【機械化】サイボーグ娘!十人目【義体化】

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1名無しさん@ピンキー
サイボーグ娘に萌えるスレです。
人工皮膚系・金属外骨格系どちらも(それ以外も)OKです。
事故や病気で体を失って機械化した娘、特殊な作業に特化した体を得る為に機械化した娘、萌えるじゃないですか!
無理やり機械の体に改造されてしまった娘も、自分の機械の体で悩む娘も、能天気な機械化娘も、萌えるじゃないですか!
そんな趣旨のスレです。

アンドロイド娘とはかなり方向性が異なるので別スレにしてみました。
アンドロイド娘は完全人工な娘、サイボーグ娘は生身だったのを機械に改造した娘です。
区別の目安としては、脳味噌が生身か造り物か、という事になります。

前スレ
【機械化】サイボーグ娘!九人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1144849034/
前々スレ
【機械化】サイボーグ娘!八人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1134767816/
【機械化】サイボーグ娘!六人目【義体化】 (実質七人目)
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1126369982/
【機械化】サイボーグ娘!六人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1120438550/
【機械化】サイボーグ娘!五人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1115785525/
【機械化】サイボーグ娘!四人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1109861097/
【機械化】サイボーグ娘!三つめのパーツ【義体化】
http://pie.bbspink.com/feti/kako/1082/10828/1082827604.html
【機械化】サイボーグ娘!二回目の手術【義体化】
http://pie.bbspink.com/feti/kako/1064/10645/1064515330.html
【機械化】サイボーグ娘!【義体化】
ttp://wow.bbspink.com/feti/kako/1062/10626/1062698217.html
サイボーグ娘スレッドSS保管庫
ttp://comic-ekk.homeftp.org/user/hailaer/tentestuki/tentetsuki/hokanko-index.htm
2架琉魔:2006/06/25(日) 01:58:23 ID:pq2Ij1H20
新スレ建て乙です。
2ゲトズザー!!
3名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 08:58:52 ID:DbDoVddI0
>>1
4名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 10:31:04 ID:3m5u8x6g0
早いもので十人目か・・・。時間って早いもんだね。
53の444:2006/06/25(日) 18:28:51 ID:0LuVsh5h0
スレ立てに保管庫リンク、乙です。
私は3からの参加ですけど、結構住人は入れ替わっているのかなあ。
6名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 16:14:01 ID:KP2tV1ly0
俺は書き手じゃないけど、2スレ目からずっと見てる。
73の444:2006/06/27(火) 01:43:29 ID:NmBHy5br0
保管庫更新しました。
8pinksaturn:2006/06/27(火) 01:48:35 ID:VU14WVN60
私もROMは2スレ目からです。
2スレ目といえば、I・Dが気に入ってました。
粘着の叩きにめげず、黙々と書き続けた作者さんの態度も良かったですね。
保管庫に無いのが残念です。
3の444さんは、2スレ目でROMもされてなかったのかな?。
93の444:2006/06/27(火) 02:41:42 ID:NmBHy5br0
>>8
2スレ目はリアルタイムではROMってないけど作品は把握してます。
ID-Fの収納に関しては作者さんに連絡してからと思っています。

保管庫に掲載の作品も数えたら96タイトルになってしまったので、
読者さんが自分のツボにあった作品を探しやすいように細かい
属性ごとにジャンルわけしようか思案中です。
日常・調教・鬼畜・戦うヒロイン・非人間型・SF色濃い・手術シーンあり
とか。新スレもたったばかりだし、スレが落ちないように属性を
思いつくままに列挙していただけると助かります。
10名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 13:46:52 ID:17jNVanC0
ツボにあった作品を探しやすい、という意味では、全文検索があると便利ですね。
113の389:2006/06/28(水) 00:09:49 ID:n2nHyB180
>>8 pinksaturn様
>>9 3の444様
2スレ目で“ID”書いてたのは私です。
投稿時期にスレがいろいろ荒れてたので、万が一、蒸し返しの原因になってはと思い、
今まで黙っていました。
もうさすがに過去の話になったので、まとめてうちのサイトにUPしようと思います。
>保管庫に無いのが残念です
どうもすみませんでした。 読みたいと思う方がいてくれて、本当に嬉しいです。

>>9
「自我の消去、変更、または制御」「改造は志願か無理矢理か」も
重要だと思います。
12名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 09:02:28 ID:BsE1HkFb0
>>11
お久しぶりです。
もうこちらでは書かないんですか?
13sage:2006/06/28(水) 19:37:22 ID:XjMDA7rB0
>>9
「サイボーグになることが悲しみか喜びか」「なった後は受け入れるか嫌悪するか」、「特権階級か奴隷状態か」「生身の部分はどの程度残っているか」
「一人称か三人称か他人視点(このスレの場合は主人公がサイボーグ少女自身じゃない)」
サイボーグが社会的に認知されているか否か
周りの人間のサイボーグへの対応
サイボーグが女性(女性型)であることに必然性や優位性が有るか無いか
サイボーグの物理的な強さの強弱
手術シーンで自我の有る無し
等思いつくだけでも結構ありますねえ
143の444:2006/06/29(木) 02:55:21 ID:G6Q0DgwH0
「『魔法のプレゼント』ってなんだろう。 私も興味ありまーす」
  タマちゃんは、 私に早く包みを開けるように眼で催促。
「う・・・うん」
  タマちゃんの勢いに気おされるように茶色の包み紙にくるまれた箱を開ける私。
  包みを開いてまず目に入ったのは白い封筒。
  中には、 よく言えば勢いのいい、 悪く言えばへったくそなおじいちゃんの見慣れた太い字で書かれた手
紙が入っていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
  八木橋裕子様

  今収穫で忙しくて、 しばらくお見舞いには行けそうもない。 申し訳ない。

  この前のお見舞いのときは、 びっくりした。
  手術のあと、 すっかり別人の姿になった裕子を見たときは、 こりゃあ慣れるのに大変だぞ、 と内心思っ
ていたんだが、 いつの間にかまた元の裕子の姿に戻っているんだからな。 前もって汀さんに話しを聞いて
はいたんだが実際会って見たらやっぱりびっくりだ。 難しいことはよく分からんが、 最近の医療技術っていう
のはたいしたもんだな。
  しかし、 裕子と会って一番嬉しかったのは、 裕子が元の姿に戻ったことじゃない。 私が裕子と会って、
何より嬉しかったこと、 それは、 手術のあとずーっとふさぎ込んでいた裕子が、 「友達に会いたい」とか「学
校に行きたい」とか前向きなことを言うようになっていたことだ。
  正直なところ、 私も裕子のお父さんやお母さん、 それから隆太を一度に亡くしたことに落ち込んでいて
な。 このくらいの年になると、 何かと弱気になることが多いんだが、 前向きな裕子を見て、 改めて私も勇気
付けられた気がしたよ。 ありがとう。
  ところで、 この前上田丸子さんから電話が来たぞ。 裕子が、 いつもまりちゃんが、 まりちゃんがって私
に話してくれた、 あのまりちゃんだな。 すぐに分かったぞ。
  上田さんは、 裕子に会いたい一心で、 いろいろ手がかりを探して、見 ず知らずの私に電話してきたそう
だ。 そこまでして裕子に会いたいっていう友達がいるのは、 とても幸せなことだ。 こういう子が多いなら、 裕
子が一日も早く学校に行きたがるのも分かる気がする。 早く、 退院できるといいな。
153の444:2006/06/29(木) 02:56:19 ID:G6Q0DgwH0
  上田さんは「裕子に会いたい、 お見舞いがしたい」ってしきりに言っていたぞ。 だから、 裕子には悪いと
思ったが、 裕子の連絡先を教えてしまった。 この手紙が届くころには、 ひょっとしたら上田さんから連絡が
きているかもしれん。
  ただ、 裕子のことだ。 友達と話すことや、 会うことに対して怯えているんじゃないか?
「友達に会いたい」
「学校に行きたい」
  だけど、 やっぱり、こんな身体では恥ずかしくて会えない、 なんて思っているんじゃないのか? 友達には
会いたくても、 学校には行きたくても、 やっぱり今の連絡先を教えられないというのはそういうことだろう?
  私としては、 たとえ機械の身体であろうと、 裕子が裕子であることには何の変わりもないし、 何恥じるこ
となく友達とも会ってくれればと思っているが、 こればっかりは裕子自身の問題であるし、 裕子自身で決め
る他はないと思っている。 私にできることは、 裕子の心を後押しすることだけだ。
  何か私が裕子のために手助けできることは? 私もない頭で一生懸命考えたんだが、 いろいろ考えた
末、 この前、 裕子の家を片付けたときに出てきたこの服を裕子に送ることに決めた。 題して、 「裕子に勇
気を与える魔法の服」。 どうだ、 われながら、 いいネーミングセンスだろう。
  この服さえあれば、 裕子にも自信と勇気が湧いて、 友達と会おうという気になるんじゃないか?
  では、 かわいい孫娘の成功を祈る。 グッドラック!
                                                八木橋 裕輔
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
  手紙を読み終わった後、 透明なビニール袋に丁寧に折りたたまれて入っていた、 おじいちゃん曰く魔法
の服を広げてみる。
「ははは」
  苦笑したのは私。
「ふっふっふっ! やっぱり、八木橋さんのおじいちゃんのセンスって最高! はっはっはっ」
  お腹をかかえて笑ったのはタマちゃん。
  おじいちゃん・・・魔法の服っていうけどさ・・・これって、 ただの私の高校のセーラー服なんですけど・・・。
163の444:2006/06/29(木) 03:18:31 ID:G6Q0DgwH0
一度の投下量としては少なめですが、生まれたてのスレの即死防止に
出来上がった分だけ投下しておきます。

属性に関するコメントありがとうございます。
こうして言葉を並べていただいて、サイボーグ萌えの多様性を改めて
実感する次第です。ただ、全てを網羅するとなるとやはりキリがないですね。
自我に関すること→そのまま維持、消去、変更または制御
改造に関すること→志願、強制、仕方なく
あたりは、どの作品にも関わってくるサイボーグものとしては作品の方向性
を決定する重要な項目であるからして、やはりあったほうがいいのでしょうか。

>>13は試しに八木橋裕子の物語で答えてみた。
「サイボーグになることが悲しみか喜びか」→悲しみ
「なった後は受け入れるか嫌悪するか」→嫌悪
「特権階級か奴隷状態か」→高給をもらえる特権階級とも、人類のために危険な場所で作業を
しなくてはならない奴隷階級ともいえる。受け取り方は人さまざま。
「生身の部分はどの程度残っているか」→主人公は脳だけ
「一人称か三人称か他人視点」(このスレの場合は主人公がサイボーグ少女自身じゃない)」→一人称
サイボーグが社会的に認知されているか否か →認知されている
周りの人間のサイボーグへの対応→ 好奇、憐憫、嫌悪。法的には普通の人間と同じ立場だが、社会的には
差別もある微妙な立場。
サイボーグが女性(女性型)であることに必然性や優位性が有るか無いか→もとが女性なので当然女性型
サイボーグの物理的な強さの強弱 →潜在的には150馬力だが日常生活では常人並みか、ちょっとだけ強い程度。
手術シーンで自我の有る無し→無し

なかなか面白いですが、長編では使えても、短編、小ネタには適用しずらいでしょうか。
173の389:2006/06/29(木) 18:16:02 ID:EKkkGElG0
444さん乙です
 
>>12
生活の都合で、書くペースが極端に落ちてしまったので、(下手すると月に一度)
スレで書くには無理があるような気がします。
それに、今書いている“Half-Golem”は魔法主体でほとんどメカニカルな描写が無いので、
初めてスレを覗く方が混乱するでしょうし。
 
 
保守のつもりで話のネタを。
人間の、特にアレルギー体質の人の身体は、ほんの僅かなアレルゲンにも反応してしまう
敏感なセンサーな訳ですが、これを利用したサイボーグは考えられないですかね。
何らかの投薬か、ベクターによる遺伝子改造によって、検出したい物質に対する抗体を作らせるとか。
 
麻薬の運び屋に近づくとくしゃみが出る税関職員とか。ただ、麻薬を直接打たれると、
アナフィラキシーショックで命の危険がw
18名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 17:56:01 ID:GfCcF0ax0
抗体が、一つの検出対象を見つけると、ヒスタミンのような伝達物質を大量に出す。
これを情報の増幅として利用すれば、人間検出器ができますな。
体内に、血中に含まれる伝達物質を測定する機器を埋め込めばいいわけで。

ただ、伝達物質がヒスタミンとかの場合、検出器少女はアナフィラキシーショックの危険に加え、
鼻炎、目の痒み、くしゃみ、せき等に悩まされる事になりますが。 どうですかね、萌えますかね。


自己レスで保守。
この板、スレ容量が小さいときに24時間レスがつかないと落ちるんでしたっけ?
19名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 23:47:30 ID:ho/S8G/z0
別に人間使わなくても・・・。
犬やサルの細胞使って検出素子だけ造ればOK!


すま、このスレの目的を忘れていたよ。
20名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 23:54:21 ID:5Ia50niY0
事故で重傷を負ったが、サイボーグ化手術によって一命を取り留めた。


・・・のは良いのだが、元々機械(金属・工業製品)アレルギーだったが為に、
日常生活を送りながら死線を彷徨うヒロイン、などというのは。
21名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 01:00:24 ID:R2LJdKjU0
>>19
検出器少女が普通の人間と外見上見分けがつかない事を活かして、潜入捜査官とか。
農場で散布される違法農薬、家畜に大量投与される抗生物質、工場の労働者がさらされている有害物質…
の検出を、経営者に知られる事無く行えるわけで。
戦闘員やメイドにされるのと比べて、イマイチ地味かなあ。

>>20
それ、結構現実味ありますね。 金属アレルギーのきっかけは、ピアスがNo1らしいので。
一部のステンレスが含むニッケルや、基板のはんだに含まれる錫が、アレルギーの原因になりやすい
みたいですね。
22pinksaturn:2006/07/01(土) 01:02:58 ID:n9/CdxYW0
>>20 チタンは滅多にアレルギー起こさないのですが。
貧乏で、保険も渋くて安い材料使ったということにするのでしょうか?。
それとも、見栄っ張りな娘で、金を使いすぎてばちが当たるってのも良いかしら。

おっと、”オプションパーツ(20)”投下しに来たんだけど、
思わずネタ話に乗ってしまいました。
今回は、結構しつこく長いですが、宜しくお願いします。
23pinksaturn:2006/07/01(土) 01:09:18 ID:n9/CdxYW0
(オプションパーツの続きです。(20)じゃなく(19)でした)

−−(19)ドクター・マサ−−
(宙軍基地内・改造施設の廊下)

真理亜:「改造手術そのものはVRシミュレーション訓練で単位取ってるし、素体の準備は自分自身の経験で判っているわね。
今日は、ここの施設配置と我々術者のする準備について一通り教えておくわ。ホントは教科書に出てるんだけど藻前はちゃんと見て無さそうだし。」

マサ:「お察しの通りで。規定通りダウンロードしてインデクスだけ見ましたが、身についてはいません。」

真理亜:「まあ、藻前は元来座学より現場で手を動かした方が身につくたちだから想定通りね。
ここの施設配置は、殆ど工程順に一直線だから憶えるほどのこともないが、まずここが第一手術室と第一準備室ね。
ここは、知っての通り部品センターに素材として送られる四肢の切断をするところだから、脳外科限定の我々は担当しないわ。
こっちが第一回復室ね。ここからは素体がダルマ状態で要介護になるのは、自分の時に経験済みよね。
それで、ここから最後の手術まで40日間の素体介護も助手の仕事だってのは判ってるわね。」

マサ:「そりゃもう、トラウマ憑きで。特に10日目のBCI手術は忘れられませんよ。」

真理亜:「トラウマか。わずか40日で?。BCI能力向上の観点からはもっと長期間ダルマ状態で訓練した方が良いという説もあるのよ。
実際、冬子のような特例志願兵にはBCI能力高い人が多いしね。宇宙遊泳能力などと総合判断の結果、実施されなかったけどね。
40日というのは、手足を解体して骨髄を造血ユニットに加工する時間に合わせたんで、BCI訓練はついでみたいなものね。
外国の文献だと、宇宙船操縦専用にサイボーグ体自体を全く手足の付けられない構造にするなんて過激な提案もあるのよ。
もちろん性器なんか無く、股間も手足の切断面同様コネクタだらけで。極短距離すら無線を信頼しない思想もあるからね。」
24pinksaturn:2006/07/01(土) 01:12:16 ID:n9/CdxYW0
マサ:「いえ、ダルマ状態の期間が長い短いって訳じゃなくて、BCI手術のために剃髪されちゃうじゃないですか。
全く抵抗できない状態で容赦なく丸坊主にされたのが、ショック大きかったんですよ。
まあ、そりゃ一生ダルマ型で売春もできないような体になるなんて、もっとガクブルですがね。
しっかし無線を信頼しないったって、光ファイバならそこまでしなくても我々の膣奥ポート程度で間に合いそうなのに。」

真理亜:「なるほど。藻前らしいっていうか、元男の素体の性自認適合としては大成功なんだがねえ。その副作用かぁ。
まあ、トラウマをバネにして、精いっぱい素体に優しく接してやることね。但し、口先だけでね。
手足無しでBCI機器によって食事や排泄をこなすこと自体が第二教程訓練の一部なんだから、目的を踏み外さないでよ。
で、ここが藻前の苦手なBCIをやる第二手術室と準備室Aね。準備室Aでの素体剃髪・滅菌も助手の仕事だから覚悟決めるのよ。
こっちの準備室Bは術者用ね。ここは我々の担当だから準備室Bで身支度をするのよ。」

マサ:「その辺はシミュレーションに無かったですよ。」
25pinksaturn:2006/07/01(土) 01:15:22 ID:n9/CdxYW0
真理亜:「設備は大きいけどやることは単純だから。我々の体は簡単に無菌化できるでしょ。
このエアロックの先の部屋にエタノールを満たした水槽があってそこに全身を浸して滅菌するのよ。
引火事故防止のためにその部屋は窒素で満たされてるからエアロックがあるの。
入るときは、生命維持を2次装置に切り替え、燃料電池停めて膣ポートに補助電池ディルドを挿すのよ。
膣ポートに浸水してショートする心配もあるから、防水前バリも忘れないように。
足が宇宙用じゃないから、バッテリー残量に気を付けてね。始業時に原液の補給も必ずすること。
着るものはそこに掛けてある専用のキャミソールレオタードだけで、余計なものは一切身につけないこと。
面倒なようだけど、この設備のおかげでシビリアン医師のような窮屈な術着や手袋が不要になるって訳ね。
脳外科の細かい作業を楽な装備で出来るのはサイボーグの利点よ。あ、言い忘れたけど滅菌前に眼球を備え付けのに代えること。
この手術用眼球は高倍率ズームとアイビームが組み込みで神経索1本ずつを直接見れるし、毛細血管をねらい撃ちして止血もできるの。
暗視や軸索誘導剤の出す赤外光を選択視する能力も高いわ。操作はシミュレーションで慣れているわね?。」

マサ:「そこはやり込んだので自信あります。」

真理亜:「よろしい。但し、いくら高倍率の眼でもBCI手術前48時間の軸索誘導剤点眼を忘れたら視神経が追えないから忘れちゃダメよ。
次、ここがBCI設置後に入る第二回復室ね。ここはBCIの訓練施設を兼ねていて食事は各ブースのマニピュレータを使って原則自力ね。
排泄や入浴のための移動も天井のレールクレーンで出来るから回復状況に合わせて、なるべく自力でさせるのよ。
我々の体内無線LANからも制御できるから、初めに手本を見せたり、感覚だけ接続させて動かしてやって覚えさせること。
藻前は、マオに重機操縦教えてたから要領は一緒だけど、素体はBCI初めてな訳だから根気よくやるのよ。」
26名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 01:22:22 ID:86M1uK760
age
27pinksaturn:2006/07/01(土) 01:24:54 ID:n9/CdxYW0
マサ:「初めにコントローラ接点の神経掴むまでが辛抱ですね。元から無い器官動かすんだから。」

真理亜:「まあね。耳動かすとか目玉寄せるとか尻尾動かすとか色々例えられるけど、人によって違う感覚だしね。
さて、次が主戦場になる第三手術室と準備室ね。準備室A,Bの機能は第二とほぼ同じよ。
ただ、ここでは背割り切開の後、脳脊髄容器に収まるまでが非常に長時間の水中作業になるからね。
補助電池ディルドを3本ずつ使って途中で入れ替え・充電するから残量と入れ替え時の手順忘れちゃダメよ。
特に、股間の洗浄をやり直しにビデ・ボックスに入るのを絶対忘れないこと。
それから、運悪く血管奇形や腫瘍が見つかって時間が伸びた時に備えて、生命維持タブレットも更新しておくことね。
そういうときは、応援呼ぶことになってるけど、だぶったりしてすぐ来れない場合もあるから。」

マサ:「電極付けは自信ありますけど、腫瘍や血管の処置は怖いですね。特に深部だとシミュレーション例も少ないし。」

真理亜:「難しいのに当たったときは、一旦硬膜と脳脊髄容器を閉じて研究所や帝大に出向中の専門家を呼ぶから大丈夫よ。
ところで、藻前はシミュレーション一辺倒だから手術室内の様子って術者視点しか見たこと無いんじゃない?。」
28pinksaturn:2006/07/01(土) 01:26:16 ID:n9/CdxYW0
マサ;「そういえば全体の風景って思い浮かびませんね。」

真理亜:「やっぱり。一度、監視カメラ映像 http://pinksaturn.fc2web.com/syujutusitu.htm も見て全体像を確認なさい。
想定外の事態にあったとき、全体が見えないとパニックになるからね。
それで、最後の部屋が調整室ね。ここでは脳脊髄ケースを外部生命維持装置に繋いだ状態で覚醒させて神経トランスポンダを検査するのよ。
リモートボディで折り返し通信が通ったら、我々の責任範囲はお終いで、素体ってゆうか出来たサイボーグ中枢を整備兵に引き渡すの。」

マサ:「ここのことは自分の時に覚醒してますから経験で判りますよ。」

真理亜:「注意すべきことは外部生命維持装置にセットする造血ユニットの素体番号とDNAチェックサムの確認よ。
万一、取り違えがあったら大変なことになるから。これはさっきの第三手術室で首の血管分岐に繋ぐときも同様ね。
後は、そうそう脳脊髄摘出後の胴の生命維持処理を忘れないこと。つい脳の保護ばかりに気を取られて忘れたら大変よ。
万一、ミスで胴がダメになって消化ユニットが作れなかったら、遺伝子組み替えブタ代の賠償責任を負うことになるわよ。
それじゃ、明日は9時から、最初は第一回復室ね。」


(翌日9時、第一回復室)

真理亜:「10時ごろには最初の素体が来るからそれまでに受け入れ態勢チェックを完了するのよ。
知ってるだろうけど、脳と臓器の負荷軽減のためすぐ切れる部分麻酔だから、痛がるのを巧くなだめるのよ。」

マサ:「傷を舐めてやったりしても良いんですかね。」

真理亜:「エタノールでうがいをして完全に消毒すればいいわよ。気を紛らわすなら、傷より性器が良いかな。
藻前は蛇舌だから、クリトリスをつまんでやるのが良い鴨。」

マサ:「なるほど。工夫してみます。」
29pinksaturn:2006/07/01(土) 01:36:22 ID:n9/CdxYW0
(9時50分)

下請けのシビリアン整形外科医:「まいど−。1体目できましたー。」

真理亜:「乙!、早かったわね。」

整形外科医:「手足切断して、ダルマッ娘作るの好きなんで、毎年請けさせて貰ってますので。ホントは抱けると良いんですけど。」

真理亜:「素体にも人権があるから、風俗営業税を納付すれば自由に売春する権利はあるわ。個別交渉は一応可能よ。」

整形外科医:「えっ、いいんですか?。」

真理亜:「但し、立場を悪用して強要したら犯罪になるから、交渉には私か助手のマサが立ち会って正当な合意を証明する必要があるわね。
当然ながら、傷に差し障らないことと、あなたが性感染防止の検査証明持ってることも条件になるわね。」

整形外科医:「有効な優良買春人証明書は持ってますよ。傷の方は私の担当した娘なら性器寄りに縫い目が来ないように工夫してます。
それに縫合の強度には自信があります。3日でセックス可能になることは、職を賭けて保障できます。」

真理亜:「そお、じゃ交渉するときは言って頂戴。それからこの部屋では他の素体に迷惑だから、空き時間に準備室で淫ってね。
あと、料金はあなたの請負代金から天引きして素体の個人口座に入れるようになるからね。」

整形外科医:「真理亜様、マサ様、ぜひ宜しくお願いします。」
30pinksaturn:2006/07/01(土) 01:39:04 ID:n9/CdxYW0
1体目:「うーん、うーん、痛いよお。お母さん助けて。」

マサ:「はいはい、そりゃ痛いよね。私ので良かったら気晴らしにオッパイ吸う?。」

1体目:「うーん、うーん、オッパイよりティムポ舐めたい。」

マサ:「(そんなあ、無いもの言うなよ。そうだわ。)ドクター!、交渉のチャンスよ。」

整形外科医:「この状態じゃ、力入りすぎて食いちぎられる危険があるので勘弁して下さい。傷の周りを冷やして誤魔化しましょう。」

マサ:「なるほど。危険か。(1体目でこのオサーン使い潰すわけにもいかんしなあ。)」

整形外科医:「明後日になれば、かなり軽くなるんで、まだ同じこと言われたら、その際は宜しく。では、私は次にかかりますので。」

真理亜:「逃げられたわね。後はマサの忍耐力で、なんとかなだめるのよ。」

マサ:「へいへい。性器でも舐めてなだめてみますよ。(あーあ、私だって売春したいのに。最近、苦労ばかりで快楽少ないなあ。)
31pinksaturn:2006/07/01(土) 01:40:16 ID:n9/CdxYW0
(3日目、第一回復室)

マサ:「痛みは引いてきたかな。」

1体目:「ええ、おかげさまで落ち着きました。毎日性器舐めてもらったので随分気が紛れました。」

マサ:「今日もやる?。」

1体目:「傷口が問題なければそろそろセクースしたいのですが。」

マサ:「例のドクターに交渉して欲しいの?。」

1体目:「税別2000Pでお願いします。」

マサ:「判ったわ。会ったら、伝えておくわね。」

3体目:「私も同額でお願いします。」

8体目:「こっちもいいですか?。」

マサ:「あなたはまだ無理でしょ。明日傷口を診てからね。今日は私の舌技で我慢なさい。」
32名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 01:51:41 ID:86M1uK760
age
33pinksaturn:2006/07/01(土) 01:52:12 ID:n9/CdxYW0
(9日目、第一回復室)

(例の)整形外科医:「私の請け負った20体はすべて傷が塞がったんで、今日でお暇です。」

真理亜:「あなた、請負代金の殆どを売春代につぎ込んじゃったでしょ。生活大丈夫なの?。」

整形外科医:「明日から特区でメタロリの仕事して稼ぎますよ。外人の娘には萌えないんで今度は大丈夫です。」

マサ:「へええ。忙しいんですね。もう、ここの仕事は懲りちゃったかしら?。」

整形外科医:「全然。ダルマッ娘のためなら、不眠不休・医は仁術の精神でがんばれますよ。
また、こちらで手足切断のご用命がありましたら何時でも馳せ参じますので今後ともよろしく。」

マサ:「(このオサーン、ただの変態なのか、いい人なのかワケワカラン。)お元気で、がんばって下さい。」

真理亜:「乙でした。」

1体目・2体目・3体目...「バイバーイ、ダーリン!。お買いあげドモ−!。」
34pinksaturn:2006/07/01(土) 01:53:14 ID:n9/CdxYW0
(10日目、第二A準備室)

マサ:「軸索誘導剤の点眼これでお終いね。じゃ、いよいよ剃髪始めるよ、覚悟は良い?。」

1体目:「ちょ、ちょっと待って、はあはあ...」

マサ:「んもう、私だって辛いからさっさと終えたいんだけどなあ。待ったは3回までにしてよ。化粧でもしてみる?。」

1体目:「丸坊主じゃ、売春できないですよね。」

マサ:「そりゃ、買い手の趣味次第でしょ、って、プルプル、ちゃうちゃう...。
そういう問題じゃなくて、BCI手術後は頭蓋骨に継ぎ目が残るから、安全上売春はどうせ無理よ。
昨日まで、例のオサーンのおかげで結構稼いだんだから我慢しなさい!。
サイボーグになれば、いくらでも安全に売春できるようになるのよ(しばらく宇宙に出されるから嘘か...)。」
我々の地上仕様の腰部外装は基本型がセクサボーグといって非常に性感が優れたものなんだから。
じゃ、始めるよ。」

1体目:「あ、でもチョット待って、もう一度鏡見せて下さい。」

マサ:「はいはい。これで待ったなしよ。後がつかえてるんだから。カウントダウン5秒前、4、3...。
バリカン入りまーす。マルコメマルコメ...」

1体目:「びえーーーん。」
35pinksaturn:2006/07/01(土) 01:54:11 ID:n9/CdxYW0
(第二B準備室)

真理亜:「遅い!。着替えと補助電池ディルド装着と防水前バリと眼球交換と滅菌急ぎなさい!。」

マサ:「済みません。やっぱり、強引に剃髪するのは無理でした。」

真理亜:「藻前もこういうところでサドッ気が発揮できればいいのに。
特区で援交相手の売人どもを容赦なく処刑場送りにしてた残忍さはどこに行っちゃったのかしら。」

マサ:「アレは、密告だけで手を下してないですから。」

真理亜:「卑怯者。まあいいわ、急ぎなさい。」

マサ:「コギャルは卑怯でも許されるんじゃ...。」
36pinksaturn:2006/07/01(土) 02:05:44 ID:n9/CdxYW0
(第二手術室)

真理亜:「開頭はシミュレーションでやり込んでるから出来るわね?。」

マサ:「え、いきなりですか?(とうとう本物かよ、スプラッタやだー)。」

真理亜:「簡単な汚れ仕事は助手の役目でしょ。一応、何時でも緊急リモート出来るように見てるから。」

マサ:「じゃ、身体制御のアドミニストレーション開けますね。」

真理亜:「必要ないでしょ。ずーっと直属上官だったんだから、常時、強制リモート権限が設定されてるわ。」

マサ:「そうでしたね。一度もやられたこと無いから忘れてましたよ。」

真理亜:「強制リモート権限は安全上やむを得ないときか、教習目的でしか使っちゃいけないでしょ。
藻前は、体を動かす技だけは確かだから必要なかったのよ。今日も頼りにしてるわよ。」

マサ:「信用して頂けるのは嬉しいですね(でも、スプラッタ怖いよー、あーあ)。じゃ、始めます。入刀ぉー。」

真理亜:「良い線出してるね。素体は30日間だけだから意味無いけど、きっちり生え際の内側5_で切れてるね。
これなら、シビリアン向けの一般病院でも通用するわ。」

マサ:「どうも。クリップ止めました(出血少なくできて助かったわ、やれやれ)。ドリル始めますか?。」

真理亜:「良いわよ。その早さならダメージ少ないし。折角だから細かい出血をアイビームで止めなさい。」

マサ:「仰せの通りに。血は苦手ですから。それっ!、ラブラブ光線!。もう1箇所、ラブラブ光線!。」

真理亜:「ふむ、拡大で毛細血管点射か。私より上手いわね。キーワードは相変わらずバカだけど。」
37pinksaturn:2006/07/01(土) 02:08:01 ID:n9/CdxYW0
マサ:「ドリル始めます(骨は血が少ないから気楽だわ)。」

真理亜:「穴位置も正確に出来てるわね。次のノコギリは硬膜に気を付けるのよ。」

マサ:「もちろんです。えと、保護箔をくぐらせて...よし出た。ノコギリ始めます。」

真理亜:「最後の辺にたどり着く前に縫合線が外れることがあるから落とさないように気を付けてね。」

マサ:「吸着器、先にいくつか掛けときます。」

真理亜:「そうそう。急がば回れってね。」

マサ:「開きました。持ち上げますので生食容器お願いします。」

真理亜:「よーし。脳みそご対面ー。」

マサ:「リエのおかげで硬膜は見慣れてますから、感動のご対面て程でもないですね。」

真理亜:「そうね。さて、この先は流石にいきなり藻前にさせるの心配ね。
今日は感覚だけ私に繋いで、感触を掴みなさい。易しい箇所になったら渡すから。」

マサ:「なるほど、硬膜切開そういきますか。」

真理亜:「視神経の走りに個人差があるでしょ。慣れると顔つきとかから予想できるからね。
シミュレーションと違うけど、この方が視神経を空気にさらす距離が小さいでしょ。
じゃ、励起装置起動して。視覚を1.5ミクロン赤外に切り替えなさい。」
38pinksaturn:2006/07/01(土) 02:09:56 ID:n9/CdxYW0
マサ:「起動しました。軸索誘導剤、反応してますね。こりゃよく見える。どれ、拡大。
一本ずつしっかり場所判りますね。電極パーツどうぞ。」

真理亜:「手順いいよ。こうやってリードを視神経に沿って滑り込ませるのよ。」

マサ:「視神経傷つけそうで怖いんですよね、これ。」

真理亜:「後30日しか使わないから少々は構わないけど、あんまり酷いとBCI調整がし辛いからね。」

マサ:「リードが片側200万本ですから、一束100端子単位とはいえ、やっぱり大変ですね。」

真理亜:「その代わり、本来の視神経数の4倍もあれば、分解能かとか多少のずれ許容とか融通効くからね。
この作業はサイボーグの視力と体力がなきゃ、大変よ。でも、誘導剤が無けりゃとても出来なかったわね。」

マサ:「サイボーグが少ない、最初の頃はどうしてたんでしょうね。」

真理亜:「顕微鏡使って、疲れるから交代だったそうね。それでも過労死した術者が出たそうよ。」

マサ:「だいぶ進みましたね。あと、5分の1...最後はトランスポンダ繋いで硬膜外に縫いつけでしたね。」

真理亜:「よし、視神経終わりね。聴覚神経とコントローラーは位置精度甘いから、藻前に任せるわ。」

マサ:「運動野の個人差って、外見から読めませんか?。」

真理亜:「難しいのよ。それで、コントローラは低密度で広めに設置しているのよ。
それで、後の調整で手足なんかと重ならない空き神経を捜して選ぶの。」
39pinksaturn:2006/07/01(土) 02:21:12 ID:n9/CdxYW0
マサ:「なるほど、じゃ、シミュレーション通りこの辺りで面的に置けば良いですよね。」

真理亜:「うん、そこそこ、それで良いわ。」

マサ:「できました。一時覚醒にかかりますね。」

真理亜:「やって。」

1体目:「うううん、怖いよー...はっ。」

真理亜:「生きてるわよ。説明したとおり、術中の電極動作チェックで起きてもらったのよ。
早速だけど、手を握ったり開いたりしてみて。実体がないから感覚だけで。」

1体目:「こうで良いですか?。」

マサ:「対向トランスポンダ、信号来てます。両手、入ってます。」

真理亜:「コントローラの位置は良いようね。視覚オーバレイ信号送って。」

マサ:「標準パターン出します。」
40pinksaturn:2006/07/01(土) 02:22:35 ID:n9/CdxYW0
真理亜:「この部屋のもの以外に、何か見える?。」

1体目:「風景に重なって、広く、薄く光が点滅しています。」

真理亜:「視界の端の方も光ってる?」

1体目:「視界の端まで全部、というか外まで広く光ってます。」

真理亜:「視野は良いようね。次、音声送って。」

マサ:「パターン出します。」

1体目:「ざわざわいう音が、左右に移動してます。」

真理亜:「両側いいようね。お疲れ。マサ麻酔戻して。」

1体目:「こんなので大丈夫なんですか...こくっ。」

真理亜:「この段階じゃ、チャネルマッピングしてないから繋がってることしか判らないものね。
不安がるだけだからさっさと眠らせた方が良いのよ。じゃ、閉じるわよ。
開頭の逆で、硬膜終わったら藻前が仕上げやるのよ。」
41pinksaturn:2006/07/01(土) 02:32:16 ID:n9/CdxYW0
(翌日、第二回復室)

1体目:「うーん、うーん、頭が...怖いよー、痛いよー...はっ。」

マサ:「とりあえず無事覚醒したね。早速だけど傷口チェックよ。まあ、自信はあるけどね。」

1体目:「傷跡醜かったら嫌だなぁ。あ、いてっ」

マサ:「どうせ後30日だけでしょ。まあ、私にも意地があるんで綺麗に出来てるけど。ほら、鏡見る?。」

1体目:「怖いなぁ。あ、ホントに細い線しかないですね。しかし、情けないくらいつるっぱげですね。」

マサ:「サイボーグの視力と身体制御CPUを使えばこんなものよ。凸凹だとキャップの密着悪いし。
じゃ、消毒してBCI中継キャップ着けるね。」

1体目:「うっ、滲みるー。」

マサ:「ほい、出来た。決められた仕事はこれでお終いなんだけど、はいこれサービスよ。」

1体目:「こ、これは...」

マサ:「昨日剃った髪を、夜なべしてかつらに加工したのよ。そんな義務無いんだけど私からの気持ちよ。」

1体目:「ありがとうございます。感激ーー。最後の自毛ですから大事に使いますよ。」

マサ:「じゃ、BCIのチャネルマッピング始めるよ。まず視覚ね。これ何に見える?」

1体目:「ランダムなパターンにしか?。」

マサ:「少しずつ変化させていくから、ほぼ直線になったら言って。」
42pinksaturn:2006/07/01(土) 02:33:16 ID:n9/CdxYW0
1体目:「...あっ、曲がってるけど線になりました。」

マサ:「この付近か、変化を遅くするから直線になったらすぐ言って。」

1体目:「...そこ!。」

マサ:「止めたけど直線で止まってる?。場所は?。あと色は?。」

1体目:「少し行き過ぎてます。場所は右目の上から右下に伸びてるように見えます。色はまだらですね。」

マサ:「よし。仮基準点設定と、じゃ、これ何に見える?。」

1体目:「歪んでますが、ひらがなで、”ぬるぽ”と、色はぬの上半分がピンクで、間が白くて、ぽは水色です。」

マサ:「1発目としてはかなり良いな。疲れない?。」

1体目:「かつらのおかげか、元気出てきました。」

マサ:「よっしゃ、じゃ、これ赤い真円に見えて欲しいんだけど、違ってるよね。また変化させるから合ったら言って。」

1体目:「...あ、そこ一寸戻して下さい。...そこ。合いました。」

マサ:「よーし。じゃ、これは?。」

1体目:「赤い字で”ぬ”、緑で”る”、青で”ぽ”です。」

マサ:「視覚調整は取りあえずこれで良いわ。訓練中に細かい狂い見つけたら、その都度言ってね。じゃまた。」
43pinksaturn:2006/07/01(土) 02:44:11 ID:n9/CdxYW0
(助手開始から通算13日目 第二回復室)

マサ:「手でも足でも胴でも首でも顔でも舌でも目でも耳でも無いところを動かしてみて!。」

1体目:「うーーん、うーーん、念力、念力、...済みません、うんち出そうです。」

マサ:「はいはい。(体内通信)レールクレーン、代行操作...(/体内通信)、操作画面見えるよね?。」

1体目:「はい、見えてます。」

マサ:「今は私が操作を代行してるけど、BCIできたらトイレはこの通り自分でやるのよ。」
44pinksaturn:2006/07/01(土) 02:45:43 ID:n9/CdxYW0
(レールクレーン終点のトイレ)

1体目:「クレーンに掴まれて移動するのって結構苦しいですね。」

マサ:「腕がないと脇の下で支えられなくて肋骨鷲掴みにするからね。
もっとくびれが少ない体型の娘だと、滑らないように強く掴むことになるから最悪だわ。
さあ、着いたわよ。ここで、こうして洗浄機と乾燥機のコントローラを呼び出して使うのよ。
脇の小さな動画は、監視カメラに写った前後の穴付近ね。これで汚れが落ちたか見るのよ。」

1体目:「あそこの拡大映像を人に見せるのは恥ずかしいですね。」

マサ:「嫌なら、一刻も早くBCI操作を掴むしかないわね。ここでも、トライしてみる?。」

1体目:「ええ。うーん、念力念力...微かにカーソル動いた希ガス。ああ、ダメだわ。」

マサ:「惜しいわね。もう一寸よ。」

1体目:「出そうなので取りあえずやっちゃいます。(ブリブリ、ゲリゲリ、ジョロロ...)ふう。」

マサ:「くっさー、早く自力に移行してよね。はい、取りあえず洗浄よ。」
45pinksaturn:2006/07/01(土) 02:47:35 ID:n9/CdxYW0
(30日目、会議室)

真理亜:「今日は、BCIの進捗に基づいて、改造手術順の最終調整を議論します。
まず、現時点で自活が不十分な娘について、延期やBCI再手術の必要性を確認します。
報告はもらってますが、各助手は担当の娘について改めてここで見解を言って下さい。」

マサ:「5番は視野の5%に歪みが残ってますが、外部マッピング調整で吸収できそうです。
丁度、食事用マニピュレータの移動釦に当たる位置なんで介助してますが、トイレは自力ですし。
12番はカーソル掴むのが遅かったんで出遅れましたが、1番の経験からすると後は早いでしょう。
元々、先頭から2日遅いですから、順当にやっても残り11日あるし。」

他の助手1:「26番は入れ替えで3日ほど延ばしたいですね。カ−ソルようやく掴んだばかりなので。」

他の助手2:「51番は左側の視野欠損が約8%と大きいのでやり直した方が安全です。
元々視神経に小さな損傷があったようで、誘導の難しい領域がありましたね。
今なら、マッピング結果をフィードバックして該当箇所を修正出来そうです。
それでダメなら、受容体側の問題なので我々の手には負えなくなると思いますが。」

真理亜:「判りました。51番については今日の午後に再開頭しようと思いますがコンディション良いかしら?。」

他の助手2:「やや疲労気味です。やるなら応援を入れて時間を短縮したいですね。」

真理亜:「別件で帝大の名人が来てるので、打診してOKなら今日やりましょう。
26番を3日延ばすとすると、間の娘が繰り上がる事になるけど、まずい娘いるかな?。」

他の助手1:「順調な娘ばかりなので、ダルマ卒業が早まって喜ぶだけですよ。」
46pinksaturn:2006/07/01(土) 02:59:48 ID:n9/CdxYW0
(第2回復室)

12体目:「おしっこ出そうです。」

マサ:「クレーン呼んでみなさい。」

12体目:「念力念力、手じゃなくて舌じゃなくて耳じゃなくて...ダメ漏れますぅ、溲瓶とっ..ああ(じょろろー)。」

マサ:「ザンネン、アウトか。(体内通信)用務員室にメール...」

用務員:「ひっひっひっ、また、お漏らしですかあ。」

マサ:「おっちゃん。ゴメン。またやっちゃったー。惜しいところだったんでついチャレンジさせちゃってぇ。」

用務員:「どういたしまして。ダルマッ娘のお漏らしのお世話するのが大好きで、ここに就職したんですから。」

マサ:「そう。いつも助かるわ(はぁ、最初のドクターといい、変態オヤジに支えられる施設なのね、ここわ)。」

用務員:「ふきふきも私がやってあげていいですか?。」
47pinksaturn:2006/07/01(土) 03:01:13 ID:n9/CdxYW0
マサ:「舐めてやっても良いわよ。」

用務員:「それでは、お言葉に甘えて、ふきふき、ぺろぺろ、むむ、コーン風味ですな。」

12体目:「ひゃいん。恥ずかし気持ちいい。」

7体目:「あ、いいなあ。そうだわ。おじさん、こっちもお漏らしぃ。」

マサ:「こらっ。藻前はBCIできるのに甘えるんじゃない!。今度やったらお仕置きよ。」

用務員:「あの、あちらは、お世話しちゃダメですか?。」

マサ:「しょうがないから今度だけよ。甘やかすとBCI訓練に差し支えるからね。」

用務員:「でわ。今度だけ、...ふきぺろ...じゃ、これで失礼します。」

素体たち:「あーん、おっちゃん逝っちゃイヤー!。」

マサ:「こらー!。藻前たちも、わざとお漏らししたらお仕置きよ。私にはBCIモニターですぐ判るんだから。」
48pinksaturn:2006/07/01(土) 03:02:12 ID:n9/CdxYW0
(41日目 第3A準備室)

マサ:「とうとうここまで来たわね。もうじき宇宙に手が届くのよ。」

1体目:「かつら、ありがとうございました。今日もよろしくお願いします。」

マサ:「任せて。私は体動かす技だけなら真理亜様にだって負けないんだから。かつらは私物庫に送っとくわね。」

1体目:「基地内私物庫、もう貰えるんですか?。」

マサ:「そりゃそうよ。次に目が覚めたら、れっきとしたサイボーグで、2等兵に昇格するんだから当然でしょ。」

1体目:「そうだったんだ。第2教程を修了しないとダメだと思っていたわ。」

マサ:「改造後は、訓練中でも私費パーツの保有や私服の着用ができるから保管場所も与えられるのよ。
じゃ、頭剃りなおすからね。」


(第3B準備室)

真理亜:「補助電池ディルドの準備は良い?。今度は滅菌中だけじゃなくて長時間だからね。
摘出後のトランスポンダ付けからケース組み上げまでは、生食槽中なんだから。
途中で出るのに2分、さらに防水前バリシール剥いでディルド入れ替えに1、2分かかるからね。
濡れてると燃料電池起動もすぐには出来ないし、生命維持装置内バックアップコンデンサは持続短いのよ。
作業に気を取られて電池切れたら死ぬんだからね。1体作る間に、1体氏んだんじゃ話にならないわよ。」

マサ:「シミュレーションでやり込んでますから、たぶん勝手に体が動くと思いますよ。」

真理亜:「あてにしてるわよ。じゃ、滅菌逝こうか。」
49pinksaturn:2006/07/01(土) 03:42:18 ID:n9/CdxYW0
(第3手術室 前出の監視カメラ映像 http://pinksaturn.fc2web.com/syujutusitu.htm の場所)

マサ:「皮肉の開きと、縁クリップできました。血管どうですか?。」

真理亜:「よし、頸動脈分岐切り替え完了。外皮に続いて、汚れ仕事は藻前の役目よ。背割りは任せたわ。」

マサ:「判っております。しっかし、背割りって牛の解体みたいで好きになれませんねぇ。カッター回します。」

真理亜:「嫌いでも得意なんでしょ。頭部は保護シート入れてあるから一気にチュイーンと行って良いわよ。
ん、そうそう、その調子、ど真ん中一直線に切れてるね。よし。そこからの背骨は慎重にね。
脊髄傷つけて補助CPU使うようになったら、個別ソフト開発費やら相当の賠償になるからね。」

マサ:「そんなガクブルなこと言わないで下さいよ。自信あったのが不安に変わりますよ。
はい、そーっとそ−っと、ガリガリ、よし真ん中からずれてないな、軟骨崩れ無しっ、...」

真理亜:「おーよしよし。第1関門突破ね。じゃ、後頭頭蓋半球除去よ。BCI引っかけないようにね。」

マサ:「頭蓋骨取れました。」

真理亜:「よし、じゃ背骨各節のクォーターカットよ。藻前は下半分やって。延髄寄りは私がやるから。」

マサ:「マイクロカッター起動、よし1個目パキッ、...ここまでで良いですか?。」

真理亜:「もう1節やって。」

マサ:「はい、取れました。」

真理亜:「よし。リフト起動して。生食槽に移すわよ。さて、ここからが大変ね。電池チェックもう一度よ!。」

マサ:「起動しました。ディルド電池99%、ん、防水前バリも完璧です。台、上げて良いですか。」
50pinksaturn:2006/07/01(土) 03:44:08 ID:n9/CdxYW0
真理亜:「外部維持装置の追従移動機構起動は確認したの?。生食のコンディションもチェックよ。」

マサ:「はい。エラーありません。生食槽の浸透圧、酸素濃度、温度いずれも規定通りです。」

真理亜:「念のため、ゆっくり動かすのよ。じゃ、始めて。」

マサ:「移動始めました。血管テンション正常、憑いてきています。1分で着水します。」

真理亜:「人工頭蓋・脊柱のパーツセット確認。終わったら入る準備よ。」

マサ:「パーツセット、トレイのモニタOKです。滅菌ボックス先に入ります。」

真理亜:「洗浄終わったら、槽内行って、台の降下を監視して。」

マサ:「槽内に移動します。小リフト起動。...着底しました。台、順調に降りてきてます。」

真理亜:「1分で追いつくから、台見張っていて。」

マサ:「台、着底しました。首の血管ブロック箇所、異常ありません。」

真理亜:「首側面切開始めていて。槽内はビーム使えないからクリップ止血こまめにね。」

マサ:「開きました。いよいよ引き抜きですね。外部維持装置、データ異常なしです。」

真理亜:「先に脊髄の方、浮き上がらせるわよ。下から順に、神経切りながら持ち上げて。」

マサ:「血管切り離しと胴の維持処置は、何時やりますか?。」

真理亜:「忘れるといけないから、今やっておきましょ。私がやるから、神経やっていて。」
51pinksaturn:2006/07/01(土) 03:46:06 ID:n9/CdxYW0
マサ:「運動神経の余長、こんなもんで良いですか?。」

真理亜:「シミュレーション通りね。それで良いわよ。感覚の方は目印だから見える程度で良いわ。」

マサ:「間違えて運動の方、短くなりすぎたら大変ですね。」

真理亜:「脊髄の外は再生できるけど、手間かかるから気を付けるのよ。」

マサ:「...脊髄、全部浮かしました。」

真理亜:「次、脳の引き上げ準備よ。まず、BCIが崩れない位置で視神経と聴覚神経切り離して。
顔面側の処理は、その後少しずつ上げながらね。」

マサ:「切れました。BCIの端子ずれありません。」

真理亜:「よし、じゃ上から嗅覚、動眼、三叉、外転、顔面、舌咽、迷走、舌下、の順で上げながら切り離してくわよ。
運動系は長めにね。迷走神経は対応器官が無くなるから根こそぎで良いわよ。嚥下制御は舌下だけで賄うからね。
私が右からやるから、左の縁からやってきて。最後に鼻の裏あたりで合流ね。」

マサ:「...舌下まで来ましたね。」

真理亜:「よーし。これで、持ち上げられるわね。保護シート敷き込んで。」

マサ:「こんな配置で良いですか。」

真理亜:「良いわよ。引き上げワイヤー降ろして。」

マサ:「降りてきました。通しますのでそっち側お願いします。」
52pinksaturn:2006/07/01(土) 04:18:30 ID:n9/CdxYW0
真理亜:「脳周り、掛かったわ。脊髄は一人で掛けられるわね。」

マサ:「はい。...全部掛かりました。」

真理亜:「少しずつ上げてみて。組織が切れてない箇所があるとまずいから、超スローで。」

マサ:「上手く上がっていきますね。ふう。」

真理亜:「大丈夫そうね。大きく上げて良いわよ。水面下50センチで、トレイ方向に移動開始よ。」

マサ:「水平移動始めました。中央で停めて良いんですね。」

真理亜:「そうよ。外部維持装置に造影剤注入開始させて、天井のレントゲン降ろして。」

マサ:「血管撮影準備良いですよ。」

真理亜:「よし、いったん槽外に出るわよ。出たら撮影して、現像上がりまで休息。電池代えるのよ。」

マサ:「小リフト動かします。一緒に乗ってって良いですね。」

真理亜:「...よし、出たな。レントゲン3台ともOKね。3面透視撮って。」

マサ:「撮れました。現像器起動します。造影剤停めました。10分で仕上がりますね。」

真理亜:「よし、電池代えて休憩。」

マサ:「体は疲れなくても、さすがに緊張で神経に堪えますね。こんなとき煙草吸えたらいいのに。」

真理亜:「吸ってもいいけど、防毒フィルタでトラップされるから全く効かないわよ。
身体制御CPUから覚醒パルス出した方が有効ね。」
53pinksaturn:2006/07/01(土) 04:21:53 ID:n9/CdxYW0
マサ:「あ、そんな機能憑いてましたね。一度も使ったことなくて。」

真理亜:「あら、覚醒パルスも無しでそんなに集中出来てたの。随分集中力あるわね。
藻前は、バカっぽい割に妙なところで生体脳の性能良いのよね。そこが期待するところだけど。」

マサ:「お褒めにあずかりまして...。写真来ましたね。ん、ん、怪しい瘤はなさげですが?。」

真理亜:「ふむ。大丈夫そうね。じゃ、普通に続けるわよ。防水前バリ点検して再滅菌!。」

マサ:「ディルド電池残量99%、前バリよし。維持装置切り替えよし。お先に滅菌入ります。」

真理亜:「よしよし。きりきり働けよ。」

マサ:「...小リフト動かします。...着底。」

真理亜:「じゃ、トレイ直上に移動。ぴったり合ったらゆっくりワイヤ降ろして。30センチ手前で停めて。」

マサ:「はい。...この辺かな。降ろしますね。ふわりふわりと...ん、ドンピシャですね。」

真理亜:「位置良いわよ。じゃ、顔面側のトランスポンダ付け始めるわよ。
さっきの切断順序で、嗅覚から始めて、舌下、あと声帯まで来たら、保護ジェルを塗って内膜上に降ろすのよ。」

マサ:「嗅覚のトランスポンダ位置ってこれで良いんですかね。随分鼻から遠いようです。」

真理亜:「視覚と違って、情報量少ないから狭帯域で良いでしょ。犬なら逆だけど。」

マサ:「ふーん。私の麻薬用鼻なんて結構効くのに。」

真理亜:「特定薬物の識別は生体脳でやってないのよ。訓練無しで機能するでしょ?。」
54pinksaturn:2006/07/01(土) 04:23:57 ID:n9/CdxYW0
マサ:「なるほど。やっぱり、犬にはなれないんだ。文献で犬型ボディなんて、あったけど、あれは玩具か。」

真理亜:「非人間型って、いろいろ案はあるけど神経マッピングがネックであまり研究が進んでないのよ。」

マサ:「まあ、わざわざコストかけてまで人間やめる意味ってあんまり無いですよね。よし舌咽できた。
私のようなフェラチオの上手い娘になれますように、念を込めてっと...。」

真理亜:「無駄口たたきながらも手は動いてるのね。舌下終わったら、首周りね。」

マサ:「脳神経全部出来ました。声帯も繋ぎましたが。テストはどうします?。」

真理亜:「見た感じだとまず大丈夫そうね。吊ったままが長引くのも嫌だからジェル塗って降ろしましょ。
内膜で支えて水面に上げた方が安全だわ。」

マサ:「ジェル厚みこんなもので良いですか、...じゃ、降ろします。」

真理亜:「保護シート抜いたら、前面内膜ごと吊り上げて、水面下5センチで保持して。テスター降ろすから。」

マサ:「位置良いと思います。頭部テスター来てますね。」

真理亜:「この状態で起こしちゃかわいそうだから、外部維持装置で麻酔加減して半覚醒にして。」

マサ:「やってます。レベル出てますか?。」

真理亜:「深いな。もうちょい、覚まして。うん、良いよ。よし、刺激シーケンスプログラム起動...。」

マサ:「条件反射、動いてそうですね。」

真理亜:「どうやらフェラチオは問題なく出来そうね。麻酔戻して良いよ。」
55pinksaturn:2006/07/01(土) 05:14:17 ID:n9/CdxYW0
マサ:「戻しました。降ろしますね。あ、電池そろそろ代えた方が良いんじゃないですか。」

真理亜:「休憩してから脊髄神経に行こうか。」

マサ:「小リフト出します。」

真理亜:「電池残り20%か。結構早かったわね。」

マサ:「経験無いと20%で結構焦ってきますね。」

真理亜:「うん、遅い人だと、脳神経の中間で一休みってのも普通にあるわよ。落ち着かないけど。」

マサ:「電池代えました。防水前バリシールOK。じゃ、再滅菌行きます。」

真理亜:「慣れてきたわね。じゃ、一気に脊髄片づけようか。」

マサ:「...始めますね。脊髄は感覚と運動が交互で規則的だから良いですね。」

真理亜:「まあね。ただ、モノが細いんで傷つけると脳みたいに冗長性で補えないから慎重にね。」

マサ:「右腕方面はこれで良いですよね。各トランスポンダは、もう側面溝に入れて良いですね。」

真理亜:「多分ね。その調子で他もさくさく付けていって、まとめてテストすればいいわ。」

マサ:「はい。...一番下まで来ました。こんなもので、どうでしょうか?。」

真理亜:「外観上は良いわね。じゃ、吊り上げてテストよ。」
56pinksaturn:2006/07/01(土) 05:16:11 ID:n9/CdxYW0
マサ:「水面下5センチ。脊髄テスターも降ろしました。脊髄反射テストだから覚醒はさっきより浅くて良いですね。」

真理亜:「うん、そろそろかな。刺激シーケンスプログラム...ん、脚気の心配は無さそうね。降ろして。」

マサ:「降ろしました。保護ジェル塗りますね。...搬送マニピュレータ起動、背面内膜降りてきます。」

真理亜:「位置合わせはざっとで良いわ。寄せながら保護ジェル完全に詰めるから。」

マサ:「寄せました。合わせは上からで良いですね。」

真理亜:「そうして。髄液排出バルブで、保護ジェルの余り吐かせるから。」

マサ:「合いました。とりあえず、安心ですね。」

真理亜:「2次装置が付くまでは、地震が来ないか心配よ。という訳で、胸から先に脊柱パーツ組むわよ。」

マサ:「搬送起動しました。ところで、電池15%ですが、大丈夫でしょうか?。」

真理亜:「微妙ね。注意しながら行くわよ。お、胸椎キット来たな。」

マサ:「組み立て始めます。2次生命維持装置の搬送も起動しました。」

真理亜:「良いよ。そのペースよ。早く終わればそれだけリスク下がるんだから。」

マサ:「2次装置来ました。外部補給ホースも正常に憑いて来てます。固定やりますので配管お願いします。」

真理亜:「よし、静脈入った。保護管固定よし。ローター試運転モードで、エア抜きして...ん、動脈もできた。
頸部血流切り替えバルブの切り替えもスムースね。じゃ、電池代えに出ようか。」

マサ:「小リフト出します。」
57pinksaturn:2006/07/01(土) 05:18:00 ID:n9/CdxYW0
真理亜:「暫く2次装置のモニタから目を離さないでね。初期不良に当たったらえらいことだから。」

マサ:「最後の砦の2次装置が不良なんてガクブルな...。今日は長時間使ってるのに。」

真理亜:「構造が簡単だし機械系は全て非接触軸受けだから、一度動いた物は滅多に故障しないわよ。
まれに軸受け磁性体結晶欠陥が元で、振動試験時に傷が付いて、試験液で動いて血液だとダメってあるから。」

マサ:「血液で試験したんじゃ再クリーニング無理ですもんね。どうか私に当たりませんように...。
電池替えと防水前バリシート済みました。怖いけど維持装置切り替えました。再滅菌入ります。」

真理亜:「まれにって言ったじゃない。隕石事故より少ないわよ。いちいち怖がるな!。」

マサ:「小リフト上げます...。」

真理亜:「さあ、頭蓋と残りの脊柱組み付けたら終わりよ。」

マサ:「頸椎、頭蓋、腰の順で良いですよね?。」

真理亜:「それで良いわ。」

マサ:「頸椎嵌りました。顔面入れます。ん、ちと固くないかな。」

真理亜:「鼻機構搭載部の端子穴キャップ抜かないと水圧で渋いのよ。力ずくでやると危ないわよ。」

マサ:「なるほど、あ、ホントだ。入りました。後頭蓋被せます。こっちは、この圧抜き口開けてやるんですね。」

真理亜:「そうよ。応用効くようになったわね。ん、そうそう、じゃ、次、腰よ。」

マサ:「よっこっらしょっと。腰ぱっちん、はいこれで良いですね?。」
58pinksaturn:2006/07/01(土) 09:17:37 ID:n9/CdxYW0
真理亜:「一番下の髄液排出バルブ調整やって。頭頂と一番下のトランスミッタのモニタ見ながらよ。」

マサ:「これで良いですか?。圧力差が大きすぎて規定に入らなかったらどうするんですかね。」

真理亜:「その調整値は良いわ。入らないのは素体に水頭症があるって事だから、ここに来る前に判るわ。
そういう娘は徴兵されない筈だけど、訓練中の怪我で発症する可能性は否定出来ないかな。
まあ、そうなったら特例志願のコースに乗せるしかないわね。公傷なら待遇は徴兵のままだけど。」

マサ:「なるほど。水頭症でも宇宙に行けるようになれるのかな。」

真理亜:「シャントなんか入れてたら耐G的に無理だろうね。地上で整備兵ぐらいしか無いかな。
脊髄が完全にダメなら冬子みたいに除去って手もあるけど、機能してると苦しい選択になるわね。
シャント入っていても障害者じゃないから、それを1級障害にしてしまうのは損とも言えるし。」

マサ:「さて、これで取りあえず完成ですよね。引き上げて良いですか?。」

真理亜:「覚醒検査から整備兵渡しまで外部維持装置引きずったまま行くから、切り替えるのよ。
コマンドは、2次から1次と等価になっているわ。...やった?。じゃ、引き上げて。私らも出るわよ。」

マサ:「中枢支持・移動用スタンドと仮設原廃液タンクも呼びました。小リフト出します。」

真理亜:「そっち持って。スタンドのリング開けさせて。せーの、よし乗った。リング閉めて。」

マサ:「タンク内容OKです。原廃液管差し替えます。」

真理亜:「はいご苦労さん。搬送コマンド出して。着替えたら調整室ね。」
59pinksaturn:2006/07/01(土) 09:19:27 ID:n9/CdxYW0
(調整室)

マサ:「試験用リモートボディ起動完了、声帯・視聴覚強制接続、覚醒させます。」

1体目・リモートボディの口で:「うう。背中からまっぷたつ...ぎゃぁぁぁ怖いよぉ...。」

真理亜:「取りあえず生きてるようね。ほら、無事終わったわよ。寝ぼけてないで起きなさい。」

1体目:「はっ。あれ、どこも痛く無いや。ここは...、あ、真理亜様!。」

真理亜:「ここは調整室よ。今の貴女の視点は調整検査用のリモートボディなんだけど、感覚どうかな?。
今度は手足も実体で憑いてるわ。ただし、電源コード引きずっているから、気を付けて動かしてね。
いいわね。じゃ、ロック解放コマンド送るわよ。」

1体目:「ちょっと顔つねってみます。痛てっ。生きてるし、手も確かに実体ですね。
でも、つねった筈の場所と痛い場所が違う希ガス。」

真理亜:「まだ、仮設だからね。BCIの段階で調整済みの視聴覚以外は、マッピング未調整だからよ。
あっちにあるのが貴女の本体よ。ちゃんと見える?。」

1体目:「えっ、く、首が勝手に斜めに回っちゃいます。」

マサ:「首の運動マッピング調整してみようか。目を瞑って、首を左右水平に回して。...ふん、ここかな。
目、開けて首振ってみて。」

1体目:「あ、普通に振れました。あれが、私の本体...まだ、あれだけですか。」
60pinksaturn:2006/07/01(土) 09:21:31 ID:n9/CdxYW0
真理亜:「ここで検査が通って、整備兵に引き渡されたら、あっという間に完成するわよ。
顔の希望モンタージュデータとか、ちゃんと提出してあるわよね?。
不備があると、仮設品付ける羽目になるけど、大丈夫かな?。
サイボーグになったら美人も不細工も自己責任で、親に文句言えなくなるのよ。」

1体目:「手術前にチェックした限りではエラーメールは来てなかったですが。」

真理亜:「多分大丈夫と思うけど、手術でBCIが損傷してないか確認兼ねてメールチェックしてみて。」

1体目:「BCI−Webメーラー...新着は無しですね。画面歪みなど異常ありません。」

真理亜:「じゃ、上の方の神経から順に点検よ。まず、この瓶の中身の臭い判る?。」

1体目:「イカかしら...いえ、おまんこに似てる希ガス...で良いんですか?。」

真理亜:「正解。じゃ、目玉一杯に上向けて、次、下、はい左、もっと一杯に、んじゃ右。視野はどう?。」

1体目:「感覚よりも、やや大きく動き気もしますが、見え方に異常はないです。」

真理亜:「目玉、コードレスだから生身より旋回が自由なのよ。慣れると360度回転出来る娘もいるわよ。」

1体目:「なるほど。じゃあ、これで正常なんですね。」
61pinksaturn:2006/07/01(土) 09:33:56 ID:n9/CdxYW0
真理亜:「じゃあ次、怒り顔と笑い顔交互に繰り返してみて、マサ!、見ながら仮設定よ。」

マサ:「うわぁ...何とも言えない怖くて面白い顔で...修正...とりあえず、この辺でどうです?。」

真理亜:「顔の表情調整は時間掛かるので仮設定したから、後は整備兵に教わって鏡見ながらセルフでね。
次、舌思い切り延ばして、左右水平に振って。」

マサ:「傾き、修正しました。」

真理亜:「両手を真横水平にして。」

マサ:「原点、採れました。」

真理亜:「そのまま、水平面内を前後にゆっくり動かして。」

マサ:「傾き修正、良いですよ。」

真理亜:「正面で、手を開いて、手首まっすぐ上下に。」

マサ:「この辺でしょう。」

真理亜:「じゃ、このディルド持って、フェラチオしてみて。」

1体目:「べろべろ、れろれろ、ふがふが...はれ?。コーラみたいな味がしますが。」

真理亜:「味覚は良いようね。舌の触覚に違和感は?。」

1体目:「多少引きつる感じもしますが、たいして。」

真理亜:「その程度は慣れかな。後は整備兵に相談して。次、このコップのアルコール飲み込んでみて。」
62pinksaturn:2006/07/01(土) 09:35:44 ID:n9/CdxYW0
1体目:「ごくごく。きつー。酔いそうですが。のどごしはおかしくないです。」

真理亜:「酔いそうなのは気のせいだから。良いようね。じゃ、肩を水平に胴を左右にひねって。」

マサ:「傾き直しました。」

真理亜:「まっすぐ背中前に丸める。つぎ、一旦真っ直ぐ、はい真後ろに海老ぞり、イナバウアー。」

マサ:「調整良いです。」

真理亜:「右足、小さく一歩、真っ直ぐ前に、次、左。左足で立って、右足真横に蹴り上げて、あっ」

1体目:「あああ...痛ったーい。」

マサ:「ゴメン。三半規管代替のレーザージャイロ強制接続忘れてた。」

真理亜:「痛覚はあるようね。レーザージャイロ繋がった?。じゃもう一度。はい足逆にして。
屈んで、そのまま床に座って、股目一杯開いて、ディルド持って、膣に挿入、ピストンして。」

1体目:「あああぁぁぁう...。感じました。」

真理亜:「性感の詳細な調整は重要だから、後で忘れずに整備兵に頼んでね。
じゃ、しゃがんでこの溲瓶におしっこする構えして、クリトリスを強くクリックして。」

1体目:「ひぃぃぃ、あ、出ちゃった。」

真理亜:「感覚はOKと。廃液の放出は生身と違ってクリトリス押さないと出ないからお漏らしは無いわよ。」

1体目:「便利ですね。」
63pinksaturn:2006/07/01(土) 09:37:08 ID:n9/CdxYW0
真理亜:「これでトランスポンダの動作確認は済んだので、貴女を整備兵に引き渡します。
マサ、今日の担当整備兵に連絡して引き取りに来てもらって。
一旦、仮ボディーの接続を切るので、真っ暗が嫌だったらBCIでそこらの監視カメラとマイク掴んでね。
それから、改造手術完了をもって、身分が素体・3等兵からサイボーグ・2等兵に変わりました。
BCIで自分の個人データが合っているか確認して、おかしかったら人事局にメールしてね。」

1体目:「お世話になりました。」

真理亜:「マサ、次の娘にかかるから第2回復室に迎えに行きなさい。」

マサ:「えっ、休憩無しですかぁ。」

真理亜:「後がつかえてるのでバンバン行くわよ。」


(50日目、第2回復室)

用務員:「その娘で最後のダルマッ娘ですか。来年まで寂しくなりますねえ。」

マサ:「あら、おじさん、世話になったわね。でも、殆ど空いてるのに掃除に精が出るわね。」

用務員:「次のダルマッ娘が来るまで、心を込めてここを整備しておくんですよ。
それに、訓練半年落第の娘とか、傷病で緊急改造手術なんて時もあるので何時でも使えないとね。」

マサ:「ふーん熱心ねぇ。おかげで助かったけど。」

用務員:「ダルマッ娘のためなら、何でもしますよ。マサ様も、またよろしく。」
64pinksaturn:2006/07/01(土) 09:50:34 ID:n9/CdxYW0
(50日目終業時刻ごろ。通路にて)

真理亜:「ノルマの20体、全部無事終わったわね。助手作業履歴確認書、人事局に送ったわよ。
これで藻前も一応、ドクターの端くれね。脳と脊髄しか触れないけど。」

マサ:「こんなに大変だとは。もう懲りましたよ。連日スプラッタだし、売春する暇もないし...。」

真理亜:「そお?、サディストにはやりがいがあるけどなぁ。藻前、筋が良いから来年も使いたいが。」

マサ:「ええ−っ、取りあえず資格要件満たしたから、もう良いじゃないですか。」

真理亜:「そりゃ、今はシビリアン特務士官だから動員義務はないけど、一代貴族になったら義務なのよ。
腕が鈍ったら困るわ。シミュレーションでも良いけど、給料もらってやった方が良いじゃないの。
有資格者になったから、次から2倍出るわよ。」

マサ:「そりゃ、お金は大事ですが...」

真理亜:「整備兵の報告だと、藻前が担当した娘は、フェラチオや性感が好調な娘が多くて評判いいのよ。
将来クピドタワーで使える娘を沢山確保するためにも協力しなさい!。」

マサ:「へいへい。真理亜様に嫌われちゃ夢も叶いませんから...(でもスプラッタ嫌いorz)。」

(苦痛、血、涙、失禁、...地獄の50日も無事終わってみれば、良い思い出になりませんかね。
マサには無理かしら。
次回予告:(20)メテオ計画 うちの娘たちは久しぶりで宇宙に出る予定です。)
65pinksaturn:2006/07/01(土) 11:46:20 ID:n9/CdxYW0
やっぱり、長すぎました。連投規制解除待ってる間に眠ってしまったり。

>>26 >>32 ID:86M1uK760
連投規制中のアシスト感謝。

>>34 9行目、ミスプリしてました、
マサ:「そりゃ、買い手の趣味次第でしょ、って、プルプル、ちゃうちゃう...。
そういう問題じゃなくて、BCI手術後は頭蓋骨に継ぎ目が残るから、安全上売春はどうせ無理よ。
昨日まで、例のオサーンのおかげで結構稼いだんだから我慢しなさい!。
サイボーグになれば、いくらでも安全に売春できるようになるのよ(しばらく宇宙に出されるから嘘か...)。
我々の地上仕様の腰部外装は基本型がセクサボーグといって非常に性感が優れたものなんだから。
じゃ、始めるよ。」

 ところで、もうお判りと思いますが、第2,第3手術室には無影灯がありません。
術者がサーボーグなら暗視できるので。第1手術室はシビリアン医師が入るのであります。
 第3手術室で、生理的食塩水を満たした水槽中で作業するのは、
持ち上げるとき脳を傷つけないためと、脳の乾燥を避けるためです。
 宇宙で手術する案も有ったのですが、素体輸送の困難とシビリアン補助者の動員が出来ないことから断念しました。
でわでわ。
66名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 20:36:22 ID:C/jOM+Tk0
pinksaturn氏は未来の世界からやって来たのかね?
67名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 20:21:16 ID:D9BOBX7g0
長ッ! 乙
68名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 20:00:51 ID:EaFCG7ZL0
梅雨ですね。
金属外骨格のサイボーグは、落雷の危険も高いんだろうか。
69名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 12:07:44 ID:GdgKaa4K0
>>68

低い導体と高い不導体を立てて、人工的に雷を落としたテストがあったな。
結果は、50回テストして50回とも高い不導体のほうに落ちた。
雷クラスの電流となると、導体・不導体は関係ないらしい。

同じ身長なら金属外骨格サイボーグ娘に落ちるかもしれんけど、
身長差によっては、隣にいる部分サイボーグ娘に落ちるかもしれん。




でも本当に雷が落ちるのは、多分いたずら好きなほう。
70名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 20:44:15 ID:P15S8abt0
汗をかいてた方が、落雷時のダメージは少ないらしい。
ということは・・・。
71名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 21:27:36 ID:XAq7dtKt0
以前テレビで見たんだが、
有る天気の悪い日、見晴らしの良い道路をウォークマン聞きながらチャリで走ってた女子高生に落雷。
普通なら即死か運が良くても重症だが、彼女は奇跡的に軽傷で済んだ。

実は彼女、ウォークマン本体をポケットに入れず、チャリの籠に入れていた。
そのおかげで、雷は身体より流れやすいイヤホン→ウォークマン→チャリというルートを通ったのだ。
落雷後、彼女は「ウォークマンなんて聞いていたからあんな目にあったんだ」と言われ続けていたが、
検証実験の結果、ウォークマンを使っていてもいなくても、落雷の確率は変わらなかった。
それどころか、落雷時に使っていなかったら雷は体の内部を通ってしまい、かえって危険だったという。


ということは、金属外骨格サイボーグの方がそれ以外よりも安全なのだろうか?
(自動車に落雷しても中の人に影響は無いというし……)
72名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 22:13:18 ID:y5YG2lFL0
内部機器は無視でおk?
73名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 22:37:46 ID:Rv9uR6Op0
無視できんでしょう。 構造や機械化の割合にもよると思うけど。
 
肉より金属のほうが電気が通り易いから、身体の外側か内側かは関係なく、大部分の電流は
機械部分を通るかと。 で、その際にいかれた電子機器の役割次第では生命の危機に。
 
理想は、電流を逃がす最外殻の金属と、重要な機器のある内部の間に絶縁体を挟む構造、かな?
74名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 00:03:02 ID:P15S8abt0
直接電気が通らなくても、至近距離を大電流が通れば盛大な電磁波の影響を受けるでしょ。
75名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 00:12:40 ID:fKbXB5Jh0
雷が近くに落ちた時、雷が直撃しなくても(枝分かれした細いのにも当たらなくても)電気機器が故障する事は知られている。
とんでもない大電力がそばを通るので猛烈な誘導電流が発生し(要するに電源の中のトランスと同じ原理)、それだけでも凄い電圧・電流になるので壊れるらしい。
だからただ絶縁するだけでは雷の電流を遮断する事はできない。
もし雷対策という理由で義体の外側を金属にするなら、それだけでなく電磁波をもっと遮断する対策もたぶん必要。
76名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 01:12:52 ID:EoqMFqra0
最重要パーツの周りを常温超伝導体で覆うとか
77pinksaturn:2006/07/05(水) 02:40:57 ID:rV7/qee80
(オプションパーツ 臨時増刊号)

ーー(号外)落雷−−

マオ:「うう、酷いことになっちゃったわ。」

ミキ:「マオ!。なんて姿に。いったいどうしちゃったの?。外皮が何ヶ所かでどろどろに溶けてるし、右足無くなってるじゃないの。」

マオ:「さっき急にスコールが来たでしょ。
雷が鳴り出したとので逃げよう思ったら、いきなり頭のてっぺんに落雷しちゃって。
右足はエタノールタンクが燃えだしたので緊急切り離しを実行したのよ。
爆発して、まだ、あそこでくすぶってるわ。
歩行中だったから、おそらく、たまたま右足が地面に着いた瞬間に落ちたのよ。」

ミキ:「生命維持装置は大丈夫なの?」

マオ:「そうだわ。動作ログ確認しなくちゃ。
右足燃料電池メインヒューズ溶断、右股関節部電源ポート一次アレスタ作動履歴あり、沿脊柱電源バスバー入側レギュレータ回路電流制限作動時間100ミリ秒、
一次生命維持装置下部バックアップコンデンサ過電圧保護1秒、同上部1秒、二次生命維持装置...、左足燃料電池出力緊急増強中、燃料切れまで45分。
電源系のプロテクトシーケンスは作動したようだわ。ログがあるなら、制御系が無事ってことかな。
コードレスで分断されてるし、チップアンテナって小さいから誘導起電力も小さかったのね。どうやらすぐに死ぬ恐れは無さそうね。」

ミキ:「肩貸すわよ。とにかくアイスワールドの整備工場へ行かなきゃ。」

マオ:「待って、右足拾ってちょうだい。高いんだから素材だけでも回収しなきゃパパに怒られちゃうわ。」

ミキ:「うわー、ぐちゃぐちゃ。回収しても直すのは無理ね。」

マオ:「すぐに鋳物屋を呼んで、鋳潰して作り直さないと。あーあ、今夜のショウに間に合うかしら。」
78名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 15:58:32 ID:FYQiemNZ0
てっきり化膿姉妹みたいな連中を取り上げるスレだと思っていたのですが・・・・
79名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 17:03:48 ID:Zmdp13YL0
なるほどw
でも、だったらスレタイに「整形」がはいるでしょうね。
80名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 22:32:57 ID:fKbXB5Jh0
>>77
電磁波拾えないアンテナはその時点でアンテナとしての役割を放棄してるような。

>>78
化膿仕舞は機械化して無いので。
そもそも娘と呼べる年齢ではな(突然音信不通
81名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 23:17:14 ID:1mGArABB0
波長次第でないの?とレス入れようと思ったら>>80に落雷か!?
82名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 01:01:10 ID:+rGYWJp80
もう5日も経っているのでいまさらやるのもなんだが・・・

>>42
ガッ
83pinksaturn:2006/07/06(木) 01:02:04 ID:BfAK/P+R0
>>80
号外なんで、まともに書くと長くなりすぎるのを無理矢理1レスに入れようと手抜きしたら真面目に読まれてしまいしたね。
>>81 の指摘する要因、および体内(脳ー胴、胴ー四肢)連絡用の感度の低いアンテナだったため、トランプポンダRF回路が焼き切れるほどの振幅はなかったのでした。
しかし、劣化は生じていてビットエラーが増えたため、修理した足をつけて歩いたら転んだ、などという被害は後であったかも。
また、より高感度な外部通信用のインタフェースは壊れていた可能性がありますが、すぐ生死にかかわる箇所ではないのでチェックしていません。
現実の世界でも、避雷針のあるビル内で無線LANがよく壊れるなんてことは無い希ガス。
84名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 00:08:23 ID:ipjDiXlO0
>>83
>避雷針に落雷!その時ビル内は!
無線LANどころかただコンセントから電源引いてるだけの電気・電子機器さえもやられるんですが
85Dark Mater(架琉魔):2006/07/07(金) 07:52:14 ID:GNHSXJ7r0
(恵委歌のレポートの続きです)
私は、悩んでいた。
恵委歌…少し言い過ぎたか…?
私は自室の簡素なベットに寝ころんだ。
『私は、絶対にサイボーグになるんだ!
邪魔をするな!』
『お前はただ力に憧れているだけだろう!
そんな物、機械共と何も変わらないじゃないか!』
かつての戦友の言葉を思い出していた。
「『何の為に今の道を選ぶ』…か。」
私はベットから起きあがり自室をでた。

「…え?」
鬼塚隊長に突然謝られ、ウチは困惑した。
「機械共に共感する事は私にとって許し難いことだ。
だが、お前が何を考えて共感したのかを聞くべきだった。
だからすまなかった。」
恥ずかしそうに目を背けながら隊長は言った。
「隊長…。」
「だから、答えてくれ。
恵委歌、お前は何のために生き、
何のために訓練をして、何のために闘っている?」
「…!?」
「人間としての記憶のないお前が機械相手に同情することは当たり前だ。
なら、お前は何故人間の為に闘う?」
86名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 18:29:30 ID:Zt5wtQoY0
>>84
それは電灯線を伝ってきた電流によるものであって、電磁波による被害ではなかろう。
87名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 22:06:39 ID:ipjDiXlO0
>>86
雷→避雷針→アース線→電磁波→電線→機器
88無名:2006/07/08(土) 16:09:08 ID:mGWtMASI0
夏休みに残したもの

 「う〜ん、何で忘れちゃったんだろう」
 夏休みもあと数日で終わろうとしてたある日の朝、かなは宿題のことで頭を悩んでいた。
 「夏休みの研究も、日記もほとんど終わったのに、何でこれだけ終わんなかったんだろ〜」
 かなの目の前には、やり残した算数と国語の宿題の山。どうしてこんなに残っちゃったんだろ…。
 「国語の漢字練習に、算数の計算問題…。あと読書感想文もあるよ…」
 これをあと数日でやるとしたら、どのくらいの時間が必要なんだろう。やっぱり始めのうちにやっておけばよかったなぁ。
 「とりあえず漢字の練習から始めますか…」
 かなは鉛筆を取り出して漢字の書き込みを始めた。…数分後、頭がこんがらがった自分がいた…。
 「だめだ、わかんない漢字が多すぎる…」
 これじゃ勉強なんてはかどる訳がないよ。その後もかなは練習問題とにらめっこしてたけど、結局半分しか進まずに終わってしまった。
 「しょうがない、次やるか」
 かなは算数の問題を取り出して、計算を始めた。算数はかなにとって最大の難関で、特に計算問題は成績が悪かった。だから計算問題には苦戦した。
 「う〜、わかんないよ〜、さっぱりだよ〜」
 だめだ…とてもじゃないけど一人じゃムリだ…。ほとんど進まないままかなは鉛筆を投げてしまった。
 「しょうがない、後で教えてもらおうっと」
 後は読書感想文だ。こればっかりは図書館に行って本を借りないといけないな。かなはお昼ご飯をたべてから、感想文のノートを持って町立の図書館にいくことになった。
89無名:2006/07/08(土) 16:10:27 ID:mGWtMASI0
 夏休みの図書館は子供や大人が少しいるだけで、結構すいていた。かなは自分が読む本を取りに、奥の児童用の小説が置いてある部屋へ入った。
 「うへぇ…児童用だけでもいっぱいあるんだなぁ…」
 ずらりと本が並んでる本棚を見て、かなはどれを読むのか困ってしまった。でも、もう時間がない。早くこの中のどれかを選ばないと日が暮れてしまう。かなは何とかして自分が読みたい本を必死に探した。
 「これはかなには合わないか…。そっちはメルヘンすぎて読む気になれないや。そっちはどうだろう…」
 しらみつぶしに自分の本を探したけど、なかなか見つからない。もたもたしてたらもう午後の2時をすぎてしまった。
 「えー、もうこんな時間―?早すぎるよー」
 こんなに探してるのにまだ見つからないなんて…。困ったかなは、気持ちを切り替えるため自動販売機で飲み物を飲む事にした。
 「冷たい飲み物で気持ちを切り替えれば、きっと見つかるよ」
 ごくごくごく。ぷはーっ。冷たい飲み物はかなの頭をリフレッシュさせてくれた。これで感想本探しを再開できるぞ。
 再び感想本を探すため、児童用本置き場に向かおうとしたかなは、ある本を発見した。これは一般の小説置き場にあった。
 「…少年は星を見つけた…?これってどんなお話なんだろう」
 かなはその本を棚から取り出し、開いてみた。…む、難しい漢字がいっぱいだ…。一応難しい漢字のところは振り仮名うってあるけど…。でもかなはこの小説の内容に心を惹かれていった。
 「決めた、これにする!」
 思い立ったら吉日、かなは速やかに借りる事にした。図書館の外に出たら読みたい、読んでみたいという衝動がかなに襲ってきた。でも家に着くまでのガマンだ。読みたい衝動を抑えながら、かなは家路に向かった。
90無名:2006/07/08(土) 16:12:10 ID:mGWtMASI0
自分の家に着いたかなは、さっそく部屋に戻って『少年は星を見つけた』を読むことにした。…物語は、ある少年が将来、自分がなりたい物を探すことから始まる。小さいころから自分が何になりたいのか分からないまま過ごしてきた16歳の少年、トオキ。
トオキはある仕事を手伝ったことがきっかけで自分が何をやりたいのかを知る。
それからというもの、トオキは休みを利用してその仕事を手伝う事になる。そしてトオキはある少女と運命の出会いをすることになる…!
 ここまで読んだかなはすごく感動した。自分の道を見つけるためにアルバイトを手伝うトオキ。早く続きを見たい、と思ったらもう夕方の5時をすぎてしまった。そろそろ夕ご飯の準備をしないと。かなは下に降りて夕ご飯の準備に取り掛かった。
 それからしばらくしてゆきなおばさんが帰ってきた。
 「あらあら、かなちゃんお夕飯の準備をしてくれたのね。ありがとう。あとは私がやるからかなちゃんはお部屋で待っててね」
 「はーい。それじゃかなはお部屋で待ってまーす」
 よかった、これであの本の続きが読める。さっそくかなは自分の部屋に上がって読書を再開した。
91無名:2006/07/08(土) 16:16:49 ID:mGWtMASI0
 トオキは仕事の準備中に一人の少女と偶然出会った。その女の子は事故によって足が不自由になり、車椅子の生活を余儀なくされていた。そのわけを知ったトオキは、彼女に元気付けるために団長にあることを頼んだ。
 『僕に主役をやらせてください!』
 いくらトオキの頼みでも団長は首を縦に振ってくれなかった。それもそうだ、まだトオキは演劇をやり始めてからそんなに経っていない。断られたトオキはある決意をする…。
 『それなら認めてもらうまで練習するしかない!』
 その次の仕事の日からトオキは、演劇の練習を人より何倍もするようになった。自分を認めてもらうまで、そして自分が彼女のヒーローになるために…。
 そしてリハーサルの日。トオキは団長に自分の成果を見せるため、もう一度主役をやらせてもらうように頼んだ。団長はしばらく考えた後、トオキにある条件を出した。一つはリハーサルで最高の演技を見せる事、
そしてもう一つはたとえ主役に選ばれなくても一生懸命役回りをやる事。トオキは約束を守ると団長に誓った。
 …ここまで読んだらもう七時近くになっちゃった。そろそろおばさんが呼びに来るかもしれないからここまでにしよう。かなは本のページにしおりを挟んで、机に置いた。
 「かなちゃん、そろそろご飯が出来るわよー。早く降りてらっしゃい」
 ほらね、もう呼びに来た。かなは返事をするとリビングに下りていった。
92無名:2006/07/08(土) 16:18:09 ID:mGWtMASI0
楽しい夕ご飯が終わって、少しリビングでゆっくりしたかなは、自分の部屋に戻ってまた小説の続きを読み始めた。
 団長に約束したトオキは、自分の演技を見せるために他の団員とともにステージに立った。そして演劇のテストが始まった。今までに練習の成果を見せるため、持てるすべてを出して演技するトオキ。
そしてすべての演技を終えたトオキは、すがすがしい顔でステージから降りていった。
 しかし団長や団員達は何も言わないで立ち尽くしたままだった。一体どうしたんだろう?彼がそう思ったそのとき、団長から拍手の音が出た。それに引かれて周りの団員達も拍手が鳴り響いた。
団長達はトオキの演技のすばらしさに拍手するのを忘れていたのだ。
 『すばらしい、私はこれまで見たどの演技よりもすばらしいと思った。ここまで努力したんだな、トオキ君』
 みんなの拍手に答えるかのように、トオキは答えた。
 『いいえ、みんなのおかげです。ここまでやれたのも団長や先輩達の励ましがあったから、すばらしい演技が出来たんです。本当にありがとうございます』
 みんなの励ましがあったからここまでがんばれた、トオキは心から感謝したのだった…。
 ここまで読んで、かなは感動した。でも物語はここで終わりじゃない。これからトオキが一流のスーパーヒーローになるまで、まだ長い道のりがある。本当は最後まで読みたいけど、
もうこんな時間だ。続きは明日にでも読もうっと。
93無名:2006/07/08(土) 16:20:48 ID:mGWtMASI0
 次の日の朝。かなは昨日の興奮が冷めないままいつもより早く起きた。とはいっても6時50分だけどね。そろそろ早く起きる習慣をつけないと学校が始まったとき大変な事になるから、もう少し早く起きないとね。
 「さてと、顔洗って朝ごはん食べますか」
 下に降りて洗面所で顔を洗う。そして朝ごはんのお手伝いをしてお待ちかねの朝ごはんだ。今日はロールパンとスクランブルエッグ、それと牛乳仕立てのお味噌汁。パンとお味噌汁ってけっこう合うんだよ。
 「かなちゃん、そろそろ早起きしないと学校が始まったら遅刻しちゃうわよ」
 ゆきなおばさん、そんなの分かってるよ。かなだってちゃんと起きれるようになるから大丈夫。
 「それもそうだな。9月まであと3日しかないもんな。気を付けろよ」
 お兄ちゃんはそう言ってかなの頭をくしゃくしゃにかき回した。
 「わ、分かってるって。そんな心配するよりお兄ちゃん、時間大丈夫なの?」
 かなは時計を指差した。時計の針はもう7時20分を刺していた。
 「あ、そうだった。それじゃあ、お前も気を付けろよ。行ってきます」
 お兄ちゃんは慌てて病院へ出発した。
 「まったく、あわてんぼなんだから。ゆきなおばさんもそろそろ行く時間だよね?お片づけはかながやっておくから準備した方がいいよ」
 「ごめんねかなちゃん、夏休みなのにこんなことさせちゃって」
 「いいのいいの。夏休みくらい家の仕事したいもの。おばさんは安心して仕事行ってきてね」
 こうしてゆかなおばさんも仕事へ出かけて行った。一人になったかなは朝ごはんの後片付けと洗濯物、それとお部屋の掃除を済ました後、自分の部屋に戻って小説の続きを読むことにした。
94無名:2006/07/08(土) 16:29:44 ID:mGWtMASI0
団長に認められたトオキは主役の立ち回りの練習を始めた。しかしトオキは主役の練習をするたびに思った。主役になることだけが夢をかなえることなんだろうか…。
 そんな時、ある事件が起きた。先輩の一人が交通事故で演劇に出られなくなってしまったのだ。その先輩の役どころはとても重要な役で、他に出来る人がいなかった。
 『今から代役を出しますか?』
 『いや、今から出しても間に合わないだろう。このメンバーの中で代役が出来るとしたら…』
 団長は少し考えてしまった。いくら補充の団員がいても、この役をこなす人はそういない。それだけ重要な役だからだ。そんな中、その役を希望した人がいた。
 『その役、僕がやります』
 手を上げたのはなんとトオキだった。あれほど主役をやりたがっていたはずのトオキが、代役を希望したのだ。
 『トオキ君、どうしてそんな事を言うんだ?!』
 『僕はあの時、主役をやりたいがために団長に無理を言ってしまった。そんな気持ちで主役をやってしまうと、演劇がだめになってしまうと僕は思ったんです。
いくら練習をつんでも、気持ちに隙ができてしまうと出来る事も出来ない気がするんです。だから僕は主役を降りる決意をしたんです。
わがままかも知れませんが、どうかお願いします!』
 トオキは頭を深々と下げ、団長にお願いした。団長はトオキの頭を撫でてこう言った。
 『君の言い分は分かった。確かに君はうぬぼれていたのかもしれない。しかし今の君の言葉はうぬぼれでもなんでもない。むしろ決意を固めた言葉だ。いいだろう、トオキ君を代役にしよう!』
 そして演劇の当日。そこには代役をやるトオキの姿があった。主役を自ら降りたとはいえ、引き立て役を演じるトオキの姿に観客も少女も感動した。物語は終盤に入り、トオキは主人公に敗れて劇は終了した。
すべての演劇を終えたトオキの顔には後悔はなかった。そこには清々しい気持ちとすべてをやり終えた達成感があったのだ…。
95無名:2006/07/08(土) 16:31:22 ID:mGWtMASI0
かなはこの本を読み終えて、トオキがどうして主役を捨てる決意をしたのか、そして代役を選んだ理由が何なのかなんとなく分かる気がした。たとえ主役じゃなくても一生懸命演じればみんなは分かってくれる。喜んでくれる。
それが分かったから、トオキは自分からその役を捨てたんじゃないかと思う。それがトオキのめざす星なんだろう。
…かなはさっそく感想文を書き始めた。時々苦戦しながらも残りの夏休みを使って何とか書き終えた。学校でこれを読んだらみんな驚くだろうな…。

 そして9月1日。ついに2学期が始まった。こうやってみんなと合えるのも本当に久しぶりだ。かなはみんなにおはようの挨拶をしながら学校に入った。
 「みんな、夏休みに宿題やってきたか。それではみんなに集めてもらうぞ」
 始業式の後、日野先生がみんなに宿題を集めるように指示した。とりあえずかなはみんなが持ってきた宿題を先生の机に提出した。でもこれってかさばるんだよね〜。持って行くのに苦労したよ。
すべての宿題を集めて、先生はこんな事を言った。
 「この宿題はこれからの成績に関わるものだ。優秀な生徒には先生からのご褒美がもらえるから楽しみに待っててくれ」
 いったい何のご褒美なんだろう、楽しみ。
96無名:2006/07/08(土) 16:36:49 ID:mGWtMASI0
 それから数日経った放課後、かなはなぜか職員室に呼ばれることになった。もしかしたらあの感想文のことかもしれないなあ。
ちょっとの期待を胸に、かなは職員室には行った。
 「失礼します。あの先生、かなに何の用があるんでしょうか?」
 でも先生は少し怖そうな顔でかなの事をにらみつけた。
 「…先生?何かわるいことしたんでしょうか?」
 「お前、何か忘れてないか?夏休みの宿題を」
 多分忘れてないと思うんだけど…全部やったよね?だって感想文だってやったもの。
 「え〜と、なんだったろう?」
 「お前な、夏休みに宿題の中であれほどやっておけと言っておいた計算問題と漢字練習、ほとんどやってないだろう!
忘れたとは言わせないぞ!!」
 し、しまった!感想文に気を取られて漢字練習と計算問題、やってなかったよ〜!!
 「ご、ごめんなさい!これからやります!」
 「いや、もう遅い。だがこれから先生の言うことをやってくれれば許してやってもいいぞ。その内容とは…」
 「そ、その内容とは…?」
 うわ、何か嫌な予感がするよ…。もしかしたら…。
 「お前には、運動会の制作委員をやってもらう!我が組の代表として恥をかかないように運動会を盛り上げるんだぞ」
 え〜っ、運動会委員って色々やらなくちゃいけないんだよね…。どうしよう、かな一人で出来るんだろうか…。
 結局そのこともあって、かなの感想文は優秀賞に選ばれることはなかった。感想文に集中しすぎてほかの宿題を忘れるなんて、
かなは自分で墓穴を掘ってしまったんだ・・・、とほほ。
97無名:2006/07/08(土) 16:55:57 ID:mGWtMASI0
皆さんこんにちは、無名です。
今回はかなちゃんの夏休みの宿題の残りから、2学期にシフトする物語でした。
実は今回と次回はつながっていて、次回が運動会委員のお話になります。(運動会委員って
言い方は少しおかしいかも知れませんが、もし間違っていたら書き直そうと思います。)
少し時間がかかるかも知れませんが、皆さん期待していてください。
その次はメンテナンスのお話でもしようと思います。
>>68
落雷は普通の人間でも怖いですが、サイボーグの場合はさらに危険性が高いと思います。
サイボーグは少なからず金属を使っているので、高電圧・高電流には弱いでしょうね。
電磁波の影響も無視できません。電磁波は精密な機械を狂わせますから。
もしそんなことがおきた場合の対策はある程度は施されていると思いますよ。思いつくのは
絶縁シールドとかできるだけ金属を使わないとか。私もそのことは詳しくわからないのでなんとも
言えませんが。
98無名:2006/07/08(土) 17:29:07 ID:mGWtMASI0
>>13
「サイボーグになることが悲しみか喜びか」
かなちゃん自身は喜びに感じていると思います。最初のお話で、かなちゃんが無意識に神無月先生の服を引っ張ったシーンで
『生きたがっている』と書いたので、自分が生きているというのでは喜びかもしれません。
「なった後は受け入れるか嫌悪するか」
かなちゃんは受け入れています。最初のシーンで自分で『こんな体になっても』て言ってますから。それは彼女が「生きたい」
という意思表示だと思います。まさる君は少し嫌悪しているかも知れませんが・・・。
「特権階級か奴隷状態か」
どちらでもありません。ある程度はサイボーグ体は優遇されていますが、表面的には普通の人間と同じです。
「生身の部分はどの程度残っているか」
かなちゃんはキャラクター紹介に書かれたとおり、生身の部分は30%ほどです。とはいっても脳のほかには内臓
位しかないのですが・・・。まさる君はもう少し生身の部分が少ないです。
「一人称か三人称か他人視点」
重荷かなちゃんと神無月先生の視点で物語が進んでいますが、たまにほかの視線になることもあります。
「サイボーグが社会的に認知されているか否か 」
認知されています。
「周りの人間のサイボーグへの対応 」
全体的には良いですが、姫宮さんのようにサイボーグを受け入れない人もいます。
「サイボーグが女性(女性型)であることに必然性や優位性が有るか無いか 」
この世界ではサイボーグは事故前(病気前)の状態にできるだけ形を戻すことが義務付けられています。
この設定は今考えていますのではっきりとはお答え出来ません。
「サイボーグの物理的な強さの強弱 」
職場によってはそれなりの処置を受けることは出来ます。たとえば警察官の場合は、常人よりも数倍の筋力アップ
を施して事件に挑むとか。
「手術シーンで自我の有る無し 」
ある場合とない場合があります。これからのお話で書く予定ですが、大掛かりなメンテナンス以外は基本的には
自我はある設定です。
少し遅くなりましたが、今思いつくのはこのくらいです。これからの展開しだいでは少し変わるかも知れません。
99名無しさん@ピンキー:2006/07/08(土) 17:31:39 ID:pWtabyJv0
逆に積極的に金属を使うことで、シールドにするって設計もあると思う。
100pinksaturn:2006/07/09(日) 06:29:16 ID:+H7wdyRv0
(雷ネタで、脱線してましたが、”オプションパーツ”本編に戻ります。)

−−(20)メテオ計画−−

(御前会議)

皇帝:「今日集まってもらったのは、宙軍が上奏している冥王星探検計画について審議するためです。」

皇太子(宙軍大臣兼務):「本計画は目的地が遠いことによる技術的困難があります。
また、短期的には資源獲得の経済的意義よりも科学的調査と国威発揚が目的となります。
国威発揚については、公表が前提となりますので政治的影響について検討を要します。
準備期間も入れて5年以上の間、新型収集艦1隻をこの任務に張り付けることになります。
よって、財政への影響も大きいので慎重に審議を進めなくてはなりません。」

民部大臣:「短期的な資源獲得とはどの程度の時期をさすのですか。」

皇太子:「数十年以内に必要な資源はメインベルト小惑星帯で十分なので、遙かに遠い冥王星方面を開拓する必然性は乏しいです。
但し、他国がメインベルト小惑星に手を伸ばしてきて競合するということがなければ、という前提ですが。
奪い合いになれば、大きさや推進剤自給に必要な水の成分比に関して移動しやすい微小惑星が早期に枯渇するでしょう。
カイパーベルト天体なら数も多いしサイボーグしか行けないでしょうから末永く無競争で利用できると予想されます。」

民部大臣:「現在の技術では新型艦でも片道5年ほどかかるのではないですか?。乗員が保ちますか?。」

皇太子:「所要時間が大きいのは、航続距離を重視した推進システムのため加減速が遅いからです。
これだけの大距離を往復4年未満でこなすには、太陽に対して直線に近い軌道で飛ぶ必要があります。
それには発進時の第3宇宙速度を超えるまでと到着時の第2宇宙速度以下への加減速時間を短くしなくてはなりません。
そのため、外付け使い捨て型の固体ロケットブースター開発を進めています。
通常は工場衛星で解体リサイクルしている打ち上げ用ロケットM55の2段目を改造しリユースすれば低コストで出来ますので。」
101pinksaturn:2006/07/09(日) 06:31:35 ID:+H7wdyRv0
民部大臣:「再装填する燃料はどうするのです?。ロケット筐体より重いので地上から上げたら大変ですが。」

皇太子:「工場衛星の農産ブロックから出る廃棄物を高性能火薬に変換する技術が完成したので地上から上げる必要はなくなります。
事故時の地上被害を考えなくて良いので成分は打ち上げ用と変えてあり、推力が2倍近く出せます。」

文部大臣:「科学的成果が主体なら、タイタンやトリトンの方が効果的ではありませんか?。」

皇太子:「タイタンは極低温の濃密な大気があるため、現有または開発中の搭載機では降下できません。
地球降下カプセルや火星降下艇は運用条件が違いすぎて使えず、新規開発もコスト的に難しいのです。
トリトンは、冥王星と似た環境ですが、逆行衛星であるためアプローチの軌道設定がやや難しいです。
いずれも、巨大惑星の衛星ですから離脱に要する推進剤量や強い磁気圏が乗員に及ぼす影響が懸念されます。
冥王星ですと、衛星カロンに水の氷が多いことが判っているので、推進剤が不足した場合のリスクも小さいのです。
技術面以外に、北米連が強くこだわる”第9惑星”への進出という政治的動機も選択理由です。」

財部大臣:「宙軍さんには工場衛星の余剰生産力で財政を助けていただいて、感謝しております。
で、とやかく言っては申し訳ないのですが、この計画の経費のため財政に回して頂ける分が相当減るのでしょうか?。」

皇太子:「物資は殆どが宇宙での調達なので、財政への影響は殆ど人件費ということになります。
サイボーグの人件費は維持費を入れるとシビリアン10人相当なので、100人投入すると本国GNPの2%程です。
宙軍の余剰生産力が現状のままなら、当然もろに財政に響く訳ですが、新工場衛星の建設も進んでおります。
第2と第3の工場衛星がいずれも60%の完成度に達しており一部区画で生産が開始できる状態になっています。
問題は、現在工場衛星で生産されている品目の輸出依存と海外市場の飽和です。
薬品、義肢とも地域紛争が多発する世界情勢から潜在的需要は大きいのですが、現実には市場飽和となっています。
実際のユーザーが北米連や西欧連を中心とする先進国に限られ、欲しいのに買えない人が多いのが原因です。」
102pinksaturn:2006/07/09(日) 06:34:15 ID:+H7wdyRv0
外務大臣:「手足のない人間なら、阿弗利加大陸に大勢居るのですが、民間には支払い能力がないのが痛いですね。
印度では少し売れてますが、産油国ではないので向こうの商品が植毛用の人毛や実験用の臓器などに限られておりまして。
人工毛や豚という代替品があるから、大量に要るものじゃないでしょ。第三国への転売も難しいですし。
阿弗利加が石油とのバーターに応じてくれると良いのですが、どこの政府も福祉機器より武器を欲しがるのには困ったものです。」

皇帝:「武器輸出を禁じた憲法を改める気はありませんので、それを前提に議論して欲しいのです。」

民部大臣:「本国、特区とも食料、特に穀物や家畜飼料の自給率が低いので宇宙から降ろせると経済効果が大きいのですが。」

地軍大臣:「食糧安保の観点からも自給率向上は望ましいですね。現状では海産物以外殆ど出来ていませんが。」

皇太子:「生産余力はあるのです。24時間日照が得られますし、季節もなくハイパーコシヒカリならば9期作が可能ですから。
現在の1号工場衛星で直径500m、長さ200mある農産区画をすべて立体水田とすると計算上は通常人1万人以上を養えます。
現在、1号ではサイボーグ用の原液とタブレットに生産力の40%を使っているのですが、残り60%は遊んでいる状態です。
例えば1号の余力に加えて、2号と3号で工業区画を削減して農産区画を倍増すれば全臣民を楽に養う力があります。
問題は輸送です。降下では重量より体積がコストの主要因です。嵩張らないサイボーグ用の原液とタブレットは既に95%が宇宙産です。
コメをタブレットの技術で加工すれば体積は圧縮できるのですが、通常食としては味気無さ過ぎて商品価値が非常に劣ります。
試験的な生産はかなり昔から行っているのですが、納入先は軍用非常食、囚人食および飼料だけです。」

地軍大臣:「そうですね。持ち歩きが楽なので、レンジャー部隊の連中には好評ですが、日常食べるのはきついですね。」
103pinksaturn:2006/07/09(日) 06:45:18 ID:+H7wdyRv0
民部大臣:「土地の狭い本国で飼料需要の伸びは期待できないですが、例えば菓子原料等の用途なら考えられますので研究してみましょう。
それから、宇宙で酒類に加工してはどうでしょうか。蒸留酒なら単価の割に嵩張らないから採算性が高いのでは?。」

皇太子:「酒類については未検討でした。宇宙では飲食が出来ないので誰も思いつかなかったようで。研究余地はありますね。」

地軍大臣:「人造石油は出来ませんか?。価格はともかく、海洋汚染防止上備蓄が増やせないので非常時の水上艦用に欲しいのですが。」

皇太子:「エタノール用に比べ、今のところ良い菌が出来ていなくて。研究は続けているのですが。」

皇帝:「通常食用途の拡大については民部大臣に、それから飼料として輸出が出来ないかを外務大臣に調査してもらいましょう。
財政への影響はその上で再度協議します。」

外務大臣:「国際関係、特に北米連については探検を公表するかどうかで随分違うと思いますが、陛下は公表を前提にお考えですか?。」

皇帝:「単なる国威発揚と言うよりも、圧倒的な技術格差を見せつけることで、彼らが宇宙資源の独占を諦めることを期待しているのです。」

外務大臣:「まともな判断を出来る人間が全てを決めるなら確かにそういう判断に傾くでしょう。ただ、あちらは民主国家ですから。
技術を度外視したヒステリックな主張の方が民衆に受け入れられやすいので、かえって険悪な状況をまねくかも知れませんよ。」

民部大臣:「現在のところ薬品や義肢の輸出は北米連やその友好国への依存が大きいので、経済封鎖を受けると苦しいですね。
食料や石油を輸入する必要を無くせれば外貨など要らないので困るのは向こうのユーザーだけですが。」
104pinksaturn:2006/07/09(日) 06:48:19 ID:+H7wdyRv0
皇太子:「食料は非常用なら宇宙で備蓄しておけば本国と特定友好国の人口を1年は養えますね。
全部合わせて8万人くらいですから、その時点でフル生産にかかればもっと持ちこたえられます。
石油については、電力が潮力で十分ですから民生への影響は軽微ですが、地軍艦船の燃料と打ち上げ用固体燃料の原料分は必要です。
宇宙産貴金属の輸出は北米連依存度が低いのでこの収入でぎりぎり現状程度は産油国への支払いが出来ると思います。
燃料のことを考えると侵攻を受けた場合に備えて艦船を増強するのは無理でしょうね。」

地軍大臣:「SLBM対策として増備中の新型警備艦は太陽光と風力で蓄電し電気推進するなど工夫はしています。
貴金属や鋼材、セラミック製品だけでも供給を増やして頂ければ出来ることはありますのでよろしくお願いします。」

皇帝:「最悪のケースとして彼らがなりふり構わず攻撃してくる場合も想定しなければね。」

外務大臣:「今のところ、彼らの衛星軌道に対する攻撃手段は、殆ど低軌道の軍事衛星に対するものばかりですね。」

皇太子:「仮に工場衛星へ核攻撃を仕掛けてもICBMを流用したのでは到達時間が長いので迎撃艇が20隻あれば防げるでしょう。
迎撃艇の開発は出来ていますし、要員もここ数年の素体供出増によって充足しつつあります。」

外務大臣:「外惑星探査機に使うような高加速のロケットで迎撃網を突破される可能性はどうですか?。」
105pinksaturn:2006/07/09(日) 07:01:42 ID:+H7wdyRv0
皇太子:「そこまで高加速にすると標的付近を通過する時間が短すぎて核弾頭の点火タイミングを合わせるのが難しいです。
一方、真空の宇宙空間では爆風や火災による二次被害が無いので、核弾頭の有効危害半径は地上より小さいのです。
しかも、我々の体は放射線障害や火傷になりにくいですから、1Kmも外れると効果は殆ど無くなります。
現用の工場衛星は資材を地上から上げなくて良いため、あまり重量を気にせず作られており、分厚い外壁を持っています。
おまけに、外壁のすぐ内側にある区画は半分以上が水タンクですから、外壁が一部損壊しても重大な被害になりません。
太陽光発電も太陽電池ではなく蒸気機関です。外国の衛星と違って周辺での核爆発により故障する確率は僅かです。
そんな特殊なロケットを、まぐれで直撃出来るほど大量に発射してくれば、被害が出るかも知れませんが。」

外務大臣:「彼らにもそこまでの経済力は無いですね。となると、やはり本国を狙われる方を心配すべきでしょうね。」

皇太子:「ICBMで本国を狙ってきた場合も高度1000Km辺りまで上がってきますから、やはり迎撃艇で捕捉出来ます。
最も心配なのは、本国に対してSLBMを使われることです。SLBMでも長距離型ならICBM同様に迎撃艇で阻止出来ます。
しかし、射程300Km以内の短距離型ですと、短時間しか宇宙空間に出てこないので上からは迎撃出来ません。
短距離SLBM対策として海底探知網と無人雷撃施設を配備していますが、初弾発射前に撃沈するのは政治的に難しいでしょう。
地上ではエキシマビームの有効距離が短いので、低速な巡航ミサイルと違って弾道ミサイルには十分な照射時間が取れません。
やはり、シェルターに避難して第一撃をかわさなければ生き残れません。」
106pinksaturn:2006/07/09(日) 07:03:00 ID:+H7wdyRv0
民部大臣:「帝都と各基地、工業地区、特区境界を結ぶ地下鉄網は真上に複数の核が当たらなければ崩落しない強度にはなっています。
入り口は十分作ってあるので、人の多い地区では退避命令から20分で全臣民が避難できますし、構内に物資の備蓄もやっています。
仮にM55の打ち上げ施設をやられても、2日で再建できるように資材を備蓄済みなので宇宙との往来もすぐに復旧出来ます。
特区内は軍の出先関係や貴族が所有するビルの秘密シェルターしかないので、一般の特区住民は見捨てることになります。」

外務大臣:「特区は北米資本の進出も多いので攻撃目標から外されるでしょう。
自治政府海軍の基地も民間港と共用だし、そんなときは艦船が居なくなってますから。」

地軍大臣:「離島はペリリュー離宮以外にシェルターがないし、地下鉄のような平時の用途がないからコスト的に整備が難しいですね。
迎撃ミサイルやエキシマビームは確実性に欠けますし、カバーできない離島もあります。
報復手段による抑止力が欲しいところですが、反核は憲法に明記された国是ですから仕方ありません。」

皇帝:「離島なんて、人の少ないところをわざわざ攻撃しないでしょう。核以外の報復手段は出来ないかしら?。」

皇太子:「隕石移動装置で直径百メートルほどの隕石を落とせば放射能汚染なしに核並みの破壊力が得られます。
ミサイルより精度は劣りますが、周囲数百`に衝撃波の被害が及ぶので5個も落とせば継戦能力は奪えるでしょう。
ステルス加工をして惑星間の待機軌道に配置しておけば見つかりにくく、弾道弾より高速で落ちるため迎撃困難です。
またミサイルと違って、迎撃できても降り注ぐ破片の量は減らず、地下にも衝撃が伝わるので効果は核よりより確実なのです。
ただ抑止力としては、汚染がないだけ恐怖心が薄れるし、実験を見せられないので相手が存在を信じるかも問題です。」
107pinksaturn:2006/07/09(日) 07:14:13 ID:+H7wdyRv0
民部大臣:「隕石移動装置の原子炉が汚染原因になりませんか?。」

皇太子:「大気圏突入前に切り離して回収コースに乗せる仕掛けは作れると思います。
高価な機材ですから使い捨ては経済的に苦しいですし、回収前提なら有人化して作戦に融通を利かせられます。
その代わり、切り離し後は固体ロケットにより無誘導で突っ込ませることになるので攻撃中止は出来ません。
寸止めの余地を残して、外交駆け引きの材料にする使い方はかなり難しくなってしまいます。」

皇帝:「やはり、本国の対策強化は要りますね。2年以内に地下鉄網の拡張と生殖バンクの大深度化を完了しなくちゃね。
万一の時にやられっ放しというわけにもいきませんから、駆け引きに使えないとしても報復用隕石の開発は進めましょう。
但し、出来るだけ低コストで実現する方策を研究しなさい。今日はこれで散会しますが、経済面の調査が済んだら再度招集します。」
108pinksaturn:2006/07/09(日) 07:41:16 ID:+H7wdyRv0
(経済特区 クピドタワー内、事務所)

マサ:「あー、よく淫った。やっぱ、売春の無い人生なんてノンアルコールビールみたいなもんだわ。」

真理亜:「藻前も好きだねえ。改造手術の助手で結構高給入ったのに、わざわざここで働かせろなんて。」

マサ:「バレエパレードに出るために、色白の特注外装にしたらベースがハイパーセクサボーグなんで風俗営業税課税されちゃって。
これはこれで元を取らないと気が済みませんよ。」

真理亜:「まあ、勤勉なのは結構だけど、藻前の客はいまいち単価が安いのよねえ。経営者としてはもちっと良いカモ増やして欲しいわ。
ここは高級店なんだからね。あら、公用通信だわ、この素体番号は...!。すぐ参内せよと...」

マサ:「公用通信?。急に参内とは貴族様も大変ですね。」

真理亜:「藻前も一緒に来るのよ!。」

マサ:「えええっ。私はシビリアンですよ。大臣とか財界首脳じゃあるまいし、参内するような身分ではありませんが。」

真理亜:「貴族同伴なら特務士官は参内可能者よ。しかも東宮様のご指名!。急ぎなさい。」

マサ:「こりゃ、急な任務とかかな。風俗営業税の元が取れないよぉorz。」
109pinksaturn:2006/07/09(日) 07:42:52 ID:+H7wdyRv0
(宮殿 謁見室)

真理亜:「お召しにより参内いたしました。これは、配下のマサ特務中尉で。」

マサ:「マサにございます。東宮様にはご機嫌麗しゅう...(えと、こういうとき何言うんだっけ)。」

皇太子:「100年祭での活躍、しかと見届けたわ。しかも、あの衣装はそちの発案とな、民心掌握への貢献あっぱれであったな。」

マサ:「(げっ、股間デザインのことで怒られなくてよかった。)御意。」

真理亜:「100年祭のことで、その後何か?。」

皇太子:「あ、つい脱線してしまったね。今日は別件です。
そのほうらの艦長だった我が娘・10世が冥王星探検を企図し準備を進めているのは、聞き及んでおるだろう。
さきの御前会議に諮ったのだが、これを公表すると北米連が逆上して暴発するやもしれんので保険をかけるべしとなってな。
つまり、本国に対し核を使ったときの報復手段として容易に軌道変更できる隕石を準備し、落下させられるようにするのじゃ。」

真理亜:「なるほど。隕石なら非核憲法に抵触しないし、放射能汚染がないですから戦後処理も楽ですね。
ただ、核の冬と同様に寒冷化でその年は北米の作物が全滅するでしょう、友好国の食料は大丈夫でしょうか?。」

皇太子:「小さな島国ばかり全部合わせて20万人弱だよ、備蓄と第2、第3の衛星工場による高栄養米生産で持ちこたえられる。」

真理亜:「すると、後は待機軌道の選定や扱いやすい隕石が何個用意できるかといった技術的な詰めの問題ですね。」

皇太子:「冥王星探検の準備に金がかかるので、なるべく安く済ませる必要がある。
それと汚染防止のためにも、突入前に隕石移動装置を切り離して回収し固体ロケットで突入させる仕組みにしたい。
そういう工事が出来るか実物で確認する必要があるので、隕石移動の実績が豊富なそち達にやってもらいたい。」
110pinksaturn:2006/07/09(日) 07:44:08 ID:+H7wdyRv0
マサ:「安く上げるなら、隕石鉱山のボタ山がいいですよ。いずれ工場付近からどけるため適当な大きさになってるでしょ。
坑道跡を補強して固体燃料を詰めれば、まともにロケット筐体作って設置するより楽ですし。」

真理亜:「ボタ山だとあちこち穴だらけで重量バランス難しくないかしら?。」

マサ:「あらかじめ計算しようとするから難しくなるんです。何ヶ所かの穴にいつでも除去できる重りを詰めとくんです。
それで、待機軌道に持ってく合間につつき回して調整すればいけると思いますが。」

皇太子:「なるほどな。時間と費用を節約したいからそれでよかろう。標的が巨大だから精度はそこそこでよいのじゃ。
但し、いざ使ったとき、他の核保有国が連鎖的に大戦を起こさないうちに素早く北米連を沈黙させる必要もある。
ここが何発かやられるのは仕方ないとしても、世界が全滅するような放射能汚染になってはどうにもならないのでね。
それで、最低3個は発令後6時間以内に落下させられるような軌道計画と推進力、配備数も見積もるようにな。
まず、数個分の資材を衛星工場の方に手配しておくから、揃ったら上に行って着工しておくれ。
作業員は、今年の新兵から4,5人配置する。さらに、鉱山の方に余裕があれば何人か異動させよう。
素体データの希望条件が有れば出しておくこと。でわ、よろしくな。」

真理亜:「かしこまりました。」


(帰り道)

マサ:「作業員に、こないだ、私らで改造した娘も混じりそうですね。」

真理亜:「誰か見どころのあるのとか、居るの?。」

マサ:「いえ。そうじゃなくて、手術準備の時にサイボーグになったら売春し放題とか言ってなだめたんで。
すぐ宇宙に出されるから嘘じゃないですか。ソッコー、ばれたなって。」

真理亜:「すぐに、し放題、とは言わなかったんでしょ。嘘になってないじゃないの。」

マサ:「あ、なるほど。じゃ、責められることはないんだ。よかったぁ。」
111pinksaturn:2006/07/09(日) 08:21:31 ID:+H7wdyRv0
(8ヶ月後 地上基地)

マサ:「東宮様のお話ぶりじゃ、休暇短縮ですぐ工事を初めろって感じだったけど、逆にずいぶん待ちましたね。」

真理亜:「工場衛星での固体燃料生産って始まったばかりで、試行錯誤が入るから遅れたのよ。」

マサ:「坑道に仕込むため小分けできるようにとか、特殊な注文も付けましたからね。おかげで風俗営業税の元が取れました。」

リエ:「おひさしぶりー。元気してた?。」

マサ:「あら、リエもボタ山の細工を一緒にやってくれるの?。」

真理亜:「そうよ。今回、私は軌道警備部隊司令の任に就くので隕石の件だけやるわけにいかないの。
それに、貰える兵が新米とか鉱山専門で宇宙遊泳下手なのとかばかりだから、せめて藻前以外にしっかりした小隊長をってこと。
1個目の工事は私も一緒に行くけど、後は藻前とリエが交代で指揮するのよ。
それから、藻前らも工事の合間に迎撃艇の訓練やってもらうわよ。
あっちは、まだ誰も小隊飛行できるレベルじゃないんで、訓練方法と運用方法の研究もやりながらね。
ホントは4人くらい欲しかったんだけど、リホ達は冥王星候補ってことで”みくら”の改装や訓練に入っていてね。」

マサ:「ずいぶん忙しくなるんですね。真理亜様とのんびり隕石いじり出来るかと思ったのに。」

真理亜:「戦略兵器の配備作業なのよ。子供が砂遊びに逝くようなこと言ってる場合じゃないの!。さ、搭乗時間よ。」
112pinksaturn:2006/07/09(日) 08:22:55 ID:+H7wdyRv0
(静止軌道第1工場衛星・ベイ)

マサ:「ここもずいぶん久しぶりだわ。あれー?。なんじゃありゃ。」

真理亜:「前に乗った艦の顔も忘れたの?。改装中の”みくら”よ。」

マサ:「顔ったって、全部同じ初代陛下像じゃないですか。あ、将冠付いてる艦は他にないか。なつかしー。
しかし、ゴテゴテといっぱい付けちゃいましたね。」

真理亜:「固体ブースター16本も付けるって言うから、まだまだこれからよ。固体燃料の製造待たされたのも道理ね。」

冬子:「おひさしぶりー。あれから、ハルとみどり、ご迷惑かけませんでしたか?。」

真理亜:「全然。二人とも順調よ。あと1年ちょっとでハルもここに来れそうね。冬子、操艦習ってるんだって?。」

冬子:「ええ、私じゃ障害のせいで入港みたいな細かい操作が出来るようになる見込みはないんですけどね。
今度の計画だと、長期間1.5G以上の加速が続くので、巡航中の当直専門で良いから耐Gの良い操舵員が必要でして。
こんな体でも、使いようなんですね。本来は限定免許じゃダメなのに、正規の操舵員並みに昇進までさせていただいて、有り難いわ。」

真理亜:「ブースター8本炊きの急発進に続けてイオンエンジンのグリッド耐用限界一杯で連続加速か、きついわねえ。」

冬子:「まだ本決まりじゃないんですよ。今入ってる候補者も準備終わったら全員地上に降ろされて完全分解検査ですから。
そこで、リスクの高い順に落とされて24人に絞られるんです。少しでも軽くするため本来の定員の2/3ですよ。
マオやミキも居るし、ここに来ていない来年の新兵からも採る可能性有るし、若い娘に押し出されちゃう鴨。
もしも、ハルに押し出されるようなことになったら親の面目丸つぶれだわ。」

真理亜:「若い娘がライバルねえ。サイボーグには無いはずの悩みなのに。そういえば、理美はどうしてるの?。」

冬子:「あの娘は別格なんでライバルにもなりません。あの日以来、私は名ばかりの担当教官でしたよ。
実質は殿下が担当したのも同然でした。今も帝大でしごかれてるけど、教育が間に合うかだけが問題ですね。」

真理亜:「どうせなら間に合うと良いわね。採用に関わったし、国としてもコストがかかった娘だから元を取らないと。」
113pinksaturn:2006/07/09(日) 08:24:30 ID:+H7wdyRv0
(隕石鉱山・第一サイト・ボタ山)

マサ:「この辺りで1個、あっちの丸っこいとこで1個取れそうですが、どう思います?。」

真理亜:「見た目はバランス良さそうだけど、中はどうかしら。藻前の案で動かしながらバランス取るにも坑道が曲がってるとねえ。」

マサ:「採掘記録によれば、固体燃料仕込むにいい真っ直ぐな太い穴が有るんですよ。」

真理亜:「そお。ちゃんと記録チェックして目星付けてるなら任せるわ。兵隊集めて、切り出して100`先に係留しておいて。
切り出しはどれくらい時間かかるの?。」

マサ:「ここ数日は鉱山の手すきが多いそうなんで、5日以内には出来ます。それ以上急ぐとデブリ出す危険がありまして。」

真理亜:「じゃ、係留終えたら呼んでね。ステルス加工や移動装置の設置始めるところは見ておきたいから。あと、3個目はどう?」

マサ:「第二サイトに良さそうなのがいくつか有るので、そっちで取ろうと思っています。」

真理亜:「今見た2個と同条件なら任せるわ。でも問題が見つかったらテキトーな事しないで呼んで頂戴。」
114pinksaturn:2006/07/09(日) 08:35:55 ID:+H7wdyRv0
(3日後、ボタ山係留地点)

鉱山兵1:「鉄片、坑道に並べ終わりました。」

鉱山兵2:「自転用小型エンジン配置できました。」

マサ:「自転開始して。自航ミラーは来てるかしら?」

鉱山兵3:「ミラー来ました。坑道正面に待機させます。」

マサ:「全員坑道から離れて。坑道内壁にミラーの焦点合わせて加熱開始して。完全に溶けて、遠心力で均等になるまで続けてちょうだい。」

鉱山兵1:「さすがに眩しいです。日焼け止め塗って来なかったけど大丈夫かな。あ、赤熱してきましたね。」

マサ:「宇宙用外装って紫外線で変色しないはずよ。普段直射日光をもろに浴びてるけど平気でしょ。」

鉱山兵3:「日焼けはともかく、ここでは太陽熱がいくらでも使えるから、こういう工作は楽ですね。」

マサ;「そういうこと。タダほど安いものは無いのよ。」
115pinksaturn:2006/07/09(日) 08:36:50 ID:+H7wdyRv0
(2日後、ボタ山係留地点)

マサ:「ステルス材は酸化鉄系の磁性体をゴム糊で溶いたやつです。ここでは鉄が有り余ってるんで、大量に使えますから。
ゴムは石油製品が貴重なので、耐久は劣りますが農産エリアで採れる天然で間に合わせてるのですが、これで良いですか?。」

真理亜:「3年保てばいいわ。不安なら、厚みを増やしなさい。」

マサ:「固体燃料は整形した坑道の内面に溶鉄を流して補強したところに仕込んでいきます。
他の穴は、土嚢を錘として詰めます。もちろん、むやみに流出しないよう坑道を一部補強して金網で押さえます。
隕石移動装置は、別の大きな坑道を補強した外部推進剤タンクの蓋上に連結器で取り付けています。
外部推進剤タンクの穴が、固体ロケットの穴と干渉しないために45度ほど軸がずれて設置されます。
突入前に旋回しなくちゃいけないんで、離脱寸前まで操縦する訳にはいかないけど良いですか?。
自転軸を変えたうえで、大気の抵抗で逸れないようにしっかりスピンかけるのに時間かかるんですが。」

真理亜:「この付近でまず藻前が試運転して、大丈夫そうだったら新米にもさせてみて正確な所要時間を出して。
時間がとれたら私も確かめてみるわ。万一、離脱に失敗したら放射能つき自爆テロ兵器として歴史に汚名を残すから慎重にね。」

マサ:「まだ、バランス調整用の重りが未搭載なんで正確な時間は難しいですよ。」

真理亜:「そうか。じゃ、重り積み込みの途中で何度か動かしてみて、操作性の変化を克明に記録しておいて。」

マサ:「微調整は待機軌道への途上でするんで、最終状態は直接記録できませんが。」

真理亜:「系統的なデータが有れば、シミュレーターを作れるわ。ソフトなら地上のシビリアン研究員を動員できるでしょ。
人件費の単価が10倍違うから、ここで大勢のサイボーグを動員して延々実験を繰り返すより遙かに安上がりよ。」

マサ:「なるほど。そういう経済学みたいな発想は私には思いつきませんでした。」

真理亜:「期待はしてなかったけどね。でも、いつまでもそんなじゃ、貴族は務まらないわよ。」
116pinksaturn:2006/07/09(日) 08:37:59 ID:+H7wdyRv0
(40日後、ボタ山係留地点)

真理亜:「とりあえず、1個仕上がったわね。さっそく待機軌道に運んでみるわよ。」

マサ:「数日待てば5個になりますよ。兵隊連れてきてまとめて運んだらいいのでは?。」

真理亜:「まず1個配置してみて、ステルス性が十分かチェックするのよ。いちどに置いて、目立ってしまったら手遅れになるわ。
それに、L5点をめぐる待機軌道を使った実績が無いから摂動を実測して配置計画を調整しないと。
後から配置修正を何個もやるのは大変よ。これが済んだらあの4個だけじゃなく、追加製作分も藻前とリエに任せるからね。」

マサ:「リエは、まだ一度もこっちの作業してませんが、いきなり大丈夫ですか?。」

真理亜:「シミュレータが出来てきてるから、練習してるわ。私らが出てる間はここの現場にも入るし。」

マサ:「そうですか。重機の補給は満タンにしてきたので、10日ぐらい保ちますがこのまま出るのですか?。」

真理亜:「そのつもりで必要な指示は出してあるわ。予備の原液とタブレットも持ってきたし。藻前の分もあるわよ。」

マサ:「そのバスケットかわいいですね。真理亜様のお弁当...うきうき。じゃ、出発しまーす。」
117pinksaturn:2006/07/09(日) 08:51:26 ID:+H7wdyRv0
(途上)

マサ:「”星の王女様”って、古典知りませんか?。自己所有の小さな星に住む娘の話なんですけど。」

真理亜:「古典は苦手ね。で、その話がどうかしたの?。」

マサ:「こうして、隕石にとりついて旅をしていたら、ふと思い出しまして。このままここで暮らせたらいいのに。」

真理亜:「資源掘り尽くしたボタ山じゃいやだわ。せめて奴隷が飼えるような豊かな星じゃないとね。」

マサ:「奴隷が飼えればいいんですか?。そのうち、見つけておきますよ。」

真理亜:「見つけられるものならやってごらん。でも、藻前は売春できないような星じゃ困るだろうが。」

マサ:「奴隷を動員して、クピドタワーを移設してくれませんか?。」

真理亜:「客が来れなきゃ、廓として成り立たないじゃないの!。」
118pinksaturn:2006/07/09(日) 08:52:33 ID:+H7wdyRv0
(L5点をめぐる待機軌道)

マサ:「暫定配置計画では、ここでいいんですよね。」

真理亜:「レーザー回線用意して!。リエを呼び出して、大型望遠鏡と遠距離レーダーでここが見えるか調べさせなさい。」

マサ:「レーザー繋がりました。(体内通信)リエ、聞こえてる?。観測始めてって(/体内通信)。リエつかまりました。」

衛星工場より・リエ:「光学の方は、そこにあるのを知ってて見に行けば見えるって程度ね。ステルス材って黒いからねえ。
レーダーの方はここの強力なやつでもまるっきり写らないよ。地上から見つかる心配は無さそうね。んじゃ、以上。」

真理亜:「(体内通信)ご苦労さん。(/体内通信)ステルスは良いようね。摂動観測の用意して。」

マサ:「本格的にやるなら、10日はここに居ないと。そんなに原液が保ちませんが。」

真理亜:「3日ほど様子を見てレーザー通信に障害が無ければ、レーザー通信機を折り返し接続にして置いていくのよ。
追尾装置の動作ログを吸い上げるようにすれば、継続して精密なデータが取れるでしょ。」

マサ:「なるほど。摂動が想定より大きかったらどうするのですか?。」

真理亜:「突入前に隕石移動装置を分離して回収するため有人で運用するでしょ。
運用開始後は、常時当直の運用隊が配置されるから摂動に対する軌道修正も柔軟に出来るんだけどね。
可能なら、近地点に向かう数個だけに配置して、近地点過ぎたら帰還するローテーションで必要人数を減らしたいのよ。
ただ、あんまり摂動が大きいと全部の隕石に常時一人ずつ必要になってしまうからね。
そうなったら、人手が足りないから配備出来る隕石数が少なくなって、攻撃力が不足する心配があるわ。」

マサ:「リモート使って、一人で何個か面倒見れませんかね?。」

真理亜:「遠いから摂動が大きいと片側無人でレーザー通信も不安でしょ。かといって電波使うと秘匿性が劣るし。」
119pinksaturn:2006/07/09(日) 08:53:51 ID:+H7wdyRv0
(3日後)

真理亜:「短時間でレーザー通信が切れるほどの摂動ではないわね。ただ、月や他惑星の配置に左右されるからなぁ。
とりあえず、帰るわよ。」

マサ:「発進します。真理亜様と二人きりの、星の王女様も今日までか。帰りは荷物無いからあっという間だし。」

真理亜:「まだその話か。妄想ネタはいい加減にしなさい。帰ったら、忙しくなるわよ。
この後の様子見は、リエと助け合ってやるのよ。監視は兵隊に任せて良いけど結果をまめに報告させること。
採掘しかやったこと無い香具師が多いんだから、艦に居た者のつもりで任せ切っちゃ危ないわよ。」

マサ:「いずれ、運用隊の人数をそろえなきゃいけないから、連中を訓練しないといけませんね。」

真理亜:「残りの隕石移動のとき、数人ずつ随伴させて操縦させてみて、できそうな香具師チェックしなさい。
少なくとも5人のチームが3組は必要だし、摂動が多かったら30人くらい必要になるわ。」

マサ:「運用隊員の抽出について、採鉱部との調整は固まっているんですか?。」

真理亜:「元々、この要員込みで採鉱には新兵が多めに配属されたので20人までなら一切文句が出ないわ。
それ以上必要になったら、東宮様とご相談ね。生産力と戦略のさじ加減という政治判断になってくるから。」

マサ:「迎撃艇の方は、どんな調子ですか?。」

真理亜:「元からやっていた8人のうち3人と、リエ以外にはきちんと乗りこなせそうなのが居なくて困ってるわ。
隕石移動なら、多少鈍くても慎重にやれる性格の香具師をじっくり教育すれば良いけどね。
迎撃艇は、大気圏ぎりぎりを行動しなきゃならないから瞬時に独断で動ける素質が無いと危なくて。
工場や鉱山から志願者を募って、ダメな5人と交代させる予定だけどシミュレータで不合格続出なのよ。
藻前にもやってもらうけど、数が揃うには、来年、ハルたちの代が上がってくるのに期待するしかないかな。」

マサ:「確かに、最近の方が素体の適性が向上してますよ。近年文部省も頑張ったって事ですね。」
120pinksaturn:2006/07/09(日) 09:09:55 ID:+H7wdyRv0
(5日後、第1工場衛星内、軌道警備部隊司令部)

真理亜:「摂動もまだ多少心配だけど、5人なら常駐出来るから、完成済みの4個をまとめて配置するわよ。
こんどの、移動キャラバンは人数多くなるから、リエに指揮してもらうわ。」

マサ:「私じゃ、不安ですか。」

真理亜:「極めて。藻前は、2,3人の精鋭を指揮するには向いてるけど、性格的に大勢を見るのダメだもの。」

リエ:「いじけるなって。迎撃艇の方、やってみたかったんでしょ?。」

マサ:「まあ、言われてみれば納得なんですけど、少しは悔しい希ガス。」

リエ:「ほんじゃ、行ってきまーす。」

真理亜:「迎撃艇のシミュレータは、十分やってるわね。」

マサ:「ええ、両足縛って宇宙遊泳してるって感じは確かにヘンですけど、燃料計算とかそんなに難しく感じませんが。」

真理亜:「計算そのものは体内CPUが出来るけど、チェックすべき時期を選ぶ勘は素質頼りでしょ。
藻前はそういうところだけは発達してるからねえ。じゃ、適当に実機で足慣らししてきて良いわよ。」

マサ:「いきなり大気圏付近ってのはさすがに怖いんで、月でも拝んできたいんですが。」

真理亜:「北米連の監視衛星が回ってるから、あんまり近くはダメよ。まだ摩擦は避ける指示が出てるし。」

マサ:「月のL1より近くには行きませんから。」

真理亜:「それなら問題ないわ。L1の向こうで漂流したら月に落ちるから、悪戯心出して、予定を破っちゃだめよ。」
121pinksaturn:2006/07/09(日) 09:11:39 ID:+H7wdyRv0
(1ヶ月後 第1工場衛星内、軌道警備部隊司令部)

真理亜:「東宮様がこちらに上がられるのは随分お久しぶりですよね。」

皇太子:「ほぼ20年ぶりよ。さすがに今度ばかりは、丸投げしていて不備があったら御前会議で辞任表明よ。
早速だけど、首尾はどうかしら?。」

真理亜:「隕石の方は、7個配置済みです。L5点を中心に周期20日の軌道を回る配置になっています。
周期の半分、10日間は近地点に向かうわけで、内1個は全力で加速すると最長3時間で地球重力に捕まります。
後は、標的の位置に合わせて微調整しつつ加速しながら落ちるだけで、開始から落下まで最短4.5時間です。
但し、標的が地球の裏に入りかけの時ですと、加速を遅くして待たねばならないので10時間くらいになります。
何時でもいずれか3個は近地点に向かう位置にいるので、攻撃力は十分です。
ただ、最長所要時間を6時間に収めるには、同じものをL4にも配備する必要があります。」

皇太子:「それは想定していたわ。まだ、2年間は使わずに済むだろうから1組目の状況を見て準備するつもりよ。
必要な人手と物資はどうなるかしら。」

真理亜:「月が一巡する間の摂動観測結果からすると、当直配置は4人ずつで済みそうです。
周期を20日にしたのは、重機に積載出来る物資の量から1回の当直滞在が12日以内というのに合わせました。
交代の移動時間や異常時のバックアップも考えると16人編成にはしたいですね。
L4も配備するときは、バックアップを共通化して30人編成でしょう。つまり、あと10人は増やさないと。
物資はこれに適したボタ山が今は2,3個足りませんが、採掘のペースからすると1年以内に揃いますね。
その他のものは半年以内に工場で作ってくれるそうです。」

皇太子:「隕石の要員は、たいして特殊技能が要らないのよね。ならば10人増やす手配をしておきましょう。
全部新兵でも良いかしら?。ところで、攻撃中止のタイムリミットはどの程度になりそうなの?」

真理亜:「訓練結果から見て、隕石移動装置の離脱は遅くとも落下の1時間半前にはやらないといけません。
それで良ければ、誰でも操作出来ます。1時間につめろと言われると、迎撃艇並みに精鋭を集めませんと。」
122pinksaturn:2006/07/09(日) 09:14:00 ID:+H7wdyRv0
皇太子:「迎撃艇の方はかなり大変なようね。」

真理亜:「困っています。適性がないと危ないので。使えるのは、元からの3人と私の連れてきた2人だけですよ。
ここを狙った攻撃なら、低軌道に降りなくても迎え撃てるので、一応あと5人の経験者が居ますけどね。
そんな事態になったら、シミュレーション済みの者を工場、鉱山および隕石のバックアップからかき集めますし。
本国が弾道攻撃されたら、私も出たとしてもたった6人では低軌道に網を張るのは無理です。
軌道維持に使う燃料の制限からローテーション組まないとならないので、同時に降りれるのは2人ですから。」

皇太子:「そうか。心配していたとおりになったか。御前会議で甘い見通しを言ったのはまずかったかも。
そうだ。次の新兵は、そちたちが素体教育をやった代だな。ずばり指名したい者は居るか?。」

真理亜:「是非欲しいのが4人います。それだけでは足りないので、工場・鉱山からの抽出もお願いします。」

皇太子:「新兵の配置は注文通りにしよう。後は善処したいのだが、いまのところ約束は難しいね。
どうも難しさの実感がつかめないので、適性による組織的な抽出のルールが見えてこないからねえ。
シミュレーションやってみたが、そんなに難しいとは思えなくてね。一度、自分で現場を見た方が良いかな。」

真理亜:「機体は余っていますので、高軌道でなら構いませんが、低軌道に降りるのはおやめ下さい。」

皇太子:「感触だけ判れば良いので無理はしないわよ。」

真理亜:「判りました。でしたら、マサに随伴させます。」

皇太子:「もう一人、下手な娘も用意して。自分の能力を基準にするより、他人どうしの差を見比べたいわ。
皇族や貴族は遺伝的に恵まれすぎているせいで、下手な娘の苦労が判りにくいからね。」
123pinksaturn:2006/07/09(日) 09:28:57 ID:+H7wdyRv0
(高軌道上に出た3機の迎撃艇間の通信)

マサ:「まもなくデブリが流れてくるのでそいつを標的に、エキシマビームを試射したいのですが良いですか?。」

皇太子:「時間差を置いて、同じ標的に2人ともやってみて。」

マサ:「判りました。標的と同航でやりますので、1Km後をつけながら観察して下さい。あざみ、先やって。」

下手搭乗員・あざみ1等兵:「え、私が先ですかぁ。」

マサ:「標的は金属質だから当たると蒸気が出てコース変わるでしょ。後だと難しいわよ。」

あざみ:「なるほど。標的見えました。追尾コースに入りま...。あ、間に合わないわ。逃げちゃう...」

マサ:「曲がるときは、もっと滑らかに腰を振って!。十分追いつけるから、落ち着いて追うのよ。」

あざみ:「進路合いました。接近中。2Km。撃ちます。キョロちゃんビーム、連射...。」

マサ:「スミを掠めただけよ。有効パルスは1回ね。その程度じゃ、ミサイル筐体に穴なんか開かないわよ。
上にどいてくれる。じゃ、やりますよ。1.8Km。僅かに落下気味か、それっ、ラブラブ光線、1,2,3...。」
124pinksaturn:2006/07/09(日) 09:30:46 ID:+H7wdyRv0
皇太子:「ぷっ(この娘たちのキーワードったら)。何をやったの?。」

マサ:「ついでなので、穴あけじゃなく、ずらして当てて、蒸発の反動で大気圏に落ちる方向に向けました。
高軌道からじゃ、落ちるのは随分先の事なんで拾った方が掃除になりますけど、気は心ですよ。
人数がいれば、粘着トロール網でさらって帰ってリサイクル出来るのになぁ。」

皇太子:「やっぱりそうか。しかし自分の進路だけでも大変なのに、命中後の動きまで計算したのか?。」

マサ:「まさか。計算したのは自分の進路だけで、あっちはテキトーですよ。落ちるのは間違いないですが。」

皇太子:「実は、追いながら軌道を再計算してみたが、ちゃんと最短落下コースを向いていたのよ。」

マサ:「はあ。そうですか。我ながらこういう勘はおそろしく当たるんですよ。」

皇太子:「様子は判ったわ。工場に戻りましょうかね。(勘ねえ、どうやって選別したら良いのやら...。)」
125pinksaturn:2006/07/09(日) 09:31:34 ID:+H7wdyRv0
(再び第1工場衛星内、軌道警備部隊司令部)

皇太子:「上手い娘と下手な娘の違いはよく判ったわ。どうやって選別するかが難しいけど。」

真理亜:「そうですか。やはり、難しいですか。」

皇太子:「新兵は貴女の希望通りにするのでその4人で1年くらい我慢してね。
こういう目的での勘の良さを反映させる人事評価システムの改良は時間かかるわ。
それから、新兵が来たら、まずデブリ拾いやらせるのが良いわ。さっきの様子見てて気が付いたのよ。
弾道の頂点付近にいるICBMとデブリは速度が似ているからね。
撃つより捕まえる方が緻密な速度合わせが要るから、良い練習になりそうよ。」

真理亜:「4人増えればトロールが出来るので、やってみます。人事システムの方は待ちますのでよろしく。」

皇太子:「ところで、話は変わるけど、今度、工場衛星の余剰生産力活用で酒造をやることになったのよ。
ここでは飲む訳にいかないけど、舐めるだけなら出来るから、そのうち味見してみてね。」

真理亜:「酒ですか。確かに穀物を降ろすよりは体積が圧縮出来ますね。売れるような味が出せると良いですが。」

皇太子:「貴女のところの娘は、勘が良いから味覚も発達してそうだし、協力してあげて。」

真理亜:「承知しました。しかし、誘惑に負けて飲んでしまって故障しないように気を付けないといけませんね。
喉にゴム栓をして味見やらせましょうか。」
126pinksaturn:2006/07/09(日) 09:45:31 ID:+H7wdyRv0
(第1工場衛星内、酒造区画 別名=バー)

リエ:「宇宙で酒の味見を出来るとは思わなかったわ。しかも仕事でとは、役得役得。」

マサ:「隕石の配置が順調なので、東宮様のご褒美ですかね。東宮様も気が利く方ですね。」

真理亜:「東宮様のご指名は事実だけどね。但し、ご褒美じゃなく藻前達の勘の良さを買ってとのこと。
あくまでも生産力活用のためよ。義肢や薬品の市場規模じゃ工場衛星3つ分の仕事に足りないのよ。
これがうまく行かないと我々の給与や装備の予算に響くんだから、真剣に売れ筋を探しなさい。」

リエ:「そりゃそうと、このカウンターの向こうに並んでる物体は、私らの胴体と同じものですよね。」

真理亜:「地上用の機器構成だと食料からアルコールを作って燃料電池に送るようになってるでしょ。
わざわざ酒造用に別の装置を開発するのは無駄だから配管を一部入れ替えて流用したのよ。
足に繋がっていた管が元の廃液タンクに行って、廃液はアナルから下水溝に繋いであるの。
尿道にコップ当ててクリトリスをクリックして注ぐようになっているからね。」

マサ:「げえぇぇ。これじゃ、酒っていうより、おしっこの味見じゃないですか。」

リエ:「ちゃんと酒が出る菌を使っているっていうんだから、美味ければ良いじゃないの。
消化ユニットが間に入っていないし、廃液はきちんと分離されるから汚くなんか無いわよ。」

マサ:「しかし、なにも外皮までご丁寧に同じにしなくったって。やっぱキモい。」
127pinksaturn:2006/07/09(日) 09:47:26 ID:+H7wdyRv0
真理亜:「外皮つけないと尿道が正常動作しないのよ。あ、それから味見の前にこれをのどに詰めるのよ。
当然、味見中は窒息しないよう生命維持を2次に切り替えること。」

マサ:「何ですか、そのゴム製品は。」

真理亜:「藻前達が誘惑に負けて飲み込まないための栓よ。今飲んじゃったら故障しかねないからね。」

マサ:「そんな殺生な。おしっこの上にさらに味気無いことしなくても。」

真理亜:「藻前らが故障すると困るのは私なんだからね。自分でしないと無理矢理詰めるわよ。
せめてカウンターだけでも気分出るようにって、バーらしくしてもらったんだから感謝しなさい。」


(ずいぶん物騒な計画を進めている最中なのに、こんなことやっていて良いのでしょうか。
宇宙に出たら、改造手術や分解整備、エロといったスレ的に期待度の高い成分が減ってしまいました。
しかし、改造ばかりやっていて任務をさせないと予算の無駄遣いになってしまうのであしからずご了承下さい。
次回予告(21)インターセプター小隊)
1283の444:2006/07/09(日) 20:37:07 ID:3wmNEmMs0
ttp://comic-ekk.homeftp.org/user/hailaer/tentestuki/tentetsuki/yagee-story-23.htm
ちょっと遅れましたが…。

雷かあ。
ヤギーだったら頭のアンテナに落ちるだろうし、もしアンテナに落ちたら
命はなさそう。たぶんおびえるでしょうね。
雷が鳴り始めたら雨が降ってもいないのに、(アンテナに雷が直撃する
のを防ぐために)傘を差し始めて、友達から変人扱いされるのでしょうか?
129名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 10:24:49 ID:iGGdd2c20
>>128

1.人差し指の先からつま先まで、皮下にアース線を引いておく。
2.雷が鳴り出したら、人差し指を高々と挙げて行動する。

3.雷が落ちたら「さんだー・ぶれーく!」と叫びながら敵を(ry

これでおっけーかとw


というか、田舎の一本道でもない限り、自分より高い建物には事欠かない
わけで、とか思ったりするわけなんですが。
130名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 19:21:21 ID:zsnhggCH0
アレルギー対策 > メシが美味しく喰えること > 雷直撃対策

落雷で死んだからといって、遺族が義体メーカーを訴えて勝てるとは思えん。
それより、アレルギー対策がずさんだった為に・・・、という問題の方が大きくなるんじゃないかな。
科学が進むにつれて、それまで未知だった珍しいアレルギー傾向とか人体の不思議も見つかっていくだろうし。
131manplus:2006/07/12(水) 21:15:37 ID:Nybc/aRP0
 会社に着くと、杏奈は、私の執務室に付随しているサニタリールームで、私の尿の処理をまず行ってくれた。
 その後、私のスケジュールの調整とブリーフィングを行い、杏奈は、自分専用に作られた、
社長室の隣にある社長秘書室の秘書サイボーグ専用シートに身体を固定すると、シートから出ている
ケーブル類と自動接続され、シートと一体となり、我が社のコンピューターシステムと一体の存在となった。

 杏奈にとって、職場や社長専用車の中、片桐と暮らす住居の中、その他のサイバーヒューマン社が管理する
施設の中に設置されている、サイボーグ専用のシートか、サイボーグ専用のメンテナンスベッドに繋がれることが、
自分が機械と生体の中間的存在であると認識させられる瞬間であった。
杏奈は、この時はいつも、
『自分は機械じゃない。意志がある機械は存在しない。自分は人間なのだ。』
そう言い聞かせた。
しかし、自分が繋がれるサイボーグ専用調整ベッドが無いところで暮らすことは、命の長さを3600時間に
制限されることになるのであった。スーパーサイボーグに杏奈がなるのであれば別だろうが、
スペースフィットスーツを装着させられるためのサイボーグ改造手術を受けた杏奈にとっては、
スペースフィットスーツのパフォーマンスが、全てなのである。
スペースフィットスーツのパフォーマンスとしての連続したノーメンテナンス持続時間を超えることは不可能であった。
いつも、命の期間の制限を受けた生活を強いられることの恐怖を味わうのであった。
普段は感じないそんな漠然とした恐怖心が、スペースフィットスーツの専用シートに座った時に
何故か思い浮かぶのであった。
命を長らえた安心感が、そう言う恐怖心を甦らせることは、不思議な感情であった。
それは、杏奈がいつも死と隣り合わせの生活を送っている証拠でもあった。
杏奈は、同じ酸素を呼吸している人間であるにもかかわらず、スペースフィットスーツから出ても、
24時間しか生きることは出来ないし、スペースフィットスーツ装着状態でいても、3600時間が限界の命なのであった。
もし、それ以上生きたいのなら、スペースフィットスーツを装着した状態で、定期的にメンテナンスシートに
繋がれるしかないのである。
132manplus:2006/07/12(水) 21:18:00 ID:Nybc/aRP0
杏奈のスペースフィットスーツは、片桐か谷本以外には、脱がすことが出来ないのだ。
もし脱がしたとしても、24時間以内にサイボーグ用のメンテナンスシートに座るしか生命維持が出来ないのだ。
杏奈は、生涯をスペースフィットスーツの中で囚人生活を送るしかないのである。
 しかし、それでも、杏奈は、幸せだった。何故なら、生涯この姿でいることが、
片桐の側に仕えられることなのだからである。その幸せに比べれば、スペースフィットスーツの囚人になることや、
この先に待ち受けている広告媒体としてのスペースフィットスーツ装着者として見せ物になることなど
苦にはならなかった。
杏奈にとって、片桐の従者であり、専用秘書であることは、何にもまして、幸せを感じることなのであった。
杏奈は、そのような恐怖心を乗り越え、充実感と幸福感に包まれながら、
この日の秘書業務を開始したのであった。機械と一体化して状態での秘書業務だった。

 杏奈に受付から、来客を知らせるコールが来た。
「水沢主任。社長にお客様です。F国大使がいらっしゃいました。」
「わかりました。ご案内してください。」
杏奈は、専用シートからリリースボタンにより、拘束を解除して、立ち上がった。
杏奈は、社長室に入ってきて、F国大使が来訪したことを私に告げた。
「社長、F国大使のポール氏がお見えになりました。貴賓応接室にお通しします。」
ロボットの抑揚のない声ではなく、杏奈本来のものに合成された声が聞こえる。
この声はこの声でまた杏奈らしくて私は好きなのであった。
「わかった。ご案内してくれ。きっと君を見に来たんだよ。F国は、長期宇宙作業のミッションにご熱心だからね。」
「それでは、ご案内した後、私とスペースフィットスーツの説明のため、宇宙開発担当役員の玉田常務と
谷本ドクターにも同席するように手配いたします。それではお出迎えに行って参ります。」 
杏奈は、私の部屋を出て行った。
133manplus:2006/07/12(水) 21:19:29 ID:Nybc/aRP0
杏奈にとって、ボディーラインのハッキリ見えるスペースフィットスーツ姿をジロジロ見られるのは、
いくら、作り物に近い身体になったとしても、恥ずかしいことだと思うが、わが社のために杏奈には
耐えてもらわなくてはならないことなのだ。
しかし、杏奈を見られるのはともかく、杏奈の身体に私以外の人間が触れるのは、私には辛いことだった。
 杏奈は、社長室を出て、社長秘書専用執務室で宇宙開発担当役員と谷本に貴賓応接室に来てくれるように
頼んでから、社長室のあるフロアのエレベーターホールに向かった。
 ちょうど、F国大使を乗せたエレベーターが、フロアに着くところだった。
エレベーターのドアが開き、F国大使が出てきたのを確認して、杏奈は、F国大使に向かって、
「ようこそ、サイバーヒューマン社にお越し頂きましてありがとうございます。
社長の桐島がお越しをお待ちしておりました。どうぞこちらへ、ご案内します。」
 杏奈をF大使のポールは見ると少し驚いたようなそぶりを見せたが、気を取り直したように平静を装い、
杏奈の案内に従い、貴賓応接室に向かった。
 貴賓応接室には、桐島と宇宙開発担当役員の玉田明子、そして、谷本が待っていた。
「ポール大使、お待ちしておりました。ようこそ。」
桐島がそう言って、ポールを迎えた。
「桐島社長。来てすぐに先制攻撃かね。私が見たかったものを見せるなんて。
しかし、サイバーヒューマン社の傑作商品がまた出来たね。」
「恐れ入ります。大使。でも、水沢君をお出迎えさせたのは演出でも何でもありませんよ。
この女性は、私の秘書ですからね。」
「スペースフィットスーツを着た、歩く広告塔の秘書とは考えたね。」
「恐れ入ります。この、スペースフィットスーツのご説明をするために、宇宙開発担当役員の玉田と
開発責任者の水沢を呼んでいます。」
「宇宙開発担当役員の玉田です。よろしくお願いします。」
「スペースフィットスーツ開発責任者の谷本です。よろしくお願いします。」
134manplus:2006/07/12(水) 21:29:06 ID:Nybc/aRP0
「ほう。才色兼備の役員や幹部がサイバーヒューマン社には、多いと言われているが、二人とも素晴らしい。
よろしく。F国大使のポールです。」
「大使、どうぞお座りください。スペースフィットスーツをじっくりご説明します。
どうぞ貴国での採用を是非ご検討ください。」
「この二人と水沢さんが我が国に来てくれるのなら、考えようか。」
「大使、また、そのようなことを言われて、困ります。
でも、母国の大統領に説明が必要なら、私も一緒でしたら、この3人と貴国にお伺いします。
私の専用機を使用しましょう。機内でのおもてなしをいたしますよ。」
「片桐社長。本当かね。約束だよ。それでは、今日説明を聞いて、早速、本国に提案することにしよう。
本国の宇宙開発に必要な技術なので採用間違いないと思う。早速、説明を聞こう。」
 片桐はポールが上機嫌になったのを見て、説明に入ろうとした。
すると、杏奈が、他の秘書室のメンバーに指示していたポールの好きな紅茶が運ばれてきた。
「やはり、水沢秘書は気が利いているね。私の大好きな紅茶の銘柄を覚えていてくれたのだね。嬉しいよ。
やっぱり、秘書としての技能も最高の秘書を持っていて、片桐社長が羨ましいよ。水沢さん。
是非、我が国に来てくれ。思う存分我が国を楽しむつもりで来てくれ。美味しいものもいっぱいご馳走するよ。」
「大使、ありがとうございます。でも、私は、このスペースフィットスーツから出ることは出来ないので、
ご馳走は食べられませんが、F国の景色を満喫させていただきます。」
杏奈の答えに、ポールがしまったという表情で、
「水沢さん、申し訳ない。長期装着型宇宙服であるスペースフィットスーツを着ていることを忘れていたよ。
スペースフィットスーツは、装着したら脱ぐのが大変なんだったね。
宇宙空間での作業性のため、脱ぐ自由を失うのを忘れていたよ。申し訳ない。」
135manplus:2006/07/12(水) 21:29:42 ID:Nybc/aRP0
「大使、気にしないでください。私は、この姿で生涯を送ることに誇りを持っています。
それより、お茶が冷めないうちにお飲みになってくつろぎながら、私の身体の説明を聞いてください。」
杏奈に慰められた形になって、ポールは、応接ソファに座り、出された紅茶を飲んだ。
頃合いを見計らって、私は、玉田に、スペースフィットスーツの説明を始めさせた。
「玉田君、我がサイバーヒューマン社の新製品のスペースフィットスーツの説明を始めてくれ。」
「解りました。それでは、大使、わが社の新製品であるスペースフィットスーツの説明をいたします。
F国の宇宙開発においてわが社のスペースフィットスーツが使用される光栄にあずかりますことを祈っております。
水沢さん、映像システムの用意をしてください。」 
杏奈は、玉田の言葉を予測したように、玉田のリクエストの言葉が発せられた時は、
もう既に映像システムの用意が完了していた。杏奈の秘書としての非凡さの賜である。
この予期しての動きは、秘書サイボーグとして、計器類をいじることなくシステムを動かすことの出来る有利さと
本来の人間として持っている勘の良さの複合したものであった。
その意味においても、杏奈はサイボーグとしてのマン=マシン協調システムが順調に作動している証でもあった。
 映像は、杏奈がスペースフィットスーツを装着できる身体に改造される映像とスペースフィットスーツを
装着されている映像、そして、スペースフィットスーツの装着により宇宙作業がどの位有利になるかが視覚的に
納められているものであった。
約30分間に納められたVTRが終わると玉田が、補足説明を開始した。
「以上が、スペースフィットスーツの全般的なPR映像です。水沢さん、こちらに来て。」
玉田は、杏奈を近くに来るように手招きした。
杏奈は、その指示に従い、玉田の近くに移動した。
移動する時に、秘書サイボーグとしての社内ホストコンピューターとのオンライン回線接続用のケーブルが
繋げられている為に、そのケーブルが外れないように注意しながらの移動になった。
そのケーブルが外れると映像システムのコントロールなどの業務に影響が出てしまうので、
杏奈は注意を払っての移動であった。
136manplus:2006/07/12(水) 21:30:31 ID:Nybc/aRP0
「このスペースフィットスーツは、バックパックによる恒久的生命維持システムにより、3600時間の間、
宇宙空間での連続作業を可能にしています。
循環液の交換やエネルギー供給システムの再整備により、装着時間は、永久的なものになっています。
水沢さんは、わが社のモニター被験者のため、生涯、スペースフィットスーツを脱ぐことが出来ないように、
スペースフィットスーツの着脱用のジッパーは、半永久的なロックシステムで、社長と谷本ドクター以外の人間が
脱がせることが出来ないようになっています。
水沢さんがスペースフィットスーツを出ることが出来るのは、この商品が生産中止になり、
ユーザーが全ていなくなった時か、スペースフィットスーツの故障による緊急時のみになります。
通常の装着者は、地球帰還時や宇宙ステーションでの作業時の許可された時には、
スペースフィットスーツを脱いだ状態での生活を送ることが出来ます。
ただし、スペースフィットスーツ未装着状態では、通常装着者の生命維持のためのルーティーンとして、
240時間に一度、へその生命維持コネクター経由若しくは、装着者メンテナンスシートに横たわることにより、
体内タンク内の循環液の交換と機械動力用蓄電池の充電を行わなくてはいけません。
その他にも、サイボーグ体としてのメンテナンスの目的もあるため、240時間という時間が現時点での
素体単体でのノーメンテナンスの限界になります。」
 ポールは溜息をつきながら、
「ということは、240時間は人間として、大気の感触を味わえるわけだ。
しかし、そこまでの制約を持ってまで、スペースフィットスーツを装着したいと思うアストロノーツが、
果たしてどの位いるのかね。」
玉田は平然とした表情で答えた。
「世界中のアストロノーツを対象に無作為のアンケートをとったところ約40パーセントのアストロノーツが、
身体の変更を伴っても長期に装着可能なスペーススーツを着用することを熱望しています。
内訳的には、長期に宇宙空間での活動を行ったアストロノーツほど、身体の変更をして、
脆弱な人間の身体を強化した上で、長期着用型の宇宙服の装着を希望しているという結果になっています。」
137manplus:2006/07/12(水) 21:39:04 ID:Nybc/aRP0
「そう言うものかね。死と隣り合わせのアストロノーツの考えはわからないね。
我が国のアストロノーツもアンケートに答えたのかね。」
「はい。もちろん答えています。」
「ところで、水沢君のスペースフィットスーツを脱がせた状態は生で見れないのかね。」
「はい。申し訳ありません。大使。彼女は、秘書用サイボーグとしての機能も搭載した
サイボーグアストロノーツなので、生命維持に関するタンクの容量が極端に小さいため、
スペースフィットスーツ未装着状態での生命維持の時間がもの凄く短いのです。
スペースフィットスーツの着脱だけでも、生命維持が出来ない程しか素体単体での生命維持が
出来ない身体なのです。その為、スペースフィットスーツを脱げることがないような特殊加工を施しています。
従いまして、スペースフィットスーツの未装着状態をお見せできません。」
「水沢君は、そのような状態になることをよく納得したね。」
杏奈は答えた。
「私は、わが社の為に、このような状態になっても悔いはありませんでした。」
「本当に、水沢君は、忠誠心の固まりだな。秘書の鏡だ。私の秘書にも見習わせたいよ。」
「よろしければ教育しますよ。大使。」
杏奈が冗談を言うと、ポールは肩をすくめ、
「検討して、お願いしようとするかね。」
といった。しかし、玉田にも知らせていない事実として、杏奈の未装着状態にすることは充分に可能なのだが、
私のセックスドールとしての姿を見せたくない事と、杏奈を他人に触らせたくないという私の要望があることが
理由なのである。
杏奈は、スペースフィットスーツを脱げば、人形その物の姿をさらすことになるのである。
この事実を知るのは、わが社でも、杏奈自身と、杏奈の完全管理者である私と主治医の谷本の
3人だけなのである。
極論すると杏奈のサイボーグ体の秘密を知るものは、世界中に3人しかいないのであった。
138manplus:2006/07/12(水) 21:39:42 ID:Nybc/aRP0
「秘書サイボーグか・・・。そちらの商品としての発注も真剣に考えることになるかもしれないな。
瞬時にコンピューターネットワークとのやり取りが可能な秘書というのは、ものすごいものだしね。
諸外国に先んじて我が国が導入を検討するかもしれない。
もちろん。その時は、大統領に言って、私の秘書も秘書用サイボーグに改造してもらうがね。」
「大使。ありがとうございます。水沢君のシステムの全てまで気に入ってもらい光栄です。」
私は、思わぬ派生新製品の受注に対して、喜んでいいのかどうなのか分からなくなった。
しかし、ポールは、真剣だった。
「片桐社長。本国にスペースフィットスーツと秘書サイボーグのプレゼンテーションをするためにすぐにでも予定を
調整して欲しい。いつならスケジュールが会うのかすぐに答えて欲しい。
我が国としては、積極的に採用に向かい、進んでいくつもりだ。本国の大統領と科学技術大臣からも、
私がいいと判断すれば、サイバーヒューマン社の新製品のいくつかを導入に向けた商談を行っていいとの
了解を取っている。つまり、白紙委任を受けている。是非ともよろしく頼む。」
「ポール大使、ありがとうございます。スペースフィットスーツとその装着者についての資料は
すぐに用意できますが、秘書サイボーグに関しては、商品としてのものではなく、たまたま、水沢君という、
優秀な秘書をスペースフィットスーツ装着者の商品見本にした関係で、水沢君の秘書能力も
温存しようとした結果としての副産物なのです。
いわば、社内利用のみの試作品と同じなので、商品としてのプレゼンテーション資料が整っていません。
その作成の時間が、どの位かかるのかを調べないと即答が出来ません。」
私がそう答えていると、傍らで、杏奈が、
「社長。玉田常務。今、特殊人体開発部門との交信をしたところ、秘書サイボーグの商品提案としての
資料作成の時間的余裕をやり取りしたところ、約一週間で、完璧な商品化した場合の資料とプレゼンテーションに
必要な資料が、仕上げられるとの結果をもらいました。」
杏奈の秘書サイボーグとしての機能をフルに使い、即座に結論がかえってきたのだ。
139manplus:2006/07/12(水) 21:40:25 ID:Nybc/aRP0
玉田常務は、その実力の凄さに、目を丸くしていた。
そして、ポール大使は、自分の目の確かさに、納得げになっていた。
「分かった。水沢君。それでは、私と玉田君、谷本君、それに、君のスケジュールが最短で取れる日を
さがしてくれ。」
すると、ポール大使がすかさず、
「我が本国の素晴らしさを皆さんに見てもらうことにしたいから、商談の時間と晩餐の時間、それにフリーの日を
1日か2日とって欲しい。」
「大使、分かりました。水沢君。最低4日でスケジューリングしてくれ。」
私のリクエストに、杏奈は即座に答えた。
「土日というものを挟めば、来週の木曜日から、日曜日までなら、日程をとることが可能です。」
私は、玉田常務と谷本ドクターに同意を求めると、二人とも、軽く首を縦に振り、同意してくれた。
「それでは、大使、来週の木曜日に本国へ向けて出発いたします。私の専用機で参りますので、
大使と随行の方もご一緒にいかがですか?F国までの行き帰りの行程は、私どもでご接待いたします。」
「片桐社長。それはいいアイデアだ。お願いするよ。水沢君。晩餐会では、君だけ食事を口に出来なくて、
辛い思いをさせるかも知れんが、それ以外で、我が国を堪能してもらうよ。楽しみにしていてくれ。」
ポール大使の言葉に杏奈は、
「お気遣いありがとうございます。私は、サイボーグとなってだいぶ経ちますから、
経口の食事というものに対しての感情は、他の人が取っているのを見ていても何の抵抗感もありません。
ご安心ください。むしろ、経口食を取れないということの代わりに、サイボーグでなくては、
味わうことの出来ない素晴らしさもあります。その素晴らしいことの方が、食べ物を食べることが
出来なくなったというサイボーグとなったことの代償よりも大きいので気にしていません。
ご安心ください。それに、サイボーグとしての機能の素晴らしいところをもっとご覧に入れることが出来ると
思います。」
140manplus:2006/07/12(水) 21:47:58 ID:Nybc/aRP0
「それは、楽しみだ。片桐社長、来週の木曜日よろしく頼む。」
「承知いたしました。大使。私たちも、F国の週末を楽しみにしております。」
「ところで、スペースフィットスーツを他国は検討しているのかね。特に、お膝元のJ国は、
採用する動きがあるのかね。」
「J国に関しては、もちろん、採用を検討していますが、大使もご存じの通り、スペースフィットスーツを
もう一歩進めた惑星探査用スーパーサイボーグの商品化の方により興味を持っています。
J国は、土星の衛星の有人探査に宇宙開発の重点を移していますからね。
スペースフィットスーツよりも、惑星探査用スーパーサイボーグの我が社での商品化待ちといったところです。
その他の国は、R国やA国、C国など数カ国が我が社のスペースフィットスーツに興味を持っていて、
引き合いが来ています、しかし、プレゼンテーションをおこなうことになったのは、貴国が初めてです。
たぶん。貴国がスペースフィットスーツの最初の採用国になると思われます。
もっとも、R国は、E連合の宇宙開発連合加盟国なので、貴国が採用していただければ、
R国も追随するものと思います。その点でも、貴国の引き合いが重要だと当社も心得ておりますので、
誠心誠意のプレゼンテーションをさせていただきます。」
141manplus:2006/07/12(水) 21:48:35 ID:Nybc/aRP0
「片桐社長。よろしく頼むよ。しかし、J国は、本来の人間の肉体のほとんどを機械と電子機器に置き換え、
姿形も人間とはかけ離れたスーパーサイボーグにアストロノーツを改造してまで、
土星の有人探査を実現しようとしているというのは凄いよ。我が国では、宗教上、
スペースフィットスーツ装着者までのサイボーグ化が世論を納得させるぎりぎりかも知れないな。
木星や土星や冥王星等の太陽系の外惑星を有人探査するには、スーパーサイボーグの実現しかないことは、
分かっているんだがね。
まだ、そこまでの決定を下すことは出来ないからね。
月の共同開発と大型宇宙ステーションの建造を優先させるしかないと思っているよ。
まあ、J国の土星探査用サイボーグが、我が国と協働運用する月面軌道ステーションで建造される宇宙船に
搭乗するために、我が国の月面基地に立ち寄ることにはなると思うがね。それを楽しみにしていることにしよう。
それでは失礼する。」
ポール大使は、そう言うと、満足げな表情で貴賓応接室を出ると、我が社を後にしたのだった。
142manplus:2006/07/12(水) 22:01:41 ID:Nybc/aRP0
久しぶりの投稿です。

今回は、杏奈が、商品として、売り込み先の国の関係者に見せられる
という設定です。

雷対策という話題、面白いです。
私の杏奈さんは、サイボーグ体の上にスペースフィットスーツを着させられています。
このスーツは、宇宙空間での電磁波や放射線をシールドすると共に、絶縁素材を
使用していますので、落雷にあっても、電気を機械部分まで通さないと言うこと
になっています。
ちなみに、裸体での杏奈さんも人工皮膚は、金属ではなく、樹脂やセラミックの
複合体であり、絶縁体という設定です。

保管庫の分類ですか・・・。
この物語の杏奈は、
「サイボーグになることが悲しみか喜びか」
については、主人の愛情を受けることが、機械人形になる条件なので、
喜びと言うことなのでしょう。

「なった後は受け入れるか嫌悪するか」
は、受け入れています。

「特権階級か奴隷状態か」
片桐の持ち物という点では、奴隷階級ですが、
秘書としての地位として、社内では、エリートです。

「生身の部分はどの程度残っているか」
脳と一部の脊髄や筋肉組織、一部の内臓ぐらいでしょうか?

「一人称か三人称か他人視点(このスレの場合は主人公がサイボーグ少女自身じゃない)」
143名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 19:45:20 ID:EVzLMwBt0
manplus氏乙


ロックマンZX買ったんだが、世界観がすごい。
サイボーグとアンドロイドしか居ない世界だ…
 
人間とロボの戦争終結後、平等のために全人類の機械化と
全ロボへの寿命の設定が義務付けられてるらしい
144名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 23:19:40 ID:3SPs39XJ0
なんて桃源郷なッ!!!
145名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 00:44:14 ID:dnv06BLE0
それはそれでつまんない気も・・・・
146pinksaturn:2006/07/15(土) 09:10:15 ID:nLgAbwHU0
(オプションパーツの続きです。)
−−(21)インターセプター小隊−−

(地上基地 搭乗員待機室)

ハル:「あ、おかあさん!。降りてきてたのね。」

冬子:「ハル!。完成したわね。おめでとう。これから上に?。私は解体検査のために降りてきたところ。
いよいよ冥王星探検の参加者選別ね。頭蓋ばらして脳を裸にして徹底的に検査されるの。
結果が決まるまでの9ヶ月は軽い訓練だけで暇だから、夜は家でゆっくり出来るんだけどね。」

ハル:「私、最初は軌道警備部隊に配属されることになって。一緒に冥王星行きは無くなっちゃったね。」

冬子:「こっちもどうなるか判らないわよ。候補者の内、シビリアン出身者では私が最年長なのよ。
頭蓋ばらして検査してみたら動脈硬化で不合格ってなる可能性は、若い娘より格段に高いからねえ。」

ハル:「でも、おかあさんは特殊な構造だから、もともと耐Gだけは有利なんでしょ。きっと大丈夫だよ。」

冬子:「そりゃ、脊髄が無い分はね。でも脳は他の人と同じなんだから、年の分不利なのよ。
ところで、ハルは、そっちの娘たちと一緒に上がるの?。みんな完成したての娘ね。」

マツ:「冬子特務少尉!初めまして、ご活躍のうわさはハルからかねがね。」

冬子:「どんな噂だか。私は元々おまけサイボーグですからね。大したことはしてないのよ。」

ミツ:「94年のメインベルト収集飛行や97年のトロヤ初探検の資源分析で多大な成果を残されたとか。」

冬子:「地道にやっただけ。宇宙遊泳とかまともに出来ないから、それしかなくて。」
147pinksaturn:2006/07/15(土) 09:11:01 ID:nLgAbwHU0
ササ:「でも、第3工場建造とか、最近の資材充実にはその成果が大いに効いているそうじゃないですか。」

冬子:「それも勘良く隕石を集めてくれた徴兵の娘たちが居たから出来た事よ。私は裏方ですから。
ところで、工場衛星には、私のように戦闘サイボーグになれなくて製造に回っている障害者が多いの。
工場の安全は、貴女達のように素質で選ばれて軌道警備の第一線につく娘が頼りだからよろしくね。」

ハル:「了解。そろそろ搭乗時間だから行くね。冥王星土産期待してるから、お母さんも頑張ってね。」


(M55ロケット打ち上げ場)

管制官:「M55ロケット03061002貨物便発射300秒前、規制空域侵入機無し、規制海面船影無し、
初段回収艦待機ポジションよし、進路に交錯する大型デブリ無し...3,2,1発射。」

ミツ:「飛んだ飛んだ!。いよいよ私らの出番ね。だけど、ハルは良いなあ、親子でサイボーグなんて貴族様みたいで。」

ハル:「お父さんは一般シビリアンよ。それより、私は貴女達みたいに、最初から女の子の方が羨ましかったわ。」

マツ:「5年以上経っているのに、いまだに違和感ってあるものなの?。」

ハル:「体の違和感は3年前には無くなったわ。ただ、ここまでは訓練や改造で自由が殆ど無かったでしょ。
この先、任務期間中はまだしも地上休養に入ったときの生活とかちょっと不安なのよね。
殆どの娘が特区で売春とかやるでしょ。地上休養中の体って、それが必要らしいじゃない。」
148pinksaturn:2006/07/15(土) 09:12:23 ID:nLgAbwHU0
ササ:「ハルって、そういうの生身では未経験だったんだ。そりゃ、初めての地上休養が大変かもね。
下請けで改造施設に入ってた、だるまっ娘好き整形外科医のオサーンにでも売春してみれば良かったのに。」

ハル:「あのときは、まだとてもそんなコトする勇気なくて。あ、そろそろデブリ要注意の高度だね。
管制じゃ、でかいのは無いって言ってたけど、レーダー網にかからない細かいのもあるからね。」

ミツ:「前方50`以内は無さそうね。」

マツ:「真上、後方寄り40`辺にうっすらと影出てるね。同航だから相対速度は小さいけど交錯しないかな。」

ササ:「念のため、左右どっちかに避けとこうよ。」

ハル:「左は管制情報で200`前方にでかいのがあるから右にしようよ。じゃ、スラスタ吹かすね。」
149pinksaturn:2006/07/15(土) 09:38:03 ID:nLgAbwHU0
(第1工場衛星内・軌道警備部隊司令部)

真理亜:「4人ともお久しぶりね。実は迎撃艇を低軌道で乗りこなせる勘の良い娘が足りなくて困っていたのよ。
それで、東宮様にお願いして素体訓練時に適性があるのが判っていた貴女達を配属してもらったのよ。」

ハル:「真理亜侯様のご指名は光栄ですけど、そんなに難しいなら新兵じゃ尚更ダメかも知れませんよ。」

真理亜:「経験よりも、軌道計算をチェックするタイミングのよさとか、素早く独断で行動を決められる性格が重要なの。
さっき、貴女達が上がってくるときの操縦はここでも監視していたんだけど、デブリ回避の判断良かったわ。期待通りね。」

ハル:「あ、見ていらしたんですか。期待通りといわれましても、初任務でいきなり怪我とか漂流とか嫌ですから。」

真理亜:「嫌だっていっても、デブリは勝手に去ってくれないしね。このごろ北米連と満漢人民の競争で増えているでしょ。
自分の隊の娘が上がってくるときは、心配するわよ。みんな貴女達のように連携良く周囲監視して避ければいいけど。」

ササ:「増えてるって噂は聞いてましたが、確かに酷いですね。我々のようなデブリレスシステムにすればいいのに。」

ミツ:「宇宙にリサイクル工場持ってないと、デブリレス化が単なるコストアップになっちゃうからね。」

マツ:「でも、リサイクルだけじゃ工場作っても仕事少なすぎるわね。結局、隕石鉱山がないと無理って事か。」

真理亜:「さっきみたいに、非力なアポジモーターで重い2段目を牽引してる状態だと速い判断がなによりよね。
迎撃艇だって、少々加速力重視の設計といっても、低軌道の重力下では鈍重なロケットの一種に過ぎないわ。
だから、さっきみたいに先回りして運動を決めていくセンスの有り無しで上手い下手が決まってしまうのね。
早速、これからシミュレーターにかかってもらうわ。一通り済んだら、マサについて実機訓練ね。じゃ、よろしく。」

ハル、ミツ、マツ、ササ:「こちらこそよろしくお願いします。」
150pinksaturn:2006/07/15(土) 09:39:33 ID:nLgAbwHU0
(3日後、工場衛星ベイ)

マサ:「期待通りソッコーでシミュレーション終わってくれたじゃない。じゃ、今日は月見に行こうか。」

ミツ:「先輩の軌道警備隊員から噂聞きましたよ。マサ特務中尉は最近ずいぶん月が好きだって。」

マサ:「ロマンチックなんだもん。ホントは真理亜様と行きたいんだけど司令部が忙しくて付き合ってくれないのよ。
シミュレーション明けの足慣らしに適当だし。北米連を刺激しないようにって、L1までしか行けないのが惜しいわ。」

マツ:「L1でも十分大きく見えますけど、せっかく行くなら間近で月見したいわ。」

ササ:「北米連の監視衛星、目障りですよね。悪戯して故障させてやりたいですね。」

マサ:「あの衛星は、エキシマを加減して太陽電池を焼けば、正常な外見のまま壊せるんだけどね。
許されるのならやっちゃいたいけど、やる前にカメラに写ったりして、バレたらさすがにまずいからなぁ。」

ハル:「あのぉ、今日のところはロマチックじゃないネタは止めにしませんか。お月見お月見。」
151pinksaturn:2006/07/15(土) 09:51:16 ID:nLgAbwHU0
(第1工場衛星内・酒造区画 別名:バー改め、おしっこバー こんなところ http://pinksaturn.fc2web.com/bar.htm

マサ:「お月見の後のお約束って訳じゃないですけど、ささやかですが新人歓迎会を始めたいと思います。」

真理亜:「藻前は、最初のときおしっこの味見なんか嫌だと言っていたけどいつの間にか積極的になったわね。」

マサ:「この設備はあんまり好きじゃないですが、公平に見てここで出来る酒はうまいですよ。」

リエ:「確かにねえ。0.2気圧じゃ虫が生きられないお陰で、原料が完全無農薬だし。」

ミツ:「まさか、こっちで歓迎の宴会なんかやって貰えるとは、驚きです。」

真理亜:「公式には宴会じゃなくて、工場の酒造事業立ち上げに味見で協力するという仕事だけどね。
我々の勘の良さで売れ筋を探せってことで。はいこれ。誤嚥で故障しないためのゴム栓ね。」

マツ:「なるほど。はぐっ(以下、全員会話はLAN経由)。しかし、味だけでも、うまければ楽しめますね。」

ササ:「マサさんと宴会なんて、100年祭バレエパレード後の満漢全席以来ですね。」

マサ:「残念ながら今日は料理なしだけどね。じゃ、新兵4人の活躍を祈ってかんぱーい。」

ハル:「ほう、これは!。たしかに、残留農薬の微かな雑味が無いですね。地上では出来ませんよ。」

リエ:「我々の味覚は高感度だからね。通常人で、残留農薬の微かな雑味がわかる人は少ないでしょ。
雑味がないのは当然として、この中からどれを主力商品にするかといううまみの評価が必要なの。」

ミツ:「そうですね。どれ、こっちの注いでみようか。クリちゃんクリックぽちっとな(じょろろー)。」
152pinksaturn:2006/07/15(土) 09:53:29 ID:nLgAbwHU0
マツ:「うーん、尿道からコップにって、なんだか学校の健康診断思い出しちゃいますね。」

ササ:「でもさぁ。オサーンの中にはこういうのが好きな人も結構居るんだよね。」

ミツ:「それって、実体験なの?。」

ササ:「一度だけ。中1の時に、ゆきずりのオサーンにおしっこ売ってくれって言われてやっちゃった。
同級生の噂だと、近所に何人かそういうオサーンが居たみたいで、他にも売った娘が居たそうよ。」

ハル:「なるほど、それだ!。副業はこれにしよう。」

マサ:「どうしたの?。」

ハル:「私、まだ地上社会で女として暮らした経験が無いでしょ。売春ってできそうもなくて悩んでいたんです。
今の話から、地上休養時に体を酒造装置にしておしっこバーをやったら良いかなと気がついたんです。」

リエ:「そおねえ。私もどっちかって言うと売春より露出って方だから、感覚はわかるわ。
ただ、腹部器官を酒造に使ってしまうと燃料が生産出来ないから、足の電源確保が課題ね。
それに、口からは原料米や麹しか摂れなくなるから、生命維持がタブレット依存になるわね。
酒も出すだけで、自分は飲めないことになるけど、大丈夫かな?。」

マサ:「廃液はどうするの?。ここに並んでいる胴体はアナルから下水に管が直結でしょ。
動けるようにするには、タンクを前後に分割して廃液を後ろに溜めるようにしなくちゃね。」
153名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 10:04:42 ID:nLgAbwHU0
ハル:「電源と廃液が問題ですか、義肢工場にお母さんの同期が居るから今度相談してみよう。
3年あれば特注パーツで出来るかも知れないし。真理亜様、次の休息時間でアポ取って良いですか。」

真理亜:「地上休養時のメンヘル向上は大事なことだから、研究するのは大いに結構よ。
私の忠告としては、貴女の考えるような風俗営業は経営的に辛いかもしれないって事かな。
全身サイボーグであることを晒す営業形態だから、お客の沢山居る特区では出来ないでしょ。
ササの話のような、特殊嗜好のオサーンが帝国本体だけでどれだけ居るか、市場規模が問題ね。
ただ、本物のおしっこじゃなく酒を出す訳だから、新しい客層が開拓出来る余地もあるわね。
あんまり、コストをかけすぎずにスモールスタートでやってみたら良いんじゃないかしら。」

ハル:「ご忠告ありがとうございます。あくまで副業と割り切って欲張らないようにします。」
154pinksaturn:2006/07/15(土) 10:07:01 ID:nLgAbwHU0
(3ヶ月後 第1工場衛星内・軌道警備部隊司令部)

真理亜:「新兵の4人も慣れてきたので、ICBM迎撃に備えた訓練を本格化します。
以前から東宮様の指示はあったのだけど、できる搭乗員が居なくて遅れていたのよ。
そういう訳で、まず地球重力の影響が強い低軌道で速度同調の訓練を徹底的に行います。
しかし、単に訓練で終わっては退屈だしポイント稼げないと藻前たちのやる気も出ないでしょ。
そこで、訓練標的にデブリを利用し4隻で吸着網を展開してトロールで回収することにします。
幸か不幸か低軌道は昔に軍事衛星が大量に打ち上げられた際のデブリがうようよしてるでしょ。
おまけに、最近も外国どうしの覇権争いで大気圏出たあたりでノーズコーンとかが大量に投棄されているし。
この先、北米連の核を抑えられる兵力を上げるとなるとデブリのリスクを下げておかなきゃならないしね。」

マサ:「ポイント配分ってどうなるんですか?。」

真理亜:「迎撃艇の運動ログから捕獲したデブリの軌道を逆算し、我々の打ち上げに対する支障率を出すの。
さらに重量と標準打ち上げ軌道に対する相対速度から衝突時の想定被害額も計算するのね。
これらを掛け合わせた額が、デブリ回収によって宙軍が得る利益となり、その50%が5人に等分還元されます。
さらに、回収された物体の素材価値相当分は、工場が評価して買い取ってくれ全額臨時ボーナスとなります。
外国の液体ロケットは結構贅沢な素材を使っているから、がんばってね。」

マサ、ハル、ミツ、マツ、ササ:「はーい。大漁期待して下さい。」
155pinksaturn:2006/07/15(土) 10:08:21 ID:nLgAbwHU0
(低軌道に降りた迎撃艇間の通信)

ササ:「80`先にいくつか固まって流れているのがありますね。」

マサ:「ゆっくり接近して金目になりそうか確かめようか。リサイクルしにくい材質のなら落としちゃっても良いし。」

マツ:「破損したロケットから出た液体エンジンの燃焼室周りですね。モリブデンとか高そうな素材入ってますよ。」

マサ:「そんじゃ、4人で一辺1`に吸着網展開、予熱して。私は前に出て進路中心を誘導するからね。
ただ、こっちもぶつからないように避けなきゃいけないんで、細かいぶれは適宜無視してついてきてね。」

ミツ:「網リードワイヤー渡りました。吸着網展開・連結完了。4隅相互の位置関係良いです。シンクロ飛行用意。」

ハル:「マサ特務中尉艇、正方形の中心から法線方向に捉えています。法線長2`。シンクロ入ります。」

マサ:「地球の潮汐力忘れないでね。1`差でも長びくと燃料消費の格差になるから。」

ササ:「秒速1度くらいでローテートして良いですか。」

マサ:「網にテンションかかりすぎるのも嫌だから0.5度にして。対標的速度は10`手前までは秒速0.1`ね。」

ハル:「一番近い標的物体まで10`。マサ艇減速中、秒速0.01`。落下補正、エンジン指向、再弱..。停止。」

マサ:「小物避け始めるから、私とのシンクロ外して。相対速度3m/sでそのままゆっくり寄ってきて。
右上隅の小物こっちで弾くから避けないで良いよ。ラブラブ光線、連射5回...よし追いやった。」

ミツ:「マサ艇、デブリ群の向こうに抜けました。吸着網当たります。」

マツ:「吸着網、ヒーター電流供給停めます。粘着剤硬化まで約20分。」
156pinksaturn:2006/07/15(土) 10:19:40 ID:nLgAbwHU0
ササ:「エンジンらしき物、くっつきました。周囲の小物も殆どかかっています。」

ハル:「そろそろ正方形の辺を縮めて包みにかかろうよ。」

マサ:「間隔0.8`に縮めて。前進方向ちょっとだけ加速。そうそう、いいよ。」

ハル:「網、ちょっと固いですね。5分ほどヒーターかけながら包み込みましょう。」

マサ:「1辺0.5`に縮めたら、帰還軌道に向かうのよ。」


(第1工場衛星・ベイ)

マサ:「初回から大漁だったわね。こりゃ良い。カネになるわ。」

ハル:「金属モリブデン500`ったら、高いですよね。使い捨てで、よくこんな贅沢なエンジン作るよなぁ。」

ミツ:「あんなところで壊れて流れているって事は、たぶん失敗して上昇中に爆発した2段目とかよね。」

マツ:「ということは、打ち上げた国は使い捨てどころか、ペイロードごと丸損かあ。惨めねぇ。」

ササ:「ていうか、こんなのに税金使われた国民は悲惨よねえ。北米連ならまだしも貧乏国だったら尚更。」

マサ:「でも、そのお陰で私らの懐が潤うんだもんね。宙軍兵は、一度やったらやめられないわねえ。」

ハル:「辞められないのは元々ですよ。金が入るし、風俗ボディの打ち合わせに行こうかな。皆さんお疲れ様!。」
157pinksaturn:2006/07/15(土) 10:20:59 ID:nLgAbwHU0
(第1工場衛星・義肢部下肢課)

ハル:「こんにちわ。先日ご相談した件、どうですか?。」

ひとみ:「あら、春男君、じゃなくてハルちゃん、いらっしゃい。」

ハル:「まだ間違えるのは、ひとみ伍長くらいですよ。」

ひとみ:「私って、素体番号で認識した相手を初対面の外見に脳内変換してしまう癖があってね。
障害のせいか、脳構造が特殊なのかしら。勘弁勘弁。」

ハル:「初対面のときの外見っていうことは、私だと赤ん坊に変換されちゃうんですかぁ?。
それじゃあ、風俗ボディの打ち合わせに来たのに、やりづらいですね。」

ひとみ:「そんな心配はしなくて良いわよ。ユーザーが誰であれ設計製造のプロとして対応出来ますから。
それでね、検討してみたのだけど、足電源については、やっぱりニッケル水素だと容量的に苦しいかも。
軍の規則で、サイボーグの無補給連続稼働時間が24時間を割り込む構成は休養中でも禁止なのね。
休養中に侵攻を受けたときに困るでしょ。充電中は動けないのもまずいし、落雷事故とかも怖いしね。
それで、なんとか燃料電池にエタノールを補給する構成にしなきゃいけないのよ。
といっても、足に補給口を付けて直に入れるのも蓋の継ぎ目で見栄えが悪いから風俗向きじゃないでしょ。
唯一、採りうる方法は、醸造の方をアルコール濃いめに生産し、半分抜き取って足に補給する構成ね。
陰部のタンクを製品と廃液に分割すると、製品の収容可能量も半減するからそれで妥当と思うわ。」

ハル:「醸造機と分離器が特注になっちゃうと高くつきそうですね。」

ひとみ:「特注品は分離器と廃液タンク、製品タンクだけで済むわよ。足が標準だからかえって安くなる鴨。
気がかりな点は、廃液タンクが通常型の45%しか容量が取れないことかしら。
おまけに、製品と足でアウトプットを分け合うから、原材料を2倍投入しなくちゃならないでしょ。
製品は頑張って売るとしても、廃液の方でトイレの頻度は標準構成の4倍くらいになってしまうわね。」
158pinksaturn:2006/07/15(土) 10:21:59 ID:nLgAbwHU0
ハル:「排泄が多くなるのは我慢します。それより、分離のせいで製品の味が落ちる方が心配ですが。」

ひとみ:「それは、原材料や菌のブレンドで条件出しするしかないわね。必ずまずくなるとは限らないし。」

ハル:「ここにいる間に実験出来ないのが痛いですね。」

ひとみ:「第1工場のバーが順調なので、近々第2工場と第3工場にもバーが設置されるのよ。
最初は、様子見のために試作品の酒造装置ばかりが設置されるから、似た製造条件のを仕込めるわ。
あとは、貴女達で頑張って味見して売れる味を見つけるようにすると良いわ。」

ハル:「それは助かりますが、そんなコトしちゃって良いんですか?。」

ひとみ:「私も伍長になったので、開発主任として足だけでなく胴体内機器開発の娘にも指図出来るのよ。
その程度の裁量権はあるから大丈夫よ。そのかわり、できた特注品を購入する費用は稼いでおいてね。」

ハル:「うまい具合に、訓練ついでのデブリ回収で臨時ボーナスが入り始めたんです。
3年目には十分な予算が用意出来ると思いますよ。期待して下さい。」

ひとみ:「風俗やるとなると、機器だけでなく、最初は外装とか服にもお金かかるから、頑張ってね。」
159pinksaturn:2006/07/15(土) 10:32:32 ID:nLgAbwHU0
(3ヶ月後 第1工場・ベイ)

マサ:「今日から、ミサイル迎撃の主力兵器となる粘着焼夷弾頭ミサイルの訓練にかかるわよ。」

ササ:「標的はやっぱりデブリですか?。とすると、今度は拾えないんでしょうか?。」

マサ:「標的は正解。でも拾えるわ、っていうか拾えるようにうまく当てる訓練なのね。
粘着焼夷弾頭って、標的にへばりついて硝酸とマグネシウムを反応させデブリ出さずに故障させるでしょ。
つまり、標的の進路が変わるような激突をさせちゃ失敗なの。拾えるような当て方が、正しい当て方になる訳ね。」

ハル:「かなり難しそうですね。」

マサ:「有線誘導で頭部のカメラ映像を見ながら追えるので、相対速度が遅い同航戦なら易しいわね。
逆にすれ違いでは殆ど使い物にならないわ。同航戦に持っていく軌道計画が勝負なのよ。
北米連本土から本国を狙うICBMだと極軌道に近い逆行軌道で追うことになるでしょ。
静止軌道から出て低軌道に降りる間に素早く軌道傾斜角を変換するところが訓練の重点ね。
したがって、標的にするデブリは極軌道系の物を選ぶことになるわ。」

マツ:「それはかなり面倒な操作になりますね。」

マサ:「その代わり、極軌道系のデブリは打ち上げに対する支障率と衝突時の想定被害額が高めでしょ。
うまく拾えれば、ボーナスポイントも大きいわよ。」

ミツ:「なるほど。そりゃあ少々面倒でもやる気が涌きますね。」

マサ:「軌道変換の燃料消費が大きいから残量に十分注意するのよ。危なくなったらすぐ諦めること。
くれぐれも、欲に目が眩んで、大気圏に落ちて蒸発するような事がないようにすること。じゃ、行こうか。」
160pinksaturn:2006/07/15(土) 10:33:55 ID:nLgAbwHU0
(対地高度1100`の極軌道)

ハル:「前方100`の下20`に標的に適するらしき物体発見。追跡始めます。」

ミツ:「レーダー反射からすると金属質です。リサイクルできるかしら。」

マツ:「形からするとノーズコーンですね。ジュラルミンとかでしょう。高価素材ではないですね。」

ササ:「大きさからすると衝突想定被害額は高いんじゃないですか。」

マサ:「一応、金にはなりそうね。取っておこうか。突撃体型、間隔300mで1列縦隊に。
順に後方2`、同高度で追尾体制に入ってすぐ発射訓練、発射後は200m間隔で右に待避よ。」

ハル:「化学燃料残量60%、推進剤残量75%。推定追尾可能時間10分です。」

ミツ:「ちょっと短めですね。吸着網の予熱が間に合わないといけないんで、待避方法を変えましょう。」

マツ:「進路中心から100mずつの上下左右散開でどうですか?。」

ササ:「網は発射訓練終了後すぐに、投げ合わせ合体で良いですよね。」

マサ:「禿同。任せるわ。私が追い越したら、10秒後に投げ合わせやって。」

ハル:「距離5`減速します。...2`、同航。撃ちます。有線有視界誘導中。1`、リードブレーキ作動。
吸着!。焼きます。リード溶断確認、巻き取りよし。上に待避します、次どうぞ。」

ミツ:「撃ちます。...吸着。点火。...下に避けます。次どうぞ。」

マツ:「...吸着、点火。...左に避けます。次どうぞ。」

ササ:「発射...あら、刺さっちゃった。もう溶けてますが点火。...右に避けますた。」
161pinksaturn:2006/07/15(土) 10:34:52 ID:nLgAbwHU0
マサ:「融点低いわねえ。これなら網の予熱は要らないわ。合わせたらすぐついてきて。」

ハル、ミツ、マツ、ササ:「投網装置起動、辺磁石通電、...連結しました。前進します。」

マサ:「間近に来たわ。まだ赤熱状態ね。これならくっつくからすぐ来て。」

ハル:「網接触、粘着材適当に溶けてますね。時間無いので、そーっと加速しましょう。」

マサ:「イオンエンジンの最弱でやって、包んでないとばらける心配あるから。
みんな、吸着焼夷弾頭の当て方はさっきの通りで良かったわよ。」

ミツ:「デブリの熱で、網適当にゆるんでますね。少し、すぼめてみましょう。」

マサ:「どれ、ん、それだけすぼめればばらけないわね。全員上昇、軌道変換開始。」


(静止軌道第1工場衛星・ベイ)

ハル:「ジュラルミンのコーンじゃあんまりカネにならないな。でも、吸着焼夷弾頭は面白かったね。」

ササ:「私の番の時は溶けてて刺さっちゃったから、手応えが無かったわ。次は順番変えてね。」

マサ:「司令部から想定衝突被害額出たわ。でかいんで、当たったらロケット全損だって。けっこう高いよ。」

ミツ:「そうですか。資源の方は1`100Pにしかならなかったんでまさにゴミでしたけど。」

マツ:「打ち上げると高くつくけど、ここで作って使うなら鉄で間に合うからアルミってさほど使わないもんね。
鍋や釜は要らないからなあ。ま、リサイクルしづらい複合材とかよりはましかぁ。」
162pinksaturn:2006/07/15(土) 10:45:44 ID:nLgAbwHU0
(2ヶ月後、軌道警備部隊司令部)

真理亜:「ここが攻撃された場合のリスク分散をはかるため、明日から第3工場に分駐することになったわ。
第1の方は、工場攻撃に対処するため、応急に下手なのを集めて高軌道を数でカバーする拠点にするの。
それで、マサを小隊長にハル、ミツ、マツ、ササで第3の方に駐留することにしたから、すぐに移動して。」

マサ:「えええぇぇぇっ。真理亜様と泣き別れですかぁ。代わりにリエに逝って貰いましょうよぉ。」

真理亜:「前にも言ったでしょ。藻前は大部隊より少数精鋭の指揮向きだって。
大体ねぇ、泣き別れったって、第3工場にはゴンドラも繋がってるし、迎撃艇なら5分で行けるでしょうが。」

マサ:「あっちは、娯楽施設も少なくて寂しいんですよねぇ。」

真理亜:「その心配はないわよ。バーを作ることになっていて、内装は藻前の趣味でやることになったからね。
それから、空きスペースが多いので、ある程度好きな施設を作ってよい事になっているわよ。」

マサ:「そうですか。農産の割合を大きく取るってことになってましたね。お花畑をやって良いですか。」

真理亜:「全体で50m幅の娯楽施設枠を独占しすぎない規模なら構わないけど、種はどうするの?。」

マサ:「ネット通販で買って、どうせ軽い物だから、私用貨物枠で上げてもらおうかと。」

真理亜:「そぉ。うまく咲いたら、ちょくちょく視察に行ってあげるから頑張りなさい。」
163pinksaturn:2006/07/15(土) 10:47:27 ID:nLgAbwHU0
(静止軌道第3工場衛星・酒造区画 別名:おしっこバー3号店)

ハル:「リモートリンクうまくいくかな...うん、原料粉砕粒度0.5_、槽内温度33.5度...」

マサ:「何やってるの?。」

ハル:「実は、サイボーグパーツ開発にいる、お母さんの同期に頼んで装置の管理権限を貰ったんです。」

マサ:「酒造の管理?。なんでまた。変わった趣味ねえ。まあ、へまして不味くしなけりゃ構わぬけど。」

ハル:「例の風俗のために、こいつらはアルコール濃いめに生産して半分抜く構成にして貰ったんです。
これをうまく設定して、味が良くできれば、動ける体で売り物になる酒造が実現出来るんですよ。
自分の体に組み込むときは、完全手動式にして気合いで造るようにするつもりで、練習するんです。」

マサ:「貴女もこだわるわねえ。副業なんか売春の方が楽で良いのに。抜いて余ったエタノールはどうするの?。」

ハル:「迎撃艇の燃料に使えるので始末に困ることはないです。」

マサ:「ふーん、なるほど。ところでさあ、味は貴女に任せるとして、ここを改装して雰囲気良くしてみない?。」

ハル:「良いですねえ。風俗店設計の勉強にもなるので是非手伝わせて下さい。」

マサ:「第1で雰囲気がいまいちだった原因の一つが、酒造装置が全裸ってところなのよね。」

ハル:「そうですよねえ。モロ出しより、ゴスロリ風の衣装でも付けた方が高級感出ますよ。」

マサ:「それだ。そうしよう。するとカウンターは石造りか、黒革張りが良いかしらね。」

ハル:「衣装はロングだと注ぎづらいから、陰部が出るよう超ミニにする必要がありますね。
革はブタしか手に入らないから、隕石を切り出してきて石造りにする方がやりやすいですよ。」
164pinksaturn:2006/07/15(土) 10:48:02 ID:nLgAbwHU0
マサ:「なるほど、良いわね。着飽きたゴスロリいっぱい持ってるから改造してみるわ。
問題は石ね。工場に頼むと小隊の娯楽予算食いつぶすから、なんとかタダにできないかな。」

ハル:「射撃訓練でボタ山を標的にする名目で、うまくエキシマを撃ち込めば切り出せませんか?。」

マサ:「5隻で繰り返し撃てばいけるかも。よし、明日の訓練はそれにしよう。」


(1ヶ月後 第3工場衛星内・お花畑)

マサ:「成長促進型遺伝子組み換え朝顔とはいうものの、ここは熱帯並みだから咲くの早いなあ。」

ミツ:「伸びるにつれて重力が低下するからますます伸びちゃってジャックと豆の木みたいですね。」

マツ:「よじ登れるような固い茎の朝顔ってできないのかな。スカイフックに使えるのに。」

ササ:「このペースだと毎月種が取れて増え過ぎちゃいますね。」

真理亜:「やりすぎると、炭酸ガスが不足して農産に響くわね。植えるペース調整しなさい。」

マサ:「確かにドライアイス系の隕石がときどき入ってこないときついですね。」

ハル:「酒造を増やせば炭酸ガスが適当に増加しますよ。足りなけりゃ、メタンを燃やしても良いですし。」

マサ:「そうか。じゃ、安心だね。もっと作って、生花をベイ内売店に出荷してみるかな。」

真理亜:「まあ、いいけど任務期間中なんだから、アルバイトはほどほどにするのよ。
休憩時間に休憩しないで、余計な事ばかりした挙げ句に大気圏落下事故なんて絶対無しよ。」

マサ:「花を愛でることで心が落ち着いて集中力高まるってのもありますから。一応、気を付けます。」
165pinksaturn:2006/07/15(土) 13:24:27 ID:nLgAbwHU0
(3ヶ月後 地上基地、大会議室)

朝子10世:「皆さん、全面分解検査ご苦労様でした。冥王星探査部隊参加者および補充要員を発表します。
念のため言っておきますが、参加者選定は長時間連続高加速への耐性という医学的要因が最優先です。
また、司令部、航行、探査、運用、機関の各分野に必要最低限の人数を配置するという制約があります。
したがって、選に漏れた者が参加者より能力的に劣るという訳ではありません。
本計画のバックアップや本計画遂行後の国際情勢変化に対処するために多くの重要任務が存在します。
選に漏れた者は、これらの各種重要任務に就いてもらいますので、落胆せず新たな任務に邁進して下さい。
私自身も評価対象ですので、公正を期するため、発表は宙軍研究所脳脊髄医学研究部長にお願いします。
それでは、漣侯始めて下さい。」

漣大佐(貴族・赤の公家所属):「発表します。
司令部員は朝子10世殿下、翡翠侯、瑪瑙侯、水月侯、タラ特務少佐、同補充要員は恵子殿下、皐月侯となりました。
航行部員は雀奴侯、冬子特務少尉、理美3等兵、同補充要員は綾子殿下、美鈴特務少尉となりました。
探査部員はリホ特務中尉、エリ特務中尉、マオ特務少尉、ミキ特務少尉、寿那緒2等兵、香奈子2等兵、
同補充要員は真奈美侯、文子1等兵となりました。運用部員は...(略)」

朝子10世:「検査結果の解析、ご苦労様でした。発表は以上です。
参加者および補充要員は、これよりスケジューラーの指示に従って搭乗、第1工場衛星に集結して下さい。
なお、補充要員は出発直前まで”みくら”艦内に留まり、参加者が欠けた場合にそのまま充当されます。
出発に際し離艦するときは任務変更または休養機関入りの指示がその時点で宙軍省から発令されます。
補充要員にも漏れた人は、間もなく宙軍省より次期任務もしくは休養期間入りの指示があります。では解散。」
166pinksaturn:2006/07/15(土) 13:25:21 ID:nLgAbwHU0
(軌道警備部隊司令部)

真理亜:「わざわざ集まってもらったのは、冥王星探査計画に伴う支援任務に、極秘の部分があるからなの。
ネット越しの打ち合わせがちょっと憚られるものでね。」

マサ:「こっちに呼んで頂けるのは嬉しいですよ。はい、お花どうぞ。新種の3色チューリップです。」

真理亜:「御前会議の方針は、我々の有人宇宙活動は冥王星到達の公表までは秘密にするとのことなのね。
北米連がぶちキレる心配があるから、軌道警備部隊増強や本国防空施設整備に、2年ほど欲しいってね。
ところが、発進に際して固体燃料ブースターを使うでしょ。イオンエンジンと違って強い光が出るわよね。
これを地上から見られたら、従来の資源収集活動と桁違いの遠距離作戦であることが判るわよね。
それで、ブースターの点火は月の陰でやることのなったのよ。」

リエ:「外国の月面基地は月の表にしか無いですけど、北米連の月周回監視衛星が回ってますよね。」

真理亜:「そういうこと。したがって、監視衛星にはタイミング良く故障してもらう必要があるって訳ね。」

マサ:「あの月見の邪魔になる衛星にはいつか悪戯してやろうと思って方法を考えていたんです。
あれは、電源が太陽電池でしょ。エキシマを加減して当てれば外見を変えずに壊せるかと思います。」

リエ:「監視衛星のカメラは全天型でしょ。迎撃艇が写って破壊活動がばれちゃうじゃないの。」

マサ:「隕石に塗ったようなステルス材で迎撃艇を塗装すれば3`先より遠くからは見えにくくなりますよ。
エキシマはパワー落として当てるし、真空中だと散乱光が無いからビームは写らないですよ。」

真理亜:「そうねえ。じゃ、マサ小隊でやって貰おうか。黒塗り迎撃艇はこっちで準備するから明後日取りに来てね。
それから、今週は”みくら”の要員が続々と上がってくるでしょ。念のため、コース沿いのデブリ回収しておいて。」
167pinksaturn:2006/07/15(土) 13:26:11 ID:nLgAbwHU0
(低軌道 デブリ回収中)

マサ:「よーし、ここらは片づいたね。30分後にM55が上がってくるから進路前方を調べながら帰ろうか。」

ササ:「そうですね。化学燃料残り53%ですから、何か見つけたとしても少しは手が打てるし。」

ミツ:「...高度10000`。ここらはデブリも少ないですね。ん、と思ったらありゃ何じゃ。真上30`!。」

マツ:「大型ブースターの燃えがらでしょう。事故起こした北米連の火星探査船が発進時に捨てたやつでは?。」

ハル:「どかすのは無理ですよね。上昇をイオンロケットだけでゆっくりやってM55を待ちましょう。
この高度ならアポジモーターで2段目牽引してるから、向こうも遅いんでランデブーは容易ですよ。
近距離通信で警告して、そのまま同航で回避コースへ誘導するのが確実でしょう。」

マサ:「(そういえば、あの船、救援は間に合ったものの漂流中のケンカで2人氏んだんだっけ。
調査結果も事故って発表されてるのにいまさら、祟るんじゃないわよ。)...それしかないわね。
M55はもう発進しちゃってるし、遠距離だと通信が不確実なうえに外国に漏れるし。」

ハル:「...来ましたね。呼び出します。上昇中のM55へ。こちら軌道警備第3迎撃艇小隊。
進路上に大型デブリ有り。誘導する。指揮官マサ艇を目標に続航されたし。繰り返す...
応答です。あ、この素体番号は、お母さん!。この便に乗ってるって事は選ばれたんだ。」

冬子:「ハルじゃないの。デブリ警戒ありがと。マサさんの艇についていくわね。」

ハル:「お母さん、冥王星探検隊当選おめでとう。」

冬子:「ありがと。だけど私語してていいの?。せっかく見つけたデブリに当たったら大バカよ。」

ハル:「気を付けます。じゃ、ベイでね。」

(マサたちが花とか酒とか造っている合間に、冥王星探検隊の準備が整ったようです。あ、ちゃんと訓練もしてたっけ?、おバカなこと書いてるうちに忘れてました。
次回予告:(22)目潰し)
168pinksaturn:2006/07/15(土) 17:59:27 ID:MlZ0hxBv0
投下中に雲行きが怪しくなってきて雷が...停電でディスク壊れると痛いんで慌てました。

>>9
分類ですが、”オプションパーツ”の登場人物は立場が色々なので難しいですね。
・「サイボーグになることが悲しみか喜びか」
皇族や貴族は元々サイボーグになるために生まれてくる立場なので特別な感情は無いが、何らかの事故でサイボーグになれずに終わったら悲しい。
シビリアン徴兵は、出世や待遇の良さを喜ぶ者、嫌々従う者など混在。主な人物は、ポジティブな者を選んで登場させる。
特例志願兵は、寝たきりなど高度障害から逃れるための選択をした者なので、たいてい喜び。
・「なった後は受け入れるか嫌悪するか」
基本的に、受け入れています。但し、一部のパーツに対する不満は言っています。
・「特権階級か奴隷状態か」
皇族や貴族は特権階級。
シビリアン徴兵は日本国憲法が禁ずる奴隷的苦役に該当するが待遇はかなり良い。
特例志願兵は強制改造ではないが、特殊仕様差額自己負担分の債務を負うため、人身売買による奴隷の要素もある。
「生身の部分はどの程度残っているか」
脳と脊髄、造血組織。地上休養時は腸と肝臓の一部も搭載可能。一部の者は脊髄除去。
・「自我の消去」
技術開発は行っているが、宙軍兵には任務の性格上適用しない政策を採る。
・「手術シーン」
あり、(19)でようやく実現。
・「社会的認知」
帝国内に限りあり、国際的には否。
・「女性型の必然性」
技術的制約らしいが、根拠は国家機密のため一般に知られていない。
・「能力・強度」
最も強い構成で、力は常人の2倍程度。武器組み込みは原則禁止、貴族の特権。
なお、催眠ランプや電気鞭頭髪は武器と見なされないため自由に搭載可能。
宇宙空間では飛行能力(大気圏飛行不可)。短時間なら5G程度の加速圧に耐える。
・「一人称か三人称か他人視点(このスレの場合は主人公がサイボーグ少女自身じゃない)」
構成としては、会話の盗み聞き、監視カメラ視点。しかし、発言を見れば一人称?。
169名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 10:52:44 ID:2W+BMMjh0
>>143
公式サイトや解説サイト見たら面白そうだった
ロックマンは濫造気味だったけど買ってみようかなあ
ロックマン→エックス→ゼクス見たいな流れだろうか(エクゼとかダッシュは知らない)
つまりロボットは人間の道具→対立→対等となる流れになってるんですね
主人公は見た目人間ぽいからサイボーグなのかな?

分類は定着しつつありますね自分も13でアイディア出したんで少しうれしいです
170名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 11:09:08 ID:2W+BMMjh0
169の続き
少女主人公もいるので面白そう
171名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 23:56:17 ID:meSYpM7C0
ほしゅ
172名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 01:15:43 ID:CndjMqAm0
ときわ御大の新作買って読んだ人居る?
誰かコピって此処にうpしてくれると有り難いんだが・・・・
173名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 13:11:01 ID:hxS0H1B30
安価で販売されてるんだし、手続きだって簡単だから買うべし。
つか発表した直後に、いきなり転載要求するのはどうかと…
(勿論、時間がたったらいいってことじゃねーぞ)
174名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 17:46:04 ID:ehe6qzVa0
>>172
アレ、特殊な形式だから、アップ無理
175名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 21:49:12 ID:AbbcIngt0
電子書籍ならひたすら手動キャプチャ(ry
176名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 02:01:51 ID:jw8tVwYC0
下過ぎるのが心配なので一旦あげ
177名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 22:33:14 ID:3xhBbxM00
こんなサイボーグあったらいいな〜
http://beauty.geocities.jp/mannefeti/
いろんなプレイしてくれそう・・・
178名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 18:34:53 ID:We+9Yg6e0
>>177
サイボーグと言うよりロボットでは?
人間を改造させるもしくは本人が望んでそうなる場合もありますが
そっちの商売の人がメカフェチのために改造するとか
179名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 22:04:50 ID:oQGTNzpk0
3の444氏のサイトは鯖落ち?
180名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 23:30:24 ID:OSrHyqJX0
こんなの見つけたのだが・・・
ttp://www.keddy.gr.jp/~fenrir/n/tbookmarkp.cgi?w=a&m=b&l=r
181名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 04:03:56 ID:WSLzLClO0
>>180
あんまサイボーグ主体ってのはないねえ…
182pinksaturn:2006/07/23(日) 11:24:58 ID:xwuH9soT0
(オプションパーツの続きです。)

−−(22)目潰し−−

(静止軌道第1工場衛星・ベイ)

真理亜:「殿下、いよいよ決行ですね。」

朝子10世:「真理亜侯、デブリ除去の件よくやってくれているわね。あと、発進時の支援作戦もよろしく。
”みくら”が冥王星に向かうことはまだ知られちゃ困るから、月の周回監視衛星は必ず潰してもらわないと。」

真理亜:「お任せ下さい。自然の故障にしか見えないように、巧くやる準備をしてあります。
予定通り、明後日の10時で良いですね?。」

朝子10世:「乗員の状態もいいし、消耗品や搭載艇の積み込みも順調なので予定通り出航します。
遅れると月の位置が合わなくなるので逃すわけにいきませんからね。では、頼みましたよ。」

ハル:「あ、お母さん、ミキさん、マオさんもお久しぶりです。冥王星行きがんばって下さい。」

マオ:「うまくいったら、カロンの氷の上からスケートの中継映像送る予定だから期待していてね。」

ハル:「氷が冷たすぎて滑れなかったりしませんか?。」

ミキ:「全く溶けないとスピード出ないんで、特製の超音波ブレード用意してきたのよ。やってみないと判らないところもあるけどね。
何しろ極低温なんで、降下艇の足の裏なんかも張り付かないための工夫が通用するか降りてみないとね。」

ハル:「あれが2式降下艇ですか、でかくて、ちょっと扱いにくそうですね。」

マオ:「凍り付かないよう余分な電力を出すために、イオンエンジンが足4本プラス尻尾の5基と多くなっているからね。
やっぱり、4足歩行の難しさはあるかな。操縦時の感覚としてはゾウになった気分ね。」

冬子:「ひとみから聞いたわよ。ハル、新しい風俗の研究やっているんだってね。開店の頃、私は冥王星だから応援できなくて残念ねえ。」
183pinksaturn:2006/07/23(日) 11:26:09 ID:xwuH9soT0
ハル:「え、聞いちゃったの?。恥ずかしいからお母さんには黙っていようと思ったのに。」

冬子:「恥ずかしがる必要は無いわよ。私は障害で性感がないから出来ないけど、健康なサイボーグが休養期に風俗やるのは普通でしょ。
そういうこともきちんとやって、初めて一人前のサイボーグになれるんだから、頑張りなさい。」


(翌々日)

(”みくら”艦橋)

朝子10世:「出航します。全員重力変化注意。出航後すぐ連続加速状態に入り、月の裏側でブースター点火、最大負荷になります。
ブースター使用終了後も、そのままメインエンジングリッドが耐用限度となるまでの約40日間最大加速を続けます。
その間、重力区画は使えません。また、ずっと同じ姿勢を続けていると脳や脊髄にダメージを受ける恐れがあります。
体位の入れ替えに気を配りつつ、ひたすら耐え抜いて下さい。それでは、全員の健闘を祈ります。
雀奴侯、出航操作頼むわよ。慣れているからいまさらだけど、重いので気をつけてね。」

主任操舵員・雀奴大尉(青の公家所属):「はい。ベイ内減圧中、0.1気圧。浮上始めます。下部バーニア点火。推力50%。
あひあひ。係留ポール抜けるの遅いー。...まだ粘ってる。うっうっうっ、抜けた。下部バーニア停止、横流れ修正推力5%。
ヴァギナルハッチ閉鎖、ベイ内気圧ゼロ。ゲートオープン、管制より後進許可。後進バーニア推力50%。重っ!。上部噴射5%。
...ふう、やっと出た。後進100%。...位置第1工場南1`。停止。方向転換開始。目標、月の右1度。合いました。」

朝子10世:「メインエンジン動かして、予定の進路、タイミングに合わせて。月の裏に入ったら耐加速操舵員に交代。」

雀奴:「メインエンジン起動。原子炉出力10%...加速重いけど異常はないですね。出力上げます。全開まで30秒。」
184pinksaturn:2006/07/23(日) 11:28:25 ID:xwuH9soT0
(月周回軌道付近)

マサ:「やっと着いた。やっぱ、光が出せないからって、イオンエンジンだけだと遅いわねえ。」

ハル:「第1工場衛星の部隊司令より暗号パルス。”みくら”定時に出航しました。」

ササ:「北米連の監視衛星、位置確認できました。あと150`です。」

ミツ:「監視衛星の電波を捉えました。暗号化していないですね。映像再生できそうです。」

マツ:「正面にいるはずだけど、我々の姿は映っていませんね。」

マサ:「エキシマビームの出力を20%にして。各自分散して太陽電池に照射。ラブラブ光線!10連射...」

ハル:「プチプチ光線!10連射...」

ササ:「ワレメービーム!10連射...」

ミツ:「オナニービーム!10連射...」

マツ:「マンコービーム!10連射...映像乱れ始めました...切れました。」

マサ:「念のためもう1巡打ち込んで置くわよ。ラブラブ光線!...」
185pinksaturn:2006/07/23(日) 11:51:22 ID:xwuH9soT0
(北米連月面基地・モニター室)

当直員:「あー暇だ暇だ。...ん、映像切れてるぞ。前回打ち上げから、2年か。ずいぶん早く壊れたな。資材部...」

資材部員:「朝から珍しいなあ。どうしたんだよ。」

当直員:「監視衛星が1基いかれたようだ。予備機の在庫有ったよな?。」

資材部員:「完成品は無いなあ。組立に3時間かかるが良いか?。」

当直員:「周期の半分が見えないだけで待てば見えるからなあ。良いんじゃねえの。怪しいものは映ってなかったぜ。
ここしばらくは、満漢の動きが無かったし。こけし船も近くを通らないぜ。」

資材部員:「そんじゃ、出来たら打ち上げに回しておくぜ。」


(”みくら”艦橋)

朝子10世:「迎撃艇からの暗号パルスね。”メガツブレタ、イテエヨオ”かよしよし。」

雀奴:「10分で月の陰に入ります。冬子、交代用意!。理美、バックアップ体制に。」

朝子10世:「もう一度、軌道確認。ブースター点火のカウントダウン開始。」
186pinksaturn:2006/07/23(日) 11:52:34 ID:xwuH9soT0
副長・翡翠中佐(貴族、緑の公家所属):「軌道予定通りです。現在速度対地球で秒速12.5`。」

タラ:「カウントダウン開始します。540秒、539,538...」

冬子:「リモートボディリンク接続しました。視界良好。運動操作、各部感触よし。」

理美:「リモートボディリンク、パッシブ接続しました。感覚来てます。」

朝子10世:「各部署、耐G体勢再確認!。いよいよ始まるわよ。」

タラ:「...120、操舵士に点火権限付与しました。カウント継続...」

翡翠:「進路、船体とも方向良いです。」

冬子「...3,2,1,点火!。」

タラ:「燃焼良好。8本とも計画出力出ている模様です。」

翡翠:「振動は酷いですが、進路ぶれは無いです。出力バランス良いようです。」

朝子10世:「後はひたすら忍の一字ね。みんな体調に気を付けるのよ。」

翡翠:「第3宇宙速度到達しました。これで故障したら太陽系外にポイですね。」

朝子10世:「といって生きてるうちに飛び出せる速度でもないけどね。
たかが冥王星でこの苦労じゃあ、我々のエンジン技術もまだまだ未熟だわ。」

冬子:「...奇数番ブースター燃えきりました。投棄します。」

朝子10世:「とりあえず第1関門突破ね。体調のおかしい者は居ないわね?。」
187pinksaturn:2006/07/23(日) 11:53:52 ID:xwuH9soT0
(月周回軌道)

ササ:「”みくら”見えました。進路予定通りですね。」

ミツ:「あ、ブースター点火しましたね。」

マツ:「まさに巨大ロケット花火ですね。綺麗だわ。」

マサ:「これを見れるのは私らだけね。もったいない希ガス。」

ハル:「見る見る小さくなって...行っちゃった。お母さん行ってらっしゃい。おみやげ待ってます。」


(その日の夕方、第1工場衛星内・機動警備部隊司令部)

真理亜:「ご苦労さん。北米連になんの動きもないようだから、首尾よく行ったわね。」

マサ:「黒塗り迎撃艇はどうします?。あんなに見えにくいんじゃ、普段使うには危ないですよ。」

真理亜:「万一、存在が外部に知れたらまずいから、整備に出して元に戻すわ。必要ならすぐまた塗れるしね。」

マサ:「じゃあ、あの5隻はここに置いて、別ので帰ります。」
188pinksaturn:2006/07/23(日) 12:05:31 ID:xwuH9soT0
(40日後、”みくら”艦橋)

航宙長・瑪瑙少佐:「加速度伸びないですね。推定損失率12%に達しました、グリッド限界でしょう。」

朝子10世:「そうね。そろそろ全員ノーマル重力で休ませないといけないし。メインエンジン停止して。」

理美:「電離装置減圧、出力低下、70%、50%、...グリッド通電停止、加速ゼロ。原子炉アイドル。」

朝子10世:「機関部員、探査部員はグリッド交換作業準備よ。超高速だから万一の塵衝突に注意、艦の陰を出ないこと。
理美、180度回頭、資材と作業員が出たら再び180度回頭ね、安全のためバーニア無しでジャイロだけでやるのよ。」

理美:「180度回頭開始...出来ました。機関長からエアロック開口要求、口開けて舌出します。」


(ヘッドフィギュア・メインエアロック)

機関長:「機関部員は全員重機の荷台に掴まって!。いいわね。曳き出し始めて!。」

マオ:「交換資材曳き出し始めます。よいしょっと。」

ミキ:「ロープ、ピンと張ったよ、最弱で逆進、テンションかけてついていくね。」

機関長:「出たね。口閉じて180度回頭させて!。重機、ゆっくり90度回って、ロープを艦の正面にして。」

マオ:「ここで良いですか?。」

機関長:「いいよ。終わるまでこのまま位置保って。艦橋、念のため原子炉完全に落とさせて。...できたわね。
機関部員、割り当てたグリッドにかかって。古いほう、研いだ包丁みたいになってるから、外すとき怪我しないでよ。」
189pinksaturn:2006/07/23(日) 12:06:35 ID:xwuH9soT0
機関員:「さすがにこれだけ酷使すると薄くなってますね。縁のロック外れました。回収ロープ掛けます。」

機関長:「6つとも回収ロープかかった?。そお。重機、回収ロープ1mほど下げて、...そこで良いよ。
今度は新品の方のロープ、1m寄せて。...よし、取り付け始めて。金具懸かるまでロープ取らないのよ。」

機関員:「填りました。ロック掛けます。」

機関長:「念のため私が点検に回るからロープ外すの待って。まず、1番グリッド、いいよ...終わったね。ロープ抜いて。
みんな、重機の荷台に引き揚げて。重機、2m後退して旋回。艦橋、グリッド交換終了、原子炉回して良いよ、回頭お願い。」

マオ:「こっちも、90度回ります。」

ミキ:「エアロック来ました。入ります。」


(艦橋)

理美:「舌引っ込めました。口閉じます。180度回頭します。」

朝子10世:「慣らしを兼ねて加速度0.1Gにして。今から72時間、通常重力体勢で航行します。
全員、この間に体のセルフ定期検査を済ませるように。運用部員は豚の検査と原液補充もお願いね。
当直以外のものは極力体を休めること。48時間後より全力加速を再開し20日間継続します。以上。」

理美:「原子炉出力7%、加速度0.1Gになりました。固定します。重力区画床面調整どうぞ。」

瑪瑙:「エンジン効率回復しましたね。交換したグリッドに問題はないようです。
体勢が楽なときに精密天測で位置・速度誤差を補正して、進路計画を微調整しておきます。」

朝子10世:「今も超高速なんだから、大変だけど当直は前方遠距離監視に気をつけてね。」
190pinksaturn:2006/07/23(日) 12:07:38 ID:xwuH9soT0
(本国、宮殿)

皇太子:「”みくら”からグリッド交換成功の通信が入りました。位置・速度天測結果も添付されています。
受信時のドップラーシフトからも速度を検証しましたが、この調子なら計画通り冥王星に着けそうです。」

皇帝:「そうですか。となると、こちらの体勢造りも一層進めないとね。」

皇太子:「工場衛星の酒造事業が順調に立ち上がっておりますので、当面の財政は予想より良くなっています。ただ...」

皇帝:「何か問題が?。」

皇太子:「消費者の評判はいいのですが、原料が米ですから消費地が特区や東アジアに偏っております。
一番取り引きしたい相手である産油国は元々宗教的な禁酒国が多い上に、そうでない国でも好みが違いまして。」

皇帝:「他の原料作物を上に移植できないものかしら。」

皇太子:「水耕が効く作物で米以外となると、慈姑とか蓮根などマイナーで炭素固定効率の悪いものばかりでして。
洋酒を作りたいので葡萄の遺伝子改造も試みているのですが、まだ水耕化に成功しておりません。」

皇帝:「当面は東アジアで稼いで貴金属に替えておくしか無さそうね。何か産油国の欲しい物は出来ないかな。」

皇太子:「上で一番余っているものは鉄でして。ただ、降ろすコストの割に素材として輸出しても儲かりません。
船舶や鉄道車両のような付加価値製品で出さないと経済効果はわずかです。
鉄道車両はアルミやステンレスが主流になっているので、大口消費先は船舶ぐらいですね。
実は、特区海軍の練習艦に採用されているせいで風力太陽光併用電気推進式警備艦に興味を示す国は多いのです。
産油国は地理的条件から海洋汚染に敏感な国も多いので。でも、武器はダメですからね。」

皇帝:「武装を外して漁業監視船と言う品目なら憲法に抵触しないわね。漁業監視船ならソナーは残せるし。
直接武器を売るのは嫌だけど、産油国が北米連の恫喝に怯えるのも不都合だからその程度の抜け道は良いわよ。」

皇太子:「そうですか。では、地軍大臣と特区大統領に面会して話を進めてみます。」
191pinksaturn:2006/07/23(日) 12:21:14 ID:xwuH9soT0
(経済特区大統領府)

守衛:「もしもしお嬢さん、入館証はお持ちですか。」

皇太子:「あら、新顔さんね。はいこれ。」

守衛:「自然保護地区の方ですか。アポ確認しました。大統領のお知り合いですか?。」

皇太子:「まあ、そのような者です。ここには良く来ますので、お見知りおきを。」

守衛:「執務室はあちらです。(何であんな小娘がよく大統領のところへ?。隠し子か愛人か?。)」

大統領:「皇太子殿下、いつもわざわざお越し頂き済みません。」

皇太子:「あなたにこちらへ来ていただくのは、手続きやら特区住民の目やら何かと厄介ですからね。
今日は、先日情報を頂いた風力太陽光併用電気推進式警備艦の引き合いのことで折り入って話がありまして。」

大統領:「憲法の規制がありますから難しいと思っていたのですが、陛下は特例をお認めになるのですか?。」

皇太子:「特例というわけではありません。要するにユーザーがどうしても欲しいのは機関と船体でしょう。
別に武装が我々と同じものに出来る必要は無いですよね。そもそも真の威力も知らないわけだし。」

大統領:「仰るとおりです。武装を外した艦を買ってあとはユーザーで自己解決と言うことで良いのです。
ただ、完全な民間船仕様になっていると改造が大変なので、武装の撤去跡に手を加えないで欲しいわけです。
今までの例ですと、たとえ武器を外してもそのまま出すのは許されなかったですよね。」

皇太子:「事情が変わってきたので、産油国向けに限っては出しても良いということになったのです。
既にお伝えしたように再来年前半に探検艦が冥王星に到達する予定です。
これを公表することは、我々の有人宙活動や帝国の実体を世界に知らせることを意味します。
北米連はじめ諸大国がどのような反応をするか予測が難しいので最悪のことに備えるのです。
産油国が大国の言いなりにならないよう、間接的にに自衛力の手助けをするのもその一環です。
それで、漁業監視船名目でソナー付きのまま出すぐらいは良いということになりました。」
192pinksaturn:2006/07/23(日) 12:22:29 ID:xwuH9soT0
大統領:「なるほど。貿易を担う私どもとしては、産油国は上客なのでそれは有り難いですね。
再来年ですか。正直なところ私どもの力量で国連外交を全部引き受けるのは辛かったので、嬉しいですね。
ただ、そうなると私どもが貿易を独占できなくなるのですかね。経済的には厳しいですよ。」

皇太子:「我々の存在を公表しても、技術流出の規制は変わりません。
外国との接触を特区経由に制限する政策は維持する予定ですから、そちらの地位は安泰です。
まあ、北米連あたりが直接攻撃のような無茶をやってくれば貿易そのものに響きますが。」

大統領:「そうならないのを祈るばかりですが、あちらは1人1票制ですからね。
うちのように納税額比例選挙なら、衆愚の圧力で無茶な政策が決まる心配はないのに。
それでは、例の船の件よろしくお願いします。」


(翌年、第3工場衛星内・軌道警備部隊分駐基地)

みどり:「お姉ちゃん、お久しぶりー。私もこちらに配属されたので今日からよろしくね。」

ハル:「軌道計算が苦手だったお前が迎撃艇とは、宙軍もよほど人がいないって訳かな。」

マサ:「そんなズレた観点で、意地悪言っても有効な新兵虐めにならないわよ。
計算自体は体内CPUが代行するんだから、させるタイミングを選ぶ反射神経が問題でしょ。
ハルって、反射神経はみどりに負けるんじゃなかったっけ?。」

みどり:「さすが小隊長殿はよくおわかりで。」

マサ:「使える搭乗員が十分揃わないと休養入りさせて貰えないんで、あてにしてるからね。」

みどり:「でも新兵ばかり4人じゃ、今すぐってわけにはいかないですね。」
193pinksaturn:2006/07/23(日) 12:23:04 ID:xwuH9soT0
マサ:「私があと1年半で宇宙滞在制限期間にかかっちゃうし、ハルたちももう2年経ってるからね。
貴女達には今年中に単独で低軌道の迎撃ができるようになって貰わないときついのよ。
第2小隊と合わせても最低16隻いないと非常警戒態勢時のローテーション組めないでしょ。
今は、使える搭乗員が9人ずつしかいないから休養スケジュールが立てられなくて困っているの。」

みどり:「指揮官無しで出ることもあるんですか?。」

マサ:「訓練では必ずついているけど、今の人数じゃ実戦ローテーションでは付けられない組が出るわ。
第1小隊は部隊司令直卒になっていて、人数は多いけど高軌道限定なのよ。
司令は工場防衛全般も指揮するから、遠出ができないんで小隊員も素質のない子で員数合わせているの。
だから、もし今すぐ実戦になったら、ローテーションの4組中2組は小隊長無しで出ることになるのよ。
ここと第2小隊は、素質重視で最近3年に新規配属された娘ばかりだから、まだ下士官がいないの。
だから、基本的に全員が単独行動可能になるのを目標にびしびし鍛えているのよ。」

みどり:「私ら2等兵まで独断でミサイルを捕まえるんですか。厳しいですね。
ICBMなら飛んでくる方向が決まっているけど、SLBMだと何処から撃ってくるか判らないでしょ。」

ハル:「SLBMについては居場所を地軍が把握して司令部で貰ったデータから指示を出すの。
とにかくICBMを捕まえるための軌道変換が楽にこなせれば、後はその応用だから。
そのため、ICBMに軌道が似ている極軌道系のデブリを捕獲するのが訓練の殆どだわ。
その代わり、拾ったデブリの価値が個人ポイントに反映されるので副収入は多いよ。」

マサ:「ハルなんか、休養入りしたらすぐ新風俗店をやれる資金ができたもんね。」

みどり:「店が持てるほどですか。それはやりがいがありそうですね。」
194pinksaturn:2006/07/23(日) 12:37:03 ID:xwuH9soT0
(年末、航行中の”みくら”艦橋)

翡翠:「クワオワーがかなり良く見えるようになりましたね。位置関係は計算通りですよ。」

朝子10世:「水の氷が少ないと言われているから開発対象にはならないだろうけどデータは取っておいて。
同じ冥王星族で天体毎に大きな成分差がある理由の解明には役立つかも知れないからね。」

翡翠:「望遠映像とスペクトルは連続的に記録しています。もう少し近付けばレーダーも届きますね。
しかしクワオワーなんかに比べると冥王星って条件的に恵まれてますね。推進剤が足りなくなってもカロンの氷をあてに出来るし。
おまけに冥王星とカロンが互いに静止衛星みたいな関係だから同時に探検し易いし。」

朝子10世:「推進剤の問題はもっと柔軟性のあるエンジンを開発して条件を変えていきたいけどね。
今回は政治的動機もあって探検が許されたけど、今の技術だと開発しても採算とるのは難しいしね。
これから他の成分が魅力的なのに水が少なくて手が出せない天体が見つかることもあるでしょうし。
さて、カイパーベルトに近くなると未知の小天体が有るかも知れないから一層進路に注意しないとね。
それからクワオワーにレーダーが届く辺りからは、減速が始まるわね。またしばらく辛いわよ。」

(翌年早々)

朝子10世:「180度回頭、連続減速にかかります。30日ほど辛い暮らしになるので頑張って下さい。」

翡翠:「後ろ向きだと進路監視がやりにくくなるのが怖いですね。」

朝子10世:「マストのパラボラ目一杯下げて。側面カメラも最大望遠で極力真後ろを監視するのよ。
それで死角に入る分は、エンジン噴流で弾けないような大きいダストに会わないことを願うしかないわね。」

冬子:「旋回終わりました。メインエンジン始動します。原子炉出力10%。加速度正常に出てます。
出力上げます。30%...50%...全開になりました。」

瑪瑙:「軌道の狂いありません。」

朝子10世:「みんな体調は良いかしら。もうひと頑張りで目的地よ。」
195pinksaturn:2006/07/23(日) 12:38:14 ID:xwuH9soT0
(ハルの新風俗店 http://pinksaturn.fc2web.com/bar.htm#haru )

マサ:「いよいよ明日開店だわね。」

ハル:「体の特注や店の権利金で貯金使い果たしてますから、うまく行ってくれないと文無しです。
衣装だっていつまでもマサさんからの借り物ってわけにはいかないですし。」

真理亜:「ササの話のようなオサーンがどれくらい居るのかわからないものね。
店の家主としては当たってくれて家賃が安定して入って欲しいと願うばかりだわ。」

ササ:「2,3人来れば、あとは私のバニーちゃんの魅力でじゃんじゃん注文させるわ。」

マサ:「そういえば、ササはおしっこ売らないの?。」

ササ:「わざわざ大金かけて原料米と麹しか食べられない体にするのはちょっと。
元ネタ提供者として結果に興味はあるので、バニーちゃんとして手伝うことにしたんです。」

ハル:「ところで、もうじき”みくら”が冥王星に着きますね。
私らが休養入りしてる間に何か起きたら、みどりたちはちゃんと対処できるかなあ。」

真理亜:「あの娘達ももう一人前よ。副部隊長と専任の第1小隊長も配置されたし大丈夫よ。
それに、我々の有人宇宙活動がが公表されたからってすぐに戦争が起きるわけじゃないわ。
北米連の政治形態だと、初めは必ず政治駆け引きがあるでしょ。
まず議会で言いがかりの付け方を決め、国連に持ち込んでってな感じで。
当面は宇宙での紛争より、むしろ地上での諜報戦が始まるほうが要注意ね。
おそらく特区には工作員が常駐してるから、特区での拉致や本国侵入といった事件が起きる鴨。」
196pinksaturn:2006/07/23(日) 12:39:21 ID:xwuH9soT0
(翌日)

1人目のオサーン:「ハルちゃーん、もう一杯ぃ−−。」

ハル:「はい、構えました。クリトリス押して下さい。」

1人目のオサーン:「ぽちっと。」

ハル:「う...(感じるー)じょろろろ。」

1人目のオサーン:「いいねえ、その表情。」

2人目のオサーン:「こっちも頼むよー。」

ササ:「お待ち下さい。とりあえずお通しドゾー。」

2人目のオサーン:「バニーちゃんのおしっこは飲めないのかなー。」

ササ:「済みません。私はそれ用に改造してないので有毒な廃液しか出ませんので。」

2人目のオサーン:「有毒!?へえぇ、バニーちゃんもサイボーグなんだ。だったら飲めるように改造しようよ。」

ササ:「まだ試作品なので、パーツが高いんですよ。むやみに導入できないんです。」

2人目のオサーン:「ねえ、じゃあそっちのバニーちゃんは?。」

マサ:「あ、私は今日だけ、開店で忙しいときの臨時バイトなんで。でも、良かったら後ほど売春なんかどうですかー。」

2人目のオサーン:「ごめんねー、ぼくちゃんセクースよりおしっこが好きなのー。」

マサ:「あらそうですかー、私も改造しちゃおうかしらー(ちっ、金もってそうなオヤジなのに)。」
197pinksaturn:2006/07/23(日) 12:52:29 ID:xwuH9soT0
(閉店後)

マサ:「結構はやりそうじゃないの。滑り出しは上々だわ。」

ハル:「おかげさまで。ところで、マサさん突然手伝うなんて言い出してどうしたんですか。」

マサ:「この店に来るエッチな客なら良い売春相手が居るかと思ったんだけどそれは難しいようだわ。」

ササ:「やっぱりおしっこ飲みたいっていうのとセクースとは方向性が違うんですね。」

マサ:「そうねえ。今日でよくわかったから私は明日からクピドタワーに出ることにするわ。」

ハル:「そうですか、でわ今日のバニーちゃん代これで、(体内CPU.電子マネー送信)。」

マサ:「どもー。じゃあ頑張っておしっこ売りまくってね。」


(宇宙滞在期間制限による休養期の強制設定という宙軍の規則に基づくとはいえ、
こんな緊迫した情勢で、この娘達はいったいどういう神経なんでしょう。
あ、半分以上は金線に置き換わっているんですか、そうですか、それでこんな風に...。
次回予告(23)冥王星)
198180:2006/07/23(日) 20:29:58 ID:+kfZMeNv0
199名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:51:50 ID:gvb6AKWZ0
某御大が最近公開し始めた有料作品買った人に聞きたいんだが。面白い?
2003の444:2006/07/24(月) 00:02:35 ID:ILesVxuO0
「はい。 他に提案はないですか? 特に女子のみなさん、 何かご意見ありませんか」
  教壇に立っているクラス委員の田中さんは、 救いを求めるようにおろおろ教室を見回した。
  教室の黒板には白いチョークで「タコ焼き屋」「アート展覧会」「カキ氷屋」「ケーキ屋」「メイド喫茶」と書い
てある。 今、 学園祭のクラスの出し物を決めているところなんだけど、 木南君が面白半分に提案した「メイ
ド喫茶」がクラスの男連中に大ウケ。 女性票が割れそうなのに対して、 男性票はこの雰囲気だと間違いなく
メイド喫茶に集中することは確実。 つまり、 このまま多数決を採れば、 栄えある我が朝日山高校第百五十
回学園祭の三年三組の学園祭はメイド喫茶になってしまうってわけ。
「おいおい、 このままだとホントにメイド喫茶になっちまうぞ。 女子どもはそれでいいのかよ」
  提案者の木南君。 クラスの女性陣の非難の目線もどこ吹く風。 足を机にのっけて余裕しゃくしゃくの態
度だ。
「いつまでぐちゃぐちゃやってんだよ」
「早く決を取ろうぜ。 決をよう」
  多数決を取るよう催促する男どもの声で教室ががやついた。
「静かにしてっ! もう、 誰か他にいい案はないの?」
「そんなのねえよ」という男どもの声に負けじと田中さんはまなじりをつり上げて教壇をたたいた。 そんな田
中さんのことを、 そんなにムキになるなよって男どもはからかい混じりにはやしたてるけど、 田中さんが必
死になるのも分かる。 メイド喫茶っていったって、 メイド役は女子に押し付けられるに決まってる。 誰だっ
て、 あんなヘンテコなカッコしてウェイトレスなんてやりたくないよ。 絶対学校中の笑いのマトになるに決まっ
てるんだから。
  でも、 田中さんの必死の呼びかけは空回りするばかり。 女の子たちは後ろのコとひそひそ相談するば
かりで、 誰一人として意見を述べようとはしない。 そりゃそうだ。 メイド喫茶を覆すためには男性陣も巻き込
めるような案を出さないといけない。 中途半端な提案をすればますます女性票が割れることになってクラス
の女の子の恨みをかうだけだもん。 誰だって、 そんな損な役回りをかってでたくはないよね。
2013の444:2006/07/24(月) 00:03:16 ID:ILesVxuO0
  私? 私はどーでもいいよ。 「アート展」をやりたがるようなクラスの連中じゃないことは分かってる。 かと
いって「タコ焼き屋」だろうが「カキ氷屋」だろうが「ケーキ屋」だろうが、 ものを食べることができない私にとっ
ては目の前でおいしそうに食事をされることは苦痛でしかない。 つまみ食いなんていうお楽しみも私には無
縁。 私一人が苦しい思いをするくらいなら、 田中さんには悪いけど私はメイド喫茶でもいいと思ってる。 こん
なこと口にしたら、 クラスの女子から裏切りものって思われるかもしれないけどね。
  だから私は、 さっきから、 興奮する男子、 焦る女子を尻目に紛糾するクラス会の様子を後ろの窓際の
席でこうして頬杖ついて冷静に眺めていられるってわけ。
「こうして、 ウダウダしててもラチがあかないから時間を区切ろう。 あと、 じゅうびょー」
  木南君は椅子の上に立ち上がると、 おどけた口調で叫んだ。
  クラスの男子勢から拍手喝采があがる。
「ちょ・・・」
  田中さんが絶句しているうちに木南君は、 某有名プロレスラー気取りで片手を振り上げて秒読みをはじ
める。
「いーち」
「にー」
「さーん」
  ここはリングサイドかと思うくらいの男子の大合唱。 こうなったら田中さんの「うるさい黙れ!」攻撃はまる
で通用しない。 カウントが「はーち」まで進んでクラスの女の子の誰もが自分のメイド服姿を想像しはじめた
とき
「はーい」
  と、 のんきな声を出しながら教壇に上がってきたコがいた。 誰かと思ったら、 武庫川あるなだった。
「はーい、はーい、はーい、はーい」
  教壇に上がったあるなは田中さんの鼻先に手をつきつけながら、 壊れたスピーカーみたいにそう繰り返
す。 さっきまで立ち上がって大騒ぎしていた男性陣は、 あるなの眠気をさそうような間の抜けた声に、毒気
を抜かれたのか、 ぶつぶつ文句を言いながら机に座り込む。
「む、 武庫川さん」
  静まり返った教室に田中さんのうろたえた声だけが響いた。
2023の444:2006/07/24(月) 00:04:02 ID:4kc3fm4s0

  あるなは、 みんなの注目を浴びるのが嬉しくてたまらないのか、 田中さんを押しのけて教壇の前に立つ
と芝居がかった仕草で髪をかきあげてからコホンと咳払い。
  クラスの女性陣は期待と不安がないまぜになったような表情で、 あるなが口を開くのを待った。
「お化け屋敷なんて、 どうかしら、 ねえ」
  いかにも自信たっぷり、 といったふうにゆっくり教室を見回すあるな。
  あるなの提案を聞いたクラスの男子からは失笑、 女子からはため息が漏れる。
「期待させといて、 お化け屋敷ってなによ。 子供じゃあるまいし」
  クラスの女子の声を代弁したのは、 席を離れて、 教室の後ろに一際大きなカタマリを作っていた女の子
グループの中心にいた藤永田。 それに同調するように何人かの女の子がうなずく。
  普段はあるなの後ろをついて回るだけの藤永田にしては珍らしい態度だけど、 まあ、その気持ちも分か
らないではない。 あるながどんな逆転ウルトラCを決めてくれるのかと思ったらお化け屋敷だもんね。 先ほ
どとは一転、 女性陣から非難の視線があるなに集中した。
「ま、 ま、 ま、 落ち着きたまえ、 私の話を聞きたまえ、 チミたち。 この私がただのお化け屋敷なんて超凡
庸な提案するわけないじゃない」
  あるなは、 壇上を右に左に歩き回って、 再びざわめき出した教室を鎮めた。 クラスをまとめることにか
けてはのっぽの田中さんより頭一つ小さいあるなのほうが数段上かもしれないと、 傍観者を決め込んだ私
は他人事のように思う。
「私が考えてるのは、 そんな子供だましじゃないよ。 もっと、 リアルなやつ。 たとえば、 バラバラ死体が動
いたとしたらどうかしら? さらし首がしゃべったらどうかしら? 怖くない? それでね、 バラバラ死体を見て驚
いてるカップルの顔写真をばれないように写真撮影して、 出口で写真を販売するの。 次の日はみんなの恐
怖に歪んだ顔を廊下に張り出したりしてさ。 大ウケして大もうけして話題性もバッチリのナイスアイディアだと
思わない?」
2033の444:2006/07/24(月) 00:05:22 ID:sz4dzPZE0
「いや、 そりゃ、 ホントにそんなことができたらメイド喫茶より面白いとは思うけどさ。 遊園地のアトラクション
じゃあるまいし、 高校の学園祭でそんなことできるわけないだろ。 どうせ提案するならよ、 もっと現実的な線
を言いたまえ。 チミィ」
  木南君があるなの声色を真似してへらっと笑う。 それで、 男子たちがどっと沸いた。
  だけどあるなは一向にひるむ様子はない。
「それができちゃうんだよねー」
  勝ち誇ったように木南君に言い返したあるなは、 ゆっくり私の方を向いて言葉を続ける。
「ある人が協力してくれれば・・・だけどね」

「ね、 裕子さん。 せっかくの機械の身体の持ち主なんだからさあ、 それをクラスのみんなのために生かして
みようって思わない?」
  あるなの一言で、突 然クラスのみんなの視線を一身に浴びることになって思わず身を固くする私。 今ま
で、 余裕しゃくしゃくで傍観者を決め込んでいたのに、 一転してクラスの中心人物に祭り上げられてしまっ
た。 それも、 私が一番望まない形で。
「な・・・な・・・」
  あるなは教壇を降りると、 絶句している私に向かってちょこちょこ早足で歩み寄った。
「八木橋さんはサイボーグなんだから手足を外すくらいわけないでしょ。 八木橋さんならリアルなバラバラ死
体役、 できるわよね」
  あるなは、 妙に優しげな作り声で、 そんなことを言いながら頬杖をついている私の腕をなでる。
「あなたの眼ってカメラになってるんでしょ。 あなたを見て驚いた人の顔を映すことなんてわけないよね」
  今度は、 私の眼を興味深そうに覗きこむ。
「あるな。 あんたすごいよ。 いいよ、 それ」
  いつの間にか私たちのすぐそばに来ていた藤永田が腰巾着ぶりを発揮して手放しで喜んだ。
「武庫川さん。 そういうのはあんまりよくないと思うんだけど・・・」
  田中さんは、 クラス委員という立場もあってか、 遠慮がちにそう口を挟んだんだけど
「σ◎◎¬ホホウ! では田中さんはメイド喫茶がいいと、 そういうわけね」
  とあるなに返されて、 言葉を失って黙りこんでしまった。
2043の444:2006/07/24(月) 00:06:14 ID:sz4dzPZE0
  分かっちゃいたけど、 誰も私のことなんか助けてくれやしない。 女の子たちはみんな、 メイド姿にならず
にすみそうってことで、 むしろ、 あんた、 引き受けなさいよって言いたげな顔で無言の圧力を私にかけてい
る。 男子だって、 私の身体が機械ってことは知ってるだろうけど、 実際のところどんなものか見てみたくって
興味深深。 素直にメイド喫茶にすればいいのに。 こんな機械仕掛けの身体なんて見たって何も面白くない
のに。
「で、 どう八木橋さん。 引き受けてくれるかなあ」
  あるなは表情だけは優しげに私に向かって微笑んだ。
「あんた、 うんって言いなさいよ」
  追い討ちをかけるように藤永田のスケ番まがいのドスの聞いた声がかぶさった。

「い、 嫌だっ! なんで私がそんなことしなきゃいけないんだよう」
  私は怒りにまかせて二人を睨みつけて机を思いっきり拳で叩いた。 私の剣幕に気おされたように、 藤永
田は二三歩後ずさりした。
  ふん、 見かけだおしのびびりやさん。 衛兵がイの一番に逃げ出してどうするのさ。 あんた、 あるなの後
ろからいつもそうやっていばってるけど、 ホントは私のことが恐いんでしょ。 義体の力を恐れてるんでしょ。
  藤永田なんか、 どうせあるながいなきゃ何もできない腰巾着だ。 でも、 あるなは違う。 本当に気をつけ
なきゃいけないのはコイツ。
「あ、 そう、 嫌なんだ」
  あるなは、 怒りに震える私を、 さもおかしそうに余裕たっぷりに眺めたあとで、 こっそり私に耳打ち。
「ねえ、 義体の人が、 生身の人を怪我させたら交通事故と同じ扱いで義体操縦免許が停止になるんだっ
て? この前のこと、 私がケーサツに話したら、 あなたどうなっちゃうのかしらね?」
「そ・・・それは・・・」
  以前、 私があわてて廊下を走ってたとき、 廊下の曲がり角であるなと正面衝突しちゃったことがある。
あるなは、 その時のことを蒸し返そうとしてるんだ。
2053の444:2006/07/24(月) 00:07:08 ID:k0zLFXn20
  あれって、 ホントは私に嫌がらせをしようとして、 あるなのほうからぶつかってきたようなものなんだけ
ど、体重120kgの全身義体とまともにぶつかった衝撃はかなりのものだったみたいで、 あるなはカンタンに吹
っ飛ばされて、 廊下に頭をぶつけてのびちゃった。 その時は、 お互いに責任があるってことで、 センセイ
から廊下を走ったことを厳重注意されただけで済んだんだけど、 きちんと法律に照らし合わせて考えたら、
実はそれだけじゃすまないって私は知ってた。 だから、 あるなにその時のことを持ち出されたらどうしようっ
て思ってずーっとビクビクしてたんだ。
  義体は私の身体ではなく、 あくまでもモノ。 いろんな法律があってややこしいんだけど、 分かり易く例え
れば義体は私の所有するクルマみたいなものなんだ。 つまり私は義体っていうクルマの運転手ってわけ。
その証拠に全身義体の障害者手帳は、義体の操縦免許証も兼ねていて、これがないと病院以外の敷地に
は出入りできないことになっている。 だから、 私とあるなが廊下でぶつかって、 そのはずみにあるなを怪我
させてしまったとしたら、 それはどんなにあるなのほうに非があったとしても、 警察が法律にのっとって判断
すれば私の前方不注意ってことになっちゃう。 で、 義体の運転免許停止、 府南病院で義体操縦の再講習
ってわけ。 試験をパスするまで、 ずーっとね。 そんなことしてたらまた留年しちゃうし、 お金だってかかっち
ゃう。 だから、 あの時のことを警察に話されるのは、非常にマズイ。
  そのことを充分承知のうえで、 あるなは、 私を脅迫してる。
  私は、 ごくりと息を飲み込むと、 ちらりとあるなの横顔を見つめた。 きっと、 猫に追い詰められた鼠みた
いな怯えきった眼つきをしているに違いない。
「バラバラ死体役、 引き受けてくれたら、 あの時のこと、 黙ってあげててもいいんだけどなあ」
  あるなは、 再び私の耳元でそう囁くと、 用事は済んだとばかりにさっさと自分の机に戻ってしまった。 藤
永田があわててその後を追った。
2063の444:2006/07/24(月) 00:07:59 ID:k0zLFXn20

  手足を外した姿をみんなの前に晒すなんて、 そんな恥ずかしいことできるわけないよ。 そんなことするく
らいなら、 タコ焼きなんていくらでも焼くし、 メイド服姿でにこやかに微笑むくらいなんでもない。
(卑怯者っ! そんなに警察に言いたければ、 言えばいいでしょっ!)
  そう、 力強く突っぱねられたら、 どんなにいいだろう。 でも、 こんなふうに機械の身体になってしまっても
私の我がままで普通の高校に行かせてもらえてるのに、 そのうえ義体操縦免許まで免停になってしまってさ
らにおじいちゃんに迷惑をかけるなんて、 そんなことできるわけないよ。
  クラス中の視線を一身に浴びたまま、 私は頭を抱えて考え込む。 でも、 どんなに悩んだところで出せる
結論は一つしかない。
「分かったよ。 やればいいんでしょ。 やれば」
  のろのろ立ち上がった私は、 力なく、 ため息混じりにそう言うしかなかった。
  クラスの女の子たちのわざとらしい拍手が空しく教室に響く。 田中さんまで、 ホッとした顔をしているの
が、 なんだかたまらなく悔しかった。 結局、 みんな口ではどんな綺麗ごとを言ってても、 自分さえ助かれ
ば、 他の誰かを犠牲にしてもいいって思ってるんだよね。 はは。

  結局、 三年三組の学園祭の出し物は、 他に圧倒的大差をつけてお化け屋敷に決まったのでした・・・orz
2073の444:2006/07/24(月) 00:09:53 ID:k0zLFXn20
「再会」はなかなかうまく話が進まないので、ひとまず休止にして
初の高校時代のエピソード「学園祭」を書くことにします。
よろしくお願いします。
208名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 01:19:29 ID:FpG7rhu00
ついに本格開始ですね。ヤギー受難時代篇。
2093の444:2006/07/24(月) 12:57:20 ID:b8mbtb650
>>180
そこは、以前見つけておおっ!と思ったのですが、My Dear Sisterくらいしか、
残念ながら惹かれるものがありませんでした。
全てを見ているわけではないので、お勧めがあれば教えて欲しいです。
あと、そんな180さんに昔読んだ「CYBER KNIGHT FACT」(←うろおぼえだが、こんな題名)
を紹介しようと思ったのだが、今検索したら引っかかりませんでした。どなたかURL知って
いる方がいらっしゃれば、載せていただければと思います。

>>208
やはりヤギーは苛めてなんぼのキャラですので、苛めネタのほうが筆が進むというものです。
期待に応えられるよう頑張ります。
210名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 13:52:48 ID:4gTxqypx0
2113の444:2006/07/24(月) 14:07:54 ID:b8mbtb650
>>210
ありがとうございます。
でも公開停止中なんですね。どうりで引っかからないわけだ…
212180:2006/07/24(月) 15:56:33 ID:Mmv2Q2AT0
ここを使えば何とか見れます。
ttp://www.archive.org/index.php

ただエンコードが・・・
213180:2006/07/25(火) 19:01:48 ID:RKNPsyNT0
反応がないので・・・
ページを開くたびにエンコードを変える必要あり。
画像一部を除き・・・
ttp://web.archive.org/web/20040616000831/www.ne.jp/asahi/sk/k2000/Yaneura/CN_Fact/index.html
214名無しさん@ピンキー:2006/07/26(水) 01:20:45 ID:gkZdrsdb0
>>213
先程は見れたのに、見れなくなって仕舞いましたね・・・・

しかし消えたり移転して転々としたりするページが多いのは残念です。

215名無しさん@ピンキー:2006/07/26(水) 10:48:05 ID:bWN0BP3Z0
>>214
>>212を開いて>>210のURLをhttp://と書いてあるところに入れてTake Me Backを押して
その先から探せば見れるかと。
時間によってはアクセス数が多いと表示できないときもあるみたいです。
216名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 09:54:51 ID:Yrdw4MsC0
hoshu
217名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 21:16:47 ID:e/Ah2d/q0
218pinksaturn:2006/07/28(金) 21:38:29 ID:NX+gjlgj0
>>217 一番上の愛読してたんですが、続きが止まってますね。残念です。
とりあえず、”オプションパーツ”投下しますのでよろしく。
−−(23)冥王星−−

(減速開始から29日目の”みくら”艦橋)

瑪瑙:「ブースター点火位置まで600秒」

朝子10世:「カウントダウン開始して。」

タラ:「2,6,10,14番ブースター点火回路接続。カウント始めます。540,539,538...」

朝子10世:「発進時より2000d位軽くなってるから、かなりGがきついわよ、みんな気を付けて」

瑪瑙:「軌道、姿勢とも良いです。進行方向視野内に確認できる障害物ありません。」

タラ:「...120,操舵員に権限渡します。」

理美:「点火権限受領確認。体内CPUタイマー同期よし。3,2,1,点火!。」

翡翠:「うわぁ、振動きついですね。今のところ各部異常ありません。」

瑪瑙:「第3宇宙速度切りました。冥王星を追尾する軌道に乗っています。ニクスの軌道半径内に入ります。」

理美:「メインエンジン、ブースターとも依然出力正常。」

瑪瑙:「冥王星−カロン系の第2宇宙速度切りました。ヒドラの軌道半径内に入りました。系重心点に向け落下中。」
219pinksaturn:2006/07/28(金) 21:39:59 ID:NX+gjlgj0
理美:「ブースター燃え切りました。」

朝子10世:「進路を冥王星とカロンの重力均衡点に調整、重力均衡点を狙って減速を継続して。」

翡翠:「静かになりましたね。各部異常の報告ありません。」

瑪瑙:「このまま行くと重力均衡点まで3時間ですね。」


(3時間後)

理美:「相対速度毎秒1900m。メインエンジン絞ります。50%、20%、10%。」

瑪瑙:「重力均衡点まで15分です。理美、秒速200mからはバーニアだけで良いわよ。」

朝子10世:「凍結防止のため原子炉は純抵抗負荷をつないで出力10%で回しておいて。」

機関長:「グリッド整備をやってしまいたいのですが、原子炉停められませんか?。」

朝子10世:「グリッドに触る直前に停めて5分以内で終わらせて。」

機関長:「2度目だから大丈夫です、承知しました。重機要員借りますね。」

朝子10世:「時間に余裕があるカロン降下班のほうに手伝って貰って。マオとミキが慣れていて良いでしょう。
それから、耐低温外装に換装していない者が船外作業に出るときは必ず保温全身タイツを着用すること。」

理美:「...秒速20m、10m、最終噴射...重力均衡点に静止しました。」

朝子10世:「冥王星降下班は私に従って1号降下艇の発進準備。カロン降下班はグリッド整備支援後に発進準備。
副長は手すきの者を集めて上甲板に出て放送用パラボラリフレクターの展開をやって頂戴。いずれも極低温注意のこと。」
220pinksaturn:2006/07/28(金) 21:40:51 ID:NX+gjlgj0
(ヘッドフィギュア口腔エアロック内)

マオ:「あら、リホさんとエリさんは全身タイツですかぁ、だっさーい。」

リホ:「頭、坊主にするのが嫌だったから...あんたたち、それ大丈夫なの?。凍結で髪が折れちゃうんじゃ。」

ミキ:「殿下に聞かなかったんですかぁ。光ファイバータイプの髪でシニオンに纏めておけば大丈夫ですよ。
寒いとプルトニウム電池の出力が良く出るんで、毛根のLED点けっぱなしておけば凍結はしないだろうって。
外は真っ暗だから照明にもなるし。私たちカロンからのアイスショー中継に出るんで、そんなださい格好で行けませんから。」

エリ:「そうかぁ。そんな手があったんだ。まあいいや、こっちの中継は殿下が主役だからね。」

朝子10世:「あらいけない。リホたちに髪のこと教えてなかったわね。時間無いから今日はその格好で我慢してね。」

リホ:「ところで、シニオンだと背中の耐放射補強してないとまずいんじゃ?。」

朝子10世:「ここは太陽から十分遠いでしょ。冥王星は磁気圏が殆ど無いからバンアレン帯もないし大丈夫よ。」

機関長:「マオ、ミキ、交換グリッドの曳き出し頼むわよ。理美、口空けて。」

朝子10世:「リホ、エリ、寿那緒、こっちも出るわよ。1号降下艇搭乗!。」
221pinksaturn:2006/07/28(金) 21:52:19 ID:NX+gjlgj0
(上甲板)

翡翠:「支柱立ったわね。じゃ、みんな骨組み1本ずつ持って、拡がって頂戴。」

兵員:「ここで良いですか?。」

翡翠:「いいわよ。場所決まったら骨組みの先をハブに差し込んで。」

兵員:「入りました。」

翡翠:「電波反射膜の張りが均等になるように骨組みの長さを加減して。うん、そんなもんかな。
理美、船体の安定は良いわね?。瑪瑙、船体側のパラボラ調整して、地球の電波入るか確かめて頂戴。」

艦橋から瑪瑙:「なんか入ってます、こりゃ西部劇ですね。北米連のテレビは電波強いから映りますね。」

翡翠:「良いようね。これで地球の連中に世紀の中継を見せてやれるわね。みんな、引き揚げるよ。」

瑪瑙:「本国あてに試験電波送信始めます。」


(2式降下艇1号艇、降下中)

朝子10世:「あ、そう、地球のテレビ放送拾えたのね。ならこっちからも届くわね。2号艇は出たの?。」

艦橋から翡翠:「30分前にカロンへ向かいました。そちらの5分遅れで着陸できる予定です。」

朝子10世:「いっぺんに中継は出来ないから、ゆっくりいい場所探して降りるように伝えて。
あっちは、アイスショウ見せるんだから氷の荒れてない所に降りた方が良いでしょ。」
222pinksaturn:2006/07/28(金) 21:53:17 ID:NX+gjlgj0
リホ:「足、下に向けます。現在高度1500`、減速始めます。」

エリ:「重力均衡点からだと簡単ねえ。真っ直ぐ落下するだけだもんねえ。」

朝子10世:「こんなに降りやすい惑星は他にないわね。まあ、惑星と呼べるかって議論もあるけど。」

寿那緒2等兵:「冥王星が惑星じゃないって言う人もいるんですか?。」

朝子10世:「資源収集に関係のない純粋に学術上というか政治の話だから、素体教育でやってなかったわね。
要するに、冥王星が見つかった当時はエッジワース・カイパーベルト天体がこんなに沢山あると思ってなかったのよ。
21世紀に次々に見つかるようになって、冥王星は軌道を占有する突出した天体じゃないのが判ったのね。
それで、天文学者達はこれじゃあ惑星の定義に当てはまらない、小惑星の仲間だって言い始めたの。
ところが、そういう説に対して北米連が強硬に反対したのよ。それまでの惑星発見はすべて西欧の手柄でしょ。
自分たちが見つけた惑星が一つもなくなることが、大国の威信に関わると思ったのね。
冥王星を見つけたのは個人が私財で設置した私設天文台だから、本当は国家の威信と関係ないのにねぇ。」

寿那緒:「そんなこだわりの惑星に我々が最初に降りたら北米連が怒り狂うんじゃ、ガグガクブルブル。」

朝子10世:「そうねえ。ある意味これは、北米連の民衆が良識をとるか意地をとるか、というテストだわ。
こんなことで暴発するような国なら、いずれ決着をつけなくちゃいけない相手だったということかしら。」

リホ:「高度100`、約1時間で着地します。」

朝子10世:「大気抵抗が使えないんだから慎重にね。急がなくて良いわよ。」
223pinksaturn:2006/07/28(金) 21:54:03 ID:NX+gjlgj0
(2式降下艇2号艇)

マオ:「高度100`、落下速度秒速180m、減速率0.1m/s/s。地表の様子はどうかしら?。」

香奈子2等兵:「望遠見てます。真下に大きなクレーターは無さそうですね。」

ミキ:「冥王星とカロンは公転軌道の離心率が高いせいで、氷が昇華と降着を繰り返してるって言うからね。
けっこう平坦な地面なんじゃないかしら。」

マオ:「平坦であって欲しいわよね。あんまり荒れてたら思い切り滑れ無いじゃない。」

ミキ:「足元もだけど衣装大丈夫かしら。体の方はそれなりの素材に替えたけどスカートが固まると変よねえ。」

マオ:「空気がないからどうせひらひらしないわね。スノボーみたいに大技で誤魔化すしかないわよ。」

香奈子:「怪我しないで下さいよぉ。私、降下艇の操縦は自信無いんですぅ。」

マオ:「大丈夫よ。どうせ操縦はリモートボディリンクだから手足の1本ぐらいもげてても支障無いって。」

ミキ:「空気抵抗がないとスピンがめちゃくちゃ早くなるでしょ。着地姿勢がいがんだら、一発でやっちゃうかもね。」

香奈子:「そんなあ。気をつけましょうよ。」

マオ:「判ってるって。ただ、低重力だと地上で出来ない大技やってみたくなっちゃうのよねー。」
224名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 22:00:22 ID:e/Ah2d/q0
規制対策・・・
225pinksaturn:2006/07/28(金) 22:21:58 ID:NX+gjlgj0
(1号艇)

リホ:「高度100m、落下秒速0.5m。逆噴射一時停止。...再開。着地します。着きました。」

朝子10世:「よし、ごくろうさん。足の凍結防止処置良いわね?。寿那緒、上部デッキでテレビカメラ用意して。
艦橋、こっちの音声ちゃんと通じてる?。」

母艦艦橋から翡翠:「音声明瞭です。副音声にストリーム翻訳装置待機よし。中継の準備、整っております。」

朝子10世:「判ってると思うけど、こっちは真空中だからテレビ映像に主音声乗っけるのも母艦でやるのよ。
それから、この距離じゃ地球での受信が確認できないんだから、生をあてにせず母艦に録画も残してね。
じゃあ、送信始めるわ。寿那緒、映像送信してみて。」

翡翠:「ばっちり入ってます。ぶるる、しかし、やっぱり見るからに寒そうですね。」

朝子10世:「はは、サイボーグが寒がるかしら。ま、私でも人間の本能から来る恐怖心は無くせないわね。
さて、いよいよ歴史的第一歩か。私には人類にとっては大きな一歩だなんて格好いいこと言えないわ。」

翡翠:「じゃ、中継始めます。理美、原子炉出力20%に。中継波出力最大です。殿下どうぞ。」
226pinksaturn:2006/07/28(金) 22:23:04 ID:NX+gjlgj0
(冥王星からの中継放送)

朝子10世:「地球の皆さん、お元気ですか。あ、我が本国以外の方には初めましてですね。
この番組は、私、南太平洋帝国宙軍艦隊・冥王星特別派遣部隊司令官、朝子10世少将が冥王星より生でお送りしています。
他国の方々には突然の電波ジャック、大変失礼しておりますが、ごめんあそばせ。
さて、今申し上げましたがもう一度耳をかっぽじってよーく聞いて下さい。ここは冥王星ですよ、メ、イ、オ、ウ、セ、イ。
え、信じられない?。そんな遠くまで行ける有人宇宙船が出来るわけないだろって?。
そういう方は、私の足元を見て下さい。どうして、ずーっと足踏みしてると思いますか?。
ここの地面は同じ所を踏んでいると熱が伝わって溶けちゃうんですよ。
めり込んでから再び凍ったら動けなくなっちゃうんで、ここでは立ち止まれないんですねー。
そんなの、冷凍倉庫にセット作れば出来るだろうって?。
そういう人は、電波天文台の先生方にお願いしてこの放送電波が飛んでくる方向を調べて貰って下さいねー。
ただいまの時間、地球からこの方向に見える惑星は冥王星しかありませんから。
同じ方向でもっと近くにいる宇宙船内のセットから放送しているんだろうって?。
そこまで疑うなら、この電波の発信源の移動速度を測ってみましょうね。冥王星の運動と一致する筈ですから。
でも絶対おかしい、そんな格好で冥王星に人が降り立てる筈がないって?。
うーーん、それは技術力の問題なんですよ。一応まだ秘密なので、エロい人に想像して貰って下さいな。
まだまだ放送は続きますよぉ。...」
227pinksaturn:2006/07/28(金) 22:24:06 ID:NX+gjlgj0
(2号艇)

マオ:「高度1`。落下速度毎秒10m。逆噴射再開。一旦ホバリングするから場所選んでね。」

香奈子:「あ、あそこ。右0.5`、前方0.8`辺り、つるっとしてるんじゃ?。」

ミキ:「うん、良さそうねえ。あそこに降りましょ。」

マオ:「おっけー。降りるよぉ。尻尾ひと吹き、逆噴射最弱、足チョイ前、戻して最後にひと吹き、よし着いた。」

ミキ:「香奈子、カメラマン宜しくね。一世一代の演技見せてあげるから。」

香奈子:「怪我しないで下さいよぉ。」


(しつこく続く、冥王星からの中継)

朝子10世:「ごらんの通りここは氷の原野です。氷の主成分はメタンだと言われてきました。
これから、少しブロック状に切り出して母船に持ち帰り、詳しく分析してみます。
我々の着陸船、2式降下艇にはエキシマビームという強力なレーザー光源が搭載してあります。
のちほど、これを使って、氷を切り出すところをお目にかけたいと思います。
あ、今ニュースが入りました。カロンに向かった別の降下艇が無事着陸したとのことです。
それでは、中継を切り替えて貰いましょう。カロン降下チームさんドゾー。」
228名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 22:34:21 ID:RTQbkQIz0
しえん
229pinksaturn:2006/07/28(金) 22:38:03 ID:NX+gjlgj0
(カロン地表からの中継)

マオ:「こちらカロンのマオ少尉でーす。やっぱりここも寒いですねー。」

ミキ:「同じくミキ少尉でーす。ここカロンは、地表を覆う氷の主成分が水だそうです。
水の氷と言えば、そう、なんてったってアイススケートです。実際にここでスケートが出来るか試してみます。
極低温なので、さすがに普通のブレードじゃ滑りそうもないので特製の超音波ブレードをつけています。また、このために比較的平坦なカロンでも特につるつるの場所を選んで降下しました。
じゃ、やるよー。そーれ、お、おおお、ちょっと渋いけど滑れますねー。」

マオ:「それでは私もやってみます。ん、ん、最初張り付いてましたが滑り出しました。」

ミキ:「だんだん調子出てきました。ジャンプしてみますね。それーっ、わー重力軽いから飛びすぎー。」

マオ:「画面から飛び出しちゃいましたが、ミキはまだ回っております。カメラさん追って下さい。」

香奈子:「冷え切っててマウント渋いー、あ、映った。」

ミキ:「ひえー、目が回るう(嘘だけど、演出演出。落ち始めたかな。足のジェットで減速して...)」

マオ:「着地成功!お見事。では私も、ジャーンプ!。おお、回る回る、いつもより多く回っております。」

ミキ:「低重力下でのアイススケートは楽しいですねー。では、スノボー並みにムーンサルトなど行ってみましょう。加速中でーす、そーれジャーーンプ、ムーンサルト20回ひねり...まだまだ回ってます。降りました。どうです。」

マオ:「おお、やるわねー。負けないわよ。ジャーンプ、ムーンサルト25回ひねり、...落ち始めたね。よし、ジェットで減速、...え、出ない、何で?。噴射口凍ってる...ああっ、ぎぃゃぁぁぁっ。」

ミキ:「おっと、やりすぎましたね。(やば、メカばれするような壊れ方じゃ...)アクシデントです。えー、とりあえず中継冥王星の方に戻して下さい。カメラ停めて。」

マオ:「痛ったーい。強く突きすぎて、肩から、左腕が取れちゃったわ。」

ミキ:「しーっ。隠して隠して。早くカメラ停めてよ。」

香奈子:「スイッチが凍結してますぅ。」
230pinksaturn:2006/07/28(金) 22:39:24 ID:NX+gjlgj0
(”みくら”艦橋)

翡翠:「ありゃ、まずいわ。すぐ中継切り替えて。」

タラ:「切り替えました。でもマオの肩の外れたところ、少し映っちゃいましたよ。」

翡翠:「遠くて小さいし氷の破片舞い上がったからどうかな。でも録画で拡大されたらメカばれかなぁ。
まあ、どうせ宇宙服無しであんな事して見せたんだから判る奴には判るんだけどね。
ただ、もろに素人が判る映像が流れると、宗教勢力の反発が強いだろうから抑えろって言われてたのにぃ。」

(冥王星)

朝子10世:「(あちゃー、やってくれちゃったわね。まあいいか。どうせ専門家には見え見えだし。)
...えー、再び冥王星からお送りします。カロンのほう、ちょっとアクシデントがあったようですね。
残念ながらアイスショウは中止になりました。やっぱり寒いので手元が狂ってしまいましたね。
こちらも、気をつけて探検作業を続けたいと思います。ひとまず中継を終えます。
この後、本国の皇帝からも世界の皆様にメッセージをお送りする予定ですのでご注目下さいませ。
でわまた。(陛下...後始末宜しく。)」

寿那緒:「とりあえずカメラ停めました。凍てつきそうなので一旦収納します。」

朝子10世:「マオの破損状況も気になるから、とりあえず少しだけ氷サンプル取って引き揚げましょう。
カロン降下チームにもそうさせなさい。採掘の中継は本国の指示待ちにしましょう。後日やればいいわ。」


(6時間50分後、マオの実家 テレビの前)

マオパパ:「おお、マオでかしたぞ。よしよし、これでうちのアイスショウも世界のメジャーに躍り出るな。
外人観光客向けに特区にもリンク作らなくちゃならんかな。ん、そこで大技...あーーーーっ。
マオ、大丈夫か!。死んではいないようだが...ああ、もう7時間前の出来事なのか。無事でいてくれよ。」
231pinksaturn:2006/07/28(金) 22:40:20 ID:NX+gjlgj0
(その少し後、北米連大統領官邸)

ヤブー大統領:「国務長官、なんなんだね、この馬鹿げた映像は。どうせ黄色い猿どもが作った特撮だろ、これは。
萌えだかなんだかしらんが、いったいこれが我が国の政治とどう関係するというのかね。」

コメー国務長官:「大統領、これは特撮ではありません。仮に特撮だとしても実際に冥王星から放送されていたのです。
わざわざ、そんな遠くから特撮映像を流すことは無意味ですから、おそらく本物でしょう。」

ヤブー:「発信地点は確かなのかね。満漢人民共和国が似た方向から流した謀略電波ということは無いのか?。」

コメー:「電波天文台に測定を依頼しました。方向、距離、移動速度とも冥王星に一致するそうです。」

ヤブー:「すると地球の一般家庭の衛星放送受信機で受かるほど強い電波を冥王星から流したのだね。」

コメー:「専門家の計算ではアンテナを工夫してビームを地球方向に絞れば数十メガワットの送信機で届くそうです。
その程度の出力は原子炉を搭載した宇宙船なら容易に出せるそうです。」

ヤブー:「あの映像に出てきた小娘たちは宇宙服を着用していなかったぞ。あり得ないことだ。」

コメー:「いくつかの可能性が指摘されています。テレビに映っていたのは人間でなく遠隔操作のマリオネットのような物ではないか。
着陸地点に透明なドームを設置しているのではないか。テレビに映りにくい透明な素材の宇宙服を使っているのではないか。
それから、おお、なんと恐ろしい考えを...」

ヤブー:「どうしたのかね。続けたまえ。」

コメー:「に、人間を真空や極低温に耐えられるよう改造したのではないか、そんなことが許されるはずがない。」

ヤブー:「ふむ、君の意見には同感だが、世界には我々と相容れない価値観の持ち主も多いからね。
自爆テロや特効攻撃が出来る連中なら、技術さえあれば人体を戦闘用に改造するくらい、やるかもしれんよ。
実際、甚だ不快なことだが、我が国でも美容整形や性転換といった類の人体改造は禁じられていないのだ。
想像するのもおぞましいが、その延長に宇宙空間用に人間を改造する技術が開発される可能性もあるな。
ここで憶測ばかり言い合っていてもしょうがない、軍や学界の有識者にビデオを分析させるのが先決だろう。」
232名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 22:50:09 ID:e/Ah2d/q0
・・・
233pinksaturn:2006/07/28(金) 22:53:09 ID:NX+gjlgj0
国務次官補:「失礼します。大統領、長官、P共和国の国連大使がマスコミにとんでもない声明を発表しました。」

コメー:「とりこみ中だから手短に報告を。」

国務次官補:「要約です。1.P共和国は106年前、AD2030より独立国にあらず、南太平洋帝国の経済特区なり。
2.我らは高度の自治権を有し、帝国の貿易を一手に管轄せり、この地位は将来も変わらず。
3.我らは対国連を含む帝国外交活動の大半を管轄するが、世界情勢の複雑化に鑑み帝国本体との共同管轄に移行す。
4.我らは帝国の宇宙活動に関与しおらず、ただ宇宙工場製品の貿易のみに関わる。以上です。」

ヤブー:「P共和国が今度のことに関わっていたというのか。自由貿易港というのは表の顔に過ぎなかったと。」

コメー:「あの国は無人宇宙工場で生産されたと称する高性能な能動義肢や人工臓器を輸出しています。
経済の自由化に関しては好ましい政策を採っていますが、性風俗と医療に関する政策は極めて非道徳的です。
売春をする権利は基本的人権である、ファッションのために義肢をつけてもよいなどと、実におぞましい。
あそこの輸出品にはダッチアンドロイドなどの、不気味なくらいリアルな人型ロボットもありますね。
技術力や価値観からするとさらに一線を越えた人体改造をやっていても不思議ではありません。」

ヤブー:「あの自称探検隊員はダッチアンドロイドを改良した物ではないのか?。」

コメー:「出回っているアンドロイドはあんなに滑らかな2足歩行が出来ません、スケートなど到底無理です。
それに、寒がったり、転んだとき悲鳴を上げるような手の込んだAIなんて搭載されていません。」

ヤブー:「人間の真似をするAIは何処でも研究されているだろう。AIの可能性は無いか専門家に調べさせたまえ。
とにかく、事実確認が先決だな。大至急、情報局長官を呼びたまえ。」

国務次官補:「新たな報告です。今度は先ほどのチャンネルとインターネットの両方で皇帝と名乗る娘が放送しています。
放送波の発信地点はP共和国の静止衛星、例の無人工場衛星です。」
234pinksaturn:2006/07/28(金) 22:55:27 ID:NX+gjlgj0
ヤブー:「また娘か。何故、娘ばかりなのだ。いまさら萌えブームでもあるまい。何の意味があるのだ。
しかし、仮に人体改造説が正しくて、その皇帝も体を改造した本物の要人だとすると大変なことだな。
その帝国とやらのサイボーグ技術は要人の命を預けられるほど確立したものと言うことになるぞ。
そんな技術がもしも軍事利用されたら我が国の地位を脅かしかねん。情報収集を急ぐのだ。」


(知子1世の放送)

知子1世:「世界の皆さん初めまして。私が南太平洋帝国の皇帝、知子1世です。かさねての電波ジャックで失礼します。
既に国連大使がマスコミ向けに声明したとおり、P共和国は我が帝国の特別自治区域、いわゆる経済特区です。
先に我々が冥王星から行った放送は、ご覧頂けましたね?。あれはトリック映像ではありません。
我々は長年にわたり密かに有人宇宙活動を行ってきましたが、この冥王星探検を区切りとして公表を決意したのです。
はじめに、有人宇宙活動や我々の政体について、これまで秘密にしてきた事情をお話しします。
ご存じのように、これまで有人宇宙活動はひとにぎりの大国が寡占してきました。
それらの大国はいずれも核兵器と大陸間弾道弾を保有する軍事大国でもあります。
我々の宇宙開発の中心は、宇宙資源の活用、とくに地上より遙かに強い太陽光をエネルギー源とする工業活動であります。
その究極の目的は、殆どの工業活動を宇宙で行うことで地球温暖化ガスの増加を全く伴わない経済を確立することでした。
しかし、これは強大な軍事力を背景に地上のエネルギー資源を支配する大国の経済戦略と相容れないものです。
したがって、計画の初期に公表すれば外圧によって遂行不能となる恐れがありました。
そこでやむなく、全ての有人宇宙活動を秘密にし、対外的にはP共和国の無人宇宙工場実験プロジェクトとしてきたのです。
235pinksaturn:2006/07/28(金) 22:56:30 ID:NX+gjlgj0
次に、これを公表することとした事情についてお話しします。
我が帝国は、静止軌道に3基の大型工場衛星を完成し、小惑星帯の隕石を採掘した素材から多様な製品を生産できます。
この工場衛星は地上から打ち上げる資材に頼らず建造され、従来の人工衛星のような軽量化を必要としません。
隕石から無尽蔵に取れる鉄を使い、分厚い外壁を持った頑丈な構造物です。核兵器でも容易に破壊できません。
また、不断の日照により効率的な農産物の生産も可能となっており、いざとなれば我が国の全人口を養えます。
つまり、もはや大国の圧力を畏れず、地球温暖化の阻止による島嶼住民の生存権維持を進められるようになったのです。
冥王星の探検は、我々の技術力を立証し、同時に広範囲の宇宙資源を調査するために実行しました。
それでは、もうしばらく後で冥王星からの放送の続きをお楽しみ下さい。でわでわ。」


(北米連大統領官邸)

ヤブー:「あの小娘皇帝の言っていることは我々への宣戦布告、いや冷戦布告というべきものだな。
やつらの経済戦略が成功すれば、いずれ我が国の産業にも影響が出る。放置すれば、私は国民の支持を失うだろう。」

コメー:「隕石資源で重工業を成り立たせるほど大規模な有人宇宙活動に必要な人員を投入しているのです。
小国がそんな大人数に人体改造を施すとしたら、国民の相当割合を強制的に改造しているに違いありません。
とんでもない人権問題です。神への冒涜ですよ。我々の最重要支持基盤である宗教界が黙っていません。」

ヤブー:「君の懸念も分かるが落ち着きたまえ。あの皇帝とやらは人体改造について何も言っていないのだ。
冥王星からの映像でその疑いは濃いが、我々の支持基盤を判っていてあえて刺激しない態度にも見えるぞ。
国防長官と北米宇宙局長はどう思うかね。」
236pinksaturn:2006/07/28(金) 23:07:46 ID:NX+gjlgj0
国防長官:「どうかお怒りにならず、冷静にお聞き下さい。本当のことを言います。
わが軍でもサイボーグ技術の研究は行っているのです。ですが、実用的な水準に達していません。」

コメー:「なんと、恐ろしいことを。こっそり、そんなことに税金を使うとは。」

ヤブー:「もちつけ。」

国防長官:「まだ、動物を使った基礎実験が主体です。恒久的な生命維持装置がどうしてもできないのです。
ですから、能動義肢や一部臓器の機械化はできても、宇宙服無しで真空に耐えるようなサイボーグは出来ません。」

コメー:「主体?、では人体実験もやったのですね。まだ?、もし成功したら兵士を改造する気?。」

ヤブー:「もちつけ。」

国防長官:「末期癌患者など他に望みのない志願者で実験しました。決して強制ではありません。
仮に成功しても、強制改造など滅相もない。そもそも我が国は徴兵制を廃止しています。
どうしても必要になったら、サイボーグ化を条件として新たに志願者を募集すればよいでしょう。
体力が要らなくなるので、兵士に求める資質も違ってきますので。」

コメー:「それが国防長官の本音か。なしくずしに、全軍をサイボーグ化したいのか。ガクガクブルブル。」

北米宇宙局長:「国務長官の御懸念は判りますが、外惑星探査においては必要な技術かと。
先に不運な事故のため引き返すことになった火星探査船でも、全長1`近い巨大なものでした。
火星以遠の探査を目指すなら生身の宇宙飛行士では難しいと思います。資源収集では尚更です。
長期の飛行のため大量の酸素や食料を積むと宇宙船が巨大になりすぎて力学的に無理なのです。」

ヤブー:「ならば、あの帝国の宇宙飛行士がサイボーグ化されているのは確実かね。」
237pinksaturn:2006/07/28(金) 23:08:34 ID:NX+gjlgj0
北米宇宙局長:「食料や酸素を船内で生産できるなら違う可能性はあります。
しかし、従来P国の無人船とされていた、いわゆる”こけし船”が有人船だとしたらあまりにも小型です。
エンジンの種類は不明ですが、燃焼炎を出さないことからイオンエンジンの類でしょう。
あの船には太陽電池パドルが無いし、外惑星に行けるなら強力な発電用原子炉が乗っているでしょう。
地球上の船で言えば昔の駆逐艦程度の船体に、そんな原子炉を積んだら遮蔽が十分出来ません。
普通の人間が長く乗れば必ず放射線障害になってしまうでしょう。」

コメー:「局長もサイボーグ技術を肯定するのですか。」

北米宇宙局長:「外惑星探査に携わる、特別な宇宙飛行士への適用はやむを得ないと思います。
無論、技術の安全性を十二分に確認し、適用者への人道問題をクリアすれば、ですが。
感情的な否定ばかりしていては、無神論者が多い満漢やス連に先を越されてしまいます。」

コメー:「くっ、満漢の無神論者か。いまいましい。」

ヤブー:「スレイブ共和国連邦はともかく、満漢人民共和国は神も人権も認めない上に大国だから始末が悪いな。
この上余計なライバルが増えるのは困るから、小娘帝国には世界秩序にしたがうよう脅しをかけるべきだな。」
238pinksaturn:2006/07/28(金) 23:09:08 ID:NX+gjlgj0
(経済特区・某北米系商社駐在員社宅)

商社員兼情報局工作員・キャサリン:「んもう。誰よこんな朝早くから。睡眠不足になっちゃうわ。はい?」

電話の声:「ポストに入っているテープを聴きたまえ。でわ。」

キャサリン:「ぎくっ、任務?。ポストか。これね。」

テープの声:「おはようキャサリン君。今度の君の使命だが、自称南太平洋帝国の実態と技術力の調査である。
すでにそちらでもテレビでやっているだろうが、そこP共和国は南太平洋帝国の一部、経済特区に過ぎないと言う。
では、帝国の本体は何処か?。我々は、いわゆる自然保護地区という広大な立ち入り制限地区にあると睨んでいる。
なんとかそこに潜入し帝国の首都所在地とその技術水準、ことに人体改造およびロボット技術の実状を探ってくれ。
例によって、君もしくは君の仲間が殺され、あるいは捉えられても当局は一切関知しないからそのつもりで。
成功を祈る。なお、このテープは自動的に消滅する。(ぷしゅー、めらめら。)」

キャサリン:「自然保護地区に侵入しろってぇ。捕まったら情状抜きで死刑って、ここの法律に明記されてるのに。
やらなけりゃ当局に消されるし。成功か死か、か、トホホだわ。この世の見納めに今日は美味い物でも喰わなきゃ。」
239名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 23:09:26 ID:e/Ah2d/q0
・・・
240pinksaturn:2006/07/28(金) 23:23:32 ID:NX+gjlgj0
(”みくら”艦橋)

マオ:「ご心配かけました。落ちながら転んだ衝撃で肩関節の磁気ロックが外れただけで故障はありませんでした。
通常なら外皮が伸びるので完全に腕が取れることはないのですが、極低温で硬化したため裂けてしまったのです。」

朝子10世:「耐低温外皮もここらの温度では性能不足かぁ。こういう技術検証も目的の一部だから仕方ないわね。
陛下から、アイスショウは我々の探検計画にゆとりがあるというデモンストレーションとして貫徹の指示があったわ。
だけど、転倒の原因になった、足のジェット噴射口の凍結について対策が必要のようね。
すぐに出来ないようなら、ジャンプを低く抑えるなど演技内容を工夫して、とにかく次こそは成功させなさい。」

マオ:「承知しました。では次回の降下準備に取りかかります。」

翡翠:「映像に少し映ってしまったメカバレのことについて、本国からは何も?。」

朝子10世:「肩の断面が一瞬小さく映っただけですからね。元々、専門家の目にはみえみえだし。
あの程度なら、輸出している能動義肢と大差ない訳で、すぐに過激な反応をまねくことはなかったようよ。
宗教界もイスラム諸国などではむしろ、大国の宇宙開発独占を破ったということで歓迎されているようだし。」

翡翠:「そうですか。我々の生命維持システムが豚に依存していることは、絶対知られちゃいけませんね。」

朝子10世:「知られない方が良いけど、北米連のように絶対と言うほど危険な相手でもないでしょ。
そもそも彼らが地上基地や工場衛星に侵入することなど、殆ど不可能だろうけどね。」
241pinksaturn:2006/07/28(金) 23:24:49 ID:NX+gjlgj0
(翌日未明、クピドタワーから境界検問所にかけて)

マサ:「今日もよく淫ったなあ。そろそろ帰ろうっと。
...さすがは特区だわ。こんな時間でも、うろついている香具師の多いこと。
ん、おや外人女か、香水きつー。ごつい鞄抱えているし、売春してそうには見えないな。
かたぎのビジネスウーマンが、こんな時間に歩いてるのは流石に珍しいわね。
やっぱり、冥王星探検公表のせいで、ハゲタカ外資金融とかはばたばたしてるのかな。」

特区側境界警備官:「虹彩認証登録済みの方以外はここを通れません。あ。はいどうぞ。」

マサ:「(こっちの警備官は、本当は虹彩認証じゃなく素体番号認証だってのまだ知らんのか)ご苦労さん。」

本国側境界警備兵:「特区のお仕事ご苦労様でした。」

マサ:「(シビリアン警備兵だって副業の実態は知ってるよなぁ。本気で愛想良くしてるのかしら。)ども。
...しっかし、地下鉄駅までの間の緩衝地帯って真っ暗だな。まあ、私らの目なら困らないが。
...あれ、どこかでかいだような臭いだな???。まさか、でも一応確かめた方が良いかな。
...海岸の方からか。居た!。あの外人女だ。見られてるとは思ってないな。ごつい鞄は潜水具だったのか。
...捕まえて警備兵に突き出しても良いが、退屈しのぎに少し後を付けてみよう。そうだ、一応報告。
(体内公用通信)真理亜様、...」

真理亜から通信:「どうしたの?。忘れ物なら公用通信使うんじゃないでしょ。」

マサ:「...というわけで、後を付けてみようかと(/体内公用通信)。」

真理亜:「それが正解だわ。工作員なら、捕まってからじゃまず口を割らないから、目的が掴めないでしょ。
地下鉄に乗るのにお金じゃなく認証が必要だなんて、まず知らないでしょ。簡単に追いつけそうね。
私もすぐそっちに行くから、手を出さずに尾行していて。」
242pinksaturn:2006/07/28(金) 23:25:51 ID:NX+gjlgj0
(地下鉄・特区境界駅)

キャサリン:「切符売り場が何処にもないわ。改札ドアが閉まってるから無料ってこともないみたいだけど。
困ったなあ。...あ、誰か来たわ。隠れて入るとこ見てようっと。さっ。...」

マサ:「あいつ、改札で困って隠れたな。とりあえず、真理亜様と待ち合わせて時間稼ぐか。(体内通信)真理亜様...」

キャサリン:「なんだよう。早く入れよ。ちっ、待ち合わせか。...ううう、海で冷えたからおしっこ漏れそう。
ここなら、誰も見てないからやっちゃうか。...じょろろー。」

マサ:「うわっ、くっさー。あいつ、隠れ場で立ちションかよ。まあ、間もなく人権削除刑だからちびる運命だったのね。」

真理亜:「待ったぁ?。」

マサ:「いいえそれ程でも、実はパスカード落としちゃって(芝居、芝居...)真理亜さんが来ないとどうせ乗れなくて。」

真理亜:「余分に持ってるから貸してあげるわ、(体内通信)クピドタワーのゲートカード白地で良かったわ。
これをわざと落として、拾わせるのよ。私が特権リモートで扉空けるわ。このまま宮殿に連れていきましょ。
どうせ、A級犯罪は宮殿の最高法廷で陛下が直接裁くことになるから、手間省くのよ。(/体内通信)
はいこれ。(わざとらしくないようにして、下の1枚ぽろりと...)」

マサ:「ありがとう。じゃ、行きましょう。」

キャサリン:「券、落としたわ。しめしめ、助かったぁ。」
243名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 23:34:23 ID:e/Ah2d/q0
規制7だっけ?
244pinksaturn:2006/07/28(金) 23:36:52 ID:NX+gjlgj0
(ハルの新風俗店 http://pinksaturn.fc2web.com/bar.htm#haru )

オサーン:「ひひひ、いいねえ、割れ目の小穴から酒がじょろじょろ...もう一杯くれよ。」

ハル:「はい。クリトリス押して下さい。あひっ...じょろじょろ。」

オサーン:「その表情が良いんだよなあ。ところで、ハルちゃんのお母さん冥王星探検隊に行ってるんだって?。」

ハル:「おかげさまで、無事着いたようで。お土産にカロンの氷をリクエストしてるんで、いずれ手にはいるかも。」

オサーン:「うまく行って、お店の名前通りに氷が飾れると良いね。でもお母さんって偉いんだね。
とすると、ハルちゃんも宙軍さんではエリートなのかな。こんなハードな風俗やっちゃって良いのぉ?。」

ハル:「私はただの1等兵ですよ。それにもっと偉い人でも副業は別と割り切ってやってますし。
私の上官なんか特務中尉になっても特区で売春ですよ。その郭のオーナーが実は司令官で。」

オサーン:「へええ。お上は風俗大国を目指してるって言うけど、本気でやってるんだ。ぼくちゃんに住み易い国で良かったよ。」

ハル:「まあ、その住み易い国が大国に踏みつぶされないように気をつけないといけないんですけどね。」


(ついに冥王星に到達しました。と同時に冷戦にも突入してしまいました。果たして風俗大国の繁栄はいつまで保つのでしょう。
次回予告(24)準侯爵マサ)
245名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 01:12:46 ID:Czy2mx0u0
>間もなく人権削除刑だから

これにwktkしてしまったオレはもうだめなんだろうか
246pinksaturn:2006/07/29(土) 11:21:53 ID:OYO8qpI10
またしても随分長くなってしまいました。
3レス貼る毎に11分以上休憩が義務づけられるので、途中で風呂に入ったり、居眠りしながらとなりました。
>>243
試してみたのですが、他のホストからの書き込みを挟んでも規制は解除されないようです。

>>244
細かいですがハルの発言にミスがありましたので、お詫びと訂正。


ハル:「私はただの1等兵ですよ。それにもっと偉い人でも副業は別と割り切ってやってますし。
私の上官なんか特務中尉になっても特区で売春ですよ。その郭のオーナーが実は司令官で。」

ハル:「私はただの1等兵ですよ。それにもっと偉い人でも副業は別と割り切ってやってますし。
私の上官なんか特務中尉になっても特区で売春ですよ。その郭のオーナーが実は部隊司令で。」

副業の場での雑談とはいえ軍隊用語(司令官=少将級、**隊司令=艦長相当=大佐級)を間違えるなんてサイボーグらしくないので訂正。
247無名:2006/07/29(土) 14:33:00 ID:Jtz3tG6w0
気合のこもった運動会

 「はあ〜、こんなことになっちゃうなんて…」
 今日のかなは気持ちが落ち込んでいた。それもそのはず、夏休みの宿題の件で無理やり運動会の進行委員にされてしまったからだ。運動会は参加して競うのが醍醐味なはずなんだけど、
今回は計画を立てる側にされてしまった。もちろん進行もしなくちゃいけないから、結構運動会中は忙しくなる。それに、運動会の後のこともしなくちゃいけないんだ…。
 普通なら運動会の後の事なんか考えなくていいんだけど、委員になったからには反省会まで付き合わないといけないんだ。これって、けっこう骨が折れるよね…。
 「よ、かなやん。どうしたんだよ、元気ないな」
 職員室の前の廊下で待っていた和真君が、かなに声をかけてきた。
 「実は…」
 かなは先生に運動会の進行委員に選ばれた事を話した。
 「なあんだ、それは自分がやった事だろ。押し付けられるのも当たり前だぜ」
 「とはいっても、準備とか進行なんかを全部やらないといけないんだよ。前にいた学校でも進行やってた先輩達も大変そうだったもん」
 「でも先生に言われたんだからやらないとだめよね」
 後ろからいきなり祐喜ちゃんが現れた。
 「実は去年、私も進行のお手伝いをやった事があるんだけど、それほどきつくなかったわよ」
 「そうかなぁ…。だって色々計画立てないとだめなんでしょ」
 「運動会の計画を立てるのは先生とか五・六年生が主にやるみたいだからそんなに心配する事はないと思うわ。私達四年生はそれの手伝いがメインになるんじゃないの?」
 もしそれが本当ならそれほど心配しなくてもいいってことになるのかなぁ。でも何か引っかかるなあ。
 「とにかく、こういうのはめったにできないから、やれるだけラッキーだと思わなくちゃ。これからの人生にプラスになるかもしれないじゃないの」
 「…そうだよね。運動会の進行委員って就けない人だっているんだもんね…。とりあえずがんばってみようか…」
 「がんばれよ、かなやん。俺達も応援してるぜ」
 和真君、祐喜ちゃん、ありがとう。これでかなもすこし元気が出てきたよ。
248無名:2006/07/29(土) 14:34:22 ID:Jtz3tG6w0
 「あっそうそう、進行委員ってあともう二人選ばれるのよね。誰が選ばれるのかしら」
 えっ、かなのほかにもあと二人委員に選ばれるの?よかった〜、一人でやるのかと思ったよ。
 「で、他の二人は誰なの?」
 「もう少し経ったら決まるんだと。まっ、そのときまで待ってるんだな」
 一体誰に決まるんだろうな…。そう思ってるうちに、いつの間にか教室の前についた。
 かな達が教室に帰ったときには、もう誰もいなくなっていた。
 「あれ、まさる君は?」
 「今日は病院に行くって言ってたから先に帰ったわよ」
 ガラーンとなった教室で、かな達三人は帰る仕度を始めた。
 「かなやんは前の学校の運動会、何やってたんだ?」
 「ええと…、ダンスしたり、輪投げをしたり…。あとはリレーかなぁ。がんばったんだけど、結局四位に終わっちゃったんだ」
 「でもがんばったからいいじゃない。で、今年はリレーに出るの?」
 「ううん…。できれば出たいけどね…」
 運動会の委員に選ばれても出ることはできるはずだ。でも、もし出られなかったらどうしよう…。
 「出られるさ。別に委員になったって出ることは出来るだろ。もっと自信持てよ」
 「えっ、本当に?よかった〜、リレーに出れなかったらどうなるかと…」
 「とはいっても忙しいのは同じだから、かなちゃん頑張らなくちゃね」
 祐喜ちゃんはにっこり笑いながら励ましてくれた。
 「よ〜し、いっちょがんばっか〜!」
 そんな訳でかなの運動会進行委員の仕事が始まったのだ。
249無名:2006/07/29(土) 14:35:15 ID:Jtz3tG6w0
 次の日、運動会のための学級会が開かれた。まずはクラスの中から進行委員になる人を決める事になった。とはいっても一人はもう決まってるから後二人なんだけどね…とほほ。
 「というわけで今回はこの三人が運動会の進行委員に決まった。岡田、松原、そして和多田、この三人で運動会の進行を手伝う事になった。三人とも、頑張るんだぞ」
 「分かりました、先生」
 かなの他の二人は男の子と女の子の一人ずつで、クラスではあまり目立たない感じだった。というかかなだってほとんど知らなかったのだ。
 その後、学校のみんな全員で校庭に集合して、運動会の練習をした。今日は入場の練習やテントを張る準備などをしただけだけど。でもかな達はその後会議室に行って運動会の会議に出なくちゃいけないんだ。
 「和多田さん、僕達で運動会を楽しく出来るようにしよう」
 会議室に行く途中で、岡田君がかなに話しかけてきた。
 「うん、がんばろう」
 「僕もこんな事初めてだからちょっとどきどきしちゃって。色々分からない事ばかりだからお互い助け合わないとね」
 「でも進行委員って色々と忙しいって聞いたよ。かな達に出来るのかなぁ…」
 「大丈夫だよ。進行委員といっても、僕達は上級生の手伝いをするのがメインだから。そんなに難しい事じゃないよ」
 岡田君、普段は目立たないけど、けっこう良いところあるじゃない。岡田君と一緒なら少し自身がついてきたよ。
 「松原さんも一緒にがんばろうね」
 松原さんは下を向いたままだった。どうやら松原さんは岡田君とは対照的みたい。
 「…大丈夫かな?松原さん…」
 「彼女もこんな事初めてだから、緊張してるんだよ。さあ、もうついたよ」
 かな達は会議室のドアをガラッと開いた。そこには三〜六年の代表がテーブルに座って待っていた。
250無名:2006/07/29(土) 14:41:54 ID:Jtz3tG6w0
 「これから運動会についてどう進行するか、みんなで考えていこうと思います」
 いよいよ会議が始まった。運動会をどうやって進行するかの会議なので、みんな意見を出し合ってどういう風にするか話し合っている。でも、かなにはそれがさっぱり解んなかった。
 「う〜ん、どうしよう。どうやって意見すればいいのか解んないよ〜」
 だめだぁ、こういった場所じゃ頭がこんがらがって解んなくなっちゃうよ。困ってるかなに、岡田君がアドバイスをしてくれた。
 「こういうときは手を上げて、自分が考えていることを言えばいいんだよ」
 「で、でも、それで嫌なムードになっちゃったらどうしよう…」
 「大丈夫さ、もし意見が通らなくてもみんなに分かってもらえればいいんだし」
 そっか…、言った方がいいこともあるもんね…。かなは手を上げて自分の意見を言った。
 「かなは運動会を盛り上げるために、仮装大会をしたほうがいいと思います!」
 うわあ…、言っちゃったよ。こんなの、通るわけないのに…。
 「それ、いいね。運動会の種目にはうってつけだ」
 その意見に、なんと先生の一人が賛成してくれたのだ。
 「今まで仮装をやった運動会なんてほとんど聞いたことがない。ならばやった方がいいと私は思うのだが」
 何かすごい事になっちゃったな…。言い出したのはかなだけど、このことでこんなに盛り上がるなんて思っても見なかったよ。でもこんなので大丈夫かなぁ…。
 結局仮装の事は次回の会議で決める事になった。そのほかの種目については毛色が違う種目が数種類あっただけで、基本的には今までの種目で構成される事になった。それにしても仮装大会が種目になるなんて、みんなが見たらどう思うんだろう…。
 
251無名:2006/07/29(土) 14:59:07 ID:Jtz3tG6w0
 皆さんお久しぶりです、無名です。
「気合のこもった運動会」の前編を掲載しました。
今回かなちゃんは「仮装大会を運動会でやろう」という無謀な提案をしたのですが、
これが好評で次の会議で決めるところまできてしまいました。
皆さんは仮装大会を運動会でやることをどう思ってますか?わたしは運動会は楽しくやることに
意味があると思ってこんなことを書きました。サイボーグとは関係ない話ですが。
次回は8月中に掲載したいと思います。お楽しみに。
>>246 pinksaturnさん
ついに冷戦に突入してしまいましたか・・・。彼女たちの運命がどうなるのか、心配になってきました。
でも相変わらずみたいなので少しホッとしている自分がいる・・・。これからの展開に期待したいです。
>>207 3の444さん
学園祭のお話に入りましたか。かなちゃんの小説もちょうど運動会のお話に入りました。偶然なんでしょうか。
武庫川あるなさんは意地悪なタイプなのかな?そっちの方も気になります。とりあえずヤギーさんにはがんばってほしいです。
252名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 19:59:57 ID:g/oH93HW0
保守
253名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 02:09:57 ID:Gq9cXG4Q0
254名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 06:57:00 ID:xxrqu6b00
センセは止めず黙認?
いいのかそれで?w
255名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 08:34:28 ID:uQ074yRUO
見世物にされるわ裸にされて分解されるわ、
これはひどいイジメですね。

作中世界にあるサイボーグ協会あたりが怒鳴りこんできそう。

最後には救いのある学園祭だと良いのですが…
2563の444:2006/08/01(火) 14:53:58 ID:Ak7gjBRO0
>>253
分解ヤギーキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
ヤギーばかりでなく、あるなまで書いていただけるなんてありがとうございます。

これはまさに絵に描いたような義体ハラです。クラス全員が協会から訴えら
れかねませんね。
257名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 17:11:43 ID:N5DnqzXz0
258名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 17:37:01 ID:N5DnqzXz0
259名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 18:24:42 ID:j1Kc9Ru50
>>253
どうやって見れるんだ?
260名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 20:31:06 ID:7x5L9feK0
そう簡単に分解できるような構造になってるとは思えないが...
261名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 21:20:33 ID:87X0s5lG0
これはあれだ。イメージ映像?


ハァハァ
262名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 21:49:17 ID:5ZyGWfEh0
分解された時点でイソジマの人が来るのでは?
263名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 22:35:45 ID:DdPTKdJo0
>>262
分解されたまま放置→バッテリー消耗→救援メール自動発信
→イソジマの中の人出動、というパターンはありそう

そして出動・回収された時の様子がなぜか誤解を生んで変な噂が流布
→暗黒の高校時代がますます(ry
264名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 23:23:17 ID:hvzkBqSp0
>バラバラ死体を演じるヤギー
腕とか脚とか、ワイヤレス通信してるわけじゃないから、「動くバラバラ死体」は無理のような。
(神経通ってなくて動力すらない)普通の義手・義足の人を使っても同じだし。
それどころか生身の人間の手足を切り落としても、後で戻せないだけでやっぱり同じ(よい子はマネしてはいけません)
265名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 01:33:52 ID:QiRGKezJ0
>>260

そもそもヤギーはどうやって自分で自分を分解するんだろう・・・・?
片手でもう片手を外すのまでは良いとして、じゃあばらした後はどうやって戻すんだ?

イソ電さんか義体ユーザーでないといじれないだろうし。
やっぱ救援メール、なのかな。

つーか これは普通に怒っていいと思うよ>ヤギー
266名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 08:18:48 ID:nfgoCvc+0
あるなを振り払おうとしたヤギーだが、勢い余ってあるなに怪我を負わせてしまう。
いろいろな制約に縛られている義体ユーザー。ヤギーもまた傷害罪に問われるが、
事情を知った人々の同情が集まり、ヤギーは無罪判決を受ける。

この事件がきっかけとなって、義体ユーザーに同情的な世論が高まり、
義体ユーザーの権利拡大運動が広がりを見せることになるのである・・・・・・


とか妄想。
267名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 00:18:10 ID:XCIJFObZ0
補修
2683の444:2006/08/04(金) 02:23:22 ID:uu6vwe3e0
  楽しいイベントを待つときって時計の針が意地悪をしてるんじゃないかって思うくらい一日が過ぎるのが遅
いくせに、 嫌なイベントを待つときっていうのは、 あっという間に一日が過ぎちゃうもので・・・気がついたらあ
っという間に学園祭当日―――
  お化け屋敷のテーマは高校に伝わる七不思議ということになった。 ほら、 よくあるでしょ。 古くてもうほと
んど使わなくなった校舎のトイレの便器の中から血だらけの手が出てくるとか、 理科室の人体標本が真夜
中になると動くとかいう類の世にもくだらないあれ。 教室を七つに仕切って、 そういった学校に伝わる七不
思議を再現するんだって。で、 私の役目は当然のことながら、 一番最後の部屋、 夜中の保健室に現れる
動くバラバラ死体役だ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
  夜、 誰もいないはずの保健室からすすり泣きが聞こえます。 声に誘われるように、真っ暗な保険室に入
ると布団を深くかぶった女の子がベッドに寝ています。
  ベットに近づくと、 女の子は「助けてよー、 痛いよー、 布団をとってよー」と、 苦痛に歪んだ顔で、 救いを
求めるようにあなたを見るのです。 女の子の言うとおり布団を剥ぎ取ってみてびっくり。 布団の中は血で真
っ赤。 女の子は手も足ももがれてダルマさん状態。 千切れた手や足は、 あらぬ方向を向いて転がっていま
す。 その姿を見られるや、 女の子は豹変して、 眼をピカピカ赤く光らせながら、 「私の手足を返せ! 私を
元に戻せ!」と狂ったように叫んで、 もがれてバラバラになっているはずの手足を、 まるで別の生き物みた
いに自在に操って、 あなたに襲い掛かってくるのです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2693の444:2006/08/04(金) 02:23:59 ID:uu6vwe3e0
  これが、 映画部の廣瀬さんから渡された、 「保健室の動くバラバラ死体」のイメージの描かれた絵コン
テ。 この絵コンテどおりに私に演じてほしいんだってさ。 で、 私を見て驚いた人たちの姿を義眼カメラで撮
影してその写真を販売して、 おまけに次の日にはみんなの驚いた顔を大写しに引き伸ばしたものを「我が
校の臆病者」ってタイトルをつけて廊下に貼り出すんだって。 はは。 下らない。 実に下らないよ。 よくもま
あ、 こんなこと考え付くよ。ホント。
  これってはっきり言って、 もし私がサイボーグ協会に訴えたら協会の記者さんが喜んで飛びついてくるこ
と間違いなしの、 第一級の義体ハラスメントネタだと思うんだけど、 そこはそれ、 クラスの連中もうまく考え
たもので、 写真の売り上げの三分の一は私の取り分っていうことにしてくれた。 これはイジメじゃない。 そ
の証拠にヤギーにも労働の対価を充分に与えてるって自分たちに言い聞かせるための巧妙な免罪符だ
ね。
  それに私だって、 毎月の義体維持にずいぶんとお金がかかっていることくらい知ってる。 少しでもお金
が手に入れば、 その分おじいちゃんを楽させることができる。 そう。 私が、 ほんのちょっとの間、 我慢すれ
ばいい。 こんなの、 ただの身体を生かしたアルバイトみたいなもの。 どうせ私が義体だってこと、 もう学校
で知らない人なんていないんだ。 せいぜいみんなを驚かせて、 いい写真をいっぱい撮って稼いでやる。 私
もそう自分に言い聞かせて開き直ることにしたよ。

  学園祭のオープンはお昼からということで、 午前中の三組の教室はその最終準備におおわらわ。 大昔
の戦争のとき空襲で死んだ「手鞠をつく女の子の霊」役に抜擢された川崎君は、 スカート姿のままでみんな
にテキパキ指示を出してるみたいだし、 小さく仕切られた教室の向こう側から、 やれ「ガムテープがなくなっ
たから補充しなきゃ」、 だの、 「そっちもって、そっち、違う、もっと上、上」だの、 みんなのいつになく真剣な
声が聞えてくる。 男子の中には、 徹夜で学校に泊り込んだり、 朝の6時から学校に来て準備していた人も
いたらしい。
2703の444:2006/08/04(金) 02:24:55 ID:uu6vwe3e0
  もちろん私たち「保健室のバラバラ死体」班も大忙し。 班長の廣瀬さんの指揮のもと、 大学の医学部に
通っているっていう廣瀬さんのお兄さんから借りてきた医学書をそれらしく適当に本棚に並べたり、 保健室
の裏手の倉庫にあった使わない埃かぶったベットや仕切りを借りてきたりして、 ホンモノよりだいぶ狭いけ
ど、 なんとか保健室らしい体裁を整えた小部屋を教室の一角に作り上げたのはオープンの1時間前。 最後
に凝り性の廣瀬さんが、 自ら刷毛を手にとってペンキを塗りたくって作ったという血だらけのシーツをベット
の上にかぶせて「恐怖の保健室」が完成したときには、 誰からともなく拍手が沸き起こる。
  みんなで一生懸命頑張って同じゴールに向って走ていくっていうのは、 陸上にたとえれば駅伝みたいな
ものだろうか。 一人黙々と何かに打ち込むのも悪くないけど、 こうしてみんなの協同作業で、 大きなモノを
作り上げるっていうのもタマには悪くないよね。
  でもね、 まだ、 これで終わったわけじゃない。 「恐怖の保健室」の舞台装置の中でまだ、 一つだけ仕上
がっていないものがありました・・・。

「さて・・・」
  やっぱりというか当然というか、 イの一番にバラバラ死体班のメンバーのとして名乗りを上げたあるな
は、 自分の出番が来たとばかりに班長の廣瀬さんを差し置いて楽しそうに仕切り始めた。
「では、 みなさん。 最後の作業に取り掛かりますか、 ねえ」
  あるなは、 ごちそうを食べ終わって、 最後のお楽しみのデザートが出てくるのを、 ワクワクしながら待っ
ているかのような、 そんな期待に満ちた眼で、 ちらりと私のほうを見た。
  あるなの言葉が引き金になって、 私以外の六人の十二の好奇の視線が一斉に私に集中する。 そう。
最後の作業、 それは私の手足を外してバラバラ死体を作るってこと。
  自分でもとっくに覚悟は決めてたことだけど、 イザその時を迎えてみると、 遥か昔に失ってしまった心臓
をぎゅっと握り潰されたような気がして胸が苦しくなる。 もちろん全部錯覚なんだけどね。
2713の444:2006/08/04(金) 02:26:06 ID:1yw63/oi0
  反射的に後ずさりする私を逃がすまいと、 ぐるっと私を取り囲む女の子たち。 あるなの一派で固められ
たメンバーの中で、 ただ一人味方になってくれそうな廣瀬さんですら、 私を助けることよりも自分の手がけ
た演出を完成させることのほうが大事なのか、 少し離れたところから黙って私たちの様子を見守ってるだ
け。
「あら。 バラバラにされるのが恐いんだ? もし恐いなら、 泣いたっていいんだよ。 もし泣いちゃうようなら、
さすがにかわいそうだからやめてあげる」
  私の表情に怯えの色をみてとったあるなは、 口調だけは優しげにそんなことを言う。 もちろん、 あるな
は私が泣くことができない身体なのは知っている。 「やめてあげる」気なんかこれっぽっちもありはしない。
「べっ、 別に恐くなんかない。 こんなの、 ただの割のいいアルバイトじゃないか」
  誰も助けてくれるはずがない。
  そう観念した私は、 精一杯の強がりを言ってみんなに背を向けると、 血まみれのシーツの上に突っ伏し
て両眼をぎゅうっとつむった。 別に泣いてるわけじゃない。 手や足を自分で外すにはサポートコンピューター
にアクセスして指示を出さなきゃいけないんだ。 ここにパソコンでもあれば、 サポートコンピューターの画面
をパソコンのディスプレイに表示させるところだけど、 こんなとこにそんな気の利いたものなんてありはしな
い。 ってことは義眼をディスプレイ代わりにしなきゃいけないんだけど、 そうすると、 サポートコンピューター
にアクセスするとき、 どうしたって眼が変な色に光っちゃうからね。 そんなとこみんなに見られるなんて嫌だ
もん。 だから、 眼をつむったんだ。 余計な情報が眼に映らないほうが集中できるしね。

  眼をつぶってサポートコンピューターにアクセスした私の視界いっぱいに、 まるでコンピューターディスプ
レイの中に引きずりこまれたみたいに、 様々な情報を表示したウィンドウが映し出された。 私は、 念じるだ
けで思いのままに動くカーソルを使って、 まるで大きなお屋敷の中を気軽に散歩するような感覚で、 サポー
トコンピューターを操っていく。
2723の444:2006/08/04(金) 02:26:42 ID:1yw63/oi0
  頭で念じるだけでコンピューターを操作するっていうのは、 義体操作のイロハのイってことで、 特殊リハ
ビリ課程で嫌というほど叩き込まれることの一つ。 はじめはなんだかとってもヘンな感じがしたし、 一般生活
限定の義体操縦免許もギリギリで取れたっていうくらいで、 実は今でも苦手なんだけど、 この程度のカンタ
ンな操作なら私にだってできる。 行く手を遮るドアを次々に開けながら長い通路を走りぬけていくような感覚
で、 私の意識はサポートコンピューターの義体の設定画面の奥深いところにある「手足の着脱」という項目
にたどり着いた。
  そして
(えい!)
  実感を伴わない、 思念だけのクリック。 同時に左腕の付け根から、 かちり、 と人工関節のロックが解除
されるかすかな機械音がした。
「これで、 左腕、 外れるから」
  眼を開けて、 みんなのほうに向き直った私はそうつぶやきながらセーラー服の袖口に右手を突っ込ん
で、 左腕をぐいっと引っ張る。 軽い手ごたえをともなって肩の付け根の部分から左腕が外れた。 私は、 ま
だ身体とつながったままのコードを傷つけないよう気をつけながら、 ゆっくりと左腕を引き出し、 そっとシーツ
の上に置いてふぅっと大きなため息をついた。
「あとはね、 腕と身体をつないでいるコードのコネクターを外していくだけ。 もう一回腕をくっつけるときは、
同じ色のコネクター同士をつなげるんだ。 くっつけるときは、 みんなにも手伝ってもらわなきゃいけないか
ら、 ちゃんと覚えてね」
  外れた左腕を一目見ようと私に密着せんばかりに集まったみんなに向かって、 色とりどりのコードのコネ
クター部分を手にとって説明。 だけど使えるのが右手一本だと、自分ではなかなかうまくコードを外せない。
まごつく私をみかねた廣瀬さん、
「これを外せばいいのね」
  緊張した面持ちでつぶやくと、 コードを取り上げて、 私の代わりに注意深くコネクターから引き抜き始め
た。 コネクターが一本外れるごとにだんだん左腕の感覚が薄れて、 自分の腕ではなくなっていくのが実感と
して分かる。 廣瀬さんが緊張で額に汗をにじませながら最後に残った一番太い緑色のコードを抜くと、 私の
左腕は、 完全に私の身体から離れて、 血まみれのシーツの上に置かれたただのモノになった。
2733の444:2006/08/04(金) 02:27:19 ID:1yw63/oi0

「うわ、 おもしろーい。 人間の手にしか見えないのに、 やっぱり機械でできてるんだあ」
  外れた私の左手を勝手に取り上げたあるなは、 義手の断端からだらしなくぶら下がっているコードをつ
まんだり、 指を曲げたりして私の左手をもてあそぶ。 あげくのはてには、
「ほら、 これがホントの孫の手」
  なんて言いながら、 義手を使って背中をかく真似までしてくれた。
「手だけっていっても、 機械だけに結構重たいんだね。 持ってるだけで疲れちゃった」
  あるなは、 ひとしきり私の左腕で遊んだあと、 私がいちばん気にしていることをピンポイントで言い放つ
と、 まるでおもちゃに飽きた子供みたいに無造作に私の腕をベットに放り投げた。
  たとえ機械でできてる腕だって、 自分の大切な身体には間違いないんだ。 なのに、 安物のおもちゃみた
いなこの扱い。 こんな屈辱ってあるだろうか。 「孫の手」まではなんとか我慢したけど、 私、 もう限界だよ。
たとえ機械でできてたって、 大切な私の手であることには間違いないんだ。 それをあるなに分からせてやら
なきゃいけない。
「あるなっ! 私の腕をモノ扱いするなっ!」
  私は今までためにためた心のイライラをすべて吐き出すような勢いであるなを怒鳴りつけた。
  今度は自分の番だとばかりに、 私の腕を嬉しそうに手にとった藤永田が、 私の剣幕にひるんで、 こそこ
そ腕をベットに戻す。 でも、 当のあるなは一向に悪びれた様子もなく私の言葉を受け流した。
「σ◎◎¬ホホウ!! 面白いことを言いますな。 あなたの言う『私の腕』って、ひょっとしてこの人形の腕のこ
と?」
  もう一度、 私の左腕を手を伸ばすあるな。 私はあわててひったくって胸に抱いた。
「私は人形じゃないっ!」
「そうそう。あなたは人形じゃないよ」
  あるなは、 くすくす笑いながら私を指差した。
2743の444:2006/08/04(金) 02:28:36 ID:aKaD+1a+0
「あなたはこの人形の中に住んでる脳みそなんだよね。 知ってるよ、 そのくらい」
「そ、 そんな・・・」
「あら、 黙っちゃった。 違ったっけ?」
  私はなんとか言い返してやろうとしたけど、 でも、うまい切り返しが思い浮かばない。
  だって、 あるなの言うことは、 全く正しいんだもの。 部分義体みたいに、 身体の一部を機械に置き換る
程度ならまだしも、 今の私にとって、 間違いなくホントの私っていえるのは脳みそだけ。 この身体は、 どん
なに言い繕ってみても、 結局は私じゃなくて、 私をかたどった、 ただの人形なんだもの。
  下をむいて俯いたさらに私を痛めつけるべく、あるなは言葉を続ける。
「あなたの人形を作るのに、 どれだけのこくみんのゼーキンがかかってるか知ってる? つまり、 この人形は
あなただけのものじゃなくて、 私たちみんなのものなの。 分かった?」
  そんなむちゃくちゃな理屈ってあるだろうか。
  この身体は親の残してくれた事故でおりた保険金で買ったもの。 それに、 毎月かかる少なくない義体の
維持費用は、 おじいちゃんが一生懸命働いて払ってくれている。 私が維持費は保険金の残りとバイトで何と
かするって言ったとき、 おじいちゃんは、 そのお金は裕子の将来のために今は使わずにとっておくんだっ
て、 私のこと怒ったっけか。
  確かに義体の制作費や、 維持費の半分は国の税金で賄われている。 そんなことくらい私だって知って
るよ。 でも、 残りの半分は、 私たちの家族が払っているんだ。 あるなから見ればただの機械かもしれない
けど、 この身体は私や私の家族の血と汗でできているようなものなのに。 それなのに、 それなのに・・・。
  怒りに震える私の耳元であるながささやく。
「分かってると思うけど、 今度私に逆らったら、 『あの時のこと』本当に警察に言うよ・・・」
2753の444:2006/08/04(金) 02:29:07 ID:aKaD+1a+0
  今、 ここであるなをひっぱたくことができたら、 そして、 私や、 私の家族をバカにするなって叫ぶことが
できたらどんなにすっきりするだろう。 でも、 私があるなのことを叩いたら、 今度こそ確実に義体免停で、
病院っていう名前の牢屋に放り込まれて再訓練だ。 そんなこと、できるわけないじゃないか。
  結局今の私にできるのは、 唇をかんで、残った右腕の拳を握りしめて、 恨みがましくあるなを睨みつけ
てじぃっと屈辱に耐えることだけ。
「さ、 時間もないことだし、 ちゃっちゃと残りの手と足も外しちゃおう。 みんなも手伝って」
  あるなは、 そんな私をさもおかしそうに眺めたあとで、 みんなに向かって言った。
2763の444:2006/08/04(金) 02:32:00 ID:aKaD+1a+0
本日はここまでです。
277名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 04:52:28 ID:AxnjpfyH0
どうやって分解させるのか興味深々でしたが、
なるほど、サポートコンピュータにメニューがあるんですね。
ケーブルだけは人間で外させる。と。
コネクタを外すごとに感触を失っていく描写が生々しくて良いです。

それにしてもひどい屈辱ですね。
案外薄い義体の補助制度(たった半額助成・・・義肢は9割近い補助があったと思う)や
孤立無援のクラス関係に、この世界の義体に対する微妙な差別意識が見えますね。
278名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 05:10:01 ID:AxnjpfyH0
再組み付けでコネクタをあるなが故意に間違えたら・・・大変な誤作動。
で、制御利かなくなった手足が異常作動してあるなをぶん殴る。
これならヤギーの責任にならずにあるなに意趣返しもできるな。
279名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 11:23:45 ID:w56G4rAE0
>>277
生贄は一人だと相場が決まってますからね
助成制度についても義体の値段がかなり高価だと福祉予算もかなりなものになりますから…
いや、別に擁護してる訳じゃないですが、福祉予算と言うのは削られやすいものです
280名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 12:29:04 ID:LpQUCpfD0
281pinksaturn:2006/08/04(金) 18:13:16 ID:6dwgsOAU0
(オプションパーツの続きです。)

−−(23)準侯爵マサ−−

(地下鉄 特区境界駅)

キャサリン:「あの2人入っていったわ。たぶん、落としたカードも切符ね。試してみよう。」

真理亜:「(公用体内通信#貴族特権モード#公共施設緊急管理)扉ロック開放..開閉確認..復旧(/公用体内通信)」

キャサリン:「開くわ。やっぱりこれが切符だったのね。この地下鉄が首都に通じてると良いんだけど。」

マサ:「ついてきてますか?。」

真理亜:「扉の開閉があったから来てるわ。心配なら、視角に監視カメラ繋いでみたら?。」

マサ:「ああ、来てる来てる。エスカレーターに戸惑ってますね。」

キャサリン:「うっそー。なんて長いエスカレーターなの!。先の方が暗くて見えないわ。ここで転んだら危険だわ。」

マサ:「やっと乗ったか。」

キャサリン:「え?、進み出したら椅子が出て来たわ。なるほどこれなら安全鴨。座ってみよう。あ、明るくなった。座ると点くのか。
でも、椅子つきエスカレーターだなんて、いったい何処まで続くのかしら。深さ100m以上ありそうね。これって、核シェルターなんじゃ?。」
282pinksaturn:2006/08/04(金) 18:14:08 ID:6dwgsOAU0
(地下110m 始発ホーム)

真理亜:「どうせ憑いてくるから、座っていようか。聞こえるように宮殿の噂をするのよ。」

マサ:「宮殿に一般人が入れるように思いこませて誘導するんですよね。」

キャサリン:「これは?リニア式かな。それにしてはトンネルの直径が無駄に大きいわ。やっぱりシェルターを兼ねてるのかしら。
地下鉄に違いなかったけど、駅名表示も路線図も無しか。まるで関係者専用ね。行き止まりで始発のようだから選択の余地無しね。」

マサ:「乗ってきましたね。近くに行きますか?。」

真理亜:「奴が座ったら、2つ離れたボックスに移ろうかな。あんまり近くも怪しまれるからね。」

キャサリン:「地下鉄にしては随分広いボックスシートね。角の設備はトイレ?。向かいはテーブルまで憑いて、まるでバーみたいね。
おかしいわ。無人運転のようだし、そもそもこの国に長距離列車が走るところがあるの?。他の島に通じてるってことは無いわよね。
荷物棚が異様にごついわね。あ、昔のりもの図鑑で見た、亜細亜のどこかの島国にあったという寝台電車ってのに似てるわ。
3段式とか言う窮屈なやつね。もしかしたら、他の島に行くんじゃなくてシェルターとして使うときの居住用なの鴨。」

マサ:「宮殿下の出入り口は3両目が近いからこの辺に座ろうよ。」

真理亜:「そうねえ、市民謁見会の時間までぎりぎりだから、近くに座った方が良いわね。」

キャサリン:「!!(耳ダンボ)、市民謁見会?。皇帝の居所に行くの鴨。あ、動き出したわ。案内放送も無いなんて...。
あら、もう停まった。こんなにちょこまか停まるなら、長距離列車ってことは無いな。拾った切符じゃ不安だもんね。よかった。」
283pinksaturn:2006/08/04(金) 18:14:58 ID:6dwgsOAU0
(宮殿下駅付近)

マサ:「えーと、うちの地区の請願て、ダムと橋と道路と売春福祉会館の建設で良いのよね?。」

真理亜:「地下鉄の延伸もでしょ。でも、あんまり欲張って風俗営業税が増税になったら困るわね。」

マサ:「あ、次よね。(体内通信)降りたらどうしますか?。(/体内通信)」

真理亜:「うん。(体内通信)陛下にメールしたら、直接地下法廷に誘導するようにだって。(/体内通信)」

キャサリン:「あ、降りるつもりね。あんまり近くを憑いていくと怪しいから隣の車両から出ようかな。」


(宮殿下駅ホームから宮殿地下区画に通ずる通路へ)

キャサリン:「あの二人、居ないわ。しまった、離れ過ぎちゃったかな。まあいいわ、出口らしいのは1カ所みたいだし。」

真理亜:「(公用体内通信#貴族特権モード#公共施設緊急管理)扉ロック開放..開閉確認..復旧(/公用体内通信)」

マサ:「きょろきょろしてるから遅れてますね。ゆっくり行って姿見せてやらないとエスカレーター上がっちゃいますよ。」

真理亜:「そうね。念のためエスカレーター停めとくわ。上のゲートは通れないけど、帰ってくるの待つのはかったるいし。
(公用体内通信#貴族特権モード#公共施設緊急管理)エスカレーター休止(/公用体内通信)」

キャサリン:「通路の途中にエスカレーターか。どっちに行ったんだろう。乗ってみるか。あれ?。動かない。赤ランプ点いてる。
まさか、こんな長い階段誰も歩かないわよね。この狭さは保守作業用のようだし。きっと、通路の先の方だわ」
284pinksaturn:2006/08/04(金) 18:26:25 ID:6dwgsOAU0
(宮殿地下区画入り口)

マサ:「この先の誘導はどうしますか?。」

真理亜:「ここのディスプレイを操作してニセ案内板に仕立てるわ。法廷の場所に市民謁見会場って表示すれば来るでしょ。
(公用体内通信#貴族特権モード#公共施設緊急管理)ディスプレイに体内CPU画像クリップをコピペ(/公用体内通信)」

キャサリン:「やっと案内板があったわ。よかったー。えーと、宮殿地下区画・一般市民解放エリア...あ、ここかな。
市民謁見会場、あの二人きっとここに向かったのね。しかし人気がないわね。時間がないとか言ってたから始まってるのかしら。
2フロア下に降りて、階段の真っ正面ね。地形は判らないけど地下鉄の深さからさらに降りるなんて、宮殿もシェルターなの?。」


(宮殿地下、最高法廷=ニセの市民謁見会会場)

マサ:「キタキタ。手回し良く検事と国選弁護人が待機してますね。」

真理亜:「閉じこめるわよ。(公用体内通信#貴族特権モード#公共施設緊急管理)扉ロック(/公用体内通信)」

キャサリン:「え???。5人しか居ないわ。始まってないのかしら。」

侍従:「お嬢様、こちらのお席にどうぞ(被告人席ドゾー)。」

キャサリン:「あ、ありがとう。」

侍従:「皇帝陛下のおなーりー。」

キャサリン:「あの顔は間違いなく皇帝だわ。」
285pinksaturn:2006/08/04(金) 18:27:15 ID:6dwgsOAU0
皇帝:「みなさんようこそ。では始めましょうか。検事総長、起訴状朗読!。」

キャサリン:「え?、起訴状?。謁見会って裁判なの?。」

検事総長:「起訴状。被告人、名不詳、年齢不詳、住所・経済特区外国人住宅地区xx商事社宅、職業、不詳。
右の者は、本日午前5時頃、勅令の特定技術開示規制令に違反し無資格で経済特区と本国の境界を越境した。
また、本日午前6時頃地下鉄特区境界駅改札付近においてICカード1枚を拾得、刑法に違反しこれを横領した。
以上の違法行為のうち勅令の特定技術開示規制令の違反は極刑相当罪のため、検事は最高法廷において起訴する。」

キャサリン:「え?」

皇帝:「国選弁護人、反論をどうぞ。」

国選弁護人:「被告人の人定に不服です。名、年齢、職業を特定して下さい。罪状については証拠開示を求めます。」

キャサリン:「私のことじゃない鴨。えい、立ち去っちゃえば...あ、扉が開かない。」

皇帝:「被告人、着席しなさい。」

キャサリン:「ダメか。誰も武器は持ってないわ。ガーターの拳銃で...ばれちゃしょうがないわね。でも随分無防備ね。
こちらには、武器があるのよ。死にたくなかったら扉のカギ、開けて下さらないかしら、皇帝ちゃん。」

皇帝:「撃ちたければご自由に。じゃ、勝手に裁判を続けます。」

キャサリン:「なめるなー、氏ねー!。」

皇帝:「眉間に一発、左胸に一発か。優秀ね、拳銃の国の工作員さんは。でも武器の方はダメね。徹甲弾使わなきゃ意味無いでしょ。
一応、傷は付いたから、外装修理費はあなたの遺産から弁償してね。」

キャサリン:「えっ、効かない。サイボーグの噂は事実か。ならば、そっちの侍従はどうだ...」
286pinksaturn:2006/08/04(金) 18:28:13 ID:6dwgsOAU0
皇帝:「ロイヤル・ストレート・フラッシュー!」

真理亜:「デルタ・ゼロビーム!...一瞬陛下に後れをとったか。」

キャサリン:「ぎゃああ、熱ぃぃぃぃ。手が...」

マサ:「ほい。これ取り上げさせて貰うわね。この国は死刑無いから、そんなに気を落とさずに、裁かれましょ。」

侍従:「観念して、こちらにお座り下さい。さあ。」

キャサリン:「くっ、内蔵武器か。ふん、煮るなり焼くなり勝手にしてよ。ぷいっ」

検事総長:「起訴事項の緊急追加を申し立てます。たったいま、被告人は銃砲不法所持罪、傷害罪および不敬罪の現行犯となりました。
次に、被告人の人定ですが、被告人は外国の工作員である疑いが濃厚です。よって真の本名および年齢の確認は不可能であります。
職業も表面上はxx商事社員ですが、真の職業でない疑いが濃厚であり、真の職業を確認することは不可能であります。
経済特区入国時の虹彩登録データより、外国人であることは明白であり、越境資格がないことの立証は十分です。」

国選弁護人:「人定に関する検察官の答弁を承認します。では、証拠の開示を求めます。」

検事総長:「証拠として証人の視覚バックアップデータ開示承認を要請します。証人名、マサ、年齢、37歳、住所、宙軍省借り上げ官舎、
職業、宙軍軌道警備部隊第三小隊長・特務中尉および郭クピドタワー・売春婦、開示要請期間、本日5時から6時。」

マサ:「げっ、歳ばらすなよ。コギャルの立場に配慮が無いなぁ。年齢は不詳に訂正して下さい。」

検事総長:「あ、失礼しました。年齢は不詳でありました。裁判記録の訂正を申し立てます。」

皇帝:「証人は当該視覚データにつき重要なプライバシーが含まれるときは、上官の検認を経てモザイク処理を要求できます。要求しますか?」

マサ:「歳ばらされて今更...モザイクは必要ありません。開示を承認します。」
287pinksaturn:2006/08/04(金) 18:44:24 ID:6dwgsOAU0
皇帝:「証人は宙軍省サイボーグ管理サーバーのマイページからスクリーンに視覚バックアップデータを転送して下さい。」

マサ:「はいただいま。(体内通信)マイページ素体番号認証、映像データ送信...」

皇帝:「被告人、この映像に映っているのは貴女本人に、間違いないですね?。異議はないですか?。」

キャサリン:「(暗かったのにぃ、こんな鮮明に...)ぷいっ。」

皇帝:「被告人は異議なしと認めます。弁護人はどうですか?。また、情状につき意見はありますか?。」

国選弁護人:「証拠は承認します。情状について、被告は自らここに来たので自首を主張します。」

皇帝:「自首の情状は認めましょう。検察官は求刑を。」

キャサリン:「(情状酌量?ひょっとして極刑なし?情報取る気?)ぷいっ。」

検事総長:「勅令の特定技術開示規制令の違反に関して人権削除刑、これについては情状酌量の制度がありません。
占有離脱物横領罪について禁固3ヶ月のところ自首を認めて禁固3時間。
銃砲不法所持罪について禁固3年、傷害罪について禁固5年、不敬罪について禁固10年をそれぞれ求刑します。
なお、外国工作員によるA級犯罪ですから、人権削除刑に伴う逃亡予防緊急処置の即時執行を求めます。」

皇帝:「弁護人、最終陳述を。」

国選弁護人:「情状に関する配慮ありがとうございます。以上。」

キャサリン:「ちょっとぉ、どこが情状酌量なのよぉ!。」
288pinksaturn:2006/08/04(金) 18:45:52 ID:6dwgsOAU0
皇帝:「やっと口をきいたわね。でも遅いわよ。被告人は不規則発言をやめなさい。判決を言い渡します。
主文。 被告人を人権削除刑に処する。逃亡予防緊急処置の即事執行を認める。他の求刑について人権削除刑を優先し刑を免除する。
判決理由: 特定技術開示規制令の違反に関して物的証拠が認められる。
判決は以上ですが、被告人が外国人であることに配慮し、帝国の刑罰について特別に説明します。
人権削除刑とは、帝国において死刑廃止に伴い施行された代替刑です。本刑の被執行者は、身体を含むすべての所有権を国家に接収されます。
身体の所有権喪失に伴い、新たに非人の身分が付与され、国家が飼養する動物として扱われます。生命は積極的に奪いませんが保障しません。
身体の所有権喪失は脳にも及ぶため、人権は一切認められず、サイボーグ素体のように新たな身体を私費で購入し所有することはできません。
動物としての飼養目的は、主として実験用となりますが、状況により民間に払い下げられ、転用される場合もあります。
逃亡予防緊急処置とは四肢の取り外しのことです。被執行者が生身の四肢を有する場合は切断するということです。」

キャサリン:「それじゃ、動物だって虐待じゃないのぉ!。」

皇帝:「帝国には、岩石や機械や植物を動物の下に置いて差別する法制度はありません。万物みな公平にが理念です。
では、逃亡予防緊急処置の即事執行を認めたので、執行官を指名します。真理亜、マサ、以上の者は直ちに執行にあたりなさい。
執行場所は当法廷の下層に設けた執行区画とします。生身だから第二処刑室を使用すること。」

マサ:「えっ。それって私らで四肢の切断をやれってことですか?。」

真理亜:「当然でしょ。」

マサ:「だって私は脳外科限定だから無資格じゃないですか。」

皇帝:「非人は動物ですよ。そもそも医師免許なんか要りません。」

マサ:「はあ。だけどぉ、スパイ捕まえたらご褒美かと期待したのに、代わりにスプラッタ仕事ですかぁorz。」
289pinksaturn:2006/08/04(金) 18:46:27 ID:6dwgsOAU0
皇帝:「あ、ご褒美のこと言い忘れてました。実はこのたびの冥王星到達に伴いサポート作戦の実行者に昇進を発令予定でした。
貴女にはここで発令します。それから、北米連スパイ捕獲の功績でもう1階級昇進を発令します。これで特務少佐ね。
それから、資格を満たしたので、ここで貴女を準侯爵に叙爵します。1代貴族になったからには、改造手術動員義務があります。
改造手術動員義務には、人権削除刑に伴う非人の手術も含まれます。これで納得したかしら。じゃ、第二処刑室にGO!。」

真理亜:「マサ、引っ立てるからこいつの左側押さえなさい。さあ来いっ!。」

キャサリン:「いやぁぁ、許してお願い。神様仏様皇帝様...」

皇帝:「ごめんね。私には、一度出した判決を覆す権限は無いのよ。お詫びに手術を上の見学室から見守ってあげるわ。
(ホントは素質の良い非人が少なくて困っていたのよ。やっと遠隔地開発用制御装置”人柱”の試作が出来るわ。
これで、カイパーベルト開発の道が開けるかも。北米連情報局には感謝しなくちゃね。楽しみぃー。
でも、つい、はずみで発令しちゃったけど、マサの叙爵は早すぎたかなぁ。まあいいや。手術手術...。)」
290pinksaturn:2006/08/04(金) 19:12:52 ID:6dwgsOAU0
(第二処刑室 http://pinksaturn.fc2web.com/dainisyokeisitu.htm 皇帝の見おろす場所から)

真理亜:「マサ、私は右手固定するから、左足固定して。済んだら手足交代でもう一回固定ね。」

キャサリン:「いやあ。やめてお願い。」

マサ:「こっちも嫌々やってんのよ。しっかし、往生際が悪いなあ。ホントにこれでもスパイですかねえ。」

真理亜:「欧米人は最後まであきらめない教育たたき込まれているからね。軍人なら少しは見習った方が良いわよ。
固定できたね。それじゃ、はさみで服切り取りなさい。」

マサ:「はは、なんだか変態強姦魔みたいですね。...うわー金毛、毛むくじゃら。手入れ悪いなぁ。
セクースする暇もない生活だったみたいですね。スパイったら体を武器にってイメージあるけど、かっこわるいなぁ。」

真理亜:「手足、根本から切るから脇と陰毛剃って。」

マサ:「足、もっと開けないかな。これじゃやり辛いんですけど。」

真理亜:「これで、固定台を回転して手足の位置が調節できるのよ。ほら。」

キャサリン:「いやあ、やめてー」

マサ:「うるさいなあ。あっ、暴れるなよ。おまんこに傷が付いちゃうよ。」

真理亜:「少しぐらい傷つけても良いわよ。どうせ明後日には生ゴミになるんだから。」

マサ:「生ゴミ?。どういうことですか。」

真理亜:「手術動員命令書見てないの?。CCで行ってるでしょ。」
291pinksaturn:2006/08/04(金) 19:15:15 ID:6dwgsOAU0
マサ:「あ、なになに、本日は逃亡防止緊急処置実施のこと。明後日まで休息後、上半身部分のみ脊髄を付けて脳摘出、人柱に移植せよ。
何なんですか?。人柱って。サイボーグボディの機種名みたいですが変な名前ですね。」

真理亜:「無人惑星開発施設の保守管理用制御装置として冥王星のような遠い惑星に残置するための特殊ボディ試作機よ。
そこに置いてあるじゃないの、ほらその右側のやつよ。」

マサ:「えええっ、見慣れない装置が置いてあると思ったけど、あれってサイボーグ体なんですか。
ボディってより、ただの円筒じゃないですか。実験動物とはいえ酷いなあ。性器すら憑いてないなんて。」

真理亜:「ちゃんと両脇に目とマニピュレーターがあるでしょ。長期残置用だからメンテナンスフリー化のため余計なものは憑かないの。
その代わり、耐放射性が良くて、補給も豚に頼らず水と玄米を入れるだけで生命維持が出来る優れモノよ。保障はないけどね。
原案では信頼性向上のため目とマニピュレーターも省いてたんだけど、単独で最低限はセルフメンテを出来るように復活したのね。
このボディの欠点は性器がないことと、脊髄を半端なところで切るから一度これに移植してしまうと一般のボディに移せないことね。
そのため、通常の素体に適用すると基本的人権である売春権の侵害になってしまうから、非人が出ないと使用出来ないのよ。
非人なら何でも良い訳じゃないわ。もちろん男は使えないし、無人の惑星開発施設を一体だけで保守管理する素質も必要よ。」

マサ:「言われてみれば、ボディに見えてきますね。昔、古典の物語で出てきたデッキマンとかいうサイボーグに似てるなぁ。
だけど、非人素体がいくら有能でも敵のスパイじゃ、手の届かないところに置かれてちゃんと働きますかね?。
遠隔地用だと自律的な判断能力がいるから、人格壊すような脳改造は出来ない筈ですよね。」

真理亜:「無人開発施設の最重要業務は水資源の確保でしょ。これを怠ると人柱に補給する玄米が生産できなくなるのよ。
だから、敵意があっても生存意欲があれば使えるわ。欧米人は教育や宗教のせいで一般に諦めが悪いから好都合よ。」

キャサリン:「うわぁぁぁぁん、いやー、えーん...」
292pinksaturn:2006/08/04(金) 19:15:51 ID:6dwgsOAU0
マサ:「あーあ、泣いちゃった。しかし、明後日移植だとBCI訓練も無しでしょ、大丈夫なんですか?。」

真理亜:「操作は舌と声帯の運動神経だけで音声入力主体のシンプル設計になってるから要らないわ。お、剃毛済んだわね。
手を洗ってこようか。それから藻前は眼球をアイビームに替えてくるのよ、止血に使うから。」

マサ:「断端血管の止血処置はきちんとしなくて良いんですか。」

真理亜:「2日保てばいいから、ビームで焼いて止めておくのよ。太いの1,2本は縛るけどね。」


(10分後)

真理亜:「非人の消毒はそこのミニシャワーで消毒液かけとけばいいわ。失禁の処理もそれで洗うのよ。」

マサ:「これですか。なるほど、失禁は下の溝に落ちるんですね。はい、洗いましたよ。」

真理亜:「電気鋸回して。まず左足からね。適宜アイビームで切り口を焼きながら切断するのよ。簡単でしょ。」

マサ:「あれ?。麻酔は?」

真理亜:「その電気鋸は特殊なやつで刃の微細穴から麻痺剤が少しずつ出るから、あんまり痛くないのよ。便利でしょ。」
293pinksaturn:2006/08/04(金) 19:34:01 ID:6dwgsOAU0
キャサリン:「いやー。やめて。お願い。全財産上げるから。」

真理亜:「財産なんて全部接収されたでしょ。くれるモノもないくせに。諦めなさい。マサ、ぐずぐずするな。」

マサ:「昇進と引き替えとはいえスプラッタやだなぁ。」

真理亜:「情けないこと言ってると結婚してやんないぞ。」

マサ:「え、今なんて...えーい、しかたない。ざくっと」

キャサリン:「ぎぃぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁ...」

マサ:「うわー、血がこんなにぃ、とにかく止めなきゃ。ラブラブ光線、ラブラブ光線、ラブラブ光線。
うっ、骨に届いた手応え。えいっ、骨切れた。よし、残り一気にプチッと。うわ、また血がラブラブ光線。」

真理亜:「切った足ちょっと横にどけて。止血アシストするわよ。デルタ・ゼロビーム。」

マサ:「ラブラブ光線。よし止まった。太いのも止まりましたよ。このアイビーム強力だな。」

真理亜:「そういえばやけに良く効くわね。波長も短かそうだし。準備室に備えてあったの?。」

マサ:「準備室で換えようとしていたら、陛下が現れて自分の目玉外してこれを使えと仰せに。」

真理亜:「どうりで。それは当たり光源を組み込んだ選別品ね。レーザーって光軸調整のばらつきが大きいでしょ。
皇族方の中には、優秀な工員が組み立てた中から1%位取れる選別品のアイビームを使う方もいるのよ。
平均的なものの30%増しぐらい、威力があるそうよ。それをくれてしまうなんて藻前も気に入られたものね。」
294pinksaturn:2006/08/04(金) 19:34:54 ID:6dwgsOAU0
マサ:「言われるままに装着したのですが、そんな貴重品とは光栄な。安易に使って良かったのかしら。」

真理亜:「下賜されたってことでしょ。ありがたく頂いておいて、有益に使うよう心がければいいのよ。
藻前も今日から平時の内蔵武器搭載が許される身分になったから、後で外して返す必要は無いわ。
但し、陛下や東宮様に気に入られると良いこともあるけど、難しい任務も来やすくなるから気を引き締めなさい。
次、右腕よ。足ばかり先に切ると、暴れやすくなるから、対角で切っていくのよ。」

キャサリン:「ううう...痛ぁい。もうやめて。お願い。」

真理亜:「まだ4分の1じゃないの。少しは麻痺剤も効くのに音を上げるの早すぎるわよ。マサ、始めなさい。」

マサ:「はいはい。電気鋸始動、回転数よし、ざくっと...ラブラブ光線、ざく、ラブラブ、ごり、ラブラブ...」

キャサリン:「うううぎぃぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁ...ぶくぶく、がくっ、じょろろ−」

真理亜:「根性無しのスパイねえ。もう、気絶失禁か。しょうがないなあ。洗ってやるか。マサは、そのまま続行!。」

マサ:「ざく、ラブラブ...泡吹いてますね。呼吸大丈夫かな。」

真理亜:「右腕完全に切れたら、診てやって。痰吸引機で吸えばいいと思うけど、やばそうだったら挿管かな。」

マサ:「右腕一丁上がり。どれ、呼吸は?。ちと心配ですね。鼻から酸素チューブ突っ込みます。つんつん。」

キャサリン:「ひくっ、ううううううう痛ぁい、もう殺せ...」

マサ:「酸素入れたから、気がついたようですね。」
295pinksaturn:2006/08/04(金) 19:35:44 ID:6dwgsOAU0
真理亜:「じゃ、次、右足よ。」

キャサリン:「やっぱり殺さないでぇ、お願い、やめて...。」

マサ:「べつに、殺そうとしてる訳じゃないのよ、ただ逃げられないように手足外すだけだってば、はい、ざくっ。」

キャサリン:「あうぎぃぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁ...。」

真理亜:「たかが、手足外すぐらいで、騒ぎすぎねえ。まったく。こりゃ、明後日もうるさそうねえ。」

マサ:「脳摘出は全麻でやるんでしょ。」

真理亜:「非人の場合は、首の血管処置と開頭はカッターから出る麻痺剤で簡易に痛み弱めるだけなのよ。
トランスポンダ付けるときは、神経じかに弄るから、発狂しないよう外部維持から全麻かけるけどね。」

キャサリン:「ひいい、ガクブル((((;゚Д゚)))...、じょろろー。」

真理亜:「また失禁、ったくもう。藻前が余計なこと聞くから。はい洗浄。マサ、あと左手一本で終わりよ。」

マサ:「はいはい。とりあえず、この場を逃げたいんで、一気にざくっと、ラブラブ光線も連射...」

キャサリン:「ぎゃぁぁぁぁぁぁ...ううう、がくっ、じょろろー。」

真理亜:「終わったのは良いけど、また気絶かよ。マサ、腹の静脈に点滴刺しといて。」

マサ:「はい、ぐさっと。これで明後日まで保つんですよね。」

真理亜:「栄養液に抗生剤と鎮静剤が混じってるからたぶん保つわ。手足無くなったから、暴れようもないし。
手は、検察が処刑の証拠として回収するし、足は部品センターが取りに来るからそのままで良いわよ。
とりあえず今日はご苦労さん。帰って休みなさい。明後日、来たらすぐ軸索誘導剤点眼と剃髪ね。」

マサ:「はい、その手順は身に付いてますから。お疲れ様でした。」
296pinksaturn:2006/08/04(金) 19:46:56 ID:6dwgsOAU0
(翌日、カロンからのテレビ中継)

マオ:「地球の皆さん、毎度お邪魔します。先日はアクシデントでの中止、大変失礼しました。
執念深いのが取り柄の私たちなんで、しつこくカロンからアイスショウをお送りします。今日は成功させますよぉ。」

ミキ:「先日の事故原因は低重力でいい気持ちになってついついジャンプを高くしすぎたせいです。
寒い中、カメラが追うのも大変でしたので、今日は高さを控えめにします。
小手調べにダブルアクセル8連発ぐらいから行ってみましょう。...やっぱ楽勝でしたね。
自信出てきました。では、加速付けて、9連続4回転ジャーンプ!...あっさり成功しました。」

マオ:「では私も。いきなり大技も危ないんで、こんな生き物のいなそうな場所ですが、白鳥の舞い...。
うん、調子出てきましたよ。それでは、低めに9連続4回転ジャーンプ!...成功しました。
続けて、2人一斉に、9連続4回転ジャーンプ!画面ぎりぎりだったかな?。映ってる?。収まったようですね。
今日は、大技で度肝を抜くのもほどほどにしなきゃいけないので小道具を使ったネタをお見せしましょう。
この透明なボール、何で出来てると思いますか?。ただの氷じゃないですよ。酸素の氷です。落としてみましょう。
よく弾みますね。ゆっくり圧縮しながらここの寒さにさらして透明な結晶にしましたので割れないようです。
これを手鞠にしてつきながら滑ってみましょう。こりゃ面白い。じゃ二人でパスしながら。ミキ、いくよー。」

ミキ:「はい、..はい..はい。では交互にダブルアクセル入れながら。ほい、ジャンプ、ほい...。
え、もう時間無いって?。楽しいことはすぐ終わっちゃいますね。そろそろフィニッシュ行きますよ。
わざわざカロンでやってみせるような技じゃ無いですが、一応見せ物ですのでイナバウアー。まだまだ...。
低重力なのでいつもより長くなっております。止まりませんね。このまま最後まで続けます。」

マオ:「こっちもフィニッシュ決めないといけないですね。高速片手ビールマンスピン行ってみますね。
おおー、低重力だとなかなか勢い落ちませんね。目が回るぅ...回る回る、回ったままで失礼します。でわまた。」
297pinksaturn:2006/08/04(金) 19:48:02 ID:6dwgsOAU0
(北米連大統領官邸)

ヤブー:「またあのバカ娘どもか。ありゃあ、やっぱり人間業じゃない。神を恐れぬサイボーグ娘どもめが。
失敗してぶっ壊れちまえば良いんだ。ところでコメー、情報収集はどうなっているんだね。」

コメー:「情報局がP国駐在の工作員に探索を命じたのですが、越境後すぐに音信が途絶えたそうです。」

ヤブー:「捕まったかな。小娘帝国が、何か言ってきても”当局は一切関知しない”で押し通せ。」

コメー:「救出作戦や新たな工作員の投入はさせなくて良いですか?。」

ヤブー:「境界警備は厳重のようだから無駄な犠牲は増やしたくないな。衛星偵察はどうだ。」

コメー:「衛星写真では、ビルや民家が僅かに点在するだけでジャングルだらけのまさに自然保護地区です。
変わったものといえば東海岸のロケット打ち上げ場と太陽熱や潮汐を利用するらしい発電施設くらいですね。
太陽熱を使うらしい施設に囲まれた領域は、いつも水蒸気がたなびいていて赤外線でも様子がよく判りません。
もしかしたら、重要な首都施設や工業施設を水蒸気とジャングルで隠しているのかもしれませんね。
水蒸気が異様に濃いので、我々の衛星を捕捉していてタイミング良く放出する仕掛けがあるのでしょう。」

ヤブー:「冥王星に行ける技術があるくらいだから衛星は捕捉されていると見るべきだな。仕方ないな。
潜水艦を使った情報収集活動はどうだろうか?。軍の通信電波ぐらい収集出来ないかね。」

コメー:「旧P共和国の200海里水域には海底集音網が張り巡らされている模様です。
潜水艦が侵入するとすぐに、海底に置かれたらしき施設から強力なソナーが発信されます。
水上の警備艦も多数が活動しているようです。表向きP共和国海軍となっていた部隊です。
人口規模の割にずいぶん多いので、あの帝国の本体に属する艦も混じっていると思われます。
200海里内でも無害航行は許されますが、潜航は漁業への影響を理由に沿岸国が規制出来るのです。
ソナーによる警告を無視して国籍不明艦として沈められた場合は抗議のしようもないです。
200海里内に接近しての情報収集はリスクが大きすぎると思います。」
298pinksaturn:2006/08/04(金) 19:48:46 ID:6dwgsOAU0
ヤブー:「そうか、無理は出来ないな。自由に活動出来る経済特区で地道に情報収集を続けよう。
それから、奴らの友好国らしき国は判るかな。」

コメー:「我々の産業基盤を脅かしてでも地球温暖化を阻止するという政策ですから、小さい島国でしょう。」

ヤブー:「まず、それらしい国をリストアップして、くまなく工作員を投入し、様子を探るんだ。
奴らの味方とはっきりしたら、反政府勢力になりそうな連中を援助して政権転覆工作をやるんだ。
奴らの友好国の現首脳なら、詳しい情報を持っている香具師が居るかも知れないだろう。
そんな香具師を政治犯に仕立て上げることができれば、牢屋で締め上げて情報を取れるだろう。
そうすれば、警備の厳しいところへ無理に侵入しなくて済むではないか。」
299名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 19:51:12 ID:lTjcYhRO0
なんか夏の四肢切断祭りの様相。
300pinksaturn:2006/08/04(金) 19:59:22 ID:6dwgsOAU0
(翌日、一昨日の続きで第二処刑室 http://pinksaturn.fc2web.com/dainisyokeisitu.htm

マサ:「1時間前に軸索誘導剤を点眼しました。剃髪にかかります。」

真理亜:「よしよし、勤勉にやってるね。これも刑罰の一環だからバリカンが詰まっても止めずに引きちぎるのよ。」

キャサリン:「お、お願い。ぼ、坊主は勘弁して。小さいとき10円禿でいじめられたの、ね、ね、お願い。」

真理亜:「あのねえ、髪があったら脳が摘出出来ないでしょ!。マサ、早くしなさい。今日は残業無しよ。」

マサ:「マルコメマルコメ...うわ、本当に詰まった。外人の毛質はバリカンの刃が絡みやすいのかな。えいっ。」

キャサリン:「い、いやぁぁぁぁ...ぎゃ、痛いっ...いやぁぁぁぁ」

真理亜:「よし、ゴミを捨てたら、まず首を消毒して切開し、血管切り替えバルブを取り付けるよ。」

マサ:「シャワーかけました。首だったらマイクロカッターを用意すりゃ良いですね。ここらかな?。」

キャサリン:「ぎゃっ。痛ぁい。」

マサ:「あーあ。また血だよ。えい、ラブラブ光線。」

真理亜:「止血やりすぎて、大動脈焼かないでよ。保護管に入れてそのまま使うんだから。」

マサ:「ええ、そこは前にさんざんやりましたから判ってます。首、開きました。」

真理亜:「保護管はめ込んで、もうちょい上まで組織を押し分けるように押し込んで、うんそこ。」

キャサリン:「いいいい痛い痛い、ぐぇっ。」
301pinksaturn:2006/08/04(金) 19:59:56 ID:6dwgsOAU0
マサ:「分岐側バルブ付き人工血管差し込みます。よし、先端、大動脈に刺さりました。固定よし。」

真理亜:「部品センターから足の骨髄使った造血ユニットと抽出血液来てるわね?。」

マサ:「これですよね。普通は40日かかるのに、よく2日で出来ましたね。」

真理亜:「試作専門の加工室でやっているから。殆ど手作業ね。よし、セットして外部生命維持装置起動。」

マサ:「造血ユニットセットよし。抽出血充填よし。起動しました。分岐側に繋ぎます。バルブ開、循環開始。」

真理亜:「よし、次は心臓側血管ブロックして分離、バルブ管取り付けね。」

マサ:「ピンチコックはこことここで良いですね。じゃ血管ここで切りますよ。...うわ、中に残ってる血が。」

真理亜:「嫌いでもそこはビームで焼くなよ。一気にバルブ管挿入。抑えたまま上のピンチコック取る!。」

マサ:「ふう、保護管と繋がりました。隙間充填ジェル注入します。」

真理亜:「結合良いようね。Y字カバー接着して良いよ。ん、それじゃあ脳摘出にかかろうか。」

マサ:「普通の素体だと背割りだから、うつぶせに裏返しますよね。同じで良いですか。」

真理亜:「脊椎が胸から上だけで良いから、あの専用スタンド持ってきて、立てて摘出するのよ。」

マサ:「ああ、これですか。よいしょ、結構重いな。ここに置けばいいですか?。」

真理亜:「いいよ。じゃ、二人で両脇から頭と胴支えて、立てるわよ。せーの、上げて、降ろして、よし。」

キャサリン:「うううう。」
302pinksaturn:2006/08/04(金) 20:01:03 ID:6dwgsOAU0
真理亜:「じゃ、頭のてっぺんから背にかけてよく消毒よ。」

マサ:「こんなもんで良いですよね。開頭もここ専用の器具使うんですよね。どれだっけ?。」

真理亜:「スカルプオープナーよ、そこのU字型のマウントに小さな丸鋸が乗ってるやつよ。」

マサ:「ああ、これですか。こりゃ、額に横一線でモロ傷が付きそうだ。まあ関係ないか。脳摘出だから。」

キャサリン:「ひいい、ガクガクブルブル((((;゚Д゚)))、じょろ−。」

真理亜:「また失禁か。でも間もなく最後ね、排泄は。じゃあ、オープナーのクランプ額に填めて。」

マサ:「こうですか。えい...きついな、んむぎゅっと。量端の穴でアンカーピン刺すんですよね。こうか。」

キャサリン:「むぎぇっ。...っぎゃあああ。」

マサ:「やけに痛がるなぁ。」

真理亜:「そりゃそうよ。アンカ−ピンの先は安定のため、こめかみの骨に食い込むようになっているんだから。
じゃあ、頭のてっぺんからもう一度消毒液ふりかけて、オープナー始動よ。」

マサ:「これくらい洗えばいいですよね。スカルプオープナーか、どんな切れ方するのかな。えい、始動。
わわ、チュイーンだって甲高い嫌な音がするなあ。あわわ、思い切り血が飛ぶじゃないですか。」

キャサリン:「ひぎぃぃぃやぁぁぁぁぁ...。」
303pinksaturn:2006/08/04(金) 20:13:21 ID:6dwgsOAU0
真理亜:「血が嫌なら断面にビーム撃ち込んで焼いて良いわよ。」

マサ:「はい、ラブラブ光線...それにしても、やたら痛がるじゃないですか。」

真理亜:「そりゃそうよ。表皮や筋膜だけでなく、頭蓋骨もいっぺんに切ってるんだから。」

キャサリン:「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ...。」

マサ:「そりゃ痛いっ、ていうかそもそも大丈夫なんですか?。手間はうんと省けるでしょうが。」

真理亜:「戦争や災害でサイボーグ化しか救命しようのない重傷者が大量に出たときのために開発したのよ。
刃の後ろをついていくピックアップローラーで刃が出す超音波の伝わりを検出して切る深さを調整してるの。
ただ、頭蓋骨の個人差のため厚み変化が急な箇所なんかで硬膜に傷を付ける確率が1%程あってね。
使う毎に動作ログを収集して改良中なんだけど、まだ非人にしか使えないから進んでないわね。
仮に、改良出来ても性適合問題が解決しないと一般の男に使えないから、地軍兵は殆ど救えないけどね。」

キャサリン:「あううううぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ...。」

マサ:「早いなあ、もう前頭部が終わりましたね。あ、後ろの方は自動的に折れて垂直に切っていくんだ。」

キャサリン:「ぎぃぃぃぁぅぁぅぁぅぁぅぁぅぁぅぁぅ...。」

真理亜:「頭皮の真ん中にフック突き刺しなさい。もうじき引き上げるから。上げたら切り口止血ね。」

マサ:「ざくっと。これで良いですか?。」

真理亜:「たぶん良いと思うけど、軽く引いてみて...うん良さそうね。」

マサ:「あ、止まりました。引き上げて良いんですよね。あ、ぱかっと取れてきた。ただの蓋みたい。
やっぱ硬膜に少し傷があるか。で、切り口にラブラブ光線、連射...外れた頭頂部はどうするんですか?。」

キャサリン:「あうぎゃぁぁぁぁ...。あちっあちっ...ううう。」
304pinksaturn:2006/08/04(金) 20:14:40 ID:6dwgsOAU0
真理亜:「そっちのゴミ箱で良いわよ。何も使い道はないからね。」

マサ:「禿の移植治療なんかに使えませんかね。拒絶反応があってダメか。使えりゃ父に上げたいけど。」

真理亜:「バカ。無理でしょ。それに、もし成功しても外人みたいな髪で良いの?。さて、摘出か。
そろそろ痛いの終わりにしてやるかな。外部維持装置から全麻注入して。効いてきたら水中作業用意!。」

キャサリン:「うううう、痛い、痛い、ぅぅぅぅ....しーん。」

マサ:「ああ、うるさかった。あんまり刑罰規則ばかり言わないで、早く全麻入れればいいのに。」

真理亜:「何言ってんの。今日の仕事は術者じゃなく、執行官なのよ。さあ、水中取り出しよ。」


(この先しばらくは、先日の(19)の >>50 からと大差ない作業となります。毎度長すぎるので省略。)

(約2時間後、生食槽で脳のケース組み込み終了時点)

マサ:「ふう、できた。脊髄の接続が上の方だけだったから楽でしたね。」

真理亜:「これだけ短いと搭載時の取り扱いも楽よね。脊髄機能の完全人工化が出来たらいいのに。」

マサ:「でも、性感の個人差が無くなるのは寂しいですよ。売春客だってつまらないんじゃないですか。」

真理亜:「それもそうね。こいつら非人にはそもそも関係のないことだけどね。さあ、出ようか。」

マサ:「クレーン上げます。...さて組み込みですね。」

真理亜:「先に2個目の造血ユニットを組み込むわよ。上蓋開いてるから円筒の上からソケット見えるでしょ。」

マサ:「ああ、ここに差し込むんですね。中間液は何処に入れるのかな。」
305pinksaturn:2006/08/04(金) 20:15:41 ID:6dwgsOAU0
真理亜:「側面ハッチ内に注入口があるわ。長期無補給仕様だからリザーブタンクでかいわよ。」

マサ:「これ、金属外皮が分厚いですね。断面見ると3層構造か、耐放射が厳重なんだな。」

真理亜:「チタンで鉛の層を挟んであるのよ。我々のような宇宙滞在制限が要らない筈なんだけどね。」

マサ:「なるほど。これじゃあ胴体を曲げたり出来るようには絶対なりそうもないですね。まさに人柱だ。」

真理亜:「非人柱と呼んだ方がいい気がするけど、発案者が語源にこだわったらしいのよ。」

マサ:「さっきのソケット1個だったけど、こいつの生命維持装置って単一なんですか?。」

真理亜:「底面側にもあるわ。造血ユニットが2個しかないから組み込んでから外部維持装置のを移すのよ。」

マサ:「へえ、変わってますね。我々ので言う1次・2次と機能は一緒なんですか?。」

真理亜:「両系とも1次装置相当ね。惑星開発基地残置用で宇宙遊泳はしないから恒久維持優先なのよ。
豚に依存しないためには原液を使うのも無理だし。タブレットの成分なら玄米から作れるらしいんだけど。
ただ、そのために数種類の善玉菌を多段で使ってタンパク合成をやるので無呼吸化は無理なんだって。」

マサ:「じゃあ、基地が破損して真空になったら氏にますね。」

真理亜:「水の電気分解で3時間ほど持ちこたえられるわ。基地の中央管理室に置くなら十分ね。」

マサ:「脳、はめ込みますね。こうで良いんですか?。」

真理亜:「外部維持装置のホースを折らないように気を付けるのよ。そうそう、そこよ。」

マサ:「はあなるほど、この4口液体ソケットが血流2組分ですね。じゃあこの管をこっちか。」

真理亜:「その状態で起動して、覚醒させるわ。テストしてから下の系を差し替えるわよ。」
306pinksaturn:2006/08/04(金) 20:26:47 ID:6dwgsOAU0
マサ:「こいつの電源やコミュニケーションてどうなっているんです。」

真理亜:「電源は外部からのDC48Vが通常で、内蔵ニッケル水素2組が各4時間相当のバックアップね。
放射線障害対策でプルトニウムは内蔵せず、移動時は移動台車からもらうようになっているわ。
コミュニケーションは、基本的に基地設備管理の専用システムで互換性がないわ。
ただ、それだけだと我々が命令出来ないから、サイボーグどうしのアドホック近接無線LANも憑いてるのよ。
繋がっているのは声帯と聴覚の音声通話のみだからデータ通信を使って反抗する心配はないわ。」

マサ:「なるほど。じゃあ、まず48V供給線を引っ張ってきますね。...ここに挿すのかな。起動釦はこれか。」

キャサリン:「ぎゃぁぁぁ...あれ?、痛みが消えたわ。ランダムな光だけで何も見えない。ここは何処なの?。
ひょっとして来世?。あいつら、死刑はないとか言って、嘘だったのか。さんざん痛めつけて...畜生!。」

真理亜:「こらぁ!。戯れ言言ってないで返事しろ、へたれスパイめ。」

キャサリン:「その声は!。ホントに脳だけにしやがったのか。この人でなしどもめ。地獄に堕ちろ。」

真理亜:「人でないのは藻前の方だろ。ま、どうやら声帯と聴覚は繋がっているようね。さてと、おい非人!。」

キャサリン:「ぷいっ。」

真理亜:「反抗するなら好きにしても良いけど、目ぐらい見えた方が良いんじゃない?。調整してやろうか?。」

キャサリン:「くっ、いつか復讐するためには一応言うことを聞くか。」

真理亜:「ほれ、直線が見えたら、わんと言え。」

キャサリン:「...あ、直線、誰が犬の真似なんか。くそ、ぶう!。」
307pinksaturn:2006/08/04(金) 20:28:02 ID:6dwgsOAU0
真理亜:「見えてるようだな。じゃあこれは?。」

キャサリン:「わっ、何これ、ポケットゲーム機みたいな荒い画面、何、”ぬるぽ”、バカにするな、ガッ!」

真理亜:「どうやら、見えるようになったみたいね。お前の視覚はピクセル少ないから一生そんなものよ。
ほら、繋がっている神経に見合った、安物の眼球と腕を繋いでやるよ。」

キャサリン:「きゃあ。何、このgifみたいな視界は。あ、お前ら目の前にいたのか。畜生!。」

真理亜:「マニピュレータ振り回してるから腕の神経も良いようね。後は舌か。おい、舌延ばしてみろ。」

キャサリン:「ふん、誰が、べーだ。あ、しまった。」

真理亜:「実体が無いからちゃんと伸びたか判らないけど、舌押し反応LEDは点いたわね。よくお聞き。
これからお前が与えられる仕事でコンピュータ操作するときは、舌の神経がマウス代わりだからね。」

キャサリン:「ふん。誰がお前らなんかの仕事を。ぷいっ。」

真理亜:「いまに従いたくなるわよ。ほれ、苦み信号最強でどうだ。」

キャサリン:「う、苦ーい。ぐげええ。は、吐けない。ごええ...。」

真理亜:「わかったかな。痛覚が無くても罰を与える方法は用意してあるんだよ。ま、止めてやるか。」

キャサリン:「こんな酷いことしやがって、今に世界最強のわが軍がお前らを滅ぼして救出してくれるわ。」

真理亜:「負け犬の遠吠えしてるけど、生きる意志は残っているようね。よしもう一組の血流も差し替えて。
マサ、外部維持装置の造血ユニット取ってきて。来たね。じゃ、持ち上げて。出来たわ。マサ、終了報告出して。」
308pinksaturn:2006/08/04(金) 20:28:44 ID:6dwgsOAU0
マサ:「送信しました。上下に蓋はつかないんですか。あと、こいつ、これからどうなるんですか?。」

真理亜:「宙軍研究所惑星開発施設実験部が引き取って、使えるように調教するのよ。蓋もあっちで装着するの。
はい、お疲れ。」


(帰り道)

マサ:「今度はいろいろありましたが、とにかく人権削除って怖い刑ですね。冤罪でなったらあんまりだな。」

真理亜:「冤罪で執行される余地はないのよ。直接の物的証拠がないときは、暫定刑で終身禁固になるの。
そして、時効無しで再捜査が命じられて、たとえ新証拠が出てなくても5年ごとに再審が行われるのよ。
検察の尻をたたくためと、弁護側が新証拠を出す機会も与えなきゃいけないからね。
証言で人権削除が執行出来るのは、改竄出来ないバックアップログを持つサイボーグが証人の時だけなのよ。
まあ、今回のような事件なら目撃者が一般シビリアンだけでも地下鉄の監視カメラ映像で立証出来たけど。」

マサ:「なるほどねえ。じゃあ、直接には私があいつの運命を決めちゃったのか。恨むなよぉ。」

真理亜:「恨まれたって良いじゃないの。陛下の気まぐれも加わったとはいえ念願の一代貴族になったでしょ。」

マサ:「あんまり急だったので、実感が涌きません。とりあえず明日からまた売春して英気を養わないと。」

真理亜:「売春するのは良いことだけど、少しは優雅なやり方憶えなさい。インスタント貴族さん。」


(5−407様 今も来ておられますか?。人柱のネタ、気に入ってたので勝手に使いました。ご免なさい。
人柱ネタを書きたいがため、マサの昇進まで勇み足になってしまいました。年表直してつじつま合わせorz。
次回予告(24)査察要求)
309pinksaturn:2006/08/04(金) 20:42:28 ID:6dwgsOAU0
興奮しすぎたのか、章番号しくじりました。
>>281 の2行目
−−(24)準侯爵マサ−−
>>308 の最終行
次回予告(25)査察要求)
でした。
熱いせいか、毎回お詫びと訂正が入ってしまいます。

>>299 まさにそのつもりで書いています。
ここらで、manplusさんの臨時増刊とか来ないかな。
そうなれば、夏休み特別セール・四肢取り外しフェアとか、出来そうですね。
310名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 22:36:59 ID:5MvUxkZC0
311名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 01:30:46 ID:g/TImbyT0
>>275
ヤギー可愛いよヤギー

ttp://akm.cx/2d/src/1154967937728.jpg
312名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 01:58:59 ID:KD1KkJn30
>>311
萌える絵ですね。GJ!!
なんかこう、手足全部外されても催涙ガス噴射くらいは反撃の機能が欲しい今日この頃。
3133の444:2006/08/09(水) 04:14:15 ID:Xpb80c440
孫の手wを抱えて怒りを内にためこんで、涙も流すことができす
ぐっとこらえるヤギー。かわいいなあ。
これ、あるなの視点から見たヤギーですよね。こういう姿をされると、
ついつい、いじめたくなっちゃいます。あるなの気持ちがよく分かるぞ。
> 催涙ガス噴射くらいは反撃の機能
本来は痴漢防止用ですか。オプションパーツじゃないですが、そういうのは
別オプションで高いのでは?ヤギーにできるのはせいぜい義眼を光らせて
相手を驚かせるとかその程度のちんけな攻撃です。
314名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 07:48:14 ID:taE/KpUDO
…目が変に光る。

ますます機械扱いされる口実になる

またイジメられる

ヤギー暗黒のスパイラル

(;´д`)


この世界の義体のQoLってかなり低そう
315名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 00:24:39 ID:eG5b2Qtr0
小説検索サイトで・・・
ttp://www.honnavi.com/search.cgi?mode=search&page=1&sort=mark&word=%83T%83C%83%7B%81%5B%83O&engine=pre&method=and&open_type=0

ttp://sv1.rentou.sagasi.jp/novel.htm
(からくり=さいぼーぐ?)
ただ少し読んだ感じだとサイボーグというより・・・

ttp://farce.kuchinawa.com/novel.html
Last word
犯罪者がですが・・・

ttp://www.alpha-net.ne.jp/users2/ryouot/novel/mw_index.htm
ページ下のほう・・・

ttp://half-blooded.sakura.ne.jp/warks/twin/index.html
・・・
316無名:2006/08/12(土) 14:17:17 ID:aI1vkau80
気合が入った運動会 中篇
 そして二日後、再び会議が始まった。今回は保留になっていた種目をプログラムに入れるかどうかがメインになった。
 「それでは、前回提案された種目の中で、運動会で行う種目を決めようと思う。それではまず武者走り競争がいいと思う人、手を上げてください」
 武者走り競争は、武士の時代に足軽たちが鎧を着て、走る姿を真似して走る競技だ、多分。歴史なんてかなにはほとんど分からないからあまり自信ないんだけどね…。
 結局それは手を上げた人が少ないため、見送る形になった。
 「次は輪投げ競争です。賛成でしたら手を上げてください」
 これは屋台にあった輪投げと同じで、棒の中に輪をいくつ入れることが出来るかを競う競技だ。でもそれを運動会でやるとあまり派手さはない。もしやるなら、それプラス何かをしないとだめだ。
 会議が進んで次々と運動会の種目が提案されたが、なかなか良さそうなものは出されなかった。そして最後にかなが提案したあの種目の話になった。
 「それでは最後にかくし芸競争について賛成のかた、手を上げてください」
 この瞬間、かなの心臓はドキドキしてきた。自分が言い出した競技だから余計にみんなの対応が気になるからだ。もし他の競技のように落されたらどうしよう…。
かなとしては採用してもらいたいけど…。
 「ええと…、かくし芸競争に賛成の人はほぼ全員賛成という事で、かくし芸競争は採用する事にします」
 さ、採用されちゃったよ…。まさか本当に採用されるなんて…。かな、すご〜くビックリしちゃったよ。
 「これで運動会の競技についての会議は終了します。次にそれらの競技をどのようにしてプログラムに組み込んでいくかを決めたいと思います」
317無名:2006/08/12(土) 14:18:27 ID:aI1vkau80
 自分が提案した競技が採用されて、かなはホッとした。すると左脇に座っている岡野君が、かなのことを笑顔で話しかけた。
 「良かったじゃないか、和多田さん。採用されて」
 「まあね、いってみるもんだね、たまには」
 右脇にいる松原さんも、小声でおめでとうと言ってくれた。
 「おめでとう…良かったね、かくし芸が競技になって…」
 あれ、松原さんが始めてしゃべってくれたよ。松原さんにもかなの気持ちが伝わったんだね、きっと。

 そう言っているうちに会議は修了して、みんなは解散していった。教室に戻ると、和真くんと祐喜ちゃんがかな達の帰りを待っていた。
 「よお、会議の方はどうだったかい?」
 「いやぁ、それがね…」
 「じつは和多田さんの案が採用されたんだよ。それでみんな驚いててね」
 突然岡野君がしゃべりだした。
 「いや、それかなのセリフだから…」
 「ごめんごめん、つい興奮しちゃってね」
 岡野君は笑い出した。
 「まあ、とにかくお前のかくし芸が採用されたというわけだな。それにしてもすごいよなあ。俺なんかこんなの採用しないだろうなあって、思ってたからね」
 「え〜、和真君、そんなのひどいよ〜」
 かな達はかくし芸採用で浮かれていた。すると松原さんがいないことに祐喜ちゃんが気がついたらしく、かな達を呼んでいた。
 「みんな、松原さんがいつの間にかいなくなってるわよ」
 本当だ、松原さん、先に帰っちゃったんだ…。何でだろ?
 「多分用が済んだから早く帰ったんだろう。それにしても松原っていまいちパッとしないよな」
 そうかなぁ…。さっきの松原さんを見てると本当に嬉しそうだったもの。それなのに黙って帰るなんて…。
 「まだ遠くには行ってないよね、だったらかなが松原さんを送っていくよ!」
 そういってかなは教室を飛び出して行った。
 「和多田さん、ランドセル置いて行っちゃったぞ…」
 「しょうがねえな、俺が持っていってやっか…」
318無名:2006/08/12(土) 14:19:29 ID:aI1vkau80
 玄関から外に出たかなは、門を出ようとしてた松原さんに声をかけた。
 「どうしたの松原さん、何で先に帰っちゃうの?」
 松原さんはうつむいたままポツリと話した。
 「…私、もう行かないと…」
 「え?どこへ行くの?」
 「…塾に」
 松原さん、塾に行ってるんだ…。知らなかった。
 「そ、そっか。じゃあせめて塾の近くまで一緒に帰ろうよ」
 でも松原さんは首を横に振って断ってしまった。
 「…ごめんね、早く行かないと塾の先生に怒られるから…」
 そう言うと松原さんは駆け足で門の外へ出て行ってしまった。
 「松原さん…、だから早く帰っちゃったんだ…」
 門の前に立ち尽くしたかなは、ただ呆然と松原さんの後姿を見送るしかなかった。
319無名:2006/08/12(土) 14:49:05 ID:aI1vkau80
 「おーい、かなやーん」
 後ろから和真君が追いかけてきた。
 「ほい、忘れ物だぞ。あれ、松原さんもう帰っちゃったのかよ」
 「これから塾なんだって…。ねえ和真君、塾に行くってそんなに忙しいのかなぁ?塾に行って楽しいのかなぁ?」
 和真君は少し考えて答えた。
 「そうだな、塾っていうのはあくまでも学校の勉強で足りないところを勉強する、簡単に言えばクラブ活動みたいなところだな」
 「それじゃああそこじゃ友達は出来ないの?楽しくないの?」
 「う〜ん、塾じゃみんなライバルのような存在だからな。よっぽど仲のいい奴以外はほとんど口も利かないんじゃないか?」
 それを聞いたかなは、松原さんがとても厳しくて辛いところで勉強してる姿を想像した。
 「…どうしよう和真君、このままじゃ松原さん、大変な事になっちゃうよ」
 「っていわれてもなぁ…、俺達だけの力じゃどうにもならねえよ。自分の力で何とかしないとだめだろうな」
 和真君は少し諦めた顔でため息をついた。…でもこのままじゃ松原さんはずっとうつむいたままだ。何とかしたいなぁ。
 「そうだ、運動会で松原さんを元気付けてあげようよ。せめて運動会の時だけでも塾のことなんか忘れさせようよ」
 「なるほど、それだったら俺達でも松原さんの力になってやれるな。よし、明日みんなで松原さんを重要な種目に出れるようにしてやろうぜ」
 「それはいいアイディアね」
 「なるほど、松原さんを目立つようにしたいんだな。僕たちも力になるよ」
 いきなり後ろから祐喜ちゃんと岡野君が現れた。
 「ビックリするじゃないか、かななんか腰抜けちゃったよ」
 「いや〜、驚かそうと思ってやったわけじゃないんだ」
 「だって二人とも先に行っちゃうんですもの」
 だからといってこんな登場の仕方はないんじゃないの?とにかくかな達は、明日松原さんをかくし芸競争に立候補してあげようと決めたのだった。
320無名:2006/08/12(土) 14:50:01 ID:aI1vkau80
次の朝。教室に入ったかな達は松原さんが登校してないことに気がついた。
 「あれ…、松原さんは…?」
 あんなに元気だった松原さんが急に休むなんて、何かあったに違いない。かなは松原さんの席の後ろにいる男の子にそのことを聞いてみた。
 「ねえ、どうして松原さん休んだの?」
 「俺も良く解んないけど、噂だと最近風邪がはやってるらしいから、もしかしたら松原の奴もかかったのかもな」
 松原さん、無理したから熱が出て休んじゃったんだ…。せっかくかくし芸に参加させようと思ったのに、これじゃあ無理だよ…。
 自分の席に戻ったかなは、和真君たちとそのことについて話し合った。
 「どうしよう、松原さんがいないと立候補なんて無理だよ」
 「いないのに勝手に決めたら本人に悪いもんな…」
 「どうしたら決める事が出来るのかしら…」
 そのとき、高らかな声とともに誰かが、かな達に近くに寄ってきた。
 「おーほほほほ、和多田さんたち、一体何のお話をしてたんですの?」
 「姫宮…、あんたには関係ないことだよ」
 「あら和多田さん、あんな競技を決めた張本人が何をおっしゃるのかしら?このわたくしがあなたたちのお力になって差し上げたいと思いますのに、関係ないとはどういうことなのかしら?」
 「実は、松原さんにかくし芸競技のメインを勧めようとしたんだけど、この通り休んでしまってどうしようもなかったの」
 それを聞いた姫宮は、鼻で笑いながらこんな事を言った。
 「松原さんがあんな競技に出るですって?あの目立たない松原さんが?」
 どうして姫宮はこんなことしか言えないんだろう。いくら自分が目立つ存在だからといって、他の人のことをあんな風に言うなんてひどすぎる。
 「松原さんのためを思って競技に出そうって言ってたんだよ。それを姫宮は…」
 かなが言おうとすると、和真君がかなの口を塞いで止めた。
321無名:2006/08/12(土) 14:50:37 ID:aI1vkau80
「姫宮、力になってくれるなら、ぜひ協力してほしいんだ」
 きょ、協力〜!?どうして姫宮となんか協力しなくちゃいけないんだよ?
 「わたくしが協力?まあ、言い出しましたのはわたくしですから、それくらいはしましょう。でも、わたくしを使うのですから、そのくらいの覚悟はあるのでしょう?」
 「ああ、覚悟はある」
 それを聞いた姫宮は、フッと笑みを浮かばせながら答えた。
 「わたくし、あなたが気に入りましたわ。いいでしょう、あなたの顔に免じて協力させていただきますわ。このわたくしの一言で松原さんを運動会のステージに立たせることも出来ますわ」
 大変な事になった。なんと姫宮がかな達と一緒に手を組んで松原さんをメインに出す約束をしてしまったのだ。姫宮の事だからとんでもない事をして松原さんを運動会に出させるに違いない。これからどうなるんだろう…。
322無名:2006/08/12(土) 15:05:19 ID:aI1vkau80
 お昼休み、かなは一馬君と祐喜ちゃん、まさる君と岡野君を呼んで屋上で朝のことを話すことにした。
 「どうして姫宮の手なんか借りなくちゃいけないの?かな達だけでも松原さんを立候補できるじゃない」
 「こんな状態で断ったら姫宮が何をするか分かったもんじゃないからな。とはいっても姫宮も悪気があって言った訳じゃないし」
 「で、でも…」
 「僕は朝ここに居なかったけど、大体のことは分かった。ここは一つ姫宮さんにも協力することを教えてあげないと」
 岡野君もそんな事を言ってるよ。とはいってもなぁ…。この前姫宮のしたことが今でも許せないんだよなぁ…。だから手を組みたくないんだよ…。
 「かなちゃんが姫宮さんのことを許したくない気持ちは僕にもよく分かる。でもずうっとケンカしてたんじゃいけないんじゃないか?いくら姫宮さんだって僕達の事を嫌がってるわけじゃないし」
 まさる君まで…。姫宮はサイボーグの事を人一倍嫌がる人だから、まさる君のことだってきっと嫌いなんだろう。それなのにまさる君はそんな姫宮をいやがったりしてない。何で…!
 「と、とにかくかなは姫宮と手を組むなんて嫌だからね」
 「かなやん、これは姫宮を変えるチャンスなんだよ。俺達が手を組む事であいつが変われるなら、お前にもプラスになるはずだ」
 「その通りさ」
 岡野君が立ち上がってこんな事を話し始めた。
 「確かにかなちゃんは姫宮さんのことを嫌いだと思ってるだろう。あのときの事件のこともあるからね。だからこそみんなで協力すれば心が一つになると思うんだ。そうすれば姫宮さんだってサイボーグの事も嫌いじゃなくなるはずだ」
323無名:2006/08/12(土) 15:06:06 ID:aI1vkau80
 でも頑固な姫宮がそう簡単に変われるはずがない。何とかしたいのは山々なんだけど、あんな高飛車な態度取られちゃねえ…。
 「かなちゃん、姫宮さんのことは置いといて、どうやって松原さんを表舞台に立たせるかを考えなくちゃ」
 あっ、そうだ。姫宮の方に話が行っちゃって松原さんのことを忘れるところだったよ。
 「そうそう、まずは松原さんのことを考えなくっちゃ」
 「とはいっても彼女はあまり人前に出るようなタイプじゃないからな…。まずは自信を持たせなくっちゃ」
 かな達は何とか松原さんを表舞台に建たせるための計画を練っていった。そのことは後で姫宮にも言うけど、本当にだいじょうぶなんだろうか…。心配になってきたよ。
324無名:2006/08/12(土) 15:20:34 ID:aI1vkau80
気合が入った運動会の中篇をお送りしました。
ついに姫宮さんまで松原さんを目立たせようと協力してきました。かなちゃんはそれを不服に思ってますし・・・。
果たして、本当に松原さんを主役にすることができるのでしょうか?
次回はいよいよ運動会当日のお話になります。意外な結末をご用意しますので、どうぞお楽しみに。
その次のお話は、久しぶりにサイボーグ色が強いお話になります。こちらもご期待ください。
>>pinksaturnさん
スパイとはいえ拷問以上の苦しみをを味わせるなんて、少しSM入ってる感じがしましたよ、今回のお話は。
こんなご時世ですからでしょうか。本格的な戦争に入らないことをただ祈るばかりです。
>>312
確かに痴漢防止や窃盗防止には必要な機能ですね。オプション扱いでしょうから値段も相当するかもしれません。
できれば安価で売ってくれるところがあれば苦労しないでしょうけど・・・。
325名無しさん@ピンキー:2006/08/13(日) 11:54:09 ID:TP67OLZl0
>>324
無名さん乙です。
次回の話になりますが、サイボーグ関連の話、期待しています。
今回の話もいい感じなんですけどね。早くサイボーグ関連の話が見たいです。
326名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 13:49:53 ID:6khOyOMT0
>>325
同上。私も早く無名さんのサイボーグ話見たい。
327名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 20:21:11 ID:JLowSYB50
>>275
しつこくてスマソ

ttp://akm.cx/2d/src/1155640067168.jpg
328名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 23:27:47 ID:XglS8p/w0
>>327

GJ!!
光の速さで保管しますた。
いいなあ。

足、どうやって外したんだろ。
さすがに性器は見せないでくれたのか、
これからも一つヤマがくるのか・・・ワクワク

こんな仕打ちを受けたらそりゃ性格ゆがむわなあ。
329名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 21:24:59 ID:c+X3tA+l0
広大なネットの海には無数の掲示板が散在する。様々な嗜好を持つ男女が集う掲示板の中には、技術が進歩しモラルが変化
するのに伴って、時には目を疑うような内容の物が出現する。そんな掲示板のある日の書き込み。

〜〜〜
57 Y子◆.8tnfz2gHs New! 永康xx年x月xx日 23時16分45秒 ID:5xuw3sM4
こんにちは。Y子です。
18歳の1級障害者・義体化1級です。
東京府近郊の方希望。
詳細はメールにて。
〜〜〜

うお何だこれわ18歳まじかよさばを読むにもほどがあるどうせ外観年齢はどうにでもなるんだし障害者手帳見りゃわか
るんじゃねいくらだろ相場は時間3マソだが18歳だぜ5マソくらいじゃねーの義体化1級は超希少だぞせめて関東近辺
なら突撃する勇者はおらんのか等。ひとしきり疑念と期待が半々の書き込みが続いたあと。

〜〜〜
221 名無し New! 永康xx年x月x日 00時59分57秒 ID:XY7m5iFQ
>>57
かわいい女の子だったよ。時間5マソエン。
〜〜〜〜

これを見て一気に沸き立つ掲示板。勇者キタ−−−(゜∀゜)−−−詳細キボンヌ自演乙写真up汁!5マソエンぼったくり
すぎ可愛ければ10マソでもかまわん脳見せ可能ですかいや漏れは四肢離断プレイが外した腕での手コキも捨てがたい淫
行は駄目だろ外すなら人工性器しかいっそのこと首外しをそれは義体技師資格がないとできんぞ交通費持つからこっちま
で来てくれうんぬんかんぬん。最初の時とは打って変わった熱い書き込みで埋め尽くされていく。

1時間5万円。1日30万円。1ヶ月900万円。止むに止まれぬ事情で始めた事とは言え、こんなに簡単に大金を手にすることが
できるとは。地道にバイトで汗をかく(義体だからかかないけど)のがバカらしくなる。
Y橋Y子18歳。暗黒面の誘惑に心を蝕まれる高校3年の夏の日々。
330名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 22:22:56 ID:BOrsPsFY0
>>329
221ってY子さんの自演カキコだろ。頼む!そうだと言ってくれ つД`)

膨れ上がる金額に興奮しながらリロードを繰り返すY子さん。
でも一線越える度胸はなくて結局妄想オナニーにふけるのだろうか。
331pinksaturn:2006/08/17(木) 12:28:56 ID:xbE3Vy7f0
(オプションパーツの続きです。)

−−(25)査察要求−−

(冥王星からのテレビ中継)

朝子10世:「まいどー。地球の皆さんにもだいぶお馴染みになって頂けた、冥王星の朝子10世です。
今日は初日の事故で極低温対策を再検討していたため延びていた、氷の切り出しをお見せしましょう。
後ろの地上に見えますのが、我々の誇る極低温天体降下艇、2式降下艇です。
上空にのしかかるように覆い被さっているのが冥王星の双子惑星カロンです。はっきり言ってキモイです。
何しろ天然の静止衛星ですから、いつも空の一点から動きません。落ちてきそうな不安にかられます。
月よりずっと小さい星なんですけど、近いのでばかでかく見えるせいですね。
太陽の光がほんの少ししか届かないため薄暗いというのも、一層気持ち悪さを引き立てていますね。
カロンからこっちを見ても同じ、いやこっちの方が大きいからもっとキモイかしら。
そんな場所でアイスショウをやってしまったうちの娘たちの神経の太さ、実に頼もしい限りです。
あ、準備が整ったようです。では操縦席のエリ中尉、始めて下さい。」

エリ:「エキシマレーザーCWモード、出力35%。ビーム・ボンバー!。連続照射。」

朝子10世:「このように降下艇を横歩きさせてレーザーを斜めに打ち込み四角錐の形に切り取るのです。
切ったら、再び凍り付く前に素早く取り上げます。リホ中尉、クレーンお願い。」

リホ:「クレーン操作リンク接続、さっとつかんで背中にポイ。」

朝子10世:「取った氷はこのように降下艇背面の荷台に乗せます。外は極寒ですが船体の熱が伝わります。
荷台の断熱はかなり厳重ですが何しろ温度差が大きいです。急いで保管庫に運ばないと溶けてしまいます。
というわけで、すぐ離陸しないといけないので今日の放送はここまでです。でわまた。」
332pinksaturn:2006/08/17(木) 12:29:39 ID:xbE3Vy7f0
(北米連 大統領官邸 応接室)

愛国民兵会会長:「大統領、我が国の領土である冥王星におかしな小娘どもが侵入するのを取り締まって下さい。
私たち愛国民兵会は、民間の自主的取り組みで長い国境線を不法移民から守ってきたのです。
民間ボランティアだってこれだけやっているんです。国家なら冥王星くらいなんとか出来るでしょう。」

ヤブー:「毎度、選挙での応援に感謝しますよ。もちろんあなた方のボランティア活動は大変尊敬しています。
しかし、残念ながら宇宙条約では宇宙における領有権の主張は認められていないんですよ。」

愛国民兵会会長:「そんなバカな。だって冥王星を見つけたのは我が国ですよ。」

ヤブー:「国連での議論の結果、南極と宇宙には国境がないことになっていますよ。」

愛国民兵会会長:「何を言ってるんですか。国連だって我が国が作ったようなものでしょ。我が国は特別だ。
そんな弱腰なことを仰っていると、次の選挙で会員を纏めきれなくなりますよ。しっかりして下さい。」

補佐官:「失礼します。次の面会のお時間です。」

愛国民兵会会長:「でわ。頑張って下さい。」

ヤブー:「次は誰だ?。」

補佐官:「ハゲタカ派教会、南西部教区長様です。」

ヤブー:「次もわからんちんの爺さんか。やれやれ、民主国家の指導者はつらいのお。なんとかせねば。」
333pinksaturn:2006/08/17(木) 12:31:12 ID:xbE3Vy7f0
(北米連 大統領官邸 会議室)

ヤブー:「たび重なる冥王星からの放送で明らかなように、やつらは宇宙で高出力の原子炉を使用している。
我が政権の支持層からはやつらを取り締まってくれという無理な陳情が相次いでいる。
現実にはいきなり国連の枠組みを無視した行動など出来ないが、出来ることはやらないと支持率が下がってしまう。
それで、原子炉があるなら核兵器の保有も可能だろうということで安保理の査察要求決議を取り付けたいと思う。」

北米連国連大使:「やつらが宇宙条約に違反し宇宙空間に核兵器を配備している兆候を示す物証は何もありません。
また、旧P共和国自体は反核憲法によって我が国の艦船寄港を拒否したため関係が冷却化した経緯があります。
あの帝国が核兵器を保有するような体質なら、P共和国が迎え入れるとは考えにくいですね。
実際、あそこは地上には原子炉が無く、発電は潮力ダムと太陽光だけです。昔からウラン燃料の輸入量もゼロです。
したがって条約上は査察受け入れ義務がないんですよ。他の理事国は簡単に賛成しないでしょう。」

コメー:「ウランの輸入量がゼロ?。では、宇宙の原子炉は何処から燃料を?。密輸でもしているのでは?。」

商務長官:「密輸は相応規模の地下経済がないと難しいですよ。あそこは地下経済の規模が極めて小さいのです。
麻薬取引と武器輸出に関しては情状抜きで一律に死刑適用という極端に厳しい規制が敷かれています。
逆に、売春や臓器売買、賭博は合法で公然と行われています。このため地下経済の成り立つ余地が乏しいのです。
表の経済に関するお金の流れはIMFの統計に出ますが、ウラン生産国への資金移動は殆どありません。」
334pinksaturn:2006/08/17(木) 12:33:57 ID:JDnmKaE90
北米宇宙局長:「宇宙で隕石からあるいは地上で海水から核物質を集めている可能性なら考えられます。
但し、海水からの場合は発電用に必要な量を集めるのすら難しく、核兵器生産に必要な量を集めるのはまず無理です。
隕石からの収集はデータがないので、どちらともいえませんが、我が月面基地の実績から推定すると易しくはなさそうです。
原子炉というのは目一杯発電用に運転してしまうと、発生するプルトニウムが兵器に使えない同位体ばかりになります。
そこから回収したプルトニウムの使い道なんて熱源しかありません。兵器用には専用の生産炉が必要なんです。
核燃料は宇宙船の動力に回す分を確保するのが精一杯で、核兵器のような不経済な物に回す余裕はないと想像します。
例の工場衛星が集める太陽熱は外観から推定でき、赤外線観測による放熱量と比較すると原子炉はあってもかなり小型です。
核燃料に余裕があるなら、あんなばかでかい凹面鏡を作るよりも原子炉を増設した方が経済的ですよ。」

ヤブー:「やつらが核兵器を持っていないか、仮にあっても脅威になる数でないことは百も承知だよ。
あの工場衛星の核査察が認められれば、査察官に我が国の人間を押し込むことは簡単だ。
工場内に立ち入ることが出来れば、全身サイボーグ技術の秘密を探れるだろう、それが真の狙いだ。」

コメー:「まさか、大統領まで国防長官のような恐ろしい考えにとりつかれていませんよね。」

ヤブー:「兵士のサイボーグ化など考えておらん。ただ、やつらの技術力を調べて弱点を探っておくべきだと思うのだ。」
335pinksaturn:2006/08/17(木) 12:34:55 ID:JDnmKaE90
北米宇宙局長:「IAEAの査察官に宇宙飛行士の有資格者なんて居ませんよ。それにどうやって行くんですか?。」

ヤブー:「物理系のペイロードスペシャリストなら査察官ぐらい務まるだろう。人選と訓練をやっておいてくれ。
首尾よく決議が取れれば、IAEAの方から困って人材提供の要請をしてくるに決まっているからな。
どうやって行くかは、あの工場衛星の施設にこちらの宇宙船が入港できるかという問題もあるから交渉するしかないな。」

北米連国連大使:「仮に決議を取り付けられるとしても、根回しには非常に時間がかかると思いますよ。」

ヤブー:「まあ、ダメ元で2国間交渉もやってみるさ。コメー、事務レベル交渉で良いからとにかく動いてくれ。
国民向けにはしっかりやる気を見せておかないと、次の選挙が危ない。みんなまだ引退したくは無いだろう?。」
336pinksaturn:2006/08/17(木) 12:35:38 ID:JDnmKaE90
(経済特区=旧P共和国 国連大使公邸)

国務次官補:「我が国民の相当数は、貴国が宇宙に核兵器を配備しているのではと疑っていますぞ。」

経済特区国連大使:「それはあなた方らしい発想ですね。我が国には反核憲法があるのです。
そもそも何故そんな憲法が出来たか。元を糾せば、あなた方が私たちの近くの海を核実験で汚染したからです。
我が国は漁業を重視しているので地上では原子炉すら一切設置しない政策を採っているんですよ。」

国務次官補:「元のP共和国なら信じますよ。しかし、あなた方は今や謎の帝国の一員ではないか。
その帝国は冥王星に宇宙船を派遣しそこから強力な放送波を送っている、原子力を使っているのでしょう。」

経済特区国連大使:「反核憲法は帝国全体に継承されています。隕石で取れた核物質は発電で消費しています。
隕石に含まれる物質で使える物は全て有効利用しないと採算がとれませんからね。
但し経済性を重視していても、核に限らず有害な物は地上に降ろさないように気を使っているんですよ。
地上を攻撃するための核兵器を生産するなど論外です。そもそも発電用燃料だって足りないんですから。」

国務次官補:「それが事実か検証させるべきでしょう。工場衛星への査察を受け入れたらどうです。」

経済特区国連大使:「どうやって?。IAEAの仕組みは核物質の生産から廃棄までの流れを追いますね。
うちの施設は全部宇宙にあるし、資源の収集は小惑星帯でやっているんですよ。誰が査察に来るんですか?。
小惑星帯への飛行は近いところで往復3年の長期任務なんです。これを全部追わないと意味がないでしょう。
資源収集艦内の気圧は0.2気圧しかないし、普通の食料や調理施設はありません。加速もきついですよ。
つまり査察官の呼吸、食事や移動は自力でってことになります。IAEAが宇宙船を用意するんですか?。
そういう話なら検討しますが、工場衛星だけ見せろと言うのなら目的が違うんじゃないですか。
それに、工場衛星だって呼吸や食事の事情は同じだから、来るなら自己解決して貰うしかないですね。
宇宙船ベイへの入港にしたって、操縦方法が特殊なんで他国の人では難しいと思いますよ。」

国務次官補:「では、同じことを国連でも言うんですな。安保理がどう反応するかお楽しみに。」
337pinksaturn:2006/08/17(木) 13:15:12 ID:JDnmKaE90
(経済特区大統領府)

大統領:「予想通り、核疑惑にこじつけて工場衛星を探ろうとして来ましたよ。
とりあえず、どうやって小惑星帯まで査察官がついて来るのかと難問をふっかけておきましたが。」

帝国外務大臣・弥生:「IAEA査察官に宇宙飛行士経験者なんか居ないわ。北米連の人間を入れる気ね。」

大統領:「北米連は安保理に査察要求決議をかけるでしょう。対応を決めて下さい。」

弥生:「簡単だわ。交換条件に北米連の月面基地への査察要求を逆提案するのよ。満漢が大喜びするわね。
たぶん、あそこを調べれば満漢の有人飛行に対する妨害工作の証拠が出るだろうから拒否するはずよ。
公然核保有国でも宇宙条約は守らなきゃいけないんだから、拒否すればお互い様ってことになるわね。」

大統領:「国連大使にすぐ伝えます。満漢やイスラム諸国を抱き込めば決議の成立は難しくなりますね。」

弥生:「イスラムといえば、例の”漁業監視船”は評判どうかしら?。」

大統領:「引き渡し済みの4隻は評判いいですね。北米連の潜水艦が居る場所もくっきり映るんで。
受注分が全部入ったら、順次本格武装するようですが、今は迫撃砲を仮設してヘッジホッグ積んでます。」

弥生:「沈める気がなくて威嚇するだけなら、ヘッジホッグどころか手投げの爆雷で十分よ。
武装はユーザーの技術水準に見合った物を使った方が、補給だって楽でいいのよ。」
338pinksaturn:2006/08/17(木) 13:16:04 ID:JDnmKaE90
(満漢人民共和国 人民党本部)

毛主席:「安保理面白くなてきたあるな。北米連のやつら宇宙娘々帝国の逆提案に泡くてたある。
わしら賛成しなければ、ずーと睨み合い続くある。思い切りじらして、漁夫の利とるよろし。」

周首相:「漁夫の利あるか。最後はどっちに転ばせるある?。」

毛主席:「出来れば北米連月基地調べたいあるな。我有人月探検船何故遭難した?。北米連怪しある。」

周首相:「宇宙娘々は改造人間なる噂あるよ。その技術も探れるといいあるね。毛大人どう思うあるか。」

毛主席:「我感想、宇宙娘々一見非強靱。折角製造、強靱必須。我望、機械化改造人間主体的開発。
又、共和国食料不足。改造人間空気消費許可、其代食料不要必須、戦闘能力重視、外見軽視。
共和国素体無尽蔵。人権一切不要。余剰人実験使用無問題。」

周首相:「了。無戸籍違法出生者余剰。皆逮捕、為実験使用。唯、実験部品全部製造必要時間過大。
為時間節約、見本用手足、宇宙娘々帝国輸出品購入許可?。」

毛主席:「手足限定可買?。胴体装置不可買?。」

周首相:「肯、手足可買。唯、達磨人連行@宇宙娘々帝国経済特区、為制御素子取付手術独占。
又、購買数制限、達磨人一人宛三腕対三脚対也。価格腕対約弐萬$、脚対約弐萬弐千五百$也。
取付手術料金開放価格也。相場噂、再切断料金・断端基材埋設料込壱肢五千$乃至七千$也。」

毛主席:「達磨人先行製作必要也。即、無戸籍違法出生者数人逮捕達磨人化実行。
為達磨人余計発言防止、宇宙娘々帝国経済特区連行時達磨人声帯切除必須。」

周首相:「了。即刻手配。実験許可謝謝。再見。」
339pinksaturn:2006/08/17(木) 13:16:56 ID:JDnmKaE90
(数日後、経済特区・メタロリホスピタル)

満漢人民共和国領事・陳:「化学工場の爆発事故で重傷者が一度に6人も出てしまって。
気の毒に両手両足を失った上に、ガスにやられて声が出なくなってしまって。
こちらでは、人工の手足を取り付けることが出来るというので連れてきたのです。
費用は国家予算で何とかします。高福祉は我が国の誇りですからな。
とはいえ急な出費で痛いことも事実です。団体割引など適用して貰えると助かるのですが。」

いつぞやのダルマっ娘好き整形外科医:「そうですか、それは大変でしたね。断端の状態は...」

満漢唖達磨娘1から6:「...(嘘よ。戸籍法違反でいきなり逮捕されて。何でこんな目に!。)」

整形外科医:「ふむふむ。(これは爆発事故じゃない。意図的な切断だな。雑な切り方だ。
初めからここへ切りに来れば、痛い目に遭う回数が少なかったのに。政府関係だから刑罰か?。
さすがに外国の刑罰執行は請け負えないか。本人同意がないのは特区でも違法だからな。)
我が国の能動義肢を取り付けるには、断端の残りを除去する再切断手術が必要です。
全ての製品が肩関節・股関節離断者を対象とした構成になっているからです。
電源の体積や制御系の関係で余所でやっているような部分義肢は作れないんですよ。
同時に、基盤材と神経トランスポンダの埋設が必要です。ここは明朗会計でしてね。
見積もりは、...6人同時ですから、団体割引2%となっています。」

陳:「2%ですか。もう少し何とかなりませんか?。予備を付けて3対ずつ買うつもりなんですが。」

整形外科医:「私はアルバイトなんで独断では。じゃあ、輸出義肢営業課長を呼びましょう。
あ、もしもし事務部。満漢領事館の団体さんがね数量割引希望で...すぐ来れるそうです。」
340pinksaturn:2006/08/17(木) 13:18:36 ID:P48+RinW0
営業課長:「イ尓好。貴団体員数拾人未満、割引原則2%、標準型式手足数量割引条件超弐拾対也。
他形式数量割引五拾対超必要。為義肢生産元公営、此数量割引基準、公定也。他院同様也。」

陳:「労働災害悲惨。仁愛価格必要。仮、弐拾対購入許可、追加予備購入検討。」

営業課長:「為制御素子仕様上制限、予備義肢保有可能数最大弐也。六人弐拾対使用無理。」

陳:「追加達磨娘連来不能。不足僅弐対也。慈悲価格希望。」

営業課長:「了。除手術費、特例割引2.5%。限界也、為特区内全病院有限公司、非慈善事業也。」

陳:「謝謝。即刻手術開始希望。」

営業課長:「話はまとまりましたが、先生一人で6人まとめて手術するのは大変じゃないですか?。」

整形外科医:「再切断の方は得意なんで20人でも行けますが神経トランスポンダがきついですね。」

営業課長:「神経トランスポンダの”専門家”に応援を頼みますか?。」

整形外科医:「そうして下さい。流れ作業で切断に専念できる方が時間当たりの稼ぎが良いので。」

陳:「専門家?。誰?。」

営業課長:「神経接続微細手術高速実施神業専門家。技術秘伝、面会見学等不可。」

陳:「了。不面会希望。至急手術優先也。」
341pinksaturn:2006/08/17(木) 13:20:39 ID:P48+RinW0
(冥王星探検発表から2ヶ月後、宮殿、御前会議)

皇帝:「今日は、冥王星探検後の世界の動き、探査の成果、および今後の方針について検討します。」

外務大臣:「予想通り、北米連は工場衛星の核査察を要求してきました。本音は核問題じゃないでしょうけど。
採掘から廃棄物までの移転一貫管理というIAEAの仕組みを無視した提案ですから通ることはないでしょう。
宇宙条約を盾に月面基地を査察させろという逆提案に満漢が乗ってきたせいもあってとりあえず黙りましたね。」

皇太子:「安保理が拒否権合戦で膠着したのは有り難いですが、諦める筈はないし次は何を仕掛けて来ますかね。」

刑部大臣:「新たな工作員侵入の形跡はありません。最初の香具師が何の成果もなく捕まったせいですかね。」

地軍大臣:「200海里水域への潜水艦侵入も無いですね。警戒システムで居場所を押さえられるのを避けています。
衛星や超高高度偵察機による撮影はやっているようですが妨害蒸気システムのせいでまともに写っていないでしょう。」

外務大臣:「とりあえず帝都や重要工業施設の場所を特定したいんでしょうね。」

皇帝:「鬱陶しいから、教えてあげちゃいましょうか。」

地軍大臣:「えっ、それは危険では?。いきなり侵攻してくる可能性だってあるでしょう。」

皇帝:「まず、離宮の方に見せかけの遷都をやってから教えてあげようと思うのよ。
私があっちに住んで、特区のマスコミに特別立ち入り許可を与えて定例記者会見でもやればあっちが注目されるわ。」

地軍大臣:「離宮の島は外洋に突き出た位置にあります。余計侵攻されやすいのではありませんか?。」

皇帝:「一見重要そうで、上陸侵攻しやすそうな場所を作っておいた方が核攻撃の選択をされにくいと思うのよ。
それに、侵攻される場所が重要工業施設から引き離されることも必要でしょう。私が囮になるのが一番効果的だわ。」
342pinksaturn:2006/08/17(木) 13:22:19 ID:P48+RinW0
地軍大臣:「しかし、本当に攻め込まれたら陛下に危険が及ぶじゃないですか。」

皇帝:「そのつもりで地軍の配置を厚めにすればいいわ。重装甲ボディーの近衛サイボーグ隊にも応援させるわよ。」

皇太子:「重装甲隊ですか。確かに核の至近弾以外で倒すのは難しいし、地上で混戦になったときは有効でしょう。」

皇帝:「じゃあ、良いわね。念のため私の分も重装甲ボディー送っておいて。さて、北米以外に動きは無いかな?。」

民部大臣:「特区の病院に満漢領事館が口のきけない四肢切断患者をまとめて6人も連れてきたそうです。
突然の団体客ということで応援要請があって、神経トランスポンダ接続手術を貴族が請け負ったため判ったのです。
化学工場の爆発事故で四肢を失い喉をガスにやられた患者だというのですが、見え見えの嘘だったそうです。
四肢以外には怪我の痕もなく、切断は全て同じ術式でなされ、声帯も焼けたのではなく切除されていたそうです。
特区でのことですから追求するわけにも行きませんが、強制的にダルマ化されたのを喋らせないようにしたのかと。
最初は予備の義肢を制限数以上に購入しようとの交渉もしていたので、おそらく満漢政府による技術調査ですよ。」

外務大臣:「安保理では満漢がごねてくれて助かっているので、特区の法律を破らない限り規制は避けたいですね。」

皇太子:「輸出用義肢は北米連にだって出しているのです。買ってくれるなら誰でも構わないと思います。
仮に義肢を分解調査したところで、機構の要であるリニア牽引帯や磁気サスは無重力で加工しないと出来ません。
仕組みが判ったとしても、我々より低コストで同じ物を造るのは殆ど不可能だから経済的被害は生じません。
制御の要である神経トランスポンダは、プロトコルをランダムロジックで組んであるので解析に何年かかるやらです。」
343pinksaturn:2006/08/17(木) 13:24:51 ID:SuZ9RGk+0
外務大臣:「解析された場合、我々の手足がハッキングされる恐れはないのかしら?。」

皇太子:「サイボーグ体はシールドされていますし、プロトコルがわかっても素体番号の体系を知らないと難しいです。
番号帯が離れているので義肢患者に付与されているコードが素体番号だとは滅多に見破られないでしょう。
むしろ、装着者がそのまま外国の兵士になっていて、ハッキングを仕掛けるチャンスが出来る可能性の方が高いです。」

皇帝:「とりあえず、満漢の調査活動は放置しましょう。実験素体には気の毒だけど外国の人権に干渉する気は無いわ。」

文部大臣:「冥王星探査の成功によって、サイボーグになりたいと思う小中学生が増えるという効果が現れています。
それ自体は喜ばしいのですが、惑星科学や経済への効果が今ひとつ見えてきていないのは寂しいですね。
勿論、私もそっちが専門ですからデータ分析に時間がかかるのは承知ですが、国民向けに見える効果が欲しいです。」

皇太子:「それについて、討議したいことがあったのです。移動装置で発送する隕石の選定のことです。
冥王星ーカロン系の重力均衡点を巡る氷隕石、微衛星といっても良い大きさのがいくつか見つかったのです。
”みくら”は重量軽減のため隕石移動装置を1基しか持っていっていないので選定に迷っていると報告しています。
つまり、メタン主体の氷と水主体の氷どちらを優先するか、それと妥当な大きさの決定ですね。
メタン主体の氷を持ってくるとしたら期待する用途は石油化学素材の代替で、地球軌道への輸送となります。
水主体の氷を持ってくるなら、極低温という特性を考えると金星へのアイスインパクト実験用でしょう。
大きさについては1万dから5万dまでの候補があり、5万d級ですと移動所要期間は12年から16年です。
推進力は選べないので大きい物ほど使える時期が遅く、衛星軌道に運ぶか落下させるかでも所要期間は違ってきます。」
344pinksaturn:2006/08/17(木) 13:26:12 ID:SuZ9RGk+0
文部大臣:「いち惑星科学者としては、地球軌道に運んで大量のサンプルをじっくり調べられると嬉しいです。
しかし、大臣としては金星アイスインパクト実験の方が地味な資源調査より国民を納得させられると思います。
それに、隕石移動装置は推進剤に水を使う設計ですからメタン主体の氷だと信頼性が不安ですね。
1基しか設置できず、しかも10年以上無人で飛ばすなら、水の氷の方が失敗の確率が低いでしょう。」

地軍大臣:「済みません、意味がよく判らないのですが、火星でなく金星に氷を落とすのですか?。」

皇太子:「聞き違いではないですよ。つまり、金星の可住化という長期的な実験にかかろうかという話です。
火星ではすでにやっているわけですが、重力が小さ過ぎるためどんなにがんばっても素体生産地には出来ません。
気圧が最も高い、深い窪地の底を選んで水たまりを設ければ農産なら出来そうですが、サイボーグしか暮らせません。
金星の地表は現在のところサイボーグも降り立てない高圧の焦熱地獄ですが、冷却さえできれば地球に似た惑星です。
大隕石を落とせば核の冬の効果で一時的に温度が下がります。また、氷隕石なら周囲に水たまりができます。
ある程度大きな水たまりが維持できれば、大気の主成分である炭酸ガスが溶け込んで気圧も少しは下がります。
定期的に大きな氷隕石を落とし続けて気温100度未満の地域を維持すれば、大気に水蒸気も多いので雨が降ります。
いったん雨が降る環境ができれば、水たまりが勝手に成長して、ますます炭酸ガスを吸収し低温低圧化が進みます。
時間は1000年以上かかるとしても、植物の生育が可能な地域が出来てしまえばいずれ可住化されるでしょう。
間に合うかどうかは判りませんが、核戦争などの恐れを考えると地球外に素体生産地を得る努力は必要です。」

地軍大臣:「わざわざ冥王星軌道から氷隕石を持ってくる意味はあるのですか?。移動中に暖まるのでは?。」
345pinksaturn:2006/08/17(木) 13:26:49 ID:SuZ9RGk+0
文部大臣:「氷は水と違って対流がありません。固体の水つまり氷は熱を伝えにくい物質なんですよ。
そして隕石移動装置による移動は遅いといっても自然の彗星の移動に比べれば一桁速いんです。
1万d以上の巨大な塊なら太陽熱で暖まるのは表面のごく一部だけで、内部は冥王星の寒さをそのまま運びます。
金星の環境では1万dの隕石1個はまさに焼け石に水ですが、溶けきる前に同じ地点へ次を落とせば効くかも。
溶けきるまでの時間を稼ぐには極低温の氷を落とすしか無いですからカイパーベルトから移動するのが正解ですよ。
気になるのは、次の1個が何年後に落とせるかですね。今のところなるべく大きいのを選ぶのが良いと思います。
金星は対流が激しい世界なので、どれくらい持つか予測するのは計算に2ヶ月くらいかかります。」

皇太子:「探検部隊は乗員数を最低限に抑えているので隕石移動装置の設置に時間がかかります。
宇宙滞在制限期間に余裕がないので、計算結果は待てません。5万d級の隕石を選ばせるしかないようですね。」

民部大臣:「水5万dといえば宇宙では莫大な経済価値があります。地球軌道で使う余地はないですか?。」

皇太子:「工場衛星の水はメインベルトからの輸送で充足していますし、冷たすぎると使い辛いんです。
12年以上先のことですし。北米連の月面基地が高値で買ってくれると言うなら喜んで運びますがね。」

外務大臣:「はは。意地でも買わないでしょう。それどころか地球付近に運ぶだけで脅威とされる鴨。」

皇帝:「脅威とされるのはあんまり良くないわね。差し当たり目的地は金星にしておきましょう。
ところで隕石移動装置の設置は技術力のデモンストレーションとして派手だからTV中継したいわね。」

外務大臣:「原子炉の使用も目立つことになりますね。動力としてだから専門家は核疑惑を否定するでしょう。
ただ、知識のない大衆がどう捉えるか、それに政策が振り回されるのが北米連の特性だから気になります。」

皇帝;「動力として長期運転すると兵器用プルトニウムが生成されないことは放送で言わせましょう。
他に議題がなければ今日はこれくらいにします。」
346pinksaturn:2006/08/17(木) 13:35:01 ID:jU/SCB0k0
(4ヶ月後、冥王星ーカロン系重力均衡点周囲の微衛星上からの放送)

朝子10世:「地球の皆さんこんばんわ、朝子10世です。今日も超ぉーー寒い中がんがってます。
この放送では、なんと微衛星の移動作業をお目にかけちゃいます。え、何をどこに動かすかって?。
この微衛星は5万dの氷の塊です。移動の目的地はなんと金星!。12年以上かけての大移動です。
なんのため?。それは金星の環境を人が住めるように変えられるか実験するためです。
金星はご存じの通り、90気圧もの炭酸ガスの大気に包まれた、平均気温400度という地獄のような世界です。
太陽に近いため水が全部蒸発して海ができず炭酸ガスが溶け込む先がないせいでそうなったと言われています。
いちどそんなに熱くなったら雨が降らないので放っておけば温室効果が続いて永久に焦熱地獄です。
そこで極低温の氷隕石を窪地に落下させてみたらどうなるか、試してみようと言うわけです。
予想では、局所的に寒冷地ができ、氷が溶けたり冷気で雨が降ったりしてできる水たまりに大気が吸収されます。
おまけに隕石落下の際に舞い上がる埃のせいで1年くらいは日照が弱まるため、平均気温も下がります。
氷が溶けきらないうちに次の氷を落とせば海が成長して地球に似た環境ができる鴨って訳ですね。
それでなるべく溶けにくい極低温の氷をここから運んでやろうというわけです。ではこちらをご覧下さい。
そびえ立っていますのが隕石移動装置の排気ノズル、その下が加熱装置、地中には貯水槽があります。
加熱装置で発生した高温高圧の蒸気は大半が排気ノズルから噴射されてその反動が推進力になります。
一部は大型蒸気タービンを動かして地中の氷を掘り出す巨大ドリルを回し、余った力で発電もします。
掘り上げた氷は蒸気の余熱で溶かされて貯水槽に補充されるのです。つまり自給自足の推進器なんです。
今はアイドリング中で少し氷を掘りながら発電しているだけですが、これから出力を上げます。
じゃあ、オペレーターさん始めてね。」

リホ:「加熱装置出力上昇、5MW、7MW...50MW...100MW、最大です。」

エリ:「給水バルブ開度、5%、7%、...50%...100%、全開になりました。」
347pinksaturn:2006/08/17(木) 13:35:38 ID:jU/SCB0k0
朝子10世:「お、お、お、微かですがGを感じますね。ノズルの先に少し白い湯気が見えるのが判りますか?。
見えにくそうなのでカメラを赤外に切り替えましょう。カメラさんお願い。」

寿那緒:「テレビカメラ赤外モード(凍結対策でスイッチをBCIからの無線操作にしたから楽だわ)。」

朝子10世:「ノズルから光の帯が出ているように見えるのが高熱の水蒸気です。強力そうでしょ。
えっ、地上で5万dの船動かしたってスピードなんか大して出ないだろ、宇宙飛行なんかできるかって?。
確かに推進力は船よりずっと弱いですよ。でもここには水の抵抗もないんです。ちゃんと加速できるんです。
カメラ上空を向けて下さい。ほら、上空のカロンが少し動いてるのが判りますか?。ね、この通り。
なになに、藻舞ら12年以上も氷隕石で旅するのかって?。まさかぁ。飢えと寒さで氏んじゃいますよ。
ここにはちゃんと無人探査機でお馴染みの星追跡装置があるので無人で軌道を維持できるんです。
推進器台座の端に望遠鏡みたいのがあるでしょ。パラボラも設置してるから遠隔操作だってできます。
え、なになに、加熱装置ってのは原子炉だろう、放っておいて大丈夫かって?。
大丈夫です。これは地上の発電所で普及している軽水炉です。念のためシュラウドも厚めになっています。
ずーっと一定出力で動かすから、原爆の材料になるたちの悪いプルトニウム同位体も出来ません。
いいですか、世界のテロリストの皆さん!。ここの炉からプルトニウム盗んでも原爆は出来ませんよ!。
もちろん、金星を汚さないように、落下前には我々の回収部隊が隕石移動装置を撤去します。
決してご迷惑はおかけしませんので安心して下さい。それでは、我々も退去する時間ですので終わります。
冥王星付近からの放送もあと僅かとなりましたが次回をお楽しみに。でわまた。」
348pinksaturn:2006/08/17(木) 13:36:41 ID:jU/SCB0k0
(北米連 大統領官邸応接室)

愛国民兵会会長:「いつになったら、冥王星で勝手をしているあの小娘どもを取り締まってくれるのですか。」

ヤブー:「ですから、国連安保理でやつらの宇宙工場に核疑惑があるから査察させろと要求しているんです。
ところが、やつらは逆に我々の月面基地に核疑惑があるから査察させろと言いだして満漢が乗ってきたんです。
満漢人民共和国は拒否権を持っているから月面基地を査察させない限りこちらの要求も通らないんです。」

愛国民兵会会長:「そんな国連なんかでぐずぐずしている間に小娘どもは金星に手を着けようとしてるでしょ。
そもそも公然核保有国の我々が査察を受ける義務なんか無いでしょうが、馬鹿馬鹿しい。」

ヤブー:「宇宙条約で宇宙への核配備は禁じられているんです。我々もそれは守らないといけないんです。
もし破ったら、満漢やス連も宇宙に核を配備して、とんでもない軍拡競争になってしまうんですよ。」

愛国民兵会会長:「我が国ともあろうものがつまらん条約に縛られるんですね。困ったものだ。
しかたない、政府が手出し出来ないと言うなら、我々が冥王星に行ってボランティアで取り締まりましょう。
北米宇宙局に命じて冥王星に行けるロケットを無償で払い下げて下さいよ。それくらい出来るでしょう。」

ヤブー:「冥王星に生身の人間を送り込めるロケットなんて有りませんよ。」

愛国民兵会会長:「だったらどうしてあの小娘どもは冥王星にいるんですか。矛盾してる。」

ヤブー:「未確認ですが、あいつらは真空や極低温に耐えるため体を機械化したサイボーグなんですよ。」

愛国民兵会会長:「サイボーグ?。ああ、黄色い猿の書いたマンガなんかに良く出てくるやつね。
私はマンガなんぞ殆ど読まないから詳しいことは知りませんが、要はやれば出来るってことですね。
だったら、わが軍にも当然サイボーグ部隊ぐらいあるんでしょ。何故それを派遣しないんですか。」

ヤブー:「我が国は民主国家です。そんな兵士の体を機械化改造なんて無茶は出来ませんよ。」
349pinksaturn:2006/08/17(木) 13:38:47 ID:3OGIvkHG0
愛国民兵会会長:「最近の軍はたるんでるんだ。セックスのことばかり考えてるへたれ兵士が大杉です。
しかたがない。だったら、民主的にやれば良いんでしょ。我々で志願者を用意すれば出来ますよね。」

ヤブー:「そ、それは。サイボーグ技術は不完全なのです。改造に失敗して死ぬことだって。
仮に成功しても元の体に戻すことは不可能です。性器も無くなるんだ。神がお許しになりません。」

愛国民兵会会長:「あの小娘どもは成功しているでしょ。神はやつらだけ許して我々は許さないと?。
リスクのことなら心配無用ですぞ。うちの若い者はへたれ兵士なんぞとは出来の違う愛国者揃いです。
我が領土から犯罪者を締め出すためなら命だって懸けます。一生セックスできなくなるくらい平気です。
大統領、宜しいですね!。ロケットとサイボーグの準備、必ずやっておいて下さい。でわ失礼。」

ヤブー:「ちょ、ちょっと待って...。困ったことになった。言質を取られちまったぞ。
あの勢いじゃあ、必ず志願者を連れて来るな。強引に却下すれば次の選挙が...。トホホ。
あの頑固オヤジがまた来る前に小娘どもが冥王星から去ってくれればいいのに。
いっそのこと、皇帝とやらに頼んでみようか。いや今すぐ公式に会うのは大国のメンツが...。
困った。とにかく一人じゃいい手が浮かばない。おい、君、国防長官を読んでくれ給え。」

補佐官:「はっ、ただいま。」

国防長官:「参上しました。小娘帝国のことですね。コメー国務長官は同席されなくて良いのですか。」

ヤブー:「君だけを呼んだのだ。コメーの前で出来る相談じゃないんだ。実は愛国民兵会会長が...。」

国防長官:「ほお。人体実験の志願者を連れてきてくれるんですか。軍は大歓迎でしょう。」

ヤブー:「人体実験じゃない。実戦用サイボーグの志願者だ。失敗して氏んだら大変なことになる。
愛国民兵会は自前のサイボーグとロケットを保有して小娘帝国を冥王星から追い出すと言っているんだ。
そんな無謀な話を政府が手伝うわけにはいかん。断念させる方策を相談するために君を呼んだのだ。」
350pinksaturn:2006/08/17(木) 13:39:28 ID:3OGIvkHG0
国防長官:「こっそり援助するというかたちでなら良いじゃないですか。」

ヤブー:「愛国民兵会はそんな融通の利く連中じゃない。仮に成功したら大声で宣伝するに決まっている。
そうなったら、我が政権は宗教界からそっぽを向かれるんだ。君は早く引退したいのかね?。」

国防長官:「いえ、滅相もない。では志願者に人体実験の悲惨な実態を見せて諦めさせましょう。」

ヤブー:「うまく諦めるかな?。どのように悲惨なんだ?。そもそも生存中の被験者が居るのか?。」

国防長官:「生命維持装置が不完全なため栄養失調に罹り、数ヶ月で痴呆状態になって氏んで逝くのです。
HLAの合う血液を大量に用意して入れ替えてやれば延命出来ますが、とんでもない量の献血が必要です。
現在生存中の元末期ガン患者の脳は、偶然にも血液ストックの多いHLAでして半年正気を保っています。
視聴覚神経と腕の運動神経を装置に繋ぐことに成功したのでなんとかコミュニケーションが取れています。
しかし、ガラスケースに浮かんだ生きた人間の脳ですから見るからに気味の悪い物ですよ。
あれを見せたら普通の人間なら嘔吐か気絶をしますよ。健常者が志願するはずがないです。」

ヤブー:「先日の話では、恒久的生命維持の見込みは全くないという話だったが違うのか。心配だな。
献血集めなんて愛国民兵会なら得意中の得意だぞ。他に解りやすい致命的な障害はないのかね?。」

国防長官:「我が国は脊椎損傷者や視覚障害者の福祉用としてのBCI技術が世界一進んでいるんです。
生命維持とBCIが出来てしまえばサイボーグを作るのはロボットを作るのと技術的な差なんて無いです。
長期の生命維持は実績がないですから、精神面など全く未知ですが、素人に解る障害じゃないですね。」

ヤブー:「そうか。嘘をついてあとで知られたら怖い連中だから、見せるなら正直にやるしかない。
愛国民兵会の志願者が、むき出しの脳を見て恐れをなしてくれるのに期待するしかないかな。
とにかく、生きている被験者をなるべく持ちこたえさせておいてくれ。コメーには一切報せるな。」
351pinksaturn:2006/08/17(木) 13:40:52 ID:3OGIvkHG0
(経済特区自治政府大統領府 記者クラブ)

自治政府・広報官:「それでは予告通り、帝国の首都往復日帰りの会見ツアーを開始いたします。
初めにご注意ですが、本経済特区を除く帝国全域は本来なら外国人全面立入禁止区域です。
私たち特区住民だって立ち入り許可を得るには厳重な審査を通らなければならないのです。
無許可で越境することはスパイ行為かテロ工作と見なされ、例外なく死刑に処せられます。
皆さんの特別立ち入り許可は、あくまでも皇帝の記者会見ツアーのために必要と認めた地域限定です。
ご案内する場所以外に無断で行こうとした時点で不法越境となるので、くれぐれもご注意下さい。
なお、不法越境行為の禁止以外に規制はございません。無論記事や映像の検閲などは一切やりません。
後日皆さんがどのような記事を発表しようとも、次回以降の取材許可で差別することも絶対しません。
皇帝への質問時間は一人当たり10分とっており、質問内容に制限はありません。
それでは、身元確認システムのゲートを通って、裏庭に接岸中の飛行艇の方に移動願います。
駐在記者証をお持ちの方は右の、個別招待状を取得されたフリー、ネット記者の方は左のゲートです。」


(飛行艇内)

広報官:「帝国内の遠距離交通はこのような飛行艇か太陽電池と風力による電気推進船を使用しています。
民間航空用の飛行場は経済特区にある国際空港だけとなっており、建設による自然破壊を回避しています。」

北米連大手新聞記者:「軍用飛行場は別にあるのでしょ?。」

広報官:「特区自治政府の軍備は海軍しかありませんので航空戦力は大型空母一隻だけです。
この艦は友好国への訪問航海でエアショーなども行っているから有名ですよね。
搭載機が陸上に降りるときは国際空港を共用しています。帝国本体の戦力については皇帝にお聞き下さい。」
352pinksaturn:2006/08/17(木) 13:42:55 ID:CNCwY+zq0
ネット記者:「そういえば陸軍の無い国って珍しいですね。なんでこんな体制になっているのですか?。」

広報官:「経済特区の陸上部分は都市国家のような地勢ですから上陸されたら守りようがないでしょう。
警察が優秀なので治安維持は十分できてますよね。実際、暴力団の居ない自由港なんてうちぐらいですよ。
一方で、太平洋のただ中にある島国だから海の防衛圏は大国並みに広いので海軍は必要でしょ。
もう一つには、今まで帝国の外交活動を一手に引き受けてきたのに伴って緊急展開部隊も必要でした。
それで、外洋型海軍の中核として最低規模ながら空母機動部隊を保有しているのです。
あ、もうじき着水ですので席にお戻り下さい。着水したら海岸洞窟の駅から宮殿までは地下鉄で5分です。
はい、着きました。なお、この先のご案内は飛行艇を操縦してきた帝国本体の近衛兵が行います。
私自身もこの先は初めてですので、あちらに指示に従って行動して下さい。」


(海岸洞窟内飛行艇基地兼地下鉄駅)

近衛大隊伍長・マミ:「岸壁と機体の隙間が有りますのでご注意下さい。」

近衛大隊伍長・ユミ:「お降りになりましたら、2列に並んで下さい。お揃いになってからご案内します。」

マミ:「近衛大隊のマミ伍長です。帝国本体は広報官がおりませんので臨時にご案内を勤めさせていただきます。
なにぶん不慣れですので、不行き届きの点はご容赦下さい。」

ユミ:「同じくユミ伍長です。よろしくお願いします。」

フリーの雑誌記者:「(おいおい、こんな女子高生みたいなやつらが操縦してたのかよ、((((;゚Д゚)))。)
質問!、着水から洞窟内の接岸までお見事な操縦でしたが、ミニスカが大変お似合いのお二人は何歳なんですか。」

マミ:「わたしたちの年齢に関する質問は国家機密とも関わりますので皇帝に聞いて下さい。」

ユミ:「地下鉄ホームの方に参りますので、こちらに続いて下さい。」
353pinksaturn:2006/08/17(木) 13:45:09 ID:CNCwY+zq0
満漢人民共和国政府系新聞記者:「地下鉄に切符売り場が無いようですが、料金はどうなっているのですか。」

マミ:「虹彩認証のある臣民は無料で乗れます。皆様の今日1日限りの認証は入国時のデータから設定しました。」

北米連大手新聞記者:「公共交通の無料化は昔の共産圏ですら例がないですよね。財政的によく成り立ちますね。」

ユミ:「潮力及び太陽熱発電の高効率化を進めた結果電力価格が安いことと、石油消費削減政策予算のお陰ですね。」

マミ:「こちらの車両に集まってお乗り下さい。」

某交通雑誌記者:「リニア式地下鉄にしてはトンネル径が大きいし車両も贅沢な造りですね。」

ユミ:「宇宙工場の無重力環境で生産される高性能磁石鋼が余剰気味なのでリニア式を採用しています。
物資を降ろすカプセルにリニアカタパルトの機上子が大量に付いてくるので、それを再利用しているのです。
トンネル径を小さくする意図はありません。台風被害が多いので、車両は避難者の寝泊まりを想定しています。」

J軍事年鑑記者:「(台風の避難用だって?。本当は核戦争時の兵舎だろ。ものは言いようだな。)
入り口の崖の高さからすると相当深いですね。核シェルターとしても使えるのでしょう?。」

マミ:「この深さなら有効でしょうけど、工業施設の大半が宇宙にあるのでここを攻撃しても無意味ですよ。
地上はジャングルに覆われていますからそんなことをしたら大規模自然破壊として国際的な非難を受けますね。
トンネルの深さは飛行艇との乗り継ぎをエレベーターやエスカレーター無しでバリアフリー化するためです。
海岸洞窟の駅は塩害を受けるのでなるべく機械類の設置を減らしたいですからね。」

ユミ:「宮殿下の駅に着きました。降車願います。」

マミ:「こちらの高速チェアリフトで宮殿内に直接上がれます。続いてお乗り下さい。」
354pinksaturn:2006/08/17(木) 13:46:30 ID:NerM3Qzh0
某交通雑誌記者:「エスカレーターの代わりにリフトですか。変わってますね。」

ユミ:「ここは高低差が大きい上に乗降客が少ないので、この方が建設費や維持費が安いですから。」

マミ:「移動お疲れさまでした。リフト降り場正面2基のエスカレータを上がると宮殿大広間です。」


(宮殿=実は離宮、大広間)

侍従:「ようこそ。お席は招待状の番号と同じところでお願いします。あちらにお飲物がありますのでご自由に。」

侍従長:「南太平洋帝国皇帝、知子1世陛下のおなーりー。」

皇帝:「世界のメディアの皆さんようこそ。既に衛星放送でお見知り置きいただいている、知子1世です。
我が国がこれまでその実体を秘匿してきた事情や基本政策については先日の放送の通りです。
今日は、この首都宮殿が実在することを直接確かめていただき、質問をお受けするため会見を設けました。」

北米連大手新聞記者:「早速ですが、いまどき新たに帝国を名乗る国家が現れたことは驚きです。
おそらく160年前の中央阿弗利加帝国以来でしょう。何故、いまさら帝政の必要があるのですか?。」

皇帝:「我が帝国の体制と160年前の独裁者ボカサ1世の妄想とは根本的な違いがあるのです。
現在の技術水準において地球温暖化の阻止に役立つ規模で宇宙資源を利用するには特殊な中央集権体制が必要です。
その体制で指導者の任に耐えられるのは特異なミトコンドリア遺伝子の持ち主に限られるとの研究結果があります。
特異ミトコンドリア遺伝子保有者を常に指導者として確保するなら、女系による万世一系継承制度が必然です。
我が国の指導層は全員がこの必然性を承知して帝政を支持しており、恐怖政治による支配などやっていません。
中央集権による絶対支配も宇宙関連や外交軍事を中心とする国の秘密に関わる事項に限っています。
民生に関する事項は、民選の衆議院が実質的な政策決定権を持っています。」
355pinksaturn:2006/08/17(木) 13:47:09 ID:NerM3Qzh0
西欧連大手新聞記者:「先ほど他の記者が案内の近衛兵さんに年齢を尋ねたら機密に触れると言われました。
陛下も、冥王星探検隊員達も、それに先ほどの近衛兵も皆さん若い娘さんばかりですね。誠に不可解です。
ミトコンドリア遺伝子の維持というだけでは説明がつかないじゃないですか。侍従さんは男性のようですね。
するとアマゾネス帝国というわけでは無さそうですが、この国の要人は若い女性ばかりなのですか?。」

皇帝:「皇位継承制度の関係で重要な地位に女性が多いのは事実ですが、中高年男性の大臣ならいますよ。
私たちの年齢に関しては今のところお答えできません。」

ネット記者:「ズバリ聞きますけど、あなた方はサイボーグですか?。脳改造で帝国を支配しているのでしょ?。」

皇帝:「サイボーグ技術について肯定も否定もしませんが、脳改造で帝国支配というのはマンガの読み過ぎですよ。
脳改造で人格を破壊された者が、孤立無援の宇宙で独立して活動できる柔軟な思考力を持てると思いますか?。
仮にロボット同然の者だけで大規模な宇宙開発が出来るなら、わざわざ人間を送り込む必要はないでしょう。」

ネット記者:「だったら、自爆装置を組み込んで逆らえないようにしているとか。」

皇帝:「未知の危険が多い宇宙で活動する勇気と知力がある者を自爆装置で支配し続けるのは無理ですよ。
そもそも冥王星なら電波が片道7時間もかかるんです。反乱が起きたら自爆命令が間に合わないでしょう。」

西欧連大手新聞記者:「しつこいようですが年齢に関してはお答えいただけないのですか?。
失礼ながら、案内の近衛兵さんは高校生ぐらいに見えます。見た目通りの年齢なら児童労働禁止条約違反では。」

皇帝:「そもそも児童労働禁止条約の規制とは子供をろくに学校にも行かせず働かせることの禁止でしょ。
ユミとマミはここに来る途中で皆さんの難しい質問にもきちんとお答えできたはずです。
それなりの教養が無い者を近衛兵のような国家の体面に関わる仕事に就けるわけにいきませんからね。
児童労働禁止条約は十分な教育を受けた者が能力を発揮するときの年齢は規制していませんよ。
年齢については女性なら外見を若く保ちたがるのは当然なのでとしか、今は言えません。」
356pinksaturn:2006/08/17(木) 13:48:41 ID:NerM3Qzh0
J軍事年鑑記者:「冥王星探検を敢行する技術のある国が突然出現したら誰しも漠然とした不安を抱きます。
宇宙開発に使われる技術と軍事技術が密接に結びついてきた歴史からそれは当然ですよね。
世界の人々の不安を取り除くためにあなた方の軍事力について出来る限りの情報公開をお願いしたい。」

皇帝:「我が国には、宇宙空間を持ち場とする宙軍と本国の地上及び200海里水域を防衛する地軍があります。
そのほかに特区自治政府が独自に保有する公知の海軍がありますが、統帥権は我々から独立しています。
宙軍の人員は約4100名ですが、その大部分は宇宙工場と資源収集の要員であり戦闘員は150名ほどです。
即ち、宇宙開発に関わる国家機密の保全と未知の危険が多い宇宙における指揮系統の明瞭化のための軍組織です。
戦闘は主たる任務ではありません。少数の戦闘員は宇宙工場に対する破壊活動を防止する自衛戦力です。
他国への侵攻能力はありません。これらの人数には地上で長期休養中の交代要員を含むので実働は60%です。
地軍は2個連隊規模の地上部隊と200海里水域の権利保全を行う警備艦主体の水上部隊を統合した軍です。
保全すべき海域が広く、飛行場建設による自然破壊を避ける政策もあって中型空母を2隻保有しています。
ただし、艦船の推進方式が石油消費のない太陽熱・風力併用電気推進式のため短時間しか高速が出せません。
即ち、専ら近海警備のための戦力であって他国への侵攻能力は極めて劣ります。
そもそも我が国の人口では、全部合わせて1個師団にも満たない現在の戦力を保有するのが精一杯なのです。
仮に十分な武器があって外国を侵略しても、支配統治を行うような兵力には全国民を動員したって足りません。」

J軍事年鑑記者:「脅威論は絵空事と仰るのですね。では、宇宙における核配備もないと。」
357pinksaturn:2006/08/17(木) 13:49:54 ID:YJ+urKX40
皇帝:「旧P共和国憲法の反核条項は帝国全体に継承されています。現に我々はウランの輸入量がゼロです。
地上に原子炉がなく、ウランの転入もないのだから条約上は査察受け入れ義務すらないのです。
外惑星での活動に使える唯一の熱源として核物質の利用はありますが、隕石から回収される限られた量です。
動力用に必要な量を集めるのが精一杯で核兵器用に無駄遣いするゆとりはありません。
我々が脅威となるのは無尽蔵の隕石資源と太陽熱で生産される安価な鉄鋼製品と競合する業界ぐらいです。
あとは、エネルギー資源の消費が減って困るような利権の持ち主もですかね。」

北米連大手新聞記者:「安保理における査察要求にはどう対応されるおつもりか。」

皇帝:「全面的に拒否する気はありません。北米連の提案は論理に矛盾があり、物理的にも難しいのです。
IAEAの制度では核物質の採掘から廃棄まで全ての移転を追跡管理するのがルールです。
これを宇宙に拡大適用するなら小惑星帯での隕石採集から管理しなければ核兵器の密造は防げません。
それを抜きに工場衛星だけ見せろと言うのは、目的外の情報収集を意図していると言うことでしょう。
そもそもIAEAの査察官は宇宙飛行士ではないし、自力で衛星軌道に行く手段だって持っていません。
我々のロケットは技術的制約から誰でも乗れるようにはなっていないので、便乗は出来ないんです。
誰がどうやって査察に行き、どんな方法で検証するか、具体性のない話には返事のしようがないでしょう。
もしIAEAの制度ではなく宇宙条約に基づく新たな枠組みでというなら北米連月面基地も同様ですよね。」

侍従長:「そろそろお時間です。」

皇帝:「時間のようですので、聞き足りない方は次回の定例会見にお申し込みを。でわでわ。」

侍従:「皆様、お帰りの支度を願います。帰路もユミとマミがご案内します。」
358pinksaturn:2006/08/17(木) 13:50:50 ID:YJ+urKX40
(翌年早々、冥王星から最後の放送)

朝子10世:「半年近くお送りしてきた冥王星からのテレビ中継も今回で終了です。
おかげさまで大きな事故もなく予定していた探査を終了できました。
今日は、最後のイベントとしまして、冥王星ーカロン系の重力均衡点から水の補給作業をお見せしましょう。
我々の小惑星資源収集艦は推進剤として大量の水を使用しています。
今回の飛行では目的地の資源状態が不明のため往復に十分な量3400dを積んできました。
しかし、現地での補給ができればその分噴射時間を増やして帰りの時間を短縮できます。
そこで、カロンから200dの氷を切り出し、補充することにしました。
ちょうど、出発前の最後の便が上がってくるところです。現在私が浮いている場所は船体の真下になります。
後方にカロンが見えていますね。あちらの方から氷を積んだ2式降下艇が上がってくるはずです。
あ、見えてきました。どんどん大きくなってきます。お尻をこっちに向けて逆噴射してますね。
止まりました。背中に大きな氷のブロックを乗せているのがわかります。クレーンで降ろしてますね。
船体の真下に浮かべた氷のブロックを溶かしやすいようにレーザー光線で細切れにしようとしています。」

マオ:「氏ね氏ねビーム!、氏ね氏ねビーム!、氏ね氏ねビーム!、氏ね氏ねビーム!...」

朝子10世:「細切れになりました。艦首ハッチから出た機関員が大きな袋状の物を持ってきましたね。
そう、あれはまさに巨大な浣腸器です。氷を溶かした水が逃げないよう袋に詰めています。」

機関長:「主任操舵員、ヴァギナルハッチ開けてちょうだーい!。」

雀奴:「ヴァギナルハッチオープン、ぱくりんこ。」

朝子10世:「ヴァギナルハッチは人間で言えば性器のような位置にある穴で、宇宙艦の補給口が有ります。」

機関長:「入れるよー。えいっ。ロックよし。愛液出して!。」

雀奴:「あひっ、あうあう。インナーバルブ解放、熱水放出、あうあうあう。」
359pinksaturn:2006/08/17(木) 13:51:23 ID:YJ+urKX40
朝子10世:「操舵員があえぎ声を上げていますが、冗談です。熱水を浣腸器に逆流させて氷を溶かしています。」

機関長:「絞るよー。マオ、降下艇を足場にするから寄せて頂戴。よし、せーの、ぎゅーっと。」

朝子10世:「下から寄せた降下艇を足場にして機関員たちが巨大浣腸器を絞っています。」

雀奴:「あうひぃーーー。」

朝子10世:「無重力下なので軽そうに扱っていますが、この作業1回で4dの水を補給しています。
今日のが50回目ですからこれで200dの補充になります。絞り終わったようですね。」

機関長:「終わったよー。インナーバルブ閉めてー。いい?。抜くよー。」

雀奴:「はひぃっ。ふう。(気持ちいいけど毎日じゃ疲れるなあ。冬子は障害で駄目だし、理美は教育上...)」

機関長:「主任操舵員、ぼーっとしてないでヴァギナルハッチ閉めてちょうだーい!」

朝子10世:「機関員がしぼんだ巨大浣腸器ごと降下艇で帰っていきます。これで補給作業が終わりました。
間もなく放送用巨大パラボラリフレクターをたたむのでこれでお別れです。長らく視聴ありがとうございました。」
360pinksaturn:2006/08/17(木) 13:52:47 ID:vygoWvmQ0
(北米連、愛国民兵会本部)

愛国民兵会会長:「ガッデーム!。取り締まりに行く前にやつらの活動が完了しちまったじゃないか。
大統領が志願者と同じHLAの献血者が50人要るだのとぐずぐず条件付けるから遅れたんだ。
まったく。最後までふざけた放送を繰り返しおって、ふしだらな馬鹿娘どもめ。次は許さんぞ。
事務局長、HLAの調査はどうなっているんだ。」

愛国民兵会事務局長:「2万人の正会員と10万人の協力会員全部のHLAを突き合わせたました。
51人以上一致する型はこれとこれですから出せるのは2名です。それぞれのうち志願者はこのリストです。
民主的決定の趣旨からはそれぞれのグループを集めて互選させるのが良いと思いますがどうしますか?。」

愛国民兵会会長:「宇宙の果てまで犯罪者を追いかけるんだからな。意欲だけでなく実力も必要だ。」

愛国民兵会事務局長:「そうですね。経歴からすると、うーむ、こいつとこいつかな、どうです?。」

愛国民兵会会長:「ビルの方は儂もよく知っている奴だからいいが、このスージーは女だぞ。大丈夫かな。」

愛国民兵会事務局長:「ご心配は解りますが、経歴は抜群ですよ。宇宙飛行士の最終候補まで行ってます。
うちの活動でも不法越境者の抵抗にあって負傷しながら3人撃ち殺してるし、性根が座っていますよね。」

愛国民兵会会長:「うむ。こっちのHLAグループは他に経歴の良いのが居ないからしかたがないな。
いやいや、相手だって小娘ばかりだから、女の方がかえってうまく取り締まれるかも知れないぞ。
いずれにせよ、軍の研究施設で人体実験の現場を見て、それでも志願するならという条件が付いている。
たぶん現場を見ればびびってやめるだろうという腰抜け国防長官の差し金だ。責任をとりたくないのだろう。
そのときは儂も同行するから、少しでもびびる素振りがあったら、儂の判断でやめさせよう。」
361pinksaturn:2006/08/17(木) 13:53:56 ID:vygoWvmQ0
(”みくら”艦橋)

朝子10世:「発進準備は良い?。帰りは軽いから加速きついわよ。サンプル保冷庫の温度再点検は?」

タラ:「各部耐G固定再点検完了。サンプル保冷庫外周区画温度60度K、安定しています。」

朝子10世:「よし発進。ニクス軌道まで通常推進。」

理美:「原子炉出力10%、グリッド電圧20万Vに上昇。推進剤注入始めます。」

瑪瑙:「加速度0.2G、エンジン推力正常に出てます。方位も良いです。」

翡翠:「いよいよ今度は太陽に向かってまっしぐらに落下ですね。」

朝子10世:「確かに帰りの方がちょっと怖い感じになるわね。ところで先行する氷隕石の位置は?。」

瑪瑙:「異常なしです。冥王星の位置も十分移動しているので追突する心配はありません。」

朝子10世:「よし、隕石移動装置の管制を地上に引き継いで。放す時間は14時間後にね。」
362pinksaturn:2006/08/17(木) 13:54:31 ID:vygoWvmQ0
タラ:「ヒドラの軌道半径を超えました。」

理美:「エンジン推力上げます。原子炉出力30%、60%、...最大です。」

朝子10世:「加速圧かかってきたわね。いよいよよ。ブースター点火カウントダウンはじめ。」

瑪瑙:「ニクス軌道半径まで200秒。」

タラ:「ブースター点火回路接続。180、179、...」

冬子:「操舵バックアップリンク、待機状態よし。」

タラ:「120秒前、点火権限操舵員に付与。カウント続行。」

理美:「体内タイマー同期正常。船体方向ぶれ無し。...3,2,1,点火!。」

翡翠:「おわっ、こりゃきつい。」

朝子10世:「振動によるサンプル保冷庫温度上昇に注意して!。」
363pinksaturn:2006/08/17(木) 13:56:10 ID:h33Ud/I50
(ハルの新風俗店 http://pinksaturn.fc2web.com/bar.htm#haru

真理亜:「”みくら”が無事に冥王星を出たわね。店もなんとか黒字のようね。」

ハル:「首尾良くお土産の氷が手に入ったそうですので、無事帰ってきてくれるのを願うばかりです。」

マサ:「それも冬子の腕次第ね。まあ大丈夫でしょ。冬子のBCI能力はすごいから。
ところで真理亜様、わざわざこんな特殊な店に呼び出してお話って何です?。」

真理亜:「実は、次の任務でN共和国大使館勤務を打診されている。藻前、憑いてくる気はあるか?。」

マサ:「外交官に出向するのはインスタント一代貴族じゃ出来ないでしょ?。」

真理亜:「トロい香具師だな。つまりだ。青の公家に入籍する気があるかってことよ。」

マサ:「い、いいんですか???。」

真理亜:「藻前のバカが感染ったの鴨ね。まあ、冗談抜きに藻前の素質は公家に必要だ。
急な話になったのは、N共和国で北米連工作員が政権転覆を画策しているせいなんだけどね。」

マサ:「また、スパイ退治ですか。まあいいか。先日の香具師のお陰で今の私があるわけですから。」

ハル:「そんな重大な話、私に聞こえちゃって良いんですか。」

真理亜:「私らがこの任務に就くと言うことは、当分軌道警備が手薄になるってことよ。
ハルにはその分頑張って貰わないといけなくなるから、わざと聞かせたのよ。」
364pinksaturn:2006/08/17(木) 13:57:01 ID:h33Ud/I50
ハル:「もうじき休養期間もお終いでしたね。お母さんの帰還を妨害されないよう頑張らないと。」

真理亜:「その意気よ。じゃあ、マサ良いんだな?。新規叙爵者研修開けに勅許を申請する。」

マサ:「ええ。やっぱり真理亜様に憑いていきたいんで。」

ハル:「同性婚かぁ。サイボーグになった以上、それしか無いんだけど私にはまだ想像できません。」


(北米連情報局は密かにマサを応援しているのかしら。
げ、これを書いている間にIAUで惑星の定義変更!。冥王星どころかカロンとセレスも惑星だって。
和名は憑くのかしら?。三途星&穀星?。100年後だとクワオワーも鴨。これ難しいな、犬糸星?。
(20)の >>101 と(23)の >>222 は要修正にorz 緊急事態発生...
次回予告(26)青の公家)
365pinksaturn:2006/08/17(木) 17:29:21 ID:h33Ud/I50
国際天文学連合IAUの新定義 http://www.asahi.com/science/news/TKY200608160317.html に合わせるため(20)(23)の2レスで訂正スマソ。

>>101
(5行目から)
皇太子:「タイタンは極低温の濃密な大気があるため、現有または開発中の搭載機では降下できません。
地球降下カプセルや火星降下艇は運用条件が違いすぎて使えず、新規開発もコスト的に難しいのです。
トリトンは、冥王星と似た環境ですが、逆行衛星であるためアプローチの軌道設定がやや難しいです。
いずれも、巨大惑星の衛星ですから離脱に要する推進剤量や強い磁気圏が乗員に及ぼす影響が懸念されます。
冥王星ですと、双子惑星カロンに水の氷が多いことが判っているので、推進剤が不足した場合のリスクも小さいのです。
技術面以外に、北米連が強くこだわる”第10惑星”への進出という政治的動機も選択理由です。」
(以下変更無し)

>>222
(3行目から)
朝子10世:「こんなに降りやすい惑星は他にないわね。まあ、昔は惑星と呼べるかって議論もあったけど。」

寿那緒2等兵:「昔は冥王星やカロンが惑星じゃないって言う人もいたんですか?。」

朝子10世:「資源収集に関係のない純粋に学術上というか政治の話だから、素体教育でやってなかったわね。
要するに、冥王星が見つかった当時はエッジワース・カイパーベルト天体がこんなに沢山あると思ってなかったのよ。
21世紀に次々に見つかるようになって、冥王星は軌道を占有する突出した天体じゃないのが判ったのね。
それで、天文学者達はこれじゃあ惑星の定義に当てはまらない、小惑星の仲間だって言い始めたの。
ところが、そういう説に対して北米連が強硬に反対したのよ。それまでの惑星発見はすべて西欧の手柄でしょ。
自分たちが見つけた惑星が一つもなくなることが、大国の威信に関わると思ったのね。
それで論争の末に惑星の定義を変えてしまったのよ。当時は宇宙望遠鏡なんて北米連しか持っていなかったりでね。
北米連の意向に逆らって観測データを分けて貰えなくなったら、小国の天文学者は失業してしまうから。
冥王星を見つけたのは個人が私財で設置した私設天文台だから、本当は国家の威信と関係ないのにねぇ。」
(以下変更無し)
366名無しさん@ピンキー:2006/08/18(金) 09:29:07 ID:xMC700oE0
書き直すのは採決されるまで待った方がいいような
3673の444:2006/08/19(土) 03:07:11 ID:kFnWMvDI0
「はい、 手を握ってー」
  廣瀬さんの合図に合わせて、 廣瀬さんに抱えられた「ニンゲンの右腕」がぎゅうっとにぎり拳を形作る。
「はい、 手をひらいてー」
  今度は反対に、 固く握られたこぶしが開かれる。
  廣瀬さんの指示通り自在に動く「ニンゲンの右腕」。 ハタから見たらなんとも奇妙というか、 不気味な光
景。
  でも、 廣瀬さんが超能力者で、 自慢のESPを駆使して「ニンゲンの右腕」を動かしているってわけじゃな
くって、モチロン種も仕掛けもある。 よーく見れば「ニンゲンの右腕」の根元にあたる部分から、 赤いコード
が伸びているのが分かるし、 そのコードの行き着く先は、 血だらけのベットに寝かされた私の身体の右腕
の付け根の、 もともと私の右腕がくっついていたトコロ。 つまり、 廣瀬さんの抱えている「ニンゲンの右腕」
は私の義手で、 腕を動かしているのは私自身ってわけ。
  私の右腕は廣瀬さんが抱えてるけど、 じゃあ右手や右足はっていうと、 これも全部私の身体から外され
て、 ベットのすぐ横にある保健室の先生が座っているところっていう設定の机の上に、 倉庫に捨てられた壊
れたマネキン人形の手足みたいに無造作に折り重ねられて置かれてる。 つまり、 今の私は、 手も足も外さ
れて、 自分独りじゃ身動きもままならないダルマさん状態で、 ベットの上に仰向けに寝かされてる状態。
  両手両足の関節のロックは、 さっき左腕を外した時みたいにサポートコンピューターに指示を出せばカン
タンに外れる。 あとは、 みんなで手分けして、 腕や足と身体をつなぐ電源コードを引き抜いていくだけ。 だ
から、 五体満足な私が、 こんな情けない姿になるのに、 ものの5分とかからなかった。
  でもそれだけじゃ「動く」バラバラ死体とはいえない。 外した手足もちゃんと動かせなきゃいけないよね。
と、 いうことで、 廣瀬さんが、 あらかじめ電気屋さんで買ってきた延長コネクターを使って、 外した両手足と
身体を接続。 これで、 身体から外された手足もちゃんと動かせるようになって、 名実ともに動く死体のでき
あがり。 今はそのテスト中ってわけ。 はは。
3683の444:2006/08/19(土) 03:07:49 ID:kFnWMvDI0
  もっとも、 コードだらけの身体じゃ見に来るお客さんは興ざめだろうってことで、 手足と身体をつなぐの
は、 目立たないように血糊と同じ赤い色に塗ったメインケーブル一本だけ。 だから、 義手義足の人工筋肉
に電気を送り込んで思い通りに腕を動かすことはできても、 動かしているっていう実感はないし、 4kgという
重さの私の右腕を両手でがっちり抱え込んでいるはずの廣瀬さんの肌の柔らかな感触も、 私には全く伝わ
ってこない。 なんの感覚もないのに、 一応は思い通りに動く、 身体から切り離された私の右腕。 自分のも
ののような、 そうでないような、なんとも形容しがたい不思議な感覚。 自分の意思で動かしているとはいえ、
見ていて気持ちのいいものじゃない。
  でも、 ベットに寝かされた私と、 私の枕元に座って入念に右腕の動作チェックをしている廣瀬さんを取り
囲む女の子たちは、 三流ホラー映画まがいの光景が目の前で展開されているっていうのに恐がるどころか
とっても嬉しそう。
「うわ! 面白―い。 ちゃんと動くじゃん」
「じゃんけんしよう。 じゃんけん」
「こっちの足も動かしてみてよ」
  私が手のひらを開いたり閉じたりするたびに沸き起こる黄色い歓声。
  まるで新しいおもちゃを与えられた子供みたいに目を輝かしながら、 みんな好き勝手なことを喚きたて
る。 保健室を作っているときは廣瀬さんと私だけが頑張っていて、 他の子はみんなかったるそうにしてたく
せに、 こんなときだけ生き生きしちゃってさ。 あんたたち、 バカじゃないの?

「じゃ、 次。 カメラのチェックをします。 写真係、 用意はいい?」
  私の手足が一通り動くことを確かめた廣瀬さんは、 てきぱき次の指示を出す。
「オッケイ!」
  歯切れのいい返事をしたのは写真係に任命された天野さん。 私からは見えないけど、 教室の出口にデ
ンと置かれたパソコンの前に陣取って、 モニター画面を見つめているところに違いない。
3693の444:2006/08/19(土) 03:08:41 ID:kFnWMvDI0
  天野さんの仕事は、 私が義眼カメラで撮った画像をプリントアウトして、 その写真をお客さんに売りさばく
こと。 だから天野さんのパソコンから私の寝ているベットの下まで伸びるケーブル線は、 目立たないように
シーツに空けた穴をくぐり抜けて私の首筋の端子コネクターとしっかり繋がってる。 つまり、 今私の見ている
光景は、 そのままリアルタイムで天野さんの眺めているモニター画面にも映し出されるってわけ。
「ちゃーんと、 センパイの見ている景色がこっちのパソコンにも写ってるよ。 なんだか自分がセンパイになっ
たみたいで、 おもしろーい」
  天野さんの声つられるように、 今まで私のまわりにいた女の子たちが、 一斉にパソコンの方へ向かっ
た。
「じゃあ、 これから試し撮りをします。 八木橋さんも、 天野さんも準備はいいね?」
  場を仕切る廣瀬さんの声が次第に熱を帯びる。 何しろ、 この写真の売り上げいかんでみんなの懐に入
るお金が違ってくるんだ。 そりゃあ、 気合も入ろうというもの。
「じゃ、 モデルは私。 うまく撮ってね」
  目立ちたがりのあるなは、 誰からも頼まれもしないのに、 勝手に私の目の前にしゃしゃり出て、 グラビ
アアイドルにでもなったつもりなのか腰に手をあててポーズをとってみせる。
「武庫川さん。 それじゃ意味ないでしょ。 ちゃーんとお客さんがやるみたいにベットに寝てる八木橋さんを上
から覗き込むようにしないと。 これはシミュレーションなんだから」
「はいはい。 わかりましたよ。 大監督さん」
  大げさに肩をすくめるあるな。 渋々ながらも廣瀬さんの指示に従って、 私を覗き込む。
「あ。 ちゃーんと、 こっちの画面にもあるなが映ってる。 あるな、 手を振って見せて」
  天野さんのリクエストに応えて笑いながら私に向かって手を振るあるな。 彼女の姿を義眼ディスプレイに
映し出されるカメラモードの四角いグリッドにうまくあわせて・・・
3703の444:2006/08/19(土) 03:11:10 ID:vWzdrqz70
「いち、 にー、 さん!」
  廣瀬さんの掛け声にあわせてシャッターを切る。 と、 いっても、 実際に身体のどこかにボタンがあって、
手でそれを押したりするってわけじゃない。 私の義眼は、 言ってみれば常に動画を取り続けるビデオカメラ
みたいなもの。 写真を撮るっていっても、 実際は、 ひたすら撮り続けている動画のある一点だけを切り取っ
て、 サポートコンピューターにアクセスして画像をサポートコンピューターに保存するだけ。 だからシャッター
を切るっていっても手を使うって訳じゃなく、 全部私の頭の中だけで完結してしまう。
  でもね。 だからって面と向かって隠し撮りできるかっていうと、 そういうわけでもない。
  画像を保存するためにサポートコンピューターにアクセスするとき、 どうしたって眼が変な色に光っちゃう
から、 私がシャッターを切るタイミングはハタから見れば丸分かり。 それに、 普通の人は眼なんか光るはず
ないから、 義眼カメラを使うだけで、 見る人が見たら私が義体だってことがバレバレになっちゃう。 だから、
この機能、 ホントは誰も見ていないところでこっそり写真を撮るときくらいしか使いたくないんだよね・・・。
「ふふふ。 写真を撮るとき怪獣みたいに目が光るっていうウワサはやっぱり本当だったんだね。 これ、 暗い
ところでやったら子供は間違いなく泣いちゃうね」
  案の定あるなは、 写真を撮られた後で、 思いっきり私に顔を近づけると、 私の機械の眼を興味深そう
に観察。 そう。 こんな私を見たら、 私の光る眼を見たら、 別に手足がバラバラじゃなくても子供は恐がって
泣くだろう。 ホンモノのお化けって思うだろう。 だからこそ、 みんな私に写真を撮らせたいんだよね。
「オッケイ。 あるなの写真、 バッチリ撮れてるよ」
  早速プリントアウトした画像を持ってくる天野さん。 わっと写真の周りに群がったみんなは、
「さすが機械の眼。 すごい画素数だね」
「一家に一台八木橋さん欲しいなあ」
  なんて私の気持ちなんかおかまいなしに、 好き勝手な感想を言ってくれる。 だいたい私は家電製品じゃ
ないんだ。 台なんて数詞で数えるなっ!
  あるなはといえば
「モデルがいいのよ。 モデルが」
  と、 自分の写真映りにご満悦。
3713の444:2006/08/19(土) 03:11:55 ID:vWzdrqz70
  自惚れるのもいい加減にしてほしいよね。 こんな画像、 サポートコンピューターの容量の無駄使いだよ。
すぐデリートしてやるんだから。
  私がベットの上で一人膨れっ面で憤慨していると、
「八木橋さん。 ありがとう。 私もお返ししてあげるね。 ほら」
  急に私に近づいたあるな。 ポケットから取り出したのは携帯電話を取り出して、 私の目の前でわざとらし
くちらつかせたかと思うと、 動作チェックが終わって無造作に机の上に放置されていた私の手足を、 八百屋
さんか魚屋さんの売り物みたいに丁寧に私の体の横に並べ始める。 そして、 携帯電話に備え付けのカメラ
のレンズを私に向けた。
「なっ、 なにするんだっ!」
  私はとっさにあるなのカメラから身を守るために腕を動かそうとした。 でも、 すぐに腕は私の身体から外
されて、 ベットの両脇に転がっているってことに気がついて絶望的な気分になる。
  こんな人間離れした姿を撮られるなんて、 ジョーダンじゃない。 こんな姿を撮られるくらいなら、 まだ裸を
撮られるほうがましなのに・・・。
「ただの記念写真だよ。 そんな顔しないで笑おうよ。 ほら、 みんなもベットの周りに集まって」
  あるなの呼びかけに応えてみんながベットのまわりに集まる。 もちろん、 仲良く並んでポーズなんていう
大人しい連中じゃない。 私の手足を抱きかかえたり、 手足の付け根から伸びるコードを引っ張ったり、 ある
なの目論見どおりにめいめい好き勝手に私の身体をおもちゃにしてやりたい放題。
  とうとうあるなの写真が引き金になって、 みんなで携帯をとっかえひっかえ、 私を囲んでの即席大記念撮
影会がはじまっちゃった。 バカみたい。 このクラスはバカばっかりだよ・・・orz

  もうすぐお昼休み。 っていうことは、 お化け屋敷の公開まで残された時間はあと少し。
  廣瀬さんは最後に仕上げに私の顔に死体らしいメイクを施すため、 映画部の部室に化粧道具を取りに
行った。 他のみんなは少し早いお昼休みをってことで、 連れ立って食堂にでかけちゃった。 だから、 ガラン
とした教室に残されたのは、 食事もできず身動きもできず相変わらずベットに寝かされている私と、 それか
ら何故かあるなと藤永田。
3723の444:2006/08/19(土) 03:12:51 ID:vWzdrqz70
「さてさて」
  あるなと藤永田は廣瀬さんが出て行くのを見計らって、 お互いの顔を見合わせて意味ありげに目配せ。
なんだか嫌な予感しかしない。
「ねえねえ。 八木橋さん。 バラバラに分解されちゃった気分はどうかしら?」
  あるなは枕元で頬杖をつくと、 ペットでも可愛がるみたいに、 態度だけは優しげに私の頬っぺたをなで
た。 こうときのあるなは何か私を苛める手立てを考えているって相場が決まってる。 その証拠にあるなの後
ろで、 藤永田が私を見下ろしながら、 意地悪そうに唇をつり上げてニヤニヤ笑いを浮かべてるじゃないか。
  はっきり言って、 あるなのうざったい手を払いのけて、 今すぐにでもこの場を逃げ出したい。 でも、 私の
手足は、 さっきの記念撮影のあと、 もう一度コードを付け直して動くようにしてもらえたとはいえ、 四つまと
めて机の上。 これじゃあ逃げ出すことなんかできやしない。
(何が、 気分はどうかしら? だ。 ただ私を馬鹿にして優越感に浸りたいだけじゃないか)
  あるなの挑発的な言い草にむっとした私は、 精一杯強がって、 ぷぃっとそっぽを向いた。
  あるなは、 そんな私の頭をぐいっと掴んで無理やり自分のほうを向かせる。
「σ◎◎¬ホホウ! !すいぶん反抗的ですな。 いいの? そんな態度で? ふっふっふっ」
  指先で私の鼻の頭を突いて今現在の力の差を見せ付けたあとで、 藤永田と顔を見合わせて意地悪く笑
うあるな。 私がなおもだんまりを決め込んでいると、 だしぬけに腕を伸ばして私の制服のスカートをぺろんと
めくった。
「なっ、 なにするんだ!」
  私は反射的に足をバタつかせて必死の抵抗を試みた・・・つもり。
  でも肝心の私を守ってくれるはずの両足は机の上だってことを、 またしてもすっかり忘れてた。 私の両
足は釣れたての魚みたいに机の上をぴちぴちでたらめに跳ね回ったあげく、 床に転げ落ちて、 鈍い音をた
てる。 そのショックにせっかく私の身体と足をかろうじてつなげてくれていたコードがプツンと外れて、 突然電
気の供給元を断たれた義足は、 膝を曲げたまま死んだように動かなくなってしまった。
3733の444:2006/08/19(土) 03:14:04 ID:fpGdcieg0
「バタバタうるさいなあ」
  あるなは、 大げさに眉をしかめてから後ろを振り返ると、 机の上で激しく動き回る残された私の両手を、
魚をさばくスシ職人みたいな動作で押さえつけて、 私の手と身体を繋いでいる赤いコードをぷつぷつ勢いよ
く外してしまった。 そして、 言葉を失い呆然としている私に向って、 バラバラの手足を無造作に放り投げて
いく。
「ひっ!」
  あるなの放り投げた義足が頭にぶつかって私は軽く悲鳴を上げた。 もう抵抗する気持ちなんて、消えう
せた。 たとえあったとしても手も足も失った私に抵抗する手段なんて残されてない。 猫に追い詰められた鼠
だって必死の抵抗をするっていうのに、 今の私は抵抗すらできず、 何か奇跡でも起こらないかと怯えた目
つきで周りを見回すだけ。
  あるなは、 そんな私をひとしきり嬉しそうに眺めたあとで藤永田にめくばせ。 うなづいた藤永田が私の口
を塞いだのを確認すると、 もう一度、 今度は勢いよくスカートを捲り上げる。 ふわり。 スカートの軟らかい生
地が私の頬にかかった。
  ちょこんとベットに飛び乗ったあるなは、 私の顔に覆いかぶさったスカートをどかすと、 勝ち誇った薄笑
いを顔に浮かべながら私を見下ろした。
「私、 前から気になってたことが一つあったんだけどさあ、 機械の身体でも、 あそこってちゃんとついてるわ
け? ちょっと、 確かめさせてよ」
  顔をよせて、 私の耳元でそうささやいたあるなは、 そのまま視線を下のほうにずらしていく。
「たっ、 た、 た、 助けてっ!」
  恐怖のあまり思わず言葉を失っていた私だけど、 ようやくのことで声を絞りだして叫んだ。 口を塞がれて
いるから、 そんなに響かないけど、 でもはっきりした叫び声。 私の声は、 喉の奥のスピーカーから出る電
気合成音だから、 口を塞がれたって、 しゃべることくらいできる。
「あんたたちのやってることは、 犯罪だっ!」
  私の言葉に怯んだのか、 口を塞ぐ藤永田の手が心なしか緩む。 藤永田が救いを求めるようにあるなを
見るのが分かった。
3743の444:2006/08/19(土) 03:14:42 ID:fpGdcieg0
「ふーん、 口を塞いでも声は出せるんだ。 さすが機械だね」
  でも、 当のあるなは感心したようにそうつぶやくだけで、 いっこうに動じる様子はない。
「犯罪? なんで、 なんで? こんなの、 ただの人形遊びじゃない? 八木橋さんと私と響子の三人で、 八木
橋さんの持ってる人形で遊んでいるだけ。 それのどこがいけないの?」
  さかんに人形と繰り返すことで私を言葉で痛めつけるあるな。 私のかぼそい反抗は、 かえってあるなの
嗜虐心に火をつけただけだった。
「さーって、 ここはどうなってるのかなあ」
  とうとう、 あるなの手が私のショーツにかかる。 足なんてついてないんだ。 ショーツを脱がすことくらいわ
けないはず。 でも、 それじゃあ私を苛めたりないらしい。
  すーっ。
  あるなの指先が、 いったんショーツから離れて私の股の間をじらすようにゆっくりと走る。
「うっ!」
  それだけで、 私の背筋を快感が走り抜けた。 堪えきれず、 ひくん、 と身体を震わせる私。
  手足の自由を奪われて、 言葉でさんざん痛めつけられたあげく、 あそこを弄られる。 そんなの普通だっ
たら不快感こそあれ、 感じことなんてゼッタイない。 でも、 作り物の人工性器に、 私の感情と快感の度合い
をリンクさせるなんていう器用な芸当ができるはずもなく、 性器が受け取った刺激をそのまま忠実に快感信
号にして脳みそに送り込んでくれる。 なんてバカな身体なんだろう。 こんなことで感じちゃうなんて、 私ってな
んて情けないんだろう。
「ねえねえ。 ひょっとして今、 感じちゃった? 気持ちよかった?」
  あるなは、 再び私の顔を覗き込んで、 くすりと笑った。
「この程度で身体をひくつかせるなんて、 ひょっとしてコイツってインラン?」
  あるなの堂々たる開き直りっぷりを見て心に余裕がでてきたのか、 藤永田も普段の底意地の悪そうな顔
を取り戻す。
3753の444:2006/08/19(土) 03:15:29 ID:fpGdcieg0
「そんなわけないじゃないかっ。 やめてっ!」
「ふーん。 じゃ、 もう少しいじってみようかな。 今度は直接ね」
  もう一度ショーツに伸びるあるなの魔の手。 今度こそ本当に脱がす気だ。
「だだだ、 だめ。 だめ。 本当にだめっ。 お願い、 あるな。 やめて。 誰かっ、 助けてっ!」
  やめて、 なんて言ったところでやめてくれるようなあるなじゃない。 そんなこと分かってるけど、 叫ばずに
はいられないよ。
  だって、 ショーツ越しであれなんだ。 直接さわられなんかしたら、 悔しいけど、 すぐに我慢できなくなるに
決まってる。 もし、 こんなカッコのまま、 あるなの指だけでイカされてしまったら、 それをネタに何を言われ
るかわかったものじゃない。 ああ、 こんなときこそ節電モードになってほしいのに・・・。 そうすれば、 何も感
じなくなるのに・・・。
  私は息を飲み込んで、 眼をぎゅっとつぶって、 歯を食いしばる。 なんとしても快感に耐えなきゃいけな
い。 何をされても平常心でいなきゃいけない。 いつになるか分からないけど、 誰かが私を助けに来てくれる
まで・・・
  私が悲惨な覚悟を決めたちょうどその時、
「武庫川さん。 やめなさい!」
  誰もいないはずの教室に響く鋭い声。
  視線を横にずらすと、 メイク道具の入った箱を抱えた廣瀬さんが、 厳しい顔をして立っていた。
「廣瀬さん・・・」
  救いの女神様の登場に私は思わずふぅっと安堵のため息を漏らす。
「むぅ」
  あるなは面白くなさそうに唸りながら、 私のショーツにかけた手を渋々戻して立ち上がる。 さすがのある
なも逆らえない有無を言わさぬ雰囲気を、 この孤高の芸術家肌の少女は持っていた。
「何バカなことやってるの。 これから、 顔の化粧もしなきゃいけないんだから邪魔しないで」
  そう言って軽くあるな達を一蹴した廣瀬さん。
「廣瀬さん、 ありがとう」
「っていうかねえ。 オープンまでもう時間がないんだから、 遊んでいる暇なんてないの。 さっ、 メイクやるよ」
3763の444:2006/08/19(土) 03:17:14 ID:H3GomUWR0
  恐縮しながらお礼を言う私にすら廣瀬さんは事務的に返答して、 持ってきた箱を開いて何やら化粧道具
を机に並べ始める。 その時は、 この人は照れ隠しをしているだけで実はイイ人。 ちょっと、 とっつきづらくて
何を考えているのか分からないところがある人だけど認識を改めなきゃ、 なんて素直に思ったよ。 でもね、
そんなのすぐに私の間違いだって思い知らされた。
「そうだ!」
  私の顔に白いパウダーを塗りたくりはじめた廣瀬さん。 ふと手を休めると私の首をまじまじと見つめる。
  義眼カメラで撮影した画像データを備え付けのパソコンに送り込むために、 首のところにある端子コネク
ターを使っているから、 私は今はカムフラージュシールは貼ってない。 だから、 私の首をよーく見れば、 首
の周囲をぐるりと取り囲むようにうっすら肌の継ぎ目があるのが分かっちゃう。 廣瀬さんは、 その私の肌の
継ぎ目に沿ってすうっと指を這わせながらこんなことを言ったんだ。
「八木橋さん。 外せるのは手足だけ? どうせなら、 首も外さないの? そうすれば、 しゃべる晒し首ができる
じゃない。 お客さんが布団をめくったときのインパクトは、 そっちのほうがずっーとあると思うんだけど」
「あ、 あの、 頭だけは危ないから自分では外せなくって、 検査のときにお医者さんしか外せないようになっ
てて・・・」
  あわてふためいて、 こんな説明をしなきゃいけないなんて空しい。
  確かに、 手足と同じように、 首だってちゃんと外れるようになってます。 現に、 この義体に換装する前
に、 自分の生首姿を見ています。 大掛かりな入院検査の時は、 首だけじゃなくって、 胴体から何から全部
バラバラに分解されることも知ってます。 だから、 晒し首だってやろうと思えばできるでしょう。 でも、 それ
はあくまでもお医者さんがそばについてくれていて、 身の安全が確保されているっていう前提での話。
3773の444:2006/08/19(土) 03:17:51 ID:H3GomUWR0
  私はこんな身体だけどそれでも一応人間なんだ。 ロボットみたいにAIのメモリーさえ残っていれば、 なん
かの事故で首が切れたとしても、 すぐに修理して復活なんてことはできないんだよ。 首を外すってことは、
頭と身体をつなぐのは細くてたよりないチューブやコードを無防備な状態で外に晒さなきゃいけないってこと。
だから、 もし、 何かの事故で合成血液を脳に送りこむ血管がわりのチューブ切れたりしたら、 私、 あっと
いう間に死んじゃうんだよ。 こんなお遊びで、 身を危険に晒すなんて、 そんなこと恐くてできるわけないじゃ
ないか。 義体の人だって同じ人間だって思う気持ちが廣瀬さんに少しでもあれば、 そんなことくらいすぐ分
かりそうなものなのに・・・。
「そっかー。 つまんないな。 首が外せれば、 もっと良い演出ができるのに・・・」
  残念そうに大げさな溜息をつく廣瀬さん。
  私の身体をおもちゃがわりにして遊ぶあるなも、 私の身体を自分のゲージュツ作品を完成させる道具と
しか見ていない廣瀬さんも結局おんなじ。 どっちも私を人間扱いしてくれないことには変わりないよ。 みんな
にとっての私って何? 超高性能デジタルカメラ? お人形さん? それとも芸術を完成させるためのモチー
フ? みんなと同じ人間って思ってくれる人はいないの? いくら身体が機械だっていっても、 私だって生きて
いるし、 冷たい言葉を投げかけられれば傷つきもするんだ。 なんでそんなカンタンなことがこの人たちには
分からないんだろう・・・。
3783の444:2006/08/19(土) 03:27:23 ID:H3GomUWR0
今日はここまで。
>>327
ありがとうございます。
早速こんなふうに使わせてもらいましたがいかがでしょう?
>>329
自らの体を売るっていうのは、体を維持するだけで多額の費用を必要とする
義体の人たちの中でも、ヤギーのように、特殊公務員にはなりたくない、
という人たちにとっては案外現実的な生活手段かもしれません。
悲しいことですが。
義体の人たちの中にはそんな道に望む望まざるにかかわらず進んでしまう
人が意外と多いのかもしれませんね。
妄想ありがとうございました。
これは頂き物に保管させていただいて宜しいでしょうか?
379名無しさん@ピンキー:2006/08/19(土) 10:37:39 ID:9LBpBdka0
なんかここまで来ると完全に犯罪ですね。
それこそ現行法でも余裕で裁けそう…。
「ヤギーの持ってる人形で遊んでただけ」にしても本人の同意が無いので、窃盗罪。
バラバラにしたのを「壊した」と判断すれば(少なくとも通常使用では絶対にならない状態にしたから)器物損壊。
ヤギーか誰かがこっそり録音して証拠が残ってたら脅迫罪に傷害罪(心傷)もプラスされるし。

少なくとも事件が明るみになったらマスコミ攻撃は免れないような。
大学時代以降に改名すらしないでひっそりと生活できているという事は、マスコミ攻撃にあってない事になるわけですが、
ここまで大きな騒ぎになって、どうやって事を収めたのか…。
ここまで大ごとになったら、バレない事は考えにくいし(そもそも客に見せる目的でヤギー虐待してるし)。

こういう輩のためにも、やっぱり催涙ガス機能は必須ですね。
スプレー装置を何とか義務化できないもんでしょうかね。
安全基準スレスレの様な激安なものなら(保険無しでも)一応は一万円かそこらでできそうな気もします。
380名無しさん@ピンキー:2006/08/19(土) 11:11:46 ID:WEnGYMlx0
いや、人の噂も七十五日、ですからして。

この事件が世間に広まり、社会問題として取り上げられる。
その結果、義体所有者の権利や待遇が改善されるものの、
その一方で、良くも悪くも「注目」をあびるようになる。
さらに、その「優遇」に不満や反感を抱く輩も出てくる。

それらが、ヤギー達義体所有者に向けられる「奇異の目」をますます増長させる、と・・・


ヤギー不憫だよヤギー(つД`;)
381名無しさん@ピンキー:2006/08/19(土) 12:26:16 ID:4u1xXZxs0
うーん、なかなかいじめられてますなあ。
萌え。

おもちゃにされることや見世物にされること、オブジェにされることも悔しいだろうな。
望まぬ性的快感による屈辱は充分婦女暴行も成立すると思いたい。

結局根幹にあるのはクラスの連中はヤギーを仲間という意識が希薄なこと。
おんなじ人間として思ってもらえないことの悲しさってのは、
今でも福祉の現場では大きなテーマですよね。

なんか、だんだん障害者のノーマライゼーション
(障害のある人を施設に隔離せず、できる限り一般社会で同じように暮らす)と
クオリティオブライフ(生活の質:ヤギーのそれは「人間らしさ」に尽きると思う)
を考える事例になりそうな感じになってきたなあ。
382名無しさん@ピンキー:2006/08/19(土) 23:52:59 ID:9LBpBdka0
さすがにここまで虐められてると萌えられないですね。
シャレになってないというか、自分がヤギーだったら一生立ち直れないというか。
ただ、もはやヤギー物語は萌えだけのものでは無いというか、物語として普通に面白いので、この話は萌えの観点では無く話そのものを楽しませていただくことにします。
(だから、ストップサインだと誤解しないで下さい。むしろゴーサインです。>作者様)
383名無しさん@ピンキー:2006/08/19(土) 23:56:20 ID:9LBpBdka0
>>380
七十五日過ぎておさまるものは、お祭り騒ぎであって、当事者への特別視では無いと思います。
事件が話題にあがる事も無くなっても、しっかり事件の事は覚えていて、「あぁあの時の八木橋さん!」で特別視されてしまうもんだと思います。
384名無しさん@ピンキー:2006/08/20(日) 00:02:35 ID:zPjG9TI40
手足を全部外した状態での性感入力って、どうかんがえても(その趣味でも無い限り)異常事態なので、義体のログにしっかり記録されそうな気がする。
そして次回メンテ時に絶対に「何かあった」事はバレるような…。
385名無しさん@ピンキー:2006/08/20(日) 20:17:36 ID:QkQF9n710
>>378
3の444様
327と329の書き込みをした者です。

>早速こんなふうに使わせてもらいましたがいかがでしょう?
ただ見られるだけでも嫌な姿を、こんな遊び感覚でみんなに写真に撮られてしまうなんて、ヤギーがあまりにも
可哀想。ヤギーには申し訳ないけれど、あるなの徹底したヤギー苛めのネタとして活用していただけて嬉しいです。

>これは頂き物に保管させていただいて宜しいでしょうか?
ありがとうございます。暗い妄想ネタですが、貰っていただければ光栄です。
386名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 00:48:25 ID:EzNbrlGl0
 『スーパーF1第3戦のチェコグランプリで、速水瞳選手がやってくれました!
日本女性として、初のポールポジション獲得です。
日本選手が男女を通じての初めてのスーパーF1グランプリ制覇の期待が高まってまいりました。
まずは、予選の模様をお伝えします。』 
日本で、熱狂的なコメンテーターのコメントで中継録画の番組が始まろうとしていた時、瞳は、
誰よりも先にチェッカーを受けようとしていた。
 ピットロードを横断して、瞳のチェッカーを誰よりも近くで見ようと争うように、
コースのホームストレートの金網にかじり付くチームスタッフの面々。
その脇を瞳は、誇らしげにチェッカーを受けてすり抜けていく。
 誇らしげなウイニングランの始まりである。
瞳の車に続き、ライバルのイギリス人ドライバーのヘンリー=ディクソンとドイツ人ドライバーのマリア=リネカーが、
車速を落とした瞳の車に追いつき、両脇につけた。二人が、瞳に祝福の言葉をかける。
「ヒトミ、オメデトウ。いつかこの日が来ると思っていたよ。」
「ヒトミ、女性初の名誉を取られちゃったね。今度は負けないからね。オメデトウ。」
祝福の言葉が両脇から浴びせられた。
 メインスタンド、コース脇のスタンドで、日章旗が至るところで振られ、瞳を祝福する横断幕がそこら中でたなびき、
「ヒトミ、ヒトミ」の大合唱に包まれてのウイニングランである。
 最終コーナーのピットレーンに車を向け、後は、車検場に車を止めて、瞳は表彰台に運ばれ、
表彰式を受けるのを待つばかりだった。
 もちろん、その後の厳しくて、人権無視のようなメディカル検査を受けて、初めて優勝確定となるのではあるが、
瞳は、ここまでの自分のことを思い出し、感動に浸っていた。
目から涙が溢れて、止まらなかった。ゴーグルの中が、涙で溢れる程だった。
 監督の妻川恵美の声が無線で耳に飛び込んだ。
「おめでとう。瞳。苦労した甲斐があったわね。私も、瞳をドライバーにした判断に間違いなかったことが証明できて、
本当に嬉しいわ。我がチームのファーストドライバーに相応しい活躍をしてくれた速水瞳に乾杯!
表彰台で待ってるからね。早く勝利のシャンパンが飲みたいわ。」
瞳は感動のあまり、さらに涙が溢れ、言葉が出なかった。


387名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 00:49:03 ID:EzNbrlGl0
 スーパーF1グランプリは、自動車レースの最高峰のカテゴリーを誇るサーキットレースである。このカテゴリーは、
歴史のあるF1グランプリのカテゴリーの上に5年前に新設された自動車レースである。
 スーパーF1グランプリは、平均車速が時速500qを遙かに超え、ストレートでの最速が、
時速650qを遙かに超えるスピードで、競技全長が2,000q、レース時間は四時間にも及ぶレースは、
自動車とレーサーにとって想像を絶するほどに過酷なレースなのである。
 従来のF1が開催されるサーキットでは、レースが出来ないので、専用に新設されたサーキットを各国が提供して、
年間20戦で、世界中を転戦し王者を決めるのである。
 専用に作られたサーキットは、一周が20q以上で、5qに及ぶ直線や、急激に曲がるヘアピンがあり、
変化に富むレイアウトになっていた。コースの設計自体も急加速、急減速の繰り返しが必要なコースがあったり、
全開率が80%を超えるコースがあったりと、まさに自動車の性能の限界を超える過酷なグランプリなのである。
 このカテゴリーのレースを新に設置し、最高峰のレースとして、位置づけることに、当初は、
国際自動車連盟は反対であった。
理由は、ドライバーの限界を遙かに超えたレースを開催することに疑問であるというものであった。
しかし、その国際自動車連盟を押し切って、スーパーF1グランプリの開催を決めさせたのは、
世界のトップと三位の自動車メーカーであるトミタとカンダだった。
F1時代から最高峰のサーキットレースに参戦してきたこの2社は、国際自動車連盟に対し、
その資金的なアドバンテージとレースでの実績を利用して、強大な発言力を持つに到ったのである。
日本の代表的自動車メーカー2社は、新開発の究極のエコエンジンである水素イオンエンジンの爆発的な出力の性能を
実験する場を求めていたのである。
388munplus:2006/08/21(月) 00:51:42 ID:EzNbrlGl0
2社は、他のワークスチームへも、その水素イオンエンジンの技術供与を条件として、参加を呼びかけたのである。
出力の出る究極のエコエンジンの技術供与を無条件で受けられるとあって、他のワークスチームは、
ヨーロッパの自動車メーカーが中心なために、水素イオンエンジンと引き替えに、トミタとカンダの2社と協調して、
スーパーF1グランプリという、新しいカテゴリーのグランプリの開催を国際自動車連盟に要望したのである。
アウトバーンという速度無制限の行動を自地域内に有する欧州の自動車メーカーにとって、
エンジン出力と環境問題を両立させる課題の解決として、日本のメーカーが持つ水素イオンエンジンという魔法の
エンジンは、どうしても必要な技術だったのである。
レースにエンジンを供給している自動車メーカーが、日本の2社に歩調を合わせて、
スーパーF1グランプリのカテゴリーを新設しない限り、エンジン供給を国際自動車連盟の全てのレースに行わないことを
宣言するにいたり、国際自動車連盟は、日本の2社の軍門に下ったのである。
国際自動車連盟としては、新興国からのエンジン供給の申し出もあったのであるが、
従来のメーカーのエンジンの信頼性に遠く及ばないものを使うわけには、プライドが許さなかったのである。
そして、日本の2社をそこまでして敵に回す力も残っていなかったのであった。
 そして、ついに、このスーパーF1グランプリというレースが開始されることになった。
国際自動車連盟は、2年後に、最高峰の自動車レースのカテゴリーを開始することを宣言し、
各国にグランプリ開催にあたっての専用コースの整備を依頼した。
この依頼に25カ国が名乗りを上げ、審査の結果、現在の20カ国での開催が決定し、
各国が2年後のグランプリ開催に向けて、サーキットの建設を開始したのである。
 参戦予定の各ワークスチームや自動車メーカーも車両の開発やドライバーとの契約を行い、
2年後の開幕戦へ向けての準備を開始した。
チームのドライバーは、F1のカテゴリーのドライバーやその下のカテゴリーで、ジャンプアップを狙うドライバーが、
破格の契約金でスカウトされていった。
389munplus:2006/08/21(月) 01:03:22 ID:EzNbrlGl0
 各チームは、試作車を完成させ最初に完成した日本のサーキットでテストを開始した。
このテストで、計画上で考えられたパフォーマンスに車が達しないことが分かった。
その原因究明を各チームが行った結果。各チームとも、共通の原因に行き当たったのである。
その原因は、ドライバーの問題なのだ。そう。ドライバーが人間だからなのだ。
人間が繰り返される急加減速のGに耐えられないこと、このスピードでは動体視力が追いつかないこと、
反応速度が不足し、車を自由に操れないことなど、人間の能力の限界が原因であることに行きあたるのであった。
 国際自動車連盟と参加予定の各チームとの協議がなされた。当初は、トレーニングを積んで、
このレースに使用する車のパフォーマンスにドライバーを何年か後に持っていけばいいと考えられていたのだが、
人間という種の限界であるという医学者からの助言を受け、国際自動車連盟は、開催するために、
あるひとつの決断を行うことで、このドライバーの問題の解決を図ることにした。
この決断は、当初、世論に疑問の声が多く上がるほどの決断であったが、人間本来の、
闘争本能を刺激する人間の限界を超えたスーパーマンによるレースを見たいという本能を満たすため、
そして、技術的にこのようなことが身体に行われている分野があるという点で、当初反対していた世論も、
認める方向に動き始めて、スーパーF1グランプリが、当初の計画通りに開催されることが決定したのである。
 各チームは、新しい基準のドライバーを作るために、巨額の投資をせざるを得なかった。
一方、国際自動車連盟は、この新しいカテゴリーで車を運転するドライバーに今までのカテゴリーでは
考えられないことをおこなうことを決定した。
それは、ドライバー自体のレギュレーションを決めるというものであった。
390munplus:2006/08/21(月) 01:03:58 ID:EzNbrlGl0
国際自動車連盟は、そうしなければ、このカテゴリーでは、ドライバー自体の高性能化への開発競争が
激化してしまう事態が必ず起きると容易に予想できたからである。
もしも、そんなことを許したら、スーパーF1グランプリ自体が、医学的な人体実験の場と化し、そのことにより、
国際自動車連盟自体が、人権問題で再び世論から糾弾される恐れがあったからである。
 各チームは、国際自動車連盟が、医学者の見解を参考にして作ったドライバーのレギュレーションに
従ったドライバーを作り出す作業に入ったのである。
 ドライバーを作り出す作業とは、すなわち、ドライバーを車のパフォーマンスを引き出すために必要な肉体を
得るための手術を受けるということであった。
 この様な経緯を経て、第一回のスーパーF1グランプリの第一戦が、オーストラリアのパースで開幕したのである。
 観客は、今までに経験したことのない速さと水素イオンエンジンのメカニカルサウンドに魅了され、
この新しいカテゴリーの自動車の素晴らしさに酔いしれることとなり、スーパーF1グランプリは、瞬時にして、
自動車界最高峰のレースとしての地位を確固としたものにしたのである。


391munplus:2006/08/21(月) 01:04:34 ID:EzNbrlGl0
 速水瞳は、小さいときから、自動車レースを見るのが好きだった。いつかはレーサーになりたい、そう思って、
少女時代を過ごした。少女時代は、カートレースにも頻繁に参加して、才能の片鱗を見せていた。
しかし、現実的に、女性レーサーの現役レーサーは、男性に比べて圧倒的に少ないという事実を知る頃の年齢になると、
レーサーへの道を進むよりも、少しでも自動車の近くにいられれば、レースに関わりがあればいいと思うようになり、
持ち前のルックスとプロポーションの後押しを受けて、レースクイーンというレースへの関わり方を
高校生活を送りながら始めることとなる。
 レースのある日は、素肌に近い水着姿になって、サーキット上で、チームの手伝いをする週末が続くのであった。
その中で、メカニックや、レーサー、チーム監督とも親しくなり、会話をしたり、メカニックには、車をいじらせてもらったり、
実際に車を操ることもさせてもらえるようになり、瞳のレーサーとしての非凡な才能が、
日本のレース界の話題になるようになった。
業界では、速水瞳は、『ドライバーとしての才能を秘める、才色兼備のレースクイーン』という評価を受けるまでになっていた。
 瞳自身は、そこまでの評価が立ったのであれば、将来は、スポンサーを見付けて、
F3ドライバーぐらいまでにはなりたいと思うようになっていた。
その瞳の考えを変えたのは、スーパーF1グランプリの最終戦が、日本で開催されることが決まり、
それも、東京の臨海部に一部公道を使用してのサーキットを作っての開催が決まって、その最高峰のグランプリを
チームのレースクイーンとして、間近で見ることになったときであった。
瞳は、スーパーF1グランプリの迫力あるレースに圧倒され続けてしまった。
しかも、自分が関わったチームであるカンダのワークスチームが、母国グランプリでワンツーフィニッシュを
飾るという結果を目の当たりにして、興奮に酔いしれることになったのである。
瞳は、自動車レースにドライバーとして、参戦したい。
それも、できることならば、いつかは、スーパーF1グランプリのレースドライバーになりたいと強く思うようになったのだった。
瞳は、その時は、たとえ、自分の身体が手術により変更されても構わない。そう思うようになっていた。
392munplus:2006/08/21(月) 01:14:06 ID:EzNbrlGl0
 そんな瞳の才能を当時はカンダの特殊車両部の技術役員であった妻川恵美とカンダチームの総監督の三上典明は、
見逃さなかった。
 二人は、瞳を東京の青山のカンダ本社に呼び出した。
 当初、カンダ本社に呼び出される理由の分からない瞳は、二人からの呼び出しに不安いっぱいな想いで、
カンダ本社に向かった。カンダ本社に着くと、瞳は、本社会議室に通され、そこで待つように言われたのだった。
たったの数分が何時間にも感じるほどの緊張の中で、妻川と三上が来るのを瞳は待っていたのを今でも、
瞳は鮮明に覚えているほどであった。
 緊張で張りつめた瞳の心を切り裂くかのように、会議室の重々しいドアが開く音が会議室の中に響き、妻川と三上、
そして、もう一人の人物が入ってきた。3人が、瞳と向き合う形で席に着いたとき、瞳は、その人物が、
カンダの社長である溝口直子であることが解り、何が自分に起こっているのか分からずに狼狽えるばかりであった。
 溝口は、カンダ創業以来初の女性社長であり、技術畑から社長を輩出するカンダの伝統を正統に継承する
技術畑出身の女性経営者であり、その上、経営手腕に優れた経営者であった。さらには、カンダ伝統のレースを
こよなく愛する女性であった。
「速水さんですね。こうしてお会いするのは初めてですね。いつもは、サーキットの人混みの中ですれ違っているけれど、
こうして、改めてお会いすると本当に綺麗な方ですね。
何処のミスコンに出しても優勝するだけの美貌を持っていて羨ましいわ。
それに、ドライバーとしてのセンスも非常に非凡な物を持っていると妻川役員から聞いています。」
「ありがとうございます。」
「ところで、今日ここに来ていただいたのは、他でもないのですが、うちのモータースポーツの契約ドライバーに
なってくれないですか?まず、F3に挑戦してもらって、F2、F1、そして、スーパーF1とクラスをあげていって欲しいの。
妻川から聴いているけれど、あなたには、男女を通じて初めての日本人ドライバーでスーパーF1の優勝ドライバーに
なる素質があると聞いています。
調べさせてもらったけれど、中学の頃に、世界カート選手権で、総合優勝しているそうね。
日本人で、そんな成績を残しているのは、男性ドライバーでもいないもの。どう?考えてくれない?」
393munplus:2006/08/21(月) 01:15:19 ID:EzNbrlGl0
「考えてくれといわれても・・・。」
「もちろん。全てのカテゴリーで、当社のワークスチームの正ドライバーの二人のうちの一人として契約してもらうし、
渡航費用から、現地の滞在費、生活費に至るまで、全てをカンダが持ちます。
もちろん、契約金と年俸は、そのクラスのトップクラスのものを保証します。」
瞳は、やっと溝口の言っていることの全てを理解した。溝口は、信じられないようなことをいっているのだ。
「私でいいのでしょうか?」
「もちろんですとも!カンダは、あなたの才能に賭けることにしました。日本人女性ドライバーを最高の舞台で戦わせたいの。
その女性は、あなたしかないという結論をくだしています。私は、日本人女性が、各カテゴリーのポデュームの真ん中で、
シャンパンファイトをする姿を見てみたいの。日本人女性のあこがれの存在になってほしいのです。
何か条件に不満がありますか?」
「そんなことはありません。でも・・・。」
妻川が、会話の中に入ってきた。
「スーパーF1のドライバーになった時に身体を変更されるのが嫌なの?それなら、F1までとして契約してもいいわ。」
妻川は、瞳が身体の変更を恐れていると思い、瞳の不安を和らげようと考えた。
この場は、瞳の首を縦に振らせることが最優先だと考えたのである。
たとえ、瞳と交わす契約が、F1までであっても、スーパーF1にクラスアップを瞳に決意させるための説得を
出来る自信妻川にはあった。
しかし、その必要はなかった。それは妻川の杞憂であったのだ。
394munplus:2006/08/21(月) 01:16:03 ID:EzNbrlGl0
瞳が意を決して自分の考えを話し始めた。
「身体を変更されても、スーパーF1ドライバーになれるのなら後悔することはないと思っています。私は、逆に、
そこまでの待遇をこんな何の実績もない私にしてくれることを溝口社長に後悔させてしまうんじゃないかと思っています。」
「そんなこと無いわ。あなたの可能性を買わせてもらうの。いいでしょ。」
「わかりました。こんなチャンスはないと思います。よろしくお願いします。」
即決だった。瞳はその場で決意したのだった。
 瞳は、その後のことを鮮明に覚えている。妻川と三上に家に一緒に来てもらい、瞳の両親を説得してもらった。
両親も最初は反対していたが、世界のカンダが、全面的にバックアップしてくれると言うことが、判断に対しての
安心材料となり、瞳の両親も瞳の幼いときからの夢を実現させたいと思い、カンダの申し出を快く受諾してくれたのであった。
 そんな両親も、スーパーF1ドライバーになるということを知ったとき、一瞬悲しい声になったのを瞳は覚えていた。
今度の優勝で、瞳は、そんな心配をかけた両親を少し安心させることが出来ただろうと思っていた。

 瞳は、車検場で、車から出してくれるのを待ちながら、自分のレーサーとしてのスタートとなったあの日のことから
今までのことが、走馬燈のように頭の中を駆けめぐっていた。
この四年間のことが、フラッシュバックのように瞳の頭の中で、浮かんでは消え浮かんでは消えていった。
395munplus:2006/08/21(月) 01:27:44 ID:EzNbrlGl0
少し投稿の間が空いてしまいました。
今回は、pinksaturnさんの提案に乗って夏の四肢切断フェアの
臨時増刊です。

「ボディーケース」で四肢切断場面は想定していないので、無理矢理に
四肢切断を入れてしまうとかなり無理があるので、「ボディーケース」を
勝手にお休みさせてもらい、新作ということにしました。
 タイトルは、「レーシングガール」とさせてください。

386と387は、名前を入れ忘れて、名無しでの投稿になってしまいました。
ごめんなさい。少し投稿していなかったのでぼけてしまったのでしょうか?
笑って忘れてください。
396munplus:2006/08/21(月) 01:30:42 ID:EzNbrlGl0
追伸ですが、この作品、そんなに長く無いものになると思います。
この作品を完結させてから、「ボディーケース」の続きを投稿する予定です。

杏奈の運命がどのようになるかは、この物語が終わってから、
完結まで一気に行く予定です。
397名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 02:19:24 ID:gu7oMbbI0
四肢切断フェアの一環という事は、車に乗る為には手足を取り除かなければならないという事ですね。
手足が着脱可能で、レース後には手足をつけてもらえるのか、
それとも完全に手足が無い義体になっていて、日常生活でも手足なしなのか、
その辺りの設定が出てくるのが楽しみです。
でも、女性社長の会社だから、無茶(鬼畜)な事は無い、と信じたいw

ところで、なぜ m「u」nplus さんになったのですか?
以前は m「a」nplus さんだったと思いますが。
398manplus:2006/08/21(月) 02:35:48 ID:EzNbrlGl0
すみません。
名前のスペルもミスタイプをしてしまいました。
ご指摘の通り、m「a」nplusです。
3993の444:2006/08/21(月) 09:24:14 ID:7OhbjdE20
私もサイボーグものを発見しましたのでここに置いておきます。
サイボーグものの基本を押さえている正統派(という言い方が正しいのか
どうかわかりませんが)な作品だと思いました。
ttp://www.geocities.jp/taba_aki/novel.html

manplusさん
お久しぶりです。
今回はカーレースのドライバーですか。また新たな切り口ですね。
身体にどのような改造が施されているかはまだあきらかにされていませんが
そのあたりは次回以降manplus節全開で容赦なく書き尽くされるのでしょうか。
楽しみです。

>>385
では、物語のほうは頂き物に掲載させていただきますね。
ありがとうございます。八木橋ワールドを舞台にして二次創作していただける
なんて、天にも昇る気持ちです。
400名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 12:15:41 ID:nXhEjDkr0
>>399
作者が女性だという所に一番びびった俺ガイル
401名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 15:32:47 ID:jhkMzeTF0
>>400

ヒント:「ヴァーチャル・ガール」の作者であるエイミー・トムスンも女性

402名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 21:54:24 ID:DkC7xnl70

>>329 >>330 妄想した。安っぽい人情噺になった…orz

カチャ、カチャ、カチャ…
狭い部屋の中にキーボードを叩く音が響く。セミの鳴き声が開け放った窓から聞こえてくる。長い長い梅雨が終わったとた
ん、気温はみるみる上昇し、今日の東京府の最高気温は37度だという。この部屋にはクーラーがない。扇風機も団扇もな
い。窓から熱い風が吹き込んでくるこの部屋の温度も、35度をくだらないだろう。でも、私には関係ない。どんなに暑く
ても汗なんかかかないし、熱中症になることもない。こういう時は、まったく便利な身体なんだよね。

カチャ、カチャ、カチャ…
暑さで頭がぼ〜っとするなんてこともない。だから、真夏の日中にクーラーもない部屋で2時間もメールを書くことだって、
へっちゃらだ。ふぅ…。こんなこと、自慢しても空しいだけだけど。気を取り直して書き上げたメールを読み直す。うん、
大丈夫。誤字はないし、伝えたいことはちゃんと書けている。今時、高校生ともなれば、友達や家族宛のメールを書くなん
て、日常茶飯事だ。私の場合は、それに加えてタマちゃんや吉澤先生や、時にはイソジマ電工の総務の人たちにもメールを
書くことがある。でも、全然面識のない人にメールを書くのは、そうめったにあることじゃない。特に、今みたいに、特殊
な関係にある人へのメールは、気を遣うし頭も使う。昔の身体だったら、とてもじゃないけど、2時間も根気が続かないよ。
もう一度、内容をざっと見直して、送信ボタンを押す。これで、今日までに来たメールには全部返信した。別に肩がこった
というわけではないけれど、思い切り伸びをして、椅子から立ち上がる。小さな窓から、夏真っ盛りな外の景色を見ながら
あわただしかったこの2週間のことを、振り返る。
403名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 21:55:27 ID:DkC7xnl70
掲示板に最初の書き込みをしたのがちょうど2週間前。こんな状況でなかったら、存在すら知らなかった小さな掲示板。自
分がこれからしようとしていることは、法律に触れることは何もないけれど、世間的によろしくないことには違いない。万
一身元がばれることがあったらと、びくびくしながらの書き込みだった。数日間で沢山のレスがついたけど、やっぱり、あ
んな短い書き込みだけでは、みんな半信半疑の域を出ないのだろう。問い合わせのメールをくれた人はいなかった。連絡用
にと用意したアドレスにメールが届くたびに、胸をドキドキさせながらメールを開いたけれど、全部スパムメールだった。
1週間待ってみて、もうこれ以上は進展しそうもないのがあきらかになると、私はかなりあせってきた。だって、18歳の
女の子だよ? 日本にだってそう沢山いるわけじゃない義体化1級だよ? 普段は義体のことを知られないようにって、あ
んなに苦労しているのに、いざ自分の方からバラしたら無反応なんて、あんまりだ。

それで、2回目の書き込みをした。自分から誘うようなことを書くと、いかにも誰からも相手にされていませんと告白して
いるような気がしたので、すこし捻った書き込みをした。いわゆる自演カキコっていう奴だ。かわいい女の子だなんて、ま
あ、まるっきりの嘘というわけではないけれど、騙していることには変わりがない。良心がチクチク痛むけど、仕方ないよ
ね。最初の時とは対照的に、これは物凄い効果があった。期待通りどころか、それ以上の反応があってびっくりした。自演乙
の書き込みを見た時は、ないはずの心臓がドキッとしたけれど、誰一人反応しなくてほっとしたよ。レスが100を越えた
頃から一気に大量の連絡メールが来るようになった。きっと書き込みがヒートアップして、我慢しきれなくなったんだろうね。
さて、結果。
404名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 21:57:57 ID:DkC7xnl70
  まともそうなお申し込み:62人
  こちらからお断りした方:9人
  冷やかしとか中傷とか:28人
  スパムメール:92通
  電波orz:15通

62人は、ほとんどが私と同じ、フリーメールのアドレスだったけど、内容からみて、たぶんまともな人の申し込みだろう
と思う。さすがに、いきなり会いましょうって言う人はいなかった。まずは、私にしたいことや、私にして欲しいことを確
認したいという内容がほとんどだった。値段の交渉から始めようとした人が若干名いたけど、文面がリアっぽかったので、
全部丁重にお断りのメールを差し上げた。私だって高校生だから、何を偉そうにって言うかもしれないけど、お金のこと以
外でもトラブルを起こしそうな雰囲気があまりにも強かったんだからしょうがない。それから多かったのが、えっち関係。
掲示板の性格上、えっちは原則無しってことのはずなんだけど、やっぱり、ほら、相手が可愛い女の子となったら、やりた
くなるのが男の子ってもんだよね。私だって、その辺の心理はちゃんと分かってるつもりだよ。手コキとかパイズリとか素股
とか、比較的無難なことをそれとなく匂わせていたけど、気がつかないふりをして全部スルーした。それ以上追求してこない
から、きっと良識を働かせて諦めてくれたんだと思う。実際に会ったらどうなるかわからないけどね。ホントは、生で中出し
したって、私が全身義体である限りは、性行為にならないし、だからお金を貰っても売春にはあたらない。それを言い出され
たら、嫌だからできませんとしか答えようがなかったから、誰も言ってこなかったのは幸運だったと思う。こんな事をしたい、
して欲しい系で書いてきたことは、それこそ千差万別。ニンゲン、いろんなことを考えるもんだと思ったよ。
405名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 22:09:02 ID:DkC7xnl70
Q:写真見せて。
A:会ってからのお楽しみにしましょう。221の書き込みを信じるかどうかはあなた次第です。
Q:本当に全身義体なの? 「脳見せ」してくれる?
A:はい。基本料金の範囲内で可能です。
Q:脳みそ触りたいな〜。
A:…死んじゃいます。脳ケースは完全密封で専用設備がないと開けられません。
Q:腕とか脚とか外して欲しい。
A:外すだけならいいですけど、動かすなら、専用ケーブルを用意するので追加料金が必要です。
Q:外した腕で手コキキボンヌ。
A:淫行は駄目ですってば。握手したり触ったりする範囲で我慢してください。
Q:人工性器の詳細観察希望。(ドキドキ)
A:あまり詳しく見られると恥ずかしいので駄目です。私の…を忠実に再現しているんですから!
Q:外した人工性器を使って僕が自慰するのは淫行じゃないよね?
A:………否定しませんが、料金高いですよ?
Q:首外しは、義体技師資格が必要ってホント?
A:本当です。医療用身体代替機器の製造と使用に関する法律第118条を見てください。
Q:メンテナンスハッチは開けられるの?
A:腹部のハッチでしたら。
Q:中身に触ってもいい?
A:手袋ごしですが触るのはご自由にどうぞ。万一、内蔵機器を損壊した場合、修理費用を全額負担していただくことに
  なりますのでご注意ください。
Q:胸のハッチは開けられないの?
A:胸部には生命維持装置が入っているのでご容赦願いたいです。それに密閉構造なので、見てもつまらないですよ?
Q:腕か足を譲ってくれない?
A:腕1本400万、脚1本600万になりますが?
Q:じゃあ、腕1本でいいや。入金先教えて。
A:…さっきのは冗談です。いくら作り物とはいえ、私の大事な身体です。お譲りすることはできません。ごめんなさい。
406名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 22:10:00 ID:DkC7xnl70
たいていのことはそれなりに予想していたつもりだったけど、最後のやつは、さすがに驚いた。どうせ断るだろうと思って、
100万円上乗せしてふっかけたのに、まるで子供のおもちゃを買うみたいに、あっさり承諾してくるんだもの。あんまり
あたりまえって感じだったから、言い出したこっちがめまいがした。世の中お金があるところにはあるもんだって感心する
気持ちと、たかが300万でこんなに苦労している自分はなんなんだろうっていう憤りとが半々かな。これだけで100万
円。魅力を感じないわけじゃないけど、返事の通り、こんな機械の腕だって、私の大事な身体なんだ。それをまるでモノの
ように売ったり買ったりする対象にするなんて、私には絶対できないよ。他の人がするのを批判するつもりもないけどね。

それに、万一、この腕を売っちゃったら、代わりの腕ができるまでは、片腕で過ごさなくちゃならないんだ。義体の外観は、
元の身体と同じにしなきゃならないから、標準義体の腕はつけられない。スペアを用意するお金なんてあるわけないから、
無くなっちゃったら、イソジマ電工さんにお願いして一から作り直しってことになる。ただでさえ好奇の目で見られている
のに、これ以上目立つ格好をするのは耐えられない。だいたい、失くした理由の説明はもっと大変だ。盗られたって言った
ら警察沙汰だ。落としました置き忘れましたでは私が馬鹿みたいだし、そんなの誰も信じないだろう。だからといって、正
直に、売りましたなんて言えるわけがない。義体の個人売買は法律で禁じられてはいないけれど、ほとんどの義体メーカー
は、売買目的のための義体製作を極端に嫌っている。義体の一部でもなくしたら、その理由は徹底的に聞かれるんだ。やっ
ぱり、自分の身体を切り売りする気にはなれないよ。私の腕なんか買ってどうするのか聞いてみたい気もしたけれど、怖い
答えが返ってきそうなのでやめておいた。本当に、どうするつもりなんだろうね。この人とは、できれば会いたくないなあ。
なんとか断る口実を見つけなきゃ。
407名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 22:10:40 ID:DkC7xnl70
最初のメールを受け取ってから今日で4日目。夏休みが終わるまでに、この62、いや61人の人たち全部に会うとしたら、
結構厳しいスケジュールになってしまう。私は夏休みで時間があるけど、仕事のある人たちはそうもいかないもの。私だっ
て学校が始まったら、こんなことはしていられない。期待した以上の金額になりそうなのはいいけれど、これから先のこと
を考えると気が重い。正直、まったく面識のない人に、機械の部分を晒すのは嫌だけどさ。あの人達は、私のことを機械女
とか人形とか言うあるなのような奴とは違って、私を一人の人間として接してくれる。その上、えっちなことをゼンゼンし
ないのに5万円もの大金を払ってくれるんだ。たとえ、手足を外されたって、メンテナンスハッチの中を見られたって、我
慢しなきゃバチがあたるっていうもんだ。我慢するのは、あるなの苛めで慣れっこだしね。

実は気になることはもう一つある。あるなの奴だ。私と同じく、機械のことなんかさっぱりの人なんだけど、義体に関して
は私よりも詳しいくらい。その上、法律や、義体化の費用のことまで知っている。私なんて、リハビリの課程でタマちゃん
のそれはそれは厳しい指導でようやく覚えたっていうのにね。それ以上に癪に障るのは、単なる知識として持っているだけ
じゃなくて、私が一番嫌がる時に一番嫌がる言い方をするってこと。これは、義体障害者の生の声を聞かなくちゃ思いつか
ないようなことなんだ。もちろん、知る方法がないわけじゃない。義体板。私もROMだけどたびたびお世話になっている。
困った時、辛い時、同じような境遇で、同じような想いを抱いている人たちがいるっていうだけで、勇気づけられる気がす
るんだ。名前も顔も何も知らない人達だけど、どこかで繋がっているっていう気がするよ。義体の人達だけじゃない。家族
や友達や、恋人が義体だっていう人達もいる。そういう人達も、種類は違うけれど、同じくらい深刻な悩みを抱えて苦しん
でいる。義体板は、そんな人達の生の声が集まっている場所なんだ。だから、ここを見ればどんな言い方をすれば義体の人
を傷つけずに済むかっていうのが分かるのと同時に、どんな言い方をすれば義体の人を一番傷つけることができるかってい
うのも分かっちゃう。あるなも、そんな風に義体板を利用しているとしか思えない時がある。
408名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 22:22:39 ID:DkC7xnl70
でさ、もしも、もしもだよ。私が探すことができたくらいなんだから、あるなだってこの掲示板を見つけることができるん
じゃないかって思うわけだ。名前こそ出していないけど、18歳で義体化1級で東京府近郊在住。これだけそろったら、私
のことを知っている人が、あの書き込みと私を結びつけるのは簡単だ。あの62人の中に、もしもあるながいるとしたら…。
考えただけで心臓をぎゅって鷲づかみにされて、背中から冷や汗が噴き出してくるっていうもんだ。もちろんそんな気がす
るっていうだけだよ。もしもあるなに、私がやろうとしていることが知られたら。また強請りのタネにされるだろうか。学
校に密告されるだろうか。それとも…。そうなったら、私、一体どうなっちゃうだろう。考えたくもないよ。可能性はとて
も小さいから大丈夫だって自分に言い聞かせているけど、気が緩むとどうしてもその事を考え始めてしまう。でも、私には
あまり時間がない。どんな危険があるとしても、先に進むしかないんだ。

2ヶ月前、おじいちゃんが過労で倒れたって聞いたときは、本当にびっくりしたけど、同時にとても悲しかった。だって、
おじいちゃんが、そんなに無理して働かなきゃならない理由はひとつしかないんだよ。それは私の義体の維持費用の支払い
のため。おじいちゃんは、事故でおりた保険金は、私の将来のためにとっておくようにって言ってくれた。ということは、
今、私の義体を維持するための月々の検査代は、おじいちゃんが汗水たらして働いたお金の中から出ているってことだ。義
体に掛かる費用の半分は国が補助金を出してくれる。自己負担は残りの半分だけとはいえ、決して少ない額じゃない。私に
無駄な心配をかけさせないために、おじいちゃんは、その額を教えてはくれなかった。吉澤先生もタマちゃんも、おじいちゃ
んに口止めされているためか、何度聞いても教えてくれなかった。私がまだ子供だから、みんな気を遣って保護してくれる
のは嬉しいよ。でも、そのために、おじいちゃんはあんなに無理をしていたんだよ。
409名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 22:24:07 ID:DkC7xnl70
幸い、おじいちゃんの身体の方は、少し安静にしていたら回復したけれど、かかりつけのお医者様からは、2度とこんな無
理をしないようにと厳しく言い渡された。おじいちゃんは、まだ元気とはいっても、かなりの歳だ。いつまでも無理がきく
ような身体じゃない。本当なら、自慢のりんご園で悠々自適の生活を楽しんでいたはずなんだ。それを私のために倒れるま
で働いて…。きっと、おじいちゃんのことだから、お医者様に何を言われても、また同じように働くつもりだろう。義体の
維持費用の支払いは待ってはくれないんだから。私が生きている限り、おじいちゃんの身体が動く限り、今までと同じよう
に、年老いた身体に鞭打って働き続けることだろう。そして、それを止める力は私にはない。

だから、おじいちゃんに少しでも楽をしてもらうために、今の私に何ができるか、考えて考えて、最後に出た結論がこれな
んだ。これは犯罪じゃない。法に触れることは何もしない。確かに世間的に言って、良いことではないけれど、私が何百万
なんていう大金を手にする方法は他に思いつかないんだ。たとえば私がもっと美人なら、何か芸ができるなら、それを活か
してお金を稼ぐ方法はあったかもしれない。でも、私は、どこにでもいる、ごくフツーの女の子なんだ。武田のおかげで、
ちょっとだけ速く走ることができるようになったけど、今のこの機械の身体では、それには何の意味もない。義体だってい
うことでは、人よりはほんの少し力が強いし、車にぶつかってもビルの天辺から落ちても死なない程度に頑丈だ。義眼カメ
ラで見たままの映像を写真に撮ることもできる。でも特殊公務員にでもならない限り、こんな力があっても何の役にもたち
はしない。アルバイト先で、私は義体です、なんて言ったってお給料が増えるわけでもないし、かえって気味悪がられるの
が関の山だ。18歳の私が、特殊公務員にならず、しかもこの機械の身体でお金をたくさん稼ぐことができる方法なんて、
そんな都合のいいもの、常識で考えたらあるはずがない。
410名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 22:29:13 ID:DkC7xnl70
それでも何かないかと必死で調べ続けて、義体板のdat落ちしそうな過疎スレで、この掲示板のことを見つけた時は、藁にも
すがる気持ちだった。掲示板を探しあてて、過去ログの中に1時間2万円とか3万円とか、高校生のアルバイトの時給の
何十倍もの金額が書かれているのを知ったときは、もうこれしかないと思わざるを得なかった。書き込みの内容を信じる限
り、義体の私も、私が相手をする人も、秘密をきちんと守ることさえできれば、危険なことは何もない。

私がこんなことをすると知ったら、おじいちゃんはきっと怒るだろう。こんな方法で手にしたお金なんか受け取ってくれな
いかもしれない。でも、私は、私のために、おじいちゃんが自分の命を削っていく姿を、何もしないで見ていることなんか
できないよ。

おじいちゃん、ごめんなさい。あなたの孫娘はあなたのことを誇りに思っています。あなたのために、できるかぎりのこと
したいのです。たとえ、これから起こることがあなたの目に適わなかったとしても、この気持ちだけは信じてください。


八木橋裕子18歳。真夏の眩しい日差しの中、少女の小さな魂は暗黒面に堕ちてゆく。
411名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 22:34:23 ID:ZW5Qof4i0
紫煙
412名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 23:41:56 ID:gu7oMbbI0
>>400,>>401
ヴァーチャルガールもだけど(そもそもあれはアンドロイド娘ですね)
サイボーグ娘の金字塔wにしてありとあらゆる漫画や小説にパクられまくった「歌う船」も
作者は女性ですよ

なんか女性の作品の方が萌え度が高い気がするのはなぜでしょうか○| ̄|_
そういえばヤギー物語も某女流作家の影響が濃いですし…。
413pinksaturn:2006/08/22(火) 02:01:12 ID:D9AFoy6Z0
>>395 manplusさんキター 誘いに乗って頂けて嬉しいですね。
表彰台に上がる姿wktk
>>253 >>311 >>327 これほど緻密な絵を7日周期とは凄い生産性ですね。ケータイ画面には唖然としました。
>>366 否決されてもアメリカとその従属国の教科書はこうなる悪寒。
4143の444:2006/08/22(火) 22:56:46 ID:1Ah1pxrL0
>>402
妄想を広げて、本格的なSSに仕上げていただきましたね。
しかもこんなに上手にヤギー語を駆使していただけるなんて、嬉しいじゃ
ないですか。自分以外の人に八木橋ワールドを書いていただけるなんて、
作者としてはこれに勝る喜びはありません。今後とも、この世界で遊んで
いただければと思います。

やはりあのカキコはヤギーの自作自演でしたか。しかも、おじいちゃんが
倒れてしまって急にお金が必要なったためというやむにやまれぬ事情が
あってのことだったのですね。可哀想に。いかにもヤギーらしい悩める
展開です。
このあとヤギーはどうなるのでしょう。見ず知らずの男たちに会って
どんなことを強要されるのか、それともあるなにばれてしまうのか、
続きが非常に気になる終わり方です。
義体の正式名称は医療用身体代替機器というのですね。これは新しい設定と
して是非使わせてください。

この作品も頂き物として、まとめサイトに飾っていいでしょうか?
415名無しさん@ピンキー:2006/08/22(火) 23:07:24 ID:ONVTj9Is0
ヤギーがレイプ被害にあったり売春まがいの事をしたりする話は、
ダメとは言わないけど、ヤギー物語の世界観を壊すものでもあるので、
「実はパラレルワールド(、かも)」という事にして欲しい人がここに一人。
416munplus:2006/08/23(水) 00:36:34 ID:fJSj572B0
「これから、すぐに荷造りをして、イギリスに行ってもらいます。
F3のイギリスカンダのワークスチームに合流してほしいの。
私も一緒に行くから、身の回りのものを半月分も持っていくこと。後は、カンダが全て用意しておきます。
ほとんど身体ひとつで行ってね。後は、レースに専念してもらえればいいような環境を整えてあるから。」
「はい・・・。」
瞳は契約を終わると妻川に出国を促されるように言われた。
「速水さん。これから、ほとんどの生活を海外、特に、ヨーロッパで過ごしてもらうようになるからね。」
川上が、ぼそぼそと呟いた。
「はい・・・。」
「速水さん。これがチケット、明後日の11時に成田で待っているわ。」
「はい・・・。」
瞳は、何をどう言えばいいのか分からない上に、妻川の話に圧倒され続けてしまった。
そして、何がなんだか分からないうちにチケットを受け取ってしまった。


417munplus:2006/08/23(水) 00:37:14 ID:fJSj572B0
翌々日の11時、成田に瞳が到着すると、レースクイーンを務めていた国内チームのメンバーが、
川上から聞いたのか見送りに集まってきてくれていた。
彼らの『がんばれ。』という声を聞いて、妻川に手を引かれるように、飛行機に向かった。
「速水さん。早くしなさい!もう出発時刻が近いから。」
妻川は、あたふたと瞳の先を小走りにボーディングブリッジに向かった。航空会社の職員が、
「妻川様と速水様ですね。お待ちしていました。ご案内します。」
そう言って、ボーディングブリッジを飛行機まで先導してくれた。
機内でキャビンアテンダントに案内されて、座ったのは、ファーストクラスだった。
「速水さん。これから、あなたが、ドライバーとして、自力で歩けて、飛行機に乗れる状態にいる間は、
全ての移動は、ファーストクラスを使うのよ。ファーストがない飛行機を使うときは、ビジネスクラスでも構わないけれど、
絶対に、エコノミークラスに乗ることはやめてね。あなたは、うちのモータースポーツのシンボル的存在になったのだから、
立場をわきまえるのよ。」
この妻川の言葉を瞳は、今も覚えていた。
瞳は、この時初めて、自分が、常に注目される存在になったのだという自覚と覚悟、そして、
プロドライバーとしての心構えが心に芽生えたのであった。
こんな小娘にこんな所に座れるほどの待遇を与えてくれると言うことは、裏を返せば、レースでも、私生活でも、
変なことをしてはいけないということの警告なのだ、妻川は、そのことを瞳に理解させるため、このような形で、
飛行機に乗せたに違いなかった。もう、レースに出るからには、負けることは許されない、
カンダのドライバーの一員になったのだ。
 これが、妻川との二人三脚で歩んでいく瞳のレースドライバーとしての人生の始まりであった。
 F3カテゴリーでの瞳は、その才能のために、向かうところ敵なしであった。このカテゴリーでは、
ライバルがいないほど、瞳は、才能あふれるパフォーマンスを見せつけた。
418munplus:2006/08/23(水) 00:38:13 ID:fJSj572B0
 川上の判断により、わずか半年で、このクラスを卒業し、F2のカテゴリーに進んだ。
F2に進んだのは、シーズンの半分が過ぎ去った時期であるにもかかわらず、瞳は、才能だけで、
このクラスでの後半戦の表彰台の中央を独占し続け、総合優勝を飾った。カンダの車自体の性能も良いのだが、
それだけで勝つことが難しい四輪のモータースポーツ界で、このように勝ち続けるということは、
瞳の才能の高さを物語るものである以外何ものでもないのだ。
イギリスを始め欧州のモータースポーツメディアは、瞳のドライバーとしての資質を絶賛し、
『日本人で、最高峰のポデュームの頂点に居続ける可能性を感じることのできる唯一のドライバーであり、
四輪モータースポーツ界に登場したプリンセスである。』
と絶賛した。また、欧州の有名なモータージャーナリストは、
『瞳は、四輪モータースポーツ界の女王陛下になること間違いなし!』
と言い切るものまでいたのである。
 そして、カンダの決断を後押しするかのように、
『瞳のF1昇格を期待する。』
といった報道が大勢を占めた。
 翌年、2年目にして早くも、F1のカンダワークスチームの正ドライバーに収まったのであった。
 元々、サーキットレースの最高峰として長い間、君臨してきたカテゴリーであり、
その、レベルの格段の違いに瞳はシーズン当初、ものすごく苦しんでいたが、その天性の才能と持ち前の努力、
そして、川上のアドバイス、更に、人一倍のトレーニングを積むことの自信を足がかりに、
その大きな壁を乗り越え、シーズンの中盤、F1サーカスが、ヨーロッパラウンドに戻ったところで、きっかけをつかむと、
モナコグランプリを制し、モナコマイスターの称号を手に入れ、完全に、このカテゴリーを自分のものとして、
シーズン8勝をあげ、年間王者に輝くのであった。
新人が、それも女性ドライバーの総合優勝は、レース関係者の度肝を抜くようなものだった。 
419munplus:2006/08/23(水) 00:50:13 ID:fJSj572B0
瞳のこのような衝撃デビューの印象から、亡きセナと重ね合わせるファンや、マスコミが、多数現れ、
瞳は、いつの間にか、“音速の貴公女”とか、F1界の“皇帝”ミハエル=シューマッハの再来を期待して、“女帝”あるいは、
“プリンセス”と呼ばれるようになっていた。
 瞳は、周囲から新しい、F1の女王として、連覇を期待されるような存在になっていた。 
瞳は、次のシーズンも周囲の熱い期待に見事に応え、年間18勝の最多勝記録樹立のおまけ付きで、
ぶっちぎりの王者に輝いたのであった。
 ファンやマスコミは、当然のように、新しい“音速のプリンセス”のスーパーF1グランプリ参戦を期待するようになっていった。
F1という、従来の自動車レースで、彼女がマシンをドライブすることを周囲は納得しない状況になっていった。
 ただし、彼女の美貌と限りなく美しいプロポーションを破壊しなくてはいけないことに対し、
世論が賛否に分かれるところもあった。
 しかし、瞳が、スーパーF1グランプリに参戦することに誰も異論を唱えるものはいなかった。
後は、カンダスーパーF1ワークスの判断と本人の決断に全てが委ねられる状況になっていた。

420munplus:2006/08/23(水) 00:50:52 ID:fJSj572B0
そんな話になる少し前のシーズン中盤に、妻川が、瞳と会談する機会を持った。
「瞳、来期はどうする?」
「来期の参戦カテゴリーのことですか?」
「そうなの。来期、私は、スーパーF1グランプリにカンダのセカンドチームの総監督を引き受けることになったの。」
「本当ですか?でも、本社の役員のイスはどうするんですか?」
「カンダは、私に、役員として、レース監督をしろといってくれているの。」
「わぁ、うれしいです。恵美さんに今まで通りに、相談に乗ってもらえるのですね。」
「もちろんよ。私は、瞳がカンダを見限らない限り、あなたの相談に乗るわ。
私は、どんなことがあっても、カンダの妻川だもの。」
「私が、カンダを見限るなんて、絶対にないです。カンダが、私に見切りをつけるのならわかりますが。」
「そんなことないわ。速水瞳は、今や、紛れもなく、レース界の女帝なのよ。
カンダは、引き留めるために何をあなたに出来るのかを考えなくてはいけない立場なの。」
「私は、その当時、亡きセナが、ホンダに対して忠誠を誓ったのと同じく、カンダに対して忠誠を誓うつもりです。
なんといっても、このようなチャンスをくれたカンダ、そして、溝口社長や恵美さん。
そして、三上さんに一生かかっても返せない恩を受けたと思っています。」
「そんな、古風な考えは捨てなさい。もう、速水瞳は、充分にカンダに忠誠を尽くしてくれたもの。」
「ありがとうございます。ところで、来期のことなんですが、私、どうしたらいいのか悩んでいます。
このまま、もう一年、F1に留まるか、スーパーF1にランクを上げて挑戦しようか、もちろん、カンダのワークスは、
スーパーF1の現在の契約ドライバーの契約はまだ残っているので、武者修行の意味で、他のチームでドライブしながら、
カンダのシートが空くまで、待つことになると思うんですが・・・。」
「瞳としては、どっちの気持ちが強いの?」
「私としては、後者で考えようと思っているんですが・・・。」
「それは好かった。説得する手間が半分省けたわ。来期、私のチームで走らない?」
「えっ!だって、恵美さんのチームは、カンダの正式なワークスチームじゃないですか?
私のようなこのカテゴリーの経験のないドライバーは、ふさわしくない・・・。」
421munplus:2006/08/23(水) 00:51:34 ID:fJSj572B0
「だから、その古風な日本人的な考え方をやめなさいって言っているでしょ。瞳は、私たちのような新興チームじゃなくて、
カンダのファーストチームとか、メクラーレンとか、ヒイラーリとか、ベントなんて言うトップチームのワークスが相応しいのよ。
第一、その辺のチームからもオファーが来ているでしょ?私たちカンダにも、
瞳を手放す気があるのかという打診が来るくらいなんだから。
『ヒトミハヤミを早くカンダのしがらみから解放してくれ。』とか、『ヒトミをフリーにしてやってくれ、
ウチと公平にヒトミを獲得競争することが、スーパーF1の発展にとって一番好いことなんだ。』とか、
とにかく五月蠅いぐらいなんだから。」
「私のところにも確かに、『ウチでやらないか?』みたいなオファーが、10チーム以上来ています。」
「10チーム以上!?」
突然、妻川が素っ頓狂な声を上げた。
「恵美さん。突然何なんですか?」
「やっぱりそうか・・・。」
「何がやっぱりなんですか?」
「何がって?速水瞳獲得競争には、スーパーF1のチームの半数以上のライバルが、カンダにはいるってこと。」
「そういうものなんですか・・・?」
「何かのんびりしてるわね。」
「だって、どこのオファーも、私には敷居が高いです。悩むというか困ってしまって・・・。」
「瞳・・・。まあ、天才はこんなものか。自分の置かれている状況がわかっていないものね。言っておくけれど、
あなたが、スーパーF1のカテゴリーでドライブしたいという意志を持っている以上、あなたが、
どのカテゴリーのどのシートに収まるのかを決めない限り、誰も、シートが決まらないのよ。」
「そんなことないです。私は、まだまだ発展途上の新人ドライバーだから、他のドライバーの方たちが、
シートを決めないと、私までスーパーF1のシートが回ってこないです。」
422munplus:2006/08/23(水) 01:00:36 ID:fJSj572B0
「こらっ!瞳。それは、全く逆だって言うの。発展途上のドライバーをみんなが、『女帝』と呼ぶもんですか。
まだシーズンが、残っているのに、オファーがこんなに沢山来るものですか?瞳は、レースに参戦して、
総合優勝してない年があるのか?総合優勝を経験していないカテゴリーがあるのか?」
「はあ・・・。」
「今や、瞳は、80年代のセナ、90年代のシューマッハ、2000年代のアロンソと並ぶ、
サーキット界のドライバーの代名詞なんだよ。
あなたが決めないと、スーパーF1のドライバーを受け入れるF1やインディーのカテゴリーのチームが準備に困るんだよ。
彼ら専用のシートの開発に時間がかかるんだかからね。スーパーF1のドライバーの体型は、あなたも知っているとおり、
特殊なものなんだから、それ用のシートを作成しなくちゃいけないから、そろそろ車の準備が必要なんだよ。瞳、早く決めなさい。」
「そういうものなんですか・・・。なんか実感がないんですよ。そんな『女帝』とか『プリンセス』と呼ばれることに・・・。」
「慣れることよ。あなたは、もうトップドライバー。それも、超のつくトップドライバーなのよ。
それに、あなた自身にとっても、そろそろ、決断の最終リミットだわね。スーパーF1のシートに座るなら、
体の変更が必要だから、シートに座る決断が、シーズンオフ以降になると身体の処置の期間を考えると、
スーパーF1グランプリの開幕に物理的には間に合うけれど、新しい身体への慣れとか、
その体でマシンを扱うのに慣れるためには、少なく考えても、いくらあなたに才能があっても半年以上必要だと思うの。
体に慣れて、マシンに慣れて、レースに参戦していると思えるようになるのは、後半戦だと思うわ。
普通のトップドライバーだと、その状態になるまでに一年半はかかると思うんだけれど、
あなたの場合は特別中の特別だから、かなり早いと思うわ。
だから、トップドライバーが、スーパーF1のカテゴリーに参戦を表明してから、一年間の休養をとるのは、
新しい身体になれるためなんだけれど、各チーム共に、あなたの場合に限っては、来期開幕参戦してもらって、
ドライブしてもらいながら慣れてもらえれば、後半戦には、入賞してもらえる。
うまくいけば優勝してもらえると思ってのオファーだと思うわ。」
423munplus:2006/08/23(水) 01:01:15 ID:fJSj572B0
「そう言えば、私、スーパーF1ドライバーの特別な体型になって、慣れてから、
シートに座ってくれと言われていないですね。各チームとも、来期のシートを確約するとおっしゃっていただいていますね。」
「そうでしょ。それが、あなたの実力であり、才能なの。」
「はあ・・・。何か実感がないのですが・・・。」
「本人が一番呑気ということか・・・。ところで、まだ座るシートを決めていないなら、私も、速水瞳争奪戦に加わるわ。いいわね?」
「いいですけれど・・・。私じゃ・・・。」
妻川が瞳の言葉を遮った。
「さっきも言ったでしょ。この世界に謙譲の美徳はないのよ。」
「はぁ・・・。」
「瞳、私の条件提示を聞くの?聞かないの?どっちなの?」
「聞かせていただきます。もちろん。」
瞳は、妻川の言葉に促されるようにそう言うと、妻川が条件提示を始めた。
「まず、私が総監督を務めるチームのことを、まず、説明するわね。」
「はい。是非。」
「私が、カンダ本社から要請されて作るチームは、カンダの第2ワークスチームという位置づけに表向きはなるのだけれど、
内情は、全くコンセプトが違うの。純日本のワークスチームを作ると言うことなの。」
「どこまでの純国産なんですか?」
「そうね。そこが大事なところなんだけれど、今回の私のチームは、本当に全てなの。
ドライバーも、メカニックも、サポートスタッフも、もちろん、マシンの全てに至るまで全て日本製なの。」
「全てですか?それじゃ、昔のSAのような形じゃなくて、もっと国産色が高いのですね。」
「その通りよ。そして、昔のSAとかのようなプライベートチームじゃなくて、
完全な、カンダのワークスチームである点も違うわ。
だから、参戦して、すぐにトップチームと肩を並べられるだけの可能性があるチームなの。」
424munplus:2006/08/23(水) 01:01:55 ID:fJSj572B0
「いきなり、トップチームか・・・。さすがカンダのワークスですね。」
「そうなの。それに、我がワークスチームには、もう一つのサプライズがあるの。」
「どんなサプライズですか?」
「それは、このチームが、女性をメインに構成する、モータースポーツ界にとって異例のチームになるの。」
「えっ!?」
「だから、女性だらけのスーパーF1ワークスチームと言うことなの。」
「そんなこと出来るのですか?だって、運営のマネージメントスタッフとサポートスタッフはいいとしても、
メカニックの女性をそんなに調達できるのですか?それも日本人で・・・?」
「まあ、瞳、ゆっくり聞いて、いい?」
「はい。それではゆっくり恵美さんの話を聞かせてもらいます。」
「実は、このワークスチームを作るというプランは、瞳をイギリスに送り出すときには、もうすでに動き出していたの。
私が、もちろん、プロジェクトリーダーでね。そして、社内の技術部の女性社員で、
モータースポーツに関心のある社員の中から、ピックアップして、スーパーF1のメカニックとしての訓練を積んできたの。
そして、スーパーF1のワークスの特徴でもある医療技術スタッフも、人間工学の権威の女性医学者を引き抜いて、
スーパーF1の知識を学んでもらった上で、独自の開発研究と訓練に取り組んでもらっているのよ。
もちろん、その他のチームスタッフも、カンダの社員から精鋭をピックアップして、チームに加えたの。
つまり、参戦に当たって、ドライバー以外は、全て調達済みと言うことになるの。」
「凄すぎる。さすがに『世界のカンダ』の『モータースポーツ界の重鎮、妻川恵美』のやることは、違います。」
「実は、ドライバーに関しては、一人は、スーパーF1に我がチームが参戦するときに、シートに座ってもらうもくろみで、
世界に送り出したんだけれど、私たちが望む実力と格にあわなくなっちゃったの。」
425munplus:2006/08/23(水) 01:12:21 ID:fJSj572B0
「いったい、誰なんですか?」
「瞳のことに決まっているでしょ。当初の私たちの目論見だと、あなたの才能からして、チームを立ち上げるときは、
F1で、何度か勝っているくらいかF2で、総合優勝しているぐらいで、
トップドライバーといえる程度になっていると思っていたんだけれど、考えが甘かったわね。
今は、トップの前に超がつく、モータースポーツ界の代表的ドライバーになってしまったんだもの。
今シーズンのストーブリーグの話題の中心になること請け合いだものね。
他のワークスに行くことを引き留めることが簡単には出来ない存在になっちゃったもの。頭が痛いわ。」
「そんなことないですよ。」
「瞳が思っている程度の存在で瞳がいてくれれば、『新チームのシートを確約するから、言うことを聞きなさい。
報酬も保証してあげるから。』だけでよかったんだけれどね。
今の瞳は、どこのチームでも、ファーストドライバーとしてのシートを確約するのは当たり前で、
その上にどんな条件を上乗せするかだものね。計算が狂ったわ。
まさか、F1参戦の初年度から、年間王者になるなんて思いもよらなかったし、今シーズンだって、
他のドライバーが、瞳の連勝を止めるのは、いつなのかが話題になるほどの状態ときてるから、もう、お手上げだわ。」
「そんなことないですよ。」
「全く、本人は、そんなものだものね。今期、いったい何勝するつもりなのよ。
それに、『プリンセス』の称号までかぶせられちゃうんだもんね。
カンダ本社も『妻川、金に糸目はつけないから、絶対に、速水をシートに座らせろ』という指示を出しているけれど、
溝口社長も頭が痛いと思うわ。瞳をカンダに引き留めるのにいったいいくらかかるんだと考えるとね。
いずれにしても、カンダから私が引き出してきた条件を伝えるから、考えてみてね。」
「はい。でも、私は、カンダに見いだしていただいた人間ですから、カンダのことを最優先に考えるつもりです。」
426munplus:2006/08/23(水) 01:13:01 ID:fJSj572B0
「判ったわ。瞳、ありがとう。条件なんだけれど、契約金は、145億、年俸は、20億で、
ファーストドライバーのシートを確約、5年契約。付帯で、移動は、完全保護ポットで、ファーストクラス並みか、
ファーストクラスに特別シートカプセルを使って行うこと、専用のプライベートカーを何台か用意するから、
中距離までの移動は、チームとの行動を共にする必要なし。専属のサポートスタッフを365日24時間態勢でつけること、
あなたの体で暮らしやすい自宅を日本2カ所、アジア2カ所、ヨーロッパ2カ所、南北アメリカ各3カ所、オセアニア2カ所、
アフリカ2カ所は、最低限用意するし、利用施設は、全て最高の設備を利用してもらう。
そして、現役引退後は、カンダの終身常務として、神田本社に迎え入れると同時に、評論家や文筆活動、タレント活動は、
自由に行ってもらうことも約束するし、そのときのマネージメントは、カンダがいっさい責任を持って行う。
それから、現役引退後は、通常人体に限りなく近いような形に戻すと同時に若さを保つための管理も
責任を持ってカンダが行う。
引退後の報酬は、現役時代の三分の二は、最低限保証する。現役の再契約は、長期契約で行う。
この条件でどうかしら。もちろん、細部で、具体的に交わせない部分は、瞳の利益を優先する形で瞳の生涯を
通じて保証します。」
「若さを保つというのが、女性のチームらしいかもしれないですね。考えてみますと言いたいのですが・・・。」
「言いたいのですが、か・・・。それじゃ、ちょっと厳しいということね。困ったな。」
「いいえ、そんなに考えることもないので、即決したいと思うんです。」
「えっ!本当に!瞳、そんなに簡単に決めちゃっていいの?」
「私にとってカンダからのオファーが最優先ですから。でも、決断する前に一つだけ聞いてもいいですか?」
「いいわよ。」
「私と一緒にシートに座る予定になっているドライバーについてです。」
「それを話していなかったわね。瞳と一緒に我がチームのシートに座るのは、鈴木絵馬という、ドライバーよ。」
「今年、フォーミュラーニッポンで2勝している女性ドライバーですね。」
427munplus:2006/08/23(水) 01:13:59 ID:fJSj572B0
「さすがによく知っているわね。そうよ。日本人女性ドライバーとしては、将来性充分の素質の持ち主なの。
だから、スーパーF1グランプリに抜擢しようと思ったの。
彼女を瞳の側に置いて、瞳の全てを勉強させたいと思っているの。それが、2、3年後に実を結ぶと思っているの。
才能は充分だから、充分に瞳のセカンドドライバーの役割もこなせると思うわ。」
「私に、レースと彼女を育てることの二つを同時進行でしろと言うことですね。」
「まあ、瞳がきてくれるのなら、瞳には、彼女の先生になってもらえるだけでありがたいんだけどね。」
「判りました。もう一つ聞いていいですか?」
「何?」
「彼女と契約はもうすんだのですか?」
「彼女とは、契約は終わっているわ。もう、身体の処置も済んで、新しい身体に慣れるための訓練をしているわ。」
「ずいぶん手回しがいいのですね。まさか、私が、カンダと契約をしなかったときのことを考えて、
3人目も用意しているんじゃないですか?」
「さすが、瞳、鋭いわね。その通り。」
「まさか、その人も身体の処置を終えているなんてことはないですよね。」
「さすがにそれはないわ。でも、瞳に断られたら、すぐに身体の処置にかかれるように待機させてあるんだけれどね。
それに、瞳がうちと契約をしてくれたときには、テストドライバーとして、処置を受けさせることになるんだけどね。」
428munplus:2006/08/23(水) 01:23:33 ID:fJSj572B0
「恵美さんらしいけれど、呆れてしまいます。」
「ほめられたのかな・・・。」
「ほめてません!!」
「そうだよね。」
「そうです。分かりました。私の答えは、来期から、恵美さんのチームでお世話になります。」
「瞳、ほんと!!」
「本当です。」
「よかった。内心断られたらどうしようかと思っていたの。これで一安心ね。
『プリンセスヒトミ』がウチのシートに座ってくれるんだから、来期比較的早い時期から、結構カッコがつきそうね。
よろしくお願いします。」
「あっ。恵美さん、聞き忘れていたんですが、チーム名は、セカンドカンダですか?」
「そうね。チーム名を言っていなかったわね。チーム名は、『カンダスーパーガールズ』で登録しようと思っているの。
瞳の処置が、終わってからの記者会見で発表しようと思っているの。」
 瞳が、妻川と再び、二人三脚(実際には二人二脚かもしれないが・・・)のレース挑戦が開始されることになったのである。
429munplus:2006/08/23(水) 01:34:36 ID:fJSj572B0
今日はここまでにします。
まえふりが長くなっちゃいましたが、次回は、サイボーグ手術
シーンになると思います。
ご期待通りの展開になると思っていてください。
私もそのつもりですから。

>396 四肢切断の設定、次回明らかにします。

430名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 21:45:37 ID:FWp0yEZp0
どうやら冥王星は惑星から降格っぽいですね
431329=402:2006/08/24(木) 00:13:38 ID:GYZrAjyQ0
>>414
3の444様

>義体の正式名称は医療用身体代替機器というのですね。これは新しい設定と
>して是非使わせてください。
特別な造語ではないので、ご自由にお使いいただいてよいのではないでしょうか。

>この作品も頂き物として、まとめサイトに飾っていいでしょうか?
ありがとうございます。また中途半端な内容のものになってしまいましたが、サイトに
飾っていただけるのでしたら嬉しいです。
4323の444:2006/08/24(木) 02:44:09 ID:cNdwkXUp0
>>431
ありがとうございます!早速飾らせていただきました。
433pinksaturn:2006/08/24(木) 03:48:47 ID:c89ukBZM0
>>432
電波orz15通、とか
ふっかけたと言いつつ2倍とかじゃなく100マソだけという小心さ、
とか、細かい数字の決め方が味わい深いですね。

>>430
ははは、外しちゃったようですが、明後日のアメリカ民衆の反応は興味深いです。
まあ、私のストーリー的には、わがままな悪役に徹して貰うのでこのままってことで。

ところで、容量やばめのようです。
そろそろ次スレの時期でしょうか。
434pinksaturn:2006/08/25(金) 00:31:16 ID:0Oz/3wDn0
次スレ
【機械化】サイボーグ娘!十一人目【義体化】
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1156433128/

とうとう、テンプレが1レスに収まらないところまで成長しますた。
こっちのスレはしばらくの間短いレス用で維持しましょう。
435名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 01:24:21 ID:ALE4aUYh0
436pinksaturn:2006/08/27(日) 18:19:04 ID:dWqlMaXD0
(オプションパーツ臨時増刊)

−−(号外)降格−−

マオ:「殿下、殿下−−−大変ですぅ。」

朝子10世:「何を騒いでいるの?。非常事態なの?。全開加速中よ。むやみに体の固定を外したら危ないじゃないの。」

マオ:「た、大変なんです。め、冥王星やカロンが惑星で無くなってしまいました!。」

ミキ:「そ、そうなんです。矮惑星だって!。」

朝子10世:「まあ、ミキまでそれがそんなに騒ぐことですか。席に戻りなさい。」

マオ:「きっと、私たちが氷を採取しすぎたせいで星の大きさが基準に満たなくなったんです。」

ミキ:「どうしよう。せっかく一番乗りしたのに惑星降格じゃ、私たちの昇進もパアですよ。」

朝子10世:「なあんだ。そんなつまらないことで騒いでいたの。バカねえ。
200dぐらい氷を取ったからって、そんなことで降格されるわけがないでしょう。
あれはねえ、私たちに先を越されたせいで、北米連が悔し紛れに仕組んだことなのよ。
私たちの、成果を矮小化してみせるために、世界の天文学者に圧力をかけたらしいわ。
昇進のことなら安心なさい。ちゃんと、帝国の教科書には惑星って書いてあるんだから。」

マオ:「で、でもぉIAUがぁ。」

朝子10世:「解ったわ。じゃあこのスレの不適切箇所の数だけ矮小化すればいいわね。
はい、矮、矮、矮、矮、矮、矮、矮、矮、以上。さっさと持ち場に戻りなさい。
加速航行中に勝手な行動をして事故を起こしたら、本当に降格されるわよ。」

マオ、ミキ:「済みませんでした。降格は勘弁して下さい。」
4373の444:2006/08/29(火) 01:23:24 ID:+b/dT3H70
dat落ちしないよう保守しておきます。
早いとこ、全作保管しなければ。
438名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 23:11:28 ID:yNx5muVK0
439名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 16:46:58 ID:38TQI4s90
サイボーグになる前のヤギーを、サイボーグのヤギーと
区別する場合の呼び方を考えた。

生八つ橋に対抗して、

「生八木橋」。



・・・・・・ああっごめんなさいごめんなさい、リミッター解除して殴るのはやめtゴフッ
440名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 23:11:09 ID:jHle5VNi0
・・・>>439は病院送り&サイボーグ化。
441439:2006/08/31(木) 23:19:25 ID:voP8WsYE0
>>440


サイボーグ化されたら素で喜びそうな俺は、どう見てもメカフェチです。本当に(ry





・・・近眼と腹の贅肉だけでも、なしにしてくれんかなあorz
442名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 00:01:13 ID:434HDr660
体を選んでください

1. デッキマン
2. ソケットマン
3. 螺子(アンドロメダ星仕様)
443439:2006/09/01(金) 00:38:11 ID:fPbmI5jP0
3。

螺子になってヤギーと一生添い遂げる。
444名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 02:31:04 ID:1oLeM1Qo0
>>443
私と一生添い遂げるだって?はは、そういう人、結構いたよ。
でもね、みんな口ではそう言うけど、別に私が好きだからそんなふうに
言ってるんじゃないんだよね。そういう人たちが好きなのは私じゃなくて、
この機械の身体なんだ。もし、私がこんな身体じゃなかったら、私のこと
なんか気にも留めてないでしょ。どうせ私が標準義体に換装して、同じ姿の
人ばっかりで十人くらい集まったとしたら、私のこと当てられないでしょ。
もうね、そんなこと分かってるんだ。私、もう騙されないからね。
あんたみたいな義体フェチは、イソジマ電工の標準義体でも買って、それ
使ってハァハァしてればいいんじゃない?幾らかかるか知らないけどさ。
445名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 08:27:33 ID:4DIjXnci0
>>444

ブラックヤギーキターーーーーー(´A`)

イキロ>裕子さん




あと、>>444ゲトおめ
446439:2006/09/01(金) 10:29:57 ID:5TolNZrT0
平手打ちして、その後無言で抱きしめてみる。
447名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 11:18:37 ID:FFzH04/g0
うー、ちょっと、あんたいきなり何すんのさ。
叩きでもすれば、女は言いなりになるとでも思ってるわけ?馬鹿じゃないの?
平成あたりの時代遅れの安っぽいメロドラマじゃあるまいし、今どきそんなテで
引っかかるコがいたら見てみたいよ。それとも何ですか?どうせ機械なんだから、
少しくらいたたいても別にいいだろうって思ったってこと?だとしたら最悪だね。
機械の身体でも痛いものは痛いんです!
あんたは生身とか、義体以前にもっと女の子の心の掴み方を教えてもらったほうが
いいと思うよ。もちろん、私じゃなく、別のボランティア精神に溢れた女の子からね。

>>446
ところで、これ、なんてエロゲ?
448439:2006/09/01(金) 12:28:20 ID:5TolNZrT0
>>447

・・・調子の悪い右腕とともに、なくしたはずの心臓が締め付けられるように痛む。

目の前にいるのは、昔の自分。
生身の身体を失い、コンプレックスに凝り固まっていた頃の、自分の鏡像。

思うように、言葉がつむぎ出せない。
言いたいことはたくさんあるのに、伝える言葉がみつからない。

悔しくて、自分がもどかしくて。
俺はただ、彼女を抱きしめることしかできなかった。


【体験版はここまでです・・・この続きは製品版で!w】
449名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 14:55:38 ID:FFzH04/g0
「あ、終わっちゃったよ。今、いいところだったのにぃ」
 膨れっ面で苛立たしげにマウスをカチカチする私。
 ここから先は有料。お金を払わなければ、これ以上画面は先に進まないって分かってる
けど、それでもマウスをクリックしてしまう。男と知り合って、しかもお目当ての男が実は
義体だっていう意外などんでん返しがあって、やっと、これから話が進むってところだった
っていうのにさ。続きが気になって仕方がない。全く最近のゲームってうまくできてるよね。

 日曜の昼下がり、暇をもてあましていた私は試しにネットゲームってやつをやってみた。
主人公は義体である「私」。いくつか出てくる恋人候補に対して、自分の気を引いてくれるような
言葉を並べて、告白させるようにもっていくというなんとも他愛のないゲームだ。
 でも、他にすることないってことで、ほんの軽い気持ちではじめてみたんだけど…はまっちゃった。
 このゲームに使われているAIっていうのは、ずいぶんすごい性能みたいで、私がかなり複雑な
文章を打っても理解して、的確な回答や行動をしてくる。なんとなく、モニターの向こうにホントの
ニンゲンがいて、私の気を引こうと必死にレスを打ってるような気さえしてくる。
 
 ま、どんなにリアルでも所詮絵空事なんだけどね。それでもゲームの中の男の子は、義体の
女の子っていっても、みんな普通の女の子として接してくれるし、優しいんだ。厳しい現実
よりはよっぽど居心地がいいかもって思っちゃうよ。
 あーあ、どこかに身体が機械で、力もリミッターを解除すれば化け物みたいに強くて、体重が
120kgあって、検査で毎月眼が飛び出るほどのお金がかかって、子供はもう生めない。
そんな女の子でも付き合いたいっていう奇特な男はいないかなあ。

 いるわけないか。はは。
ちょっと、貯金を下ろして厳しい現実を忘れてみようかな?
450439:2006/09/01(金) 16:04:24 ID:5TolNZrT0
「え、うそだろ?・・・かーっ、ここで終わりかよ・・・」

モニターには「体験版終了」の文字と、有償サービスの案内文がポップアップしている。
安っぽい動画とともに、安くもなく高くもない、微妙な価格設定の金額表示が踊ってる。

最近評判の、擬似恋愛ネットゲーム。SNS仲間に誘われて、お試しアカウントでログインしたのが4日前。
生来の口下手が祟って2人に振られ、3人目が彼女・・・八木橋さんだった。

背もたれに身体を預ける。150kg近い体重に、さすがの義体専用チェアも耳障りな悲鳴を上げる。

俺が義体になったのは、バイクでの自爆事故だった。
義体にはいろいろ不便はあるが、とりあえず生活するには支障はないし、それほど不満もない。消防署のレンジャー部隊に転職してからは、給料も悪くないしね。

八木橋さんが第一級義体、という「設定」を知って、冗談のつもりで「生八木橋」なんて茶化してみたわけだが・・・

・・・まさか、それで傷つくとは思わなかった。ゲームの中の彼女が。
すげぇ、よく作りこんでるなぁ、とか最初は笑って・・・・・・急に笑えなくなった。
目の前にいたのが、義体に入った頃の自分だったから。
新しい身体と打ち解けられず、周囲の心無い言葉にいちいち傷ついてた、あの頃の自分。

・・・気がついたら、俺は彼女の頬を軽く叩き・・・そのまま彼女を抱きしめてた。
俺の腕の中でもがきながら、俺を罵り続ける彼女。
胸の辺り、なくなったはずの心臓が、締め付けられるように痛んだ。

・・・決めた。
もう一度、彼女に会おう。

弾みをつけて、背もたれに預けた上半身を起こす。
チェアが軋みを上げて、文句をたれる。

VRでもいい。そんなこと知ったことじゃない。
もう一度会って、そして・・・・・・
451名無しさん@ピンキー:2006/09/01(金) 18:39:57 ID:FFzH04/g0
結局クレジットカードの番号を入力して、もう一度例のゲームにログインしてしまった…。
はぁ、と口から情けない溜息を漏らす私。
こんな天気のいい日曜日に「恋愛ごっこ」なんて、私ってば、一体何やってんだろう。
(ん、恋愛ごっこ?)
それで、私の頭にある考えがひらめいた。
そう、所詮、こんなのただのゲーム。このゲームの中の八木橋裕子は、本当の私じゃない。
どうして、ゲームの中でまで律儀に全身義体の自分を演じる必要があるんだろう。
どうせなら、生身の身体っていう設定にしてさ、好きな食べ物欄にはタコ焼きって
書いたっていいはずだよね。それで、恋人と二人で喫茶店になんか行ったりして。
どうせお金を払うなら、そっちのほうがずっと楽しい展開になりそうだ。そう思った。

えーっと、登録名は「ジャスミン」
私は親友の名前を思い浮かべながら、自己紹介画面を作っていく。
家は大金持ちでレストランを経営していて、星ヶ浦に別荘があって、美人で優しくて
運動神経もよくって、でもカラオケはへたくそ。それが、今の私。そういうことにする。
義体で、貧乏で、頭の悪い私は現実だけで充分だ。
これで、きっとこのゲーム、もっと楽しくなる。
偽りの自分に偽りの世界偽りの恋愛、それの何が悪いのさ。こんなの、ただのゲーム
じゃないか。別に誰に迷惑をかけるわけじゃないんだ。そうでしょ?
452名無しさん@ピンキー:2006/09/04(月) 22:28:27 ID:5iuZJZj80
保守。ヤギーたんを。
453名無しさん@ピンキー:2006/09/06(水) 18:59:55 ID:03E1jaQB0
>>452

ヤギーは戦争に行ってしまいました・・・(マテコラ
454名無しさん@ピンキー:2006/09/07(木) 22:28:42 ID:B4Z4MhiJ0
戦争話を本設定に組み込むのだけは辞めてくれよ…orz
パラレルワールドの別話としての展開はOKだけど。
455名無しさん@ピンキー:2006/09/07(木) 22:36:48 ID:BIOOdDKN0
つか、ガチでパラレルワールドだろ・・・
4563の444:2006/09/08(金) 12:20:34 ID:xOQn9bPh0
戦争モノを物語の本設定には組み込みませんよ。あくまでもパラレルワールドってことで。
でも、義体ものと戦争ものはお話の相性がいいのか、意外に違和感はないなあと思いました。

本編は学園祭が終わったら、高校編、帰省してヤギーの母校を訪ねる話か、イソジマ編、
義体展示会のコンパニオン役をする話でも書こうかなあと思っております。
457名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 12:59:00 ID:BtOI1Gv00
>>456

「リミッターを外せば数10馬力」という「人型の化け物(ヤギーごめん)」を
民間に許可している時点で、「戦時徴用」は織り込み済みだろう、とか
思ってしまう俺ナッシュ。
458名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 01:58:44 ID:MXothM8X0
>>456
なんというか、世の中どっち見ても戦争モノばっかりで(サイボーグ物は特にそうだけど、それに限らず漫画とか映画とかみんな)いいかげんうんざりしている。
特にサイボーグ物では、軍隊とか戦争とかでない平和ものというのは極端に少ない。
アンドロイド娘モノあたりと比べてすら。
いい加減、たまには違うものだって読みたい。

ただの一市民のサイボーグ娘が、まがりなりにも平穏無事(に近い)な生活を送る物語は少ないけれど、その希有な存在がヤギー物語だと思う。
それらの描写が、単なる捨てるほど溢れるサイボーグ少女戦争モノの前フリにすぎない地位に貶められるのは、正直耐えられない。
だからせめてそういう話はパラレルワールドという事にして欲しいと思う。
459名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 10:48:44 ID:6sSDrb+s0
>>458

「日常の物語」であるヤギーワールドだからこそ、外伝たる戦争物の落差(悲しさ)が
心に響くのですよ・・・
逆に言えば、外伝以上にはなりえないから安心しる。

つか、心配のし過ぎではないのか。
460名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 11:08:04 ID:5aDhA2Wk0
「スクールランブル」みたいに皆でサバゲという設定なら本編でやっても問題なさそうな気がする。
4613の444:2006/09/09(土) 15:48:13 ID:1s5J+9/w0
>>457
イソジマ電工、ギガテックスという二つのライバル企業の受注綱引き合戦
とか、そのための国や自衛隊との裏での繋がりというのはすでに話の中
からちらりとかいま見せていますね。
ただそのあたりの話はメインテーマではなく、あくまでの義体である
ヤギーが一市民として日常生活をおくるうえで感じる悲しみを描くための
材料みたいなものです。
ま、どう転んでも私には戦争ものを描く知識も技量もありませんので
ご心配なく。
462名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 17:04:06 ID:MXothM8X0
>>460
ダメって事はたぶん無いが、ヤギー本人がやりたがらないと思う。
軍からのしつこい勧誘を蹴ってまで「普通」の生活を望んでいるくらいなのだから、当然「軍隊に入り人を殺し、自分も殺される」という現実と向き合う機会が生身の人間よりは多いはず。
軍は(今の自衛隊や米軍も全くその通りであるように)勧誘するとき「殺し合います、死にます」なんて絶対言わず、「免許もらえます、大学行けます」などと良いイメージの事しか言わないだろうが、
実際しつこい勧誘(はっきり言えば圧力)を日頃うけ続けている以上は、戦争の話(終戦記念日のニュースとかの類)に対する感じかたが敏感になっているだろう。
普通の人が普通の人として暮らすために普通でない努力が強いられる(それも技術面ではなく社会的な面で)という構図は、何だかアメリカの「黒人女性バス着席事件裁判」を思わせる。
463名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 21:30:42 ID:Xjs2pqCu0
>>462

一見そう見えるが、世界情勢がまだなんとか保っているヤギーワールドでは、戦争はまだ「遠い話」なんではないか。
自衛隊に入隊したからといって、いきなり軍事行動に出されるわけでもないし。
むしろ、レンジャー部隊とかそっちのほうでの「危険」を身近に感じると思う。

それ以前に、ヤギーはサバゲとかは根本的に好きじゃなさそうだが。
464名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 21:47:07 ID:DaowSFwX0
>>463
サバゲはしないだろうが、自衛隊の迷彩服コスプレなら、藤原君が土下座
して頼めば、いやいや(喜んで)やってくれそう。
465名無しさん@ピンキー:2006/09/12(火) 14:06:59 ID:OKMg+fio0
保守
4663の444:2006/09/14(木) 03:56:59 ID:MC8ab2tk0
  待ちに待った修学旅行! 3泊4日で北海道!
  えーっと、 摩周湖に阿寒湖に知床でしょ。 温泉に泊まって、 富良野、 美瑛。 最後に札幌に小樽。 前の
日は、 まるで小学生みたいに興奮して眠れなくって、 ニヤニヤ笑いを浮かべながらずーっと旅のしおりを眺
めてたから、 もう修学旅行の行程はカンペキに暗記してしまった。
  私はこんな身体だから、 北海道ならではの美味しい海の幸、 山の幸を食べることができないのは残念
だけど、 でも雄大な大自然を見て感動することくらいできるもん。 温泉だって、 聞くところによると、 露天風
呂がらしいんだ。 私は温泉に入ったところで、 温かいお湯につかって気持ちいいー、 なんてことはもう感じ
ることはできないかもしれないよ。 でも、 湯船につかりながら空を見上げたら、 星がまたたいてる、 なんて
素敵だよね。 そんな光景が見れるだけでも幸せだよ。
  もう、 一週間も前から北海道のことで頭がいっぱいで、 授業なんか手につかない。 先生にあてられても
うわの空でまるっきり答えられずに嫌味を言われたりしたけど、 そんなのへっちゃら。 そんなふうに楽しみ
にしてた修学旅行なのにさ。 ああ、 それなのに、 それなのに・・・。 羽田空港の搭乗口の前で、 先生から
搭乗券を手渡され、 もう味気ないコンクリートジャングルの東京とはおさらば、 お昼には神秘的な霧のヴェ
ールに包まれた摩周湖のほとりに立っているんだ、 なんて無邪気にはしゃいでいたその5分後に、 まさか地
獄に突き落とされる羽目になるなんて夢にも思わなかったよ。

  搭乗券を渡されたらクラス毎に並んで、 まずは手荷物検査を受けなきゃいけない。 そう、 手荷物検査。
つまり、 ナイフとか鉄砲とか、 その他危険物を身につけていないかどうか金属探知機で調べるってわけ。
そんなこと誰でも知ってるよね。 でも、 私、 飛行機に乗るなんて、家族とのモンゴル旅行以来だったから、
飛行機に乗る前にそんなことがあったなんてこと、 すっかり忘れてた。
4673の444:2006/09/14(木) 03:57:50 ID:MC8ab2tk0
  ゲート状の金属探知機をくぐる前に、 みんな、 携帯電話とか財布とか、 そういった金属性のものをポケ
ットから取り出してはプラスチックの箱の中に入れていく。 そうしないとゲートを通過するとき金属探知機に
引っかかってピンポーンってチャイムが鳴っちゃうからね。 もしチャイムが鳴っちゃうと、 係の人に呼ばれて
いちいち身体検査を受けなきゃいけなくて面倒くさいもんね。
  でもさ。 身体が機械でできている私はいったいどうなっちゃうわけ? 一応みんなの真似して携帯電話や
財布は、 手荷物検査コーナー備え付けのプラスチックケースに入れたけど、そんなことしたって、 身体の
中身が全部金属でできている私にはどう考えても焼け石に水だよう。 どうしよう。 どうしよう。
  自分の番が、 ひとつ、 またひとつ近づくたびにうろたていく私の様子を、 一足先に検査を終えたあるな
や藤永田が、 にやにや笑いながら見守ってる。 検査が終わったんならさっさと待合室に行って椅子にでも
座って寛いでいればいいのにさ、 わざわざ出口のところで待ち構えて、 ああやって、 私を笑いものにするな
んて、 全くむかつくよね。
  
  とうとう私の番がきちゃった。
  私の目の前にゲートの形をした金属探知機が、 難攻不落の要塞さながらの威容で立ちはだかる。
(えーい)
  私は目を閉じて玉砕覚悟でゲートに足を踏み入れる。
  でも、 一歩足を踏み出すか踏み出さないかのうちに
“ピンポーン”
  無情にも鳴り響くチャイムの音。
「はい、 こっちに来てください」
  女性係員は事務的に私を通路の横っちょに誘導したあと、 ハンディタイプの金属探知機を片手に私を身
体検査。 案の定、 金属探知機は、 私の身体に直接触れる前からびーびー鳴りっぱなし。 そんな様子を見
て、 あるなや藤永田がお腹をかかえて笑ってる。
「あれ、 おかしいですね。 あれ、 あれ?」
  腕の先や、 足の太もも。 外から見たらどう考えても金属じゃないだろうっていう部分ですら、 びーびーわ
めいて金属だって訴える探知機に、 首をひねりっぱなしの警備員さん。 そのうち、 私の後ろが身体検査の
順番待ちでつかえてきて、 忌々しげに舌打ちする音まで聞こえ出した。
4683の444:2006/09/14(木) 03:59:56 ID:MC8ab2tk0
  できるなら、 これ、 見せたくなかったけど、 やっぱり黙っているわけにはいかないか・・・。
「あ、 あのう。 こ、 これ」
  おずおずと財布の中に入っている障害者手帳を取り出して、 警備員のお姉さんに見せる私。
  障害者手帳には、 障害者・義体化一級ってご丁寧に赤くて太い文字で書いてある。 これを見れば、 ど
んな馬鹿でも私の身体が脳みそ以外は全部機械だって分かるはず。 そして、 同時に金属探知機が鳴りっ
ぱなしの理由も分かってもらえて、 私は晴れてここを通してもらえるはず。 あの、 同情と憐憫と嫌悪感が入
り混じったなんともいやな視線と引き換えにね。
  でも・・・
「あぁ」
  お姉さんは、 予想に反して私の障害者手帳を見ても至って冷静だった。 まあ、 こんな大きな飛行場なん
だもの。 全身義体の人間だって、 見ることはそう珍しくもないのかもしれない。 それは、 まあ、 良かったん
だけどさ。 でも、 このお姉さん、 手帳を私に返しながら
「では、 許可証を見せていただけますか?」
  なんて聞いてくる。
「許可証? なんの許可証ですか?」
  きょとんとして、 間抜け面で聞き返す私。
「一級全身義体利用者の航空機への搭乗には、 サイボーグ協会の発行した許可証を提示していただくこと
になっていますが?」
  あくまでも冷静に、マニュアルでも見ながらしゃべっているかのようにすらすら答えるお姉さん。
  許可証だって? 知らないっ! そんなの、 見たことも、 聞いたこともない! その許可証っていうのがない
と私は飛行機に乗れないってわけ? 飛行機に乗れなかったら、 私の修学旅行はどうなっちゃうの?
  もう、 頭の中は真っ白け。あるなや藤永田のくすくす笑いも目に入らない。 私は言葉を失って、 しばらく
その場にボーゼンと立ち尽くしていた。

「うわー。 八木橋。 すまん! すまん!」
  背後から聞こえた野太い叫び声に、 ふと我に返る私。
  いつの間にか、 列の一番後ろにいたはずの片桐先生が、 熊みたいな巨体を揺らしながら、 人波をかき
わけかきわけ最前列までやってきていた。 そして、 例の金属探知機の所を強行突破しようとして、 警備員
に二人がかりで止められているところだった。
4693の444:2006/09/14(木) 04:02:32 ID:+cQ61wqn0
「せ、 先生!」
「旅行会社の人に八木橋は許可証を取らないと飛行機に乗れないから気をつけてくださいって言われてたん
だ。 すっかり伝えるのを忘れてた。 本当にすまん」
  片桐先生は、 警備員に抱きとめられたカッコのままで私に向かって頭を下げた。
「す、 すまんじゃないよう。 先生、 どうするのさ。 私、 修学旅行にいけないじゃないかよう。 いくら先生が物
忘れが激しいからって、 これはひどすぎるよっ!」
  口から唾を飛ばすような勢いで、 うなだれている先生を責め立てる私。
  授業を忘れるのは大歓迎だよ。 でも、 こんな大事なこと、 忘れないでほしかった。 ああ、 もうっ、 もし
行けなかった先生のせいだからね。 あんなに楽しみにしてたのに、 こんな下らないことで行けなくなっちゃう
なんて、 ひどいっ。 ひどすぎるよ。
  私はひとしきり先生を罵ったあと、 へなへなと膝から崩れ落ちるように、 床にへたりこんだ。
「あの・・・、 すみません。 なんとかこの子をのせていただくわけにはいかないでしょうか?」
  ようやく警備員から開放された先生は、 がっくり肩を落としてうなだれている私のほうをすまなそうに見な
がら、 さっきのお姉さんに頭を下げる。
「あー、 私の一存ではなんとも。 すみません。 ちょっと上と相談してまいりますので、 しばらくこちらでお待ち
ください」
  係員のお姉さんはあくまでも冷静にそう言うと、 踵を返してこの場から立ち去った。

  とうとう別室送りになった私と片桐先生。 机を挟んでさし向かいに座った安全管理責任者というプレート
を胸から下げた羊みたいな顔をした中年男の話を、 二人して背筋を伸ばして神妙な顔つきで聞いているトコ
ロ。
「ではこの生徒さんは、 搭乗許可証をお持ちでないと、 こういうわけですね」
「ええ、 まあ、 そういうわけで。 はあ」
  片桐先生は、 さっきから大きな身体を小さくすぼめるような、 情けないカッコでしきりに頭を下げている。
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「それは困りましたね」
  羊顔の中年男は視線を横にずらして、 大げさにため息をついてみせた。
「一級全身義体利用者の航空機への搭乗には、 しかるべき機関の発行した許可証が必要。 これは運送約
款で決まっていることなんですよ。 それがないとなると、 飛行機への搭乗はできないのです」
  この人、 流れるようにそこまで言ったあと、 余計な一言を付け加えてくれた。
「一般のお客様への安全面の配慮もありますので」
(安全面の配慮ってなんだっ!)
「あ、 安全面の配慮って、 私は危険物ってことですかっ!」
  羊男の言葉にカチンと来た私は、 思わず自分の立場も忘れて声を荒げてしまう。
「確かに私は全身義体障害者ですけど、 義体操縦免許は一般しかもってませんっ! だから、 この身体は
どう頑張ったってフツーの人と同じくらいの力しか出せないように制限されているんです。 なのに、 こんな危
険物扱いなんて、 私、 納得いきませんっ!」
  私は半分身を乗り出して、 この羊顔の中年男に向かって、 つかみかからんばかりの勢いでまくしたて
る。 ホントは、 こんなとき、 余計なことは何も言わずに黙っていたほうがいいのかもしれない。 でも、 直接
的でなくても義体は危険物だって言わんばかりのもの言いに、 どうしても黙っていられなかった。
  片桐先生は、 そんな私の背中をあわてて背中をひっぱって、 無理やり椅子に座らせると、 お前は黙っ
ていろと言わんばかりに太い眉毛をぴくっと動かして私に向かって一睨み。
(もとはといえば先生のセイなのに、 どうして私が怒られなくっちゃいけないのさ)
  そう思った私は、 負けずにぷーっとほっぺたを膨らませてから、 ぷいっとそっぽを向いた。
  先生は、 そんな私のことなんかお構いなし。 羊男のほうに向き直ると、 姿勢をあらためて、 ねこなで声
で熱弁をふるい始めた。
「そう仰いますが、 なんとかならないでしょうか。 別に八木橋は、 義体ということ以外は、 ごく普通の高校生
なんですよ。 それはもう平平凡凡としたもので・・・」
  先生。 私をかばってくれるのは嬉しいけど、 平平凡凡は余計だよう。