないギガテックス義体の使用者で、自分より機械化率の高いヤギーを
苛めることで自分の心の安定をはかっているのでしょうか?だとしたら悲しいですね。
157pinksaturn:2007/02/12(月) 21:17:37 ID:zcf2KGj70
キサラギハルカ...聞き覚えのある名前ですね。
気のせいでしょうか。
火星辺りでお会いしたような気がするんですが。
158manplus:2007/02/12(月) 21:43:18 ID:Namef1as0
キサラギハルカさんも、ヤギーの二次創作に登場でしょうか・・・。
忘れられ書けた名前が出てきて、当人も喜んでおります。
1593の444:2007/02/14(水) 00:23:55 ID:Iz8P2gxg0
  ♪ピロピロリーピロピロピロリー
  さっきジャスミンとメールのやり取りをしたっきり机の上に放り出したままの私の携帯電話が、私の気持
ちとウラハラな、風が吹きぬける春の草原を思わせる、さわやかなメロディーを奏でたおかげで、私の思考
は強制的に中断させられた。
  とっさに携帯を取り上げて、ディスプレイを見る。
(あ)
  どきん。
  ディスプレイに表示された「藤原修治」っていう文字に反応して、なくなったはずの私の心臓が大きく脈う
ったような気がした。ふーっと深呼吸してはやる気持ちを落ち着けて、ゆっくりと通話ボタンを押す。
「はい、もしもし」
「もしもし、藤原です」
  聞き覚えのある、私の携帯のメロディーに勝るとも劣らない爽やかな声。
「はっ、はい。あ、えと、今日の話ですよね」
  思わず姿勢を正す私。だけど、まじめな顔を作ろうと思っても、自然と口元がほころびてしまう。ハタから
見たら私は頭にわんさか花が咲いたおばかさん。
「そのことなんですけど・・・」
  彼は、急に声を潜めた。
「すみません。同僚が急病になっちゃって急遽シフトを代わることになって今日は駅に泊りになっちゃったん
ですよ。勤務中会うのはさすがにマズイですし、終電後に会うのは夜遅くなっちゃいますから、お金を返して
もらうのは、また次の機会ってことでいいですか?」
「え・・・あっ、あー、はい。私は、いつでもかまいませんので、あの、また連絡してください」
「はい。そうさせてください。それじゃ、また」
「はい。じゃあ、また」
  至極事務的な調子で連絡事項だけ伝えて、あっさり電話は切れた。
  未練がましく、しばらくの間携帯を耳に当ていた私は、落胆のため息を一つ吐くと、机の上に携帯を放り
投げる。
1603の444:2007/02/14(水) 00:24:58 ID:Iz8P2gxg0
  まっ、そうだよね。ただ借りたお金を返すだけのいつでもいい用事なんかより仕事を優先させるのは当た
り前。デートじゃあるまいし、こんなふうに着飾って、今日という日を待ち望んでいた私のほうが間抜けなだけ
なんだ。だいたい彼にはもう素敵な彼女がいるかもしれないし。
  そう思って、自分を慰めようとする。でも、やっぱり悔しいことには変わりない。
  もしも、もしもだよ。彼が私のこと、ほんのちょっぴりでも気にかけてくれてたなら、いくら宮の橋みたいな
小さな駅だって駅員さんの数は一人や二人じゃないよ。代わりなんて彼じゃなくても、いくらでもいたはずだ。
断ろうと思えば断れたはずだ。なのにそうしなかったのは・・・
(結局私に魅力がないってことなんだよね)
  机の上に頬杖ついて、もう一度深―いため息。
  せっかくぱぁっと遊ぶつもりで高ぶりまくった私のこのキモチ、一体どうしてくれるのさ。

(もう、こうなったらさ)
  私は、机の引き出しを開けて、小さなプラスチックのケースを取り出した。そして、中から小指の先くらい
の大きさのカプセルをつまみ上げる。
(私は子供じゃない。姿カタチはどうあれ、もう立派なオトナなんだ。その証拠に、ホラ)
  カプセルを自分自身に見せ付けるように、目の前でひらひらさせたあと、口の中の放り込む。
(こんなふうに、もう、お酒だって飲めるんだ)
  もちろんこれが本当のお酒のはずがない。16歳で義体化手術を受けた私は、お酒の味なんて知らない
し、そもそも義体は栄養カプセル以外を摂取できるような構造になってない。
  私が飲み込んだのは、アルコール分の入った特別製の栄養カプセル。詳しい仕組みはよく知らないけ
ど、これを飲めばアルコール分が脳にまわって酔っ払ったのと同じ気分になるっていう“もっと、もっと本当の
身体に近づきたい”ってスローガンを掲げるイソジマ電工が開発したすぐれものだ。もっとも、そうは言っても
まず商売ありきで、フツーのカプセルよりずっと高いんだけどね。
  私が飲めるお酒なんて所詮こんなもの。それでもないよりよっぽどましだ。何か嫌なこと、忘れたいことが
あった時、私はたまーにこれを飲むことにしてる。飲みすぎると生身の身体と同じで、次の日二日酔いで頭
が痛くなるから、ほどほどにしてるけどね。
1613の444:2007/02/14(水) 00:26:09 ID:Iz8P2gxg0

  どうも私はお酒にはあまり強くないみたいで、ふだんはカプセル一つでいい気分になって、いつの間にか
寝ちゃうんだけど、でも今日は違った。いつもと違って何故だかゼンゼン酔っ払わない。いい気持ちになるど
ころか、誰にも相手にされず、夜に一人でこんなことしるなんて寂しい、惨めだ、って気持ちが募っていくば
かり。
  仕方がないからカラオケにでも行こうかとジャスミンや佐倉井に電話したんだけどさ、いつもならホイホイ
誘いにのってくる二人なのにこんなときに限って「ごめん、いまちょっとはずせないの。また今度にしようね」と
か「ヤギー君は相変わらず暇だねえ。私は今それどころじゃない」なんて、つれない返事をよこしてくれる。
全く友達がいのない連中だ。
  こうなったらもう、妖怪さびしんぼうに取り付かれた私の心を埋める手段は一つしかない。それは、つま
り、お酒もカラオケもだめなら、身体で直接寂しさをまぎらわせるしかないってコト。あんまり気はすすまない
けど、サトシにでも電話するかなあ・・・。
  
  サトシがどこに住んでいるか、私は知らない。サトシも私がどこに住んでいるか知らない。
  彼とは、いつも気が向いたとき星ヶ浦のバーで待ち合わせをして、面白い話をしてもらってさんざん笑わ
せてもらったあと、近くのブティックホテルで一夜を過ごす。ただそれだけの関係。世間でいうセフレってや
つ?ううん、そんなのよりもっと乾いた関係かもしれない。セフレだって、お互いの住んでる家くらいは知って
るはず。でも、私は彼の家どころか苗字すら知らない。サトシっていう名前だってどうせ偽名だろう。本人は
自分の職業を弁護士だなんて言ってるけど怪しいもんだ。私の他にも何人かの女の子と付き合いがあるの
も、なんとなく分かってる。その中での私の位置づけが、三また、四またの三番目、四番目だってことも知っ
てる。
1623の444:2007/02/14(水) 00:54:52 ID:Iz8P2gxg0
  でも、私はそれでいいと思ってる。私だって、別にサトシに愛情を感じてるわけじゃない。信頼してないの
はお互い様だ。顔立ちがちょっとチュリーに似たイケメンで、話も面白くって、えっちが上手で、そして、私の
身体が機械だって知っていても、ちゃーんと私を女として扱ってくれる。本心はどうか知らないけど、とりあえ
ず今のところは、私のこと、上手く騙してくれている。なら、それで充分だ。どうせ、愛なんて、今の私にとって
は無意味だもの。
  私がこんな付き合いをしてるなんて、もしおじいちゃんが知ったらひっくり返るだろうな。でもね。もう、いい
んだ。おじいちゃんが死んで、私は完全に一人ぼっち。もしおじいちゃんが生きてたら、心配かけないよう
に、せいぜい真面目に生きてるふりをしなくちゃいけなかったかもね。でも、今はそんなこと気にする必要な
んかなくなった。私が何をしようと、私の勝手だ。
  快楽を求めていろんな男をとっかえひっかえするのはまずい?ふふん。それのどこがいけないのさ。普
通の女の子の愛のあるセックスだったら、その先には妊娠とか出産とか育児とか、そういう当たり前の幸せ
が待ってるのかもしれない。いつか来るその時のために、自分の身体は大切にしなきゃいけない。そういう
ふうに考えるのは分かるよ。でも、私がえっちしたからって、それが何だっていうのさ。こんな機械の身体で、
いくらえっちしたからってどうせ何を生み出せるわけでもない。私にとって、性器なんて、効率よく快楽を追求
するための道具でしかないんだ。その道具を、本来の使用目的に沿って有効活用しているだけ。それの何
が悪いのさ。
  「幸せの新しいカタチ」なんていうのは映画の中だけのファンタジー。リアルな世界では、こんな機械女と
真剣に付き合うような物好きなんていやしない。そんなこと、義体になって六年もたてば嫌でも気付かされる
よ。だからね、私はもう割り切ることにしたんだ。愛なんて期待するだけ無駄。そもそも私には愛なんて必要
ないってね。
1633の444:2007/02/14(水) 00:56:36 ID:Iz8P2gxg0
  私はホントはあの時の事故で家族と一緒に死んでしまうはずだった。でも、科学の力で、新しい身体を与
えられて、今、こうしてまがりなりにもヒトとして生きていられる。それだけでも充分幸せだ。それ以上何かを
望んだら、ばちが当たるってもんだよ。別に今日着飾ったり化粧したのは、何を期待してるわけでもない。単
に綺麗な服きて、化粧もしっかりしたほうが、ストレス解消に利用できる男が網に引っかかる確立がより高く
なるから。これはカンタンな確率論の問題なのです。ただそれだけなのです。
  
「もしもし、サトシ?うん、私、りなだよー。今、ひまかなあ」
  精一杯自分をつくろって、携帯電話越しにおどけた声を出す私。
  そう、サトシの前では私は里奈。西口里奈で通してる。身体を求め合うだけの関係なら、名前なんて人を
識別するための記号でしかない。だから、別に本名でなくともかまわない。偽りの名前に、偽りの性格。偽り
の恋。偽りの身体を持つ私にはとってもお似合いだ。はは。
「これから星ヶ浦で遊ばない?うん、10時にいつものバーで。うんうん。じゃ、そういうことで。バイバイ」
  まるでインスタントラーメンを作るみたいにカンタンに終わる擬似デートの約束。そう、私はとってもカルー
イ女。例の駅員さんなんて、あんなまじめそうなカワイイ系、私には似合わない。もう忘れよう。忘れよう。
  自慢のブランド物のバックを引っさげて、我がボロ屋からいざ出陣。
  八木橋裕子21歳。星ヶ浦の夜空舞う、こよい、綺麗な蝶になれ!
1643の444:2007/02/14(水) 00:58:11 ID:Iz8P2gxg0
今日はここまでです。
うーむ。ラブストーリーというのは難しいですなあ。
165adjust:2007/02/15(木) 19:33:39 ID:OciCdUIq0
>>147-150 pinksaturn 様
風刺が効いているというか効きすぎているというか、強烈です
しかも、他の国は否定的なのに、帝國はおむつより先を行くところが、
とんでもないです。

>>151-155
ヤギーワールド正統派ギガテックス娘でしょうか。それとも関係者に
ギガテックス義体の使用者がいるのか。異常な拒否反応の裏には
どんなドラマが隠されているのでしょうか。勝手に妄想が膨らんでしまいますが、
我慢して、続き、期待しています。

>>159-164 3の444 様
藤原君への期待と葛藤、そして今の絶望感から抜け出せるかもしれない期待、
きれいな蝶になればなるほど、悲しいヤギーの姿。心理描写の力強さを感じます
藤原君、何とかしてくれ、といいたくなる話ですね。




166adjust:2007/02/15(木) 19:41:20 ID:OciCdUIq0
>>132からの続きを投下させていただきます
書いているときは、ちょっとあっちの世界に行っているので、あまり気づきませんが
冷静になって読み返してみると、....まじりっけなしの自己満足の塊!!
バカが暴走するとこんな話になってしまうということで、申し訳ありません
ご迷惑だと思いますが、ご不満の点がありましたらご指摘いただけるとありがたいです。

167adjust:2007/02/15(木) 19:43:30 ID:OciCdUIq0
 「?」
 視界の隅で赤い光点が点滅している。暗闇の中、手足の重さを感じない感覚遮断を思わせる静けさ。また夢の世界に
戻ろうとして、ほんのわずかの違和感に引っかかる。何だっけ、と記憶を探ろうとするが、また意識は闇に引き込まれ
そうになる。ああそうだ、爆発事故だ、もやのかかった記憶は少しずつ思い出されていくが、なんとなく棒読みのよう
な意識に実感が付いていかない。
 「爆発事故で吹き飛ばされたんだ...」
 声に出していってみる。自分と関係ない世界のような出来事に感じる。義体は許容量をはるかに越える衝撃に、感覚
のほとんどを切り離した。今感じるのは、無重力も加わってぬるま湯につかったような刺激のない感覚。
 「戻らなきゃいけないね」
 このまま、意識が消えてしまってもいいような気がしたが、義務的にどうやって戻ろうか考える。戻れないなら仕方
がない。そのときは、胸のカバーを開けて体液のチューブを引き抜けばよい。それで苦痛もなく意識を消せる。
 自室で一人になったとき、何度も心の中で反復したもっとも苦痛のない終わり方。義体になる原因となった事故、生
きたまま、意識のあるままに腰から下を引きちぎられた壮絶な経験からすればたいしたことはない。
 「う」
 重い義体を意識しながら首を回してみる。いつもより重く感じるが、義体はその動きを受けて全身の稼動レベルを上
げていく。動作のフィードバックゲインを自動調節。何度かの動きでいつもの軽さに戻った。
 軽く足を振って体の自転を止める。姿勢があまり動かないように注意しながらゆっくりと見回してみる。
 視界内にはKC-4Bとはっきりわかる物は見えない。10キロも離れれば背景の星とは区別が付かない。これ、と決めた
ものをじっと観察し続けて始めてわかる程度である。木原の義体に搭載されている義眼はズーム機能があるが、このた
くさんの星の海でどれにあわせればよいのだろうか。
 目でKC-4Bを探すのをあきらめ天測をやってみる。目立つ星を数点視界の中でプロットし、現在位置と角度、そして
義体内の時計から現在位置を計算する。義体のサポートコンピュータは若干の時間の後、現在位置の結果を出力した。
 「そんなに離れてはいない。高度も変わってないようね」
168adjust:2007/02/15(木) 19:48:55 ID:OciCdUIq0
 出力された数値は、衛星捕獲直前までにらんでいた軌道データとほとんど変わらない。ということは、衛星ともほと
んど変わらないということである。もっとも先ほどの爆発で、相手のほうがあさっての方向に行ってしまう可能性も無
いわけではない。
 しばらく待ってからもう一度同じ作業を繰り返す。先ほどのデータから自分がどの方向に移動しているのかを計算す
る。細かい計算をする必要があるが、計算自体はサポートコンピュータを使える。思ったより相対速度は小さいはずだ。
計算で出た速度と方向、そして、手元にあるガス銃の残量を考える。腰のパックにあるガスの残量は満タンでもたいし
た容量ではない。
 「やってみるしかないわね」
 慎重にガス銃を移動すべき方向の逆方向に構える。容量が少ないから、出来るだけ効率的に使わないとすぐ空になる。
木原の目が黄緑色に光った。目の中では、先ほど測量した方向とガス銃を向けている手の方向が表示される。進行方向
に背を向けて腹の真ん中から銃を構える。重心を一致させ回転を防ぐためである。
 じっと目の中の座標枠を合わせる。手首の方向と目標位置を慎重に合わせていく。
 「よし、いくわよ」
 ぎゅっとトリガーを握り締めると、ガス銃は目に見えないガスを噴射、10秒で自動停止。方向が間違っていないこと
を確かめ、再度噴射、また10秒で停止。通常の船外活動では長時間噴射するようなことはありえない。ガス銃の安全装
置である。何度かトリガーを引き、ガスの残量が1/3ほどになったところでいったん噴射をやめる。これで、一応近づ
くだけの速度は得たはずである。あとは運良く視界内に入ったら、その方向に向かうだけのガスを残しておかなくては
ならない。ガスが空になってしまえば、たとえあと10mでも永遠に近づくことは出来ない。
 「ああ、星がいっぱい」
 今は地球の影に入っている。何もすることがなくなった木原は、またぼんやりと星の海に視線をさまよわせる。夜の
地球の右上が少し明るくなってきている。もうじき太陽が顔を出すのだろう。今は太陽の責めに身を隠す方法がない。
あるのは反射材を塗布した薄いスーツだけ。何箇所か小さな裂け目が見える。体を回転させれば何とかなるがあまり歓
迎すべきものではない。
169adjust:2007/02/15(木) 19:53:27 ID:OciCdUIq0
 太陽が顔を出し始めた。強烈な光が圧力を伴うように木原の全身に降り注ぐ。その光が一瞬だけ途切れて再び光の渦
が木原を襲う。
 「?」
 今の影はなんだろう。その理由はそう多くは考えられなかった。一瞬、船が太陽との間を横切ったのだった。木原の
目が太陽に向かった。3重の遮光シャッターが目の中で展開される。
 「船だ」
 傷ついた船は太陽を背にゆっくりと軌道上を回っていた。太陽の光で黒点にしか見えないKC-4B。木原はKC-4Bと自
分との速度差を考慮して慎重にガス銃を噴射する。ゆっくりと近づいてくる傷ついた船。残りわずかのガスを一瞬だけ
噴射すると木原の正面にまっすぐに近づいてくる。後部ハッチをとめていたもう骨だけの構造材に手を伸ばし、しっか
りとキャッチする。
 「おかえりなさい」
 無線機が始めて意味のある声を伝えた。もうKC-4Bが帰還に使えないことは明白だった。しかし木原は微笑して答えた。
 「ただいま」


170adjust:2007/02/15(木) 19:54:36 ID:OciCdUIq0
 黒田は爆発の衝撃で変形した機体にはさまれ動けなくなっていた。居住区との区画は爆発で破られ操縦室もろともに
焼け焦げていた。木原は黒田を助け出したが左手左足は使用不能になっていた。
 「よかったといえるかどうか...でも最後のときに仲間がいるのは心強いね」
 「ええ、あと何時間持つのかわからないけど」
 改めて、酸素や栄養の残量を調べてみる。
 木原の酸素、電力は30%程度残っているが、グルコースはわずか10%、黒田は電力の残りが少ない。
 「少し長生きするつもりがあるなら、私のパック外していいよ」
 「かんがえとくわ」
 もちろん、人の酸素グルコースパッケージを取り上げてまで生きようとは思わない。それにそうしたとしてもせいぜ
い、1日余計に生き延びられるかどうかというところである。
 「地上と連絡が取れればいいんだけど」
 「電力も完全にストップしているからね、生き残ったバッテリーがあるか調べてみようか」
 もちろん燃料電池は完全にストップしている。後はいくつかの化学電池が生き残っているかどうかである。操縦席の
後ろ、居住区の下に当たる部分に、航法制御装置などのコンピュータや補助電源装置のバッテリーが置いてある。残念
ながらバッテリーが残っていたとしても義体の充電には使えない。同じ直流電源ではあるが電圧が違う。電圧を変換す
る機器はすでに使えなくなっていた。
 「これは、使えるかな」
 テスターのひとつもあれば電圧を計れるが、そんなものはない。バッテリーの配線の一部を切り落として銅線をさっ
とあててみる。ぱちっと火花が散って電圧が残っていることを確かめた。
 「つかえそう」
 「それじゃ、こっちにつなぎましょう」
 比較的損傷の少なそうな通信機からケーブルを出してバッテリーに繋ぐ。これは中利得アンテナの通信機だ。このタ
イプなら国際宇宙ステーションで使用するバンドに対応可能である。
 「アンテナ動かすね。」
 黒田が片手片足の状態で、器用に外を伝ってアンテナまでたどり着く。木原は通信機の電源を入れた。
 電源ランプが点灯しいくつかの表示機が動作を伝える。一部の表示器は動作しないが最低限の通信には何とかなる。
171adjust:2007/02/15(木) 19:55:29 ID:OciCdUIq0
 「アンテナの前に行かないように注意して」
 「了解」
 ヘルメットに内蔵された無線機から独特のフェージングノイズが聞こえてくる。記憶に残っているチャンネルを設定
して、ゲインを調整する。
 「入った、今なら...ええっと」
 一瞬英語らしき声が入る。ちらりと地球を見て、国際宇宙ステーションがどの方向にあるか考える。
 「カシオペア見える?」
 「見えるよ、そのちょい下でしょ、向けるね」
 「お願い」
 黒田がアンテナを動かすと、ノイズの海から音声らしきものの通信がだんだん大きくなっていく。通信機が信号の存
在に気づくと、その信号に自動チューニングを行う。
 「...NACA地上局、こちらは、国際宇宙ステーション...」
 突然、音声がクリアになる。
 「取れた!」
 木原は目をつぶって深呼吸するようなしぐさをした。落ち着いたところでそっと送信ボタンを押す。
 「メーデー、メーデー、こちらは日本国NAXA所属、JC8621 、メーデー、メーデー、こちらは日本国NAXA所属JC8621、
応答願います」
 ざわついていたチャンネルが静かになる。
 「こちら、国際宇宙ステーション、機体番号JC8621メーデー確認、間違いないか」
 「イエス、JC8621、緊急事態を宣言します」
 「そちらの状況はどうか、優先順位はそちらの判断でかまいません」
 「ありがとう、JC8621、衛星修理中の爆発事故発生、機体は大破、帰還不能と思われます。乗員2名共に生存中、た
だし、電力、生存交換品の消滅のため、長くは持ちません。この通信も、バッテリー残存電力による仮復旧のため、そ
う長くは持たないと思われます。どうぞ」
 「了解した。関係部署に送る。この通信を維持できるか?」
 「バッテリーの残量不明のため、稼働時間不明です。出来るだけ通信を維持します」
172adjust:2007/02/15(木) 19:59:59 ID:OciCdUIq0
 「了解、このチャンネルは、JC8621の専用チャンネルとして固定する。このチャンネルを使用しているほかの局は別
チャンネルを使用するよう要請する。」

 
 「生存確認です」
 NAXA管制室に入った連絡は管制室のスタッフを沸かせた。この連絡を受け、内之浦宇宙センターは国際宇宙ステーシ
ョンとの専用回線を設置、ギガテックスコスモサービス及びギガテックス本社により生存限界の分析が行われる。
 しかしその結果は芳しくなかった。あらゆる手段を考えて生存時間を延長する検討が今も継続中である。
 「NAXA管理部より連絡、現在準備中のKC-4B,MR-200、そして、試験飛行計画中のCC-24Aの3機が救助に使用可能と
の連絡です」
 「荷主の気象庁と話がつきました。今発射台にあるH-2C型打ち上げロケット使用可能です。」
 打ち上げ準備中の機動往還機や打ち上げロケットを使用しても良いという申し出はありがたいが、問題はそれだけで
はない。彼女たちの生存はおそらく24時間程度、生命維持装置がどんなに節約しても48時間が限度であろう。大型
の機動往還機で極機動に行くためには時間がかかる。軽量の衛星で直接極機動に打ち上げれば2時間で極機動に達する
が、最終誘導が出来なければ結局は彼女たちには届かない。最終誘導が出来る衛星なんて今この瞬間には世界中のどこ
にも無い。そんなに難しいわけではないが、今から開発しても突貫で一週間はかかるだろう。必要なのは今すぐ使える
ものだ。
 H-2Cで燃料を輸送し軌道上で機動往還機に燃料補給、余裕のある燃料を使い切って出来るだけ早い機動で極軌道に達
する。これが飛行計画班が出してきたもっとも早く到達するプランであった。しかし、それでも燃料タンクとランデブ
ーして、燃料補給だけで6時間余計にかかる。計算では50時間、悩んでいる時間はない。すでにそのプランで打ち上
げ準備は進んでいる。もうひとつ問題があった。爆発時の破片がどのくらい放出されたかということである。宇宙空間
では空気抵抗が無いため、爆発時の破片はそのままの速度で軌道上を回っている。救助機がそれによるダメージを受け
る可能性があった。いや、光学観測の結果では、破片の量は非常に多い、破片と衝突する可能性のほうが高かった。
173adjust:2007/02/15(木) 20:05:06 ID:OciCdUIq0
 相沢は管制室の隅に小さくなって座っていた。少し放心したような顔つき、事故直後の人形のような顔つきではなく
なっているが、まだ戻りきってはいない。その彼女が管制室の正面パネルを見ては、下を向きぶつぶつと何かつぶやい
ている。やがて、何か決心したような顔つきで顔を上げると、運用総指揮の後藤の元に向かった。
 「あ、あの」
 「どうした、なにか」
 後藤の周りでは各担当者が激しいやり取りを行っていた。出来るだけ早く打ち上げたいが、やらなければならないこ
とはうんざりするほど多い。
 「あ、あの、....」
 「いいたいことをまとめてからきてくれ、また後で」
 後藤は、別の人間とのやり取りを再開しようとする。
 相沢美奈子は、ぐっと息を呑むとはっきりと言った。
 「私を救助機に乗せてくださいっ」
 周りの人間が相沢を見つめる。その視線に耐えながら相沢はさらに叫ぶ」
 「あ、あの、救助機はデブリで危険です。機体が故障すれば、生身の人は死んでしまいます。わ、私なら、真空でも
大丈夫ですし、宇宙事業者の勉強もやっています。事故にあった二人ともよく知っています。だ、だから」
 胸を張って答える相沢、でも足はがくがくと震えていた。
 「だから?」
 すっと、息をすって答える。
 「だから、わたしを乗せてくださいっ。お願いですっ。がんばりますからっ!!」
 後藤は相沢をじっと見詰めた。厳しい表情がわずかに緩んだように見えた。しかし後藤は静かに相沢に答える。
 「却下させてもらう。そうだな、野口君、相沢さんを説得してくれ」
 「わかりました」
 後藤の補助をしている野口が相沢を外に連れ出した。黙って付いてくる相沢、適当な芝生に腰を下ろすと、相沢に近
くに来るように手招きをする。
 ぺたんと力が抜けたように座り込む相沢。視線を合わせようともしない相沢に野口が静かに語りかける。
 「話すのは久しぶりだね」
174adjust:2007/02/15(木) 20:08:55 ID:OciCdUIq0
 「......」
 返事をしない相沢に、仕方ないとばかりに野口が話し続ける。
 「実を言えば、君のように救助機に乗り組む申し出をした人は、君以外に何人もいてね、たしか、今までに10人越
えてた。」
 「......」
 「それも、完全義体者だけじゃない。普通のパイロットも申し出てきたよ。あまり言ってはいけないと思うけど、NACA
の有名なパイロットも連絡してきたんだ」
 「それで、誰がのりこむんですか」
 始めて口を開く相沢、その声は少しかすれている。
 「誰も乗せない」
 少し強い口調で断言する。
 「え、」
 「誰も乗せない」
 「救助にはロボットを使う。ギガテックスの新型AIを搭載したあやめ型ロボットを乗せる予定だよ。すでに整備を終
えて、直接内之浦まで空輸中だ」
 「なんで...」
 意味を理解するのにちょっと時間がかかり、理解した後は野口に食って掛かる。
 「なんでロボットなんですか、それなら私のほうがいい。ロボットで救助に失敗したらおしまいじゃないですか!」
 相沢に押し倒されてガツンと後頭部を地面にぶつける。顔をしかめながら野口がもう一度続ける。
 「いや、誰も乗せるわけには行かない。」
 「君も知っているように、デブリで現場は危険な状態だ。デブリが致命的なところにあたったら、犠牲者がさらに増
えることになる。そのときは木原、黒田の二人も致命的だが、最悪の場合でもこれ以上犠牲者を増やすわけにはいかな
い。」
 「そんなことって...私は事故にあっても平気です。死んでもかまいません。」
 「申し出てきたパイロットはみんなそういったよ。死ぬのは怖くない。手を差し伸べられないのがつらいとね」
 ゆっくりと体を起こして、頭を振る。
175adjust:2007/02/15(木) 20:13:05 ID:OciCdUIq0
 「とにかく、われわれは全力で救助の方法を考えている。」
 野口が相沢の目を見た。
 「相沢さん、救助機が到着したときに彼女たちが生きていたら、通信担当が必要だ。たすけてくれるね」
 「......」
 相沢からの返事は無かった。しばらく待って野口は静かに立ち上がる。
 「それじゃ、僕はいくから」
 じっと座り込んだまま動かない相沢、その顔に表情はない。ただ座り込んだまま静かに肩を震わせていた。
 

 「ロボット到着しました。各種チェック終了、搭載承認お願いします」
 「搭載を承認します。JC8601への搭載を急いでください」
 「了解」
 ロボットAI研究員の須永が手早くロボットのチェックを行う。ロボット自身の助けを借りながら必要なチェックを済
ませると須永はあやめに話しかけた。
 「二人の命を助ける大切な仕事です。がんばってください」
 「わかりました。」
 柔らかな笑顔を見せ宇宙往還機に乗り込むあやめ型ロボット。その姿は大人の女性と変わらない。出入り口から姿を
消す瞬間、笑顔で小さく手を振る。
 須永も、そして他のスタッフも思わず笑顔で手を振った。出入り口が閉じた後全員が再び顔を引き締める。
 JC8601が、エンジンに点火、滑走路までの移動を開始した。

 
 「横浜国大から連絡、極軌道への最適化プランです」
 後藤の下に新しいプランが送られてきた。KC-4Bはまもなく離陸を開始する。大幅な変更の余地はもうない。
 「飛行計画班は了承したのか?」
 「飛行計画班の確認済みです。かなり画期的な案です。」
 後藤が電話を取る。飛行計画班を呼び出す。
 「飛行計画、後藤だ、このプランを簡単に説明してくれないか」
176adjust:2007/02/15(木) 20:14:01 ID:OciCdUIq0
 「わかりました。えーっと、一言で言えば、大気圏内でエアターンする計画です。鋭い楕円軌道に乗って、大気圏を
掠める軌道を取ります。そして、大気圏を掠める瞬間に大気と主翼を使って90度ターンし、一気に極軌道に入ります。
想定必要時間は12時間、12時間で極軌道に乗せることが出来ます。」
 「何か問題点はあるか?」
 「問題点は、大気圏突入時の機動にあります、大気の影響による高温とその間の急激な機動は最大10G程度と予想さ
れます。KC-4Bのスペック上は耐えられると予想していますが、旋回Gと高温が同時に来るため、実際に耐えられるか
どうかは未知数です」
 「わかった、河原崎重工の担当者に問い合わせろ、出来ればシミュレーションもやってくれ。問題が無ければプラン
を変更する」
 「了解」
 これだ、と後藤は思った。決して裕福で準備万端とはいえない日本の宇宙開発。七転八倒した挙句にほんのわずかの
隙間にぴたりとはまるようなアイデアを、死に物狂いでひねり出してくる。横浜国大という言葉でふと思いついた顔が
あった。おそらくあいつだ。一緒に仕事をしたことはないが新進気鋭の技術者である。うまくいけばいいのだが、その
顔を思い浮かべながら後藤はそんなことを考えた。

 
 電圧不足により中利得アンテナの通信機が沈黙する。しばらくバッテリーを休ませて電圧が復活するのを待たなけれ
ばならない。受信だけならもう少し可能だが送信にはかなりの電力が必要である。
 「あと、一回が限度かな」
 黒田がバッテリーをつつきながらつぶやいた。
 「もう送信は終わりかな。それに、私もグルコースが底をついてるから、もう義体の予備タンクでおしまいね」
 「こっちも同じ、電力限界までもうすぐ、電力尽きたら待機モードで寝ると思うけど、そのときはよろしく」
 「はいはい、こっちが餓死するのとどっちが早いかわからないけど」
 腕組みをして考えるふりをする黒田、最後のときが目の前に来て、それでも心が沈まないのは黒田の行動のせいだろ
うか。木原が沈んでしまいそうになりながらも、なぜか黒田の行動でそれを忘れてしまう。
 「木原ちゃん、すこしマジな話いいかしら」
 「なに?」
177adjust:2007/02/15(木) 20:15:31 ID:OciCdUIq0
 黒田が、片手で木原の周りを回る。
 「実際のところ、木原ちゃん、義体になってどうだった?」
 「どうっていわれても、選択肢無かったわよ。災害で義体に変えられただけ。それも誰も決定してくれる人がいない
から、有無を言わさずにね。」
 「そうだね。はっきり言って、義体にならなけりゃそこで死んでいたわけでしょ。それが今まで余分に生きている。
誰かがくれたこの時間、楽しかった?、つらかった?、地上はがんばっているみたいだけど、私がおしまいになるまで
に聞いておきたいな」
 黒田がじっと木原の目を見た。言葉は軽いが、表情は真剣である。
 「そうね、正直言って、つらいほうが多かったのかな。でも、そういうことあまり考えたことない。亡くなった両親
の分まで生きていかなければならないと思っていたから。」
 「なるほど、そういう考え方もあるか。どちらかといえば義務感で生きてきたということ?」
 「そうなるのかしら、精一杯がんばってきたから本当にあまり考えてきてなかった。相沢さんに付き合って少し振り
向くことが出来たかもしれない」
 「美奈子ちゃん?」
 「ええ、密林の藪漕ぎやらされたわよ、面白いこともいっぱいあった...ぐっ...初めて自然が美しいなんて感じた。
生きていることがすごいことだと思った。緑の葉っぱが心にしみた...」
 何かが胸につかえて言葉が出なくなる。でもなにかにせかされるように言葉が無理やりに押し出されてくる。
 「生きているのよ、密林の葉っぱも虫も、木も草も、海だって何だって生きているの。でも私はその中にいないの。
みんな精一杯生きて死んでいく。でも、でも、私は、自然に生きて自然に死ねない。もっと生き物のように死にたい!」
 義体のサポートコンピュータが異常な興奮を検知して、脳内のいくつかの中枢の興奮を下げるように働きかける。あ
る部分の脳はそのとおりに興奮を抑えるが、意識的にか無意識にか、電極のない部分の興奮はさらに続く。
 脳の思考部位、中枢は学習効果の進み具合で変化することが知られている。ある程度慣れると、サポートコンピュー
タが何かをやっているということが別の部位で認識されることがある。
 「サポートコンピュータ、邪魔よ。」
178adjust:2007/02/15(木) 20:20:54 ID:OciCdUIq0
 心がコントロールされているということに猛烈な焦燥感を感じる。木原はサポートコンピュータを引きずり出して、
壊してやりたい衝動を覚えた。
 「あ、やめな...」
 木原が暴走を始めようとしていることを見抜いた黒田は木原を抑えようとするが、電力不足の上に片手片足では押さ
えきれない。
 「こんなものお!、とめてやるう!」
 胸のカバーに手をやろうとする木原、手をかける寸前に異常に気づいたサポートコンピュータは、脳内に鎮静剤を噴
射する。すでに何度かの鎮静剤を使用していたサポートコンピュータは、彼女の暴走を抑えるため最後の鎮静剤を全て
放出した。電力の節約、グルコースの管理、酸素、体液制御など、プログラムされている全ての方法で少しでも彼女の
生存時間を延ばすため処理を続けているサポートコンピュータは、興奮を抑える手段を1つ失った。
数秒で薬剤が効き木原の興奮が収まる。サポートコンピュータは、警告をひとつ増やし木原にメッセージを送った。
「ごめんね」
 「......」
 興奮によるパニックは、生存性を低下させる。どんなことがあっても、終わりまで生存の努力をする。生きることを
放棄したほうが楽な場面はあるかもしれない。それでも生きることを優先する思想、これがギガテックス義体の思想で
あった。それが良いことなのか悪いことなのかはわからない。悪いことだとすれば、その罪はギガテックス義体の設計
者が負うべきなのであろうか。
 「落ち着いた?」
 「うん」
 木原はうつむいて答える。無線用の電池も残り少ないのか黒田の声もあまり大きく聞こえない。
 「よかった、そしてごめん、もう電力限界、待機モードに入りそう。少し寝かせてもらうね。」
 「がんばって、また再会できることを祈ってます」
 「ありがと、あなたのこと話してくれてうれしかった。パニックなんて始めてみたわ。でもそれであなたのことが少
しわかったような気がする。あ、そうそう、サポートコンピュータも少しはいたわってやってね、あいつも何とかあん
たを生かしてやろうとがんばっているんだから」
 「うん」
179adjust:2007/02/15(木) 20:22:40 ID:OciCdUIq0
 「それじゃ、おやすみ...」
 黒田の手から力が抜けた。ふわふわと漂う黒田の体をシートまで運びベルトで抑える。ベルトが止まっていることを
確かめると、木原は再度通信機に電源を入れた。
 「こちら、JC8621、通信を再開します。こちら、JC8621、通信を再開します。受信局、応答願います」
 「こちら、国際宇宙ステーション、受信した、どうぞ」
 「JC8621より、各局へ、この通信は、最後の通信になると思われます。現状を伝えます。通信機、電力不足により次
の通信の見込みなし、JC8621黒田、義体電力切れにより待機モードに移行、木原もグルコース濃度減少中、まもなく昏
睡状態になる見込み、デブリ状況は、先ほどよりは減少しているようですが、依然、危険な状態です。しばらくの間、
本軌道に接近しないように要請します。以後、JC8621は送信不能となります。そして...そして、聞いてください、今
まで支えてくれた全ての皆さんへ、本当に、本当に、ありがとうございました」
 電圧を示すLEDが不安定に明るさを変えている。電圧不安定で再度停止しようとしていた通信機は、送信ボタンを離
したところ何とか弱々しく復活する。
 「JC8621、がんばってくれ、すでに救助機は離床した。出来るだけ早く到着する軌道で飛翔中だ。がんばれ!」
 了解、と送信スイッチを入れようとしたが、電力不足からスイッチを入れるのをやめた。
 血糖不足で頭痛が始まっている。送信スイッチから自然に手が離れた。意識が混濁してくる。自分がどういう状況に
あるかわからなくなりつつある中、浮遊しないようにかろうじてシートのベルトに体を縛り付ける。そのあとは、どう
なったのかわからない。もがき暴れたような気もするが、その記憶を保持する力はもう無かった。

 
 救助機JC8601は11時間余りで極軌道に到達していた。ロングレンジレーダーで見分けることの出来る破片と交差し
ない軌道を精密に決定し、細心の注意を払って傷ついたJC8621に接近していく。新たな破片を発見するたびに精密測定
を行い、今まで発見された破片も含めてスーパーコンピュータで燃料消費の最も少ない軌道を再計算していく。その作
業は囲碁や将棋を計算機で解く作業にも似ていた。
180adjust:2007/02/15(木) 20:24:09 ID:OciCdUIq0
 後藤を含め管制室のスタッフは国際宇宙ステーション経由で送られた最後の送信を全て聞いた。後藤は回避を繰り返
す救助機にあせりを感じていた。予定通りにしか進まないのは当然のことだ。しかし、最後の通信を聞いて何も感じな
い人間はいない。
 「後藤だ、ここにいるスタッフ全員に要請したい。なんとしてでも彼女たちを帰してやりたい。よりいっそうの努力
をお願いする」

 
 ロングレンジレーダーに反応するデブリはかなり大きいものであり、必ず回避しなければならない。しかし、ロング
レンジレーダーに反応しない微小片でも、相対速度によっては致命的な破壊を引き起こす。近接レーダーと、高解像度
カメラ、そしてあやめ型ロボットの視覚センサが接近する微小片の回避を担当する。
 JC8601は上面を進行方向に向けて飛行を行っていた。大気圏突入時に高温にさらされる下面の耐熱タイル部が損傷し
てしまえば、大気圏の突入は出来ない。上面ならばかなりの損傷であっても、大気圏突入時の高温部と逆方向のため影
響が少ない。
 そして、白く塗られた上面部はすでにいくつかのデブリの攻撃を受けていた。後部ハッチの表面タイルが砕けた部分
が数箇所、それが知られたとき直ちに熱流体シミュレーションが行われ、内部構造材が最大200度まで上昇することが
確認されている。これはかなりのダメージではあったが着陸は可能だと判断された。
 「あやめ、直上方向のデブリに特に注意してください、ほとんど動かないデブリはまっすぐ接近してきます。航法制
御装置にすぐに伝えてください。」
 「わかりました」
 須永が管制室からあやめに指令を伝える。同じくギガテックス本社の技術スタッフが、救出手順の詳しい検討を行っ
ていた。今彼女たちはどの状態にあるのか。どのようにすれば適切にすばやく彼女たちを復旧することが出来るのか。
どこをチェックすれば生存が確認できるか。そして、それをあやめにやらせるときの手順はどのようにすればいいか。
詳細で莫大なデータが書き出されていく。
181adjust:2007/02/15(木) 20:30:04 ID:OciCdUIq0
 河原崎重工業のKC-4B担当者は、KC-4Bの状態と安全運用限界を詳細にチェックする。デブリによる損傷は想定済み、
どの程度の損傷まで運用可能か、回避機動限界はどのくらいか、大気圏突入位置、姿勢、経路はどのようにすればいい
か。刻々と伝えられるKC-4Bの運用情報を見守っていく。
 「海上自衛隊、ヘリ護衛艦2隻、潜水救助部隊を乗せて、着水予定地点に向けて出航しました」
 「NTL.RS所属、スーパーホエールも出航。N市消防のレスキュー部隊を搭載」
 「航空自衛隊の観測機も離陸準備中」
 「連絡はいりました、海上保安庁巡視船、予定海域まで2時間」
 「ハワイ観測所、すばる望遠鏡、観測を継続」
 「野辺山、精密測定終了」
 大気圏突入後の着陸地点はいくつかの候補が算出された。船舶の速度では候補海域まで到達する時間がかかりすぎる
ため、あらかじめ予想した地点に展開しておかなければ間に合わない。

 
 JC8601のロングレンジレーダーが傷ついた妹を検知した。デブリではないかと内之浦で確認しJC8621であることを
確かめる。いくつかのデブリを回避しながら近づいていく。それでも検知しきれないデブリがJC8601を傷つける。
 「カッ」
 軽い音がしてJC8601の前面シールドにひびが入った。JC8601の前面ガラスは3重張り合わせガラスのため、すぐに
穴が開くことはない。しかし、放射状にひびが入り、中層の有機ガラスがえぐられる。
 「前面シールド損傷、かなり大きい損傷です」
 あやめが目視で損傷の具合を報告する。内之浦では直ちに検証に入った。
 「まもなく、JC8621に到達します。」
 もう目視でも見える位置まで近づいている。
 「よし、あやめ、接近作業終了後、エアロックを開放、二人を出来るだけ丁寧に、そして早くエアロックに収納せよ」
 「わかりました」
 「JC8601接近作業、機体距離センサで10メートルまで近づき、停止」
 河原崎重工のKC-4B担当者は、航法制御装置と遠隔操作でゆっくりとJC8621との距離を詰めていく。機体と航法制御
装置を知り尽くした技術者は、パイロットがいなくても人が動かしているように精密にKC-4Bを操作する。
182adjust:2007/02/15(木) 20:33:30 ID:OciCdUIq0
 「静止しました。救出を開始します」
 「了解した。丁寧にやってくれ」
 「わかりました」
 あやめはエアロックから出るとJC8621にまっすぐに向かった。ターゲットはすぐに見つかった。二人はコクピットだ
った場所のシートにベルトで留められている。
 「ベルトを外します」
 木原のベルトが外され、あやめは木原をエアロックに運び込む。すぐにとって返して黒田も回収。滑らかな作業であ
った。運び込んでJC8601の居住区のベッドに二人を留めると地上と連絡を行う。
 「救出を完了しました。次の指示をお願いします。」
 「良くやった。つづいて二人の充電、酸素グルコースパッケージの交換をやってくれ。」
 「わかりました」
 二人の充電ケーブルを電源に繋ぎ、新品の酸素グルコースパッケージに交換する。所定の手順によってあやめは義体
の再起動を行った。

 
 「......」
 木原が意識を取り戻したとき、まず視界に入ったのは黒田の姿であった。思わず辺りを探り自分の私物が無いことに
気づいて、いままで自分が乗っていたJC8621ではないことを知る。目の前の黒田は片手片足を引きちぎられた状態で、
居住区のベッドに留められている。
 「助かった?」
 ものすごい勢いでベルトを外し操縦席へ向かう。そこではあやめが操縦席でなにやら操作をしている。
 「気がつきましたか?」
 「あなた...誰?」
 笑顔を浮かべてあやめが挨拶する。
 「ギガテックス、あやめ型ロボットです。」
 脳波から相手の聞きたい内容を察して、細かい型番抜きでロボットということを伝える。ロボットに拒否反応を示す
人間もいるが伝えなければ何も出来ない。
183adjust:2007/02/15(木) 20:34:49 ID:OciCdUIq0
 「と、とにかく、内之浦と連絡を」
 とたんに、がつーん、という頭痛に襲われ木原がのた打ち回る。脳が壊死する寸前までの低血糖が続いたため脳のダ
メージは深い。
 「大丈夫ですか」
 あやめが木原をそっと抱きしめる。人工皮膚ではあるが、温かい、そしてやわらかい胸にそっと押し付けられ、激し
い頭痛がゆっくりと和らいでいく。
 「大丈夫です。皆さんは、今から内之浦へ帰ります。」
 あやめは、木原を抱いたまま内之浦への通信を再開する。
 「こちらJC8601、木原さんが蘇生しました。帰還作業を続けます」
 いくつかのやり取りを行い帰還作業を続けるうちに、木原の頭痛が何とか動ける程度まで収まっていく。それでも、
責めさいなまれる頭痛に耐えながら、木原がようやく顔を上げた。
 「あやめ...さん」
 「はい」
 微笑を浮かべ、やわらかく答えるあやめに、木原からの拒絶の言葉は出てこなかった。
 「ありがとう。楽になったわ。今から帰還なのね。よろしくお願いします」
 木原はあやめに手を差し出した。あやめはそれに対する対処法をたっぷり1秒かけて推論する。
 「はい、よろしくお願いします」
 あやめがしっかりと木原の手を握り締めた。
 
 黒田は、充電が完了しても目を覚まさなかった。何か重大な損傷があるらしいが今の状態では原因まではわからない。
ただし脳波はあることと生命維持機能は正常に動作していることから、生存している可能性は高いと考えられた。
 問題は前面のシールドの損傷だった。位置的には機体下面の陰に入ることから、高温にさらされることにはなるがこ
れ以上損傷が広がる可能性は低いと考えられた。しかも高度が高いうちは空気の密度も小さい。ということは熱量もそ
れほど大きくはない。
 内之浦では木原、黒田は居住区に入り、あやめが大気圏突入シーケンスを行うことを指示してきた。万が一シールド
が敗れた場合操縦席に被害が出る。もしシールドが敗れる場合はすでに大気圏に突入しているため、操縦席を放棄し、
KC-4Bの航法制御装置で制御が可能である。
184adjust:2007/02/15(木) 20:38:21 ID:OciCdUIq0
 しかし、木原はあくまで自分が操縦することを希望した。大気圏突入の角度と速度は非常にデリケートなため、もし
突入失敗で終わることになれば後悔だけが残る。少なくとも自分が最後まで手を下したかった。
 何度かのやり取りの後、シールドが破れた場合には直ちに居住区へ脱出することを、何度も念を押され操縦すること
が認められた。
 あらかじめ設定された時間とタイミングで帰還シーケンスが開始される。JC8601は進行方向の逆方向にエンジンを向
け、軌道速度を減少させた。直ちに進行方向に機種を向け大気圏突入を待つ。大気圏突入速度、角度を正確に合わせな
ければ、大気圏突入の熱に耐えられない。
 

 「居住区に避難しなくてよろしいのですか?」
 あやめが訊いた。木原は操縦桿に手を添えたまま答える。
 「結果が良くても悪くても、最後くらいは自分の手で決めたいの。安心して、自殺するつもりはもうないから」
 はねるような振動がJC8601を襲う。上層大気をかすめるときの特有の振動だ。角度をもっと浅くすれば、そのまま大
気圏上層部をスキップすることも出来る。
 「まもなく大気圏に入ります。角度、速度とも問題ありません」
 「了解」
 ぶるぶると機体が振動するまもなく木原の体に重力が戻ってくる。大気によってブレーキがかかり始めたことを示
す。少し上に角度が変化した。木原は操縦桿を操作して適切な角度に修正する。
 「大気圏突入しました。」
 窓の外が高温のプラズマでオレンジ色に発光する。温度は高いが空気の密度は地上の1/1000、熱容量があるもの
なら温度は大して上がらない。
 しかし、前面シールドの損傷は有機ガラスに達していた。さらにエアターンによる一度目の大気圏突入を経験したあ
との、再度の大気圏突入である。2度目の高温にさらされた有機ガラスは、さらに一層目のガラスが損傷した状態では
耐えられなかった。高温のプラズマに炙られた有機ガラスは一瞬白く変色した後、四散した。

 
 「前面シールド破損、直ちに居住区へ避難してください。」
 「まだ大丈夫、続行する」
185adjust:2007/02/15(木) 20:43:16 ID:OciCdUIq0
 木原は、なおも操縦桿を握り締める。プラズマとなった空気は薄いながら、操縦室の気温をぐんぐん上げていく。
 「危険です。退避を勧めます」
 破れた前面シールドから発生する乱流が機体の姿勢を狂わせる。温度は150度を超えた。高度が下がり空気の密度が
上がると共に、操縦室の気温は想像を絶する速度で上昇する。
 「まだ、離せない。安定飛行に移ってから、このお!」
  木原は暴れる機体を何とかして押さえようとする。乱流が渦を巻き機体が激しく振動している。
 「すみません」
 不意にあやめが立ち上がった。振動とゆれの中、あやめがしっかりと歩く。
 「ロボットは人間に危害を加えてはならない。 また、 その危険を看過することによって人間に危害を及ぼしてはな
らない。私達にとって一番大事なこと。決して破ってはならないこと。そうですよね」
 あやめが木原の後頭部にすっと手を伸ばすと、ひとつのプラグを差し込んだ。
 「あ、なにをするの!」
 抵抗する間もなく木原の体の力が抜けていく、
 あやめは木原を抱きかかえ、居住区へ運んだ。流れるような手順で木原をベッドにおいてベルトで留める。
 居住区のハッチをしっかりと閉め、あやめが操縦桿を握った。
 「大丈夫です。皆さんは、今から内之浦へ帰ります」
 すさまじい高温の中、あやめは機体の姿勢を完全に押さえ込んだ。温度は300度を超えた。黒髪がちりちりと煙を吹
き始める。
 「もう少しです」
 人工皮膚が変色し、割れた。むき出しの軽金属の関節の潤滑剤が蒸発していく。
 完全に安定した飛行を行うKC-4B、その主翼を役立たせることが出来る高度に達し、初めて十分な減速が出来るよう
になる。機内の気温は400度を超えたところから減少に転じる。
 「通常飛行が可能になりました。航法制御装置に制御を移します。」
 KC-4Bの航法制御装置は各種センサーで操縦席がやけただれていることを認識する。操縦席の入力が使えないことを
理解して完全自動操縦に移行する。
 「ユー ハブ コントロール」
186adjust:2007/02/15(木) 20:46:02 ID:OciCdUIq0
 あやめが、かすれた声で、操縦者の変更を宣言する。空気を大きくつかんだKC-4Bはその声に合わせたかのように、
機体を軽く傾けた。それはあやめに対するKC-4Bの答えだったのだろうか。そのときには、もう、あやめは動かなくな
っていた。

 
 成層圏に達したKC-4Bは、完璧な飛行で内之浦を目指す。航空自衛隊のF-22Aラプター、コードネーム「エスコート」
はKC-4Bを視認、後方に着いた。
 「エスコートより管制、JC8601は、内之浦に向かって飛行中。目視による確認では、コクピット付近に若干の損傷、
飛行には問題なさそうだ。現在は自動操縦中の模様」
 KC-4Bは二人を乗せて飛び続ける。デブリをかいくぐり、電力を供給し、酸素グルコースパッケージを運んだ。そし
て、二人を抱え、大気圏に突入し、今、静かに成層圏を内之浦に向かって飛行中である。
 「JC8601、順調に飛行中、航法制御装置作動中、目標を内之浦に設定し、まっすぐに向かっています。」
 太平洋上を九州に向かって飛行するKC-4B、傷ついた妹から、傷ついた2人のサイボーグを託され、飛び続ける。そ
の飛行は、二人の負担を気にするように静かな、そして力強い飛行であった。
 後藤は、内之浦に近づくKC-4Bをレーダーで確認すると、マイクを握った。
 「関係各位に通達、JC8601は内之浦に着陸の予定、太平洋に待機中の民間船、護衛艦、巡視船、そして協力していた
だいた多くの人々に感謝する。撤収を願う。ありがとう。本救助機は内之浦に着陸する」
 KC-4Bが、内之浦上空に到達した。滑走路の周りを1回、2回、旋回して速度を減らしていく。やがて、ファイナルア
プローチに入ったKC-4Bは大きく空気をつかみながら高度を下げる。まだ空に未練があるのか一瞬降下速度が落ちた。
しかしその思いを振り切るように、静かに、そして滑らかに、KC-4Bは彼女たちを守り切って滑走路に降り立った。



187adjust:2007/02/15(木) 20:49:02 ID:OciCdUIq0
 砂浜の一角が沈み、ぱたぱたと動く黒い生き物が顔を出す。同じところから何匹も何匹も。そこで生まれた命はただ
ひたすらに海を目指していく。ときどき、ほんのわずかのくぼみや盛り上がりに引っかかってもがいているものもいる。
 黒田はそんな一匹をつまみ上げて平坦な場所に移してやる。新たな場所に置かれた海亀の子供は、少し頭を上げて海
の方向を探した。
 「そうだよ、がんばれ」
 また、必死に海に向かって動いていく海亀の子供に、そろそろとついていく。
 「あーっ、危ない」
 「足元注意して!」
 相沢が黒田に大声で警告した。木原も鋭く黒田を制止する。
 黒田の進む先にはまた別の海亀が動いている。
 「ああ、おっとっと、ごめんごめん」
 まったく、と怒った振りをする相沢、それにはちょっとの理不尽さも含まれる。
 「なんで、みんな運がいいのかなあ、わたしは何度来ても、タイミングが合わないのに、木原さんで2回目、黒田さ
んなんか初めてで、こんなビッグイベントにぶつかるなんて」
 「世の中そんなもんよ、わたしだけだったらそもそもこんなとこ来ないから、いわば美奈子ちゃんの運をいただいた
ようなものよね」
 「そうね、わたしだって、こんな世界、正直言って知らなかった。こんな体験させてもらって感謝してる。」
 「そうですかあ、それにしては、かなりおもちゃにされているような気がするんですが」
 「そんなこという子は、こうしちゃうぞ」
 ぎゅっと相沢を抱きしめて、胸の谷間に押し付ける。手足をばたばたと動かして逃れようとするが、びくともしない。
やがてあきらめたのか、相沢が静かになる。
 「おーい、生きてる?」
 地上では、一応呼吸をしているが、少しぐらい呼吸を止めたからといって死ぬような構造はしていない。不審に思っ
て相沢の顔を覗き込む。相沢はぼーっとした顔をして自分から木原の胸に顔をこすり付けた。
 「おねえたま」
 「え!」
188adjust:2007/02/15(木) 20:52:53 ID:OciCdUIq0
 やばいことになったかとあせる木原に、相沢はにっと笑って応える。
「大丈夫です。そっちの方向には行きませんから、でもかんばってできるだけ早く、一緒に仕事したいです」
 穏やかな表情で、砂浜をみる相沢、海亀はもう大部分が海にたどり着いたのか、だいぶ少なくなっている。
「そうね、待ってる。あなたならすぐにやれるわ。」
「はい」
最後の海亀が海に出て行くところを見届ける。海亀は力いっぱい手を広げ、波に翻弄されながらも力強く旅立っていく。
その姿は限りなく頼りない。それでいて命の力を示している姿でもある。
やがて海亀は波間に隠れて見えなくなっていく。
「がんばれ」
相沢はちいさくつぶやいた。
189adjust:2007/02/15(木) 20:57:05 ID:OciCdUIq0
この話はこれでおしまいです。ありがとうございました。
自己満足の塊のような話なので、つまらないと思いますが、よろしくお願いします。

190名無しさん@ピンキー:2007/02/15(木) 21:16:47 ID:sPzUR+LQ0
全米が感動した
191名無しさん@ピンキー:2007/02/15(木) 21:19:01 ID:XGf7sA700
つまらなくないです。とても面白いです。
読みやすい文章で、情景が理解しやすいです。
事故と救出シーンは、はらはらどきどきでした。
意図せず機械の体になってしまった主人公の悲しみは、目頭が熱くなりました。
あやめは頼もしすぎですね。

192manplus:2007/02/16(金) 01:09:47 ID:aCQjusuW0
adjust様
一気に読んでしまいました。大変おもしろかったです。
でも、内容は重いものがありました。
身体を機械化され、対宇宙仕様にされたサイボーグ体でも、
限界があるということを大気圏突入のシーンで書かれていることと思います。
AIロボットが淡々と任務をこなす傍らで、サイボーグの人間くささが、
強調されていたように感じました。
ロボットと人間、その狭間にいるサイボーグがどの様に住み分けていくのかを
考えさせられました。
そして、AIロボット技術が進化すれば、サイボーグ不要論が出てきそうな
社会背景へと進むような暗示に重さを感じてしまいました。
193pinksaturn:2007/02/16(金) 23:35:03 ID:49SJZt7I0
>>177-178 電極のない領域でお怒り...最後の鎮静剤を放出...必死に怒りを静めるサポコン萌え。
194adjust:2007/02/17(土) 23:41:06 ID:H+fhX1P90
>190 様
>191 様
感想ありがとうございます。
駄文を書き殴っては、冷静になって冷や汗、なんている状況を
何度も経験している人間ですから、面白い、読みやすい、といって頂けると
非常に励みになります。

>あやめは頼もしすぎですね
ここに出入りしていられる方々は、ほとんど知っているお話だと思いますが
3の444 様の「全自動化住宅」からの引用となっています。非常に印象深い話で、
このお話を読んだときから、いつか何かで使ってやろうと思っていました。
クララベルを壊してしまうわけには行かないので、同型機ということにしています。
195adjust:2007/02/18(日) 00:25:49 ID:tlH5vwr/0
>>192 manplus 様
感想ありがとうございます。
極限環境は本来、人が出て行くべき世界ではないのかもしれません。
人の命を大切にすることを前提とすれば、命の危険があるところには
行かせない。または行かなくてもよいようにするのが正しいのかもしれません
その答えのひとつが、小惑星イトカワに向かうハヤブサでしょうか
しかし、人(サイボーグ)が行く必要がない。という方向には行かない気がします。
今は、期間やコスト、成功確立などの問題で人を送り込むことは事実上不可能ですが、
その問題が解決されれば、行かないはずはない、と思います。そのとき、もし全身義体が
開発されていれば、最初に行くのはサイボーグかもしれませんよ。

>>193 pinksaturn 様
> 電極のない領域でお怒り...最後の鎮静剤を放出...必死に怒りを静めるサポコン萌え。
これ見て、飲んでいた日本酒噴きました。謝罪と賠償...冗談です
書いていた本人も、ご主人様に仕えるサポートコンピュータという構図が浮かんでいました。
KC-4Bの擬人化的な表現を少し使っていますが、サポートコンピュータの場合は、コミカルな
擬人化ができそうですね。お笑い主体の話とか面白そうです。でも当方はお笑い系は苦手なので
自分ではできそうにありません。うーむ。
196名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 10:34:05 ID:UJdBBiHj0
人格付加型サポコン搭載全身義体。
義体使用者の心を和ますために、関西弁モード対応。

新製品のモニターに選ばれるヤギー。
最初はボケ設定だったはずが、ツッコミ設定(ハード)に。
ヤギーの心のつぶやきに、片っ端からツッコミを入れるサポコン。

そして・・・。
モニタ終了時、漫才師としてデビューするヤギー。




実際はリアルタイムで面白いツッコミを入れる人工知能って
凄く難しいと思います。^^;;
197名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 10:58:18 ID:UJdBBiHj0
人格付加型サポコン搭載全身義体。
義体使用者の心を和ますために、妹モード対応。

事故で、家族と、自分の身体を失った義体使用者
彼は擬似妹を演じるサポコンを疎ましく思っていたが
健気なサポコンの姿(?)に徐々に心を許していく。

やがてサポコンが自己進化。
より完璧な妹の存在を演出するためにカメラ情報に
自分の姿を表示するサポコン。

そんなある日、再び不幸な事故に巻き込まれる。
極限状態の中で、擬似人格を消去しなければ
使用者の生存が確保できない状況に。

再び独り残される義体使用者。
彼は二度、家族を亡くした。

そこに現れるサポコンのソフト担当。
サポコンの人格と容姿は、若かったころの
ソフト担当者からサンプリングしたものだった・・・。

boy meets girl...
198名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 18:11:46 ID:DKVy7PSR0
>>196の最後の2行に反応した、全世界のAI研究者
東大を含めた日本勢は言うに及ばず、MIT、カーネギーメロン等の米国勢
さらにはフランスドイツなどの研究者も、ツッコミを入れるコンピュータの開発に集まった。
ボケ、ツッコミの概念を世界に理解させるのに3年かかったが、ツッコミAIの開発に成功

五ヶ国語のツッコミをいれるサポートコンピュータ、ヤギーに理解できるネタはほとんど無かった。
ちゃんちゃん

199名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 21:05:26 ID:DKVy7PSR0
>>197
ここから始まるラブストーリー

19:30、好評のヤギー漫才のあとは、サポコンと男の子のラブストーリー、20:00から
チャンネルはそのままで 乞うご期待!

誰か書いてくれ頼む
200名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 22:17:28 ID:V1w43gUR0
>>198
一方、ロシアは鉛筆を使った。
201名無しさん@ピンキー:2007/02/19(月) 22:51:31 ID:FeNHtZAD0
>>198
一方、中国は中の人を使った。
質は(ny

202pinksaturn:2007/02/20(火) 01:21:32 ID:XvG+yPe00
>>201 それはサポコンじゃなくて2nd生体脳ではないかと突っ込んでおきましょう。
2nd生体脳搭載は、昔ガジェットで一時的に登場。
永久搭載とする場合、2個目の生体脳の精神安定はどうなる?。
203197:2007/02/20(火) 23:13:01 ID:Ao1W4/Ma0
時間があれば、マジ書きたいんだけどね。
ここの豪華な執筆陣の緻密な描写を拝見してると
プロットレベルで終わらせるのが幸せな感じ。

ゴメン。アタシは一読者で良いよ。
204名無しさん@ピンキー:2007/02/23(金) 23:46:24 ID:S54HpuY60
age
205名無しさん@ピンキー:2007/02/27(火) 15:37:54 ID:Qx5VxRcj0
age
206名無しさん@ピンキー:2007/02/28(水) 22:39:09 ID:CR5y+wUe0
なんだか過疎ってるが今見に来ている奴はどのくらいいるんだ?
207名無しさん@ピンキー:2007/03/01(木) 19:59:57 ID:6LsH/TFi0
>>206
容量オーバーかと思って新スレ探してしまったw
専ブラだと、512KB制限の表示が出ないので。
208名無しさん@ピンキー:2007/03/01(木) 20:56:53 ID:bCxkWQ5x0
>>207
JaneDoeViewでは容量表示ありますがw
>>207までの時点で233KBだな
209名無しさん@ピンキー:2007/03/04(日) 14:52:31 ID:ie0Kuauc0
亀だが保守がてら


>>178
サポートコンピュータのログ解析により、
精神安定管理不十分と判定され、
電極増設などさらなる脳改造をされる、
木原に萌え。

>>89 >>184
パイロット教本を読んでいる段階の木原に、
地球突入の操縦はちょっと・・・



でもGJです。adjust様、続編希望
210adjust:2007/03/06(火) 22:39:48 ID:57DVPvRI0
>>>89 >>184
>パイロット教本を読んでいる段階の木原に、
>地球突入の操縦はちょっと・・・

あ...しまった。普通、そんなレベルで操縦許さないでしょうね
どうしよう...(冷汗);;;

>でもGJです。adjust様、続編希望

まだ考えてません。お許しが出れば、短編でもと考えてはいるのですが...
211名無しさん@ピンキー:2007/03/08(木) 19:17:44 ID:vy2MTbbN0
保守
212名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 22:23:27 ID:n7PVLwfH0
保守
213名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 18:46:55 ID:gJbxtnMD0
干す
214名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:21:02 ID:NVlqZvZz0
A thread Maintenance
215名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 08:42:05 ID:kAie240X0
保守
216名無しさん@ピンキー:2007/03/14(水) 22:42:09 ID:kAie240X0
保守
217名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 20:17:01 ID:WAVoSKST0
保守
218名無しさん@ピンキー:2007/03/15(木) 20:59:38 ID:VqsOoJ7M0
良いので貼らせてもらいます

http://www.timozral.com/

GJ
219名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 18:05:45 ID:lX8C/0gm0
DSのルミナスアークっちゅうゲームに、兵器に改造された少女いるなあ。
腕に仕込み刀と仕込み銃で、心臓に魔法の石が移植してあって、記憶消してある

ゲーム自体は、サモンナイト系のやつをDSのスペックに合わせて
ダウンサイズしたような感じ。
2203の444:2007/03/19(月) 03:05:30 ID:IKXpevat0
「あーあ」
  飲まれるあてのない、すっかり氷が溶けて色の薄まったカクテルを見つめながら、情けないため息をつく私。もう約束
の時間から30分が過ぎてるのに、ヤツは姿を現す気配すらない。
  今、私がいるのは星ヶ浦にあるアセラっていうバー。サトシとの待ち合わせにはいつもこのバーを使ってる。もちろん
私じゃなくてサトシの趣味でね。
  タウン誌「ほしのまち」の広告にはライトブラウンのモノトーンで統一された店内はボリュームをおさえたジャズの流れ
る小粋なオトナの社交場なんて書いてあったけど、その実態は、店にいるオトコどもは、女も金も思い通りになるって勘
違いしちゃってる鼻持ちならない成金青年実業家とか、大学にはロクに行かずに遊びばかり上手になった大金持ちのド
ラ息子ばかり。オンナはオンナで、美人で生まれてトクばっかりしてきたんだろう、自分が主役になるのが当たり前って顔
してつんとすましてるような、お友達にはゼッタイしたくないようなタイプばっかり。オトナの社交場どころか、それぞれの
思惑が蠢くさしずめ欲望という名のバーってとこ。ま、この評価には私の僻み根性も間違いなく入ってるけどさ。だって、
この店にいるお客さんの中で一番のビンボー人は、間違いなく私なんだもん。
  たいして好きでもない、いるだけで息がつまりそうになる店で、たいして好きでもない人に待たされて、飲めもしないく
せに見栄だけで一杯800円もするカクテルを頼んで、カップルばかりの店内の片隅に一人ぽつんと座ってる私って・・・
(ほんっとバカみたい)
  イライラしながら黒いマドラーをつまんで、グラスの中のカクテルを無意味にぐるぐるかき回す。サトシの遅刻はいつも
のことだけど、いくらなんでも今日は待たせすぎだよう。
  仕方がないから、今どこにいるのか、あとどれくらいでココにつくのか問いただしてやろうと携帯電話をバックから取り
出して通話ボタンまで押しかけたけど、やっぱり思い直して携帯をテーブルの上に置いた。
  よーく考えたらどうして私のほうから電話しなくちゃいけないのさ。そりゃあ、誘ったのは私だけど、時間に遅れてるの
はアイツなんだ。遅れるなら遅れるで自分のほうから連絡してくるのが礼儀ってもんだ。
2213の444:2007/03/19(月) 03:06:30 ID:IKXpevat0
(はあ)
  ここについて何度目かのため息を、膨れっ面で頬杖つきながら漏らす私。
  今日こそ、ヤツに向かってなんか言ってやる。こんなとき、待ち焦がれた飼い主が戻ってきた子犬みたいな顔をした
らゼッタイ駄目なんだ。そんなことしたらヤツがますますつけあがるだけ。アンタの代わりなんかいくらでもいるってコト、こ
の際分からせてやらないと、ずーっとこのままなめられっぱなしになっちゃうもんね。
  腕時計を睨みながら、私が荒々しく鼻息を吹き出したちょうどそのとき、私に向かって近づいてくる人影が目に入っ
た。私は俯いたままだけど、顔を上げなくても誰だか分かってるんだ。サトシでしょ。
  私はあらかじめ決めていたシミュレーションどおりに自分にできる限りの冷たーい目つきをして、すました調子で顔を
上げた・・・んだけどさ・・・
「へ????」
  計算して作り出したはずの隙のない表情はすぐに崩れて、私は口をしまりなく半開きにしたまま絶句。だって私の前
に立っていたのはサトシじゃなかったんだ。私がゼンゼン知らない知らない女の子だったんだもの。

「あなたがにしぐちさんですか?」
  女の子は、書きまくってもはや原型を留めていない眉毛を吊り上げて、なぜかのっけから厳しい顔つきで、腕組みを
しながら詰問調。
「え、いや、あの・・・私は・・・」
  女の子の剣幕に気おされて、うろたえた私は思わず八木橋ですって言いそうになって、すんでのところで気がつい
た。そう、今の私は西口里奈だった。
「あなたは、西口里奈さんですか?」
  彼女は、もう一度、フルネームで私の偽名を言う。今度はこくりとうなずく私。
「やっぱりそうなんだぁ」
  女の子は棘のある口調でそう言うと、私に断りもせず向かいの席に腰を下ろすと、メンソールの煙草に火をつけた。
そして、慣れた調子で片手を挙げてウェイターを呼びつける。
(なんていやな女)
  それが私の彼女に対する第一印象だった。
  しょっぱなからガン飛ばされたのも気に食わないけど、それだけじゃない。
2223の444:2007/03/19(月) 03:07:20 ID:IKXpevat0
  オトコ受けしそうな派手な顔立ちも、ケバイ化粧も、私に見せ付けるような深い胸の谷間も、全部気に食わない。きっ
と、くっさい香水の匂いをプンプンさせてるに違いない。
「あなた、誰?なんで私の名前を知ってるの?」
  私は、不快感を隠そうともせず、眉をしかめながら言った。
「ふー」
  彼女は私の問いに答えず、たばこの煙を吐き出した。
  私の質問は無視ですか?ま、いいよ。だいたいの見当はついてる。西口里奈って偽名はサトシにしか使っていない。
おおかたサトシの彼女のうちの一人。そんなとこでしょ。
  私は負けじと睨み返しながら彼女の次の言葉を待った。
「あなたのせいで、サトシが大変なことになっちゃったよ」
  彼女はそう言うと、コトバを聞いた私の反応を楽しむように、目を細めた。
「はあ?」
「サトシは、ここに来る途中に自動車事故を起こしたよ」
「ええっ!」
  思わず叫び声を上げる私。タダゴトならぬ私たちの様子に気がついた回りの客は談笑をやめて、いっせいに私たち
のほうを振り向く。しーんとなった店内に、今のムードに場違いなジャスの音色だけが響いた。
「で、彼は、無事なの?」
  ちょっとバツが悪くなった私は、声のボリュームをうんと落として、身を乗り出して彼女の耳元でささやく。
「なわけないでしょ」
  私をバカにするようにへらっと笑う彼女。すぐに真顔になってまっすぐ私を見据えた。
「集中治療室行き、だってさ」
「集中治療室」
  鸚鵡返しに繰り返して、私はごくりと息を飲み込んだ。
「最悪全身義体化かも、だってさ」
「そんな・・・」
2233の444:2007/03/19(月) 03:46:48 ID:IKXpevat0
  交通事故。義体化。聞きたくもないコトバが頭の中をぐるぐる駆け巡る。
  サトシなんて都合のいいただのセックスフレンド。愛情なんてもの、これっぽっちも感じちゃいない。お互いがお互いを
納得づくで利用してるだけ。今までずっとそうやってお互いのココロの中には立ち入らないようにして付き合ってきたけ
ど、そんなコトバを聞くと、どうしたって自分の身の上とダブらせて考えちゃうよね。
「あなたのせいだからね。サトシが機械人形になったら、それはあなたのせいだからね」
「私のせいじゃない・・・」
「あなたがこんな時間にサトシを呼ばなければ、こんなことにはならなかった!」
  弁解しようと力なく口を開いた私の口を強引にふさぐかような彼女のコトバ。
  機械人形の何が悪いのさ。機械人形になったって生きてることには間違いないんだ。死ななくてすんで良かったじゃな
いか。身体が機械になったからって愛情をなくすあなたのほうがおかしいっ!・・・そう言い返せば良かったんだろうか?
ううん。そんなこと言えるわけないよ。だって、身体を失ってしまうことのつらさを誰よりも知ってるのは、他でもない、機械
人形の、この私なんだもの。
「とにかく、今すぐ病院まで来てもらえるかな?外でタクシーを待たせてるからさ」
  彼女は俯いて黙り込んでしまった私に向かってそう言いながら煙草を灰皿に押し付けてもみ消すと、後ろも振り向かず
に早足に出口に向かった。
2243の444:2007/03/19(月) 03:48:02 ID:IKXpevat0
お久しぶりです。
他の作者の皆さんは忙しいのでしょうか。
ここしばらくスレに投下される作品がめっきり減ってしまい寂しいですね。
225pinksaturn:2007/03/19(月) 17:04:06 ID:puuRA5aI0
>220-223 どきどきしますね。ヤギーのことだから、新たな不幸の悪寒。
>224 私は滅茶苦茶に忙しいという程ではないけど、年度末は雑用が増えるので集中力が途切れやすくなります。
元々、妄想>>筆力なのでちょっと集中力が欠けると成果が出なくなります。
現在の状況は、ここのスレ住人に勤め人が多くヒッキー・ニート系の人が少ないということを示すのでしょう。
226名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 02:52:59 ID:Z9zd7EY+0
>アセラっていうバー

(・∀・)ニヤニヤ
227pinksaturn:2007/03/24(土) 23:26:21 ID:4yKtv9m40
保守を兼ねて落書きリンク貼っておきますね。
お題:「帝國公認・矮惑星フィギュア選手権」
http://pinksaturn.fc2web.com/sekaisensyken07.htm
こんな事やってるからますます本編が進まないorz。
228名無しさん@ピンキー:2007/03/25(日) 15:53:29 ID:xTYS71IG0
229名無しさん@ピンキー:2007/03/25(日) 21:51:13 ID:tJaLU8DZ0
>>228
サンクス!!(;´Д`)ハァハァ (;´Д`)ハァハァ
ヌ、ヌきまつた(;´Д`)ハァハァ
230名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 00:58:41 ID:O42wNL740
こういう雰囲気好き
231名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 16:47:16 ID:0qlOAXfO0
>228
見れないのだが?
232名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 22:57:21 ID:tdDcT/9E0
>>231
infoseekで堂々とエロ広告貼りまくってたから、アカ飛ばされたんだろ。
間抜けというか、常識が無いというか…
233名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 00:58:30 ID:jqQHMJGt0
infoseekでサイボーグやってるとこあるだろ?広告がまずいってこと?
234名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 23:06:53 ID:fZ2rSI+H0
>>人形姫?
ニフティーやインフォシークでも強烈なエロあるよな?どういう基準なんだろ?
235名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 00:07:11 ID:Q7B4dg640
>>234
エロ画像は即NGだがエロ文章は(白ではないが)黙認というところは結構あるかと
236名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 02:51:15 ID:hjK7KUJh0
エグイ絵のもあるよな。絵はオケーなのか?
237名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 03:31:49 ID:sDRJPaY50
238名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 01:04:18 ID:TnCiRZKn0
>>237
抑圧サイボーグたん(;´Д`)ハァハァ
239名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 02:00:10 ID:6AVKynVe0
>>237
山場なし
オチなし
意味なし

どう楽しめば良いのか教えて欲しい。
240名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 03:03:57 ID:ixd8WBYa0
抑圧萌えじゃないと萌えないだろうな。仮面ライダーの縛られて無理矢理改造されるシーンに興奮を覚えた漏れは萌えれるが。
このスレは健全で前向きなのが好みなヤシが多そうだからスレ違いかもな
241名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 04:03:44 ID:c9WLJFuJ0
ここ、人◯姫できつく説教されてたよな。
242名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 02:23:02 ID:NOPb7dH50
他のサイトでも同じような流れのやりとりあって噴いた
243名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 22:22:22 ID:XTmL8pZt0
別に無理やり改造はOKなんですよー。
改造する側にとっての御都合主義と、
改造される側のお人形っぷりが・・・。

ヤバイことしてるんだろ。なにを調子に乗ってるんだよ!
人間性を剥奪されちゃうんだろー。もっと抵抗しろよー!

つか、抵抗できない幼女を攫うってどーよ?萌えないだろ。
マッドサイエンティストの風上にも置けないよなー。
科学者としての誇りはないのか! なんて思ってしまう。

オレ、登場人物に葛藤とか不安とな悩みがないとダメなんよ。
244名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 23:11:09 ID:XTmL8pZt0
お試し小説 第一章「苦悩するマッドサイエンティスト」

ついにやってしまった・・・。今、腕の中で眠る無垢な少女の顔を見下ろしながら
私は躊躇いを感じている。いや、ここに到って躊躇い感じている自分自身に
驚いていると言うべきか。ここまでことを起こしてしまった以上、今更後戻りは
できない。この子には顔を見られている。ここで引き返したら身の破滅だ。

お恥ずかしい話だが...。私は昔から10歳くらいの少女が好きだ。
「時よ止まれ!おまえは美しい」と言ったのは誰だったか...。
私の眼鏡に適った少女達も残酷な時間の流れの中で成長を...
いや、敢えて言うなら老化への道を進んでしまう。
私は彼女たちを老化から救いたかった。
もちろん、社会的に許される行為でないのは理解している。
しかし、だからこそ挑戦する意義のある行為だと思ったのだ。

そのために、私は「とある秘密結社」の研究員として働いてきた。
私は良心と引き換えに、人体改造に必要な数々のノウハウと資金を
手に入れた。良心?そんな言葉は忘れたつもりだった。ビル破壊、
ハイジャック...。悪の秘密結社に所属するからには多少のことは看過してきた。
だが、今回の計画だけは許せなかった。小学生を拉致監禁して改造し醜い怪人に
したてあげ学校を襲撃させるというのだ。しかも、その改造を私にやらせようと
言うのだ。私は組織からの離脱と徹底交戦を決意した。

私の腕の中の少女。名は朱美。私と同じ町内に住み、名門小学校に通っている
極普通の少女だ。友達思いで芯の強いこの子なら、きっと私と一緒に「組織」
と戦ってくれるだろう。科学者としての冷酷な自分が弱い自分を抑え込み、
世界のためという大義名分が私を最後の迷いから解き放った。

私は車の後部座席に優しく少女を横たえると、転がって怪我をしないように...
暴れて自らを傷つけないように、しっかりと固定した。私はハンドルを握ると
家々の窓から零れる暖かな光に背を向けるようにして、ゆっくりと車を走らせた。
(To be continue....?)
245名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 16:58:31 ID:lMWE3Y1u0
悩むのはマッドサイエンティストの方かっ!
わくわく、尻尾パタパタしながら続きキボン
24614-244:2007/03/31(土) 21:32:34 ID:dPeqeoyu0
お試し小説 「苦悩するマッドサイエンティスト」

目がさめると、まっしろな天井が見えた。なぜ?体が動かない。
だから見えるのは白い天井だけ。さいしょボンヤリしていた頭が
ハッキリとしてくると、体が動かせないことが急に気になりだした。

あたし、どうしちゃったんだろう?心臓がドキドキして胃がちぢむような
感じがする。おヘソの下がキューっと痛くなって、せなかがゾクっとなった。

あたしは、思わずギュッと目を閉じた。悪い夢ならさめてくれたら...。
そうだ、何があったかを思い出してみよう。
学校の帰り…クラブ活動で遅くなったから急いで帰ろうとして…いつもどおり公園を
通る近道をぬけて…。そのとき、人の良さそうなおじさんに道を聞かれたんだ。
本当に困ってる感じ、マンガに出てくる道に迷ってる人って感じのおじさんだった。
地図を見ながら説明してあげてると、首のうしろあたりにチクっとして…。

最後に聞こえた声は「ゴメンネ」だった。
24714-244:2007/03/31(土) 21:33:47 ID:dPeqeoyu0
お試し小説 「苦悩するマッドサイエンティスト」

コンコンとドアをたたく音がしてだれかが部屋に入ってきた。
「目が覚めたかい?」
聞いたことのある声…だれだったっけ…。ぎゅっと閉じていた目をあけると、
道を聞いたおじさんの顔が見えた。
「おじさん、誰? あたしに何をしたの? こんなことして良いと思ってるの!」
あたしは大きな声でさけぼうとして…。小さな声しか出せないことに気づいた。
「すまない…。他に頼める人が思いつかなかった…。本当は無理やり進めて
しまっても良かったんだよ。君の事を考えるとそうするべき…、いや、こんなことに
巻き込まないのが一番だったんだが…。」
おじさんはポツポツと話始めた。待って!あたしの質問に答えて!必死な顔で
できるだけ大きな口で「ダレ」と言うと、おじさんはやっと気づいたようだ。
「あぁ、私は…北崎だ。あ、本名を言っちゃダメだったか…。仕方ないな。
どうせ後戻りはできないんだから…。」
少し寂しそうな顔で、おじさんは話を続けた。

すぐにでも逃げだしたかったけど、体が動かないから仕方ない。たぶん誘拐だと
思うけど下手にあばれて犯人?を刺激しちゃダメ。
もし聞いてるフリで済ませても、後から話をきいていたか調べるかも知れない。
国語の松岡先生がよく使う手だ。まず話を聞こう。
24814-244:2007/03/31(土) 21:35:37 ID:dPeqeoyu0
お試し小説 「苦悩するマッドサイエンティスト」

全身拘束された朱美を見ながら、私は申し訳ない気持ちで一杯だった。
一見して、彼女は気丈に私の話を聞いているが、時々目だけはキョロキョロと
周囲をうかがっている。

さっきはこの子の一途な目に射抜かれて、ウッカリ本名を言ってしまった。
あぁ、なんてことだ。もう後戻りなんかできない。でも、この状況下で人の話を
聞こうとする朱美の聡明さと健気さに私は舌を巻いた。どこか迷い続ける自分の
中で、冷徹な自分が満足そうな微笑みを浮かべるのを感じた。

ともすれば、焦って早口になりそうな自分を抑えて、出来るだけ判り易く説明する。
「組織」のこと、自分のこと、目前に迫った「組織」の計画のこと。
あぁ、私は何をしているんだろう。こんな説明をしても小学生には理解できるはずが
ない。全ては自分自身への良い訳に過ぎないのに。

それでも朱美は彼女なりに理解しているのだろう。途中から私の目を見据えて話を
促すような眼差しを向ける。時々それとなく視線を彷徨わせるのは、説明不足か
聞き取れないところのようだ。もう一度説明すると、判ったというように瞬きをする。

私は朱美に「組織」に対抗するためのサイボーグが必要だと打ち明けた。
ロボット、つまりアンドロイドではダメなこと。
即座に判断して動ける人間が素材として必要であること。
それが作れるのは世界で自分しかいないこと。
悲しいかな自分が唯一できるのは少女を素体としたサイボーグだけであること。

思わず、私は朱美に向かって土下座をしていた。すまない、申し訳ない、
より多くの命を救うため、君の命を貸してくれ。科学者の我侭、
私の身勝手さにつき合わせることになってしまった。

言うべき言葉が見つからなくなって、私はもう一度朱美の顔を見た。
24914-244:2007/03/31(土) 21:59:48 ID:dPeqeoyu0
お試し小説 「苦悩するマッドサイエンティスト」

あたしは、だまって北崎さんの話を聞いている。イロイロ聞きたかったけど、
声が出せないから仕方ない。北崎さんはツッカエながらも判りやすく話を
してくれている。

なんだか、マンガみたいな話。アクのヒミツケッシャ?まっどさいえんてぃすと?
ウソでしょ?信じられないー!
え、組織にタイコーするためにはサイボーグが必要だって…。
しかも改造できるのは少女だけ…。だから私!そんな…。
突然、となりで座っていた北崎さんの顔が見えなくなる。

物音と声の感じで、床にすわりこんで頭を下げてるのがわかる。
しばらくして、もう一度北崎さんは私の顔を覗き込んだ。
困ったような顔をしてる。でも、目だけは必死な感じ。おとなりのマー君が泣きそうな
顔をするときの目...。アタシを頼ってるときの目だ。

しばらくあたしを見詰めた後、北崎さんは話を続けた。

「私が君を守る!この身に替えても君の命は守ってみせる。」
「生活は苦しいものになるだろう、だが二人で頑張ればきっと明るい未来がくる」
「私は君を死なせたりしない。万が一死ぬときは二人一緒だ。」

「リ○ン」「な○よし」で読むような熱っぽいセリフが並んでいく。
も、もしかして、プロポーズって奴?でも、なんだかオカシイよ。
25014-244:2007/03/31(土) 22:02:08 ID:dPeqeoyu0
お試し小説 「苦悩するマッドサイエンティスト」

北崎さんの説得が続いている。

「例えどんなことがあろうと、私は君を絶対直す。私の命に代えても直す。」
「どんなダメージからも修復する。たとえ肉片になっても再生さえる。」
「君を不死身のサイボーグに...。いや、限りなく不死身に近いサイボーグに
改造させてくれ。」

...北崎さん、ちょっと、それ、シャレになってないよぉ。

「もし君が戦わないというなら、それも構わない。でも、どれだけの子供達が犠牲になるか...」
「君の努力次第で、君の大切なものを守れるんだよ。」
「犠牲者の中には君の友達も含まれるだろう。何もしなければ君も死んでしまうだろう」

...今度は脅し?ソレ、ちょっとズルイと思います。

「サイボーグは年を取らない。君はずっとそのままの姿だよ。」
「君は美しく、可愛く、史上最強の小学生になるんだよ。」

...でも、それって…。良いことばかりじゃないでしょ?
素敵な彼氏とか可愛い赤ちゃんとか…。あきらめないと…。

25114-244:2007/03/31(土) 22:10:49 ID:dPeqeoyu0
お試し小説 「苦悩するマッドサイエンティスト」

「全てが終わったら、君を元通りに戻せるように研究中だ」
「ちゃんとした人間として、普通の生活にだって戻れるハズだよ」
「でも、今は研究中だから…。100%の保証は出来ない。すまない。」

...なぜだろう。あたしは北崎さんを信じてみようと思った。
あたしが頑張らないとみんな襲われちゃう。親友の喜美子や礼司君を守ってあげないと。

それに、ここまで秘密を知ったあたしを、このまま帰らしてくれるはずがない。
それに…、それに…、何よりあたしを一人前に扱ってくれてる。
いつも子ども扱いしかしてくれないお母さん、成績しかみてくれないお父さんには
ちょっとウンザリしてるんだよね…。そうだ、家族は??

あたしは大きな口で「か・ぞ・く・は?」って聞いてみる。

「改造前と変わらないようにするから大丈夫だ。身長、体重、スリーサイズから
ホッペタのプニプニ感まで完全に再現する。CTスキャンやMRIもコンピュータに
ジャミングとハッキングをかませて完全に乗っ取るからばれたりしない。」
「もし、家族と温泉旅行に行っても判らないはずだよ。」
「味や舌触りは変わらない。ただ、トイレには行けなくなる。」
25214-244:2007/03/31(土) 22:17:01 ID:dPeqeoyu0
お試し小説 「苦悩するマッドサイエンティスト」


これ以上聞いてもダメだろうと思った、たぶん、あたしには理解できない。
わかったことは、北崎さんは諦めないってことだ。この調子で、ずーっと
説得される。最初に「引き返せない」って言ってるし。

言ってることは無茶苦茶だし、ハッキリ言ってキチガイ科学者だと思う。
でもウソは言わないってない。あたしを子ども扱いしてない。
無理やりヤッちゃえば良かったのに、この人の言うことが本当なら
あたしをあやつり人形にするのも簡単だと思う。

それでも必死に説得する…。変だけど良い人。私は諦めて声をかけた。

「判りました。あたししかいないんでしょ? 最後まで面倒みてくださいね。
あと、人間に戻す研究は絶対完成させてください。」


北崎さんの顔が明るくなった。しかられてしょげ返っていたヒロ君が
給食を目の前にして復活?したときみたいな笑顔だった。

「そ、そうか。じゃ、早速…。オペさせてもらうよ。大丈夫まかせてくれ!」
北崎さんはあたしを残して部屋から駆け出して行った。
(To be continue....?)


25314-244:2007/03/31(土) 22:38:41 ID:dPeqeoyu0
お試し小説 「苦悩するマッドサイエンティスト」

オペルームに戻ると、私は愛用の眼鏡を掛けた。
眼鏡は良い。心が落ち着く。いつも悩み続ける自分、
弱い自分の揺れ動く感情を安定させられる。

いつものように冷徹に計画の再確認をしつつ、手だけはオペの準備を
続けながら…。心の奥に温かい感情が残っているのを感じた。

理性と理論だけで行動する限りにおいて100%の成功を納める私。
感情は…私の中の負け犬は、何かと私の行動を制約し続けてきた。

だが、今回は少し違うようだ。私の中の負け犬は、目標を見つけた
猟犬のようだ。信頼できる主人を得たように生き生きとしている。

朱美の力か。彼女の信頼が私の気持ちを高揚させている。
理性と感情。二つの私が、今、一つの目標に向かって100%の力を、
いや、120%の力を出し切ろうとしている。

今の私なら、オペは間違いなく成功するだろう。
今の私とサイボーグ化した朱美なら、「組織」を壊滅できるだろう。


だが...。最後はどうなる?朱美は元の身体に戻りたがっている。
子を産み育てられる身体とは、老いて死にゆく身体だ。
私は老いから少女を救いたかったのではなかったろうか?

まぁいい。今はオペに集中しよう。そして組織の壊滅に全力を尽くそう。
ここで全ての答えを出す必要はない。私の頭脳をもっても未来の全ての
事象を予測して答えを出すことは出来ないのだから。

(とりあえずFIN)
25414-244:2007/03/31(土) 22:47:04 ID:dPeqeoyu0
お試し小説 「苦悩するマッドサイエンティスト」あとがき

えと、>>196>>197でプロットだけ書き逃げした者です。

作家諸氏が忙しそうなので、ちょっと試しに書いてみました。
たいていプロットまでで辞めちゃうんですけど、折角だから
一区切りするところまで書いてみたいと思ったりして。

サイボーグスレですが、サイボーグになる前に終わってしまい
申し訳ありません。(主人公がマッドサイエンティストだから?)

小説は難しいですね。あたしが思うアリガチな失敗は…。

1.考えだけ先行。一杯考えすぎて、自分の中で話が完成。
ついつい細かな作りこみができなくて、周囲には理解できない駄作に。

2.最初から緻密に書きすぎて、途中で投げてしまう。
書き始めは凄く思わせぶりで伏線作って・・・。
結局完成しないとか、つまんない終わり方しちゃうとか・・・。

今回は、2のパターンを回避するために導入部だけで切りました。
あくまでお試し版として御笑納頂けると幸いです。では…。
255名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 01:05:02 ID:lTWB9e040
今までとは違う視点でとても新鮮です。
出来ればこの調子で続きが読みたいなあ…。
256名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 19:49:49 ID:WG5Ty5Ou0
ええええ!
ここで終わっちゃうんですか。
本番はこれからですよ。
257名無しさん@ピンキー:2007/04/01(日) 22:55:48 ID:9Z6tdLi90
早くも既に1.と2.の両方に当てはまってしまってるな。
25814-244:2007/04/01(日) 23:52:25 ID:nGvRTYIF0
>>257
まだ力不足ってことですね。ま、一晩で書き散らした駄文ですから仕方ないか。
反応が良ければ温めてたネタに手をつけようかと思いましたが、身の程を知りました。
続きを書かない理由をありがとうございます。(^^)ノシ
259名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 00:16:56 ID:Q9BOARCX0
>>258
自分が書きたいなら書く。書きたくなければ書かない。それだけ。
余り読者の反応を気にしてもしょうがない。
なにしろこのスレ住民の趣向は多種多様なんだから全ての住民の満足の行くような作品
を書こうったってそれは絶対にムリなんじゃないでしょうか。無理にそれをやろうと
したらグダグダのわけ分からない作品になるような気がしますし。

サイボーグものといえば改造された側の苦悩を描くのはある程度お約束になっている
ようですが今回の作品は改造する側の苦悩を描いたってことで、着眼点が新鮮で
面白かったです。ただスレ的には最低限改造シーンくらいまで書いてから終わらせて
欲しかったというのが本音でござんす。
この作品はここまでなのかもしれないですが、心理描写をみっちりねっちり書き込むのは
私の好みなので、もし次作構想があるのであればぜひ投下をお願いしたいところです。
260名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 21:09:00 ID:GHdzNuor0
禿同。自分が書きたいかどうかだけが動機であるべき。
特に書くのを止めるのを他人のせいにするのは、いかんよ。
261名無しさん@ピンキー:2007/04/02(月) 22:57:03 ID:w1H12FWz0
プロット、アイデアを出すのも重要だが、文章にするときに描写するのが大変。
改造シーンって言っても、ある程度は手術シーンのことをイメージできないと
書きたくてもかけない。
>244氏はアイデア、着眼点はよさそうに見えるから、そこから先の作りこみが
難しいのかな。手術やマッドサイエンティストの描写でやる気が失せているように
感じた。このスレなら、書きたい部分だけ書いて、後は適当にすっ飛ばすのでも
よいと思う。気楽に行きましょう。
気合入りまくりもいいが、気楽なのもよいと思う。
2623の444:2007/04/03(火) 00:58:24 ID:IyQVJ0LK0
  私がクッションの程よくきいた後部座席に腰掛けたのと彼女が荒っぽくアクセルを踏み込むのはほぼ同時。急発進の
ショックで、勢いよく背もたれに叩きつけられた私は、ちょっとむっとしながら、後ろからハンドルを握る彼女の横顔を睨み
つける。
「病院っていったいどこなのさ?」
  私の問いに答えるかわりに彼女はハンドルを大きく右に切って、おかげで今度は左に大きく揺さぶられて窓に頭をぶ
つけそうになった。
  あのね。急ぐ気持ちはよーく分かるけど、運転荒っぽすぎ。事故ったサトシをお見舞いに行く途中で私たちが事故っ
た、なんてことになったら洒落にならないよ。

  でも、星ヶ浦のブティックストリートを抜けて、入舸浦に向かう中央分離帯つきの三車線の国道に出た車は、そんな私
の気持ちとはウラハラにますますスピードを上げていく。たまにすれ違う対向車のライトが光の矢のように流れ、街灯は
斜めに歪んで後ろに飛び去っていく。日中は混み合う入舸浦への国道も夜も10時をまわれば、車の量はめっきり減る
し、道は海岸沿いに一直線に伸びているから飛ばしやすいといえば飛ばしやすいのかもしれないけど、でも・・・。
「・・・あのう、ちょっとスピード出しすぎじゃないかと思うんだけど。それに、そのう、オートナビにしないのかなあ?」
  ちょっと震え気味の声で彼女に聞いてみる。はっきり言って、こんなスピードでマニュアルで走り続るなんて無謀だよ。
よく警察のコマーシャルでも言ってるじゃないか。『国道でのマニュアル運転はやめましょう。事故の確率はオートナビモ
ードの十倍です』ってさ。
2633の444:2007/04/03(火) 00:59:13 ID:IyQVJ0LK0
  正直言って私は車が苦手だ。中でも小さい自家用車はできれば乗らずに済ませたいモノの一つ。車に乗ると、もう胃
袋なんかないくせに吐き気がして、身体が小刻みに震えてくる。なぜって、そんなの決まってるじゃないか。車に乗ると、
あの忌まわしい事故の瞬間が・・・私の乗った車がジュースのアルミ缶みたいにペシャンコに潰れるところとか、体中、あ
りとあらゆる場所に太い針を突き刺されたみたいなって中途半端なたとえで形容するのも生ぬるい全身を襲う激しい痛
みとかを、嫌でもはっきりと思い出しちゃうからだよ。もう、同じような事故に遭ったっとしてもかすり傷一つつかないような
頑丈な機械の身体になっちゃったくせに、今更車に乗るのを恐がるなんてバカバカしいって思うかもしれないけど、駄目
なものは駄目。苦手なものは苦手。
「恐いの?」
  それまで無表情だった彼女は、バックミラー越しに怯えた表情の私をちらりと見つめると嘲りの表情をかすかに浮か
べた。
「こっ、恐くなんかないけどさ。でもほら、こんなときスピード違反で警察につかまったらまずいかなあって思って」
  悔しいから私は強がることにした。でも、強がって見せたところで声の震えまでは止められない。
「悪いわね。もっと急がなきゃ」
  私の本心を見透かしたのか、彼女は意地悪っぽい口調そう言うと、さらにアクセルを踏み込んだ。モーターが唸り、ス
ピードメーターの針が勢いよく右にふれる。
  そんなに急いでるなら、なおのことオートナビにすればいいんだ。オートナビにすれば、同じスピードで運転してもマニ
ュアルより電気の節約になるし何よりずっと安全なはず。なのにわざわざマニュアルで、暴走族顔負けのスピードで車を
走らせるなんて車嫌いの私への嫌がらせのつもりだろうか?
  嫌がらせ?そうかもね。
2643の444:2007/04/03(火) 01:00:09 ID:IyQVJ0LK0
  私にとってのサトシは、たまーに会ってキモチいい思いをさせてくれるだけの、代わりなんか幾らでもいるただの遊び
相手。だけど彼女にとってはかけがえのない恋人だったのかもしれない。ううん、恋人だったらまだいい。ひょっとしたら
奥さんっていう可能性もないわけじゃない。もしも私が彼女の立場で、自分の彼氏が浮気していて、その彼氏が浮気相
手と会いに行く途中で事故にあったとしたら・・・やっぱり、その浮気相手を憎む違いないよね。ましてや、その相手が、生
身の人間じゃない、身体に血の一滴も通っていない機械女だったとしたら・・・どう思うんだろう。
  私、サトシには自分が全身義体だってこと、話してる。どうせ話さなくても、抱かれれば多分分かっちゃうことなんだ
し、だったらその時になってばれるより、そういう関係になる前に自分からばらしたほうが気がラクだもん。
  サトシは私が義体ってこと知ってる。そして彼女はサトシにしか使っていない私の偽名を知っている。だったら、彼女
は私が義体だってことを知っていてもゼンゼン不思議じゃない。
『サトシが機械人形になったら、それはあなたのせい』
  これ、さっき彼女が私に向かって言ったコトバだ。身体が機械になったらサトシのことを見捨てると言わんばかりのそ
のセリフに、なんて冷たい女だろうって思ったけど、ひょっとしたら私の身体のコト知ってて、あてつけでわざとそう言った
のかもしれない。そのときには気がつかなかったけど、今になって思い返すとそんなふうにも思えてくる。
  もう一度、ちらりとハンドルを握る彼女の横顔を盗み見る。能面みたいに無表情なその顔からは何の感情も読み取
れない。怒りをあらわにしてくれたり、泣き叫んでくれたほうがまだまし。少なくとも彼女が何を考えているかは分かれば、
こっちもそれなりに対処しようがある。でも、今の彼女は何を考えているのかカイモク見当がつかない。暴走とも思えるス
ピードで車を走らせて私に嫌がらせをするつもり?サトシのいる病院に行って家族の目の前で私を吊るし上げるつもり?
いや、それだけのために私を車に乗せたとは思えない。
2653の444:2007/04/03(火) 01:11:30 ID:IyQVJ0LK0
(もしサトシの事故っていうのが彼女のウソだったとしたら?)
  ふと思い立って携帯を取り出してサトシに電話をしてみる。だけど、無機質な女性の声で電話が通じないってことを繰
り返し通知するだけで結局何もわからなかった。
  いっそのこと、このまま、車から飛び降りて逃げちゃおうか?今度はそんな考えが頭をよぎる。
  時速100キロを超えるスピードで走る車から飛び降りる。普通の人なら自殺行為だよね。だけど、頑丈なだけが取り得
の私の機械の身体ならどうってことない。飛び降りたあとは、そのまま走って逃げられるだろう。
(でも、下手に身体に傷がついたら、修理するのにお金がたんまりかかるよね)
  私の皮膚は、見た目は生身の肌そのまんまだけど、実際はシリコンか何かでできた人工物。だから、傷ついたら例え
それがどんな小さな引っ掻き傷でも、決して自然に治りはしない。定期検査の時に皮膚の傷ついた部分の張替えをしなく
ちゃいけない。そのお金は、決して安くはない。
(それに・・・やっぱり痛いよね)
  こんな機械の身体でも痛覚は人並みにちゃんとある。きっかり15秒しか続かないニセモノの痛覚だとしても、痛いこと
には代わりない。時速100キロで走る車から飛び降りた時に感じる痛みってどれくらいだろう。想像するだけでも恐ろし
い。もう、あの事故の時みたいな苦痛を経験するのはこりごりだ。
  それに・・・もし、彼女の言うことがホントでサトシが義体化するしか命が助かる方法がないなら、彼女が私を恨むのは
トーゼンで、私がこの場から逃げるのはフェアじゃないような気がする。彼女のキモチをきちんと受け止めてあげなきゃ
いけないような気がする。たとえそれが私への憎しみであっても。
  大丈夫。私の身体は生身の身体よりずーっと丈夫な全身義体なんだ。たとえ、彼女が私に危害を加えようとしたとこ
ろで何もできないよ。機械女だって罵られたとしても、そんなことはもう慣れっこ。それで彼女の気が済むなら、いくらでも
言わせればいい。
2663の444:2007/04/03(火) 01:12:14 ID:IyQVJ0LK0
  これは罰なんだ。自然に生まれて好きな人とつきあって結婚して子供を生んで死ぬ。そういう当たり前の流れから外
れてしまった私が、それでも人恋しくて、身体を求めようとするのからいけないんだ。私が悪い。私が悪い。私がぜーんぶ
悪い。
  恐る恐る窓の外に目を向ける。車は星ヶ浦の市街地を抜けて海岸沿いの緩やかなカーブに差し掛かっていた。オフ
シーズンのひとけのないビーチ。そしてその先に広がる淡い月明かりに照らし出された黒い海。星ヶ浦の海岸線は遠浅
のはずだけど、一度入り込んだら最後どこまでも、沈んでいってしまいそうな、ぬめぬめのくらーい底なし沼のように私に
は見えた。
2673の444:2007/04/03(火) 01:14:07 ID:IyQVJ0LK0
今回投下分です。
彼女とタクシーに乗るのはやめ。彼女には車を運転してもらうことにしました。
268名無しさん@ピンキー:2007/04/07(土) 11:50:50 ID:tavcdEBa0
保守
269名無しさん@ピンキー:2007/04/09(月) 23:50:28 ID:e8/L2ry+0
ho
270名無しさん@ピンキー:2007/04/10(火) 21:29:40 ID:dMmKjsTl0
shu
271名無しさん@ピンキー:2007/04/12(木) 06:55:51 ID:rEYgTV280
ほしゅ
272pinksaturn:2007/04/14(土) 23:23:52 ID:fpvjdKyT0
(久しぶりにオプションパーツ本編の続きです。
本編最終回・屯田兵の予定でしたが、金星の環境を降下可能にするには氷が足りませんでした。
難航の結果長くなったので2回に分け、今回は予定外のタイトルにします。)

−−(35)再改造−−

(経済特区 酉山科学研究所)

朝子10世:「酉山博士、冬子からの報告を受けましたが、脊髄の代替はほぼ成功のようね。」

酉山:「東宮様、歩行や跳躍については健常者並みと言えますが、性感は不完全です。
原型となるサンプルデータが障害のある理美のものしか無かったので元々不十分でした。
その点については冬子大尉も承知の上だったし、とりあえず操舵員としての機能は改善しました。
しかし、予測された他人の性器を移植されたような違和感という問題だけでは済みませんでした。
なんというか、神経の途中に膜でも張られたような間接的な感触がすると言われましてね。
冬子大尉の場合、脊髄障害になってから年月が経っていますので脳の対応部位に退化が起きています。
これを修復するとなると生体脳の再生は遅すぎるので小脳辺りまでの機械化しか無いでしょう。
この状態が長引けば精神面に悪影響が出る心配もあり、放置は好ましくありません。
しかし、脳下位機能の機械化技術は未完成なので、すぐに出来る対策はありません。」

朝子10世:「あと、どれくらい時間が必要なのですか?。
あなたは、鳥のサイボーグ化に際して脳改造もやったのだから基本技術はあるのでは?。」

酉山:「飛行機能の修復には成功しましたが、鳥は細かいことに文句を言いません。
本当に小脳の機械化に成功したという証明はないのです。動物の精神は単純です。
人間なら耐え難い違和感でも、本能が勝つことで耐えてしまうのかも知れないのです。
まず猿とか象のように感情が明瞭な動物で、5年ほどかけて実験を繰り返す必要があります。」
273pinksaturn:2007/04/14(土) 23:25:36 ID:fpvjdKyT0
朝子10世:「なるほど。それなら口が利ける実験動物が居れば3年で出来るわね。」

酉山:「はあ?。」

朝子10世:「特区住民のあなたは知らないけど、帝国には動物の身分になった人間が居ます。
帝国本体では死刑が廃止されており、代わりの極刑として人権削除刑が採用されています。
強盗殺人犯やスパイなどで捕まり、直接の物証によって冤罪の余地もない時に執行されます。
この刑を受けた者は、国家が飼養する動物として扱われ、大半が実験に供用されます。
主な用途は、人権のある素体では不可能な脳改造実験や非人間型サイボーグの試作です。
宙軍大臣つまり私が要請し、刑部大臣が同意すれば厳重な管理の元で民間供与もできます。
厳重な管理といっても、条件は絶対に反抗や逃亡が出来ないような状態に保つことだけです。
あなたの脳改造技術なら条件を満たして実験することは容易でしょう。」

酉山:「重罪人に同情するわけではありませんが、この実験では人間型ボディが必要です。
人権削除囚を人間型ボディに組み込むことは許容されるのですね?。」

朝子10世:「反抗や逃亡が出来ないように安全装置を組み込むなら許可できます。
装置自体は、全ての身体制御CPUに初めから組み込まれていますが設定が特殊になります。」

酉山:「全てのですか?。でもまさか貴女には付いていないのでしょう?」

朝子10世:「万が一、脳に傷害を受けてサイボーグが暴走したら危険ですよね。
要人なら、なおさらです。通常のサイボーグでは直属の上官が強制リモート権を有します。
私に対しては皇帝陛下が直属の上官ということになります。皇帝陛下も例外ではありません。
上官が居ないので、検事総長と元老院議長が同意したときだけ、私に権限が生じます。
いずれの場合も、24時間以内に元老院で延長決議を受けないと自動解除されます。
また権限を有する者でも、法令で認められた場合以外の乱用は人権犯罪とされます。
人権削除囚、別名非人では逆に解除方法のない常時起動でプログラムしないといけません。
制御内容も強制リモートではなく強制停止とすることになります。
許可された施設内で監視サーバーから許可電波を受けている間のみ自力行動が許されます。」
274pinksaturn:2007/04/14(土) 23:26:32 ID:fpvjdKyT0
酉山:「なるほど。徹底していますね。管理の仕組みはよくわかりました。
監視サーバーさえ供与いただけば、ここでもやれそうですね。あと一つお願いがあります。
それが整えば、ご希望通り3年で実用化できそうです。」

朝子10世:「あと一つとは何でしょう?。」

酉山:「水中手術施設の供与と術者の派遣です。帝国の脳摘出法 http://pinksaturm.fc2web.com/noutekisyutu-teikoku.htm には必須でしょう。
たとえ施設があっても、私が直接実行するのは非常に困難ですし。」

朝子10世:「もちろんご用意します。非人供与とはセットで考えていました。
術者については、あなたの設計を忠実に再現できる熟練者を選定します。
本当は私自身でやりたいくらいですが、時間がとれないのは残念ですよ。」
275pinksaturn:2007/04/14(土) 23:27:55 ID:fpvjdKyT0
(静止軌道第一工場衛星 宇宙工業本部)

華子:「金属素材部長、爆風受け素材の試験結果はどうなりました?。」

金属素材部長:「入手できる元素で1000dも使うとなると選択の余地は限られます。
8種類ほどの成分を試したのですが、タングステン系で何とか行けると思います。
なにぶん核実験が出来ないので、あくまでもミラーで作れる高熱での実験結果です。
1回の核パルスに対し摩耗率は2_ほどになります。厚み5mだと500発が限度です。
20%も減る頃には扁摩耗が目立ってきて強度の不足する箇所が出ます。」

華子:「いまいちねえ。あとは構造の工夫で摩耗を抑える手を見つけないと。
構造設計部長、何か良い案は出てないの?。」

構造設計部長:「摩耗の主要因は赤外線吸収による蒸発ですから液冷すれば抑えられます。
核の高温ですから、水では追いつきませんが水銀を加圧して小穴から滲出させれば効きます。
摩耗抑止の他に、気化した水銀の蒸気圧が推進力に加わるという利点もあります。」

華子:「水銀ねえ。資源量は大丈夫かしら?。」

構造設計部長:「貴金属としては安いほうですが、百d単位で消耗する用途なんて初めてです。
今までは金や白金、銀の副産物で需要が満たされるので真剣に探査されたことが無いのです。
情報と言っても東宮様が行かれたトロヤで含有量が多いという報告が残っているだけです。
爆風受けなら滲出させる小穴の密度で消費量が調整できるので資源見合いで設計は出来ます。
水銀をケチれば摩耗が早くなりますが、今の生産量で1発0.2_程にはできそうです。
その条件で総重量20万d程度の試作艦を年間4往復カロンまで飛ばすくらいは可能でしょう。
試作艦の運航試験と平行して資源探査を進め、資源量に合わせた最適化を行えば良いのです。」

華子:「片道10日という理論値に比べると年に4往復だけとはしょぼいなあ。
まあ、理論値は所詮強度抜きで燃料の質量とエネルギーの関係だけで決まるから仕方ないか。
とにかく1隻作って動かしてみないと判らないことが多すぎるわね。」
276pinksaturn:2007/04/14(土) 23:28:48 ID:fpvjdKyT0
構造設計部長:「ところで、乗員確保のめどは立つのですか?。
想定される推進時の衝撃に耐えられるのは、無籍髄型サイボーグだけですよ。
核爆弾の臨界量が決まってるから、1パルス当たりの爆発力を下げるのは限界なんです。
船体を重くできればGは下げられるんですが、素材強度による限界もあります。
総重量20万dというのが、現在使える素材では精一杯でしょう。」

華子:「あ、その前に建造ドックのことなんだけど、火星軌道でって事なのよ。
つまり、ドックを作るのに2年かかって、それから艦の建造で2年でしょ。
3年先には乗員の再改造が始められるあてもあるから時期は合うのよ。」

構造設計部長:「え、火星軌道にドックを置くんですか。なんでまたそんな遠くで。
工場作業員の交代だって、大変になりますよ。往復も宇宙滞在時間になるんです。
実働期間が減った分は人を増やさないといけないから、かなりコストアップしますが。」

華子:「政治的制約よ。地球から遠いところでなら宇宙条約の規制緩和も通ると見込んでね。
地球付近だと推進用核爆弾を地上攻撃にも使えるじゃないかって、必ず問題になるからね。
工場要員は高速連絡艦の乗員なんかと比べたら、遙かに余裕があるからこの際仕方ないわ。
コストだって、しょぼいと言っても今の高速連絡艦50隻分の積載量なら悪くはないわ。」
277pinksaturn:2007/04/14(土) 23:32:47 ID:BA2VbD1o0
(国連安全保障理事会)

弥生:「我々は、地球温暖化に起因する食糧難解決のため衛星軌道に生産拠点を設けました。
また、アリババ大砂漠の縮小による耕地化にも協力を行ってきました。
砂漠緑化の効果で、ここ5年ほどは地球温暖化のペースが鈍っているのは周知の通りです。
さらに、金星の可住化に着手し局地的低温化と成層圏における生産施設設置に成功しています。
しかし、金星地表の大部分は、まだサイボーグも降りられない平均気温340度の地獄です。
計画開始以来、60度ほどの温度低下がみられるものの炭酸ガスの減少はごく僅かでした。
即ち、隕石投下で生じた塵の遮光効果により一時的な低温化が起きただけで永続性はありません。
氷隕石落下地点付近では降水もみられますが硫酸分が濃く炭酸ガスが殆ど吸収されません。
炭酸ガスを吸収できる水面を得るには現状の2桁増しのペースで氷を入れないと無理でしょう。
それを実行するには、カイパーベルトへの機材輸送能力を大幅に増強する必要があります。
しかし、高加速宇宙艦に適合する乗員が少ないので機材を増やしても運行しきれません。
これを根本的に解決するには、強力な推進方式で積載量と運行回数を増やす必要があります。
すぐに実用化でき、十分な推進力が得られるのは核パルス推進だけです。
そこで、宇宙条約を改定し、地球及び月から十分遠い空間では核爆発の利用を容認願いたい。」

西欧連国連大使:「確かに地球や月から十分遠い空間で使うなら実害はないでしょう。
しかし、地球からそこに運ばれる過程では衛星軌道に核爆弾が配備されたことになります。
たとえ、貴国に兵器として使う意図がないとしても事故やテロの懸念は払拭できません。」

弥生:「素材の採掘から製造までの全過程を火星やメインベルトで行うことは可能です。
機材と乗員は火星まで従来型宇宙艦で移動し、工場衛星で乗り換えるようにします。
地球の衛星軌道上に核爆弾を持ち込むつもりはありません。」

北米連国連大使:「つまり、国連が許容しようがしまいが強行することも簡単って訳だ。
だったら、好き勝手にやって、世界を敵に回したらどうです?。」
278pinksaturn:2007/04/14(土) 23:34:12 ID:BA2VbD1o0
弥生:「金星を可住化した後は食料生産地として活用するつもりです。
世界から孤立して輸出がままならないようでは事業として採算が成り立ちません。
したがって、核パルス推進艦の運用については兵器転用の疑いがない透明性を保証します。」

北米連国連大使:「ほう?。どうやって。」

弥生:「火星に設置する工場衛星は外国の宇宙船も寄港できる仕様で建設します。
つまり、地上の経済特区に準じた自由港とするのです。したがって査察も可能です。
推進用の核爆弾製造工程は常時視察可能としミサイル搭載用でないことを担保します。」

北米連国連大使:「地球軌道上の工場衛星には絶対に入らせなかったではないか。
なぜ火星なら良いというのか。矛盾している。」

弥生:「それは、あなた方の月基地だってお互い様でしょう。
あなたがたの工作員は我が国や資源国において再三非合法活動を行っています。
地球近傍の施設なら工作員をにわか宇宙飛行士に仕立てて投入できますね。
遠い火星なら、にわか宇宙飛行士が行ける可能性は少ないだろうと言うことです。」

北米連国連大使:「工作員?。我が政府は一切関知しません。民間の情報屋ですよ。
仮にその者等が北米人だとしても、民間人の犯罪まで政府は責任が持てないでしょ。
工作員なんて口実で、遠すぎて査察に行ける者が居ないと当て込んでいるだけだろ。」

満漢人民共和国国連大使:「人民共和国査察官供出可能也。達磨娘遠距離飛行可能。」

北米連国連大使:「おたくのダルマ娘は、活動するとき帝国製品に頼ってるじゃないか。
公正中立な査察なんか出来るとは思えないですね。」
279pinksaturn:2007/04/14(土) 23:36:14 ID:BA2VbD1o0
満漢人民共和国国連大使:「達磨娘十分多数確保済。人海戦術対抗圧力不可能。
我国食糧難深刻。食料産地増加熱烈歓迎。北米連金星可住化代替案未提示、反対無意味。」

北米連国連大使:「何で我々が無闇に人口を増やした国の面倒見無くちゃいかんのだ。
文句なら食うものも無いくせに内戦に血道を上げてるような奴らに言って貰いたい。」

満漢人民共和国国連大使:「北米連御都合主義、内戦火中注油責任有。」

アリババ連盟国連大使:「禿同。我々のところでも散々対立を煽っていたじゃないか。
あのころに砂漠の拡大を食い止めていれば、まだ苦労が少なかったんだ。」

南亜連国連大使:「うちなんか、昔の内戦に介入してきたとき枯葉剤まかれたんだよ。
お陰でジャングルが枯れたあとの荒れ地は、今も汚染が残って耕地にならないんだ。
あの地域は奇形児の出生率が高いんだ。遺伝子まで傷物にされて放置じゃないか。」

北米連国連大使:「便乗で変な言いがかりはやめてほしいですな。
遺伝子とか進化論はインチキだから我が国の教科書ではとっくに削除済です。
猿から人間が生まれるわけないでしょ。おたくらは猿なんですか?。」

西欧連国連大使:「昔の恨み言は別の機会にして査察の実現性を論じるべきでしょう。
満漢人民共和国が出せるというなら、我々も努力しないとね。」

スレイブ共和国連邦国連大使:「我が国は人と機材なら何とかなるが金が足りない。
西欧連が共同でやるなら乗れるんだけどね。うちのような寒冷地の国は食糧難なんだ。
金星の可住化に対しては、まだ半信半疑だが、やれるものならやってもらいたい。」

北米連国連大使:「餌に釣られて後悔することになりませんかね。」

スレイブ共和国連邦国連大使:「あんたには、餌に事欠く辛さは解らないだろう。そんなに言うなら、もっと魅力的な餌を撒いてくれや。」

弥生:「我々は、北米連の暴挙による核被害にも関わらず核武装は控えてきました。
今後も、兵器としての核を認めない政策に変更はありません。」
280pinksaturn:2007/04/14(土) 23:41:58 ID:BA2VbD1o0
(酉山科学研究所 再改造手術室隣の観察室)

漣:「東宮様の命で術者として派遣されました漣大佐です。」

酉山:「ん、漣...お名前に記憶があります。脳の耐Gに関する論文を書かれていますね。」

漣:「普段は宙軍研究所脳脊髄医学研究部長をやっております。耐G要員選別法が専門です。」

酉山:「ああ、やっぱり。そんな要職にある方が私の手伝いなぞやっていて良いのですか?。」

漣:「私ども赤の公家の者は手術が大好きでして、この件には是非加わりたかったのです。
それで東宮様に強くお願いして、仕事を押しつけられる優秀な副部長を配置して貰いました。」

酉山:「帝国当局の意気込みは承知していますが、初めての試みですからどうなりますやら。」

漣:「宙軍も良い人材は居ますが、手術とメカ開発が両方とも一流の者はなかなか居ません。
あなたの実績は、条件に恵まれた我が帝国のサイボーグ技術者から見ても異能なのですよ。
我々は術者もサイボーグと言う事を活かした神経を1本ずつ繋ぐ技術に依存してきました。
しかし、生体−機械間インタフェースが大脳−小脳間に移れば本数的に限界を超えます。
また、どんなに微細化しても接触型である限り、大加速度で損傷する可能性があります。
酉山博士が開発された、高密度フェイズドアレイ微弱電磁界結合方式は実に画期的です。
脳内電磁界をアレイアンテナで立体視して意味抽出を行い、また逆に送り込むのですからね。
非接触だから耐G性が格段に向上するし、意味を直接交換するので計算量は激減します。
Gで少々位置がずれても座標変換で補正できるから、単に生存するだけでなく行動が可能です。
生体部分が頭蓋上部に集約されれば2次生命維持装置を頭部に設置できるようにもなります。
首の着脱が可能になれば、用途別ボディを着替えのように使い分けられ生活も便利になります。
我々が求めていた性能条件を見事に満たしていますよ。」
281pinksaturn:2007/04/14(土) 23:43:15 ID:BA2VbD1o0
酉山:「実験が成功しないうちからむやみに絶賛されると後で問題が起きたら困りますね。
フェイズドアレイアンテナによる立体視は、昔から対空レーダーに使われてきた技術です。
帝国の部品生産技術が良いから、脳内の狭い空間で使えるようになっただけのことです。
本当は、私のオリジナリティなんてあまり無いし、私だけでは実施すらできないのです。
帝国の術者による水中手術でなければ血管が処理しきれないのですから。」

漣:「実験がすぐに成功しようがしまいが、技術の方向性に対する評価は変わりませんよ。
失敗するとしたら、私の作業ミスが原因になるかも知れないですしね。
さて、非人の搬入まで1時間ほどですから、新施設の詳細について打ち合わせましょうか。
向こうの手術水槽は、宙軍研究所で使用している物と同一の作業カプセル付き水槽です。
帝国では通常改造手術なら脳摘出をサイボーグ術者だけでやっているので施設が簡単です。
しかし実験目的の手術ではシビリアンの研究員が作業に加わることもあります。
それで、研究施設の手術水槽にはクレーンで吊された作業カプセルが付属します。
あなたにはあのカプセルに入って水中に降り、細かい指示を出して貰うことになります。
準備室でカプセルに入って丸ごと滅菌槽に浸されてから手術室内に移動して来るのです。
カプセル内に設けられた3Dディスプレイには我々の視覚が転送されます。
コンソール右のレバーでポインタを出せば我々の視覚に位置を示すことが出来ます。
左のレバーはカプセルの移動用です。VoIP端末もあるので我々と音声会話が出来ます。
コンソール上のスイッチ類は手術用機器の操作に使う物で、各々用途表示が付いています。」

酉山:「個々の機器についてはマニュアルを読みました。全て類似機種の経験があります。」

冬子:「漣部長、人柱2柱を運んで参りました。結構通関手続きが手間でしたね。」

漣:「仕方ないよ。ある意味これ以上危険な物品は無いのだから。思ったより早かったわ。」

酉山:「非人なら制度上必要ないでしょうけど、慣例として本人に説明したいのですが。」

漣:「まともに話を聞くとは思えませんが、先生の流儀でやって下さい。」
282pinksaturn:2007/04/15(日) 02:46:17 ID:Ug1xVtwY0
酉山:「手術後の性能評価を円滑に進めるために、納得して手術を受けさせたいのです。」

漣:「うーん、難しいところですね。奴らには恩赦を餌に協力させることが許されません。
特にこの2体は外国から処刑を受託したので、外交信義上も絶対に恩赦はありえません。」

酉山:「非人間型から人間型に換装されるだけでもメリットはあるでしょう。」

漣:「なるほど。まあ、非人の行動制限内なら多少人間らしく暮らさせるのは可能です。
承知しました。では、奴らを起動させます。起動ボタン...」

桜花:「ぴぽっ、人柱版ITARON起動しました...。うう、ここは?。」

梅花:「ぴぽっ、人柱版ITARON起動しました...。畜生、今度は何だよ。」

漣:「非人ども、よく聞け。藻舞等は、本日こちらの酉山博士に譲渡された。
今後はこの研究所で飼われて、脳改造の実験材料になるのだ。」

桜花:「脳改造実験!。とうとう人格を破壊されるか殺して脳標本にされるって訳ね。」

梅花:「殺すのなら、じわじわいたぶらずにさっさとやれよ。」

漣:「やけを起こすような話でもないぞ。ここの研究課題は小脳の機械化だ。
手術が首尾よく行けば、性能試験は人間型ボディで行われることになる。
真剣に協力して酉山博士の機嫌を良くすれば、待遇が改善される余地だってあるのだ。」

桜花:「ふん。元工作員を舐めるなよ。どうせ騙されて使い捨てにされるのさ。」

梅花:「待って。酉山...工作員養成所時代に見覚えがある名前だわ。
確か、誘致工作活動の対象になっている外国民間研究機関の主催者だったはずよ。」
283pinksaturn:2007/04/15(日) 02:48:08 ID:Ug1xVtwY0
酉山:「ほお。私の研究所を誘致したがっていたんですか。悪い気はしませんね。」

漣:「先手を打って私らが誘致に成功したってわけよ。ここは民間研究機関だ。
軍の研究所と違って、酉山博士の一存で藻舞等の待遇を決められるんだよ。
無論、帝国の非人管理規則は適用されるから監視サーバーの制御下に置かれる。
だが、藻舞等が酉山博士に服従する限り、所内では行動の自由も与えられる。」

酉山:「この二人の元の外観について資料は残っていますか?。」

漣:「逮捕された事件の前に特区で行動したときの監視映像があります。
その後、B王国から処刑を受託した時点では手足が無い状態になっていました。」

酉山:「協力してくれるなら新しいボディは元の外見を再現したものにするよ。」

漣:「再改造後は首の着脱が可能になる。反抗したら首だけで暮らす事になる。」

桜花:「解ったわ。協力するよ。」

酉山:「では、手術内容を説明しよう。このスライド http://pinksaturn.fc2web.com/noutekisyutu-toriyama.htm を見なさい。
水中手術にて脳容器を分解し、小脳以下を切除、跡に3次元送受信機を置く。
2次生命維持装置の血管接続点は大動脈分岐より上部に移設され...。」

梅花:「(((( ;゚ρ゚)))いかにも死にそうだわ。ひいい。」

漣:「何のために私が術者としてここに派遣されたと思うの?。
私ならこの程度の脳血管接続替えは1分で出来るわね。大脳の生存はほぼ確実よ。
手術の成否は大脳と小脳の境界を素早く見極めて正確に切り取れるかの問題ね。
手元が狂ったら、生きていても痴呆状態の大脳が残るだけかも知れないな。
私の機嫌が良くて、ノリノリで行ければ手元が狂う確率は激減するわよ。」

桜花:「よ、よろしくおねがいします。」
284pinksaturn:2007/04/15(日) 02:52:02 ID:Ug1xVtwY0
漣:「お、素直になったじゃないの。そっちは?。」

梅花:「酉山様、漣様のお力で少しでもましなサイボーグにして下さいませ。」

漣:「よしよし。やる気が湧いてきたわ。冬子、まず桜花を準備室で滅菌よ。」

冬子:「はい。よっこらしょ。人柱ってやっぱり重いわね。」

酉山:「私も支度をして準備室に向かいましょうかね。」

漣:「人柱を分解して脳容器を水槽に持ち込むのに40分かかります。
酉山博士に入って頂くのはそこからになりますので、オフィスにおいで下さい。
水中作業中でも体内通信から電話でお呼びすることが出来ますので。」


(酉山科学研究所 水中手術室)

漣:「血管の切り替え出来ました。これで小脳の切除にとりかかれます。」

酉山:「まず脳内物質交換状況の精密マッピングを行うためPET映像を取ります。
切り替え後の血流が行くのは、ほぼ大脳だけですが静的データだけでは不安です。
髄液に乗って、小脳領域にもある程度取り込まれるのでどうしても境界がぼやけます。
念のため、トレーサーを流しながら半覚醒で刺激を加えて厳密な境界を決めましょう。」

漣:「確かに機能上の境界を見極めておけば安全ですね。操作はそちらに任せます。」

酉山:「麻酔を半覚醒に調整します。脳波動いてきたな。これで良いだろう。
トレーサー流しますよ。見ながら録画に適宜チェックポイントを付けておいてください。
あとで参照しながら切断面を選びますからね。全身の痛覚に入力加えます。」
285pinksaturn:2007/04/15(日) 03:06:07 ID:Ug1xVtwY0
漣:「ふーん。痛みへの反射と苦しみという意味反応の時間差って、こんなものか。
よし、マークしますので一旦止めて5秒後に再開して下さい。」

酉山:「反射反応に約0.6秒遅れて現れる応答の波が我慢による抑止運動命令でしょう。
ですから、遅い応答波の出現領域は大脳と見なせます。では、止めますよ。はい再開。」

漣:「境界面は想定に近いですね。他の感覚に対する反応でも確認しましょう。」

酉山:「この形状でうまく切れそうですか?。」

漣:「切るのはなんとでもなりますが、硬膜の開創を小さくして髄液漏れを局限したいですね。
よーし、マイクロボディを使ってやってみよう。作業用に特殊器具を入れるので待って下さい。
冬子、用具箱からマイクロボディを出して水槽に送り込んで頂戴。」

冬子:「用具箱、ああリカちゃんハウス型のやつでしたよね。はい、送りました。」

酉山:「おお、これは!。貴女にそっくりですね。小さくてかわいい。」

漣:「萌えとか言わないで下さいよ。マイクロボディは、1/20スケールのリモート体です。
こいつに全神経を接続すると、小人になって手術が出来るというわけですよ。ほら!。」

酉山:「あ、ディスプレイの視覚中継が。これなら脳神経をかき分けて入れますね。」

漣:「先に延髄を切断して、切り口から進入します。髄液漏れは仮設カバーで抑えます。
私は切り口に飛び込んですぐに仮設カバーを固定するよう、体勢を取る必要があります。
延髄切断機の操作はそちらでお願いします。では、良いですか?。始めて下さい。」

酉山:「延髄切断機、超音波出力良好、刃を降ろします。...よし切れた。」

漣:「入ります。仮設カバージップロック。よし、ここをそーっとかき分けて...。
境界面の5_手前に到達したと思います。座標表示で確認して下さい。」
286pinksaturn:2007/04/15(日) 03:07:38 ID:Ug1xVtwY0
酉山:「一致しています。そこからですと、右上7_にある活動の強い神経群が目印です。」

漣:「視覚を赤外からポジトロン放射検出に切り替えてみます。ああ、間違いない、ここだ。
視覚に切断点サンプリング座標を示しますので最終確認をして下さい。」

酉山:「いただいたサンプル点はOKです。追加で1カ所、ここは合ってますか?。」

漣:「この神経束は判断が微妙ですね。周囲に活性領域が無くて目印が付けにくいなあ。」

酉山:「今回は安全側で手前に切断面を設定しましょう。人工小脳のスペースは足りますよ。」

漣:「了解。切断始めます。超音波手刀起動、身体制御NCモード、座標データ列投入...。」

酉山:「おお、お見事この早さでなんと正確な。」

漣:「切断終了、身体制御通常モード復帰よし。保護ジェルチューブを進入口に寄せて下さい。」

酉山:「延髄の切り口前まで移動させましたよ。」

漣:「仮設カバー中央の蓋を押しのけて差し込んで下さい。そう、ここで良いです。
あとは私が引き込みますから。よいしょよいしょ。小人にはこれが辛いのよね。
よし、切断面に来たわ。ジェルの加圧を行って下さい。」

酉山:「ゆっくり入れますよ。はい。」

漣:「さすがに心得ていますね。チューブの先を回して...。よし充填できたわ。
これで髄液は抑えられます。摘出部分を裁断して切り口から出すので片づけお願いします。
超音波手刀起動、えい、すぱすぱ...よし、出しますよ。」

酉山:「回収盆位置ここで良いですね。ああ、出てきた。よしキャッチ。どんどんどうぞ。」
287pinksaturn:2007/04/15(日) 03:09:09 ID:Ug1xVtwY0
漣:「よいしょよいしょ...ふう、全部出ました。硬膜をすぼめながら外に出ますね。
はあ、出れたわ。じゃあ切り口を縫合しましょうか。ちょいちょいと。しっかり結んでOK。」

酉山:「お疲れさま。脳底にこれだけの空間が空けば人工小脳は余裕で置けます。
冬子大尉、人工小脳と新しい脳容器を搬入して下さい。」

冬子:「部品一式送りました。」

漣:「リモートボディリンク解除。さて、組み立てますかね。といってもこれだけか。楽勝だぁ。」


(酉山科学研究所 獄門台室)

桜花:「ぎゃあああ、痛ぁい。死ぬ、死んじゃうよぉ。死ぬ死ぬ詐欺じゃないってば...。」

漣:「こら、非人。うわごと言ってないで起きろ。」

桜花:「あうう。はっ、い、生きてるの?。」

酉山:「目覚めたようだね。安心したまえ、手術は成功した。鏡を見なさい。」

桜花:「ひいい、な、生首ぃ。」

酉山:「それは君の新しい首だよ。気分はどうかね。どこか痛いところは無いかね?。」

桜花:「あ、さっきすごい痛みがあったはずだけど...今は無いわ。」

酉山:「小脳と大脳の境界を出すために痛覚を使ったせいだな。もう大丈夫だ。」
288pinksaturn:2007/04/15(日) 03:21:18 ID:Ug1xVtwY0
桜花:「ちょっとお。協力すれば、まともな体を付けてくれるはずじゃないの?。」

漣:「それは今後の態度次第だ。反抗したら、一生このまま獄門台生活だぞ。」

酉山:「手術後の錯乱もあり得るから、人工小脳の動作が確認出来るまで我慢しなさい。
ちゃんと体の部材は発注してあるよ。テストがうまく行ったら付けるからね。」

桜花:「は、はい。よろしくお願いします。」

酉山:「うむ。ちゃんと喋れるから、言語系は機能しているね。他もたぶん大丈夫だな。
せいぜいソフトの調整だけで、再手術は不要だろう。漣大佐、お疲れさまでした。」

漣:「どういたしまして。こいつが一通り動いたら、梅花の番ですね。」

酉山:「また宜しくお願いします。その先はいよいよ正規の宙軍兵って事になります。
私の娘が核パルス推進艦の乗員に志願すると言っているので、失敗は出来ません。」

漣:「うちの冬子もそれを目指しています。お互いに、頑張りましょう。」
289pinksaturn:2007/04/15(日) 03:23:35 ID:Ug1xVtwY0
(北米連 G島基地)

担当官:「上からあんたをご指名で任務が入っている。今度は宇宙に行って貰う。」

孫:「宇宙だって?。私は政治工作が専門で飛行機の免許もないってのに何で?。」

担当官:「小娘帝国が核パルス推進艦を建造するニュースは知っているだろう。
兵器転用がないことを検証するため、火星の工場衛星に各国が査察団を送る。
我が国は当初絶対反対の姿勢だったが、満漢やス連の賛成で容認されてしまった。
無視すれば帝国に友好的な満漢主体でなれ合いの査察だけが行われることになる。
それを防ぐために形だけでも査察団を送って満漢に圧力をかける必要がある。
だが、遠い火星まで普通の人間を送るには莫大な予算が必要で今は難しい。
満漢が査察団を出せるのは代謝量が少ないダルマ娘が使えるからだ。
これに対抗するため、我が当局は国内のメタロリ娘を集めて査察団に仕立てる。
どうにか4人集めたが、どいつも定職に就いた経験すらない遊び人でな。
宇宙飛行の教育をするのが精一杯で政治的駆け引きなんかやらせるのは無理だ。
そのため、団長役として満漢に詳しいお前に白羽の矢が立ったというわけだ。」

孫:「なるほど。主な任務は政治工作って訳か。どうせ断れないよな。
だが、折角送るなら本物の査察官をダルマにした方が効果的だろう?。」

担当官:「人権を認めない満漢じゃあるまいし、そんなことは出来ない。」

孫:「ぷっ。工作員の人権が無いのは同じだというのにな。
民間宇宙保安官とか言うごっついサイボーグ娘は引き受けてくれないのか?。
圧力目的なら、何もできない員数合わせよりもあいつらの方が良いだろう。」

担当官:「民間宇宙保安官は生命維持装置の仕様制限で長居が出来ないんだ。
火星往復の護衛を発注することになっているが、査察中の滞在は頼めない。」

孫:「せめて行き来で姿を見せて示威に使うって訳か。解ったよ。」
290pinksaturn:2007/04/15(日) 03:24:21 ID:Ug1xVtwY0
担当官:「とりあえず、その手足じゃ宇宙飛行に不便だ。替えに行って来い。」

孫:「帝国の経済特区に行けと言うのか。あそこでは、私はお尋ね者扱いだ。
それに、人民党の抹殺者が活動している心配だってあるんだ。」

担当官:「マークされていると言うだけで違法行為はしていないのだろ。
あそこは自由港だからそれだけで逮捕や入国拒否はされない筈だよな。
護衛に腕利きを4人付けてやるから安心して行って来い。出発は3時間後だ。
手足の交換が済んだら、次はすぐに宇宙局へ行って訓練に入って貰う。
時間節約のため移動は専用機で教官パイロットの教習を受けながらになる。
宇宙船の操縦は行程の殆どを民間宇宙保安官の戦闘艦がドッキングして行う。
しかし、途中で何回か単独飛行が必要だからその時はお前がやるんだ。
後の4人は操縦どころかパソコンもろくに使えない娘だから覚悟しておけ。」

孫:「厳しい日程だな。こののどかな島が気に入っていたのにお別れか。
しかもそんな頼りない奴らと火星往復なんて生きて帰れるのかね。」
291pinksaturn:2007/04/15(日) 08:24:07 ID:Ug1xVtwY0
(帰還中の”なると”艦長室)

マサ:「地球が近くなったからだいぶ通信速度が速くなってきたな。
うーんキタキタ、22chも2時間遅れでレス出来るようになってきたぞ。
”墾田永代私有令を語るスレ”なんて立ってますよ。なんじゃこりゃ。
ここにカキコしてる香具師って貴族らしいのが多いなぁ。」

真理亜:「近々に金星プラットフォームの私有が認められることになるのよ。
航宙家の青の公家としては、解禁一番乗りを目指すから藻前等も手伝うのよ。
間違ってもそんなスレで釣られて大事な話を漏らすんじゃないわよ。」

マサ:「荘園に別邸の隠れ家なんて素敵ですね。葡萄畑にワイン倉とか作って。」

雀奴:「楽しそうだけど資材輸送はどうするんですか?。」

真理亜:「当面は宙軍が建設したプラットフォームを購入する形になるわ。
改装用の小資材や休暇に行く者の往来用には小型艇も買わないといけないわね。」

マサ:「結構金がかかりそうですね。副業として成り立つ話ではないのかな。
でも1基くらい別荘として持つなら良いかしら。」

真理亜:「短期的利益を得るのは難しいわ。でも、これにはおまけが憑くのよ。
私有プラットフォームは金星地表に対し固定位置が割り当てられるの。
そして直下から半径100`の土地が私有地になるのよ。
今は使えない土地だけど、いずれ地表温度が下がれば資源を独占できるわ。
当然、極地に近い場所の方が有利になるから早い者勝ちって事ね。」

マサ:「ふーん。長期的には好条件ですね。国も思い切ったことしますね。」
292pinksaturn:2007/04/15(日) 08:25:46 ID:Ug1xVtwY0
真理亜:「国連で火星軌道以遠での核パルス推進艦導入が容認されたでしょ。
これで金星可住化が現実味を帯びた代わりに予算確保が大変になったわけよ。
帝国は長年宇宙から入る金属資源を裏付けとした電子マネー経済だったからね。
財政規律が徹底した現金主義で国債なんて無責任な制度自体が無いでしょ。
これは外国みたいな借金財政によるインフレが絶対に無い優れた仕組みなのよ。
その代わり民間に溜まった資金を集めるときは資産売却しか無いって事ね。
売るほど保有していて、いずれ価値が出る資産と言えば金星の施設ってわけよ。」

雀奴:「休暇で行く者が居ない時期の管理が難しくないですか?。」

真理亜:「畑の管理なら遠隔でも出来るけど完全無人で巡回も無しでは無理かも。
休暇で予定が空いている宙軍兵からアルバイトを募集する必要もあるわね。
大気成分が改善してシビリアンの使用人が居住できるようになれば楽になるけどね。
でも、そんな時期を待ったら良い場所は値上がりして買えなくなっているわよ。
今のうちなら、事実上貴族かその支配下企業しか買える者が居ないから安いのよ。」

マサ:「先行者利益ですか。その代わり、最初は荘園なんて優雅なものじゃないな。
屯田兵の苦労が待っているような希ガス。」
293pinksaturn:2007/04/15(日) 08:26:41 ID:Ug1xVtwY0
(火星静止衛星軌道 核パルス艦ドック建設現場)

リホ:「随分沢山のパーツを組んだ割になかなか工場の形が出来ないわね。」

エリ:「そりゃそうよ。今までの工場衛星の64倍も容積があるんだもん。
外国宇宙船が寄港できるようにするため地上並みの居住環境が必要だからね。
おまけに外国船はリモートボディリンク操船が出来ないんでベイが大きいし。」

リホ:「ベイが大きいのは核パルス推進艦が巨大だからじゃないの?。」

エリ:「核パルス推進艦は強度の関係で重い割に容積は小さいらしいわよ。
むしろ外国船が出入りでぶつける心配を無くすために広さが必要なんだって。
地球軌道の工場衛星って自転を目一杯早くして重力を作ってるでしょ。
おまけにゴンドラタワーが建ってるから出入り口が中心軸に無いよね。
あれではサイボーグでも一部の熟練した操舵員しか入出港が出来ないでしょ。
ここのベイはそれじゃ困るのでまず自転を遅くしなくちゃいけないでしょ。
遅い自転で重力を1Gにすると工場衛星全体の半径が大きくなるわよね。
外国船のドッキングポートなんて仕様がばらばらだから係留場も常時与圧よ。
つまり出入り口は中心にあるだけでなく完全なエアロック式ってことになるのよ。
大型船が通れるエアロックって耐圧強度確保が大変だから壁も厚くなるでしょう。
そんなロスの積み重ねで嵩張っているのよね。」

リホ:「サイボーグ専用艦以外も入れる港となるとやっぱりコストかかるわね。
そこまでしても当面はここにやってくるのが殆ど全部達磨娘ばっかりなんだよね。
どうせだったらみんな満漢式月面作業服の常時着用にでもしてくれればいいのに。
ベイの常時与圧をやめれば建設がうんと楽になるのにね。」

エリ:「満漢しか査察団が入れないんじゃ、なれ合いって言われるわよ。
でも、西欧連・ス連合同査察団は男が来るし、満漢は達磨男も少し混じるらしいの。
そいつらを当て込んで、臨港地区には小規模な風俗街が設置されることになったわ。」
294pinksaturn:2007/04/15(日) 08:47:02 ID:Ug1xVtwY0
リホ:「へええ、西欧連とス連は普通の男が来るの?。燃料や酸素は足りるのかしら。
いつぞやの北米連探検船みたいな、ばかでかい船だったらベイに入れないだろうし。」

エリ:「帰りの燃料と酸素、水、食料はここで買うって事で話が付いたのよ。
初めは査察団がこちらに補給を依存すべきでないと言って巨大な船を計画したの。
だけど、渋ちんの満漢が、先にここで水素、酸素、水を買うことを決めたでしょ。
その取引価格を知ったス連があんまり安いので強硬に現地補給を主張したんだって。
初めは嫌がった西欧連も折れたのよ。で、結局は野菜やウォッカまで売れることにね。」

リホ:「我々は水を宇宙で調達しているから値段では勝負にならないもんね。
メインベルトから火星までは近いから地球軌道より一層原価が下がるし。」

エリ:「唯一意地でも買わないのが北米連ってわけよ。」

リホ:「あいつらは無視かと思ったら、来ることになったんだ。」

エリ:「他国の査察団が我々に買収されるに違いないと疑っているのよ。
合体分離方式で例の宇宙保安官が遠距離航行ユニットを使って査察船を送迎するんだって。
補給をこっちに頼るのを避けるためにわざわざ面倒な方法を選んだようね。」

リホ:「民間宇宙保安官が来るのか。武器振り回しながら難癖憑けてこないと良いけど。」

エリ:「政府の受託業務で来る限り、そんな戦争につながる行為はやらないでしょ。
幸い、なんらかの都合で滞在できなくて送迎だけのようだし。」
295pinksaturn:2007/04/15(日) 08:48:17 ID:Ug1xVtwY0
(静止軌道第一工場衛星 ベイ)

管制員:「”なると”進入機動良好。3番補給ポールに係留せよ。」

理美:「降下します。ヴァギナルハッチ開口、ポール亀頭接触、あひ、はあはあ、入りました。」

真理亜:「理美、ご苦労さん。任務完了。部隊解散。総員退艦せよ。」

マサ:「これで理美とはお別れか。降りたら核パルス推進艦要員に志願するんだってね。」

理美:「お父さんからメールが来て、非人2体で小脳の機械化実験が成功したそうです。
我が儘言って済みませんが、お父さんに再改造して貰うのが長年の望みでしたので。
真理亜侯、マサ侯これまでのご指導、ありがとうございました。」

真理亜:「代わりの操舵員確保が頭痛の種だったけど、みどりのシミュレーションも進んだしね。
何とかなるわよ。こちらのことは心配せず自分の目標に邁進なさい。」

マサ:「核パルス推進艦の運行が始まれば、どうせ私らの仕事は減るから楽勝ですよ。」

真理亜:「藻前は何も知らずに気楽だねえ。核パルス推進艦はGがきつくて豚が乗せられないのよ。
あっちは速いから片道なら生命維持物資が保つけど、カロンで補給を受けなくちゃいけないの。
そのために、在来艦の運航はむしろ忙しくなりそうね。機関長も行ってしまうし頭が痛いわよ。」

マサ:「ゲロゲロ。働けど我が暮らし楽にならずか。」

真理亜:「降りたらプラットフォームの入札よ。公家の用務も溜まってるからしっかりしなさい。」
296pinksaturn:2007/04/15(日) 08:48:52 ID:Ug1xVtwY0
(月の裏側 満漢人民共和国ヘリウム3採掘基地)

司令官:「月面苦力隊第一班宛新任務通告。藻舞等宇宙娘々帝国火星軌道工場査察団投入。」

達磨娘・月面苦力1号:「我々建設労働者。科学知識欠乏。査察任務無理。」

司令官:「火星遠距離。達磨娘動員必須。休息時間訓練強制。落第者処罰。参名迄死亡許容。」

達磨娘・月面苦力2号:「其無茶苦茶也。」

司令官:「党主席命令絶対也。火星任務落第即死亡。弐者択一也。必死学習。」

達磨娘・月面苦力3号:「嗚呼達磨娘残酷物語。火星航路操縦失敗必至。全滅運命。」

司令官:「心配無用。操縦員弐名、核技術員壱名、達磨男配属予定。藻舞等員数整合用。」

達磨娘・月面苦力4号:「員数整合?。特訓何為?。」

司令官:「月面有重力。火星航路無重力。耐長期無重力生活特訓必要。」

達磨娘・月面苦力5号:「現状建設作業重労働。特訓追加過酷。労働軽減希望。」

司令官:「労働軽減命令無。不平発言禁止。藻前等処罰歓迎?。」

達磨娘・月面苦力1−9号:「処罰否!。」
297pinksaturn:2007/04/15(日) 09:26:10 ID:Ug1xVtwY0
(北米宇宙局 訓練施設)

教官:「ドッキングシミュレーター訓練開始。全員配置に就け。」

孫:「センターコンソール起動よし。バーニア操作レバー応答よし。」

メタラニ:「えーと。赤文字出てなきゃ良いんだっけ。右舷レーダーよし。」

メタリカ:「全部良いみたいね。左レーダー桶よん。」

メタルナ:「前方レーザー測距儀...あれー出ない。これか。えいこっちかよ。出たわ。」

メタレア:「...」

教官:「後方レーザー測距儀はどうした?。メタレア、お前だ!。」

メタレア:「わっかんないぃ。何これ、んもう。えいえい。ほら出たわよ。」

孫:「遅い!。真面目にやってよ。」

メタレア:「何よ。あんた後からやって来て偉そうに。」

孫:「お黙り!。団長は私よ。文句があるなら人事に言いなさい。」

298pinksaturn:2007/04/15(日) 09:27:17 ID:Ug1xVtwY0
メタレア:「人事ぃ?。ああ、あのスカウトのオヤジかよ。乗ってりゃいい楽な仕事だなんてさ。
大嘘じゃないの!。何で私がこんなめんどっちい画面見なきゃいけないのよ。」

メタラニ:「禿同。こんな辛気くさい仕事だって知ってたらやらないって。」

孫:「お黙り。私には飛行中に反抗したらその場で処刑する権限もあるのよ。」

メタリカ:「あんた基地外?。処刑って、私ら軍人やお巡りじゃないんよ。」

メタルナ:「ばっかみたい。処刑だって。やってみれば?。誰がびびるもんか。」

教官:「お前らいい加減にしろ。処刑権限のことは本当の話だ。宇宙査察特別時限法によってな。
お前らは、ゲーセンでスカウトされたとき、サンプル画面見て楽勝だと言ったそうだな。
契約金も受け取っただろ。いまさら出来ないと言うなら、詐欺罪で豚箱行きになるが良いのか?。」

メタラニ:「ちぇっ。金は使っちゃったし、しょうがないわね。」

孫:「わかったわね。ドッキングで事故ったら、処刑される前に全員お陀仏なのよ。
そこまで酷くなくても、民間宇宙保安官の船を傷つけて怒らせたら大変な目に遭うからね。」

メタリカ:「ああ、メタル娘の神スージーお姉さま!。それはまずいわ。」

教官:「よし。最初からだ。出来るまで飯は食わせないぞ。」

孫:「...(聞かされてはいたが、こんなに酷いとは。スージーだけが頼りだな。とほほ。)」
299pinksaturn:2007/04/15(日) 09:29:49 ID:Ug1xVtwY0
(酉山科学研究所)

朝子10世:「今日集まって貰ったのは、手術の優先順位を決めるためです。
核パルス推進艦を運用するには、最低限高級士官1名と操舵員2名が必要です。
現時点で、条件に適合する候補者がここに集まっている3名ということです。
貴女達はいずれ再改造を受けるわけですが、順番は酉山博士に同意して貰わないとね。」

酉山:「非人実験の結果、手術と大脳−小脳間インタフェースは技術確認が出来ました。
但し、人工小脳で自然な感覚・運動を実現できるようになるまでは時間がかかります。
冬子大尉については、現状でも障害があるので再改造によるQOL改善が見込めます。
しかし、他の2名については感覚や運動が現状より劣化する可能性があります。
つまり、耐G性強化と引き替えにQOL低下をきたすリスクがあるのです。
正直なところ、他に脊髄障害のある特例志願兵の希望者があれば優先したいですね。
健常者への適用は、実績を積んで人工小脳の調整法を確立してからの方が望ましいです。
まあ、理美は性感に難があるので一応健常者でないと見なしても良いですがね。」

朝子10世:「冬子が同種障害をもつ特例志願兵のうちでは最も階級が上です。
他には操舵員資格者が居ませんし、殆どが工場要員で艦隊勤務経験が少ないのです。
当然ながら、高級士官には該当者が居ません。知子3世だって本来なら機関長です。
艦長資格者はみな脳血管強度が落ちてくる年齢なので検査合格者がなかったのです。
技術的には仰るとおり特例志願兵を優先した方がよいのは承知しています。
しかし、新しい機関の試運転のため最低限運行できる要員が早期に必要なのです。
その他の乗員は後からで間に合いますが、機関の試験は実弾でしかできないので。」

知子3世:「身体機能についてのリスクは承知でしたが、艦長が居ないんですか?。
後から配置されるものと気楽に考えていたのは甘かったようですね。」

朝子10世:「とりあえず貴女が代行していずれそのまま昇格と言うことになるわ。
皇族の検査合格者では貴女が最年長だし、上が居ないから選択の余地無しなの。」
300pinksaturn:2007/04/15(日) 09:49:56 ID:Ug1xVtwY0
知子3世:「宙軍史上最大の巨艦をいきなり指揮するなんて気が重いなあ。
火星付近で試運転するだけなら良いですが、部隊指揮の経験は無いんですよ。」

朝子10世:「大きくても冥王星で片道1ヶ月と航行期間が短いでしょ。
どうせ豚がGに耐えられないこともあって、生活物資の生産要員は乗せないのよ。
カロンの補給施設を拡張して、生産要員と豚には在来艦で行って貰うことになるわ。
つまり、搭乗員数は多くて10名で済むわけで指揮の手間は軽いのよ。」

知子3世:「なるほど。ということなので、酉山博士よろしく。」

理美:「私はパパを信頼してるから、順番はどうでも良いです。」

冬子:「私は早くやっていただきたいので、最初で良いですよね。」

酉山:「あまり選択の余地はないようですね。承知しました。
急所は漣大佐に頑張って貰うとして、小脳調整技術の確立を急ぎましょう。」

朝子10世:「非人は使い潰しても構いませんから思い切りよくやって下さい。」

酉山:「そこまで酷いことにはなりませんよ。後で使える状態には出来ます。」

朝子10世:「そうですか。使えるようなら核パルス艦の荷物番でもさせましょう。」
301pinksaturn:2007/04/15(日) 10:09:04 ID:Ug1xVtwY0
(帝都宮殿 金星プラットフォーム入札会場)

財部省財務官:「それでは、第一回、北緯60度ラインの3基につき開札を始めます。
入札者は、下級皇族匿名組合、青の公家金星開発有限会社、赤白ファンド、黄緑ファンド、
ビーナスドリームSPC、アイスワールド冷凍機器リース(株)、黒菱管財(株)でした。」

マサ:「7社競合か、余所の公家は連合で来てるようだし結構手強いですね。」

真理亜:「大丈夫よ。うちは自前の航宙士が多いから維持管理コストの点で有利なの。
航宙士が少ないグループは落札しても維持管理の外注費が重いから高額入札はしにくいわ。
黒菱なんか、資金力はあるけど外交官主体のグループだから採算ラインが低いはずよ。」

財部省財務官:「えー、1番札、アイスワールド冷凍機器リース(株)落札価格...」

マオパパ:「やったー、勝ったぞ。リエさん、成功ですよ。」

真理亜:「うっそー!。シビリアン資本が一番手ぇ。」

リエ:「えっへっへっへ。私らアイスワールドでバイトしてた宙軍兵が投資してましてね。
金星で大量に製氷機を使ってるんでミキの実家が大儲けしていたの知ってたしね。
アイスワールドのショーも最近景気がいいんでマオの実家も誘ってみたんですよ。
それで、集まった金で傘下のリース会社を10000%増資して参戦したって訳で。
私も金星の製氷投下作戦で高額ボーナス入ったんで勝負かけてみたんですよ。
手に入れたプラットフォームを拠点に製氷機のメンテ事業をやれますからね。」

真理亜:「うーん、製氷機で儲けるというのは想定外だったな。」

財部省財務官:「お静かに。2番札、ビーナスドリームSPC落札価格...」

マサ:「ありゃあ。2番も獲られちゃいましたよ。ダメかなこりゃ。」
302pinksaturn:2007/04/15(日) 10:10:35 ID:Ug1xVtwY0
財部省財務官:「3番札、青の公家金星開発有限会社、落札価格...」

真理亜:「ご覧なさい。ちゃんと一番安く落とせたわ。これが最良よ。」

マサ:「でも、場所決めは高い順でしょ?。」

真理亜:「地表の情報が少ないから大差ないわよ。金星に長く居たリエなら別だけど。」

リエ:「ひっひっひ。では容赦なく水銀鉱脈の場所を取らせて貰うわね。」

マサ:「え?。金じゃなくて水銀?。趣味に走ってどうするのよ。」

リエ:「趣味じゃないわ。核パルス艦が水銀を大量に消費するって情報があるのよ。」

真理亜:「それは事実ね。でも、鉱脈の場所を知らなければしょうがないわ。」

財部省財務官:「落札企業さんは3時間以内に電子決済を済ませて下さい。
決済できなかった場合は、入札保証金没収のうえ、次点入札者が繰り上げとなります。
これにて、金星プラットフォームの第1回競争入札を終了します。」
303pinksaturn:2007/04/15(日) 10:12:33 ID:Ug1xVtwY0
(酉山科学研究所 獄門台室)

冬子:「...あ、ブレーキ、しまった、ダメ、春男、つかまって...うわぁ。あれ?。」

理美:「冬子大尉、大丈夫ですか?。」

冬子:「あ、理美。ああそうか、今の私があれくらいで怪我するわけないのに。」

酉山:「小脳除去の刺激で事故の記憶がリアルに呼び出されてしまったようですね。
ご安心下さい。再改造手術は成功しています。30分ほど点検させて下さい。
問題がなければ、すぐに首をボディに搭載しますののであと少し我慢して下さい。」

理美:「私も事故の記憶が呼び出されて苦しむのかしら。ちょっと不安だわ。」

酉山:「うむ、同様の現象は想定しないとね。でも、所詮一度は耐え抜いた経験だよ。
理美の場合は怪我が酷かったけど、再び経験したって、精神障害に至るおそれは低いだろう。
悪いことばかりとは限らない。子供の時のことが思い出せるかも知れないよ。」

理美:「そうよね。悪いことばかり心配していてもしょうがないわ。
私だって人並みにセックスできるようになりたいし。」

酉山:「はは、それは嬉しいようなちょっと心配なような...。」
304pinksaturn:2007/04/15(日) 10:35:39 ID:Ug1xVtwY0
(月周回軌道 満漢人民共和国氷隕石採水場)

達磨娘・月面苦力1号:「寒。氷隕石酷寒地獄。火星出発直前休養無、唯重労働過酷。」

達磨娘・月面苦力2号:「禿同。我々消耗品。生存権無視。」

達磨娘・月面苦力3号:「火星飛行生存到着期待薄。近々地球見納。」

採水場司令部:「呉留亜。無駄口禁止。火星船宛水容器運搬至急。時間無。遅延処罰。」

連絡船:「会合地点迄参百秒。火星船操縦員及査察官受入態勢如何。」

採水場司令部:「現在水積込中。火星船連結不許可。移乗者船外活動体勢必要。」

連絡船:「承知。移乗準備済。」

採水場司令部:「水運搬作業大至急完了要求。」
305pinksaturn:2007/04/15(日) 10:40:48 ID:Ug1xVtwY0
(満漢人民共和国 火星査察船蛸部屋)

操縦員:「月面苦力隊、大至急手足取外航行安全鞘収納。」

達磨娘・月面苦力1号:「嗚呼、六箇月間全裸達磨狭小鞘磔。」

達磨娘・月面苦力2号:「磔状態事故発生時脱出困難。」

達磨娘・月面苦力3号:「待遇最低也。」

査察官:「藻舞等、表見員数増強要員。不平発言処刑無問題。」

達磨娘・月面苦力1号:「諸盆。」

査察官:「月面苦力隊収納完了。発進準備良。」

操縦員:「良好。主推進器点火壱拾秒前、九、八、七...」
306pinksaturn:2007/04/15(日) 11:43:07 ID:Ug1xVtwY0
(北米連 火星査察本船)

孫:「スペースシェリフワン接近、司令船・遠距離エンジン分離確認。
おい、お前達いよいよドッキングだ。しくじるなよ。」

メタレア:「後方レーザー測距儀発振開始。遠距離エンジン応答検出。」

メタラニ:「司令船右舷1km通過、前方にて減速中。」

孫:「メタルナ、追跡引継だ。確実に司令船の運動を捕捉しなさい。」

メタルナ:「はーーい。前方レーザー発振...マンドクセ。」

孫:「応答検出はどうした。まじめにやれ。」

メタルナ:「フツー来てるわよ。あ、ちょっと速いってば、やめて、ひっ。」

スージー:「なにをうろたえているの。ドッキングごときで。」

孫:「さすがにサイボーグね。操縦能力高いのは解ったけどあまりおどかさないでよ。
メタレアよそ見するな、後方注意怠らないで。」

メタレア:「やだー、ちびっちゃったわ。あ、遠距離エンジン距離50m。」
307pinksaturn:2007/04/15(日) 11:44:19 ID:Ug1xVtwY0
リンダ:「どんくさい娘達ね。こっちは時間無いから急いでるっちゅうのに。
付き合ってられないわ。こっちで制御引き継ぐからリンク放しなさい。」

孫:「はいはい、任せるわ。全員衝撃に備えなさい。」

メタリカ:「怖いよお。わあっ。おしっこちびっちゃった。」

孫:「ちゃんとおむつしてるでしょ。いちいち気にするな。」

スージー:「よし、連結完了。査察隊は耐Gハンガーに行って。」

孫:「やれやれ、これで3ヶ月間磔で半睡眠状態か。あんまり飛ばさず安全運行で頼むよ。」

スージー:「任せておいて。但し、私らも生命維持限界があるからのんびりできないのよ。」
308pinksaturn:2007/04/15(日) 11:45:06 ID:Ug1xVtwY0
(酉山研究所 獄門台室 pinksaturn.fc2web.com/rimi-gokumondai.htm )

理美:「熱い、熱いよお。パパ助けてー。ぎゃあああ...。」

酉山:「理美、しっかりしろ。もう大丈夫だ。」

漣:「酉山先生、大丈夫ですよ。手術は成功したんです。」

酉山:「あ、私としたことが、つい。」

漣:「さすがの酉山先生も、今回だけは無理ないですね。」

理美:「うう、あ、パパ?。」

酉山:「もう大丈夫だよ。理美は過去の恐怖を乗り越えたんだ。」

理美:「お、思い出したわ。やっぱりパパが助けに来てくれたんだわ。」

酉山:「そこだけは違うな。済まない、助けが遅れて。でもこの国の人が助けてくれたんだ。」

理美:「でも最後にパパが私の体を完全に治してくれるんだわ。」

酉山:「そうだな。よし、さくっとチェックしてボディ搭載してしまおうか。」

冬子:「急ぎましょう。今ごろ火星では核砲弾の製造が始まっていますわ。」

理美:「冬子大尉は性感の方、どうでしたか?。」

冬子:「昨日、事故以来初めてイッたわ。完璧よ。」
309pinksaturn:2007/04/15(日) 12:05:50 ID:Ug1xVtwY0
(青の公家邸)

マサ:「あーあ。短い休みだったなぁ。会社作ったり、入札後の手続きやら忙しかったし。」

真理亜:「有栖の前で、ぶつぶつ言うな。みっともない。今度は火星往復だけの短期任務だし。」

マサ:「火星ごときに”なると”を使うのは勿体ないですね。」

真理亜:「核パルス艦の機関試験は実弾でしかできないけど、3人しか居ない乗員が地上でしょ。
速く向こうに送らないと工事が進まないし、既に向かっている各国査察団に飛行を見せたいからね。」

マサ:「追い越すんですか?。あ、行きは冬子と理美が同乗だから思い切りとばせるか。」

真理亜:「まあね。でも帰りのことを考えるとみどりを慣れさせる必要もあるわ。」

マサ:「全開で行くならちと心配ですね。」

真理亜:「高速時は代わらせるとしても、出航だけはやらせておきたいわね。」

有栖:「お母様方、大丈夫なのですか?。無事帰って下さいよ。」

マサ:「大丈夫よ。私ら冥王星往復だって一度もしくじっていないんだから。」

真理亜:「重要なことは任せないように私が気を遣っていたお陰でしょ。有栖、藻前もこの怠け者の遺伝子持ってるんだから似ないように気を付けるのよ。
留守中はしっかり執事の言うことを聞いて、優良素体を目指しなさい。まだ売春なんかしちゃだめよ。」

有栖:「ご心配には及びません。安心して行ってきて下さいませ。」

真理亜:「よしよし。じゃ、行くよ。」
310pinksaturn:2007/04/15(日) 12:07:44 ID:Ug1xVtwY0
(静止軌道第一工場衛星 ベイ)

管制員:「口腔ハッチ閉鎖確認。ベイ減圧開始。”なると”出航せよ。」

真理亜:「みどり、出して。」

みどり:「リモートボディリンク確立。ひっ、あうううう...下部バーニア点火、微力、あう、抜けない。」

冬子:「そこで性器の力抜くのよ。慌てちゃダメでしょ。」

みどり:「あ、つい。出航はいきなり絶頂から始まるから難しいわ。」

冬子:「何回シミュレーターやったのよ?。大丈夫?。帰り、真理亜侯に迷惑かけないでよ。」

真理亜:「冬子。そんなに心配してがみがみ言わなくても大丈夫よ。みんな最初は似たようなものだわ。」

冬子:「あ、つい、済みません。私もこれから忙しくなるから、子離れしないと。」

マサ:「はは、でもみどりは良いなあ、昔、冬子のうちでパーティやったときのこと思い出しちゃった。」

みどり:「ええ、まあ、あ、あひあひ、ぬ、抜ける。ぬるぽ。ヴァギナルハッチ閉鎖。速度0.5m/s。
コリオリ力相殺、側面バーニア点火、ベイ出口開口確認。運動同期よし。後進バーニア点火。」

真理亜:「工場衛星を出て方位決めまでをみどりが担当しなさい。高加速は理美に頼むわ。」

理美:「了解です。操縦引継待機に入ります。プロトコル起動。」

みどり:「ハッチくぐりました。後進バーニア全開、工場衛星からの距離...2`、転舵します。」

理美:「引継良いですよ。原子炉出力上昇、メインエンジン噴射、過負荷運転開始、補助推進器噴射。」
311pinksaturn:2007/04/15(日) 12:09:31 ID:Ug1xVtwY0
(スペースシェリフワン with 北米連査察本船)

リンダ:「後方高速飛行物体探知。加速度から考えて、鶴っ首こけし船と推測されます。」

スージー:「イオンエンジンの電磁ノイズもあるし、間違いないわね。一応警戒よ。」

リンダ:「査察団の娘達を起こしますか?。どんくさいから役に立つとは思えませんが。」

スージー:「うーん。今回は一応あいつらが政府代表で、私らは運送屋って立場だからね。
もめ事になったら責任はあいつらにあるからなぁ。団長の孫だけ起こしましょう。」

孫:「うう。お、もう着いたの?。」

リンダ:「あいにく違うわ。帝國船らしいのが後ろから迫ってきたので念のため起こしたの。」

孫:「ただの輸送艦じゃないの?。今さら攻撃してくることは無いでしょ。」

リンダ:「まあ一応あんたらが政府代表だからね。もめるなら矢面に立って貰わないと。」

孫:「気になるなら軌道を変えて接近を避けたらどうなの?。」

リンダ:「せっかく最適軌道に乗っているのに外れたら遅れてしまうわ。時間がないのよ。」

孫:「ならば出来ることはないわね。攻撃されたらどうするの?。」

スージー:「私ら今回は戦闘を請け負ってきたわけじゃないから、正当防衛しか出来ないわ。
つまり、被弾してあんたたちが死んでから反撃ってことになるわね。」

孫:「やれやれ。だったら起こされたって意味無いじゃん。耐Gハンガーに戻っているわ。」
312pinksaturn:2007/04/15(日) 12:58:16 ID:Ug1xVtwY0
(”なると”艦橋)

マサ:「前方10万`に大型宇宙船らしきものがありますね。どこかの査察船かな。」

真理亜:「この速度と方向なら火星に向かっているのは間違いないわ。
大本営から査察通告リストが来てるから照合してみようか。ふむ、北米連か。
あれは、スペースシェリフワンよ。ちょっと厭な奴らね。」

理美:「超望遠で辛うじて視認できますが、形状がスペースシェリフワンと違います。
大きさも遙かに大きいと思いますが。」

真理亜:「査察通告書によると査察団の船と合体して送迎を行うとなっているわ。
形状が違うのはそのせいね。そもそもあの船は燃費が悪いけど加速は良いはずよ。
大きな荷物を抱えていなければ火星までなら追い越すのは難しい筈だしね。」

マサ:「向こうも輸送任務か。まあ絡んでこないだろうけど関わりたくないですね。
接近は避けましょうよ。」

真理亜:「あまり大きく避けて時間と推進剤を無駄にしたくないわね。
奴らのミサイル有効射程は200`程度だから500`だけ間隔をとって頂戴。」

理美:「承知しました。側面バーニアを30秒間噴射します。これで良いですか?。」

真理亜:「良いわよ。追い越したら軌道を元に戻して置いてね。」
313pinksaturn:2007/04/15(日) 12:59:22 ID:Ug1xVtwY0
(スペースシェリフワン with 北米連査察本船)

リンダ:「こけし船が僅かに進路を変えました。このままなら最接近距離は500`です。」

スージー:「ほお、射程距離を外して追い越す気か。関わるのを避けてきたようね。
北米宇宙局からは国連経由で査察通告が行ってるから、我々のことは判っているはずよ。
やっぱり、前の紛争もあって警戒されているってことか。ふっ、お互い様ってわけね。」

リンダ:「さらに加速して追い越していきますよ。なんだかむかつく奴らだわ。
大荷物抱えてなければこっちの方がずっと速いのに。ちぇっ。」

スージー:「そんなにいらつくなって。私らは無事往復できさえすれば成功なんだから。」

リンダ:「しっかし、孫たち査察団も役立たずですね。あれで核査察なんか出来るのかしら。」

スージー:「できっこないわね。当局は満漢と帝國のなれ合いを警戒しているのよ。
だから、火星に行って長居の出来る人間なら誰でも良いから送り込んできたんじゃないかな。
政治駆け引きとして、一応野放しにはしないよっていうジェスチャーの意味しかないわね。
そもそも地球からあんなに遠いところでの核実験なんて実害がないのは当たり前でしょ。」

リンダ:「私らまでそんな茶番にかり出されたってことですか。
当局は貴重な戦闘サイボーグをなんだと思っているのかしら。」

スージー:「生きていくためには、たまに割り切ったアルバイトも仕方ないわ。
送迎だけでも私らが姿を現せば威嚇になるから、帝國も無茶をしなくなるでしょうし。」
314pinksaturn:2007/04/15(日) 13:18:56 ID:Ug1xVtwY0
(火星軌道巨大工場衛星 エアロックポート)

管制官:「管制より”なると”へ、第二ゲート通過後中心軸上に静止。
リフトリードに捕捉されるまでその位置を保持せよ。」

みどり:「第二ゲート通過確認。後進バーニア微推力。静止確認。待機します。
いつものベイとは随分勝手が違いますね。ゲートが大きくて中心にあるから楽だけど。」

真理亜:「ここは外国船も入る自由港だから非サイボーグの操縦を想定した設備なのよ。
外国船は係留ポールにスポッと填れる技術がないから、中での移動は磁気リードで引っ張るわけ。
ゲートが大きいのは外国船対策の他に、核パルス推進艦が巨体だからってこともあるけどね。」

管制官:「磁気リード吸着よし。電磁石通電最大。曳航する。動力停止状態で加速圧に注意せよ。」

真理亜:「原子炉アイドルにして。後は管制任せで、停まったら口開けるだけよ。」

みどり:「了解。原子炉落としました。」

真理亜:「知子3世、冬子、理美、試運転成功させてね。」

知子3世:「イオンエンジンより原理は簡単なので、ただ動かすだけなら楽勝でしょう。」

冬子:「船体はともかく、積み荷や装備類が衝撃であちこち壊れる恐れはありますね。」

理美:「荷物番が非人2体だけってのが心細いわ。」

マサ:「そういえば非人2体もすぐに降ろすんですよね。」

理美:「あ、あいつらは酉山研からの借用備品なので管理は私がやりますから。」
315pinksaturn:2007/04/15(日) 13:19:45 ID:Ug1xVtwY0
マサ:「そお。こっちの手が掛からなくて助かるわ。」

みどり:「岸壁に着きました。口開けます。」

真理亜:「よし解散。」

マサ:「岸壁周辺に、外国船狙いの歓楽街が出来て風俗店もやってるんですよね。」

真理亜:「藻前は火星に来てまでそんなことばかり考えているのか。」

マサ:「だって興味あるんだもん。」

真理亜:「まあ、出航まで暫くは暇だから問題はないが、のめり込んで遅刻するな。」


(スペースシェリフワン with 北米連査察本船)

スージー:「入港許可が出たわよ。切り離すから、自力操縦体勢とって。」

孫:「どうしても入港操作をやって貰うわけには行かないかしらね?。
我々だけじゃ危ない気がするんだけど。」

スージー:「時間がない。それにこれが帝國の謀略で衛星内に抑留されたらどうする。」

孫:「どうせ茶番査察だって言うなら、そこまでする意味は無いでしょ。」

リンダ:「一応用心しなくちゃ。何かあったら救出は私らしかできないのよ。」

孫:「ああ、我々は様子見の為の捨て石って訳か。わかったよ。」
316pinksaturn:2007/04/15(日) 13:20:55 ID:Ug1xVtwY0
メタラニ:「えーーっ、捨て石ってそんなの聞いてないわ。」

メタリカ:「抑留って、契約期間過ぎても帰してくれない気なの!。冗談じゃないわ。」

メタルナ:「ゲーセンも無いところに一生閉じこめられるなんて絶対イヤー!。」

孫:「うるさい。さっさと持ち場に着け。以後反抗したら即刻処刑する。」

メタレア:「鬼、悪魔、人でなし。」

孫:「文句は帝國の奴らか、帰ってから当局に言って頂戴。それに契約は自己責任よ。」

スージー:「仲間割れしていて事故起こすなよ。」

リンダ:「まだ抑留されると決まった訳じゃないし、楽しいこともある鴨ね。」

スージー:「よし、分離する。3,2,1...遠距離エンジン分離、微速後進。横移動。
続けて本船分離、前進、距離300m、横移動...後進...遠距離エンジン連結...
距離100,50,よし0。有線制御線オールグリーン、発進。じゃ元気でな。」

孫:「やれやれ、すごい加速で行ってしまったわ。」

メタラニ:「置いてかれちゃった。心細いわ。」

メタリカ:「さすがに機械人間だけあって冷たい娘達だったわね。」

メタルナ:「帝國の娘達もサイボーグでしょ。きっと同じよ。」

孫:「今まで見た奴らはそうでもないわ。セックス好きの遊び人が多いわよ。」
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318pinksaturn:2007/04/15(日) 13:43:00 ID:Ug1xVtwY0
メタレア:「ここでもそうだと良いけど。」

孫:「動かすわよ。訓練通り、測距儀から目を離さないこと。バーニア噴射。」

メタラニ:「工場衛星ゲートまで500m。」


(火星軌道巨大工場衛星 岸壁)

孫:「停まったわ。あんたら4人で様子見てきなさい。無線つけっぱなしでね。」

メタリカ:「一人だけ残るの?。」

孫:「用心の為よ。一応警戒しないと。」

岸壁警備兵:「あれ?。4人ですか。査察通告書では5人となっていますが?。」

メタルナ:「警戒のため一人残ってるわ。」

岸壁警備兵:「そうですか。では最初に上陸するときに入管手続きをして下さい。
ここは自由港区域です。岸壁に併設された歓楽街では自由に行動されて結構です。
税関もありませんが、岸壁のスキャナーで危険物の持ち込みは監視されています。
査察に必要な機材で引っかかりそうなものを揚陸するときは先に言って下さい。
核査察協定により工場区域への自由立入権もありますが事前通告が必要です。
安全上、必ず案内者が随行させて貰います。場所によっては防護服も必要です。」

メタレア:「歓楽街って、料理屋とかあるわけ?。外貨は使えるの?。」
319pinksaturn:2007/04/15(日) 13:44:06 ID:Ug1xVtwY0
岸壁警備兵:「小規模な飲食店街と風俗街、あとゲーセン、コンビニが1軒ずつです。
決済は黒菱カードと提携しているカードならどこのものでも使えるはずです。
無ければコンビニ内で新規契約の取り次ぎをやっています。24時間営業です。」

達磨娘・月面苦力4号:「嗚呼、満腹満腹。五年鰤之満漢全席感激也。」

達磨娘・月面苦力5号:「査察官寛大也。許可感激。」

達磨娘・月面苦力6号:「多分毒味目的。謀略警戒也。」

達磨娘・月面苦力4号:「帰船至急。七号以下交代催促発信中也。」

達磨娘・月面苦力5号:「同時行動参名限定不便也。全体宴会不可能絶望。」

孫:「(満漢全席!。飢餓感絶大也。否。我慢我慢。謀略警戒。様子見続行。)...」

メタラニ:「あら?。マクロバーガーだわ。ギガマクロも置いているわ。」

メタリカ:「ここは空間が限られるから餌に肉骨粉使ってるんじゃない?。大丈夫?。」

店員・空き時間バイトの工場兵:「牛肉はすべてカンガルー国から冷凍で輸入してます。
今のところ宇宙では豚しか飼っていません。ここも味では隣の豚カツ屋に敵いませんね。」

メタルナ:「ふーん。でも北米人としては、マクロバーガーがあると嬉しいわね。」

メタレア:「とりあえず買って帰ろうよ。憎たらしいけど孫の機嫌も取らないとね。
ギガセットポテトLで5人前テイクアウト、カードはこれも使えるのよね。」

店員・空き時間バイトの工場兵:「使えます。では2分お待ち下さい。」

孫:「(折角土産購入。満漢総菜煮汁!。唖、否否謀略警戒也)...。」
320pinksaturn:2007/04/15(日) 13:45:33 ID:Ug1xVtwY0
(核パルス推進艦建造ドック)

華子:「...と言うわけで、一応完成はしているのよ。主要構造物には自信があるわ。
ただ、機器類とか貨物室の小物艤装まですべて推進の衝撃に耐えるか事前検証は無理ね。
それで、長距離航行の前にこの近くで試運転する必要があるわけね。」

知子3世:「未検証の機器って、補助推進器のイオンエンジンとか入ってないですね。」

華子:「いくら何でも、いざというとき船体動かすのに必要な物については検証済よ。
部品単位でなら核爆発を使わずとも火薬で出来るから地球軌道上で衝撃実験したわ。
ただ、レーダーや通信機器類は部品数も多いから完全でない可能性もあります。」

冬子:「すると無事に航行できていても通信途絶の恐れはあるのですね?。」

華子:「そうよ。だから光学観測の可能な範囲で試運転して欲しいのよ。」

理美:「サーバーコンピュータは大丈夫でしょうか?。壊れたら操縦不能になりますが?。」

華子:「かさばるのを承知でディスクは全部半導体型にし、回路基板もダイヤ基板よ。
想定衝撃の3倍でも耐えられるようになっているはずだから大丈夫ね。」

知子3世:「それなら明日の試運転は心配ないでしょう。」

華子:「頼んだわよ。査察団の目の前で飛ばしてみせれば目的に偽りがないと示せるわ。」
321pinksaturn:2007/04/15(日) 14:04:54 ID:Ug1xVtwY0
(翌日)

管制官:「中心軸、回転速度一致、曳航完了。”まりあな”自力移動を許可します。」

知子3世:「後進エンジン全開でも通常艦のバーニア並みにしか動かないからね。
4基のイオンエンジンの出力バランスには気を付けて。新品で癖が判らないでしょ。
原子炉も別々だから最高出力が揃っていても電圧の上昇曲線はバラバラよ。」

理美:「調整しやすいようにゆっくり出力を上げてみます。」

知子3世:「それでいいわ。ゲートが中心軸上だからどんなに遅く通っても良いし。」

冬子:「出力バランスフォローしています。ん?、3番の立ち上がりが遅いわね。」

理美:「了解。1番抑え気味にします。ヨーイング出てますか?。」

知子3世:「今のところ大丈夫。ジャイロの効きも悪いから油断はしないでね。」

冬子:「速度。秒速0.5mに達しました。」

知子3世:「やっと0.5mか。管制、出るまでにかなり掛かるわよ。」

管制官:「他の船の出入りや予定針路への接近は、あと2時間禁じています。
ごゆっくりどうぞ。」

理美:「後方視界が皆無だから不安ですね。」

知子3世:「管制を信じましょ。ぶつかってもこっちが大きいから勝てるわよ。」
322pinksaturn:2007/04/15(日) 14:05:59 ID:Ug1xVtwY0
冬子:「低速ならそうですが、高速からの減速時は障害物が怖いですね。」

知子3世:「核パルスを使っている間はたいてい爆風で吹き払えるから良いけどね。
その前後の方向転換中が魔の時間帯ね。速く回すってことは絶対無理だし。
どうせ前進中だって発見が遅れれば避けようがないんだからリスクは一緒だわ。
高速で事故に遭ったら乗員室が中心付近にある配置だけが頼りよ。」

冬子:「首と大金庫内の予備ボディだけは助かることに賭けるしかないですね。」

知子3世:「でも、今のところ誰も追って来れないから救援手段がないのよ。
船には豚が乗っていないから漂流したら1ヶ月強で飢え死にしてしまうわ。」

冬子:「水を6万dも積んでいるのに飢え死には情けないですね。」

知子3世:「いずれ水と穀物の種から生命維持物資を作れるようになるわよ。」

理美:「エアロック外部ゲート抜けました。後進推力最大にします。」

知子3世:「10`離れたら加速終了ね。そこからすぐに旋回始めて。」


(火星大工場 ベイ側外周観測ドーム)

案内員:「間もなく旋回を終えて針路が合います。核パルスの閃光にご注意を。」

孫:「爆心からここまで、何`離れているんです?。放射線は大丈夫なんでしょうね。」

案内員:「20`ほどです。このドームは分厚い鉛ガラス貼りですので大丈夫でしょう。」
323pinksaturn:2007/04/15(日) 14:06:58 ID:Ug1xVtwY0
孫:「安全なのは、あんたらサイボーグだけってオチじゃないでしょうね?。」

案内員:「ここが危険なら、100万倍の放射線に晒される核パルス艦内は保ちませんよ。
私らの体の耐放射性なんて生身に宇宙服と大差ないんですから。」

満漢・査察官:「納得。満漢式剛体宇宙服絶対安全優位。」

メタラニ:「私たちは心配だからモニター室に引っ込ませて貰うわ。」

孫:「勝手にしなさい。」

達磨娘・月面苦力1号:「北米連査察団鶏根性娘也。笑止千万。」

ス連・査察官:「自分らだけごついドラム缶に収まって、他人をチキン呼ばわりかい。」

達磨娘・月面苦力1号:「非装備問題。鶏不可成長鸛。軟弱者不可成長勇者。」

メタリカ:「けっ。農村戸籍の野蛮人どもが。」

西欧連・査察官:「まあまあ、査察団どうしで挑発は止めましょうや。」

満漢・査察官:「失礼陳謝。月面苦力壱号、無用発言禁止。今後処罰。尚、本官都市戸籍也。」
324pinksaturn:2007/04/15(日) 14:29:14 ID:Ug1xVtwY0
(”まりあな”操縦室)

理美:「予定方位を向きました。旋回終了。完全に静止状態です。」

冬子:「管制より確認、針路上に障害物無し。」

知子3世:「絶対ではないけどね。よし、身体固定再チェックよ。非人の状態もね。」

理美:「OKです。」

知子3世:「核砲弾初弾装填、電磁カタパルト通路開放。通電点検。」

理美:「全て正常です。」

知子3世:「間隔1秒、弾数25発。推進始め。」

理美:「核砲弾連続自動射出開始。」

冬子:「姿勢変動監視系動作中。初弾爆発します。うっ。」

知子3世:「うぉぉぉこりゃすごい...」
325pinksaturn:2007/04/15(日) 14:30:13 ID:Ug1xVtwY0
(火星大工場 ベイ側外周観測ドーム)

孫:「うわあ、眩しい。ん?。消えたぞ。」

満漢・査察官:「巨艦消滅?。失敗自爆?。」

達磨娘・月面苦力1号:「所詮無謀実験。狂気沙汰也。」

達磨娘・月面苦力2号:「乗員運命悲惨也。」

達磨娘・月面苦力3号:「我々運命大差無。南無南無。」

案内員:「良くご覧下さい。閃光が遠くに点々と続いているでしょう。
あ、加速が終わったようです。通信リンクも回復しました。」

西欧連・査察官:「ふむ。一応推進技術として使う事は確かですな。」

ス連・査察官:「だから兵器転用はないとの立証はありませんがね。」

案内員:「それについては、核砲弾の製造工程を確認いただけば良いでしょう。
試作艦が戻ったら射出機もお見せすれば流用が難しいことは理解いただけるでしょう。」
326pinksaturn:2007/04/15(日) 14:31:16 ID:Ug1xVtwY0
(”まりあな”操縦室)

理美:「加速終了。姿勢誤差...0.3度南よりですね。」

冬子:「一応障害物のない針路のようです。」

知子3世:「射出機は異常ないようね。水銀供給系はどうかな。ふん、吹き返しはないな。
ありゃあ、思ったより消費が多いな。加速で配管内の水銀に余計な圧がかかったかも。
こいつの加減はやってみないと判らない項目の筆頭だったしなあ。
今日は足りるから良いけどね。じゃ、180度回頭用意、ジャイロ壊れていないわね?。」

冬子:「あのお、貨物室や非人の点検もしませんと。」

知子3世:「あ、忘れていたわ。やっぱり私って機関長が本業なのよね。ははは。」

冬子:「重量を増やすための水タンクを設置した区画は3箇所で漏れてますね。
水圧は大して変わってないので破損と言うほどではありません。
岩石を積んだ区画は1/3ほどで後部隔壁の変形警報が出ています。
非人は、...脳波があるので生きてはいますね。」

知子3世:「隔壁の変形は亀裂が生じるレベルかしら?。」

冬子:「亀裂は生じていません。」

知子3世:「それなら予定通り引き返せるわね。亀裂でなくて良かったわ。
この速度からイオンエンジンで後進かけたんじゃ帰りに10日かかるからね。
理美、旋回して頂戴。」

冬子:「火星工場との通信リンクは回復しています。音声は無理ですがデータなら送れます。」
327pinksaturn:2007/04/15(日) 14:51:23 ID:Ug1xVtwY0
知子3世:「引き返すとだけ打って置いて。船体の状態は帰れば判ることだからね。」

理美:「旋回順調です。あと2分で180度になります。」

知子3世:「この時間が厭ね。進行方向が見えず、障害物は吹き払えずだからね。」

冬子:「これ以上バーニアを強化するのは難しいのでしょうか?。」

知子3世:「この船体形状では梃子の効く位置が取れないからね。
イオンエンジンをアームで繰り出せれば良いのだけど強度が問題かな。」

理美:「旋回終了。角運動静止しました。」

知子3世:「今度は停まってそのまま逆方向に行くから装填は50発よ。推進始め。」

理美:「初弾出ます。う、う、う、きつー...終わりました。」

知子3世:「火星で止まれるようにすぐ旋回始めて頂戴。点検は旋回中で良いわ。」


(火星大工場 核パルス推進艦建造ドック)

華子:「とりあえず予定通り戻れて上々だけど、結構あちこち壊れたな。」

知子3世:「手直しは大変そうですか?。」

華子:「隔壁の痛みは岩石が破砕されて貨物室内で偏ったせいだからね。
本来の貨物ならこんなことは起きないから大幅な補強は要らないわよ。」
328pinksaturn:2007/04/15(日) 14:52:44 ID:Ug1xVtwY0
知子3世:「ショックアブソーバーはもう少し柔らかくできませんか?。
今回は身体の異常が出ませんでしたが、時間が長くなると心配です。」

華子:「最初なので、底打ちをおそれて思い切り堅めの設定だったからね。
試験飛行の監視データログを見て考えておくわ。少しは改善できるわよ。」

知子3世:「よろしく。ところで、爆風受けの傷みはどうでしたか?。」

華子:「報告してくれたとおり、水銀の滲出量が多めだったでしょ。
そのため摩耗は少なくて済んだのだけど、水銀搭載量の追加が要るわ。
今の容量だと、冥王星まで1ヶ月のペースでは心細いからね。
また運行経費が高くなるけど、安全のためには仕方がないわ。」

知子3世:「まとまった水銀資源が見つからないときついですね。」

華子:「そうね。そして、それが期待できるのもまた金星なのよ。」

知子3世:「鶏と卵か。苦しいですね。」

華子:「地球で価格が高騰するといっても金を超えることはないでしょう。
既にこっそり買い集めているし、帝國の国庫が破産するほどの価格ではないわ。
重い物質だから仕入れ価格低減よりも、地上から上げずに済む方が効果的ね。
金星も重力は地球並みだから、本当は小惑星から取れるのが良いんだけど。」


(ベイ隣接区画 宙軍搭乗員宿舎)

知子3世:「...というわけで艦の整備に15日ほどかかる。
その間しばらく仕事がないので歓楽街で遊んでいるしかないな。
歓楽街はプルトニウム電池の持ち込みが禁止されている。
こういうときのために二人とも地上休養用ボディは持ってきているな?。」
329pinksaturn:2007/04/15(日) 14:53:33 ID:Ug1xVtwY0
冬子:「もちろんですわ。ここの基地に大きな私物庫も貰っていますしね。
これから冥王星との往復が始まっても積み卸し待ちの滞在は多いですからね。」

知子3世:「よし。お互いに手伝って首のすげ替えをしてしまおうか。」

理美:「あの、非人も歓楽街に行かせて宜しいでしょうか?。」

知子3世:「非人どもは酉山研の所有物だから理美の一存で扱って良いわよ。
でも、あいつらに休養の配慮は要らないから艦に置きっぱなしでも良いのでは?。」

理美:「15日も全く使役せずに休ませるのは非人管理規則に抵触します。
それで、歓楽街にアルバイトの口を探して使役するようにしたいのです。」

知子3世:「なるほど。そんな規則気にしなくても良いのに理美は真面目ねえ。」

理美:「満漢料理屋がウエイトレスを求めているのでちょうど良いかと思います。
容姿や逮捕された事件の経緯から奴らは満漢人らしいと言われていますので。
非人に売春のような上等な仕事をさせるのは憚られますから単純労働を選びました。」

知子3世:「売春客になれそうなのがほんの数人じゃあ非人の入る隙などないわね。」

理美:「いずれ外国がここを中継基地に小惑星帯を開発し始めれば商機も増えますね。」
330pinksaturn:2007/04/15(日) 15:53:10 ID:Ug1xVtwY0
(歓楽街 ロイヤル飯店火星大工場支店)

支配人:「こういう単純労働をやる娘が少なくて困っていたのよ、助かるわ。
何しろここは今のところ宙軍兵のバイトしか労働力が得られないでしょ。」

理美:「こちらこそ非人管理規則に基づいて使役できる場所があって良かったわ。
でも、バイトしか使えないここで、よく有名店が出店を決断しましたね。」

支配人:「うちは皇室出資企業なので本店の料理人を副業にしてる娘が居るのよ。
それで火星大工場に歓楽街が計画された時点ですぐに準備を始めていたってわけ。」

理美:「なるほど。桜花、梅花、判ってると思うけど怠けたらボディ外すわよ。
きりきり働きなさい。賃金はこの酉山研名義の口座にお願いします。でわでわ。」

支配人:「あ、お客だわ。いらっしゃいませ。」

孫:「5人だ。個室満漢全席コースで頼むわ。」

メタラニ:「いつも怒ってばかりの団長が飯のおごりなんて珍しいわね。」

孫:「公費よ。どうせ茶番の査察だし、他に面白いこともないからね。
滞在中の食料費は北米宇宙局の宇宙食単価で支払われることになっているでしょ。
あれは地上から打ち上げる前提でバカ高い設定になっているからね。
ここの食材は現地生産が多いからものによっては地上より安いと判っていたの。
それで月での食料積み込みをこっそり減らして予算を浮かせて置いたのよ。
満漢全席でも予算が余るなんて予想外だったけど余っても給与にはならないのよ。」
331pinksaturn:2007/04/15(日) 15:54:24 ID:Ug1xVtwY0
メタリカ:「当局がこんな事に大金使ってるとはね。消費税高いのも道理だ。」

メタルナ:「けっ、私らニートだったからろくに税金払っていないじゃんか。」

メタレア:「遊んでも消費税はかかるわよ。」

桜花:「前菜でございます。」

梅花:「食前酒でございます。」

孫:「...(驚愕。此奴等生存予想外。何故在帝國。否詮索無用、我同様也。)」

桜花:「何か不手際がございましたでしょうか?。」

孫:「いや。仕事疲れでぼんやりしていただけだ。さあ宴会だよ。」

メタラニ:「疲れ?。見てただけで?。やっぱ、放射線にやられたんじゃ?。」

孫:「お前らが使えないから気疲れしたんだ。」

メタリカ:「へっ。大した事していないのにかい。」

メタルナ:「まあ良いじゃん。この前菜は美味いわ。」

メタレア:「うんうん。ここが火星上空だなんて忘れそうね。」
332pinksaturn:2007/04/15(日) 15:56:47 ID:Ug1xVtwY0
(歓楽街 バー”矮惑星の天然氷”)

マサ:「まだ消化ユニットの宇宙持ち出しが出来ないから地上用臓器も簡易構成じゃねぇ。
結局、歓楽街に来たって固形物がダメだと酒かセックスしかやることが無いなぁ。
しかも肝心の売春客が査察団のごく一部にしかなり手がないから競争率すごいし。
とりあえず、今日のところはバーにでも入るしかしょうがないか。ここでいいや。」

ハル:「いらっしゃいませ。」

マサ:「あっ、何でハルがここで商売してるんだよ。」

ハル:「そりゃあ、港に酒場は憑き物ですから。当分ここに来る機会も多いんで。
先日の宙軍人事で火星定期便が増強されたでしょ。私も乗り組むことになりましてね。
入港すれば船の整備や積み降ろしで1ヶ月ぐらい留まることになりますからね。
その間遊んでいても退屈なんで、安いうちにここの権利を買ったんですよ。
いずれ核パルス艦の運行が本格化されれば帰りに積んでくる水が余るでしょう。
水が余れば酒造業も栄えるし、査察団以外の外国船を呼び込めるようになります。
まあ、カロンの水を使う店の一番乗りを目指すって言う拘りもありますけどね。
居ない間は工場勤務員のバイトを10人ほど確保していますから休業は無しです。」

マサ:「でもここはおしっこバースタイルじゃないんだね。」

ハル:「今のところ客は工場勤務員か査察団だけなのでそれは難しいですね。
聞いたところではここの工場は外国人のために放射線遮蔽が徹底しているんですよ。
だから、いずれ一般シビリアンの労働者を導入する可能性があると予想しています。
そうなれば、オサーン客も増えるのでそっちの方が収益が上がるんでしょうけど。」
333pinksaturn:2007/04/15(日) 16:14:04 ID:Ug1xVtwY0
マサ:「いくらここの放射線遮蔽が良くても宙軍艦はサイボーグしか乗れないだろ。」

ハル:「満漢がメインベルトに隕石鉱夫を送り込む計画があるらしいんですよ。
月面基地の増強が一段落したので新たな労働者の投入先を求めているんでしょう。
今以上に月基地を拡張するなら北米連との紛争は避けられないですからね。
それで、ここと月の間に貨客船を就航させ、ついでに一般客も乗せるそうです。」

マサ:「ふーん。でも元々命の安い満漢の船に生身で乗るなんて危ない鴨ね。
満漢当局のことだから隕石鉱夫なんて連中は使い捨ての棄民扱いだろう。」

ハル:「まあ、そうでしょうけど宙軍当局は労働者の自己責任まで干渉しませんよ。
素体になり損ねた落ち零れの命まで国家が管理する必要性は乏しいですからね。
つまり、高給目当てで勝手にやってくるならどうぞって事になるのかと。
この工場衛星はベイに合わせて全体が巨大になっているので空き区画が多いでしょ。
入荷する隕石の処理をできる内部空間があるから採鉱にもシビリアンを使えます。
外国船向けの食料生産とか宙軍兵がやるには易しすぎる仕事も増えるでしょう。」

マサ:「随分気の長い投資ねえ。儲かり出す前に借金で潰れたりして。」

ハル:「私一人の資金じゃそうなるかも。ここは、母とみどりが共同経営ですから。」

マサ:「核パルス艦要員と操舵員か。高給取りサイボーグ一家は良いわね。」

ハル:「貴族様が何を仰いますか。もっとスケールの大きい案件を手がけておいででしょ。」

マサ:「金星プラットフォームのこと?。会社設立やら雑用の手間ばっかりよ。
私は公家の下っ端だから手続きの際はパシリよ。航宙屋の意地で手を出した事業だしね。
仮に金星の地上が降下可能になっても後が大変よ。生きてるうちに儲けなんて無い鴨。
やっぱ水商売は良いわよ。小資本でスモールスタートが出来るし、楽しいし。」
334pinksaturn:2007/04/15(日) 16:16:19 ID:Ug1xVtwY0
(核砲弾工場)

案内員:「ご覧のように核砲弾の外殻はリニアカタパルト用超電導磁石になっています。
外殻の下の空所は前半分が鋳鉄、後半分が水銀で埋められ、その内側が爆縮部です。
後半を水銀で埋めるのは核爆発の熱を吸収し水銀蒸気の爆風で推進力を得るためです。
兵器なら熱線や放射線を出す方が有効ですが、推進用では艦体に損傷を与えます。
また真空中では高熱だけで爆風が生じないので蒸気の元になる水銀を詰めるのです。
仮にこの砲弾を地上で使用しても熱線が少ないため威力は気化爆弾より劣ります。
外殻が耐熱シールド素材でないため宇宙から大気圏に投下しても地上には届きません。
大気圏突入時の摩擦熱で融解してしまうため核爆発を起こすことも出来ないでしょう。」

西欧連査察官:「威力が低いのは承知したが、輸送して航空爆弾とすることは可能ですな。
気化爆弾より破壊力が低くても放射能と水銀による汚染の恐怖で威嚇効果は十分ですよ。
やはり生産個数と搬出状況に関して十分な管理が必要でしょう。テロ対策も確認したい。」

案内員:「プルトニウム239の分離からここの核砲弾組立まで全工程が監視可能です。
各査察団は、製造ライン全体についてここと同じガラス壁を通して随時監査が出来ます。
この監査回廊内に設置された国連のカメラによる24時間監視・録画も行われています。
カメラ内のメディアは3カ国以上の査察団が同時にキーデバイスを挿さないと触れません。
組み立て工場からベイ奥の核パルス推進艦までの搬送路も同様にガラス張りです。
したがって核パルス推進艦への補給以外に核砲弾が持ち出されたら必ず監視にかかります。
組み立て後の検査で不良品が出たときも監視カメラの視界内で解体し素材に戻されます。」

ス連査察官:「テロリストによる砲弾略取の防止体制も説明願いたい。」
335pinksaturn:2007/04/15(日) 16:17:03 ID:Ug1xVtwY0
案内員:「ライン内は金星軌道付近の宇宙空間並みという強い放射線にさらされています。
サイボーグ以外の者が立ち入れば重い放射線傷害を受け、その先長くは生きられないでしょう。
ここから核砲弾を奪った者が生きて地球にたどり着くのは殆ど不可能です。
ラインへ出入りできるエアロックは一般工場側とベイ側の各1箇所だけです。
いずれも20名のサイボーグ兵が24時間警備についています。
大国の正規軍でもない限りこれを突破する兵力を火星まで派遣出来ないでしょう。」

メタラニ:「ぎょっ。ここは放射線大丈夫なの?。」

案内員:「この壁は厚さ2mの鉛ガラスで厚さ1mの飛散防止用樹脂層を挟んであります。
この監査回廊内の放射線レベルは地上と変わりません。ご安心下さい。」

孫:「満漢式の剛体宇宙服を付けた達磨娘ならライン内の放射線に耐えられるでしょ。
それに、エアロックを突破しなくても監査回廊のガラス壁をうち破れば入れるね。」

満漢査察官:「我が満漢人民共和国を疑うのか?。我が国は公認された核保有国だよ。
核砲弾の略奪だなんて、そんな馬鹿なことをする動機がないだろうが。
そもそも歴史上で核を実戦使用した基地外はあんたら北米連だけじゃないか。
自分らが先にやったからって、他人をも疑ってばかりいるのは可笑しいぞ。」

孫:「あの宇宙服はサイボーグと違って簡単だから、民間でも金さえかければ作れる。」

案内員:「ガラス壁は計算上核砲弾が1個誤爆しても耐えられる強度になっています。
これをうち破るよりエアロックを襲撃する方が易しいでしょう。」

孫:「まさか?。核の爆圧を支えきれるとは思えない。」

案内員:「ラインから出る放射性の廃ガスを放出する配管で爆圧も抜ける仕組みです。
爆圧を完全に受け止めるのではなく、抜けるまでのピーク圧に耐えればいいのです。」
336pinksaturn:2007/04/15(日) 16:46:41 ID:Ug1xVtwY0
ス連査察官:「その配管からテロリストが侵入する恐れは無いんですか?。」

案内員:「減圧事故時の被害軽減のため細い配管を多数配置しています。
1本の直径は5aですから人が通れるはずがないです。」

ス連査察官:「工場衛星の外壁を破壊して侵入する余地は無いですか?。」

案内員:「外壁も核砲弾の爆発で破れない厚さがあります。破壊は難しいでしょう。」

西欧連査察官:「テロ対策は十分と思いますな。」

案内員:「他に疑問が無ければ監査回廊に沿って一巡ご案内を済ませたいのですが。
今後も通告から15分以内に当直案内員が対応できる体制を維持していきます。
抜き打ち監査がやりたければ何時でもどうぞ。」
337pinksaturn:2007/04/15(日) 16:47:58 ID:Ug1xVtwY0
(ベイ岸壁 ”なると”口腔ハッチ前)

理美:「早い出航でしたね。お世話になりました。」

真理亜:「見送りありがとう。こっちもたまにはカロンに行くから会えるかもね。」

マサ:「もうちっと遊んでから出たかったな。」

真理亜:「今回は元々急ぎの臨時便だからのんびり出来るわけがないでしょ。
地球に着いたら整備で3ヶ月休養があるから向こうで遊べるわよ。」

理美:「地球かあ。当分帰れないだろうなあ。」

マサ:「核パルス艦要員の数が揃うまでは大変だよね。ずっと飯抜きだし。」

理美:「私らは特別に休養用交換ボディに豚の消化器官を積んで貰ってますよ。
5分で首すげ替え出来るし、火星大工場に入港中は食べ放題飲み放題なんです。」

マサ:「えっ。そんな特権認められていたのか。いいなあ。」

真理亜:「なんなら藻前も核パルス艦に志願するか?。すぐ艦長に成れるぞ。」
338pinksaturn:2007/04/15(日) 16:48:47 ID:Ug1xVtwY0
マサ:「再改造失敗で性感がダメになったら悲惨だから遠慮しときます。」

真理亜:「そうかい。じゃあ、これからも手元でこき使ってやるよ。よし出航よ。
みどり、舌に乗ってるからそのまま引っ込めて口閉めて頂戴。」

みどり:「了解。はぐはぐ。閉めました。管制へ、牽引開始して下さい。」

(酉山研の再改造技術開発により漸く安定的に金星が冷やせる量の氷を確保するめどが立ちました。
次は金星地上を描いて締めたい思っていますが、果たしてどうなるやら。だんだん自信が無くなってきました。
一応次回予告 (36)”屯田兵”)

>>308 落書きリンクミス http://pinksaturn.fc2web.com/rimi-gokumondai.htm 専ブラ以外の人スマソ。
339名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 18:12:14 ID:qyNMBLAu0
>>338
終わってしまうのは残念と思っていたので、分量が増えるのは歓迎w
「屯田兵」でいったん終了するとしても、気が向いたら単発でいいので外伝とか後日談とか前史とか
書いてほしいなぁ・・・

> マイクロボディは、1/20スケールのリモート体です。
> こいつに全神経を接続すると、小人になって手術が出来るというわけですよ。

何か新たな発想を見た気がするw
340名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 04:37:44 ID:8EaxUBOt0
341pinksaturn:2007/04/20(金) 04:07:54 ID:gJTvg5EY0
これは酷いといって非難する人もいるとは思います。
それでも、私は妄想家として、どうしてもこの落書きを書かなければなりませんでした。
http://pinksaturn.fc2web.com/ransyajiken070418.htm
お題:「ショジョニア工大乱射事件」

>>339 妄想が拡散しすぎて収拾がつかなくなるためどこかで区切りをつけたいだけで、シリーズとして完全に終わるのは遠い将来になるでしょう。
342名無しさん@ピンキー:2007/04/24(火) 22:44:36 ID:ssSiEltx0
ho
343名無しさん@ピンキー:2007/04/29(日) 12:10:53 ID:1jgPK6DG0
age
344munplus:2007/04/29(日) 22:04:55 ID:FSldiCPn0
 瞳たちを乗せた飛行機は、何事もなく、離陸に成功し、安定飛行に入った。
そのころには、瞳たちのシートを覆っていたフードが開き、元通り状態になっていた。
その中で、つぐみにシャンパンを飲ませてもらいながら、悪態をつく瞳の姿があった。
瞳(以降、ヒ):「だいたい、動けないダルマ状態で、荷物扱いの移動用カプセルみたいに完全に隔離されて離陸を
経験しなくちゃならないんだから、この身体で飛行機に乗るのは嫌なんだよ。シーズン中の正規の移動時のように、
移動カプセルで完全に、物扱いの移動よりはよっぽどマシだけれど、突然シートの蓋が閉まって密閉カプセルになるのが、
結構、精神的に傷つくんだよね。もっとマシなシートにならないのかなぁ。」

森田(以降、ツ):「ご主人様、あんまり悪態をつかないでください。ご主人様とエマさんは、大切な人物なんですから、
何かの間違いで壊れてしまうとことは、絶対にあってはならないのです。だから、事故に対する最新の処置が
講じられているのです。我慢してください。」

エマ(以降、エ):「そうですよ。瞳さん。物状態も、プライベートの移動の時は一瞬じゃないですか。我慢しましょうよ。」

ヒ:「いや〜〜〜。物扱いの生活になじめないよ〜〜〜。」

立川(以降、マ):「瞳さま、エマの言うとおりですよ。それに、瞳さまもエマも、
スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーという存在なんですから仕方ないです。コスト面から考えても、
絶対に壊れて欲しくないんですよ。だから、そのために必要な対策を講じる必要があるんです。」

ヒ:「真理子さん、冷静に言うな〜〜。やっぱり物扱いなんじゃないか〜〜。」

三咲(以降、ヨ):「速水様。そんなに駄々をこねているとキャビアがまずくなりますよ。せっかく、
カスピ海産のベルーガをお持ちしたのに・・・。」

ヒ:「うわ〜〜い。キャビアだ。キャビアでシャンパンは最高だよね。」

345munplus:2007/04/29(日) 22:06:24 ID:FSldiCPn0
三咲は、森田と立川に向けてウインクしてみせた。森田は、三咲の耳元でささやいた。

ツ:「三咲さん、ご主人様のあやし方のツボをよくご存じですね。」

ヨ:「ええ、F1の頃から、当航空会社をご利用のお客様ですから、多少のツボは心得ております。」

ツ:「さすが!!三咲さんのこと、お師匠と呼んでいいですか?」

ヨ:「それはご勘弁ください。恥ずかしいです。」

ツ:「でも・・・。」

ヨ:「そう言えば、私をお師匠と呼んでいいかと言われたのは、森田様で二人目です。」

ツ:「もう一人いるんですか?」

ヨ:「ええ、リネカー様のサポートスタッフのシュタイフ様にもそのように言われました。」

ツ:「やっぱり・・・。マリアさんもご主人様同様に我が儘いっぱいですものね。スーパーF1界で双璧かもしれません・・・。
彼女とは苦労話が耐えなくて・・・。」

ヨ:「お察しします。」

ヒ:「つぐみさん、何か言った?」

346manplus:2007/04/29(日) 22:07:01 ID:FSldiCPn0
ツ:「いえ、何も・・・。」

ヒ:「そう。私は地獄耳なんだから。」

ヨ:「森田様は、速水様が素晴らしい人物だと申しておりました。」

ヒ:「そうか。つぐみさん。やっぱり、私のこと解ってくれているんだ。嬉しいな。」

ツ:「ええ、ご主人様にこの身を捧げているから当然です。ほら、早く食べないとキャビアなくなっちゃいますよ。」

ヒ:「あっ、大変だ、私のキャビア、もうちょっと残しておいてよ。エマちゃんおいしいでしょ。」

エ:「瞳さん。感激です。飛行機の中でこんな美味しいものが食べられるなんて。」

ヒ:「機内食のメニューも事前に予約しておいたから、メインは、ウインナーシュニッツェルだよ。
デザートはザッハートルテとチーズ、それに、ハンガリーのトカイのデザートワインなんだから。そして・・・。
フッフッフッ。秘密のお楽しみがあるんだよ。エマちゃん期待していてね。」

エ:「何ですか?気になります。」

ヒ:「三咲さん。秘密だよね。」

ヨ:「はい。鈴木様、お楽しみに。皆様のお食事のご用意をして参ります。お楽しみはしばらくお待ちください。」

 三咲はそう言うと、エマと森田にウインクをして、ギャレイに戻っていった。
瞳をキャビアという食べ物に気を向けることで、機嫌を直してしまったのだ。
食べ物に気が行ってしまうと瞳の思考は、そちらに向いてしまい、前後に起こったことは関係なくなってしまうという瞳の
あやし方を三咲が本当によく心得ているのにエマは驚いていた。森田も同様であった。
瞳がかなり前からこの航空会社を利用していなくては、瞳のあやし方など知るわけ無いのに三咲がその方法を
知っていたからである。

347manplus:2007/04/29(日) 22:16:07 ID:FSldiCPn0
ツ:「ご主人様。三咲さんとご主人様はどんな関係なんですか?」

ヒ:「つぐみさん。なんにも怪しまれるような関係じゃないよ。」

ツ:「だって、ご主人様に食事を与えれば、猫みたいに気がそれてしまうこと知っていたじゃないですか?
そのようなご主人様を操る高等テクニックを知っているなんて、何か深い関係があるに違いありませんっ!
私やエマさんや真理子以外にハーレムを広げるのも少し自重してください。そのうち、調整が大変になっちゃいますよ。」

エ:「瞳さん、そうですよ。サッカーチームやラグビーチームを作るんじゃないんですから、
誰彼かまわずに声をかけるのはやめてください。」

ヒ:「つぐみさんもエマちゃんも落ち着いてよ。私、そんなに女ったらしじゃないよ。」

マ:「いいえ、瞳さまは、最近いい女と見ると声をかけてませんか?つぐみに人格を壊されてから、
よりビアンの性癖とS嗜好が強くなっていませんか?」

ヒ:「真理子さんまで・・・。私は、そんなんじゃないですよ〜〜だっ!」

ツ:「いいえ、ご主人様は、エマさんに告られてから、節操というものがないっ!この間も、東京で、
スターティンググリッドでスタート前にレースクイーンの女の子口説いていませんでしたか?その前は、
レポーターとしてきていた紫乃さんと明日美さんを口説いていたし。そう言えば、紫乃さんと明日美さんとの関係は
どうなっているんでしたっけね。」

ヒ:「うっ!つぐみさんは私の身体の一部だから、嘘は付けない・・・。」

エ:「私も気になっているんです。紫乃さんも明日美さんも仕事忙しいみたいだし、瞳さんとのプライベートの時間が
とれていないんじゃないかと思って。」

348manplus:2007/04/29(日) 22:17:23 ID:FSldiCPn0
ヒ:「紫乃ちゃんと明日美ちゃんも、みんなと同じくらい愛しているし、順調に交際を続けているよ。
東京の時のレースクイーンは、ノーマルだったから逃してしまった・・・。」

マ:「やっぱり、声かけているんじゃないですか?つぐみっ、しっかり瞳さまを管理しないと、本当にハーレムになっちゃうよ。」

ツ:「真理子、その通りだね。エマさんも気を付けて監視していてね。」

エ:「合点承知です。ところで、三咲さんとの関係はどういう関係なんですか?」

ヒ:「彼女との関係なんて、それは誤解だよ。何の関係もないよ。エマちゃん安心してよ。」

エ:「本当ですか?また私、拗ねちゃいますよ。」

ヒ:「エマちゃんが拗ねちゃうような関係は神様に誓ってないよ。第一、彼女と知り合ったのは、
私がノーマルだったF1レーサーの頃だもの。それに、彼女もノーマルの彼がいるんだもの。」

エ:「彼女の彼氏を知っているんですか?」

ヒ:「うん。みんなも知っている男だよ。私は、二人のデートの時のダシに使われたんだよ。
三咲さんを同じ日本人女性だから、誘い出してくれと言われてね。」

エ:「三咲さんの彼氏って一体誰なんですか?」

ヒ:「エマちゃん知りたいの?」

349manplus:2007/04/29(日) 22:18:09 ID:FSldiCPn0
エ:「はい。みんなもそうだと思いますよ。つぐみさんも真理子さんも聞き耳立てて、耳がダンボ状態ですよ。」

ヒ:「それじゃ言うわよ。でも、まだ、秘密だから、黙っていてね。マリアにも、ジャンヌにも内緒だよ。」

エ:「鈴木エマは、たとえ、石にされようと口は割りません。」

ヒ:「よし、いい心がけだ。三咲さんの相手は、リカルドなの。」

エ:「え〜〜〜〜〜っ!!あの堅物で内気なリカルド=ポンテなんですか?」

ヒ:「そうだよ。みんなが知っているあのトミタのリカルド=ポンテ。」

ヨ:「エヘン、エヘン。ひとみ〜〜〜っ!あれだけ言わないって約束したじゃないの。話が違うじゃない。この裏切り者がっ!」

ヒ:「うわっ!本人に聞かれていたか・・・。でも、この娘たちは、私の配下の者だから大丈夫だよ。」

ヨ:「まったく、ノーマルだったあんたが、この一年でずいぶん変わってしまったこと。」
ヒ:「この娘に仕込まれたんだよ。」

瞳が森田の方を見た。

ヨ:「嘘おっしゃい。もともと、その素質があったんでしょ。まったく。これじゃ貴方の彼氏がかわいそうよ。」

ツ:「三咲さん、急に人が変わっちゃったみたいだけれど、ご主人様とは、昔から親しかったんですか?」

森田が三咲に尋ねた。

350manplus:2007/04/29(日) 22:28:23 ID:FSldiCPn0
ヨ:「実は、瞳が彼の代わりに声を私にかけてきて、その後、瞳とは馬が合うから、食事とか一緒にしたりして話していたら、
出身の中学が一緒だったんです。知り合ったのは、4年前にF1の移動でうちの航空会社を使ってくれたのが
きっかけだから、4年の付き合いなんですが、共通の知り合いが多いことで意気投合しちゃって・・・。」

ツ:「だから、ご主人様の操縦法を熟知しているんですね。」

ヨ:「中学で一緒といっても、クラスが違っていたから、そういえばいたっけという程度だったんですけれど、
共通の友人から瞳の調教法は伝授されて、それを実際に実践してみて学びました。」

ヒ:「好恵。私は、動物じゃないよ。調教なんて言わないでよ。」

ヨ:「うるさいっ!人の秘密をベラベラしゃべりおってっ!」

ヒ:「ごめんよ〜〜う。もう二度としないから許して。」

ヨ:「まったくっ!森田様も、鈴木様も、立川様も、早く、目を覚ました方がいいですよ。」

エ:「そんなことないですっ。瞳さんは、素晴らしい先輩なんです。」

ヨ:「鈴木様、お気持ちは解りますが、魔女にだまされてはいけませんよ。」

ヒ:「私、魔女じゃないもんっ!」

ヨ:「まったく!F1の頃は、こんなに女ったらしになるなんて思ってもいなかったわ。」

ヒ:「ところで、リカルドとの仲は順調なんだ。」

ヨ:「話をそらすなっ!」

351manplus:2007/04/29(日) 22:29:33 ID:FSldiCPn0
ヒ:「そう言えば、リカルド、再来年には引退するかもしれないって言ってたな。」

エ:「瞳さん、そんなこと何処で聞いたんですか?」

ヒ:「うん。本人からもちょっと聞いたけれど、パパから聞いたんだ。」

エ:「パパから〜〜っ!?パパって一体誰何ですか?」

エマが素っ頓狂な声を機内に響かせた。

ツ:「エマさん。ご主人様のパパって言うのは、トミタの美濃田監督です。」

エ:「瞳さんのお父さんでもないし・・・。」

ヨ:「鈴木様。カマトトぶるのはやめなさいっ!」

三咲も、とうとう、瞳たちのペースにはまって会話の仲間に加わってしまい、壊れてしまった。

エ:「三咲さん。ごめんなさい。私も、現代の大和撫子なのでパパの意味を知っています。」

ヨ:「判ればよろしい。」

エ:「でも、何で、瞳さんは、美濃田監督をパパにしているんですか?」

ツ:「そこが謎なのよ。ご主人様と美濃田監督のつながりが・・・。でも、美濃田監督も瞳ちゃんって呼んでるし・・・。」

352manplus:2007/04/29(日) 22:30:10 ID:FSldiCPn0
マ:「それに、瞳さまの乗っている車、トミタの車もあったと思うんですけれど。普通、他チームの車を自分で
買えないから、つぐみの名義で買っているのかと思っていたんだけれど・・・。」

ツ:「真理子。あれは、誰かが送ってくるんだけれど、妻川監督も、柴田チーフも、ご主人様の車の話題に
触れたがらないから、おかしいと思っていたんだけれど、ひょっとして、そのパパからの贈り物なんだと今、
話を聞いていて気がついたわ。」

ヒ:「ばれてしまったか。墓穴掘ったかな・・・。これには深いわけが・・・。」

ヨ:「それはいいけれど、リカルドがぼやいていたわ。瞳がスーパーF1に参戦して、勝てなくなってきたところに、
エマちゃんやジャンヌが参入したから、そろそろ俺も引退だって。」

エ:「三咲さん。リカルドそんなこと言っているんですか?まだまだ、私なんか、リカルドの足元にも及びません。」

ヨ:「エマちゃん。ありがとう。でも、彼も年齢的に再来年あたりが引退の時期なのよ。」

エ:「そんなこと・・・。」

ヒ:「エマちゃん。私たちスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーは、マシンと直接神経系統を
接続しなくちゃならないから、神経組織の老化による反応速度の低下が、大問題なんだよ。やっぱり30を過ぎると、
現役を続けるのはかなり厳しいと思うよ。」

ヨ:「瞳の言うとおりなんです。彼もかなりきついみたいで・・・。若手も育ってきたし、“プリンセスヒトミ”も
参戦してくれたから、自分の花道は出来たと言っていました。トミタの美濃田監督も後継者の目処がついて、
彼に相談して、その人選に彼も納得したみたいですし・・・。頃合いかもしれませんね。それに、現役引退したら、
結婚することになっているんです。そのようにプロポーズされたんです。」

ヒ:「好恵。好かったね。おめでとう。ところで提案なんだけれど、クリスマスか新年会に参加しなよ。マリアも喜ぶし。」

ヨ:「瞳、判ったわ。出来れば両方に参加させてもらって好い?」

353manplus:2007/04/29(日) 22:40:37 ID:FSldiCPn0
ヒ:「大歓迎だよ。」

機長:「うちのキャビンアテンダントも一緒になってにぎやかにおくつろぎ頂けて何よりです。」

瞳たちの個室に機長が入ってきた。

機長:「高木さん、ずいぶんお久しぶりですね。」

エ:「えっ!瞳さん、機長とも知り合いなんだ。」

ヒ:「エマちゃん、これには深い訳が・・・。」

機長:「確か、瞳さんが私の操縦する便に乗っていただいたのはF1の1年目のシーズンの終わりの時期でしたね。
そうだっ!時期も便も同じでしたね。」

ヒ:「ええ・・・。」

機長:「あれ以来、この時期の成田−ウィーンの便への瞳さんのご搭乗が何故か無いのです。会社が、
瞳さんを私の操縦に乗せたくないみたいですね。」

ヒ:「高木さんを私が避けているみたいで嫌ですよね。」

機長:「本当ですね。ところで、帰り便のあの荷物どうしました。かなり大きなカプセルのような荷物でしたよね。
かなり厳重に梱包してありましたが、何か特殊な動物でも密輸したんですか?」

ヒ:「そんな訳ないじゃないですか・・・。そんな法律を犯すようなことはしていません。チームの重要な部品だったんです。」

354manplus:2007/04/29(日) 22:41:15 ID:FSldiCPn0
機長:「そうだ、そう言えば、特例で、税関も他の積み荷とは別に検疫していましたね。確か、カンダスーパーガールズの
チーム監督の妻川さんが、立ち会うためにスポットまで税関の係員と一緒に荷物を直接受け取りに来ていましたね。
よっぽど重要な荷物だったんですね。」

ヒ:「そうなんです。チームの最新機材をウィーンカンダの研究所から運んできたんです。」

機長:「でも、チームの最新機材って、生ものなんですか?動物検疫官が立ち会っていたようでしたが?」

ヒ:「まっ、まあ・・・。」

ヨ:「機長、ヒッ、瞳っ、いえっ、しっ、失礼しました。速水様が困惑されているではないですか?カンダ様の社内の機密を、
私どもが詮索するのは失礼かと・・・。」

機長:「三崎君の言うとおりだな。失礼しました。それでは、私は、コックピットに戻ります。それではどうか楽しい空の旅を。」

高木はそう言って瞳たちの個室を出て行った。



エ:「ところで、クリスマス休暇中のウィーンカンダから研究開発機材を預かれる訳はないですよね。それに検疫なんて。
瞳さん、中身は何なんですか?」

マ:「そうです。エマの言う通りです。中身を教えてください。三咲さんの慌てようからして、
何かとんでもないものを運んでいたような気がするんですが・・・。」

ヨ:「瞳、私、食事の準備をするから、ちょっと失礼するね。」

三咲が、そそくさと個室のキャビンの後方の専用ギャレーに戻っていき、ギャレーのカーテンを閉めてしまった。

355manplus:2007/04/29(日) 22:41:51 ID:FSldiCPn0
ヒ:「ちっ、ちょっと!好恵っ!逃げないでよっ!」

瞳の声など三咲は聞くはずもなかった。一目散という言葉がピッタリのような見事な逃げ足であった。

ヒ:「まったくっ!ずるいんだから、都合が悪くなるとすぐに逃げるんだから。リカルドとの仲を裂いてやるっ!」

ツ:「ご主人様、こわっ!でも、その積み荷の中身って何なんですか?」

マ:「あっ!つぐみ、わかったような気がする。」

ツ:「真理子、私もわかった。」

エ:「つぐみさんも真理子さんもずるいです。私にも教えてください。瞳さんの運んでいた荷物って何なんですか?」

ヒ:「3人とも、変な詮索はしないのっ!私も、カンダにいたいから、この話題には触れないように・・・。」

ツ:「ご主人様の運んでいた荷物の中身は、マリアさんだっ!」

マ:「つぐみ、間違いないわよ。」

エ:「そうか、御乱交の続きを日本でするためにマリアさんを隠密で運ぶために積み荷扱いにしたんですね。
でも、妻川監督が受け取りに来ていたという話ですよ。それに、いくら無茶苦茶をする瞳さんでも、人一人を運ぶのに、
荷物扱いにするためには成層圏を飛ぶ飛行機の荷物室というのは、生身の人間には過酷すぎませんか?
私たちスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーならいざ知らず。そのころのマリアさんは、生身の人間ですよ。」

マ:「エマの言う通りね。と言うことは、裏に関与する人間がいて、大掛かりな拉致ルートを使ったに違いないわね。」

ツ:「真理子、その考え方が妥当だわね。そのくらいの大掛かりな仕掛けを指示できるのは、
妻川監督の関与があったとしか考えられないわ。」マ:「その人物の関与しかないわね。」

356manplus:2007/04/29(日) 22:54:30 ID:FSldiCPn0
エ:「つぐみさん、真理子さん、どうしてですか?」

ツ:「だって、エマさん考えてご覧なさい。妻川監督だつたら、スーパーF1にも関与するカンダの常務取締役よ。
成層圏で人間を荷物として運ぶくらいの生命維持カプセルを会社の技術陣に指示して作らせるのは簡単よ。」

エ:「と、言うことはですよ。瞳さんとマリアさんが勝手に御乱交の続きをするために、
東京で初日の出暴走をしたのではなく、監督も関与していた可能性があると言うことですか?」

マ:「エマ、つぐみの言う通りだわ。だから、瞳さまが、さっき、空港で、監督に向かって“一人だけいい子になるな!”と
叫んでいたんじゃないかしら。」

エ:「真理子の見方が妥当ね。ご主人様、私たちはご主人様の味方です。私たちには真実を白状して、
楽になったらどうですか?」

ヒ:「うっ!つぐみの親分にはかなわねえや。白状しやす。」

ツ:「よかろう。ご主人様、早く楽になってくだせえ。」

マ:「つぐみ、ひとみさまにもう一つ聞いておくことがない?」

ツ:「そうね。それも、ご主人様に白状してもらいましょう。」

エ:「つぐみさん、真理子さん。もう一つって何ですか?」

マ:「エマ、それはね、三咲さんがどうして、そそくさと逃げていったのかよ。」

ツ:「エマさん、そうなの、事実を知っているだけじゃなく、その時のことに関与している可能性があるし、
口止めに何をもらったかよ。」

357manplus:2007/04/29(日) 22:55:06 ID:FSldiCPn0
エ:「それは重要ですね。私たちも、妻川監督を脅せば法外な口止め料が手にはいるかも。」

ツ:「エマさんって、やっぱり怖ろしくない?」

マ:「私もそう思ったわ。彼女のサポートスタッフとして、彼女をこんな風に育てた覚えはないわ。」

エ:「二人とも、今は、瞳さんを追いつめるのが先です。私のことは二の次にしてください。」

ツ・マ:『そうね。瞳さん(さま)、白状してっ!』

ヒ:「うわっ!つぐみさんも真理子さんも声をそろえて私に白状するのを迫らないでっ!
怖いよぉ〜〜!わかりました。全てをお話しします。」

ツ・マ・エ:『よろしい!』

三咲がオードブルを持って戻ってきて、瞳を冷やかした。

ヨ:「どっちがご主人様かわからないじゃない。ひょっとして、瞳がみんなの愛奴なの?」

ヒ:「まったくっ!好恵ったら、ずるいんだからっ!肝心なときに逃げちゃって、親友を裏切るんだから・・・。」

ヨ:「そっ、そうかしら・・・。オードブルは、黒海産のベルーガのキャビアとフランス産フォアグラのソテー、
黒トリュフ添えです。ワインは、速水様ご依頼のオーストラリア産甘口ワインのノーブルワンです。お楽しみ・・・。」

ヒ:「好恵っ!話をそらすんじゃ・・・。」

エ:「瞳さん、早く食べないと冷めちゃいますよ。やっぱり、世界三大珍味は最高です。
それも、飛行機の中でこんなフルコースが味わえるなんて、もうっ、最高っ!瞳さんの愛人になって好かったっ!
もう離しませんよ。愛するご主人様っ!」

358manplus:2007/04/29(日) 22:56:03 ID:FSldiCPn0
マ:「本当、エマ、絶対に瞳様を放しちゃダメよ。私も、瞳様以外のご主人様は考えられないもの。ほんとうにおいしいっ!」

ヒ:「こらっ!そっちの席の二人、サクサクと食べるんじゃないっ!くそ〜〜〜っ!つぐみさん、私たちも食べよう。
食べながら話をするからね。」

ツ:「ご主人様、怒らないでっ!ところで、話の続きを聞きましょうか。」

ヒ:「ねえ、つぐみさん、一口食べてからにしようよ。」

ツ:「ダメですっ!ご主人様はしゃべってから、ワインと食事をあげますっ!」

森田は、そう言って自分の口にキャビアを運んだ。

ツ:「おいしいっ!三咲さん、最高です。」

ヨ:「お気に召していただけましたか?」

ツ・エ・マ:『最高です。』

3人が口を揃えた。

ヒ:「ぶ〜〜〜〜っ!何で私だけお預けなんだよ〜〜〜っ!何でもゲロします。刑事さん、お慈悲を〜〜〜っ!」

ツ:「よしっ。それなら、手荷物の中身のことを離してもらいましょうか?」

359manplus:2007/04/29(日) 23:05:32 ID:FSldiCPn0
森田が瞳に詰め寄るのを見て三咲が吹き出した。

ヨ:「ぷっ!」

ヒ:「好恵っ!何がおかしいんだよぉ〜〜〜。助けてよ〜〜〜。」

ヨ:「どっちがSだかわからないわね。」

ヒ:「しょうがないでしょ。日常生活では、手脚がない私たちスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーは、
サポートスタッフ無しでは何も出来ないんだから。好恵だって、リカルドの手脚がないことをいいことにして、
サポートスタッフと一緒にリカルドをいじめているじゃないのっ!最近は、リカルドのサポートスタッフも
好恵にお仕えしているみたいだし、奴隷が私生活で二人もいるじゃないっ!好恵だってっ!」

ヨ:「し〜〜〜っ!瞳っ!それ以上余計なこと言うとお仕置きするよっ!手脚がなければ、瞳だって、
私に従わなくちゃいけないんだからねっ!私生活をこんなところでばらすんじゃないよっ!」

ヒ:「うぇ〜〜〜ん。好恵女王様、余計なことは言いません。ご勘弁ください。」

エ:「三咲さんも、瞳さんとキャラがかぶっているんですね。だから、親友でいられるんですね。わかるような気がします。
類は友を呼ぶって言うか・・・。」

ヒ・ヨ:『エマちゃん、余計なこと言うとあとでお仕置きだよっ!』

エ:「うわ〜〜〜ん。瞳さんと三咲さんがツープラトン攻撃を仕掛けてきた〜〜〜。怖いよ〜〜〜。」

ヒ:「エマちゃん、いい子ぶるんじゃありません。自分だって、少しSキャラ持っているくせにっ!」

360manplus:2007/04/29(日) 23:06:09 ID:FSldiCPn0
ヨ:「そうね。彼女、少しSキャラを持っているかもね。」

エ:「三咲さん、そんなことありません。」

ヨ:「鈴木さんは、自分では気がつかないだけなんじゃないかしら?あんなに瞳に敵愾心を抱いていた時期が
あると言うことは、Sキャラを持っている証拠だと思うわ。」

マ:「三咲さん、エマのサポートスタッフとしての見解なんですが、エマの瞳様への敵愾心は、幼児的なもので、
自分の理解の範囲を超えたものに対する警戒心と反発と瞳様を自分だけのものにしたいという独占欲の裏返しから
来るもので、決して、Sキャラの現れではありません。従って、エマは、根本的には、かなり重度のMであって、
自分が誰かに寄り添っていたいという心の裏返しが、瞳様への反発心となって具現化し・・・。」

エ:「真理子さん、勝手に人の心理を分析しないでくださいっ!」

ヨ:「立川さんの分析はその通りかもしれないわね。鈴木さん、やっぱり可愛いわね。瞳の周りは
みんな可愛いキャラばかりで羨ましいわ。しかも、美女と美男だけときてるんだもん。」

ヒ:「リカルドだって、格好いいじゃない。それに、サポートスタッフのルカだって美男子だし、
好恵もいい男捕まえているじゃない。」

ヨ:「美形の女の子が欲しくなっちゃったの。それに、リカルドも、ルカも従順なだけだしね。第一、
女に負けるような男が格好いい訳・・・?」

エ:「その女って、誰ですか?」

ヨ:「鈴木さん、ここに一匹いるでしょ。」

361manplus:2007/04/29(日) 23:06:45 ID:FSldiCPn0
エ:「瞳さんのことですか・・・。」

ヨ:「そうよ。瞳やマリアの女の方が強いなんて、男としてだらしないと思わない?
スーパーF1の男どもときたら情けないったらないわ。」

エ:「でも、瞳さんやマリアさんは、女の格好をした魔物みたいなものだから、女というのは不適切だと思う・・・。」

ヒ:「エマちゃんっ!お黙りなさいっ!私のどこが魔物なのよ。こんなかわいい乙女をつかまえて。」

ヨ:「瞳の何処が可愛いのかはわからんが、だらしない男子を飼うのと同時に瞳を見ていると
可愛くて強い女の子を持ち物にしたいと思うこともあるのよ。」

ヒ:「ぶ〜〜〜っ!私のこと可愛くないって何よ。傷つくなあ・・・。でも、好恵、羨ましいだろ?
私はこんなかっこいいおなご衆に囲まれておるぞ。」

ヨ:「くやし〜〜〜っ!瞳には食事のサービスをしないようにしてやるっ!」

ヒ:「ちょ、ちょっと待って〜〜〜っ!好恵さま、仲良くしようね。ウィーンに着いたら、
私とマリヤの愛奴どもをお貸しても構いません。如何でしょうか?」

「よしっ!その条件飲んだ。」

ツ・エ・マ:『こわ〜〜〜っ!私たちは物じゃないっ!!』

ヒ:「でもね。好恵はこんなこと言っているけれど、リカルドを溺愛しているからね。
だから、ルカも溺愛しちゃうんだよ。リカルドとルカがMの同性同士でしかも、
二人ともノーマルだったというのが意外だったよ。」

ツ:「ご主人様を私たちが愛してくださるようにお師匠はポンテとそのサポートスタッフであるルカ=ロッシを
愛しているんですね。羨ましい関係ですね。」

362manplus:2007/04/29(日) 23:19:32 ID:FSldiCPn0
ヨ:「森田さん、ありがとう。そう言ってくれると嬉しいわ。」

ツ:「そうだっ!ご主人様。お師匠さまも私たちのクリスマスパーティーに参加してもらえるんですよね。楽しみです。」

ヒ:「そうだね。でも・・・、好恵が迷惑じゃない?リカルドと愛を語るんだろうし。」

ヨ:「ううん。リカルドは、トミタの本社に行っちゃっているから、正月に東京のホテルを予約してあるんだ。
だから、フリーなんだよ。」

ツ:「じゃ、お師匠も参加ということで決まりですね。」

ヨ:「よろしくね。久しぶりに、マリアと瞳と飲むのは・・・。楽しみだな。ついでに、森田さんをおみやげに・・・。」

ヒ:「だめ〜〜〜っ!!絶対っ!」

ヨ:「冗談だよっ。瞳は、森田さんのことになるとムキになるんだから。でもしょうがないか。瞳にとって大切な人なんだよね。
森田さんにとっての瞳も同じだし。羨ましいな。二人の関係。」

ツ:「私にとっては、ご主人様は、本当に二度と出会えない人なんです。」

ヨ:「何か、ヒトミと森田さんの関係、妬けちゃうわ。」

エ・マ:『本当です。』ヒ:「私は、美形の男の子の奴隷が欲しいのだがのう。」

ツ:「こらっ!ご主人様っ!何人毒牙にかければ気が済むんですかっ?!私でしょ、エマでしょ、真理子でしょ、
紫乃さんに明日美ちゃん、それに・・・。」

363manplus:2007/04/29(日) 23:20:11 ID:FSldiCPn0
ヒ:「つぐみさん、もう一人はまだ秘密だからね。また、パパに叱られちゃう。
それに、この道に私を染めたのはつぐみさんなんだからね。責任はとってもらわないと。」

ツ:「・・・・・・。」

エ:「何か、瞳さんとつぐみさんの関係は怪しいんだよな。それに新たな女の影があるなんて・・・。
ところで、つぐみさん。三咲さんが加わって、女王様が3人になると何か怖ろしいことが起こるような気が・・・。
そういえば、それに、ジャンヌのサポートスタッフのマリーも加わるから、女王様4人になりますよ。」

ツ:「エマさん、大丈夫よ。クリスマスだから。」

マ:「つぐみ、クリスマスだから大丈夫なんて言う根拠は何なの。」

ツ:「だって、キリストが降誕した日だもの、魔物は魔力を発揮できない特別な日だと思うわ。」

エ:「真理子さん、つぐみさんの言うとおりですよ。クリスマスなら、魔力が殺がれますよ。」

ヒ:「私と、好恵とマリア、それにマリーを魔物扱いするんじゃないっ!」

マ:「エマも、つぐみも考えが甘いよ。瞳さまもマリアさんもクリスマスや正月といった洋の東西を問わずに
神様の集まる神聖な日に暴れ回るだけの魔力を持っているんだよ。」

ヒ:「だから〜〜〜っ!私たちを魔物にするなっていっているんだよ〜〜。」

ツ:「あっ!忘れてた。ご主人様、事件の真相を話してください。事件に関与していた謎の人物は?ああ〜〜〜っ。
フォアグラとこのワイン合います。美味し〜〜〜〜いっ!」

ヒ:「あっ!つぐみさん、ずるいよ〜〜っ!自分だけ食べちゃダメだよ〜〜っ!わかったから、話すよ。
だから、一緒に食べようよ。」

364manplus:2007/04/29(日) 23:20:52 ID:FSldiCPn0
ヒ:「わかりましたっ、話すから、みんな聞いているんだよっ。」

ツ・マ・エ・ヨ:『はいっ!』

ヒ:「好恵も一緒になって声をそろえるなっ!事件を知る生き証人のひとりだろうがっ!」

ヨ:「えへっ。そうだった。お続けください。メインディッシュのワインを冷やしてこよっとっ!
魚には、アルザスの白のリクエストだったわね。」

ヒ:「好恵さま〜〜〜。魚は大間産のマグロの頬肉のフリッターだったよね。」

ヨ:「都合が悪くなると“さま”を付けるんだからっ!まったくっ!スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーの
乗客の中でも我が儘なリクエストの双璧は瞳とマリアなんだから、そう言えば、帰りの日本便のファーストの
乗客名簿には、マリアの名前もあったよね。今回は、彼女、積み荷じゃなく乗客なんだ・・・。
あっ!!つい、言ってしまった。」

ツ:「やっぱり、あの時の積み荷の中身というのは、マリアさんだったんですね。」

ヒ:「好恵っ!口が軽すぎなんだから。」

ヨ:「ごめん。」

ヒ:「仕方ない、このキャビン内だけの秘密だよ。ロイド会長からも口止めされているし、溝口社長からも、
このことは忘れてしまえと言われているんだけれど、一人だけいい子になっているヤツがいるから、気分が悪い、
みんなには話してあげるね。」

ツ:「ご主人様、その“いい子になっている奴”って妻川監督ですね。」

ヒ:「そうだよ。」

365manplus:2007/04/29(日) 23:31:13 ID:FSldiCPn0
マ:「瞳さま、妻川監督は、その事件にどのように関わっているんですか?」

ヒ:「順を追って話すからね。待っていてね。」

エ:「でも、瞳さんとマリアさんに罪をなすりつけて一人だけいい子になるなんて、許せない。監督だって、
カンダの重役という地位があるんだから、もっと大人になって欲しいですっ!」

ヒ:「エマちゃん、熱くならないの。恵美さんだって、会社の重役としての面子もあるし、会社の重役が酔った勢いとはいえ、
しでかしたことは、当時のカンダの情勢としては重すぎることだったからね。その点、私とマリアが暴走したことにすれば、
馬鹿娘たちのしたことで社会的には軽く済むからね。」

エ:「でも、瞳さんとマリアだけのことにしただけならいいですけれど、今日も、空港で“釘を刺しに来た”なんて、
白々しいです。」

ヒ:「でも、私とマリアも暴れたのは確かなんだから仕方ないよ。私とマリアは昼間じゃないと新宿の歌舞伎町に
お出入りできなくなっちゃったのも事実だからね。でも、渋谷も、青山も六本木も銀座も残っているのも事実だからね。
東京は広いのさっ!」

ツ:「ご主人様、あまり、御乱交の箇所は広げない方が・・・。そろそろ、六本木あたりもお出入り禁止に
なるんじゃないかと冷や冷やしているんです。」

ヒ:「え〜〜〜いっ!うるさいっ!うるさいっ!楽しく飲んで何が悪いっ!六本木がお出入り禁止になるのなら、
好恵もお出入り禁止になるということだぞっ!」

ヨ:「森田さん。瞳の機能を停止させてしまってっ!ウィーンまで静かなフライトにしましょうよ。」

ヒ:「そうしたいのは、山々なんですが、緊急停止モードを使うと後のメンテナンスが大変なんです。
生体部分の世話も大変な上に、機械部分のメンテナンスが加わったら・・・。トホホです。」

ヨ:「そうか・・・。難しいんだね。」

366manplus:2007/04/29(日) 23:31:50 ID:FSldiCPn0
ヒ:「こらっ!そこの二人、私をダメなロボットのような扱いをするんじゃないっ!」

ツ・ヨ:『でも・・・。本当のこと・・・。』

ヒ:「喧しいっ!本題に入るぞっ!好恵とつぐみさんの口を塞いでしまうんだっ!真理子さん頼むっ!」

マ:「はいっ!瞳さま。」

ツ:「こらっ!真理子、私と三咲さんを裏切るなっ!」

マ:「いいえ。私は、瞳さまの奴隷です。瞳さまのお言いつけには従わなくてはなりません。」

ヒ:「真理子さん。いい子だよ。」

マ:「ありがとうございます。つぐみなんか放り出して、私をサポートスタッフにしてください。」

ツ:「真理子、そんなこと出来るわけないだろうがっ!」

ヒ:「つぐみさんの言うとおりだよ。真理子さんの申し出に答えられないのは残念だけれど・・・。」

ツ:「ご主人様っ!言っていることが解りませんっ!私を見捨てないでください・・・・・・。」

森田は、思いの丈を吐き捨てると森田の瞳から涙がこぼれ落ちた。

ヒ:「ツグミさんを泣かせちゃダメだよ。冗談でもこんな雰囲気にしちゃ。」

エ:「つぐみさんを泣かせたのは、瞳さんのような気が・・・。」

367manplus:2007/04/29(日) 23:32:27 ID:FSldiCPn0
ヒ:「エヘッ!?そうでした。つぐみさん、冗談です。つぐみさんと離れるなんて考えられないよ。本当だよ。
だから泣かないの。」

ツ:「本当ですね・・・。ご主人様に捨てられたら、私どうしていいか・・・。私には、もうご主人様しかいないんです。」

ヒ:「私だって、つぐみさんがいない生活なんて考えられないんだから。みんなだって、
つぐみさんがいない私との関係なんて考えられないよね。」

エ・マ・ヨ:『もちろんです。』

マ:「つぐみ、ごめんね。瞳さまのサポートスタッフは、あなたじゃないといけないことは解っているから・・・。
その間に入り込むことなんて誰もできはしないもの。それを解っていての冗談だからね。」

ツ:「ご主人様も、真理子も、ありがとう。でも・・・。もう、私はご主人様を離したくないの。
今度、ご主人様と離れるようなことがあったらって思っちゃって・・・・。冗談にならなくなっちゃって、
場の雰囲気をこわしてごめん・・・。」

ヒ:「いいんだよ。つぐみさん。」

マ:「そうだよ。つぐみ。仲良く瞳さまを盛り上げようね。」

ツ:「うん。」

エ:「真理子さん、どうして、瞳さんとつぐみさんの関係が特別なんですか?
ただのスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーとサポートスタッフの関係じゃないんですか?」

マ:「私もよくわからないけれど、スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーとサポートスタッフの関係としても、
特別だって聞いているわ。」

ヒ:「うん。いろいろな事情があってね。」

368manplus:2007/04/29(日) 23:45:21 ID:FSldiCPn0
ツ:「ご主人様、それはいいですが、話の続きをしてください。」

森田は、話の内容が瞳と自分の関係に及びそうになったので、半ば強引に話の筋を元に戻した。
瞳も、それが当然というように何もなかったかのように振る舞って話を続けた。

ヒ:「つぐみさんがいつものつぐみさんに戻ったところで、つぐみさん、キャビアを食べたいんだけれど・・・。」

ツ:「あっ!お預け状態でしたね。」

森田は、瞳の口にキャビアを入れてやり、その後、ワインとフォアグラを交互に瞳の口に運んであげた。

ヒ:「やっぱりおいしいね。それに、これだけお預け状態にされると、堪らないよ。」

瞳は、一息ついて話し始めた。

ヒ:「マリアとは、F3時代からの仲なんだけれど、何か馬が合うみたいなんだ。」

エ:「魔女とメデューサが闘っているようにしか・・・。」

マ:「エマ、瞳様の話しを黙って聞きなさいっ!余計なことを言うんじゃないのっ!」

エ:「はい・・・。すみませんです・・・。」

ツ:「それに、あの言いを争い聞いていると信じられないかもしれないんだけれど、ご主人様とマリアさん、
いろんなことを相談し合っているのよ。エマさんとご主人様の関係で、ご主人様が悩んでいるときなんか、
マリアさんがご主人様を慰めていたもの。」

エ:「まるで私が悪者みたいで・・・。拗ねてやるっ!」

369manplus:2007/04/29(日) 23:46:22 ID:FSldiCPn0
ヒ:「つぐみさん、寝た子を起こしちゃいけないよ。エマちゃんは私にとって掛け替えのない愛する娘の一人なんだからね。
それがずっと変わらない私の気持ちだよ。」

エ:「瞳さん、ありがとうございます。」

ヒ:「エマちゃんの機嫌が直ったところで、話を続けさせていただきます。それで、マリアとは何でも言い合える仲だし、
気軽に遊んだりする友達なんだ。それで、F2の頃から、クリスマス休暇までの期間、私は、ザルツブルグのカンダか
ウィーンのカンダ総合研究所にいるか、ロンドンのカンダモータースに居るかだったし、マリアもウィーンの両親の家に
クリスマスに帰っていることが多かったから、二人でクリスマスにウィーンで食事をしようと言うことになって、
それが恒例みたいになっていたんだよ。それで、二人のささやかな食事会、と言っても、レストランで食べて、その後、
ビアホールとか酒場で馬鹿騒ぎして夜明かしで遊ぶんだけれどね。時には、ディスコとかで騒いだりして、
モータースポーツで一年間たまったストレスを二人で発散していたんだよ。そしたら、二人の一年一度のお遊びが
仲間に知れ渡って、年々、私とマリア狙いで参加者がふえちゃったの。ヘンリーやルカやジョン、信次、ライル、リカルドも
そのメンバーだったのよ。」

エ:「瞳さん、美味しいじゃないですか。バイの瞳さんとしては、マリアさんがビアンが強いバイだけに独り占め状態ですね。」

ヒ:「そうかもしれないけれど、マリアがヤキモチを焼くようになっちゃったんだよ。女に対してなら私が誰と付き合っても
ヤキモチを焼かないんだけれど、男と付き合うとヤキモチ焼くんだよ。今の異性のパートナーのマルコ=ワーグナーと
付き合い始めたときも大変だったんだから。マリアのヤツ、性格がきついから、自分のものをとられたと感じたら、
何をしでかすか解らないからね。」

370manplus:2007/04/29(日) 23:47:07 ID:FSldiCPn0
ツ:「ご主人様の言っていることが解るような気がする。つまり、マリヤさんは、ご主人様という友達以上の存在の
女を他の男にとられたくないって事なんですね。」

エ:「瞳さん、マリアさんはそんなにきついんですか?」

ヒ:「うん。ある意味、性格は男だからね。徹底的に自分のものを守るために闘うのよ。マルコが私のパートナーだと
認識するまで、本当にメデューサかと思うぐらいの嫌がらせをマルコにしていたんだから。」

マ:「マリアさま、怖すぎます。瞳さまには、危害を加えることはないんですか?」

ヒ:「それは、大丈夫だよ。マリアは私の本当の恐ろしさも知っているからね。絶対に私に手を本気で
挙げることはしないんだ。だから、私を取っていく存在に悪事の限りを尽くすんだよ。マルコの時は、
そうでもなかったんだけれど、ルカが私に強引に迫ったときは、知り合いのオーストリア空軍の将校をだまくらかして、
地上攻撃機を実弾付きで借りて、ルカの実家を空爆しようとしたぐらいなの。幸いにも、ルカの実家はフィンランドだから、
ツンドラの中の一軒家みたいな状態だから、実家に対地上ミサイルが当たらないで、裏山の断崖を誤爆したから、
事なきを得たんだけれどね。命中していたら、今、ここに、ルカ=ロッキネンはいなかったよ。」

マ:「怖すぎます〜〜〜。瞳さま、今お付き合いしているマルコさまは、大丈夫だったんですか?」

ヒ:「うん。私が事前に危険を察知して、スイスの友人に頼んで対テロ用ヘリコプターを借りて、
そのヘリコプターでマリアのミラノのアパルトを急襲したんだよ。限定面積破壊用の対地ミサイルを
使ってマリアの部屋を滅茶苦茶にしてやったの。私の方が航空兵器の操縦は上だから、私は外さなかったよ。
それで、マリアを黙らすことができたんだよ。マリアも、私がマルコと本気で付き合いたいと思ったことを認識したんだよね。
白旗を揚げてマルコとの交際を認めてくれたの。」

エ:「マリアさんも怖いけれど、瞳さんも怖すぎる。ミラノの街中でミサイルぶっ放して、よくテロリストにならなかったですね。」

371manplus:2007/04/29(日) 23:58:32 ID:FSldiCPn0
マ:「瞳さまは完全な犯罪だけれど、マリアさまも完全に犯罪ですっ!二人とも、どうして、塀の外に居るんですか?」

ヒ:「ジョージに頼んでもみ消してもらったんだよ。」

エ:「ジョージって、誰ですか?」

ヒ:「エマさん、ジョージってご主人様が呼んでいるのは、ファミリーネームをアイシックと言うんです。」

エ:「どこかで聞いた・・・。あっ!アメリカ合衆国の大統領じゃないですか。」

ツ:「エマさん、正解よ。大統領は、ご主人様とマリアさんのファンでね。二人の不祥事を勝手に、しかも強引に、
NATO軍にもみ消すようにねじ込んで、中央アジアのテロ組織の反抗と言うことにしちゃったのよ。そのテロ組織なんか、
とばっちりで合衆国海兵隊によって壊滅状態に追い込まれちゃったんだから、ある意味可哀想だよね。」

エ:「瞳さんもマリアさんも怖すぎませんか?しかも、そんな大物政治家を手のひらに載せているなんて信じられない。」

ツ:「ご主人様は、アラブの王様やヨーロッパの王様も手の内にあるし、マリアさんは、国連の常任理事国の大統領や
総理大臣を手の内に載っけているみたいだし、ある意味、二人が犯罪者になることはないかもしれないわ。」

エ:「怖すぎるんですけど。」

ヒ:「エマちゃんも、そのうちに爺さんやおじさんをパパにするノウハウを教えてあげるね。」

ツ:「ご主人様、エマさんに余計なことを教えてはいけませんっ!」

ヒ:「そんなことないよ。これも、スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーにとって必要なことだよ。」

エ:「ありがとうございます。でも、私は、どっちかというとママの方が・・・。」

ヒ:「ママか・・・。やっぱりエマちゃんはビアンなんだよね。よしっ!素晴らしいママを紹介してあげよう。」

372manplus:2007/04/29(日) 23:59:09 ID:FSldiCPn0
エ:「本当ですかっ?嬉しいっ!!やっぱり、瞳さんは頼りになるお姉様です。私のご主人様です。」

マ:「瞳さま、エマをこれ以上の悪の道に染めないで欲しいのですが・・・。それになんと言っても瞳さまもマリアさまも
怖いんですが・・・。」

ヒ:「そんなことないと思うんだけどなあ・・・。みんなが私とマリアのことそういうんだよ。」

ツ:「ご主人様、当たり前ですっ!世間では、ご主人様やマリアさんの振る舞いを怖いことと言うんです。
エマさんを悪魔の化身にしないでください。お願いします。」

ヒ:「つぐみさんに釘を刺されると何か弱いんだよね。」

マ:「つぐみは、まるで護摩符みたいなものだね。」

ツ:「真理子、その表現はやめて。」

ヒ:「そうだよ。つぐみさんは、そんなんじゃないよ。でも、その事件があってから、私とマリアのクリスマスの食事会が
男子禁制になったんだよ。その上、お目付役がつくことになったの。」

エ:「そのお目付役が妻川監督なんですね。」

ヒ:「恵美さんだけじゃなく、ジョワン=キンバリーとパパと3人だったの。」

エ:「だって、瞳さん、ローミーのキンバリー監督と言えば、うちの妻川監督とは犬猿の仲じゃないですか。それに、
マリアさんの所属するフェラーリのF1監督を追われてから、必要以上に敵意をマリアさんにも向けているじゃないですか。
瞳さんに対してだって、妻川監督の分身みたいにして敵意というか憎しみをむき出しにしているじゃないですか。
何でも、“打倒カンダ、打倒速水瞳”と“打倒フェラーリ、打倒マリア=リネカー”のために、女性ドライバーを
育成していると聞いていますけれど。それも、F2参戦時から、スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーの仕様に
改造したロシア人と日本人のハーフの女性ドライバーだと言う話ですよね。ひたすら、瞳さんとマリアさんを敵視するように
意識付けされていて、まるでアンドロイドのようなドライバーだとF2で話題になっていますよね。」

373manplus:2007/04/30(月) 00:00:14 ID:DeWrmfit0
マ:「瞳さまとマリアさまを打倒するために生かされているみたいで可哀想ですね。」

ヒ:「藤原エレナって言うんだよ。その娘。たぶん純粋ないい娘なんだと思うんだけれど、キンバリー監督の怨念が
乗り移っているんじゃないかな。自分の意志を取り戻したとき、自分の走りに疑問を感じるはずだし、
その時の自分の人生に対してと自分のドライビングに対しての悩みは相当なものになるはずだからね。」

エ:「私、瞳さんに対して、拗ねて、敵意を持っちゃったことがあるから解るんですけれど、憎しみを
前面に出してドライビングしても決していい結果は現れないし、自分の考えていることが間違いじゃないかと思ったときの
心の揺らぎは相当なものがあります。たぶん、私なんか一年ぐらいだったけれど、何年間も洗脳されたような状態で、
憎しみをぶつけていくためのロボットでいることに少しでも疑問を持ったときの心の崩壊を考えると可哀想だと
思っちゃいます。」

マ:「エマも瞳さまとの関係に苦しんだからね。少しは、学んだんだよね。」

エ:「真理子さん、それは言わないでください。瞳さんを憎んでいたことがあったなんて今考えるとなんて馬鹿なことを
したんだろうって思っているんですから。恥ずかしいです。」

エマの顔が少し赤みを帯びたように感じられた。

ヒ:「エマちゃんは、今、21歳だから、円熟期を迎えたエマちゃんが、自分の地位を示すために、
潰しておく必要がある存在になりそうだよね。私も、若い者には負けないようにしないといけないけれどね。
それに、ジョワンが、敵意をむき出しにした原因は、直接は恵美さんだし、私とマリアにも責任があるから、
私たちを敵視するのは仕方ないんだ。それに、間接的にパパも敵対する関係になっちゃったんだから、
トミタやパパを敵視するのも仕方ないことなの。」

エマが、そうだという表情で、

374manplus:2007/04/30(月) 00:16:12 ID:DeWrmfit0
エ:「そう言えばトミタに対しても、異常とも思える敵愾心を抱いているって思ってました。」

ヨ:「リカルドはとばっちりを喰っているって嘆いていたわ。」

ギャレイに食事の準備で入っていた三咲がメインの魚料理をサーブするためにギャレイから戻ってきた。

ヨ:「メインの魚料理は、大間産マグロの頬肉のフリッターカルパッチョ仕立てです。瞳、何でもいいから、
ファーストの乗客とはいえ、こんな厄介なものを機内食でリクエストしないでっ!マリアと瞳のリクエストは
いつも我が儘なんだからっ!航空会社が契約しているケータリングサービス会社泣かせなんだからね。」

ヒ:「まあ、好いではないか。」

ヨ:「好くないっ!」

エ:「三咲さん、そんなに瞳さんとマリアさんのリクエストって我が儘なんですか?」

エマの質問に三咲がこの時とばかりに答えた。

ヨ:「航空会社イジメと受け取れるぐらいに我が儘よ。だいたい、こいつらは、一応はセレブだから、
仕方ないと言えばそれまでなんだけれど、たちが悪いの。この前も、瞳のリクエストは、成田ケータリングで、
オードブルの食材が、ニュージーランド産のクレイフィッシュとニュージーランド産の鯛の刺身とでしょ。
メインの魚が、事もあろうにヨーロッパ北海産の鱈とオホーツク海産の鰊でしょ、肉料理が、アマゾン産のワニの
ステーキだよ。それに、ワインのリクエストにブルゴーニュの本当に小さな農園の1980年代のビンテージの
赤と白を入れた上に、山梨産のアイスワインを入れてきたんだから。」

エ:「そんなに大変なんですか?」

エマは小声で三咲に聞かれないように森田に尋ねた。

375manplus:2007/04/30(月) 00:16:51 ID:DeWrmfit0
ツ:「私がご主人様に代わってリクエストカードを書いた共犯みたいなものだから
あんまり大きな声で言えないんだけれど・・・。」

ヨ:「森田さん、構わないわよ。どうせ瞳に脅されてやったことだろうから。あなたが悪いなんて思っていないわ。」

ヒ:「どうして私だけ悪者なんだよ〜う。拗ねてやるから。」

ツ:「ご主人様に拗ねられたら困るし・・・。」

ヨ:「瞳〜っ!そうやって森田さんにプレッシャーかけたら私が承知しないよっ!あんたは森田さん無しじゃ、
どのみち生きられないんだから、森田さんを大事にしなさいよっ!いいわねっ!!」

ヒ:「つぐみさん。マグロの頬肉のフリッター食べようよ。冷めちゃうと美味しくないからさ。」

ツ:「そっ、そうですね、ご主人様。」

ヨ:「こらっ!瞳、聞いてんのっ!話をそらすなって言うのっ!あんた子供の頃から、都合悪くなると話を
そらすのうまいんだから。」

ヒ:「すいません・・・。」

ヨ:「わかればよろしい。こらっ!瞳にエサを与えるなっ!森田さんもあんたのご主人様の悪事を話させてからにしなさいっ!
瞳にエサを与えるのは。」

ツ:「はい。すみません。」

376manplus:2007/04/30(月) 00:17:28 ID:DeWrmfit0
再びエマが小声で、

エ:「真理子さん。三咲さんが一番の女王様かも。」

マ:「そうね。瞳さまもマリアさまも敵わないんだと思う・・・。」

ヨ:「ほらっ!そこの二人も黙って聞きなさいっ!」

エ・マ:『はい・・・。』

ヒ:「好恵に怒られちまったぜ。」

ヨ:「お黙り、瞳っ!」

ヒ:「はい・・・。」

ヨ:「森田さん、瞳が注文したものがどういう物なのか説明してあげて。」

ツ:「それが・・・、ご主人様が注文したものの全てがかなりの稀少品なんです。特に、山梨産のアイスワインに至っては、
S社のぶどう園で、1970年代に一度か二度だけ摂れただけなんです。今回の注文だって、
ワインこそ前回よりはおとなしいですが、普通に考えたら『これって、いったい何なの!』というぐらいなんです。
それに料理の食材も・・・。次に出てくるウインナーシュニッツェルなんて、神戸三田の牛込牧場のS5の指定なんです。」

エ:「うっ!瞳さんのリクエスト、グルメを越えて、マニアックの域に入っていると言っても過言じゃない。」

ヨ:「鈴木さん、その通りなのよ。それにこいつとマリアときたら、舌が肥えてるからごまかしが効かないから
タチが悪いのよ。キャビンアテンダントの敵ね。それに、今話している事件じゃ、私たちというよりも、会社自体が、
国際自動車連盟の調査を受けるやら、フェラーリに訴訟を起こされるやらで大変だったんだから。」

エ:「そんな乗客をよく乗せますね。」

377manplus:2007/04/30(月) 00:28:19 ID:DeWrmfit0
ヨ:「鈴木さんもそう思うでしょ。でも、パイロットは、瞳たち、トップクラスのスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーが
搭乗してくれるのを喜ぶのよ。だから、スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーが少々の無理難題や
こいつらみたいな大きな事件をやらかしても、パイロットの要望が強くて、会社もブラックリストに載せられないのよ。
特に瞳とマリアは別格だから、パイロットはどうしても搭乗させたい乗客なのよ。瞳もマリアもそれを
好いことにつけ上がりやがってっ!」

ヒ:「少し、反省しよっかなぁっ!」

ヨ:「大いに反省が必要ですっ!」

三咲に一喝され、瞳はバツが悪そうに

ヒ:「はい・・・。」

とだけ答えた。

ヨ:「まったくっ!」

エ:「でもどうして、瞳さんたちトップクラスのスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーが民間機に
搭乗するのを民間機のパイロットは歓迎するんですか?」

ツ:「エマさん、それはね、ご主人様たちスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーの契約条項によるものなのよ。」

エ:「つぐみさん、どういうことですか?」
ツ:「それはね、ご主人様やマリアさんのようなトップクラスのスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーは、
私的な移動時も国際的な身分の保障と飛行機や船の移動時などの時には護衛が付くという契約条項が
盛り込まれているのよ。その条項により、国際間の移動時に各国の空軍が護衛機を出すことになっているの。」

エ:「ということは、スーパーF1の公式の移動時と同じように、戦闘機の護衛が付くと言うことですか?」

378manplus:2007/04/30(月) 00:28:57 ID:DeWrmfit0
ツ:「そう言うことなの。国際自動車連盟は、スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーのスター選手の保護と、
各先進国の軍部は、トップのスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーに使用されているサイボーグ医療の
最新技術と優秀な素体の生体脳がサイボーグ兵器として、テロリスト達に奪われないようにするためなのよ。」

エ:「徹底してるんですね。」

ツ:「そうよ。ご主人様達を誘拐して、生体脳を戦闘機に取り付けて、生体脳搭載兵器に転用したら、
NATO軍の優秀なパイロットが何機編隊でかかってきても、ステルス戦闘機の編隊でも敵わないもの。」

マ:「確かにそうよね。瞳さまやマリアさまのマシンの操縦能力を生体兵器として戦闘機に搭載したら、
絶対に敵わないよね。レーダーや計器を使わないでも、スーパーF1マシン専用サイボーグドライバーは、
本能的に、相手の位置が読み取れる特殊能力があるものね。」

ツ:「真理子、その通りよ。だから、日本や合衆国や欧州連合を含めて、加盟各国が、トップドライバーに関しては、
その優秀性から、国際自動車連盟にプライベート時の移動についても、拉致されることがないように責任を持つことを
申し入れているの。自国の安全保障の意味もあるけれどね。」

エ:「瞳さん達トップの人の待遇って凄いです。」

マ:「そうよ。だから、エマも、速くトップドライバーになるように頑張りなさい。それにしても、あの拗ねきっていた1年半は
無駄だったな。あれがなければ、もっと瞳さまの技術を習得できたかもしれないのに・・・。」

エ:「真理子さん、もう過ぎたことは蒸し返さないでください。瞳さんの目を恥ずかしくてみられなくなっちゃいます。」

ヒ:「エマちゃん、そんなこと言わないでよ。エマちゃんが恥ずかしがること無いよ。ドライバーは、ライバル心が
無くちゃ技術が向上しないんだから。」

エ:「瞳さん。ありがとうございます。やっぱり、私のお姉様は、優しくて最高っ!ずっとついていきます。」

379manplus:2007/04/30(月) 00:29:34 ID:DeWrmfit0
マ:「エマの目的は、この特別待遇のおこぼれなんじゃないの?」

エ:「うっ!・・・・・・・・・・・。」

マ:「ほら、何も言えなかろう。瞳さま、エマを許してやってください。」

ツ:「エマさんがある意味一番怖いかもしれませんね。」

エ:「みんなで虐めないでください。」

エマが瞳にすがるような視線を投げかけた。

ヒ:「まあ、つぐみさんも真理子さんもこの辺で矛先を納めてあげなよ。」

ツ・マ:『そうしますか。』

エ:「でも、プライベートでも、護衛が付くこととパイロットのみなさんが瞳さんを乗せたがることが、
どうやってつながるんですか?」

三咲がここで口を挟んだ。

ヨ:「それはね。鈴木さん。」

エ:「三咲さん、エマって呼んでください。」
ヒ:「そうよ。好恵、私の妹みたいな存在なんだから、エマちゃんを他人行儀で呼ばなくって好いよ。
それに、つぐみさんや真理子さんも私の大切なパートナーなんだし、好恵は、私の親友なんだから、
みんなを他人行儀に呼ばなくても好いよ。」

ツ:「そうです。ご主人様の言う通りです。私も、真理子も、ご主人様の僕なんですから、さん付けで
呼んでいただかなくても好いです。」

380manplus:2007/04/30(月) 00:40:54 ID:DeWrmfit0
マ:「つぐみの言う通りです。私たちは、エマや瞳さまの手脚としての職務も持っていますから、身体の一部だし、
私は、エマの身体の一部なのですから、エマが瞳さまの僕である以上、私も瞳さまの僕です。」

ヨ:「本当に瞳は好い娘に囲まれているよね。エマちゃんもつぐみさんも、真理子さんも本当によくできているよ。
マリアのアンネとは偉い違いよね。」

ヒ:「好恵、それは言いっこ無しだよ。アンネの場合は、マリアを守るための方法が違うだけなんだよ。」

ヨ:「それもそうだね。それに、つぐみさんの瞳に対する想いは本当に涙が出ちゃう・・・。」

三咲は言葉を詰まらせて、頬に一筋の涙をこぼしたのだった。

ツ:「三咲さん、その話は・・・。」

ヨ:「ごめん、つぐみさん。」

エ:「瞳さんと、つぐみさんの関係がただのスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーとサポートスタッフの
関係じゃないということは、さっきも出ていましたけれど、気になりますね。」

ヨ:「エマちゃん、時が経てば、瞳とつぐみさんの関係は解ると思うし・・・、そうだ、今日、ウィーンに着いたら解るわ。」

エ:「意味深ですね。」

ヨ:「まあね。それはそうと、さっきの話の続きをするね。」

ツ・マ:『お願いします。』

森田と立川、そして、エマが、声を揃えた。

381manplus:2007/04/30(月) 00:41:35 ID:DeWrmfit0
ヨ:「何故、パイロットが喜ぶかと言えば、瞳たちを乗せていれば、各国の空軍の護衛機に守られて飛べるから、
テロとかを心配する必要がないし、領空侵犯をしたとしても、大目に見てくれるのよ。」

エ:「そうか、瞳さん達が乗っていれば、国家がその空域の飛行の安全の保証を認めたと言うことだし、
隣国に入ったとしたら、その国の空軍が護衛に付くことになるんですものね。」

ヨ:「エマちゃん、そうよ。それに、飛行プランにない国に入っても、瞳たちが乗った飛行機の機体番号は、
全ての領空通過国とその周辺国に通告されているから、たとえ、飛行プランから外れた国の空域に入ったとしても、
その国が護衛に付くことになってしまうの。もちろん緊急事態で飛行ルートをそれたら、その時点で緊急救助作戦が
展開されるの。だから、もの凄く安全な飛行が出来るのよ。」

ツ:「三咲さんの言うとおりなんです。その上、ご主人様とマリアさんは、どこの国の空軍のパイロットにも人気があるから、
二人の乗った飛行機への護衛は、競争率が高くて、どこの国も、エース級のパイロットと最新鋭機が護衛につくことが
多いんです。だから、なおさら、安心なんです。」

ヨ:「ほら、今、中国領空に入っているけれど窓の外には、中国空軍の誇る最新鋭機“人民”型がフル装備で六機も
ついているのよ。」

エ:「うわっ!本当だ。人民解放軍の最新鋭機だ。秘密のベールに包まれていて不鮮明な写真でしか見たことがなかった
けど・・・。瞳さんの人気のなせる技なんですね。」

ヨ:「これだから、こんな不良乗客でも、パイロットには人気なのよ。だいいち、パイロット自身が瞳とマリアのファンが
多いから、搭乗させたがるのよ。」

ツ:「三咲さんの言うとおり、最新鋭戦闘機でそれを操るのが各国空軍のエースなんだから、
これ程強い護衛はないわよね。それだけ、ご主人様のファンが多いと言うことなんですけれどね。」

ヒ:「私の人徳の成せる技って言ったところね。」

382manplus:2007/04/30(月) 00:42:12 ID:DeWrmfit0
ツ:「ご主人様、調子に乗っちゃいけません。ご主人様には、ご主人様の話の続きをしゃべる必要があります。」

ヒ:「つぐみさん!?そんなに厳しいこと言わなくても・・・。」

ツ:「話が脇道にそれちゃったから、助かったと思っているんでしょうが、解放したわけではありません。」

ヒ:「つぐみさん、変なところに細かいからな・・・。」

ツ:「ご主人様、何か言いましたか?」

ヒ:「いっ、いいえ、独り言です・・・。」

ツ:「ご主人様、それでいいんですよ。ご主人様から、私の悪口は聞こえてこないと思っています。もし言ったら、
今日のお食事はここまでにしますよ。」

ヒ:「つぐみさん、怖いよ〜〜〜。」

ヨ:「やれやれ、瞳、どっちが女王様かわかんないね。Mっ気が強い娘が開き直ると怖いんだぞ。気を付けないとね。」

ヒ:「好恵、脅かさないでよ。」

ヨ:「何言ってるの、M女性は、怖いもの無しなんだから、注意しないとね。それに、ご主人に対する思い入れが強いから、
裏切られたと感じると怖いぞ〜〜〜。」

ヒ:「はい。充分に注意します。」

ヨ:「続きを話していてあげててよ。その間にメインの肉料理を用意するから。」

三咲がギャレイの奥に再び消えていった。
383manplus:2007/04/30(月) 00:49:18 ID:DeWrmfit0
ご無沙汰していました。
久方ぶりの投稿です。
今回は、会話が多いので、誰が話したのかが解るようにしてみました。
サイボーグスレなのに、今回は、サイボーグネタが少ないのはご勘弁下さい。
相変わらずの掛け合い漫才の駄文として読んでくだされば幸いと思っています。

だいぶ空いてしまい、クリスマスと言うには季節はずれもいいところですがお許し下さい。
書きためてはいたのですが、仕事が忙しく、推稿する暇もなかったので、
空いてしまった次第です。

384pinksaturn:2007/04/30(月) 11:24:34 ID:gCcIY3050
久々に達磨娘チームキター!
>> 383
>サイボーグスレなのに、今回は、サイボーグネタが少ないのはご勘弁下さい。
フェチ板には十分相応しいようですが、何か?。
そりゃまあ、空中ジャック→拉致→脳摘出→我が儘超兵器なんて事件も、もしあったら面白そうだけど、起きたら主人公が居なくなって話が終わっちゃいますよね。
385pinksaturn:2007/05/01(火) 23:30:32 ID:VHnBBQd/0
(オプションパーツの本編最終回です。)
−−(36)屯田兵−−

(核パルス艦”まりあな”就航から1年半後 冥王星ーカロン重力均衡点の”なると”)

みどり:「減速完了。静止しました。」

マサ:「あー、やっと着いた。久しぶりだけど相変わらず寒々とした風景だな。」

真理亜:「無駄口叩いている暇はないよ。隕石移動装置が溜まってるんだからね。
マサは大至急リストアップされた氷隕石を回って設置マーカーを撃ち込むこと。
マオとミキはそれぞれ5名を率いて周回軌道の隕石移動装置群を捕捉せよ。
捕捉したら各群に連結された二式降下艇に移乗。そのまま曳航作業に掛かれ。」

マサ:「リストって、えーっ、こんなに沢山。目が眩みそう。ひええ。」

真理亜:「そりゃ、こっちが片道飛ぶ間に”まりあな”は3往復してるからね。
しかも、1回で60基の隕石移動装置を積んできてるから当然だろうが。」

マサ:「しかし、60個の氷隕石に180基設置なんて大変だわ。」

真理亜:「完成品を曳航用降下艇ごと運んできてあるから扱いは楽でしょ。
設置だってマーカー打っておけば自動降下・自動設置なんだからね。
昔とは比べものにならないくらい1基当たりの手間が少ないのよ。
気合い入れてかかれば隕石1個あたり1時間で片づくはずだろうが。
10日後に再び”まりあな”が着くから、全部片づけておくんだよ。」

マサ:「あれ?。リストが61行ありますが?。」

真理亜:「61個目は”まりあな”の帰りの積み荷になるのよ。艦載エキシマで裁断して積み込めるようにする必要があるからね。
指示書があるでしょ。その通り裁断用にマーカー撃ち込むのよ。」
386pinksaturn:2007/05/01(火) 23:32:29 ID:VHnBBQd/0
(6日目 61個目の氷隕石)

マサ:「ふう。ようやく最後のやつか。よく飛び回ったなあ。で、ふんふん。
3方向から4掛ける4に切り刻む訳ね。だから1方向16個ねえ。マンドクセ。」

真理亜:「今から”なると”でそっちに向かう。マークは済んだか?。」

マサ:「えっ、これからですよぉ。」

真理亜:「15分で到着する。それまでに必ず済ませるんだ。
遅れたら氷隕石ごとエキシマで切り刻まれることになるからね。」

マサ:「ひいい。真理亜様サド全開だわ。マジでやばいよ。よし、ここから。
マーカー連射だ。いけいけいけ。よし次、側面...」

真理亜:「ふむ。出来ているようね。帰艦してよし。正面は避けろよ。
みどり、エキシマ照準合わせいいか?。裁断射撃開始よ。」

みどり:「マーカー反応視覚オーバレイよし。原子炉出力微増、27%。
連続照射モード設定よし。発射します。カッター・ビーム!。さくっ...?。
あれ?気分はテスター1号機のリサだったんだけどなぁ。さくっと切れないわ。
なかなか切れないものですね。さすが極低温。手強いわ。」

真理亜:「リサ?。誰それ?。ああ先日北米連で事件起こした飛行士のことか。
カッタービームとおむつ事件のバカ飛行士に一体何の関係があるって言うのよ?。
おしっこひっかけたぐらいで巨大氷隕石が切れるわけがないでしょう。」

みどり:「爆走おむつ飛行士じゃなくて古典に出てくるゼロテスターの方ですよぉ。
もしかして、真理亜様ご存じ無いんですかぁ?。帝大卒なのに。」
387pinksaturn:2007/05/01(火) 23:33:15 ID:VHnBBQd/0
真理亜:「帝大は実学一辺倒だから古典なんか知らないわよ。貴族は忙しいのよ。
とにかく、巨大氷隕石だからね。レーザーをいたわりながら根気よく切り出しなさい。
おそらく3日はかかるでしょうね。”まりあな”到着までぎりぎりかしら。」

みどり:「それで開始を急いでいたんですね。裁断に3日もかかるのか。
すると、その間私は不眠不休でレーザー撃ち続けるのですか?。」

真理亜:「無理に決まってるでしょ。くも膜下出血で過労死しちゃうわよ。
ちゃんとサイボーグの弱点判ってる?。当直割りで交代ね。」

マサ:「戻りました。ところで”まりあな”が来るとまた移動装置も来ますね。」

真理亜:「当然。私らが帰れるのはあと20個の氷隕石を処置してからよ。」

マサ:「1年で80個ですか。これだけ降らせればさすがの金星も冷えるかな。」

真理亜:「既に2回別の艦が同じ事をやってるから帰ったらもう始まってるわね。
今回送り出す氷の量が約400万dね。他の便でもだいたい同じ量でしょう。
金星大気は90気圧もあるから高緯度地域なら少し冷えれば降水を呼び込めるわ。
今までは氷が少なかったから水深が大きくなる前に溶けて効果が落ちていたのよ。
それに降水の殆どが硫酸になって降ってくるため炭酸ガスが溶けなかったでしょ。
でもこれだけの水量を1個のクレーターに集めれば、さすがに硫酸も薄くなるわね。
水面で10気圧もあるのだから、ガスを水に押し込む力も地球の比ではないわよ。
恐らく水深が数百bを超えれば炭酸ガスの閉じこめ効果もいくらか現れるでしょう。
水圧で沈み込んだ炭酸ガスはあとから硫酸の雨が降ったって出てこないからね。
湖を中心に半径200`程度は摂氏100度未満の低温地域になるとの予想よ。
3年間で3つの大クレーターを形成するの。その中心では突風もきつくないはずよ。
これが成功すれば地上降下が可能になるから、さらに別の手も打てるでしょう。」
388pinksaturn:2007/05/01(火) 23:50:24 ID:VHnBBQd/0
(3日後)

マサ:「反復する核爆発を探知しました。”まりあな”以外の可能性はありません。」

みどり:「よく見えますよ。さすがに核爆発は明るいなあ。あ、終わったようです。
頭をこっちに向けましたね。さらに減速しています。周回軌道に乗りました。」

マサ:「重力均衡点には停めないつもりかな。」

真理亜:「あの重量でバーニアは大して増強していないから停泊が難しいのよ。
重力均衡点なんて空間の1点だから、ずれたら冥王星かカロンに落ち出すでしょう。
どうせ裁断した氷隕石を積み込むのだし、ここに向かってくるはずよ。」

マサ:「氷の積み込みは自力でやるんですか?。人数少ないと時間かかるなあ。
細かい動きが苦手なら横付けは出来ないでしょうから降下艇で引き込むのかな。」

真理亜:「エアロックに入れてしまえば自動処理装置で水に出来るんだけどね。
積み降ろし要員は5人くらいしか乗っていないから手伝ってやった方が早いわ。
マオ、ミキ、こっちで使える降下艇を動員して裁断した氷を引っ張って行って頂戴。
入れ替わりに”まりあな”が積んできた隕石移動装置を貰い受けてくるのよ。
例によって10基の移動装置がワイヤーでつながって両端に降下艇が付いてくるわ。
氷を曳いていった降下艇はあっちの格納庫に置いて来て良いからね。」

知子3世:「こちら”まりあな”、10分後に61番マークの氷隕石と会合します。」

真理亜:「こちら”なると”隕石前方200`に居ます。積み降ろし手伝うわよ。」

知子3世:「宜しく。いつも少人数で時間がかかっていたので助かります。」

真理亜:「短期間でその重い船を見事に乗りこなしているわね。」

知子3世:「貴女が育成した理美のお陰ですよ。そちらは大変じゃないですか?。」
389pinksaturn:2007/05/01(火) 23:51:22 ID:VHnBBQd/0
みどり:「ちゃんとやってますのでご心配なく。」

知子3世:「それは失礼したわね。みどりも一人前か。」

冬子:「みどり、ちょっと慣れたからって宇宙で油断なんかしちゃダメよ。」

みどり:「お母さんは相変わらず心配性ね。」

冬子:「そんなに嫌うなって。火星大工場土産のお花持ってきたわよ。」

マサ:「そりゃあどうも。もう花の栽培が始まっていたのか。」

冬子:「私らが往復する度に水が6万d増えるので使い道に困っているのよ。
積まないと加速がきつすぎて私らが保たないし、棄てるのはもったいないわ。
余ってるとは言っても、外国船に売りつけたらすごい単価になるわけで。
農産といっても食料作ったってなかなか売り切れるものでもないでしょう。
花や酒なら単価が高いからどうにか地球へ輸出もできるからね。」

マサ:「閉鎖空間の工場衛星じゃ大型化したって3ヶ月に水6万dは大杉だよ。
政治的に金星直行ができないのが痛いよね。金星なら焼け石に水でも欲しいのにな。
氷隕石落下前に外した移動装置を回収するため別の船を出すのも大きな手間だし。
水ならどこでも要りそうだけど、火星の地表には降ろしていないの?。」

冬子:「火星の気圧じゃ深い盆地の底でも特殊な品種しか栽培できないでしょ。
揚げ降ろしも入れたら洞窟でやるくらいなら工場衛星で育てる方が低コストでして。」

マオ:「”まりあな”のハッチに着きました。氷を置いて移動装置を曳き出します。」

真理亜:「1組6往復がノルマだからどんどんやって頂戴。
氷が済んだら一旦”なると”に帰って生命維持物資の搬送も頼むわね。」

ミキ:「こちらも到着しました。すぐ次に取りかかります。」
390pinksaturn:2007/05/02(水) 00:11:05 ID:yUv53f+b0
(カロン給水施設前の氷原 http://pinksaturn.fc2web.com/sekaisensyken07.htm )

マオ:「やっとここに来れたわね。」

ミキ:「でも、”なると”への給水が順調だと滑れるのはたったの4日よね。」

マオ:「無いよりはましだわ。少ないチャンスを生かさないと。」

ミキ:「よーし、やるか。久しぶりにスピン競争でもしない?。」

マオ:「よーし、片手ビールマン、どうよ?。」

ミキ:「鈍ってるわね。ひひひ、これでどうだ?。おっと、お尻が冷たいな。」

マオ:「いきなりこけちゃって。そんな肩の冷える格好危ないよ。
あんたこそ、無理するとまた肩関節がもげることになるわよ。」

ミキ:「耐寒外装だって随分進歩したんだから大丈夫よ。」

マオ:「さて、ちょっと滑って勘も戻ったし、中継準備にかかるかな。」

ミキ:「ん?。中継って先日言っていた”矮惑星選手権”ってやつのこと?。
アレ、冗談じゃなかったの?。ネタだと思っていたんだけど。」

マオ:「ちゃーんと地球中に放映されるし採点も公式記録になるのよ。
まあ、実態はパパの商売の手伝いだけど、表向きは公式競技だからやる気出してよ。」

ミキ:「なるほど。では本気出すか。まずはショートプログラムでジャンプ競争かな。」

マオ:「行くわよ。そーれ、どうだいこの回転数。あんたじゃ腕もげるよ。」
391pinksaturn:2007/05/02(水) 00:11:56 ID:yUv53f+b0
ミキ:「このミキ様がいつまでも同じ失敗なんかしないわ。新素材の威力を見るが良い。」

マオ:「うそ。いつも腕もげてたのに。あ、しまった気を取られてしくじったか。ちっ。」

ミキ:「よし。いけてるわ。優勝はもらったな。」

マオ:「なんの。完璧フリーで抜いてやる。三連続トルネードジャンプ、これで勝ったわ。」

ミキ:「甘いな。こっちも今日は調子良いから何一つしくじりそうもないわ。そーれ。」

マオ:「えっ?。うっそー。あんなバニースーツみたいな衣装じゃ背中凍結するはずなのに。
それ、故障しろ、故障しろ...なにぃー最後までノーミスで行っちゃったよ。」

ミキ:「はい。ということで、世界が注目する矮惑星選手権はミキ様が1位だね。」

マオ:「うー。感動の逆転優勝の筈だったのにぃ。悔しい。」

ミキ:「さて、積み込む水も魔法瓶に溜まった頃だな。いつまで睨んでたって結果は変わらんがな。」

マオ:「仕方ないなぁ。次はショートプログラムも気合い入れなくちゃ。」
392pinksaturn:2007/05/02(水) 00:12:39 ID:yUv53f+b0
(”なると”艦橋)

ミキ:「給水作業が終わりました。」

マサ:「ご苦労さん。”まりあな”就航で降下艇を沢山置いていくから給水が早くなったわね。」

マオ:「任務期間短縮は有り難いけど、忙しくて滑る時間がちょっとしかとれなくなっちゃったわ。」

真理亜:「休みが増えてるんだからその分は地球で副業にでも精を出す事ね。すぐに発進よ。」

みどり:「艦内各部加速警戒態勢完了です。原子炉出力上昇。グリッド通電。推進剤注入始めます。」

マサ:「地球かぁ。ブランドファッション、酒、売春...全てが懐かしい。」

真理亜:「私らの休暇は私用で金星。落札したプラットフォームに別邸建てさせたからね。」

マサ:「ありゃ。隠れ家は良いけどあそこでは売春できないよorz。」

真理亜:「先行便の氷隕石群が落ち始めていると言ったでしょ。落札した領地の一部が湖面になるのよ。
しかもそこに隣接する領地の端っこは、3つの氷クレーターに囲まれる弱風区域にかかっているわけ。
うまくいけば領内に80度くらいの弱風低温域が出来てくれるから地上を見られるわ。」

マサ:「降りるつもりですか?。いくら何でも危険だと思いますが。」

真理亜:「リモートボディなら降ろせる可能性が大きいわ。耐高温高圧用の特注品を用意させてるの。」

マサ:「なるほど。それじゃ、地獄巡りに向かって帰りますかね。」
393pinksaturn:2007/05/02(水) 00:35:59 ID:yUv53f+b0
(火星軌道 大工場 岸壁)

メタラニ:「やっと帰れるね。ずいぶん長居をさせられたわ。契約オーバーもいいとこよ。」

メタリカ:「本国で史上初めて宇宙飛行士が犯罪で逮捕されてせいだってさ。」

メタルナ:「はぁ?。おむつリサの件?。それが私らと何の関係があるわけ?。」

メタレア:「宇宙飛行士の精神検査が厳格化されて全員チェックが済むまで飛行停止だって。
スージーとリンダは民間人だから除外って話もあったけど結局宇宙局の請負条件になったんだって。
それで検査の順番待ち。当局は月資源関係が最優先だから私らの都合なんか考えないのよ。
で、後回しにされて、しかもあの二人は体が特殊だから検査方法で揉めたらしいわ。」

孫:「その通りよ。私らも帰ったら検査されることになるわ。」

メタラニ:「誰が!。こんな所もう来ねえよ。 http://img.2ch.net/ico/moukoneeyo_1.gif 」

メタリカ:「全くだわ。こんな島流しみたいな待遇絶対ご免ね。」

メタルナ:「金輪際再契約なんかしないわよ。」

メタレア:「そうそう。核パルス艦が何往復も飛ぶのをただぼんやり見送ってさ。
よく判りもしない核工場を見回るばかりの退屈な仕事でセックスする機会もないなんて最悪。
使えないからお金も貯まったし、帰ったらまた元通りニートになるわ。前よりリッチにね。」

孫:「藻舞等使えないからそう願いたいね。でも、代わりが見つからなければ強制動員されるわ。」

メタラニ:「冗談じゃないわ。例のおむつリサが刑罰代わりに島流しされればいいのよ。」
394pinksaturn:2007/05/02(水) 00:36:36 ID:yUv53f+b0
メタリカ:「でもおむつリサって、メタロリじゃないわよ。」

メタルナ:「刑罰だから四肢切断なんか当然じゃん。どうせ員数合わせならダルマのままで良いわ。」

メタレア:「そうよね。とにかく私は絶対再契約なんかしないわ。」

孫:「おい、スージーが早く出ろといってきたぞ。無駄口叩いてないでさっさと乗り込むんだ。」

メタラニ:「相変わらずせっかちな機械人間たちね。」

メタリカ:「また磔台で猛加速に耐える地獄の日々かぁ。憂鬱だわ。」

孫:「早く持ち場に着くんだ。余計なこと考えてて事故起こしたら即お陀仏よ。」

メタルナ:「はいはい。右舷レーダー映像良好。」

メタレア:「同じく左舷良し。エアロック外壁まで200b。余裕ですよー。」

管制官:「北米連査察船出航完了後、待機中の満漢連絡船が入港する。警備兵は入管業務体制を採れ。」

警備兵:「あら?。満漢は査察船が出ないうちにもう次が来たの?。今日は賑やかだわ。」

管制官:「満漢連絡船は査察船隣への接岸を要求している。満漢船間の往来は入管対象外とする。」

警備兵:「へえ。手間が省けるわね。気が利くじゃないの。」
395pinksaturn:2007/05/02(水) 00:54:42 ID:yUv53f+b0
(ベイ内の満漢人民共和国査察船 蛸部屋)

査察官:「入電。發人民党本部。経由月火星連絡船弐号。査察官、操縦員両名、交代連絡船乗船下命。
新査察官居住港湾飯店。本船編入隕石鉱夫団。乗員、新着・隕石鉱夫団長、新着・操縦員、鉱夫九名。
月面苦力隊九名、免兼務査察団、命兼務隕石鉱夫団。尚戸籍付与、所属地域小惑星帯。脱無戸籍祝賀。」

達磨娘・月面苦力1号:「悲惨。我々置去。地球帰還不可。」

達磨娘・月面苦力2号:「祝賀論外。小惑星戸籍、無戸籍以下也。」

達磨娘・月面苦力3号:「懇願。農村戸籍付与。」

査察官:「全人代議決新人口制限法。無戸籍者原則地上居住禁止。不法居住者生存権剥奪、肉畜扱。
小惑星戸籍無償付与特別慈悲也。農村戸籍特別付与税壱億元、都市戸籍特別付与税壱拾億元也。」

達磨娘・月面苦力4号:「壱億元!。絶望的金額也。」

達磨娘・月面苦力5号:「小惑星戸籍棄民同然。」

達磨娘・月面苦力6号:「嗚呼、地球帰還願望。」

達磨娘・月面苦力7号:「最低限壱人壱式手足譲与希望。」

査察官:「隕石鉱夫団参交代勤務。手足増備不要也。」

達磨娘・月面苦力8号:「号泣。」
396pinksaturn:2007/05/02(水) 00:55:15 ID:yUv53f+b0
査察官:「不平発言処罰制度存続中。以後雑言禁止。」

達磨娘・月面苦力9号:「諸盆。」

管制官:「満漢連絡船接岸完了。警備兵は入管体制。繰り返す、警備兵入管体制...」

査察官:「我移乗。再見。」

達磨娘・月面苦力1号:「壱億元、壱億元...方法思料。」

達磨娘・月面苦力2号:「公式販路当局搾取率劇高必至。」

達磨娘・月面苦力3号:「禿同!、勤勉隕石資源収集到底一億元収入不能。」

達磨娘・月面苦力4号:「隕石資源採取量計測杜撰必至。」

達磨娘・月面苦力5号:「高単価資源物横領、帝國転売名案也!。」

達磨娘・月面苦力6号:「禿同!。貴金属類隠匿手法検討。」

達磨娘・月面苦力7号:「剛体宇宙服内部空隙大也。」

達磨娘・月面苦力8号:「空隙使用手足制御接点支障不安。」

達磨娘・月面苦力9号:「無問題。制御接点伝達部密着構造也。」
397pinksaturn:2007/05/02(水) 00:56:16 ID:yUv53f+b0
(地球静止軌道 第1工場衛星 ベイ)

みどり:「着床まで5m。係留ポール挿さります。あっひっ...イイ。入りました。」

真理亜:「ご苦労さん。総員退艦せよ。」

マオ:「真理亜侯、工場の義肢設計部に寄り道したいので許可願います。」

ミキ:「私もお願いします。マオ、足の部品で出し抜こうったって、そうは行かないわよ。」

真理亜:「二人とも良いわよ。だけど工場の特例志願兵も再改造要員に引き抜かれているわ。
人手が減って大変だから、あんまり面倒な特注品は引き受けてくれなくなってきてる鴨ね。」

マサ:「そういえばひとみさんはどうしているかな。脳性麻痺だから残っているかな。」

真理亜:「まだ居るわ。今度私らが金星に持っていくリモートの足を担当しているわね。」

マサ:「そうでしたか。だったら私たちも寄っていかないんですか?。」

真理亜:「頼んだ仕事は終わっているし向こうも忙しいでしょ。こっちも時間無いし。」

マサ:「時間ったって、休暇入りでしょう?。」

真理亜:「あのねえ、金星の自転考えなさい。軌道中継ステーションは静止衛星じゃないのよ。
到着時刻が悪いと、うちの浮遊プラットフォームに降りるタイミングを待つことになるわ。
30分以内に発進すれば乗換待ちが殆ど要らないけど、逃がすと30時間待ちなのよ。
着いたらやることが一杯あるのに丸1日以上遅れちゃ堪らないわ。さあ、急ぎなさい。」

マサ:「はぁ、今回の休暇は全然マターリできないのかよ。」
398pinksaturn:2007/05/02(水) 02:37:51 ID:yUv53f+b0
(青の公家 連絡艇)

マサ:「この艇を使うのは初めてだけど、なかなかしっくり来ますね。」

真理亜:「そりゃそうよ。藻前が頻繁に使う想定で迎撃艇をベースに作らせたからね。
燃費とペイロードを考えたら資源収集艦をベースに小型化する方が遙かに合理的なのよ。
高速連絡艦の増備で余った旧式の4グリッドイオンエンジンが安く公売されているからね。
ところが藻前は操舵員能力が低くて迎撃艇なら大得意ときてるだろう。
おかげで不経済な化学エンジン併用で積載力極小の迎撃艇をベースにする羽目になったんだ。
戦闘用でもなく大気圏に降りられるわけでもないのに無駄な急加速性能だけが取り柄でね。」

マサ:「プラットフォームの固定資産税代わりに炭素吸収義務が課されているじゃないですか。
どうせエタノールを生産して金星から持ち出さなきゃいけないから余るでしょう。」

真理亜:「藻前のせいで酒にして地球に輸出できるものをただ燃やしているんだよ。」

マサ:「最近、酒は火星大工場で量産されてるからどうせ太刀打ちできませんよ。
もう値崩れする時代なんだから水余りの生産拠点には敵いませんって。」

真理亜:「そんなことは無いわ。ワイン作るなら天然の日照がものを言うでしょうが。
日当たりの良い金星産ワインを蒸留してブランデーにすれば上物になるんだよ。
火星大工場で作ってるのはウォッカや焼酎が殆どだから市場が競合しないでしょうが。」

マサ:「プラットフォームに葡萄を植えたんですか?。なら休暇中は飲み放題ですね。」

真理亜:「水不足で日照が強い場所なら当然の選択よ。飲むのは良いがちゃんと働けよ。」

マサ:「ワイン造りは楽しそうですね。」

真理亜:「コギャルが踏みつぶした葡萄を使うと高級ワインになるって決まってるんだ。
藻前もコギャルを標榜するなら精々公家の利益に貢献しなさい。」
399pinksaturn:2007/05/02(水) 02:38:53 ID:yUv53f+b0
(金星 青の公家私有浮遊プラットフォーム http://pinksaturn.fc2web.com/kinsei-aonobettei.htm

マサ:「着陸床まで8m。降下速度0.5`。そのまま着床します。よし着いた。
さーて、酒だ酒だ。」

真理亜:「その前に積み荷を降ろしてカプセルをリサイクルバンカーに入れるんだよ。
12時間後に次の氷隕石が落下するから衝撃波に備えて全部安全に格納しないとダメ。」

マサ:「え?、どうせ退避命令が出てるから東に300`移動するんでしょ。」

真理亜:「移動しても爆風が拡がるから少々揺れるの。備えは必要でしょうが。
着陸床にカプセルを放置なんかしていたら転落する恐れがあるんだからね。」

マサ:「はいはい。リモート体は接続して歩けば済みますが水10dは大変だなぁ。」

真理亜:「水はカプセルをリサイクルバンカーに入れれば自動処理されるわよ。
まずリモート体をそれぞれ1体ずつ接続して外に出しなさい。」

マサ:「接続しましたよ。貨物扉開けます。」

真理亜:「よし、私が反対側を持つからそのままリモート体でカプセルを持ち上げて。」

マサ:「え?。いくら重装甲ボディーがベースでもそんな力あるんですか。」

真理亜:「電池がすぐ減る代わりに力は十分よ。はい、せーの、そのまま右に20m。」

マサ:「バンカー扉開けます、よしここで良いですね。うーん、こりゃ軽々だ。」

真理亜:「感心してないでバンカーに降ろしたらリモートを退けて本体が降りること。
ぼんやりしているとカプセルごと自動リサイクルされてしまうわよ。」

マサ:「あ、あわわわ、本体復帰、真理亜様待ってよぉ。」
400pinksaturn:2007/05/02(水) 02:39:40 ID:yUv53f+b0
真理亜:「ちっ処理し損なったか、なーんちゃって。」

マサ:「ふう。何なんですかこの危ない施設は。」

真理亜:「だから手間要らずの自動リサイクル施設よ。カプセルを自動解体するの。
タンクの水は勝手に抜いてプラットフォームの水槽に回収してくれる優れモノよ。
もちろん解体したカプセルは全自動で融解して打ち上げロケットにしてくれるわ。」

マサ:「手間いらずは禿同ですが、もっと安全な造りに出来ないのかと小一時間。」

真理亜:「そのまま融解されるようなのろまは青の公家、いや宙軍全体に不要よ。
さあ、次の仕事に備えて体の換装よ。放射能ワインじゃ売り物にならないからね。」
401pinksaturn:2007/05/02(水) 08:12:23 ID:yUv53f+b0
(換装室)

マサ:「換装は良いですが、ここには消化器官が置いてないですよね。」

真理亜:「ああ、今回の休暇中は酒だけにして。どうせここで美味い物は酒だけだし。
次に来るときまでには、豚消化器を手配して置くけど、今回間に合わなくてね。」

マサ:「そんな悪寒がしていたけどやっぱりか。」

真理亜:「ぶつぶつ言うな。換装したらそっちの衣装に着替えてワイン工場よ。」

マサ:「なんすか?。あの妙に地味ーなゴスロリもどきは。」

真理亜:「17世紀南ヨーロッパ風のドレスよ。」

マサ:「何故そんな中途半端に古風な代物を?。」

真理亜:「ワカラン香具師だな。高級ワイン造りは形からよ。」

マサ:「はあ。そんなものですかね。」
402pinksaturn:2007/05/02(水) 08:13:23 ID:yUv53f+b0
(ワイン工場 http://pinksaturn.fc2web.com/kinsei-masa-vin.htm

真理亜:「汚さないようにスカートの裾を持って踏むんだよ。」

マサ:「だからぁー。何故こんな古風なドレスで作業するのかと小一時間...」

真理亜:「高級感だよ高級感。藻前の育ちでは理解できないかも知れないが重要なの。」

マサ:「それとここの石造りの壁なんかも関係あるんですか?。」

真理亜:「当然。室内の大気成分まで厳密に古城を再現したのよ。」

マサ:「ここは良いけど葡萄畑の大気まで再現するのは無理でしょう?。」

真理亜:「そんなことは無い。畑を囲う外壁をガラスでなく有機多層膜にしてあるでしょ。
あれは適度に外気の二酸化炭素と畑で余った酸素を交換してくれるように調整してある。
同時に多層膜光フィルタとして日照の波長成分も最適化するんだよ。
機械で調整するのは加湿器の運転だけで地中海沿岸に似た気候を作れるよ。」

マサ:「そこまでの技術がありながら原始的な葡萄踏みも必要なんですか?。」

真理亜:「酒は生き物なんだよ。だからワイン造りにはコギャルの精神が欠かせない。
この作業だけはロボットや遠隔リモート体では出来ず、本体でやらないとダメね。」

マサ:「それでわざわざ休暇に金星通いですか。余程美味いのが出来ないと割に合わないな。」

真理亜:「飲んでみればすぐに判るよ。それに仕事は葡萄踏みだけではないわ。」
403pinksaturn:2007/05/02(水) 08:14:02 ID:yUv53f+b0
(金星プラットフォーム青の公家別邸内 円卓の間)

マサ:「ふむ、このブランデーは上物だけど何かが欠けている気がしますね。売れませんよ。」

真理亜:「藻前は育ちが悪い割にどういう訳か味覚と性感だけは鋭いからすぐに見抜いたな。
ここの改装後すぐに仕込んだものだったけど使ったアルバイトがイマイチの香具師でね。
衛生的で良いと考えて脚をステンレス外皮の扁平足に換装して葡萄踏みをやってくれたんだよ。
ステンレス外皮の脚を舐めてみたいと思うのは余程特殊な趣味の奴だけだろう?。
そういうことだよ。葡萄踏みは舐めたくなるような脚でやらなくちゃダメさ。」

マサ:「確かに。私ならそんなコギャル精神に欠けたやぼったいことはしませんね。」

真理亜:「ところで今日落下した氷隕石は見事に最寄りのクレーター中心に入ったそうだ。
まだ正確な数値は出ていないが、ここの真下の地上温度が80度前後になる可能性が高い。
30時間ほど様子を見てそれで安定しそうならリモート体を降ろして探検してみよう。」

マサ:「もうやるんですか?。温調で電気喰うから電池が2時間保つかどうかでしょ?。
あのリモートには発電能力がないんですよ。短時間ではろくな成果が上げられません。」

真理亜:「リモートだけ降ろすわけではない。小型の格納ドームごと気球で降ろすのさ。
格納ドームはごつい魔法瓶みたいなもので温調も付いているから中で整備が出来る。
風力発電機が付いているし緩いほうと言っても相当な風はあるから電力は十分取れるだろう。
ドーム内の温度を50度ほどに保ってもリモートの充電に回す余力はあるよ。」
404pinksaturn:2007/05/02(水) 08:37:52 ID:yUv53f+b0
(資材倉庫)

マサ:「何ですか?。あの紙袋の山は。」

真理亜:「石灰だよ。ドームを降ろす場所一帯に撒いておくのさ。地面は強酸性だからね。
チタン製のドームでも濃硫酸がしみこんだ地面に置いたらじきに腐食してしまうのよ。
それに耐酸性の遺伝子組み替え植物を蒔いてみるにはなるべく中和する必要もあるわ。」

マサ:「雲が厚くて光が少ないから地面の酸性を中和したって難しいでしょう?。」

真理亜:「焦熱地獄になるくらいだから波長の長い光は沢山届いて居るんだよ。
火山の周辺とか酸性土でも草は生えるしコケや下草のように少ない光で育つものもある。
そういう種を元に野菜類の遺伝子を組み替えて耐酸性と葉緑体の適合波長を操作したのさ。
まあ、結果はどうなるかやってみないと皆目見当が付かないけどね。
1品種でも根付いて蔓延れば一帯の温度安定化に大きく効くからめっけものさ。
プラットフォーム上の作物やドーム内のサボテンなんて量が少なすぎるからね。」

マサ:「意味は分かりましたが、撒くのはどうやってやるんですか?。
一つ100`とすると1000dほどありそうですよね。手で撒くんですか?。
リモート2体でこんなに沢山撒くのでは気が遠くなりますよ。」

真理亜:「石灰袋の中心に爆弾を仕込んで爆撃するのさ。そのセッティングに来たんだよ。
そっちに大量のカプセルがあるだろ。あれに酸素と水素の爆鳴気を詰めるんだ。
カプセル内に圧力信管が付いているから地表付近の気圧で自動点火される。」

マサ:「なるほど。爆発とともに少しでも水蒸気を出そうって訳ですね。」

真理亜:「その通り。少しでも湿気が有った方が中和反応が進むだろう。」
405pinksaturn:2007/05/02(水) 08:39:10 ID:yUv53f+b0
(プラットフォーム制御室)

マサ:「赤外線計によるとこの真下は地表温度77度、位置はクレーターの縁から5`です。
大気の吸収が大きいから温度の計測精度はあてになりませんがね。
地球から石灰を持ってくる手間を考えるともうちょっと余裕が欲しいかなあ。」

真理亜:「一応予定に近いか。やってみるしかないわね。投下始めて。」

マサ:「投下装置始動します。ベルトコンベア始動、プラットフォーム推進器微速。」

真理亜:「よしそのまま。投下しながら500b進んだら右に回って折り返しよ。
往復しながら500メートル四方の地表を絨毯爆撃するんだよ。」

マサ:「そろそろ届く頃だけど、あ、閃光見えましたねうまく地表付近で爆発してます。」

真理亜:「これで当面作業する場所は中和できそうかな。終わったらリモート降ろすよ。」

マサ:「80時間後に次の氷隕石落下ですよ。爆風は大丈夫かな?。」

真理亜:「次の落下地点は一番遠いクレーターだから問題はないな。
むしろ落ちるところを地上から観測できる貴重な機会だね。
近くに落ちるのは次の次だからそれまでに格納ドームを固定すればいいさ。
すぐにリモートを起動してド−ムに入れるんだ。」
406pinksaturn:2007/05/02(水) 09:00:23 ID:yUv53f+b0
(リモートボディ格納ドーム)

マサ:「入り口ロックしました。気球にヘリウム入れ始めますよ。」

真理亜:「浮き上がる寸前で停めてクレーンで降ろすんだよ。」

マサ:「浮力9d、こんなものかな。出しますよ。」

真理亜:「降りていくと気圧でしぼむから加速付きすぎないうちに足すんだ。」

マサ:「リモート体とはいえ金星地表に向かって落ちるのは気味悪いなぁ。
外気温100度超えましたね。ずいぶん上がってるな。大丈夫かしら。」

真理亜:「この高度じゃ氷クレーターの影響も風で薄まってるからさ。
クレーター付近の地表ならもっと低温だよ。それより気流に気を付けて。
あんまり流されると良いところに降りられなくなるから早めに戻すのよ。」

マサ:「側面バーニア噴射。戻った。絞って。これで対地速度はゼロですよ。」

真理亜:「うん。いいよ。気温も下がってるだろう。」

マサ:「ちょっと落下が早くなってきた。ヘリウム足します。」

真理亜:「着地は秒速2b以下にしたいな。荒いと水タンクが危ない。」

マサ:「秒速5b、気球膨らみにくくなってきましたよ。」

真理亜:「タンクの水を500`放出するんだ。」

マサ:「ここで水が1割目減りするのは痛いですね。」
407pinksaturn:2007/05/02(水) 09:01:27 ID:yUv53f+b0
真理亜:「どうせ種撒く辺りが濡れるんだから無駄でもないさ。」

マサ:「放出しました。落下速度秒速3b。まだ減速してます。」

真理亜:「良いペースよ。最後は逆噴射で合わせて。」

マサ:「高度50b。逆噴射かけます。高度20b。着地。よーし成功。」

真理亜:「喜ぶのは早い。すぐ気球を畳んでアースドリルを回しなさい。
ここで突風が来たら飛ばされてしまうわよ。」

マサ:「アースドリル始動。ヘリウム回収ポンプ回します。う、遅い。」

真理亜:「気球を収容しないと風車が展開できないから電気がないのよ。」

マサ:「この状態は確かに危ないですね。気球を棄てた方が早いんじゃ?。」

真理亜:「地表でめぼしいものが見つかったら上にあげるのに要るでしょうが。」

マサ:「あ、そうか。気球収納まで9分です。アースドリル食い込み40aです。
遅いよぉ。地面固いなあ。」

真理亜:「硫酸の雨がしみこんで硫酸塩の結晶になっているから仕方ないわ。
固い方が刺さった後の安定は良いから地盤が悪いとも言えないしね。」

マサ:「でも、こんなんじゃ種撒いたってなかなか根付きませんよ。」
408pinksaturn:2007/05/02(水) 09:02:11 ID:yUv53f+b0
真理亜:「石灰袋の爆発で砕けた場所を狙うしかないわね。
あとは持ってきた種の中に根性のある奴が混じってるのに期待するしかないな。
一応、古代蓮だの、ど根性大根、ど根性トマトとかいかにもって遺伝子は集めたわ。
どいつも藻前と違ってちょっとやそっとではへこたれない代物よ。
色々撒けば一つや二つは生き残ると思うけどね。」

マサ:「まるで私が軟弱者の代表みたいな言い方ですねぇ。まあいいか。
アースドリル2b入りました。もう良いでしょうね。」

真理亜:「よし。停めて速乾セメントを注入するんだ。」

マサ:「注入します。気球縮んだので収納します。」

真理亜:「気球が片づいたら発電風車を出すんだ。これで電気に困らなくなる。」

マサ:「風車格納ハッチ開放、支柱繰り出します。ピッチ40度、ブレーキ開放。
お、回った。いきなり500ワット近く来ましたね。もう1基も出しますよ。」

真理亜:「風の強さは期待通りほどほどだわ。強すぎたら種が蒔けないしね。
ドームのペルチェ空調に通電して、リモートボディにも充電するのよ。」

マサ:「充電していないと電力が余ってしまうくらいですね。」

真理亜:「電力が余ったら外気を取り込んでドライアイスを製造する装置がある。
ドライアイスはドームの温度安定に使って余ったらクレーターへ棄てに行くのさ。」

マサ:「でも結局気化したら炭酸ガスが減りませんね。」

真理亜:「そうでもないさ。湖底深く沈めれば水圧で閉じこめられるからね。」
409pinksaturn:2007/05/02(水) 09:21:56 ID:yUv53f+b0
(リエたちの会社が落札した浮遊プラットフォーム)

あざみ:「真下の地表温度は200度くらいです。ここはまだ熱いなぁ。
もうちょっとクレーターが近ければ良いのにねぇ。」

リエ:「緑化しようって訳じゃないから生存可能温度まで下がっていなくても良いわ。
狙いはあくまでも水銀鉱脈の確認だから差し当たり使い捨てプローブが動けばいいの。
200度ならプローブを4dくらいの氷塊で包んで降ろせば半日は使えるでしょ。
恒久的な設備を設置するのは鉱脈を確実に把握して試掘にかかる段階で考えることよ。
それに200度だったらフル回転で製氷してじゃんじゃん送れば小施設を維持できるよ。」

あざみ:「そうですね。でわ、プローブの氷詰めを用意しましょう。何個作りますか?。」

リエ:「不可能でないと言っても試掘はかなり高くつくから予備調査の精度は欲しい。
3点では心許ないから6箇所に投下しよう。2倍有れば組み合わせで情報量は数倍になる。」

あざみ:「6個ですね。冷凍機は10基有るから並列でいけます。3時間で出来ますよ。」

リエ:「4基遊ばせるのは惜しいな。空の氷塊を4個作っておこうか。」

あざみ:「空の氷塊ですか。なにに使うのですか?。」

リエ:「落下傘無しで落としてどれくらいめり込むか調べるんだよ。
高温高圧下で地面がどうなっているかなんて想像だけで詳しい情報はないんだ。
地面の固さによってはいい鉱脈があっても掘りにくいかも知れないだろ。
あとで試掘装置を用意するときにどんな仕様にするかは地面に左右されるからね。」
410pinksaturn:2007/05/02(水) 09:22:54 ID:yUv53f+b0
(真理亜とマサのリモートボディ格納ドーム)

マサ:「ボディの充電がフルになりましたね。土台のセメントも乾いた頃です。」

真理亜:「よし、エアロックから外に出てドームの固定状態を確認しようか。
ここの安全を確認できたら石灰の濃いところを選んで種を蒔くよ。」

マサ:「エアロック内扉開けます。ふん、機密がいまいちだなちょっと漏れてる。」

真理亜:「宇宙空間用のような気密性にしたら重量がかさむだろうが。
こいつは硫酸の侵入を抑えるだけで良いから内圧を上げて釣り合わせる方式なのよ。」

マサ:「なるほど。重い扉より水を降ろす方が優先ですもんね。内扉締めます。」

真理亜:「帰ってくるときはそこのシャワーで酸を洗い落としてから入るのよ。」

マサ:「毎度洗うんじゃすぐに水が足りなくなりそうですね。」

真理亜:「プラットフォームには200dの余剰備蓄があるから補給できるわ。
洗浄に使った水は外の散水に使って、減ってきたら気球につり下げて降ろすのよ。
どのみち種撒いたらドーム周囲に一日500`は散水しないと芽が出ないからね。」

マサ:「気圧合いましたよ。外扉開けます。」

真理亜:「出たら藻前は右に回れ。アースドリルを2基ずつ手分けして点検だ。」

マサ:「つんつん、セメントは固まってますね。気泡もないし大丈夫だな。
こっちはどうかな。固まってるな。ちょっと揺すってみよう。動かないね。
ドームの土台は良いようですよ。で、種ってどこに積んでるんですか?。」
411pinksaturn:2007/05/02(水) 09:23:33 ID:yUv53f+b0
真理亜:「エアロックの脇に納戸があるだろ。小袋にわけて積んであるよ。」

マサ:「あー、これかぁ。遺伝子組み替え100%、ど根性シリーズ、混蒔用。
要分別管理。なかなかえぐいタイトルの製品ですね。採れても食べたく無いなあ。」

真理亜:「金星の地面なんてどんな有害成分があるか判らないのよ。
生育しても、いきなり食べたらイタイイタイ病になることだってありうるわ。
最初は生育可能かどうか確かめるだけで食べることなんか想定していないわ。
うまく行っても地球の研究所に持ち込んで分析させなきゃ危ないに決まってる。」

マサ:「でもプラットフォーム葡萄薗のワインは売るんでしょう?。」

真理亜:「あそこは人造水耕下地だから宇宙工場と同じで安全な成分しか無いのよ。」

マサ:「するとここではカドミウムとか出ちゃったら農地化は無理ですか。」

真理亜:「とりあえず温度安定化さえ出来れば大規模な土壌改良施設だって置けるわよ。
今のところは植物相さえ形成できれば質は問わずってことね。」

マサ:「そんじゃあとりあえず蒔いてみますか。」

真理亜:「蒔いたら一旦撤収して上で追加の水を降ろす準備をするのよ。」
412pinksaturn:2007/05/02(水) 09:56:28 ID:yUv53f+b0
(リエたちのプラットフォーム)

あざみ:「使い捨てプローブの氷詰め出来ましたよ。」

リエ:「一辺20`の正六角形になるように移動しながら投下するわよ。パラシュート付けて投下口にセットして頂戴。」

あざみ:「空の氷塊はどうしますか?」

リエ:「プローブ降下後に六角形内部へ投下するのよ。めり込みを見るだけじゃないわ。
着地の衝撃が良い人工地震になるからプローブの地震計で捉えれば広く地質が捉えられるわ。」

あざみ:「でも地震波ではなかなか成分まで推定って難しいのでしょ?。」

リエ:「プローブのボーリングシャフトは50bだから深いところの情報は地震しかないわ。
その50bだって、熱でドリルが保たなきゃもっと浅くなるしね。さて、1個目はここらでいいかな。」

あざみ:「1分経過、パラシュート開きました。」

リエ:「ここからの風がねぇ...けっこう流されるな。」

あざみ:「着地しました。取りあえず立っているのでボーリングは可能ですね。」

リエ:「回ってはいるな。シャフトがうまく刺さるかな。」

あざみ:「5bほど入りましたね。地熱は210度あります。サンプル1個目上がります。」

リエ:「取り込んだらX線デフラクトメーターにかけるのよ。」

あざみ:「線源部温度は0度。出力正常です。終わるまで氷と電池が保つと良いけど。」

リエ:「取りあえず次だな。移動する。1個目が停まる前に6角形を完成せねば。計測結果のチェックは任せたわよ。」
413pinksaturn:2007/05/02(水) 09:57:45 ID:yUv53f+b0
(青の公家別邸プラットフォーム)

マサ:「リモートボディリンク終了...。よし帰還。」

真理亜:「ぼけっとしてないで降下タンクに注水よ。」

マサ:「え、一杯やってからにしましょうよ。」

真理亜:「配管が細いから時間かかるのよ。起動してからにしなさい。遅れたら水が切れてしまうわ。」

マサ:「4d有ればそんなすぐには切れないでしょう。」

真理亜:「始めのうちは地面がからからだから多めに撒かなきゃダメよ。」

マサ:「はあ。じゃ作業始めますか。やれやれ、本体の燃料が切れなきゃ良いが。」

真理亜:「降下前にあれだけ飲んだらそんなすぐに切れるわけが無かろう!。」
414pinksaturn:2007/05/02(水) 09:58:42 ID:yUv53f+b0
(別邸下層部の貯水槽前)

マサ:「よいしょ。うう、なんで降下タンク置き場とここの間が人力トロッコしかないんだか。」

真理亜:「ワイン工場のため下層を石造りで増築したから気球の浮力に余裕が無くなったのよ。」

マサ:「そんなぁ。水入れたら2.5dですよ。何でサイボーグがこんな原始的労働をするのか。」

真理亜:「サイボーグなら2.5dどころか4dだって一人で押せるだろうが。しかも二人だ。」

マサ:「で、給水バルブは?...え?これは!。」

真理亜:「石の水門がそんなに珍しいか?。そっちの輪っかを回して開くんだよ。」

マサ:「貯水槽まで大理石で作ったらそりゃ重量オーバーになりますよ。無茶な話だ。」

真理亜:「これは酒造用水を兼ねてるんだから金気臭くなったらダメでしょうが。
この石材は弱アルカリ性だから下で使う水としても都合がいいんだよ。
そもそも藻前は前回の休暇でここの設計打ち合わせをさぼって売春していただろ。
設計を手伝わなかった者がここの造りに文句を言う資格はない。」

マサ:「水門開けたけどちょろちょろとしか出ませんね。」

真理亜:「氷隕石落下の爆風で揺れても大きな漏水がないように水門が狭くしてある。
だから一杯やるのはこれをセットしてからだと言ったんだ。」
415pinksaturn:2007/05/02(水) 10:20:38 ID:yUv53f+b0
(リエたちのプラットフォーム)

リエ:「よし。6個目も掘り始めたね。いよいよ地震を起こしてみる番だな。」

あざみ:「3基目から最初のX線デフラクトメーター反射グラフ出ました。
主なピークの格子定数出します。んーー、結局最強は鉄かぁ。水銀、大して多くないなぁ。」

リエ:「どれどれ。フツーこんなものじゃない?。鉄は宇宙で一番多い金属でしょうが。
金星なんて硫酸降りまくりだし、どこ掘っても黄鉄鉱だらけでしょ。水銀のピークはここだね。
ふんふん、これなら濃い方だわ。2次探査をやって地点を絞り込めばまとまって出そうよ。」

あざみ:「また使い捨てプローブ使うんですか?。X線源が入るからけっこう高いんですよ。」

リエ:「核パルス推進艦が冥王星へ1往復する度に水銀を150dも消費するんだ。
財部省が密かに買い集めてきたが、そろそろ世界が感づく頃だよ。そうなれば暴騰さ。
小惑星からの収集もめぼしいのはトロヤとか僻地ばかりで楽な場所が無いようだしね。
火星大工場では数百グラム単位で満漢の隕石鉱夫が横流しする品まで買っているそうよ。
たかがプローブ代ごときはすぐに回収できると思うね。」

あざみ:「そういうものですか。私のちっぽけな脳では憑いていけませんね。」

リエ:「藻前はどうせ気楽なアルバイトだろう。無理して経営の心配をする必要はないわ。
私はしくじったら体を覆うダイヤ膜や皮下の水銀まで売り払う覚悟で腹を括っているのよ。
この外皮を買い取りたいっていうフェチは結構大勢居るから文無しになっても困らないし。」

あざみ:「大変なばくちですね。」

リエ:「大昔から山師とはそういうものさ。よし、ここでいいな。氷塊を落とすよ。」

あざみ:「地震計信号受信チェックします。...6基とも入っていますよ。
全てのボーリングを一時停止します。振動収まりました。投下どうぞ。」
416pinksaturn:2007/05/02(水) 10:21:24 ID:yUv53f+b0
リエ:「ほい。1発目だ。」

あざみ:「P波来ました。続いてS波も...あれ?、4番だけ弱いし遅いわ。」

リエ:「投下地点との間に液体の地層があるからだね。そしてこの温度だ。
はんだ類の一部みたいに特殊な合金が天然に無いとすれば水銀しか考えられないね。」

あざみ:「でもこれほどS波が遮られるってそんな大きな液体層が...」

リエ:「生物が居ない金星に石油が眠っているわけもないし他に無かろう。
実は任務中にここのレーダー探査をやったとき特定波長の反射に影が出ていてね。
大本営に命じられた任務は地形調査だったからこの件は詳しく報告しなかったのさ。
それでこっそり目を付けていて落札時にこの場所を選んだってわけよ。
これで多分この大ばくちは私の勝ちだね。さて、少し場所を変えて絞り込もうか。」

あざみ:「1個目のプローブ、氷が無くなりそうです。急ぎましょう。」

リエ:「ふっ。積極的になってきたな。だが、バイトにボーナスはないわよ。」

あざみ:「あ、いえ、次の機会も是非来させて下さい、リエ社長。」

リエ:「くっくっく。今度の働き次第で契約社員にしてやっても良いよ。
当たり確定で地上に試掘施設を置くとなったら製氷機の増強も手配しないとね。
気温200℃の地区で1000uほどを常温に保つなら計30基は欲しいな。
ミキの実家を資本参加させておいたのは正解だったわ。」
417pinksaturn:2007/05/02(水) 10:22:25 ID:yUv53f+b0
(金星プラットフォーム青の公家別邸内 円卓の間)

マサ:「うーん、労働の後の一杯は堪りませんな。このヌーボーは良いじゃないですか。
昨日のステンレス扁平足ブランデーとは大違いだな。」

真理亜:「うむ。この樽はマツとミツがバイトに来て踏んだやつだからな。」

マサ:「あいつらか。腕が立つから遠距離任務が多いのによく時間がとれましたね。」

真理亜:「大量の氷隕石が金星に着きだす頃にまとまった移動装置の回収があったろ。
万一、テロリストの手に落ちたらしゃれにならない量の核物質が乗っていたわけだ。
それで回収班とは別に精鋭の護衛が付いたときがあったのよ。
回収船が金星から離れた後は暇になるのでそのまま寄り道させたのさ。」

マサ:「貴重品ですね。」

真理亜:「その通りだ。この樽は売らないつもりだ。飲めるのは貴族の特権よ。」

マサ:「味わいが人工臓器を突き抜けてクリトリスまで染み渡る感じがしますよ。」

真理亜:「さて、降下タンクが一杯になった頃だ。降ろすよ。」

マサ:「え?。昼寝ぐらいしていかないのぉ。」

真理亜:「マターリしている場合じゃない。下のドームの給水が最優先だよ。」
418pinksaturn:2007/05/02(水) 11:37:51 ID:yUv53f+b0
(別邸最下層 投下口)

マサ:「よいしょ。ひいぃ。水満タンのトロッコ押すのはやっぱりきついや。」

真理亜:「うだうだ言ってないで気球にヘリウムを注入しろ。」

マサ:「ヘリウムバルブまで手回しとはね。重量ケチるのも考え物ですよ。」

真理亜:「降下中の感圧追加バルブは自動だ。良いからさっさと手を動かせ。」

マサ:「浮いてきました。浮力2d。トロッコどけます。」

真理亜:「よし投下口を半開きにしてタンク下のロープを垂らすんだ。」

マサ:「落としましたが、下でこれを掴んで引き寄せるんですか?。」

真理亜:「その通りだ。水を降ろすと浮いてしまうから係留するためでもある。」

マサ:「今回はなにからなにまで原始的な希ガス。これがサイボーグの仕事とはなぁ。」

真理亜:「良いから次だ。3歩下がって投下口全開、よろけて落ちるなよ。」

マサ:「ぞくっ。やっぱこの場所は怖いよ。大気圏飛行能力なんて無いんだからねぇ。」

真理亜:「よし、投下口閉めろ。制御室に移動してリモート接続だ。」
419pinksaturn:2007/05/02(水) 13:22:16 ID:yUv53f+b0
(地表のリモートボディ格納ドーム)

真理亜:「さっさと起きあがりなさい。ぐずぐずしていたら気球が流されるわ。」

マサ:「ひいぃ。忙しいなあ。」

真理亜:「すぐエアロックに行くのよ。次の隕石落下前に水を降ろしてしまわねば。」

マサ:「あら、もうこんな時間。確かに爆風はまずいわ。ダッシュダッシュ!。」

真理亜:「よし、外扉開いたわ。ロープ探して。蛍光塗料で目立つはずよ。」

マサ:「あ、あそこ。クレーターと反対方向。これ以上離れたらかなり熱いですよ。」

真理亜:「全力疾走だ。先に追いついた方がとにかく先を掴むのよ。」

マサ:「こら気球、待てーっ!。」

真理亜:「怒鳴っても気球は止まらないわよ。足元注意!。」

マサ:「ここは平坦だから...あ、いててて。なんでこけるかな。あ、これは。
石灰爆弾の穴かよ。ん?。え、なにこれ、もう芽が出てるジャマイカ!。」

真理亜:「捕まえた!。おいマサ、引っ張るんだ...ん?何やってるんだ!。」

マサ:「転びました。その時見つけたんです。もう芽が出てます。」

真理亜:「そうか。早いとは聞いていたけどこれ程とはね。さ、とにかく水よ。」
420pinksaturn:2007/05/02(水) 13:22:57 ID:yUv53f+b0
マサ:「よいしょ、よいしょ。ふう。タンクに手が届きました。ああ、かなり熱い。
こんなお湯を撒いたんじゃすぐ蒸発してしまうし草の芽だって茹だってしまうな。」

真理亜:「ドーム内は冷却されているから保管中にいくらか冷めるわよ。
このまま気球ごとタンクをドームに引っ張って行って係留し水を移すのよ。」

マサ:「ホース繋ぎました。バルブ開けますよ。」

真理亜:「開けたらロープの固定を確かめて。軽くなると浮き上がってしまうわ。」

マサ:「ふん、ふん。これでいいでしょう。そっちの端は放しても大丈夫ですよ。」

真理亜:「走ったからすぐドームに入って充電しなくちゃ。」
421pinksaturn:2007/05/02(水) 13:23:28 ID:yUv53f+b0
(ドーム内充電台)

マサ:「充電率50%。取りあえずこれでもう一度外の様子を見ませんか。」

真理亜:「何をそわそわしているんだ。」

マサ:「さっき見つけた発芽が気になりませんか?。」

真理亜:「ああ、だけどここの日照じゃ成長は遅いわ。早いのは発芽だけよ。
ジャックと豆の木のようにでもなると思っていたのか?。」

マサ:「いや、そこまでは。でもちょっとだけ空想しましたが。」

真理亜:「くすっ。それはともかく隕石落下前に水タンク気球を上に戻したいな。」

マサ:「飛ばすのは良いけど回収方法って有るんですか?。空中ですよ。
追いかけてロープ掴むわけには行かないでしょう。」

真理亜:「発信器があるから小型飛行船で捕りに行けばいいのよ。」

マサ:「初めから水の輸送自体を小型飛行船でやったら楽なのに。」

真理亜:「飛行船の動力はなんだか忘れたの?。太陽電池よ。
日照が強い成層圏でしか航行は出来ないでしょうが。高温対策も施してないし。」

マサ:「ダメか。とりあえず出ましょうか。」
422pinksaturn:2007/05/02(水) 13:53:56 ID:yUv53f+b0
(ドーム前 http;//pinksaturn.fc2web.com/kinsei-aonodome.htm )

マサ:「タンクはちゃんと空になっています。ホース外しましたよ。」

真理亜:「よし、ロープゆるんだ。そーれ飛んで行けっ!。」

マサ:「発芽を見に行きましょう。」

真理亜:「さっきのってここだね。やはり伸びは停まったようね。」

マサ:「あ、ここにも有った。よーく見ると変わった芽ですね。」

真理亜:「どこが?。」

マサ:「これ、双葉じゃなくて五つ葉ですよ。」

真理亜:「ああ、そう言えば、日照の少なさに耐えるよう葉を多くしたらしい。」

マサ:「急成長が最初だけじゃ、根付くかどうかすぐには判りませんね。」

真理亜:「最終的に枯れるとしてもこの調子なら少なくとも半月は生育するな。
種自体は高い物でないから、大量に蒔けば炭酸ガス吸収効果は期待できるね。」

マサ:「あ、そろそろ次の隕石落下時刻ですよ。爆風に気を付けないと。」

真理亜:「落下地点は400`以上離れているから危険はないよ。」

マサ:「あ、あれですよ。真っ白な尾を引いて流星ってより彗星みたいだな。
まあ、一応流れ星だから願い事でもしておこうか。ぶつぶつ...」
423pinksaturn:2007/05/02(水) 13:54:46 ID:yUv53f+b0
真理亜:「何を願っているんだ?。」

マサ:「え、金星でも繁華街が出来て援交や売春、酒場が栄えますように」

真理亜:「それだけか?。」

マサ:「それからブランドファッション、宝石、金銀財宝...」

真理亜:「もうお終いか?。」

マサ:「あ、もう落下しちゃった。終わりですね。」

真理亜:「馬鹿者、帝國や青の公家の繁栄とか有栖の将来は考えないのか!。」

マサ:「え、あ、でもここに繁華街が出来るようなら可住化は成功なんで...」

真理亜:「藻前は最終回になっても外見だけでなく中身が成長しないな、全く。」

マサ:「永遠のコギャルですから。あれっ?。冷たい。これって雪?。まさかね。」

真理亜:「極低温の氷隕石が上空を通過したんだ。大気の水分も凍るさ。
3分と続かないだろうけど種蒔いた直後のお湿りは少しでも有り難いな。
まあ、金星だって成層圏には氷点下の領域があるし水蒸気も多いんだ。
幸い、当局はこの地域のクレーター湖をとことん維持拡張する方針のようだしね。
ここは北極圏だ。根気よくクレーターに氷を足していけばいつか本当の雪も降るだろう。
生きているうちに有栖と3人で金星雪祭りでもやりたいね。」

マサ:「それまでは Cyborg girls be ambitious ってとこですかね。」

(とりあえず本編完成 The END)
424pinksaturn:2007/05/02(水) 13:56:26 ID:yUv53f+b0
あとがき
約1年間、妄想のおもむくままに書いてきましたが、
最後は妄想に執筆がついていかず、難航のため組み込みネタの鮮度低下を来してしまいました。
仮に本編をこのまま続行しても、この先しばらくは地味ーな金星開発作業が続くだけなので一旦仕切り直したいと思います。
ついては、今後の妄想充実の参考とするため、スレ住人の皆様にご協力を仰ぎたいと思います。
ということで、登場人物人気、今後重視すべき妄想、今後重視すべき状況について、投票
http://pinksaturn.fc2web.com/touhyou070502.htm
をお願いします。
でわでわ。
425pinksaturn:2007/05/02(水) 14:22:02 ID:yUv53f+b0
>>422
最後まで落書きリンクミスorz
http://pinksaturn.fc2web.com/kinsei-aonodome.htm
でした。セミコロンなんか大嫌いだぁ!
426manplus:2007/05/06(日) 22:05:31 ID:0LjHsDzU0
瞳(以降、ヒ):「続きか・・・、何処まで話したっけ。」

エマ(以降、エ):「瞳さん、お目付役に、妻川監督、キンバリー監督と美濃田監督が付いたというところまでです。」

ヒ:「エマちゃんそうだったね。」

エ:「はい。よろしくお願いします。」

ヒ:「当時は、恵美さんとパパとキンバリーは、微妙な三角関係で仲が良かったんだよ。キンバリーが、
恵美さんとパパを憎むようになったのは、あの事件以来なんだ。」

森田(以降、ツ):「つまり、ご主人様のマリアさん拉致事件がきっかけということですね。」

ヒ:「つぐみさん、私が主犯というみたいな表現はやめて欲しいのですが・・・。」

ツ:「でも、主犯の一人には違いないと思うんですが?」

ヒ:「うっ!それは、否定できないから言葉に詰まっちゃうよ・・・。」

立川(以降、マ):「瞳さま、そう言わずに続きを話してください。瞳さまの話を聞いていると、
現実の世界の話ではないようで、小説的でおもしろいんです。」

エ:「真理子さん、本当だよね。瞳さんの人生って、現実離れしすぎているもの。」

ヒ:「エマちゃん、これでも大人しい方なんじゃないかと・・・。」

427munplus:2007/05/06(日) 22:06:52 ID:0LjHsDzU0
ツ・エ・マ:『充分にお騒がせですっ!』

ヒ:「う〜〜〜〜っ!3人にいじめられた〜〜〜。」

ツ・エ・マ:『当たり前ですっ!瞳さん(ご主人様)(瞳さま)の行為は、犯罪者の域を充分に超えていますっ!』

ヒ:「3人仲良く声をそろえなくったって・・・。」

ツ:「ご主人様、声をそろえたくなるような行為ばかりです。確かに、緊急停止モードでご主人様と
マリアさんを黙らせてしまいたいというのも解ります。」

ヒ:「私とマリアだけじゃなく・・・。」

ツ:「妻川監督もですよね。私もそう思います。私が言ったのは、ご主人様も含めて3人とも、
緊急停止モードを使ってしまいたいくらいです。でも、妻川監督は生身の人間なので、緊急停止モードを
使いたくても使えないのですから、ご主人様とマリアさんだけ限定で使用したいという意味です。」

ヒ:「・・・・。」

エ:「つぐみさん、厳しい〜〜〜っ!サポートスタッフの顔に戻っている・・・。瞳さんがタジタジだ。」

ヒ:「ゴホンッ!反省します・・・。話を続けます。つぐみさんがサポートスタッフの顔になると怖いんだから・・・。
きっと潜在意識の中には、Sがあるに違いない!」

ツ:「ご主人様。余計なことを言わないっ!」

428manplus:2007/05/06(日) 22:07:33 ID:0LjHsDzU0
ヒ:「はい・・・・。それで続きを話しちゃうと簡単なことなのかもしれないけれど、お目付役が監視の下というか、マリアと、
私と、恵美さん、キンバリー、パパの5人だけの状態で、恒例のクリスマスパーティーをいつも通り、
ウィーンのレストランでおこなっていたんだよ。最初は、お目付役3人の監視下で私もマリアも騒げないから静かな
食事会だったんだけれど、それがいつの間にか盛り上がっちゃって、ウィーンのワインバーに移動して
二次会ということになったのよ。」

エ:「瞳さん、そこまでは、普通の大人しいパーティーですね。」

マ:「そうね。瞳さまとマリアさまにしては・・・。」

ヒ:「真理子さん、その言い方はひどいよ。私たちにしてはというのが・・・。」

ツ:「真理子の言っていることがよく解ります。私は、常にその場にいなければいけない立場なので、
常に数々の惨劇を目撃していますが、それに比べたら・・・。」

ヒ:「つっ、つぐみさんまでそんなこと言って裏切る。まるでつぐみさんが、大人しく見守っているみたいじゃないの?」

ツ:「そっ、そうですよっ・・・・・。」

エ:「瞳さん、そうじゃないんですか?いつも大人しいつぐみさんの人格が何かのきっかけでが変わるとか?」

ヒ:「今回、目撃したら、エマちゃんや真理子さんも、つぐみさんの新しい一面を見られると思うよ。」
ツ:「ご主人様、何と言うことを。まるで私が二重人格のようなことを・・・。」

ヒ:「だって、アンネと一緒になると・・・。」

ツ:「ゴホッ、ゴホッ!ご主人様、根も葉もないことを言わないでください。」

ヒ:「本人達は、意識がないことと言い張るんだけれどね・・・。まっ、いいや。つぐみさんとアンネの二人の醜態は
私たち以上だからね。たぶん、みんなの常識の範囲を超えちゃうと思うよ。ウィーンの夜を楽しみにしていて。」

429manplus:2007/05/06(日) 22:19:18 ID:0LjHsDzU0
マ:「つぐみが酔っぱらうと、とんでも無いことになるという噂は聞いていたんですが・・・、
それを目の当たりに出来るなんてうれしいっ!」

ツ:「真理子まで・・・。やめてよ。私は、どんな時も、変わらないわ。」

ヒ:「まっ、つぐみさん。みなさんに、アンネとの醜態を観察してもらいなさい。私の言っていることが嘘か本当かを
確かめてもらいます。」

ツ:「だって・・・。本当に記憶がないんだもの・・・。」

ヒ:「それは本当かもね。つぐみさんとアンネの本性が観察できるからお楽しみに!」

ツ:「ご主人様の意地悪〜〜〜っ!」

ヒ:「まっ、拗ねてる可愛いつぐみさんは、このまま放っておいて、続きを話します。」

エ:「瞳さんのつぐみさんの弄り方が、だんだん、理想の女王様に近づいてきたような気がする。
今の言葉責めなんか最高っ!私まで感じちゃうな。」

エマの一言に思いついたように立川が席を立ち、エマの股間をまさぐった。

マ:「この娘、本当に感じちゃってる・・・。股間が大変なことに・・・。こんなところで自分の想像を膨らまさないでよね。」

そう言って、自分のスーパーF1マシン専用サイボーグドライバーのサポート用のグッズの詰まった鞄から、
ウェットティッシュを取り出して、エマの股間を拭き、エマの股間の愛液を拭い去った。

430manplus:2007/05/06(日) 22:19:53 ID:0LjHsDzU0
ツ:「真理子さんには、何でも解っちゃうんだよね・・・。でも、恥ずかしい・・・、けど・・・、またその恥ずかしさで濡れちゃう。」

マ:「このドM娘がっ!エマっ!いい加減にしなさいっ!といったら、また、その自虐感で言葉で
濡れちゃうんだから仕方ないわよね。」

エ:「真理子さん、ごめんなさい・・・。でも、私の性癖なんで・・・。瞳さんの女王様を感じたら、急に逝っちゃったんだ・・・。」

ツ:「エマさん、私も真理子もその気持ち解るんですが、我慢してくださいね。ウィーンに着いたら、思う存分、
ご主人様に苛めてもらいましょうね。」

エ:「うんっ!そうだね。つぐみさんの言うとおりだわ。我慢するっ!」

マ:「まったく、こんな事で感じてたらどうすんのよ、ここでお行儀良くしていれば、ウィーンに着いたら瞳さまとマリアさま、
それに好恵さまとマリーさまの4人に可愛がってもらえるんだからね。それまで我慢しようって言っていたじゃないの。」

エ:「そうでした。真理子さん、約束破っちゃってごめん。」

マ:「いいのよ、瞳さまのあの言葉を聞いたら、私も我慢できなくなりそうだったもの。愛奴としての経験の少ないエマが
我慢しきれなくなったって仕方のない事よ。でもここで、我慢して気持を昂ぶらせることもMとしての快感に
繋がることだからね。修行だと思うのよ。いいわね。」

エ:「はいっ!真理子さん、がんばりますっ!」

ツ:「ご主人様・・・。この二人・・・。」

ヒ:「うっ、うん・・・。つぐみさん以上だ・・・。」

ツ:「私を引き合いに出すなんてひどいです〜〜〜っ。」

ヒ:「・・・・。」

431munplus:2007/05/06(日) 22:21:06 ID:0LjHsDzU0
三咲(以降、ヨ):「何か、瞳が苛められているみたいね。でも、可愛い愛奴を何人も持っていて瞳は幸せね。
ウィーンに着いたら、瞳とマリアの幸せのお裾分けをさせてもらうわ。楽しみだわ。エマちゃんも、
立川さんも森田さんも覚悟しておくのよ。私が楽しませてあげるわ。久しぶりに、手脚のついたミストレスの完全な
調教を体験させてあげるからね。」

ツ・エ・マ:『よろしくお願いしますっ!』

ヒ:「3人の目が輝いているような・・・。」

ヨ:「当たり前でしょ。ダルマ娘の女王様の調教じゃ満足いかないところもあるに決まっているからね。
あんた達が引退するまでの間、私がみんなの不満を補う必要があるのよ。親友としてお手伝いできる事よ。
瞳、感謝しなさい。」

ヒ:「う〜〜〜ん。」

ヨ:「何をうなったままで固まっているのよ。本当のダルマになっちゃうわよ。」

エ:「三咲さんが、ついでに、瞳さんまで調教しています・・・。また感じちゃいそう・・・。」

マ:「だめよ。エマ、我慢だからね。」

ヒ:「まったくっ・・・。うちの娘達と来たら・・・。好恵っ!メインの肉料理をサーブに来たんでしょっ!
本来の業務を放り投げていると、ウィーンに着いてから、日勤教育を受けなくちゃいけないようにしてあげるよ。
そうすれば、新年会に参加できずに、ウィーンでの新年になっちゃうよ。」

ヨ:「こいつ〜〜〜っ!底意地の悪さは、完璧だな。ひとまず、料理のサーブをしてやるか・・・。」

ヒ:「チーフパーサー〜〜〜っ!ここにいる客室乗務員の人がいじめるんです〜〜〜っ!」

432manplus:2007/05/06(日) 22:31:39 ID:0LjHsDzU0
ヨ:「こっ、声がでかいっ!本当に瞳は、底意地が悪いわね。」

ヒ:「ヘッヘッヘッ!飛行機の中じゃ、私が乗客で、あなたは、キャビンアテンダントなのよ。
どっちが、偉いか判っているんだろうね。」

ヨ:「くそっ!意地の悪いやつだ。」

ツ:「好恵さんとご主人様、一勝一敗ですね。ここは、仲直りということで、早く、ウィンナーシュニッツェルを食べましょうよ。
ワインは、メジャーなサッシカイヤだし、楽しみだな。喧嘩なんてやめましょうよ。」

ヒ:「ちょ、ちょっと待って、サッシカイヤって、誰のリクエスト?」

ヨ:「あれっ?瞳じゃないの。1970年のビンテージなんていうとんでもないリクエストなんて
瞳の嫌がらせだと思っていたけれど・・・。」

ヒ:「・・・。私じゃないよ。いったい誰が・・・?って言っても一人しかないか。」

ツ:「はい、私で〜〜す。サッシカイヤのビンテージ飲みたかったんだもの。」

エ:「瞳さん・・・。」

ヨ:「森田さん、意外とやるわよね。意外とSかもよ。瞳なんか、なんにも出来ないダルマなんだから虐めちゃえばいいのよ。」

ヒ:「つぐみさんに虐められないように気を付けなくっちゃ。」

ツ:「ご主人様も、三咲さんも、よしてください。私は、Mのビアンだから、ご主人様に一途にお仕えするんです。」

ヨ:「やれやれ、瞳に一途ね・・・。お熱いことで・・・。つぐみさんを瞳から奪うことは出来ないのか・・・。うう〜〜ん。
残念だけど諦めるか・・・。それでは、ご希望のウィンナーシュニッツェルでございます。お楽しみください。」

433manplus:2007/05/06(日) 22:32:52 ID:0LjHsDzU0
ヒ:「好恵、変わり身が早いなっ!もう、キャビンアテンダントに戻っておる。」

ヨ:「瞳、当たり前でしょ。私のここが職場なんだから。」

ヒ:「そうか・・・。でも、つぐみさんは、ぜっ〜〜〜たいに渡さないからね。」

ヨ:「こいつ、涙ぐんでおる。今日は諦めてやるが、諦めないからね。」

ヒ:「やだもんっ!!つぐみさんは、私の一番大事な娘だもの。つぐみさんを私から奪っていくヤツは
容赦しないんだからっ!」

ヨ:「瞳、冗談なんだからっ・・・・・・・!機嫌を直してっ、ねっ!私が悪かった。瞳とつぐみさんの関係を
考えたら言うべきじゃなかった。ごめん・・・・・・・・・・・。」

三咲は、抗議の目に涙を浮かべている瞳に覆い被さるように抱き付いて泣きじゃくる森田の姿を
ただ見つめているしかなかった。
瞳は、森田にとっては、あの事件の記憶から自分を守ってくれる世界中で唯一の存在であるし、瞳は、
あの事件の記憶を消し去り、瞳がそのような事件の渦中に入ることは絶対にしない存在なのだ。
そして、森田と生涯よりそっていくと約束しているのだ。
そのお互いの心の中に、三咲はどんなことをしても入ることが出来ないだろう事を改めて感じるのだった。
エマにしても、立川にしても、自分たちは、瞳との恋愛関係にあり、特別な関係ではあるが、森田という存在は、瞳の中で、
特に特別な関係であることを理解していたが、瞳に取りすがって泣きじゃくる森田と、
その森田を実際には手脚がないはずなのに、両腕があるかのように、その腕でしっかり抱きしめているような
オーラさえ感じる、泣きじゃくりながら森田をなだめている瞳の姿を見て、森田が瞳にとって、
ただのスーパーF1マシン専用サイボーグドライバー専用のサポートスタッフではないことを改めて、
認識せざるを得ない光景であった。

434manplus:2007/05/06(日) 22:33:49 ID:0LjHsDzU0
ヒ:「つぐみさんは、私だけのつぐみさんだものっ!」

瞳の抗議は、瞳にとっての同性のパートナーとしての森田が、異性のパートナーであるマルコ=シモンと共に、
瞳の中では特別中の特別な存在であることを物語るものであった。

マ:「瞳さま、三咲さんも謝っています。ご機嫌を直してください。」

エ:「そうですよ。瞳さん。三咲さんも困っています。つぐみさんも大丈夫ですよ。瞳さんが、
つぐみさんを離すなんて事はないです。瞳さんからつぐみさんを奪っていくヤツなんていないですから・・・。
そんなことしたら・・・。」

ヨ:「本当に巡航ミサイルが飛んでくるかもしれないわね・・・。瞳とマリアは、何でもありなんだものね・・・。」

三咲が溜息をついた。その時、しゃくり上げながらも森田が、やっと泣きやんだ。
ツ:「ヒック、ヒック!三咲さん、ごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・。ごめん・・・・・・・・・・。ごめんなさい・・・・・・。
ごめんなさい・・・・・・・・・、ごめんなさい・・・ヒック・・・、ご主人様もご機嫌直して・・・ヒック・・・。
せっかく三咲さんが心を込めてサーブしてくれたメインディッシュが冷めちゃいますし、ご主人様の大親友の一人の
三咲さんが困っちゃっています。私ももう泣きませんから・・・、ご主人様もご機嫌を直してください・・・ヒック・・・。」

ヒ:「うん。解っているよ、つぐみさん・・・ヒック・・・。好恵、ごめんね、エマちゃんや真理子さん達のことでも、
正常じゃなくなっちゃうけど、つぐみさんとマルコのことになると私の心がもっとひどいことになっちゃうんだ・・・・。
好恵、ごめん。好恵が冗談で言ったのに・・・。とっても、嫌な思いさせちゃったね。これからも、親友でいてくれるかな・・・?」

ヨ:「何言っているの?瞳・・・。私は、瞳の親友だよ。いつまでも・・・。それに、私にとって、瞳は、
私とリカルドの仲人みたいなものだもの。今の私の幸せがあるのは、瞳のお陰だもの。私の方こそ、
瞳を泣かせちゃった・・・。ごめん!ウィーンでのクリスマスパーティーで埋め合わせをしますから、それで許して?!」

435manplus:2007/05/06(日) 22:45:36 ID:0LjHsDzU0
ヒ:「うん。解った・・・。それで何を埋め合わせに・・・。」

ヨ:「こいつ・・・。呆れた・・・。ウィーンの二次会の場所を確保するというのでは?」

ヒ:「それだけ?」

ヨ:「・・・・・・・・・・・。足元を見おったな。トカイの三つ星を1ダースでどう?」

ヒ:「よしっ!手を打ったっ!」

ツ:「ご主人様。好かったですね。三咲さんとの仲直りも出来たし、二次会の場所とお酒も確保できましたね。」

ヒ:「うん。」

ヨ:「・・・。瞳の底意地の悪さが乗り移ったかのような・・・。まったく、いいコンビだこと・・・。」

マ:「瞳さまにも、つぐみにも、呆れました。」

エ:「トカイってなぁに?」

ヨ:「エマちゃん、ハンガリーの貴腐ワインのことなのよ。結構高いんだからね。
まったく、不用意な一言で、飛んだ散財しちゃった。」

エ:「へぇ〜〜。そうなんですか?でも、1ダースなんて、飲めるんでしょうか?」

ヨ:「大丈夫だと思うよ。瞳とマリアは底なしだから。」

436manplus:2007/05/06(日) 22:46:11 ID:0LjHsDzU0
ヒ:「よく言うよっ!好恵だって、底なしなクセして。自分も飲みたかったんでしょ?!」

ヨ:「ばれたか・・・。瞳には嘘がつけないという事よね。」

ヒ:「当たり前でしょ。何年、好恵と付き合っているのよ。」

エ:「やっぱり、瞳さんの親友だけのことはありますね。」

ヨ:「何を、エマちゃん、変な感心してるのよ。恥ずかしいじゃないの。」

エ:「三咲さん、私、褒めていないんですけれど・・・。」

ヨ:「そっ、それでは、メインのウィンナーシュニッツエルをお楽しみください。」

三咲がそそくさと逃げるようにギャレイに再び消えていった。
瞳が、森田に料理を口に入れてもらいながら、再び話し始めた。

ヒ:「その二次会で問題が起こったの。最初にマリアの一言で事件が始まったのよ。」

ツ:「マリアさんが、発端なんですか?いつもは、ご主人様のことが多いんだけれど・・・。」

ヒ:「つぐみさん、ひどいよ〜〜〜っ!」

ツ:「ご主人様、気を取り直して、続きをどうぞ。」

マ:「うっ!つぐみの結構意地悪な一面が・・・。」

437manplus:2007/05/06(日) 22:46:47 ID:0LjHsDzU0
ヒ:「真理子さん、そう思うでしょ。つぐみさんが、最近、Sに思えることも・・・。」

ツ:「ご主人様、そんなことはないですよ。」

ヒ:「そうかなぁ〜〜。まあいいや、マリアがね、二次会で、“日本でニューイヤーを私と迎えたい”と言い出したんだよ。
でも、マリアはフェラーリの新車のテストが、スペインのカタローニャサーキットで一月早々からあって、
日本に行くことをフェラーリが許可しないはずだとキンバリーに一喝されたの。」

エ:「そうですよね。フェラーリのF1チームは、新車テストが早いから新年早々にスペインにドライバーは
入っていないといけないんですよね。」

ヒ:「エマちゃん、そうなんだよ。でも、マリアは引き下がらなかったの。“絶対に日本で年を越すんだ。
瞳と飲み明かしてニューイヤーを迎えるんだ。”といって、一歩も引かないの。それでキンバリーとマリアが
二次会の場所で大げんかになったの。」

マ:「マリアさまも、瞳さまと一緒で、こうと言い出したら絶対に後には引かないから、
そこの場が修羅場になったのは想像に難くないです。」

ヒ:「真理子さん、私とマリアが一緒って言うのがちょっと不満なんだけれど・・・。」

ツ:「でも、ご主人様も、マリアさんと変わらないように思うん・・・。」

ヒ:「つぐみさんまで・・・。私は、そんなわがままじゃ・・・。」

ツ:「確か、この前、札幌の日本グランプリで妻川監督と、同じようなことで揉めて・・・。」

ヒ:「そっ、その話は、内緒だよ。つぐみさんっ!後でその話はゆっくり・・・。」

438manplus:2007/05/06(日) 22:56:48 ID:0LjHsDzU0
ツ:「ご主人様、分かりました。それでは話しの続きをしてください。」

ヒ:「つぐみさんの意地悪〜〜〜っ!でも、反論の余地がない。仕方がないや、話の続きをさせていただきます。
うぇ〜〜ん、ちょっと悔しい・・・。」

ツ:「まあまあ、ご主人様、ご機嫌を直してください。」

ヒ:「うん。つぐみさんだから許しちゃう。」

ツ:「ご主人様、ウィンナーシュニッツェルです。一口食べてください。」

ヒ:「ありがとう。」

森田が、瞳の口に一口料理を入れてやり、ワインを口に含ませた。その森田の姿は、
可愛い恋女房という表現がピッタリなほどであり、微笑ましくも見えるものであった。

マ:「やっぱり、つぐみが瞳さまの世話を焼く姿は、自然に思えてしまう。その自然さにやきもちを焼きたくなっちゃうよ。」

エ:「そうだよね。つぐみさんの瞳さんに対しての仕草が自然だし、それを瞳さんがごく普通に受け入れているところが
羨ましいよね。妬けちゃうほど、二人の間に入り込む余地がないのよね。」

ツ:「エマさん、真理子、ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです。」

森田は、そう言って、本当に嬉しそうに微笑んだ。その表情は、幸せそのものといったものであった。

439manplus:2007/05/06(日) 22:57:46 ID:0LjHsDzU0
ヨ:「森田さんの表情も、やっと戻ったようね。安心したわ。森田さん、ごめんね。
大好きな瞳から引き離すなんてしないから安心してね。逆に、森田さんと瞳を引き離そうとするヤツがいたら、
私も一緒になって闘うからね。」

ツ:「三咲さん、ありがとうございます。さっきはごめんなさい。三咲さんに辛い思いさせちゃいましたね。
私、そんなつもりじゃなくて・・・。私・・・、ご主人様と離れて生きていくことを想像したら急に哀しくなっちゃったんです。
私の中では、ご主人様と離れて生きていくことなんて想像もしたくないんです。」

ヒ:「つぐみさん、判っているよ。私だって、つぐみさんのいない人生なんて、
今はもう考えることなんて出来ないんだから・・・。つぐみさん、もう泣いちゃダメだよ。私に手があれば、
その涙を頬から拭いてあげられるんだけれどね。ごめん、それが出来なくて。」

ツ:「いいんです。ご主人様のその気持ちで充分です。」

森田は自分の頬に伝う涙を手で拭いた。

ヨ:「瞳と森田さんの間に入り込める余地なんてないわね。それにしても、瞳は森田さんを大切にしなくちゃダメよ。
瞳をこんなに思ってくれて、しかも献身的なスレイブなんて、本当に探しても見つけることは出来ないんだからね。
本当に羨ましい。瞳に現れたのに私に現れないのだけが残念だわ。」

ヒ:「好恵、つぐみさんを大事にするなんて当然だよ。私の一生をかけて、つぐみさんと向き合っていくつもりよ。」

ヨ:「お熱いことで。さあ、料理が冷めたら、不味くなっちゃうから、冷めないうちに手を付けてね。」

ヒ:「好恵の言う通りだよ。最高級の牛肉のカツレツ、本当に美味しいんだから。冷めないうちに食べようよ。デザートも、
渾身のリクエストだから期待してね。」

エ:「は〜〜〜い。瞳さんについてきて好かった。」

440manplus:2007/05/06(日) 22:59:01 ID:0LjHsDzU0
マ:「こらっ!エマっ!現金なこといっちゃダメよ。」

エ:「真理子さんには、ばれてしまった。へへへっ!」

ヒ:「まあ、いいじゃない。私にとっては、つぐみさんだけじゃなく、エマちゃんも可愛いし、真理子さんも愛しているもの。
食べながら、聴いていてね。」

ツ・エ・マ:『はいっ!』

3人は、声を揃えた。

ヒ:「それで、続きなんだけれど、マリアは、キンバリーにどんなに反対されても収まりがつかなかったの。
それで、マリアは強引に東京行きのチケットを予約しちゃったの。」

エ:「えっ!真夜中にですか・・・?」

エマが、呆れて、大声を上げた。

ヒ:「そうなんだよ、エマちゃん。マリアのヤツ、強引にオーストリア航空の本社の役員に電話して、
本社のオンラインを立ち上げさせて翌日の東京行きのファーストクラスのチケットをとっちゃったの。
それも、私とマリアの二人分を・・・。」

エ:「それじゃ、瞳さん、キンバリー監督が、もの凄く怒りませんでしたか?」

ヒ:「怒ったも何も。マリアを思いっきり殴ったんだから。」

441manplus:2007/05/06(日) 23:09:37 ID:0LjHsDzU0
マ:「人に殴られることなんか、めったにないから、マリア様も怒ったんじゃないんですか?」

ヒ:「真理子さん、その通りなのよ。怒ったなんてもんじゃなくて、店の椅子を持ち上げて、キンバリーの頭を殴ったの。
キンバリーは血だらけになっちゃって、その後、本当の殴り合いの大喧嘩。まったく、アングロサクソンの女は
戦闘的だということが解ったわ。」

ツ:「それじゃ、ご主人様や妻川監督も実はアングロサクソンだったりして。」

ヒ:「つぐみさん、お黙りなさいっ!私は、れっきとした大和撫子なんだからねっ!」

ツ:「はい・・・。すみません・・・。あまりにも戦闘的なものだから・・・。つい・・・。」

マ:「瞳さまの負け〜〜〜。」

ヒ:「うっ!真理子さんまで・・・。」

エ:「瞳さんも、さすがに、つぐみさんにたしなめられると凹むんですね。」

ヒ:「エマちゃんにもいじめられるなんて・・・。」

ヨ:「瞳、自業自得よ。何が、大和撫子よ。そんなこと言われるほどお淑やかな性格じゃないくせに。」

ヒ:「好恵までいじめるんだから・・・。シンデレラは、いつもいじめられるものね。」

ヨ:「なっにがシンデレラじゃ。笑わせるんじゃないよっ!」

ヒ:「うぇ〜〜〜ん!」

442manplus:2007/05/06(日) 23:10:12 ID:0LjHsDzU0
ヨ:「瞳っ!可愛い子ぶって、泣き真似するんじゃないの。ここにいるのは、あんたを知っている娘ばかりなんだから、
誰も同情なんかしやしないよ。」

ヒ:「そうか。泣くだけ損か・・・。」

マ:「瞳さま、呆れました。エマ、こんなご主人様捨ててしまうか?」

エ:「それもいいかもね。好恵さんに寝返りましょうか?」

ヒ:「オイオイ、エマちゃんも、真理子さんも、そんなこと言わないでよ。本当に泣いちゃうからね。」

ツ:「そうよ。エマさんも真理子も、ご主人様をいじめないでね。」

マ:「こんな時でも、つぐみは、瞳さま一辺倒か・・・。スレイブの鏡だね。」

エ:「つぐみさんに免じて、瞳さんを許してあげましょうか?」

マ:「そうしますか。瞳さまを許しましょう。」

ヒ:「うん、みんなに感謝します。」

ヨ:「瞳、それでいいのよ。」

ヒ:「好恵・・・。えっらそうに・・・。」

ヨ:「ふんっ!早く、続きを話してあげなさいよっ!」

443manplus:2007/05/06(日) 23:11:23 ID:0LjHsDzU0
ヒ:「はいはい、仰せの通りに。その場の最後は、マリアじゃなくて、キンバリーが泣いちゃうし、
マリアは怒りのやり場に困って、店のテーブルや壁を壊しちゃうし、修羅場というのが相応しい状態になっちゃったんだ。
そして、最後は、マリアが、叫びと号泣を残して、店を出て行っちゃったの。その後ろ姿を見つめて放心状態の
キンバリーをよそに、マリアを恵美さんが追いかけていったのよ。そこで、恵美さんは、マリアに悪魔のささやきをしたの。」

エ:「その囁きの内容が気になります。瞳さん、早く続きを話してください。」

ヒ:「うんっ。その囁きが、問題を引き起こしたんだけれど、その内容というのは、
新開発のスーパーF1マシン専用サイボーグドライバー専用移動用カプセルのサンプルが、
カンダのザルツブルグの研究所にあるから、それに入れて日本に運んであげる、それなら、
貨物に紛れて入国できるから、大丈夫だって。だから、私に委せなさいと囁いたらしいの。
満面の笑みを浮かべたマリアが戻ってきたとき、私は、恵美さんが何を囁いたのか理解したの。」

エ:「でも、私たちを入れるスーパーF1マシン専用サイボーグドライバー専用移動用カプセルは、
手脚のない私たち用に設計されているから、手脚のあった頃のマリアさんを入れるのには小さすぎるのではないですか?」

ヒ:「長さの問題のことをエマちゃんは言っているんだよね。」

エ:「はい。」

ヒ:「そのことについては、私も、スーパーF1マシン専用サイボーグドライバー専用移動用カプセルに普通の人間が
入る事なんて無理だと思っていたの。でもね、普通の人間が入ることが出来るサイズの
スーパーF1マシン専用サイボーグドライバー専用移動用カプセルがあるんだって言うことが、この事件でわかったんだ。
普通の人間サイズのスーパーF1マシン専用サイボーグドライバー専用移動用カプセルがあるんだよ。」

エ:「え〜〜〜〜っ!そんなのあるんですか!?」

444manplus:2007/05/06(日) 23:22:52 ID:0LjHsDzU0
ヒ:「エマちゃん、信じられないだろうけれど、実際にあるんだよ。開発チームの職員が実験用に自分たちが
入れるような大きさで、しかも、サイボーグの私たちのように、呼吸システムや消化システムがサイボーグ化
されていなくても対応できるようなカプセルが存在するの。そのカプセルは、生体のままの構造の人間が
長時間入っていても大丈夫なように、そして、安全なように宇宙船のような構造になっているんだよ。」

エ:「そうなんだ。そんなものがあるなんて信じられません。私たちのように、サイボーグなら、
移動モードというカプセルの中に入れられていても退屈することがない専用のモードがあるから、
あんなところに一人っきりで納められていても我慢できるけれど、生身の人間がスーパーF1マシン専用
サイボーグドライバー専用移動用カプセルの中で長時間を過ごすって、どういう気分なんでしょうね。」

ヒ:「その体験者であるマリアに後で会えるから、その時に聴いてみたら?」

エ:「そうですね。瞳さんの言うとおりにしてみようと思います。」

マ:「ちょっと〜っ。エマっ!マリアさまは、そのことを思い出したくないかもしれないわよ。また、暴れ出すかもしれないわよ。」

エ:「マリアさんは、今は、手足がないから大丈夫です。」

ツ:「やっぱり、エマさんが一番怖いかも・・・。」

エ:「つぐみさん、そんなことないです。みんなが聞きたいことを代表で聴くんですから、勇気を出してということなんです。」

ツ:「・・・。」

瞳は、エマの度胸の良さというか、おそれを知らない性格に呆れる思いだった。

ヒ:「まっ、まぁ、いいかっ。エマちゃん、聴くときは、さりげなく、マリアに考える隙を与えずに聴いた方がいいよ。
怒って、見つめられて、石にされないようにね。絶対に目を見ちゃダメだよ。」

445manplus:2007/05/06(日) 23:23:25 ID:0LjHsDzU0
エ:「心得ています。でも、もし、私が危なくなったら、瞳さんが、マリアさんに魔法をかけてくださいね。」

ヒ:「わかった。エマちゃんが危険になったら、あいつをネズミにしちゃうからね。」

エ:「うわぁ〜〜〜い。ありがとうございます。瞳さん、だから大好きっ!?」

ヨ:「オイオイ、やっぱり、瞳は魔女だったか・・・。」

ヒ:「ゴホンッ。そんなことはありませんっ!」

エ:「そうだよね。魔女やメデューサが実在するわけないよね。ましてや、マリアさんや瞳さんが魔女や
メデューサであるはずがないですよね。」

ヨ:「しかし、こいつにしても、マリアにしても、普通の人間じゃ無いように思えるから不思議だよね。
もちろん、手脚のないダルマ人形なのだけれど、それ以上に人間じゃないように思えちゃうから不思議だよ。
エマちゃんみたいにサイボーグになっても人間に見える女の子もいるのにね。」

エ:「三咲さん、ありがとうございます。嬉しいですっ!」

マ:「三咲さん、エマの容姿に騙されちゃいけないですよ。エマは、意外と本当の魔女かもしれませんよ。」

エ:「真理子さん、ひどいよ〜〜〜。」

マ:「はっはっ、冗談よ。」

ヒ:「しかし、私のどこが魔女なの?」

ヨ:「全部がよ。」

446manplus:2007/05/06(日) 23:24:00 ID:0LjHsDzU0
ヒ:「おのれ〜〜〜っ!好恵っ。ゴキブリにでもしてやろうか?」

ヨ:「勘弁してよ〜〜〜。」

ヒ:「許してやるか・・・。まあ、マリアが退屈したかどうかは別として、カプセルが夜を徹して、
ウィーンカンダに運ばれてきたの。翌朝、マリアを恵美さんがウィーンカンダの研究員と一緒に荷造りして、
空港に、カンダの自動車部品として運んだの、緊急に本社に送る品物として、私たちと一緒の飛行機に
乗せる手続きをしたんだよ。」

エ:「それじゃあ、恵美さんの単独犯で、瞳さんがキンバリー監督に恨まれることはないように思うんですが・・・。」

ヒ:「エマちゃん、白状しちゃうと、私が、キンバリーの朝食に強力な睡眠薬を入れて、マリアが安全に
ウィーンカンダに行けるように援護したことが、キンバリーにばれちゃったんだよ。」

マ:「そう言うことなのか・・・。やっぱり、瞳さまと妻川監督は、一心同体なんですね。」

ヒ:「真理子さん、一心同体じゃなくて、腐れ縁といった方がいいかもしれないね。なんで恵美さんの悪事に
荷担しなくちゃいけないのかと思ったもの。」

ツ:「でも、ご主人様は、マリアさんと、日本で酒が飲めれば良かったんですよね。」

ヒ:「・・・。」

マ:「つぐみが、核心を突いたもんだから、瞳さまが黙ってしまったよ。」

ツ:「ご主人様、私の言うことなど気にせずお続けください。」

ヨ:「瞳とつぐみさんの関係って、どっちがSでどっちがMなのか解らなくなることがあるわよね。」

ツ:「三咲さんも、真理子も、そこのところは、私がMで、ご主人様がSなのは決まり切ったことです。ねっ、ご主人様。」

447manplus:2007/05/06(日) 23:33:26 ID:0LjHsDzU0
ヒ:「そっ、そうだよ。つぐみさんの言うとおり。」

ヨ:「それじゃ、瞳がお子ちゃまで、メードのお姉さんに甘えていると理解すればいいのね。」

ヒ:「あのね〜〜〜、好恵。それはひどいよ〜〜〜。拗ねてやるからねっ!」

エ:「拗ねてる瞳さんも可愛いんですね。本当に、誰からも好かれる可愛さを持った美人って、得ですよね。」

ヨ:「本当だね。エマちゃんの言う通りだよ。瞳の美貌って、美人でいて、少し幼児顔が残っているから、
誰からも好かれるし、人に甘えても、違和感がないところが羨ましいよ。まさに、魔女というか魔性をたたえた妖怪顔だね。」

ヒ:「好恵さん・・・。それはないんじゃぁないの。」

ヨ:「はっはっ、ごめんごめん。気を取り直してちょうだいね。そろそろ、デザート用意するから。」

ヒ:「デザートと聞いて、少し元気回復だいっ!」

瞳が脇で大はしゃぎしている。

ヨ:「あんた。相変わらず現金だね。」

ヒ:「ほっといてちょうだい。さあ、話の続きだよ。」

マ:「瞳さま、紙芝居のお姉さんみたいです。真理子に続きを聴かせてくださいな。」

ヒ:「よしっ、聴かせてあげよう。ウィーンカンダで、私とマリアが恵美さんと合流して、マリアをカプセルに入れたの。
そのまま、カプセルをカンダの最新研究資料として、特別保護学術資料指定して、私と恵美さんの搭乗する飛行機に
乗せる手続きをとって、空港に運んだの。」

448manplus:2007/05/06(日) 23:34:06 ID:0LjHsDzU0
エ:「瞳さん、特別保護学術資料ってどういうものですか?」

ヒ:「エマちゃん、特別保護学術資料というのは、国際自動車連盟が各国と航空会社に協力を依頼して、
スーパーF1のマシンなどに関わる最新の研究に使う部品は、他チームから各ワークスが秘密を守る意味で、
部品を送るときに特に事前に申し出たものに関しては、税関フリーパスというか、各チームのメーカーが、
飛行機に直接積み込んで、飛行機から直接引き取る事が出来るものなの。」

マ:「まるで治外法権みたいですね。スーパーF1って、そこまで特権が許されているんですか?」

ヒ:「真理子さん、そうなんだよ。スーパーF1は、紳士協定で、自助努力で悪用することをしないことを条件に
かなりの特権が認められているの。」

ツ:「ということは、ご主人様と妻川監督は、そのシステムを何らかの方法で悪用したんですね。」

ヒ:「つぐみさん、悪用というのは・・・。」

ツ:「だって、ご主人様のやったことは、国際自動車連盟の規定を遙かに逸脱したものを運んでいます。
悪用でなかったら、犯罪でしょうか?」

ヒ:「つぐみさんの言うことに反論のしようがない・・・。でも、マリアとお正月を日本で過ごしたいという一心だったのよ。」

ツ:「ご主人様、そんな甘えるような目をしてもダメです。」

ヒ:「そうか・・・。」

ツ:「そうです。でも、ご主人様は、どの様にシステムを悪用したんですか?」

449manplus:2007/05/06(日) 23:34:42 ID:0LjHsDzU0
ヒ:「その言い方は、ちょっと傷つくけれど、まあ、いいか・・・。うん、当時準備中だったカンダスーパーガールズの
マシンの試作ボディーだといって特別保護学術資料にしたんだ。それも、恵美さんが、ウィーンカンダの
研究員を半ば脅して、国際自動車連盟から、許可証をとらせたの。だから、ウィーンでも飛行機に荷物が横付けで
積み込めたし、カンダの差し回した車が成田でも飛行機横付けで受け取れたし、本当に便利なシステムだったから、
怪しまれずにマリアの入ったカプセルを東京に運び込むことが出来たの。東京でも本社の研究員に箝口令を
引かせてマリアを運ばせたのよ。」

エ:「瞳さんと妻川監督の所行には呆れました。それじゃ、ウィーンではマリアさんが消えたといって大騒ぎに
なったんじゃありませんか?」

ヒ:「エマちゃん、正解!ウィーンというか、イタリアのフェラーリ本社で大騒ぎになったの。
でも、最初はマリアが一人で東京に行ったんだろうと思って、ヨーロッパ各都市発の成田行きの便の乗客リストを
探したらしいんだけれど、マリアの名前が見つからなかったのよ。」

マ:「それはそうですよね。瞳さまと妻川監督が誘拐同然で連れ去ったんですものね。」

ヒ:「そうなんだよ。フェラーリ関係者も、そう思って誘拐された可能性もあるとして、警察に内密に相談していたらしいの。」

マ:「それじゃ、瞳さまと妻川監督が誘拐犯になっちゃうんですね。」

ヒ:「まあ、そう言う言い方もあるかな・・・?でも、それでも、何気なくマリアが大人しく、なにもなかったように
カタローニャサーキットに姿を現せば、大騒ぎにならなかったんだけれどね。」

ツ:「ご主人様とマリアさんに妻川監督が加わってのことだから、そんなに簡単に終わるはずなかったんですよね。
問題は、日本に着いてからのご主人様とマリアさんの行動ですよね。」

エ:「つぐみさん、そうですよね。マリアさんと瞳さんのことだから、無茶苦茶な行動をとったんじゃないかと・・・。」

450manplus:2007/05/06(日) 23:46:09 ID:0LjHsDzU0
こんばんは。
連休で書きためたものを投下しようと思ったんですが、
スレの容量がいっぱいになりそうなので、この辺までにしておきます。
投下しきれなかった分は、新スレが立ち上がり次第すぐに投下します。

pinksaturn様
本編完成お疲れ様でした。
毎回楽しみに読まさせていただきました。
次回作を楽しみにしております。
451名無しさん@ピンキー:2007/05/07(月) 15:55:30 ID:iwhSzWOX0
次スレ
【機械化】サイボーグ娘!十五人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1178520627/
452manplus:2007/05/07(月) 23:30:39 ID:oxCY9ltJ0
新スレ立ち上げありがとうございます。
まず、こっちのスレを埋めてから、新スレに投下しようと思います。
453manplus:2007/05/07(月) 23:31:56 ID:oxCY9ltJ0
ヒ:「エマちゃんの言葉が胸に突き刺さるっ!エマちゃんが真面目に言うとクールな美人なだけに突き刺さるんだよな。」

エ:「そっ、そんなこと・・・。」

ヒ:「まあ、いいや。マリア自体は、荷物としての入国だからパスポートコントロールを通っていないし、
オーストリアの出国記録も日本の入国記録もないままで、東京のカンダ本社の中央研究所でカプセルから
出されたというわけ。」

マ:「瞳さま、それって、究極の密入国じゃないですか?」

ヒ:「まあ、真理子さんの言うとおりだよね。でも、帰りのことがあるから、マリアを正規に
入国させたことにしなくちゃいけないということを恵美さんが言い出したの。私とマリアは、また、
マリアがカプセルにマリアが入って帰ればいいと言ったんだけれど、恵美さんは、
変なところで変なことを心配をするから、マリアのパスポートに入国スタンプを押さなくちゃと言うことを強硬に
主張したんだよ。そんな事しない方がいいって言ったのにさ。」

ツ:「それは、妻川監督の方が正しいように思うんですが・・・。」

ヒ:「つぐみさん。だって、そんな事したら、足がつくよって言ったのに、恵美さんが余計なことするから、
結果的に足がついたんだよ。それも、下手に偽装工作して、カンダから、入国管理局に頼まないで、
パパに頼んでトミタから入国管理局に手を回したんだよ。」

マ:「そんな。美濃田監督まで共犯にしたなんて。瞳さまも妻川監督も信じられません。」

ヒ:「真理子さんまで、私を悪者にするけれど、悪いのは恵美さんだけなんだからね。」

454manplus
ツ:「でも、ご主人様もマリアさんと遊べるから、かなり積極的に共犯の相棒を買って出ていたんじゃないのですか?」

ヒ:「うう・・・っ。つぐみさんの言葉が冷たい・・・。」

エ:「でも、瞳さん、本当のことでしょ。」

ヒ:「エマちゃ〜〜〜ん・・・。なんか、エマちゃんにとどめを刺された感じがする・・・。でも、確かにマリアと一緒に
遊べるのが嬉しかった自分がいるんだ。年末と新年の日本でマリアと過ごしたのは楽しかったのよ。」

ツ:「ご主人様とマリアさんのことですから、ハチャメチャだったんでしょうね。」

ヒ:「つぐみさん、それはいくら何でも失礼じゃない。六本木を見たり、銀座を見たり、富士山を見に行ったり、
横浜に行ったり、東京周辺の観光地を案内していたんだよ。」

ヨ:「瞳、白々しい嘘をついてもダメだよ。マリアと最初に行きたいといった店はホストクラブで、その次がビアンが
集まる店じゃなかった。新宿はオカマクラブだし、二人で行ったのはロクでもないところばっかりじゃないの。」

ヒ:「そっ、そんなことないもん。六本木のホストクラブとビアンが集まる店は、好恵が行こうって言ったくせに・・・。」

ヨ:「お黙りっ!ホストクラブは絶対に行きたいから紹介しろって瞳が我が儘言うし、ビアンのお店はマリアが
絶対行くって我が儘こねて、強引に私の行きつけのお店紹介させたんじゃないの。しかも、
そのお店で二人とも大暴れするもんだから、私までお出入り禁止喰らっちゃうし、週刊誌の記者にかぎつけられて、
週刊誌ネタになるところを私が、雑誌社に頼んで、もみ消してもらったんだからね。
そうじゃなかったら、“F1のトップドライバーの御乱交”なんて見出しでスキャンダルまみれに
なったところだったんだからね。」

ヒ:「それに、“某欧州系エアライン客室乗務員”も付け加えられるはずだったんだから、あいこじゃない・・・。」

ヨ:「お黙りっ!私は、六本木の行きつけの、しかも取って置きのお店を2つも潰されたんだよ。」