2 :
新人:2005/09/11(日) 01:38:20 ID:3ghR3jmU0
タイトルの数字増やすの忘れてましたorz
申し訳ないですが、本当は七ということで。
次スレ立てる方は八でお願いいたします。
3 :
新人:2005/09/11(日) 01:39:48 ID:3ghR3jmU0
ぼくの質問に対して藤馬先生は、脳だけになった美由紀と既に特殊な装置を介して会話し、その意志を確認したと述べた。
美由紀が誰かに依存していることは性格診断試験の結果で判断できるが、その相手が誰なのかまではわからなかったか
らだという。
「美由紀さんは予想以上に落ち着いておられました。サイバロイドの特性を理解したうえで、自分のマスターとしてあなたを
指名されたのです」
美由紀は命の恩人だ。ぼくのために美由紀は死にかけたのだ。その事実は変わらない。それでもぼくは今の状況が気に
入らなかった。
美由紀を頼むと言った幸次郎さんも、藤馬先生も坂崎先輩も、ぼくが無条件で喜んで美由紀のマスターを引き受けるとで
も思っているらしい。まさかとは思うけど、美由紀本人までもがそう思っていたとしたら……。
昏い気持ちに支配されながらぼくは顔をうつむけた。
「命の恩人に指名されて、断れるわけないですよね?」
そう言ってぼくは笑ってみせた。
ぼくの歪んだ笑みを見て藤馬先生の表情が一瞬だけ変わる。藤馬先生はなぜか、興味深げな感心したような、そんな
表情をぼくに見せた。
4 :
新人:2005/09/11(日) 02:03:18 ID:3ghR3jmU0
とりあえず今日はここまでです。
タイトル番号増やすの失敗して申し訳ありませんでした。
計算では全部前スレに入ると予測していたのですがすみませんorz
タイトルのミスは気にしなさんな。
それより新作GJ!続きが気になりますね。
主人公がヒロインに恋愛感情を抱いていない、というのが目新しく感じました。
これから主人公と美由紀の感情がどのように動いていくのか、楽しみにしています。
新作UP乙!それからスレ立て乙!
このお話の定義でいけば、ヤギーもサイバーアンドロイドってことに
なるんでしょうけど、機械であって人間じゃないなんてセリフ、死んでも
言えないだろうなあ、なんて思いながら読んでました。
ヤギーは、自分では人間だと思っていても、周りの人からは機械だと思われ
てしまう。でも、この作品では、人間である宏道君が、サイバロイドのこと
を人間だと言い、サイバロイドである藤馬先生や坂崎さんは自分たちのこと
を機械と言い張る。そういう意味ではヤギーの真逆にある作品ですね。この
作品からいろんな刺激を受けそうです。
エロ分も適度に入りそうで、そっち方面でも楽しめそう。
脳を無機質に置き換えるってありましたけど、そうなるとこっちの世界では
サイバロイドは不死か、そうでなくても人間を遥かに越える長寿命になる
ということでしょうか?そうなると、サイバロイドに対する認識も変わりそ
う。金持ちなんかだと、自ら手術を志願する人もいたりするのでしょうか?
何はともあれ、今後とも宜しくお願いします。
7 :
新人:2005/09/11(日) 13:10:36 ID:3ghR3jmU0
>>5 しかし今現在は世界設定とか考えて説明を書いてたりするシーンで、なかなかそういう所まで辿り着けずorz
設定とかは話の展開と一緒に自然に解るようにできれば良いと思うのですがなかなか上手く行かずorz
>>6 ヤギーのお話はいつも楽しく読ませていただいてます。
藤馬センセや坂崎先輩が、あのようなアイデンティティを形成したのは、物語の舞台となっている社会環境の差違……
『全身義体障害者が社会一般に公認された存在であるのに対して、サイバロイドは世間に公認された存在では無い』事も
影響しているんじゃないかなあとか、色々考えてみたりしています。
ただ、機械化された後の美由紀や、これから出てくるキャラがどういう考えなのかは書いてみないとまだ解りません。
もともとのこの話は、機械化娘で学園ハーレム物を、というコンセプトで考えたので、順調に執筆が進めばヒロイン
クラスのキャラは後、数体(敢えて数人とは言わないw)登場するんじゃないかと思われます。
エロ的なシーンについては、エロ成分とメカ成分が両立するようなシーンを書きたいと考えてます。ですが筆力や想像力が
追いつくかが勝負な予感。
やれるとこまでやってみたいです(`・ω・´)
サイバロイドの寿命や、その存在を知っている人たちの認識などについては作中でおいおい語って行きたいと思います。
できれば改行位置をもうちと短め(全角40〜44文字目あたり)にしてもらえると吉。
ウチのモニタではハミだしてる…
9 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 21:17:02 ID:jwwis62h0
>>8 誰もお前のモニターの都合なんて聞いていないんだよバカ。
買い換えろ。
10 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 21:19:25 ID:jwwis62h0
さすがに全角40文字ではみ出すモニタなんてないかと。
視力が悪くて思いっきり大きな文字にしているなら仕方がないかもしれないが。
13 :
3の444:2005/09/12(月) 00:02:04 ID:kou1TGdR0
スレ即死防止も兼ねて話題をふってみます。
このスレにあまたいる作者さんの中で、もしもサイボーグ萌えの同人誌を
作ろうって言ったら、話にのっていただける方ってどれだけいらっしゃい
ますでしょうか?
私は、そういうことしたことないんですけど、なんか面白そうでやってみ
たいと常々思っていたのです。ここのスレに集まる作者さんは、みんなす
ごい作品を書いていて、いつも楽しく読んでいます。そういう方々の力を
結集したら、とんでもなくいいものができそうな気がするんですけど、ど
うでしょうか?
>>8 自分の落ち度をさも他人のせいであるかのように言ってまわるあなたは最低人間です。
申し訳ないですが、もうこのスレには二度と来ないでください。大変な迷惑なんです。
どれだけ身勝手なことを言ってるか、どれだけスレの住人たちに大きな迷惑を与えているか、自覚ありますか?
共用の掲示板で、世間のルール・常識に自分の方をあわせるのは、利用する立場として当然の義務です。
あなたのような反社会的な人間は、大勢の人が集まるような場所に来るべきではないです。
>>13 あなたまで
>>8のワガママにつきあう必要は全くありませんよ。
むしろとても読みにくくて迷惑です。
なんか
>>8が叩かれまくってるな。一言注意すればいいだけの話なのに。
>>9が強く出たから他の奴も追従してるって感じだな。
みんな他人を叩くのに飢えてるのかね。
もうやめない?
このまま10レスくらい改行論争になるのは見てられない。
改行するなら句読点のとこで頼みます。読みにくい。
んじゃ、改行論争は忘れて次行ってみよう。
もともと小説掲載用途でない2ちゃんに長文連投するっていう方法に無理があるヨカソ
アプロダ使うと消えたりするし、何か良い方法は無いものか。
19 :
8:2005/09/12(月) 23:59:32 ID:gM23UWBL0
うわっ、なにこの集中砲火っぷり。
アンドロイドスレから隔離されてよっぽど争いに餓えてたみてーだな。
煽るにしたって「人工眼球に入れ替えろ」くらいのセンスを見せてくれってもんだ。
>14
あーはいはい
2 度 と こ ね ー よ 、 バ ー カ !
>>18 別にいーじゃん、ここで。2ちゃんだから人が集まるんだよ。(厳密にはここは2ちゃんじゃないが…)
自サイト持ってる人はリンク貼り付けてくれればいいんだけどね。
21 :
通りすがり:2005/09/13(火) 00:12:50 ID:3Q9fw6zD0
・・・なんか無法化に向かっているようで怖いです・・・
攻撃的なカキコ書いてる奴のほうがキモス
>>14も俺ルール強制野郎なキガス
っていうか、気に入らないカキコにはスルーするのが一番だとおもふ
24 :
M.I.B.:2005/09/13(火) 17:39:06 ID:R9CFvOpO0
自室に戻りシャワーを浴びて、ベットに横になる。
完全休養5日間。しかし、何をすればいいのだろう?
1年以上も無かった自由な時間。それをどのように使えば良いか全く分からない。
自分がどんな生活を送ってきたか思い知らされる。
悩みながら目を瞑ると、眠気が襲ってきた。
とりあえず、眠ろう。明日から考えればいい。
教室に着くと、久美が駆け寄って来た。
「久しぶり。三島教授の仕事はもういいの?」
「ええ、一段落着いたからちょっと長めの休みがもらえたわ。
5日間は自由にして良いって」
「じゃあ、今度の日曜日も空いてるの?」
「うん。遠出しても良いって許可ももらってるわ」
「それじゃあ、私にちょっと計画があるの。付き合ってもらえる?」
「日曜なら大丈夫よ。どんな計画なの?」
「ちょっと遊びに行きたいの。良いでしょ?」
「お金もあるし…OK、行きましょう」
「じゃあ、約束よ」
そう言うと、彼女は部屋を飛び出していった。
その夜、メールで久美から連絡があった。
土曜の朝10時に駅前集合。目的地は新しくできた遊園地。
女2人で遊園地というのもどうかと思ったが、特に予定があるわけでも無いし、由美が行きたいなら…、と思ってOKと返事を出した。
25 :
M.I.B.:2005/09/13(火) 17:39:47 ID:R9CFvOpO0
土曜の朝9時50分。予定より早く着くと、そこには予定外の人物が待っていた。
「優太…」
「さくら…」
(なんでここに優太がいるの?)
気まずい空気が流れる。
(「俺、さくらが好きだ。恋人として付き合って欲しい」)
以前言われた言葉が頭の中に響き渡る。
(まだ、答えを出したなかったっけ…。でも、OKなんて出来ないよ…)
優太もチラチラとこちらを気にしているようだが、声をかける機会をうかがっているようだった。
「なに2人で睨み合っているの!」
次の瞬間、思いっきり背中を叩かれ思わずたたらを踏む。
「久美!」
振り返ると、そこには男子を連れた久美が笑っていた。
「信二。これはどういうことだ?」
優太の方は久美の連れと知り合いらしい。
「ダブルデートって奴だよ」
信二と呼ばれた男子は、久美と同じように笑いながら答えた。
「ダブルデート?」
「さくら達、全然進まないじゃない。だからここでイベントを用意させていただきました」
その言葉に、私と優太はさらに困った表情になるのだった。
26 :
M.I.B.:2005/09/13(火) 17:40:32 ID:R9CFvOpO0
遊園地に着くなり、久美と信二はすぐにいなくなってしまった。
「ダブルデートだって言ったくせに…」
二人きりになるとまたしても気まずい空気が流れる。
言葉もなくしばらくお互いの出方を窺う。
「「あの」」
二人同時に口に出し、また見つめ合う。
「そっちからお先に」
「いや、そっちから」
そんなもどかしい会話が続いたが、そんなもどかしい時間は最終的には
「このままじゃしょうがないから、とりあえず回ろうか?」
という、優太の発言に私がうなずくことで終わりを告げた。
あまり会話が無いまま、一日が終わろうとしていた。
「あれ乗らないか?」
優太が指差したのは観覧車だった。
「う、うん…」
戸惑いながらそれに頷くのだった…
観覧車が回り始め、遠くまで見渡すことが出来る高さまで来た。
「なあ、あの答え。今聞かせてくれないか?」
来た。いつか来るだろうと思っていた質問だ。
だが、その答えを決めてもいなかったのは確かだ。
「俺のこと嫌いか?」
「そんなことない」
即座に答える。
「じゃあ、なんで?」
「駄目なの。あなたの事は大好きだけど、私は駄目なの…」
その言葉が重くゴンドラの中に圧し掛かる。
27 :
M.I.B.:2005/09/13(火) 17:48:08 ID:R9CFvOpO0
そのまま黙ってしまった私を困惑した表情で見つめる優太。
そんな時間が続き、ゴンドラは残り半分を迎えた頃だった。
『緊急警報 緊急警報 政府よりアザーズの襲来に対する緊急の警報が発令されました
来園中の皆様は至急シェルターに避難して下さい。繰り返します、政府より…』
園中のスピーカーが一斉に警報を流し始める。
「そんな!? 今日は奴らが来る予定じゃないはずだぞ」
優太が驚きの声を上げる。
だが、それよりも私の方がもっと驚いていた。
(周期では1週間は猶予があった。ミミールの予想でもこの1週間は安全だったはず。
それが変化するなんて)
眼下には園中の人々が逃げていく様子が見える。
「そうだ。久美達は!」
携帯を取り出し久美にかける。
「久美。今どこにいるの?」
「私達は観覧車でまだ1/3ぐらい残ってるの。どうしよう?」
「私たちも観覧車なの。とりあえず落ち着いて、下で会いましょう」
「うん。わかったわ」
私たちのゴンドラが着く頃には周囲には人影がほとんどなくなっていた。
「さくら、早く!」
久美が急かすように声をかけてきたが、そこには一緒のはずの信二の姿はなかった。
「あれ、信二君は?」
「あいつなら一人でとっとと逃げちゃったわよ。酷いったらありゃしない」
怒り出した久美をなだめるように歩き出した時だった。
空の一角が光った。そう思った瞬間、後方の建物が爆発する。
「「キャー」」
逃げ遅れていた人々から悲鳴が上がる。
そこへシルバーのボディを輝かせたアザーズが3体降りてきた。
28 :
M.I.B.:2005/09/13(火) 17:53:15 ID:R9CFvOpO0
超久しぶりに、メタルバルキリー<デート、そして…>編前編です。
またゆっくりですが最後まで書きたいと思います。
新人さん
スレ立て乙です。
ヴァルキリー達も分類としてはサイバロイドになりますね。
サイボーグと人間の恋愛とは難しいテーマですね。
これからも頑張ってください。
>>19=22
あ れ ? も う 二 度 と 来 な い ん じ ゃ な か っ た の か い ? (ワロス
ホントにサイボーグの連中はおもしろいな。
「ボクちゃんのパソコン40文字しか表示できないんでちゅ〜」
40文字だってよ 4 0 文 字 !!
2ちゃんに来るならマトモなパソ用意してくるのが当たり前だろーが。
最新ゲームが化石な自パソで動かなくてメーカーに粘着電話かけてるクレーマーみたいなタイプだね。
もしかしたら98だかMSXだかで無理やり2ちゃん表示して自慢してるようなキモヲタなんだろうな。40文字だし。
「ボクちゃんの98でも2ちゃんにカキコできちゃうんだじょ〜すごい〜」
アホか。無理しなきゃ2ちゃんに来れないようなヘボパソコン使ってることのほうがすごいっての。
それにしても
>>19の逆ギレっぷりはすごいな。(テラワロス
おなかいっぱい堪能させていただきますたw
32 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/13(火) 20:42:08 ID:eBOhFB0g0
33 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/13(火) 21:12:19 ID:ncsftuPy0
亠ァ厂| `':,;..:..:.';. ;'..:..:.,:'
‐个 兀 `:;:.::.':., ,':.::.:,:'
`.:`.:''''..:.‐ :.:-:.:...,,,, __ 、‐-、 __ ,.‐z_,-、 '':;;:::':, ,...;'::..:,;' ,,.:':
..:..:...:..:..:...:...:...:.:..:...:...:..:.`_,,ノ └¬、'''.:.:‐:..,,ヾ、__)∠,ィク /,、 ';:''..:.:..:..:.:..:.'':;'':.:.,;.
.:..:...:..:..:...:...:...:.:..:...:...:..:.ヾ、_ <^'".:..:..:.:..: <`ヾ´~_ _~´ 〉'''':.::.;':.::...:.:..:..:..:...:.:.';' ,,
..:..:...:..:..:...:...: ,,;,;,;,,;:..:..:.:.:..: / /\ `ヽ、..:..:.:..:..:_ブ∧ ‐ ‐ /.:.:..:,;,::';..:..:..:.:..:..:..:...:.:.:''´:.:
:..:.:..:..,.:-〜' , 、m_)°.:.:.'ー-'..:..:..:`ー--',,;,;::.:.:ヽ、_i (_,/しヘヘ_) ´ '::;.:.::.:..:..:..:..:.:..,;'` ''
,;,,;,;/ <て_;:、。.:° ‐ '''' " ´ ´ ,;:''.:.:,:'' :;,._.:,;.,、:.'':.,,_
/ r'7ァッーヘ、_) ゚ ,,:''.:.:,:'' , -〜''ヽ‐-‐、.:.:.''
-く レ'/〈 ° 。 ,ヘVフヽ、 ,,:''.:.:.:,:'' (_,ヘ、 ⌒
V巛〈 ヽ , 〜''ヽ / e ヽノ\ヘ. ,,:.''..::.:,:'' 。 と_刀Tゥー
_/ ヾ ヽ、 Y ァ个〜'。゚ ,少ー- 代ヽ、 ヾゝ ,,.: '':.:/ヽ、' 。 ゚ (⌒⌒ー-く ノノ,!j
{. \ Y巛〈 ) lfgレ゙く \''.:.::.:.:.:/ / 入 ゚ 。 `〜<ヾヾ、,`⌒ 〜
_, ヘ、 ヾ{ ヾト、 'ヾゝャgメl` ヾヨ /〃/ _,,> 〉〉ノ `厂丁`
\ \ ヽ、 `ゞへmfi_ ゞdf‐ '' ´ //// ノ
─〜 ⌒ヽ、 \ ヽ、 ´`'‐ニ世三r<k´ _,,ノ,〆 /
__,, へ、 \ ` ー- 、__ _,, --‐‐ ''´ _ - ´ /
 ̄ ̄ \ ` ー- 、 _  ̄ ̄ ̄ _, -〜< -一 ブ
ヽ、、  ̄` ー─----── ´ ̄ _ -一 ´
MSXで書き込みか〜負けた気がするな
弟子にしてくれと言っちゃうかも……関係ないなゴメン
35 :
新人:2005/09/13(火) 23:09:15 ID:d78F+6nF0
>>28 IJと返したくなる某スレ住人だったりしますが、よろしくお願いします。
改行入れるのめんどかったので会社で仕事してるふりしつつ2ちゃんコピペ用改行マクロ作りますた。
簡易禁則機能まで付けたりしてただの馬鹿かも。
>>13 わたすで良かったら協力しますです。はい。
2ちゃんよりも自サイトのほうで募集したほうが良いかも。
36 :
新人:2005/09/14(水) 00:02:22 ID:25etyH1M0
「つまり、これまでのサイバロイドはオーダーメードの一品物のスーツみたいなものだっ
た。だけどそれでは開発工数も、コストも、完成後のメンテナンスの手間もかかりすぎる。
だからパーツをコンポーネント化して、開発・生産にかかるコストを削減しようとそうい
うわけですね」
ぼくの質問に、藤馬先生は頷いてみせる。
「そうです。運用が難しい特性があるにも関わらず、市場調査を行ったらサイバロイドの
需要はかなりあることが判明しました。ロボット研究部の長年の夢であった人型工作機械
によるワールドバトルトーナメントへの参加を果すために、サイバロイド技術の外販を行
うことを決定したんです」
外販って軽く言ってるけど、こんなに扱いの難しそうなものをどこに売るんだろう。そ
んなことを考えながら、標準M字開脚のポーズを取った坂崎先輩の身体を見下ろした。
標準M字開脚というのはひざを折り曲げM字の形に足を開き、股間を晒したポーズのこ
とを指すらしい。
サイバロイドの制御やメンテナンスに関連するパーツはその特性上、女性器を初めとす
る股間部分に集中して取り付けられている。そのためM字開脚ポーズがメンテナンスや各
種制御を受けるための標準的なポーズとしてプログラムされているらしいのだ。
坂崎先輩が全裸になって、このポーズをとってから既に十分は過ぎている。最初は羞恥
に染まっていた坂崎先輩の表情は、今は怒りに染まっている。その視線はぼくを射るよう
に見つめたままだ。
なんだ、角煮に住み着いていたのぼうえいそうちがわざわざ出張してきてただけか
38 :
新人:2005/09/14(水) 00:02:56 ID:25etyH1M0
ぼくが欲情すると思ってたのかなあ。
ぼくだって女性の身体に性的な興味がないわけじゃない。中学校への進学祝いとして初
めて自分用のパソコンを手に入れたころはネットワークをめぐって、無修正画像やアダル
ト映像をダウンロードしてまわったこともある。
美由紀には話していないけど、ロボコン関係で海外遠征に行った時には、いろいろと刺
激的な体験をさせてもらってたりなんかする。
興奮しているっていえば、かなり興奮してるんだけど。
サイバロイドという科学技術の生み出した存在に初めて接して正直ぼくはとても興奮し
ていた。ただそれは今、知識欲や好奇心といった方面へどうしても向かってしまって性的
な方向に向いてくれない。それが坂崎先輩には不満らしい。
「坂崎先輩。どうかなされましたか?」
いきなり視線をあわせて、そう言いながら微笑みかけてみる。すると、とたんに坂崎先
輩のほほが紅潮する。
「何も!」
そう言いながら、坂崎先輩は拗ねたように視線をそらした。坂崎先輩の目を盗んで目の
端でちらりとその秘部を確認する。既にそこはとろとろに蕩け、一筋の愛液が垂れて椅子
を濡らしていた。
精神維持のために必要な快楽を求め、セックスシステムが起動したのだろう。
「生産するサイバロイドにはおおまかに四段階のグレードを付けると仰ってましたけど、
坂崎先輩は具体的にどのあたりに位置するんですか?」
視線を戻して、藤馬先生にたずねる。相変わらず丁寧に、藤馬先生は解説してくれた。
39 :
新人:2005/09/14(水) 00:03:34 ID:25etyH1M0
量産型のサイバロイドにはSABC四段階のランク付けがなされるが、それは使用して
いるパーツにポイントを付け、ある一定のポイントを越えたらランクが上がるという形式
をとると言う。
人工皮膚の材質や継ぎ目の処理。人工筋肉の使用の有無。アクチュエーターの出力。骨
格の強度。燃料電池の方式や容量。制御コンピュータの処理能力。そして女性器の駆動方
式や機能など。それらを自由に組み合わせて、量産型と言っても顧客の注文に可能な限り
近づけられる工夫を行うのだそうだ。
「今の坂崎さんの身体は結構な高級品よ。ポイントはぎりぎりAランクに収まっているけ
どSランクに近いA+とでも言えばいいかしら?」
そう言って藤馬先生は坂崎先輩に向かって意味ありげに微笑んでみせた。
坂崎先輩の身体に使われているシームレスで産毛の生えた人工皮膚はかなり高価なもの
だという。身体の動力源にも人工筋肉を主に用いている。女性器も人工筋肉を用い可能な
限り人に似せることを目的としたもので、これも高価だという。運動機能は人より少し優
れている程度に抑えられているが、人に似せるという意味ではもっとも優れたパーツの組
み合わせなのではないかと、藤馬先生は言った。
「つまり、医療用途で用いる場合に一般的な組み合わせに成り得るというわけですね?」
ぼくの質問に藤馬先生は肯定してみせた。つまるところ美由紀の身体に用いるパーツに
近い構成だということなのだろう。改めてぼくは坂崎先輩の身体に向き直った。
40 :
新人:2005/09/14(水) 00:04:14 ID:25etyH1M0
「な、何よ!」
坂崎先輩の問いかけを無視してぼくはいきなり鷲掴みに乳房を掴んでみた。
「くふっ! ああんっ!」
「良く出来てますね。乳腺とかそのあたりの組織の感触まで再現してあるんですか?」
アメリカに行った時にロボコンで知り合った友人の大学生に、ベッドの上で交わるだけ
なら人と見分けがつかないというセックスロボットの試験を手伝わされたことがある。
坂崎先輩の身体はそのロボットと比べても遜色無い出来だった。
彼は横たわってセックスする用途に限定してあるからここまで再現できるが、運動機能
は制限されてしまったんだと口惜しがっていた。
あいつに坂崎先輩を見せたらどんな反応するかな。ぼくは含み笑いをしながら坂崎先輩
の股間に視線を移した。あられもなくさらけ出された股間をじっくりと観察する。
「人のものと形状も色も、全く見分けがつきませんね。継ぎ目もないし、陰毛も自然な感
じに植毛されているし」
感心しながらまじまじと眺めつつも、ぼくはちょっと期待はずれな気分を味わっていた。
正直、生身の人間の女性器の形状はぼくはあまり好きではない。内臓がはみ出ているか
のような違和感を感じてしまうのだ。
外観を忠実に再現するよりも、もっと綺麗にデフォルメしたっていいよね。
坂崎先輩はぼくの表情から感情を読み取ったらしい。まなじりを上げて問い掛けてくる。
「あたしのここに、何か不満でもあるの?!」
何故、坂崎先輩がそんなに攻撃的になっているのか不思議に思いながらぼくは返答する。
41 :
新人:2005/09/14(水) 00:04:55 ID:25etyH1M0
「良く出来てると思いますよ。人体を再現するという意味ではこれ以上のものは見たこと
ありません。触れてもいいですか?」
そう告げると坂崎先輩は押し黙り、小さく頷いた。ぼくはおもむろに両手の指を坂崎先
輩の女性器に添えると左右に押し開いた。
「ああっ、んっ!」
指で触れた感触も人そのものだった。まあぼくは女性経験がそれほどあるわけではない
から、もっと経験豊富の人が見ればどう思うかはわからないけれど。
「これ、けっこうかなり凄いかも」
継ぎ目の無い柔らかな秘唇を引っ張ったり、ずらしたりしてみても、人のそれと同じよ
うにゆがみを生じる。外見のみを似せるのは簡単だが人の粘膜や筋肉や脂肪など人の組織
の持つ自由度を再現するのは思ったよりも大変なことなのだ。
「んぅ、くっ! あはあんっ!」
坂崎先輩は身体を震わせながらよがり声をあげている。ダッチワイフロボットでも高級
なAIを持つ機種ならこのくらいの反応はしてみせるし、僕にとってはとりわけ珍しい光
景では無かった。
そんなことを考えながら坂崎先輩の女性器をこねまわし、喘ぐさまを観察する。
「どうかしら?」
それまで静観していた藤馬先生が声をかけてきた。
「ここまで人体を再現したボディは初めて見ました。純粋に凄いと思います。ですけどこ
れって、過剰品質ではないですか?」
愛撫の手を止めて愛液に塗れた指をハンカチで丁寧に拭いながら、ぼくは藤馬先生に問
い掛けた。
「過剰品質とは?」
藤馬先生はぼくに逆に質問を返す。微笑みの中に面白がるような雰囲気があった。
42 :
新人:2005/09/14(水) 00:05:43 ID:25etyH1M0
「ここまで人間に近づける事に意味があるのかなあとか。例えば生身の女性の中には、全
身脱毛したり、整形手術をしたりする人も居ますよね? 外観の面でも、人間に近づける
よりも人間を超えることを考えたほうがいいんじゃないでしょうか?」
ぼくの質問に藤馬先生は意味ありげな微笑を浮かべてみせる。
「実は私も基本的にはあなたと同じ意見なんです。これは実はある特殊なクライアントの
要求から作られた特別なサンプル機体ですから」
本来の坂崎先輩の機体とは異なるのだ。と藤馬先生は告げた。
ちなみに機体というのは、サイバロイドのボディの事を指す専門用語らしい。肉の体の肉
体に対して機械の体の機体というわけだ。
「本当だ、ここに継ぎ目があったんですね」
そう言って僕は坂崎先輩のネックラインを撫でた。ぱっと見ただけではまったく解らな
いように処理されているが、こうして触れてみれば感触の違いから、継ぎ目の上と下では
色こそあわせてあるものの、材質が異なっている事が解る。本来のボディからサンプル機
体に、首をすげ変えてあるのだろう。
このサンプル機体を要求した特殊なクライアントというのが気になった。少なくともセ
ックス業界では過度に人間に似せたボディを持つダッチワイフロボットは余り人気が無い。
AIはより人間的なほうが好まれるが、ボディはある程度まで人に近ければそれ以上は気
にしない客のほうが多い。小陰唇先端の色素沈着まで再現した人工女性器は正直初めて見
た。
43 :
新人:2005/09/14(水) 00:08:24 ID:25etyH1M0
医療目的だとしても、こんなところにコストをかけて、わざわざ見目を悪くする必要は
無いだろう。大抵の男は女性の乳首や性器は色素の薄いほうを好むというアンケート結果
を見たことがあるし、そもそも、ぼくだって黒ずんでるよりもピンク色のほうがいい。
「そのクライアントってセックス業界ではありませんね。まさかと思うけど、軍とか諜報
とかそっちの関連ですか?」
ぼくの質問を聞いて、藤馬先生はいきなりくすくすと笑い出した。
「その通り、なんですけど内緒にしてくださいね。実は最高機密事項ですから」
あなたを甘く見ていたわ。そう小声でひとりごちるように言ってから藤馬先生は話を続
けた。藤馬先生達はぼくに全く女性経験が無いという状況を想定していたらしい。
最初に見る女性の裸体がサイバロイドなのは問題ではないのかと指摘した人物が居たの
だという。そこでちょうど人の肉体をほぼ完璧に再現した機体に改装されていた坂崎先輩
を、ぼくの最初の教育用に選んだらしい。
「実は私はセックス業界の方面には詳しくないんです。よかったら教えていただけな
いかしら?」
そう告げた藤馬先生の表情は好奇心に輝いていた。
44 :
3の444:2005/09/14(水) 01:24:09 ID:ZTU4IMNq0
M.I.B様
メタルヴァルキリーの再開、心待ちにしておりました。
いよいよ次回は正体バレシーンになるのでしょうか?正体バレシーンは
私的萌えシチュなので、今からどうなるか楽しみです。
さくらの正体を知った友達は一体どんな反応をするのやら…。
新人様
>>3から
>>36の間に話がとんでませんか?
ちょっと繋がりが分かりにくい気がしました。
機械体をもの扱いして冷静に観察したり、分析したり。のっけから宏道君
飛ばしてますねえ。いい感じです。
まともかと思っていた藤馬先生も高校生に向かってセックス業界方面に
詳しくないので教えてくれとは実は相当キてますね。
こうやっていとんな性格の女の子が宏道君のまわりに集まってくるので
しょうか?今から楽しみです。
>>13の件は反応していただいて有難うございます。完全スルーだったら悲し
かったので。そうですね。仰るとおり気が向いたらサイトのほうで募集して
みることにします。
45 :
manplus:2005/09/14(水) 01:55:53 ID:G03Nqirh0
「メインエンジン異常なし、順調に月周回軌道を離脱しました。火星への想定軌道に入ります。
メインエンジンを3分間全開し、その後、慣性加速軌道に入ります。その後、大出力イオンエンジン点火します。」
みさきとコントロールルームとの交信が続いた。
1Y001D01H38M00S。
「大出力イオンエンジン点火します。1時間22分点火後、加速慣性航行に入ります。
現在、機体および、機器類、惑星探査宇宙船操縦用サイボーグに異常ありません。
火星探査・開発用サイボーグ2体および、火星探査機材に損傷はありません。すべて順調に飛行しています。」
みさきの声が再び響く。
発信直後の緊張が解け、地球上の宇宙開発事業局の火星植民計画のコントロールルームに安堵の声が
起こった。
木村局長が、
「火星に向けての安定加速慣性航行に移行するまで、気を抜いてはいけません。」
戒めの言葉が飛ぶ。
薄い黄色のラバーフィットスーツに全身を覆われたロケット航行担当の水野麻里主任が、
「もちろんです。私たち、コントロールルームは、火星に安全に着陸させるまで、七ヶ月間、
気を抜く閑はありません。軌道安定まで特に注意してください。」
コントロールルームにいるスタッフが更に、気を引き締める。コントロールルームにいるスタッフも全員が、
ラバーフィットスーツを全身に装着されているため、表情が全て判るわけではないのだが、みんなが長い間、
自分の身体に装着されたら、二度とは脱ぐことが、出来ないラバーフィットスーツを装着されてまで
関わり続けているプロジェクトであるから、失敗するわけにはいかないという執念をここにいる誰もが
持っているのである。だから、気を抜けないという雰囲気が、表情は確認できなくても、
この場全体を支配していることが解るのであった。
46 :
manplus:2005/09/14(水) 01:57:28 ID:G03Nqirh0
薄いグレーのラバーフィットスーツを装着されたアストロノーツや薄い緑色のラバーフィットスーツを
装着された女性サイボーグアストロノーツ候補者、薄い青色のラバーフィットスーツを
装着された男性サイボーグアストロノーツ候補者たちが、バックアップ部隊として、
コントロールルームやもにたー室で固唾をのんで、第一次火星探査チームの旅立ちを見つめている。
そして、薄い桃色のラバーフィットスーツを装着された医療スタッフや白いラバーフィットスーツに全身を
包み込まれたサポートヘルパーや一般スタッフが祈るようにモニター上のロケットとコックピット内部の3体の
サイボーグアストロノーツの姿を見つめていた。ここにいる全員の気持ちが、
私たちの背中を押し続けているように思えた。
地球のコントロールルームから、交信が入ってきた。まりなさんの声だ。
「はるかさん。みんなが期待しているわ。ここにいる全員の、いや、世界のみんなの期待が、
はるかさんや未来さん、みさきさんに集中しているわ。がんばって往ってきてね。
私、常にはるかさんたちの活躍を見守っているわ。」
「ありがとう。まりなさん。私たちは、もう、火星での任務を遂行するしかない、そして、
引き返すことは絶対に出来ないけど、絶対にこの火星探査ミッションを成功させて、次のミッションへ
繋げてみせるわ。応援していてね。」
私はそう答えた。もう、惑星探査宇宙船のなかで、火星への想定航路上にいて、引き返せないし、
私の体自体、火星探査・開発を行うために、都合よく、設計し直されてしまったため、地球上で生きるには、
多くの不具合があるに違いなく、そのような意味でも、もう火星探査に往くしかないのであった。
そして、火星探査ミッションの成功を手みやげに地球に帰還して、ヒロインになるシナリオしか、私と未来、
みさきの3人には、人生のシナリオとして残されていないのであった。
47 :
manplus:2005/09/14(水) 01:59:49 ID:G03Nqirh0
1Y001D01H38M00S。
突然、みさきの声が聞こえた。
「加速慣性航行に入ります。大出力イオンエンジンをアイドリング状態に移ります。安定航行状態に入りました。
引き続き、警戒管理状態にサイボーグアストロノーツ3体を引き続きおきます。」
みさきが惑星探査宇宙船「希望一号」の一部としてミッションを遂行しているため、
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグとして、機能している証拠でもあるのだが、幾分機械的な声に聞こえる。
惑星探査宇宙船の航行に集中してる証拠であり、私たちを安全に火星まで運んでくれるように全力を
尽くしてくれているので、ありがたいことなのだが、みさきが、人間としてではなく、
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグとしての美々津みさきになっていることを強く感じる一瞬であった。
何か、みさきが機械になったように強く感じてしまうのだった。サイボーグアストロノーツは、全身を機械部品と
電子機器にほとんど全てを置き換えられたことを痛感させられるのであった。
私は、自分の身体を改めて眺めた。濃い緑色をした人工皮膚、そして、脚部は、白いブーツ状をした
人工皮膚に覆われている身体。そしてこの人工皮膚は、本来の私の生体皮膚と化学反応によって
融合したものであり、この皮膚で覆われ、ゴムと金属の両方の感触が同居した鈍く光る身体、
そしてその身体の中には、生体筋肉と人工筋肉の複合体の人工筋肉、そして、金属置換処置を行われ、
造り替えられた人工骨格、そして、多くの人工器官として内蔵された機械部品、そして、
たくさんの電子機器とその電子機器と協調して働くことになってしまった生体脳や神経、そして、
それをサポートする人工神経といった数多くの部材が内蔵されているのだった。
そして、この身体は、人類を火星の大地に降り立たせるために最善の形態として設計されて、
正常な人体を一つ使い実現されたものであった。私は、そのような身体を与えられ、
火星での任務に就くのであった。まさに火星に往くために作り替えられたものであり、
元の血の通った人間の身体とは全く違ったコンセプトを持つものになってしまい、元の人間の身体に
戻ることなど出来なくなってしまったのであった。
48 :
manplus:2005/09/14(水) 02:10:28 ID:G03Nqirh0
目の焦点を上方に移すとみさきの身体が、
コックピットの惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ用据え付け場所に拘束用ベルトで完全に身動きが
不可能なように固定据え付けされていた。手脚というものを取り去られたみさきの身体が、
無数のケーブルやチューブによって惑星探査宇宙船操縦用サイボーグとして惑星探査宇宙船の
一部となっていた。その身体は、人工皮膚が、内部機器の保護のため、金属に近い材質になっているため、
金属光沢に鈍く輝いていた。そして、その手脚のないサイボーグ体の内部は、惑星探査宇宙船をコントロールし、
船内や船外の制御統制管理を機材や私たちを含めて行っていくための電子機器や、電子制御システム、
そして、それと協調する生体脳や生体神経、人工神経などが、所狭しと詰め込まれているのである。
みさきの姿も私と同様に人間としての姿をとどめていなかった。
特に、みさきの身体は、SF映画に出てくるアンドロイドのように見えた。そして、私の横に視覚の転換を行う。
私と同じ身体になった未来が火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルの中に横たわっていた。
私と全く違わない姿形をしている、私との見分けは、胸とバックパック後部にかかれた識別用ネームであった。
未来の胸の「MARS4 MIKI MOCHIZUKI」というコードと名前が描かれている。私と未来の見分け方は、
オリジナルの身体の身長が若干違うため、骨格は変更改造という方法での改造のため、
若干私のほうが大きいのである。そして、私のバストにだけ取り付けられた胸部光子ビーム砲の影響で、
私のほうが、グラマラスな容姿になっているのである。私は、未来のことを思った。
49 :
manplus:2005/09/14(水) 02:13:21 ID:G03Nqirh0
七海という性格の何もかもよく似た一卵性双生児の姉の死という逆境を乗り越えた精神力には、
本当に感心するものがある。
姉の死というショックと自分にも同じ故障が起こる可能性があるかもしれないという恐怖、
そう言う精神的なものを乗り越えてきた精神の強さを未来に感じた。頼もしい仲間である。
彼女となら、この火星探査ミッションは必ず成功するという自信が改めて湧いてきた。
私の身体と頼れる仲間たちを見つめて、火星の探査ミッションへの期待と責任感が
私のこころに湧いてきたのであった。
惑星探査宇宙船は、火星に向けひたすら安定航行を続けていった。
何事もなければ、七ヶ月後には、私は、火星の大地を未来と二人で踏みしめているはずである。
私にとって、みさきが惑星探査宇宙船操縦用サイボーグとして、宇宙船をコントロールすることへの信頼感が
私にはあるのだ。みさきの優しさ、慎重さの中にある決断力の正確さ、そう言ったものが、必ず、
この惑星探査宇宙船を火星まで到達させるに違いなかった。
私たちの旅立ちは、全て順調だった。
50 :
manplus:2005/09/14(水) 02:38:50 ID:G03Nqirh0
星へ往く人第3部を始めます。ペースが上がらないのと、だらだらと長い作品で
皆様にはご迷惑かと思いますが、はるかたちサイボーグアストロノーツが火星から帰って、
結末を迎えるまで書き上げるつもりです。
今回は、火星でのサイボーグアストロノーツたちの行動と共に、地球上でのきな臭い動きを
同時進行でえがく予定にしています。
はるかたち、第1次火星探査チームが地球に帰還した時に、この物語が結末を迎えるように
するつもりです。
3の444様
反応が遅れて申し訳ありません。
私も、同人誌の計画が煮詰まれば、話に一枚加えて下さい。ご協力いたします。
M.I.B様
メタルヴァルキリーの再開、楽しみに待っていました。
さくらの正体はばれてしまうような設定なのでしょうか、展開が楽しみです。
リハビリ作品も、続きがありますよね?
楽しみに待っているのですが・・・。
検体様
始めまして。作品、楽しく読まさせていただきました。
続きが楽しみです。
検体になる理由、事情が明らかになるのが楽しみです。
早く、続きが読みたいです。
新人様
脳以外が機械体という設定。お色気がかなり期待できそうな設定。
物語の展開が楽しみです。
このスレはギスギスした投稿は似合わないのではと思います。
楽しいスレにしませんか?
51 :
3の389:2005/09/16(金) 03:13:28 ID:arnuF1au0
>3の444様
>>13の案、私も乗らせていただきます。
そういう経験も知識も無いですけど、
共同で本を作るのはおもしろそうです
新スレ出来てるの知らなくて、ずううっと待ってました。
まとめて読めて良かったことにしときます。
このスレの過去ログ(dat+idx)をどこかに上げていただけないでしょうか。
出来ればlive2chのやつでお願いします。
こんな過疎スレで誰にお願いしてるんだ?
55 :
通りすがり:2005/09/18(日) 00:30:03 ID:g5uSXzRp0
また論争の元が・・・
喧嘩腰の奴はスルー
57 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/18(日) 01:20:07 ID:0GnrDmpg0
>>M.I.B様待ってました!
このスレの過去ログ(dat+idx)をどこかに上げていただけないでしょうか。
出来ればlive2chのやつでお願いします。
HTMLに変換したやつでも良いのでお願いします。
●買えよ
なんか、急激に過疎ってるなぁ・・・・・
事実上SSスレになってて、作者の書き込みとその感想以外が無いからな。
書き手が来ない間は当然のように過疎る。
じゃあage
ageてないしw
まあ、ネタがないなら「こんなサイボーグものがイイ!」ってのを言ってみてはどうか?
誰かがSSにしてくれるかもしれないw
俺は、さらって来た女の子を改造して戦わせたい。
メタルファイターMIKUのサイボーグ版というか、シリウスの自我がある版というか、そんな奴を。
漏れは、さらって来た少女を無理矢理改造して性欲処理用サイボーグにしたい。意識は元のままなので嫌がるんだけど、改造された体を思うままに操縦されて性欲処理に使われる毎日。
生命維持装置が大きすぎて脳と体が別々なサイボーグ。
普段は体を遠隔操作してても違和感とか感じてないけど回線が重くなったりするとすぐにぎくしゃくして自分がサイボーグなことを思い知らされる。
性欲処理用サイボーグでも、手足を別の形にされるというのも見てみたい。
特に四つんばいとか
>65
柴田昌弘の「フェザータッチ・オペレーション」みたいだな。
あっちは女の子の肉体が生身で頭脳が巨大な人工知能コンピュータだけど。
なおかつ肉体とリンクするためにスポーツバッグサイズの受信機を常に側
においておかなければならず、更に本人に実は人間ではないことを気づか
せないように日常生活を送らなければならないって話だったな。
あと柴田昌弘でサイボーグ少女といえば「ブルーソネット」だが、柴田氏の
同人サークルのサイトに行くとソネットのメイド服姿とか本編では絶対見ら
れなかった絵が見られるぞ。
ttp://www.linkclub.or.jp/~shakan/
68 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/22(木) 01:10:40 ID:J7Vdj4980
>67
感謝。早速行ってきました。
ブルーソネットよかったね〜。
69 :
65:2005/09/22(木) 04:04:23 ID:RkMyqrogO
バリエーションで体の方は脳無しクローンで頭の中にはトランスミッターだけとか
【遊具(1)】
少女は四角い金属の台の上で四つんばいになっていた。
いつから、その姿でいるのか――
台座には赤錆が浮き、少女の裸身も都会特有の黒い煤にまみれている。
私のような奇矯な男でなければ、彼女の前で足を止めることはなかったろう。
歓楽街の片隅に打ち捨てられた少女。
台座に取りつけられた柱状の料金箱――そこに記された料金『五百円』が、マジックで
『百円』に書き直されているのが、哀れみを誘う。
私は財布から百円玉を取り出して、料金箱に入れた。
途端――
ヴンッと、モーターの起動する音がして、少女が息を吹き返した。
ぱちりと目を開け、黒目がちな潤んだ目で、私の顔を見上げる。
「あ……」
不安げに表情を歪めた少女の頭を、私は撫でてやった。
ポニーテールの髪に結んだ赤いリボンも、朽ちかけてボロボロになっている。
だが、繊細に整った目鼻立ちは、不安に翳りながらも紛れもない美形だ。
私は少女の後ろに周り、ベルトを外してジッパーを下ろした。
四つんばいのままの少女は、首を回して私が何をしているのか、見ようとしている。
私はペニスを引き出し、少女の尻の谷間に――そこから覗く、ぬらぬらと濡れ光る蜜壷
の入口に、突き当てた。
少女自身の意思に関わりなく、彼女のその部分は、料金の百円を入れてやっただけで、
「準備」が整うのだ。
私は少女の尻を両手で抱え、ぐいと腰を突き出した。
【続く】
【遊具(2)】
ぬるりと、少女の蜜壷は私のペニスを呑み込んだ。
「ああっ……」
ぎゅっと目をつむった少女が切なげな声を上げ、同時に、彼女の足元の台座から、何か
のスイッチが入ったような、ガコンッ、という音がする。
「あっ、ああっ、あんっ、あっ……」
少女がポニーテールを揺らして、腰を前後に振り始めた。
私は立っているだけでよかった。腰を使うのは、少女の仕事だ。
「あん、くっ、あうっ、ああんっ……」
蜜壷から溢れだした愛液が、私の下腹部を濡らす。ズボンを汚してしまうかもしれない
が、いまさら気にしても遅い。
ここでペニスを抜けば彼女のスイッチは切れ、もう百円入れてやらなければ、再び動く
ことはない。
姿形も、手で触れた肌の感触も、女性器への挿入具合さえ、生身と変わらない少女。
それでも彼女は、機械仕掛けの遊具なのだった。
料金が切れるまで――私が精を放出するまで与えられた、仮初めの生命。
「あふっ、あっ、んくっ、ああっ……」
少女の閉ざした目に、涙が滲んでいる。
随喜の涙ばかりとは見えない――などと考えるのは、私の感傷だろうか。
少女がどんな事情で生身の肉体を捨て、意思も記憶も持たない機械人形になったのか、
私に知る術はない。
そろそろだ――
目の前に火花が散るように感じ、私は少女の中に精を放った。
【終わり】
乙。いいよいいよ。
少女を改造して戦わせるネタはMS少女や兵器の擬人化みたいなボディに
改造されたらおもしろそうだ。試合はアキバのような街の会場で行われ
強さだけでなく美しさも評価に入るとか。
74 :
manplus:2005/09/23(金) 22:03:44 ID:Pf7cyxI10
1Y002D18H00M00S。
地球上では、澤田の賭けである総選挙の大勢が判明する時刻であった。
総選挙の大勢が判明した。地球時間の未明であった。澤田の率いる政党の大勝であった。
今後四年間は政権を任されるに足る結果であるとプレスの評価がなされた。
もちろん火星植民地化計画への指示を背景にした澤田の支持率は、絶対的なものになった。
澤田は、この結果に満足していた。
国民は、澤田の政権が長期になることを熱望していた。
そして、火星植民地化計画の前倒しによる実行の促進を熱望する結果になった。
澤田は、火星植民地化計画の強化促進をすぐさま決断した。
世論の中には、生身の人間を人体実験のような形で、機械の身体に正常な人間を改造するサイボーグ手術に
反対する声がないわけではないが、宇宙空間や異星の地で人類が、自由に活動していくには、
サイボーグアストロノーツという形態に人間を改造することもやむを得ないし、
むしろ前向きに考えていくべきとの意見が大多数を占めたのである。
澤田は、火星植民計画の前倒しを決意した。澤田は、宇宙開発事業局の局長である木村に連絡を入れた。
「玲子。惑星探査宇宙船「希望一号」の航行は順調なの。」
「瑞穂、航行は順調よ。火星に向かって一直線といったところだけれど、
まだ七ヶ月の長丁場だから何がこれから起こるか解らないわ。
「そう。気を抜くことは出来ないわね。そこのスタッフは、全員火星に目が向いてるから、
気に留めていなかっただろうけど、総選挙の結果は圧勝よ。また、もう四年間の政権を国民から委せられたわ。」
澤田の言葉に、木村玲子は、
「瑞穂。本当に選挙のことを忘れていたわ。選挙戦の勝利おめでとう。ところで、瑞穂のことだから、
私に選挙戦勝利報告だけじゃないでしょうね。電話の目的は何なの。」
75 :
manplus:2005/09/23(金) 22:05:22 ID:Pf7cyxI10
「さすがに玲子だわ。付き合いが長いと話が早いわ。国民は、私の政権を支持したというだけじゃなく、
火星植民地化の早期実現を希望しているの。だから、予算を傾斜的に注ぎ込むから、
火星植民地化計画の前倒しをしてほしいの。第二次探査チームを2年以内に出発させ、
第一次探査チームと入れ替えに第一次開発チームを送り込むぐらいの計画の前倒しをしてほしいの。」
「瑞穂。あなたの考えていることはわかったわ。そうであるなら、計画の遂行を急ぎます。
火星探査・開発用サイボーグと惑星探査宇宙船操縦用サイボーグをはじめとするサイボーグアストロノーツを
新たに二十体から三十体この2年間に造らないといけないし、惑星探査宇宙船の建造もしないといけないわ。
計画を根本から見つめ直して、瑞穂の意向に添うようにするわ。
ただ、この七ヶ月は、火星に3体のサイボーグアストロノーツを届けることに宇宙開発事業局全体で注力するわ。
そして、火星からの火星探査・開発用サイボーグからの映像を全世界に送ることに注力させてほしいの。
そうすることで、我が国の威信を世界に示せると思うから。そのことを優先しないと次へは進めないと思います。」
「玲子、そのことは解っています。ですから、無理の無いように、そして、話題が切れないような間隔で
プロジェクトが進むようにコントロールしてちょうだい。
そして、最後は、私たち自身が火星植民地を統治するようになることが目標なのだから、
そこまでに今の計画より前倒しで進めるようにしてほしいの。」
「解りました。ご要望にお応えするようにします。」
「玲子、お願いね。」
そう言って澤田は電話を切り、勝利宣言をするためにプレスルームに向かっていった。
76 :
manplus:2005/09/23(金) 22:06:00 ID:Pf7cyxI10
電話の向こう側では、木村玲子が、苦笑していた。
彼女は、
「瑞穂の性格は相変わらずね。常に前に進むことを考えているんだから。
すこし、私たちで手綱を閉めないといけないかしら。」
と呟きながら、火星植民地化プロジェクトの統括責任者である部長の長田静香を呼んだ。
しばらくすると、局長室のドアがノックされた。
「長田です。入ります。」
そのような声が聞こえ、長田が入ってきた。
「静香、いそがしいときに呼び出してごめんなさい。急いで相談したいことがあったものだから。」
木村玲子が切り出した。長田は、身を乗り出して、玲子の次の言葉を待った。
「実は、今、澤田首相から連絡がありました。今回の総選挙で澤田首相が勝利したそうです。
それも、大勝であったそうです。」
「それはよかったです。私の担当する火星植民地化プロジェクトが続けられるからいいことです。」
「ところが、静香。そうでもないの。澤田首相を国民が信託したということは、
火星植民地化プロジェクトを前倒しして、急ピッチで行うことになるのです。
そして、火星植民地統治プロジェクトも本格化することになるのです。」
「局長、それじゃあ、かなりのハードワークになりますね。それに、第一次探査チームを火星に送り届けない限り、
次のワークにかかることは無理かと思います。」
「わかっています。まずは、みんなが第一次探査チームに最大限の注力をするように指示してください。
それと同時に前倒しのスキームをくんでください。
火星への第一次探査チームの着陸後にすぐに次の手を打てるような準備をしていてください。」
「わかりました。すぐにスキームを組むようにします。」
そう言って長田静香が部屋を出て行った。
「これで、私もめでたく、火星永住型サイボーグになることになるわね。機械の身体になるのもいいものかもね。」
玲子は、呟くように独り言を言った。
77 :
manplus:2005/09/23(金) 22:26:53 ID:Pf7cyxI10
1Y110D00H00M00S。
この日も、自動的に生活モードが切り替わり、自動的に意識が覚醒した。
火星への飛行は順調に消化されていき、もう半分以上の道程を消化していた。
旅だった日から五日の間は、私たちの意識は、24時間覚醒状態におかれていたが、
順調な飛行が確実になったため、16時間のアクティブパートと8時間のレストパートに分割された
一日に合わせたモード変更が自動的に行われるようになっていた。
ただし、みさきの生活モードは、22時間のアクティブモードと2時間の反覚醒状態のレストモードでの生命活動を
強いられているのであった。
もう、地球からの交信の10分遅れの状態になっていた。
それだけでも、もう地球からだいぶん遠くに来ていることを感じてしまう。
無重量の宇宙空間での生活にも慣れた。
といっても、火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルの中に拘束されたままの110日間が
過ぎているので、実際には、無重量の空間を漂って楽しむことは、私たちには許されていない。
ただ、動けない身体のままの110日間なのであった。
私と未来が動くことが出来ないまま火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルに
固定され続けているということは、順調な航行を惑星探査宇宙船が続けていて、
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグのみさきの身体にも異常がないということであった。
私たちは、惑星探査宇宙船の重要な積荷の立場を満喫していたのである。
退屈だけれど、地球上と交信したり、未来やみさきとコミュニケーションしたりしながら、
過ごす充実した110日間であった。
78 :
manplus:2005/09/23(金) 22:27:32 ID:Pf7cyxI10
そんな日々を過ごしていた私と未来に地球のコントロールセンターから通信が入る。
「如月大佐、望月中佐。ご機嫌はいかがですか?」
水谷ドクターの声だ。
「二人に仕事が出来ました。美々津少佐の背面のケーブルコネクターの接触が少し点検する必要が生じました。
このまま放っておいてもいいのだけれど、後々、重大な故障につながらないように、
今のうちに点検と補修をお願いします。内部の結線もチェックしてもらいたいから、
惑星探査宇宙船の操縦を補助コンピュータによるオートパイロットに切り替えて、
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ用据え付け場所から、美々津少佐を取り外して、
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグチェック用シートに固定して点検修理を行ってください。」
「了解しました。」
私は、そう答えると、右手の届くところの火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルの内部壁の
拘束ベルトリリースボタンを押した。
そうすると、身体を完全に動くことの出来ないように拘束されていたベルトがはずれて、
火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルの内部に収まり、
火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルのカバーが開いた。
私は、コックピットの移動用バーを使い、無重量空間を漂うようにみさきのもとに寄っていった。
そして、みさきの身体固定用コントロールシステムのリリースボタンを押した。
すると、みさきの身体に取り付けられたケーブルやチューブ類が外れ、
拘束ベルトが惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ用据え付け場所の壁面に収納された。
みさきの身体から、ケーブルやチューブ類が外れる時、みさきは、「あーーん。」という大きなあえぎ声を上げた。
ケーブルやチューブ類を付けたり外したりするたびに彼女は性的な興奮を
感じることが出来るようになっているのである。
そして、空間に漂いはじめたみさきを未来と二人で捕まえて、惑星探査宇宙船操縦用サイボーグチェック用
シートに持って行き固定した。
79 :
manplus:2005/09/23(金) 22:28:27 ID:Pf7cyxI10
「みさき、これから、あなたの身体の点検と修理を行います。」
「ありがとう、はるか、未来、少し、背中のケーブルコネクターの接触が悪いの。
大きな故障につながる前に直してほしいとコントロールセンターと交信で、お願いしたの。
航行も、安定しているから、今のうちに素早く処置をお願いします。」
私は答えた。
「了解よ。みさき。未来、準備は良い。手早く作業するわよ。」
「はるか。了解しました。はじめましょう。」
私たちは、まず、背中のバックパック部分のケーブルコネクターの点検を行った。
やはり、少しケーブルコネクターの接点が緩くなっていた。ケーブルコネクターの接点を修理し、
その他のケーブルコネクターの接点の点検修理を行った。
幸い、背中のバックパック部分のケーブルコネクター以外の異常は見つけられなかった。
私と未来は、念のため、腹部と胸部の内部点検パネルをあけて、みさきの内部の機器の接続ケーブルの
チェックを行った。
みさきの身体の中は、電子機器しか見えないほど、機械化されていた。
私たちもそうだが、みさきの身体はサイボーグアストロノーツとして、
機械部品と電子機器がほとんどの身体になったことを思い知らされた。
私たちは、機械と電子機器によって生きているという現実をいやでも思い知らされた。
みさきの体内の電子機器の結線を未来と二人で丁寧に点検し、異常がないことを確認した。
「はるか、未来、また惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ用据え付け場所に据え付けられて、
ケーブルやチューブ類を接続されて、再び、安全な惑星探査宇宙船をコントロールするからね。
点検してくれてありがとう。火星までの後半戦、がんばるからね。安心してくつろいでいてね。」
「わかった。それじゃ、惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ用据え付け場所に据え付けるからね。」
私は、そう言って、未来と一緒にみさきを惑星探査宇宙船操縦用サイボーグチェック用シートから取り外し、
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ用据え付け場所に据え付け、据え付けようボタンを押した。
80 :
manplus:2005/09/23(金) 22:37:55 ID:Pf7cyxI10
そうすると、再び、みさきの身体を拘束用ベルトが、ぐるぐる巻きにして、完全に動かないように拘束していった。
そして、ケーブルやチューブ類が自動的にみさきの身体に接続されていった。
みさきは、ケーブルやチューブ類が接続されるたびに喘ぎ声を激しく上げた。
そして、彼女は、再び、惑星探査宇宙船の一部になってしまった。
私は、それを確認し、補助コンピュータによるオートパイロットから、
みさき自身の惑星探査宇宙船操縦システムへの切り替えを行った。
これで、再び、完全に、惑星探査宇宙船は、惑星探査宇宙船操縦用サイボーグのみさきのものになった。
この切り替えが、正常に行われたことを確認し、私と未来は、
火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルに戻った。
そして、火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルに横たわった。
そうすると、自動的に、拘束用ベルトが私の身体に巻き付き、私の身体を元通りにぐるぐる巻きにして身動きを
完全に奪い拘束していった。
そして、拘束が終わると、火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルのカバーが閉じられ、
私と、未来は、再び、積荷としての状態になった。
私は、地球の宇宙開発事業局のコントロールセンターと交信し、作業が順調に終了したことを報告した。
作業が終わり、レストモードに入ろうとしたとき、みさきから、
「はるか、未来、ありがとう。前にも増して好調な状態になったわ。火星までの航行はお任せください。」
というみさきからのメッセージが入ったのだった。
私は、この日、この火星までの旅で唯一度だけの無重量空間での活動に満足して、意識をなくした。
81 :
manplus:2005/09/23(金) 22:46:44 ID:Pf7cyxI10
1Y210D00H00M00S。
私たちが乗った惑星探査宇宙船の船外モニターに映る赤い星が、日に日に大きくなっていき、
二日前に赤い星である火星の周回軌道についに乗ることが出来た。
ここまで来ると地球のコントロールセンターとの交信は、20分のタイムラグが生じていた。
そして、いよいよ今日、火星周回軌道上から、惑星探査宇宙船は、火星着陸モードに船体を切り替え、
徐々に降下していき、火星に軟着陸を試みることになる。
火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルに入れられている私たちに向かって
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ用据え付け場所に据え付けられているみさきが、
「いよいよ、火星軟着陸軌道に入ります。もうすぐ、はるかと未来の機能を発揮させるときがくるのよ。
私として、前半最後にして一番慎重な作業に移るわ。」
みさきがそう言い終わると惑星探査宇宙船「希望一号」は、着陸用姿勢制御ロケットと
火星軟着陸用サブエンジンが点火された。久しぶりの轟音がコックピットに轟く。
モニター画面に火星の赤い大地がどんどん近づいてきた。
82 :
manplus:2005/09/23(金) 22:48:07 ID:Pf7cyxI10
1Y210D12H00M00S。
私たちを乗せた惑星探査宇宙船「希望一号」は、火星の昼の赤道付近のアマゾニス平原に着陸場所を定め、
着陸のための最後の逆噴射を開始した。
数秒後、私たちを乗せた惑星探査宇宙船「希望一号」は、火星の赤い大地に降り立ったのである。
有人宇宙船として、最初に火星に着陸した記念すべき宇宙船になったのである。
「まず、外部の安全を確認すするわ。」
みさきはそう言うと、外部調査システムを起動させた。
「二酸化炭素(95.3%)、窒素(2.7%)、アルゴン(1.6%)、酸素(0.15%)と水(0.03%)の大気。気圧、約7ミリバール、
大気温摂氏二十二度。昼間の標準気温です。船外に異常は認められません。」
みさきが機械的にそう言うと、
「はるか、未来。いよいよ、二人の火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルからでて、
船外に降りてもらうことになるわ。とうとう、この日が来たわね。
火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルをあけてください。」
みさきに指示され、私は、火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルの内面の壁にある
私の身体を完全に拘束しているベルトをリリースするための拘束解除ボタンを押した。
私の身体を拘束する完全拘束用ベルトが外れ、火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルの
内面に収容され、火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルのカバーが開いた。
私は、身体を起こし、火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルからコックピットへ出た。
普通の人間の身体だったら、七ヶ月間もほとんど完全に拘束され動けない状態におかれたら、
動くことが出来るようになるまでかなりの時間がかかるだろうが、
私の身体は、機械部品と電子機器にほとんど全てを交換された火星探査・開発用サイボーグであるため、
何の問題もなく、すぐに身体は完全に動ける状態になっていたのである。
関節が固まるとか筋肉が硬直するということは、もう私にとっては、無縁のことなのである。
こんな時、機械の身体は便利なのである。
83 :
manplus:2005/09/23(金) 22:48:46 ID:Pf7cyxI10
私と未来は、惑星探査宇宙船の惑星探査用エアロックを開けて外に出た。
隔離用ルームを二つ経ていよいよ、外へ通じるエアロックをくぐり、火星への第一歩を踏み出した。
私がまず、記念すべき第一歩を踏み出した。火星の酸化鉄の地面は、さながら赤い砂漠といった感じであった。
「はるか、ついに、火星人になったね。私は、はるかの目と耳からのデータで火星に来たことを楽しませてもらうわ。
私も手脚があったら、火星の大地を歩くことが出来るんだけど、火星まで来たのに、
地球時間の約四年間の火星での生活も、惑星探査宇宙船内で
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ用据え付け場所に据え付けられたまま動くことさえ許されないなんて・・・。
でも、はるかと未来の見たもの、聞いたもの、体験したものを共有させてもらうわ。
二人とも、火星の大地をあまさず探査して、任務を全うしてください。私は、バックアップに徹します。
それから、火星探査用機材や、火星滞在用機材を降ろし始めます。
火星での探査の準備を火星に立った喜びにひとしきり浸って、周囲の状況を確認した後に、開始してね。」
「みさき、ありがとう。私たちと一緒に火星を楽しんで。火星の大地をみさきと未来と私の3人で共有しましょう。」
私はみさきの祝福の声に答えた。
私と未来は、火星探査・開発用サイボーグの能力を最大限に発揮し、
5キロ四方の惑星探査宇宙船の周囲の状況を確認した。
私たちに宇宙開発事業局が与えてくれた火星探査・開発用サイボーグという新しい身体は、
地球上の訓練でも超人的な能力を発揮することを実証させてくれたのであるが、重力の小さい火星においては、
もっと怪物といえるほどの超人的なパワーを具現化させてくれるのだった。
私たちは、火星での活動で、このサイボーグとしての能力を余すところ無く発揮して活動することになるだろうし、
能力を最大限に使用することを義務付けられるのであった。
そして、着陸場所に問題が無く、安全であることを確認して、惑星探査宇宙船の下に戻って、探査用機材や
化成滞在用機材、そして、化成滞在のために必要な資材の梱包を解いて火星探査の準備に取りかかった。
84 :
manplus:2005/09/23(金) 23:03:04 ID:Pf7cyxI10
安全確認の周囲の探査行動でも、私と未来の人工器官が、データをとり、
それを体内に納められた情報保存用ハードディスクに全て記録されていったことはもちろんだが、
映像データや音声データが、地球上のコントロールセンターに送信された。そして、このデータが、
地球上の全世界に配信されていくはずであった。
私と未来は、火星という未知の大地で、私と未来の二人しかいないこの世界を思う存分楽しんだ。
私と未来は、女性二人であり、しかも、身体のほぼ全てを機械部品と電子機器にされてしまった
火星探査・開発用サイボーグであったが、人類創世の時のアダムとイブのようにこの火星の創世人類としての
立場を楽しんだ。
「はるかと未来、お楽しみのようだけれど、作業予定が押してきているから、
そろそろ、火星探査のための準備に取りかかって。これから、二人だけの世界の探検を地球の時間で四年間に
わたって味わえるんだから、その準備に早く取りかかってよ。」
みさきの指導的な指示が飛んだ。
「ごめんごめん。久しぶりに動くことが出来たし、初めての火星という大地に感傷に浸っちゃった。
作業を急ぐわね。」
私は答えた。未来も、
「ごめん。七ヶ月全く動くことも、何をすることも許されない状態でいたものだから、ついつい、
火星の荒涼とした赤い大地の風景に見とれちゃった。」
「はるかと未来の気持ちは解るわ。
それに、私だって、二人からのデータが私の内部記憶装置に送られてくるから、私も、
二人の感動の気持ちを共有させてもらっているので、火星の赤い大地に見とれてしまうのは私も同じだけれど、
私たちに与えられたミッションを正確にこなすことが、与えられた指名なんだから、
そのことを忘れてはいけないのよ。」
みさきは、手厳しい。でも、当然、私は、みさきの言葉を隊長として、自覚しているべきであった。
それが、火星探査・開発用サイボーグのMARS1というコードネームに与えられた宿命なのだから、
自覚をしてこれから行動しなくてはいけないと思った。
85 :
manplus:2005/09/23(金) 23:03:41 ID:Pf7cyxI10
これから、未来とみさきを率いて火星探査活動をしていくときに、私のリーダーシップが問われることも
出てくるのだから。
そして、私のリーダーシップと判断が、この第一次火星探査ミッションを成功させるか失敗に導くかを
左右することも多くなるのだから。私は、気を引き締めなければならないことを再度心に誓った。
地球上では、宇宙開発事業局のメンバーはもちろん。全世界が、20分遅れで届くみさきの視覚と聴覚や、
私と未来の視覚とちょうかくで送られてくる映像と音声に釘付けになっていた。
どんどん大きくなっていく火星の地形。
そして、惑星探査宇宙船の火星への軟着陸の瞬間といったスリリングで初めて見る光景に全人類が
興奮した気分になっていた。そして、その興奮が最高潮に達したのは、はるかと未来が、火星へ降り立ち、
彼女たちの見た火星の風景が、パノラマのようになって地球に届いたときだった。
はるかの妹のえりかの祈るような姿でモニターを見ている姿が、全世界の人々の姿を象徴していた。
そして、宇宙開発事業局のコントロールルームが、はるかと未来が、火星に第一歩を踏み出した瞬間に歓喜に
包まれていった。火星探査・開発用サイボーグという、機械人間が、スーパーヒロインになった瞬間だった。
全世界の誰もが、火星の無限の可能性を秘めた大地に希望とあこがれを抱いた。
そして、自分も出来ることなら、火星の大地を踏んでみたいという気持ちに誰しもが包まれていったのであった。
この気持ちは、火星探査が進むにつれて、その映像を毎日見ることによって、スーパーヒロインである、
火星探査・開発用サイボーグへの憧れを抱く人々が潜在的に増加していったのである。
それは、この火星植民プロジェクトの指示者である澤田瑞穂の思惑通りのことであった。
澤田の支持率がまた、この惑星探査宇宙船「希望一号」の火星着陸で、上がったのである。
今や、澤田の政権は、盤石のものになりつつあった。
そして、澤田が描く、火星植民地計画も盤石のものになっていったのであった。
86 :
manplus:2005/09/23(金) 23:04:45 ID:Pf7cyxI10
澤田は、初代の火星の統治者になるために、今度のクリスマスとニューイヤーの長期休暇を利用し、極秘に、
側近の副首相や秘書たちとともにその計画の第1段階として、木村玲子と同タイプではあるが、改良型で、
通常の人間と普段は変わらないようなタイプのラバーフィットスーツを装着するための手術を
受けることにしていたのである。澤田は、もう通常の人間でいるのも、数ヶ月であると割り切っていたのであった。
澤田の野望は、火星の植民統治を早期に完成させ、火星植民地を橋頭堡に木星や土星を始めとする
太陽系の遠隔惑星の開発植民地化を押し進める遠大な計画の統治を行うことであり、そのためなら、
自分の身体が大幅に変更されても、それは、些細なことでしかなかったのである。
澤田にきている情報によれば、この二十年以内には、この国を巻き込んだ、核戦争で、焦土と化す可能性が、
高いと言うことであった。そうであれば、この国が生き残るような政策は、地球以外の惑星に広大な植民地を
いち早く建設し、そこの統治権を確保し、国民の一部とともに生き残るために移住すると同時に、
地球上の核戦争や化学戦争でも応戦できるような兵器と兵士を持った最新鋭の軍隊を作ることでの
戦争適応力と抑止力を持つことであった。
その二つの目的のためにも、サイボーグという人間改造技術は必要不可欠なものなのであるし、指導者が、
隠れなくても生き残ることができるような処置を受けておくことは、重要なことなのであった。
澤田は、従姉妹の如月はるかの火星での素晴らしい活躍の姿に自分を重ね合わせていた。
87 :
manplus:2005/09/23(金) 23:22:19 ID:Pf7cyxI10
私と未来は、火星探査のための準備に取りかかった。
火星の大地に惑星探査宇宙船から降ろされた機材で、まず、惑星探査宇宙船の周りを安定させ、
惑星探査宇宙船の保護をはかった。
そして、その周りに、火星探査・開発用サイボーグの居住エリアである惑星定住用カプセルをつなぎ合わせ、
私や未来、そして、みさきのサイボーグアストロノーツの検査修理用ユニットや居住室でくつろぐための
サイボーグアストロノーツ用メンテナンスチェアーを室内においた。
そして、機密性の高い居住エリアと外部の環境を繋ぐ、エアロックやクリーンシャワーを整備設置し、私たち、
サイボーグアストロノーツの補修修理機材や機械部品、電子機器といった補充部品、医療器材の倉庫ユニットを
設置した。
そして、火星探査機材や居住ユニット、惑星探査宇宙船の内部動力を賄うことが
可能なエネルギー供給ユニットの設置を行った。惑星探査宇宙船へのエネルギーを常時供給しておくのは、
いつでも、化成離脱用メインエンジンを瞬時に作動させることができるようにしておき、緊急時に備えるとともに、
メイン動力システムを切った惑星探査宇宙船の電子機器類や、火星探査サポートの機材を
使用可能にしておくとともに、みさきの生命維持は、惑星探査宇宙船に完全に共生している状態のために
惑星探査宇宙船は、常にシステムを生かしておく必要があったのである。
そして、火星探査容器材の倉庫カプセルを設置した。さらには、火星探査用バギーを四台組み立てた。
火星探査の予定の遅れは許されないので、予備車両も惑星探査宇宙船に積み込まれていたのであった。
そして、バギーを収納するカプセル型車庫を組み立て、その中に火星探査用バギーを収納した。
私たちは、四日間の連続作業をこなして、惑星探査宇宙船の周りに火星探査用基地が完成した。
惑星定住用カプセルと惑星探査宇宙船は、常に行き来できるように通路で繋がれた。
また、各カプセルも行き来できるようにチューブ型の通路で繋がれたのであった。
私たちは、ここまでの作業を終了した時点で、居住エリアのメンテナンスチェアーに入り、
レストモードにモードを移行した。
88 :
manplus:2005/09/23(金) 23:22:57 ID:Pf7cyxI10
火星に着陸してから初めての休息をとることになったのであった。
四日間の不眠不休の作業などという神がかりのような行動は、生体脳以外は休養を必要としない機会の
身体であるサイボーグアストロノーツにしか出来ないことであろう。
それに、火星の低重力下でさえ普通の肉体の人間では、到底持ち上げることの出来ない重い機材を軽々と
持ち上げられるのも火星探査・開発用サイボーグというサイボーグアストロノーツにしかできないことであった。
もちろん、この火星の二酸化炭素中心の薄い大気の中で機械的な保護なしに生きることが出来るし、
何の補給もなしに生きていられるということも火星での活動のために身体を機械部品と電子機器の人工器官に
取り替えられた火星探査・開発用サイボーグにしか出来ないことなのである。
私は、人為的につくりかえられた火星で生きていける超人になったのであった。
私たちは、地球上のまちを歩くのと同じようにこの火星の過酷な赤い大地で何事もなく生活できるのであった。
いや、地球上以上の驚異の力を持った存在として、生存していくことが出来るようになったのであった。
89 :
manplus:2005/09/23(金) 23:25:44 ID:Pf7cyxI10
今日はここまで。
やっと火星に到着しました。
地球上と火星で繰り広げられるエピソードを書いていきます。
【遊具】
面白かったです。
何となく、レトロで、ペーソスな感じが最高でした。
>>manplus
毎回長文乙。
地球側の暗躍が気になるところでしな。
>>73 あの手の姿に改造されたら、やっぱり恥ずかしいのだろうか?
騙されて改造されて、衆人環視でさらし者になるのが見たいぞ。
どなたか、このスレの過去ログを1から持っている方はおられませんか?
このスレの過去ログ(dat+idx)をどこかに上げていただけないでしょうか。
出来ればlive2chのやつでお願いします。
HTMLに変換したやつでも良いのでお願いします。
だから●買えよ
しつこい
95 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/25(日) 03:16:56 ID:cPbSufuR0
>>95親切。
セーラーウェポン久しぶりに読んだけど、激萌えですね。続きをきぼんぬ。
>>97 おそらく
>>95は、途中までしかゲットできない(尻切れ状態)と言いたかったんだと思われ
4と5はもっとずっと長かったから
皆様ありがとうございます。
これで再び見ることができました。
101 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/26(月) 22:00:45 ID:FUcITwZz0
今月のガンスリ良かった〜。
義体になる少女の改造シーンが最高に萌えました。
こんな俺って終わっていますか・・・otz
>>101 ここはそういう終わってる奴らが集まってるスレだから気にするな(ぇ
>>101 何!?改造シーン!?そんないい物あるのか?
【メタロリ(1)】
カラオケボックスは四十分待ちだった。
先輩たちは時間潰しにパチンコ屋へ行ってしまい、俺ひとりが店に残って順番待ちする
ことになった。
先輩といっても、たかだか城郭探訪サークルで上下関係など有って無いようなものだけ
ど、一軒目の居酒屋ではご馳走になったし、いちおう先輩を立てなくちゃならない。
きょうは定例コンパではなく、講義のあとたまたま顔を合わせたメンバーで飲みに来た
だけで、一年生は俺ひとりということも、少しは気を遣わなきゃならない理由だ。
俺は待合コーナーの端の喫煙場所で、何人かの友だちに他愛もない雑談メールを打ちな
がら煙草を吸った。
喫煙場所はアクリルか何かの透明な衝立で仕切られていて、真ん中にテーブルみたいな
格好の大きな空気清浄機があり、それを挟んでソファが置いてある。
座りきれない客は周りで立って煙草を吸うかたちで、俺も最初そうしていたが、すぐに
目の前のソファが一人分、空いたので座らせてもらった。
さらに煙草を二本吸い、メールに飽きてiアプリで遊んでいるうちに、待合コーナーに
いる客が減ってきた。
この様子なら四十分待たなくて済むかもしれない。俺たちの順番が来たら、先輩の携帯
に電話して、戻って来てもらうことになっている。
向かいに座っていたサラリーマンとOL風のカップルも呼ばれて、喫煙場所にいるのは
俺ひとりになった。離れたところには、まだ何組か順番待ちの客がいるけど。
奴らは煙草を吸わないのだろう。俺もときどきやめようかと思うけど、浪人時代に身に
ついた悪癖は簡単には断ち切れない。本気でやめようと思ってないからだろうけど。
新しい煙草をくわえたところで、黒い服を着た女が喫煙場所に入って来た。
【続く】
【メタロリ(2)】
「ゴスロリ」とか「黒ロリ」とかいうやつか。パンクも少し入っているかも。
そんな用語を俺が知っているのは、妹もそれ系のファッションにハマっていたからで、
俺より偏差値の高い高校に通っていた妹は、大学の推薦入学の話をあっさり断り服飾デザ
インの専門学校に入ってしまった。こっちは受験で苦労したってのに。
それはともかく、女は見るからにロリータ風の黒いフリフリのドレス姿だった。ミニの
スカートから伸びた脚は、黒い金属質の奇妙なブーツで白い太ももの半ばから下が覆われ
ている。紅い髪に黒いヘッドドレス。色白の人形みたいな小作りな顔。肩に羽織ったケー
プで、腕は隠れている。
目が合ってしまい、俺は携帯をいじるふりをして視線をそらした。
女は不機嫌な表情を見せたようで(視線をそらしたので確かめられなかったが)、向か
いのソファに、どかっと腰を下ろした。
金属質のブーツを履いた脚を組み、その脚を上げて――
――え?
俺は思わず顔を上げて、女のしていることを見た。
女は、肩からたすき掛けにした黒い革のポシェットから煙草の箱を出していた。
足を使って。
金属質の奇妙なブーツには、短いながらも器用に動く指が生えていた。
――するとブーツというより、靴下みたいなものだったのか? いやいや……
女は腕を使わないまま、足だけで煙草を一本くわえ、箱をポシェットに戻し、代わりに
百円ライターを取り出して、くわえた煙草に火をつけようとした。
ソファに座ったまま足を顔の前まで上げているから、スカートの中は丸見えだ。と言っ
ても、見えているのはフリフリのパニエとドロワーズだけだけど。
ライターから火花は散ったが、火はつかなかった。
【続く】
【メタロリ(3)】
女は渋い顔で、百円ライターを天井の明かりにかざした。ガスが切れたのか。
はっと気づいて、俺はジッポーの火をつけ、女に差し出した。
「どうぞ」
女は俺の顔を見て、ニヤリと初めて笑みを見せ、ジッポーの火に顔を近づけてきた。
煙草に火がつき、女は使い物にならなかった百円ライターを空気清浄機の上に放り出し
て、ソファに深く座り直し、足で煙草をつまんで口から離し、ふーっと煙を吐く。
「ありがと」
「いや……」
俺はジッポーをポケットにしまい、相手が美人なので少し気をよくして言ってみた。
「足、器用なんだね」
すると彼女は、またニヤリと笑い、煙草をくわえ直して足を上げ、
「これだから、ほら」
と、ケープの前を広げてみせた。
彼女のドレスはロリータ服には珍しくノースリーブで、ケープに隠されていた肩は――
腕が無かった。
腕の付け根であるべき場所が、黒い金属のキャップで覆われていた。
見えたのは片腕だけだったけど、両腕ともそうであろうことはわかった。
俺は、たぶんぽかんと口を開けたまま固まっていただろう。彼女は笑って、
「ショーガイとかじゃないから。自分で頼んで切ってもらったの、両手両足。ニチジョー
セーカツに不便だから、脚だけ義足をつけたけど」
「…………」
俺は言葉が出てこなかった。
両手両足を自分で切ってもらった? 何のつもりで?
【続く】
【メタロリ(4)】
『――六人様でお待ちの木下様、木下様、受付までお越しください』
アナウンスが流れた。俺たちの順番が回ってきたのだ。
「あ、ごめん、呼ばれた……」
俺は言って、席を立った。彼女に愛想笑いして見せたけど、こわばった笑みにしかなら
なかったろう。
彼女は傷ついたふうも無く、「じゃあね」とニヤリと笑ってみせた。
俺は先輩たちに両腕のないロリータ服の女の話をしたけど、先輩は誰も信じなかった。
彼らが店に来たときには、女は待合コーナーから姿を消していたからだ。
始発まで歌い続けて、下宿に帰って布団に倒れ込み、夕方、妹からの電話で起こされた。
「両腕のない『メタロリ』の人に会ったの? すごいじゃん、お兄ちゃん!」
俺は酔った勢いで腕無しロリータ女の話を妹にもメールしていたのだった。どうせ妹も
信じずにバカにするだろうと思ったら、すっかり兄貴を見直したかのようなリアクション。
メタロリとは何かと俺がたずねると、体の一部をメタル――金属部品にすることだと妹
は教えてくれた。ピアスの延長のような感覚で、ロリータの間で流行しつつあるらしい。
それでも、普通は小指一本を金属製に交換するくらいで、両腕をばっさり切断して代わ
りに義足に腕の機能を持たせるなんて、よほど珍しいのだとか。
「すごーい、私も会いたかった。どうして写メ撮って送ってくれなかったの!」
電話の向こうで盛り上がっている妹に、まさかおまえもメタロリになりたいのかと聞い
てみた。
妹は「え……」としばし絶句し、「ママやパパには絶対言わないでほしいけど……」と、
実はすでに左腕は金属製に交換済だと打ち明けてくれた。
【終わり】
イイヨイイヨー。
109 :
名無しさん@ピンキー:2005/09/29(木) 19:43:39 ID:P/V8VtAi0
メタロリは技術が発達したらありえない話ではない。
現在でも自分の四肢に違和感を覚え、切断を望む人がいるそうだし、
腕を切れば盗みが止められると思い込んでる人も存在する。
以前はダルマスレがあったんだけどな〜。
ところで【銀猫】って完結してた?
サイボーグと切断は別々でしょ。
1人1属性の制限があるわけじゃないし、両立している人がいても何らおかしくは無いけど
個人的に後者には萌えない。
>>113 >>113タンみたいに両属性ONじゃない人もいるとは思うんだけど、どうもネット見てると
両方ONになっている人が多いみたいだから、そういう傾向はあるんじゃないかな、
と思っただけ。
ヤギータンサイトのBBSでは、サイボーグ萌え属性と鉄属性との関連性が指摘されて
いるようだしね。
カメラヲタに街中でも追いまわされる、希少品のサイボーグ娘ハァハァ。
ハァハァ言ってないで自信なくても文章化ダー!
萌え同志ならきっとわかってくれるサ
117 :
3の444:2005/10/01(土) 13:21:02 ID:MswiG09I0
「うー」
シャーペンを口に咥えて、 頭を抱えて真っ白けのノートに見入ったまま固まっている私。 もう、 この姿勢になって
から、 かれこれ五分。 一向にペンがノートの上を走ってくれない。
ふと時計に眼をやると、 丁度夜中の一時をまわったところだった。
お年寄りの多いはるにれ荘だから、 こんな時間になったら、 もうみんな寝ちゃってる。 昼間は管理人ロボットの
アニーがぶつくさ文句を言いながら片付けものをしてたり、 住人のお年寄りたちがホールなんかに集まってがやがや
おしゃべりしてたりと、 何かと騒がしいところだけど、 この時間になると嘘みたいに静か。 私の部屋の黄ばんだ壁に
掛かっている時代物の古時計の秒針が、 コチコチって規則正しく時を刻む音ばかりが妙に大きく聞こえた。
明日の英語の授業は私が当てられる番なんだ。 びっしり細かい字で埋め尽くされた英語の本のまるまる2ページ
分の翻訳しなきゃいけない。 なのに、 この期に及んで一行も訳せていない私なのだった。 あーあ、 なんでこんなこと
しなきゃいけないんだろ? 英語なんて話せなくたって、 このご時勢、 同時通訳機だってあるくらいだから別に困りは
しないのに・・・。 関係代名詞が何だ! 動名詞が何だっていうんだよう! 全くバカバカしい。 まあ一週間も猶予期間が
あったのに、 前日の夜になってようやく取り掛かる私が馬鹿なんだけどさ。 ジャスミンみたいに、 英語はペラペラで、
中国語ももちろんペラペラのくせにあえて第二外国語に中国語をとらずにスペイン語なんか選んで、 それも軽くこな
せるような頭が欲しいよね。
118 :
3の444:2005/10/01(土) 13:22:10 ID:MswiG09I0
「うーん」
なかなか勉強がはかどらないものだから、 ちょっとやる気をなくした私は、 シャーペンをノートの上に投げ出すと、
頬杖ついて何を見るともなくぼんやり外を眺めた。 と、 いっても外は真っ暗。 見えるものっていったら、 街灯のうら
寂しいぼんやりした白い光と、 その周りを空しくグルグル飛び回る小さな虫だけ。 通りを挟んで向かい側に建ってる、
この界隈じゃ珍しい、 入り口がオートロックになってて立派なバルコニーつきの、 なんとかハイツっていう名前から
してブルジョワっぽいマンションだって、 この時間ともなればもう真っ暗。 私みたいな夜更かし族の住んでいるんだろう
部屋のカーテン越しの淡い明かりが、 いくつかまばらについているだけ。 だから、 外を眺めても、 ちっとも面白くなんか
なかった。
しょうがないから気を取り直して、 手元の分厚い英和辞典を開こうと、 視線を目元に移そうとした矢先、 気になる
ものが私の視界を掠めた。
(あれ?)
もう一度、 視線を元に戻す。 向かいのマンションの電気の消えて真っ暗な部屋。 でも、 その部屋の窓際で、 裸の
男女が抱き合ってHしているのが、 私の眼には青く浮かび上がって、 でも、はっきりと見えた。 女の子は、 窓の縁に
両手をついて、 立ったまま男の人を後ろから受け入れているんだろう。 男の人の動きに合わせて、 気持ちよさそうに
身体をこきざみに震わせているんだ。 これって、 こーはいいって言うカッコウだったっけか? 友達とおふざけ半分で
アダルトビデオってやつを見たことはあるけど、 実際他人がHするところ・・・私、 はじめて見たよ。
こうなったら、 もう駄目。 勉強なんか手につくわけない。 私はノートに眼を落とす振りをして、 覗いてることがバレ
ないように眼線だけで二人の行為を追った。 両目に意識を集中させると、 自分自身がやっと聴き取れるくらいのごく
かすかな機械音を伴って、 画像が拡大される。
119 :
3の444:2005/10/01(土) 13:23:18 ID:MswiG09I0
恐らくあの人達、 外からは何も見えるはずがないって思っているんだろう。 部屋の明かりは消えて真っ暗だし、
向かいとはいっても距離もそれなりに離れているしね。 だから窓際で堂々とあんなことやってるんだろう。 誰にも見られ
ないって分かっていても、 やっぱり誰かに見られるかもってスリルが刺激的なんでしょ。 分かるよ、 その気持ち。 でも・・・
残念でした。 あなたたちのHは私にとっては丸見えなんだ。 だって私の眼は機械の眼だもん。 暗いところでもはっきり
見えるし、 遠く離れているものだって、 まるで双眼鏡を使ってるみたいに拡大して見ることができるんだよ。
だから、 私は、 勢いよく男の人が突くたんびに、 女の子が眉根をよせていやいやするみたいに頭を振っている
ことも、 時には片手で自分のおっぱいを激しく掴んでもみしだいていることも分かってしまった。 はっきり言って、 これは
覗きです。 悪いことだよ。 でもさ、 やっぱり私が悪いんじゃないよ。 私は、 覗きをしようとしてたわけじゃないもん。
窓際でそんなことをやるアンタ達が悪いんだ。 そんな気持ちよさそうなトコ見せ付けられたら、 誰だって、 例え全身機械
仕掛けの身体の私だって、 その・・・興奮しちゃうよね。
私の使っている義体はごくごくフツーの一般性活用義体ということになっているけど、 それはあくまでも表向きのこと。
実際には全身義体になったら宇宙開発事業団とか海洋開発事業団なんかに所属して、 生身の身体ではできない仕事に
就くことが多いんだ。 だから、 特殊な環境でも、 簡単な改造と調整で、 すぐに適応できるように、 義体にはあらかじめ
いろんな機能がついているんだって。
眼だってその一つ。 私の義眼は普通の人だったら何も見れない真っ暗闇の中でも、 まるで猫の目にたいにものを
見ることが出来る。 それから、 見たい画像を自由に拡大することだってできちゃう。 デジタルカメラみたいに見た画像を
そのまま記録して、 再生することだってできる。 でも、 こうやって当たり前のように機械の体を受け入れて、 その機能を
使っていくのは、 生身だった頃の感覚を忘れて、 自分がどんどん人間から機械に近づいていくような気がしてやっぱり嫌。
だから普段はあんまり使わないようにしてるんだ。
120 :
3の444:2005/10/01(土) 13:29:14 ID:MswiG09I0
でも、 でもさ・・・、 目の前であんなことされたら別だよ。 どうしたって気になって、 眼がそっちにいっちゃうよ。 画像も
拡大しちゃうよ。 こんなことするためについている機能じゃないのに・・・。 こんなもの見れなきゃいいのに・・・。
私は、 いったんは眼をそらして英文翻訳に取り掛かろうとしたけどやっぱりダメ。 ちっとも集中やしない。 集中できる
わけがない。 気がついたら、 右手はペンを持ってそれとなく勉強するふりをしつつ、 左手だけで履いていたジーンズの
ボタンを外してはずして、 足の付け根の、 その・・・アソコにさ、 手を滑り込ませていたんだ。 そしたら、 案の定、 もう
どうしようもないくらい濡れていた。
軽くクリをなでてみた。
(!!)
その瞬間、 全身に電気が走って、 身体がぎゅって強張って、 手に持っていたシャーペンの芯がポキリと折れた。
ダメだ。 これはもう本格的にはじめちゃうしかない。
ああ、 私ってなんてエッチなんだろう。 こんな機械の体のくせに。 脳みそつきのダッチワイフも同然の身体のくせに・・・。
もう子宮も卵巣もない身体だけど、 そんな作り物の義体でも、 セックスの機能だけはちゃんとある。 欲情すればいっちょ
まえに濡れるし、 生身の時と変わらない絶頂感だって味わうことができる。 いや、 むしろ生身のとき以上かもしれない。
一人Hなんて生身のときは二三回イっちゃえば疲れて寝ちゃったものだけど、 今の身体は、 疲れなんて知らないから、
やろうと思えばいくらでも続けることができる。 それこそ義体の電気が切れるまでいつまでも際限なく、 ね。
でも、 宿題だってあるし、 いつまでも欲情してるわけにはいかないよ。
一回だけ、 そう、 一回イっちゃえば落ち着くんだ。 一回だけ・・・ね。
121 :
3の444:2005/10/01(土) 13:33:15 ID:MswiG09I0
間が開いてしまって申し訳ございませんが復活しました。
今回は、約束どおりお気楽な単純エロ話でいきます。
題は「ひとり遊び」かな?
manplus様、3の389様。話にのっていただいて有難うございます。
次回の更新時、本サイトのほうでそのあたりの話もできれば
なあと思っておりますので宜しくお願いします。
義体って、やっぱり睡眠必要なんだっけ?
>>122 睡眠の目的が主に脳のデフラグ(記憶の整理)である以上、生身の脳があるからには睡眠は必要。
身体の疲れのほうは、眠らなくても安静にしていれば回復する。
ダルマ娘は嫌いでもないが、自分で切るのはあまり萌えない…。属性って複雑だな。
(サイボーグ好きは強制改造とか被虐性に萌える人が多いので、その辺猟奇に通ずる所があるとは思うが。
アンドロイド好きに嫌われるのもこの辺だな。)
激しく少数派だと思うが、個人的には人が人の姿をし別のシステムに変わるという点に萌える。
ま、端的には言えば柔肌の下が冷たい金属だという事実だけでご飯3杯はいける。
壊れや切断はあくまで↑の事実を視覚的に見せるというくらいの認識で、虐待的・調教的な部分は
今一つピンと来ないのも確か。と言いつつ改造シーンは好きだったりするけどね。
だからと言って捉え方の差はあっても似た属性には違いないわけで、あまり差異に拘らず、
相互補完的にスレを続けていければいいんじゃないかと思う。
漏れはもろ加虐。w
少女を拉致って拘束して醜い機械に無理矢理改造。意志に反して体を操縦される惨めなサイボーグ少女に萌え。仮面ライダーやダイターン3とかの悪影響か?
127 :
3の444:2005/10/02(日) 15:54:25 ID:rM4hUSD30
一回だけ、 そう、 一回イっちゃえば落ち着くんだ。 一回だけ・・・ね。
自分自身にそう言い聞かせた私は、 もう一回そーっとあそこに左手を這わせた。 そして、 女の子が、
男の人に突かれる動き合わせて、 手の平でゆっくりと、 あそこ全体を押し付けるように撫で回してみた。
たちまち手の平が、 私の中から溢れた作り物の合成愛液でべったり濡れる。 あそこから生まれた快感
信号が、 身体中に張り巡らされた電線を駆け巡って私の脳に襲い掛かる。 もうなくなったはずの子宮が
震えた気がした。
「ううっ!」
あまりの刺激の強さに、 勉強するふりをするために持っていた芯が折れたままのシャーペンを、 思わ
ず手放してしまった。 シャーペンが乾いた音をたてて真っ白けのノートの上に落っこっちゃったけど、 私の
お留守になった右手はそれを拾い上げることもせず、 待ちかねたような手早い動きで、 腰のところから、
Tシャツの中に押し入ってった。 ブラに守られた右胸を、 目の前の女の子がしているみたいにぎゅっと荒っ
ぽく握りしめて、 それから、 もうとっくに固くなっちゃった乳首をつまんでみた。 あそことはまた違う快感が
生まれて、 私の目が眩んだ。
私はひとりHってやつ、 嫌いじゃない。
・・・ごめん正直に言う。 大好き。
インラン女だと思われるのが嫌だから誰にも言ってないけど、 大好き。 全身義体の私に残された人間
らしい感覚なんて、 そう多くない。 私には味覚も嗅覚もない。 疲れも知らない。 温度の変化にだって鈍感。
とろけるように甘いケーキの味も、 湯気がたっぷり出ているおいしそうな肉まんの味も、 もう分からない。
128 :
3の444:2005/10/02(日) 15:55:07 ID:rM4hUSD30
夏のうだるような暑さの中で汗を流すこともないし、 凍りつくような厳しい冬の寒さを感じることも、 もうでき
ない。 性感っていうのは、 そんな私に残された数少ない人間らしい感覚なんだ。 その感覚だって、 私の
頭の奥に収まったサポートコンピューターが生み出した擬似的なデジタル信号、 所詮まがいものに過ぎない。
そんなこと分かってるよ。 でも・・・それでも、 生身の人間に限りなく近いこの感覚を私は大切にしたいと
思ってる。 機械だったら、 決してこんなことしないもの。 私が一人Hをしたり、 好きな人に抱いてもらい
たいって思ったりするのは、 どんな身体になっても、 やっぱり私が人間だからだもの・・・。
六畳一間の私の部屋に、 ぴちゃぴちゃっていやらしい音が響く。 もう手はべたべた。 椅子のクッションに
私から溢れたものが染み付いちゃうのは嫌だったから、 椅子から降りて膝立ちの姿勢をとることにした。
穿いていたジーンズと下着は思い切って膝まで降ろしてしまう。 どうせ、 外からは見えるはずないんだ。
もちろん、 その間中、 視線は向かいの暗いマンションの一室に釘付け。 もう終わりが近いのかな。 男の
人はさっきよりも早いペースで、 女の子のお尻に腰を打ちつけはじめていた。
私も、 手の平であそこをさするだけでは物足りなくなって、 いつの間にか、 指を二本、 私の中に突き
入れて夢中で動かした。 男の人の動きに合わせて、 強く、 激しく! 妄想の中では、 あの男が私を犯して
いることになっている。 股間から溢れ出た生ぬるい液体が、 つつっと膝元まで伝い落ちたけど、 拭き取る
余裕なんてとっくになくなってる。 全身に広がる例えようもない気持ちよさに、 太もものあたりがぶるぶる
震えて、 足の指先は突き抜ける快楽に耐えるようにぎゅっと折れ曲がった。 駄目だ。 このぶんだと、 私、
いつもよりだいぶ早く登りつめちゃいそうだ。
129 :
3の444:2005/10/02(日) 15:55:42 ID:rM4hUSD30
でも・・・、 でも、 一回だけって決めたのにあっと言う間にイっちゃうのは勿体無い。 そう思った私は数
少ない理性を総動員して、 両手の動きを止めて、 ペタンと畳に座り込んだ。 そっと身体の中から抜いた
私の左手の人差し指と中指は、 愛液でべったり濡れている。 私の細い指と指の間で糸をひくそれは、本物
そっくり。 きっと匂いだってそうに違いないんだ。
(こんなに濡れちゃって・・・、 全くヤギーはいやらしいな)
そう男に言われている自分を妄想して、 それだけでイキそうになったけど、 気力でなんとか耐え抜く。
このままイってしまうのは余りにも勿体無い。 一回だけなら、 我慢して、 我慢して、 いつもよりずーっと
深い絶頂を経験してみたいよ。
でも、 このまま指だけでイキかけてはやめ、 イキかけてはやめで寸止めを繰り返すのも余りにも芸が
ない。 確か・・・そう、 確かホールにちっちゃい電動マッサージ機があったはずだ。 ここのおじいちゃんや
お婆ちゃんが、 テレビを見ながらよく使っているやつ。 あれ、 使ってみたらどうだろう。 電動マッサージ機って
気持ちいいってよく聞くけど、 実際どうなんだろう。 使っている自分を想像したら、 また、 ちょっと落ち着き
かけた下半身が熱くなって、 愛液がどっと溢れてきたような気がした。
今なら、 みんな寝てるし、 誰にもばれずに部屋まで持ってこれそうだ。 使い終わったら、 匂いがなく
なるまでよく拭いて、 さりげなく元の場所に戻しておけばいいよね。
思いついたら、 いてもたってもいられなくなった私は、 ぐしょぐしょに濡れた下着は洗濯籠に放り込んで、
ジーパンをそのまま素肌に直穿きして、 忍び足で暗い廊下に出たのでした。
130 :
3の444:2005/10/02(日) 16:03:28 ID:rM4hUSD30
エロ、久々に書いてみたけど、こんな感じでいいでしょうか?
一応、義体ならではって展開を目指しています。
1Y214D00H00M00S。
地球上の全ての人類が再び固唾をのんで火星上の私と未来に注目していた。
この日は、私たち火星探査・開発用サイボーグによる火星上の探査活動の最初の日なのである。
私と未来は、ごく普通にそして、機械的に覚醒をすることになった。
機械に全ての生活サイクルを支配されている火星探査・開発用サイボーグというサイボーグアストロノーツとしては、
当たり前の生理であるのだが、火星探査・開発用サイボーグに改造手術を受けて最初の頃は
とまどったことであったが、この身体になって430日以上経った今は、
ごく当たり前のこととして受け入れられることであった。人間の慣れるという能力はたいしたものである。覚醒は、
生身の人間の時とは違い、徐々に覚醒するというのではなく、スイッチが切り替わるように、
突然の覚醒を迎えるのである。
この感覚は、サイボーグアストロノーツへの改造手術の処置を受けたものでなければわからない感覚だと思う。
生体と機械装置の強調により生命を維持している身体の特徴である。起きている間は、
常に眠気が起きることもなく、完全覚醒状態だし、休息に入り、一旦パワーセーブモードに入ってしまうと
意識が完全に落ちてしまうのである。つまり、機械のオンとオフの感覚なのであった。生体活動パターンは、
完全に機械システムの特徴に変えられてしまっているのが、私たちサイボーグアストロノーツなのであった。
私と未来が覚醒すると同時に私たちが人工眼球を通して見ている風景と、人工聴覚を通じて聞こえてくる音が、
20分遅れのライブで地球に届けられるようになっている。
また、私と未来の火星探査・開発用サイボーグの体内に納められたデータ保存用大容量ハードディスクに
データとして全て保存されるようになっているし、私と未来が体験したデータは、ライブで、惑星探査宇宙船内に
据え付けられているみさきに供給されるようになっていて、みさきは、私と未来の体験を惑星探査宇宙船内に
据え付けられたまま共有できるようになっている。そう言うシステムになっていなければ、
みさきは、惑星探査宇宙船のコックピットの中で、動くこともできずにただ待つばかりの火星時間の
二年に及ぶ歳月は、彼女の精神に重大な影響を与えることになるだろう。もし、そういう事態になった場合、
私たちは、地球に帰還できなくなってしまうので、惑星探査宇宙船操縦用サイボーグにも、
私たち同様の刺激を与える必要があったのである。
私と未来は、準備を整え、再び火星の赤い荒野に出て行って探査活動を開始した。
地球上では、再び、未開の火星の荒野の光景に歓声が沸き起こることだろう。
私と未来は、まず徒歩で、惑星探査宇宙船の周囲20キロ四方の探査活動に入った。
私たちは、地質データや地形データを取得したり、大気のデータ、地下資源データにつながるデータを
順次に取得していった。火星の赤い荒野と空の中、どこまでも続く地平線を追いかけるようにして、
私と未来の探査活動は一日中続けられた。私たちにとって、基地に戻って補給をする必要など全くない。
全てが、自分自身の身体の中で完結しているのである。火星の赤い荒野を歩き回ることは、私たちにとって、
地球上の山野を歩くことと何も変わらないことであった。そして、休息すら必要としていないのである。
標準の人間の生体を火星に送り込んだのなら、定期的な休息が必要だし、火星探査用宇宙服への電源や
酸素、生命維持に必要な食料、水の補給のために定期的にベース基地に戻る必要があるため、
長期間の探査活動が不可能なため、効率が非常に悪い探査活動になってしまうのである。
ふつうの人間だったら、惑星探査宇宙船や火星探査用地上基地から生命維持用の宇宙服の活動時間内の
距離が、活動範囲になってしまうのである。しかし、火星探査・開発用サイボーグの私と未来にとって、
そのような制約はいっさいないし、もちろん、休息というものも標準人間生体に比べ、
凄く少なくて済むことなのであった。そのため、探査の効率としては、非常によいものになっているのであった。
一方。無人探査機を使った火星探査と比べても、無人探査の場合、故障が起こったらその時点で探査が
不可能になってしまうし、必要に応じた探査活動という点でも、融通が利かない。
その点、火星探査・開発用サイボーグを使用した場合は、有人火星探査であるため、故障への対応力、
探査の融通性が非常に高いのであった。
そのような意味では、火星探査・開発用サイボーグというサイボーグアストロノーツに高額な予算を投じて、
標準的な人間の肉体を造りかえることが、一番効率のよいものだという結論に達したのは、当然のことであった。
勿論、生身の人間とサイボーグアストロノーツの中間的存在であるラバーフィットスーツ装着者の場合も、
生身の人間に近い補給の問題が、起こるため、ラバーフィットスーツの装着者にさらに手を加えた形の
サイボーグアストロノーツを火星に送り込むのがベストと言うことになったのである。
私と未来は、最初の探査活動を10日間の連続作業として、何の制約もなく楽しむように行っていった。
火星での行動を心置きなく楽しませてもらうぐらいのことは、もう、標準型人間生体に生涯戻るという選択肢を
絶たれた私と未来には、当然の権利として与えられてもいいのだと思ったのである。
私たちは、火星を自由に歩き回ることを目的に造りかえられた新人類なのである。
私と未来しかいない火星の大地は、地球上の何十億もの人間が住む大地に比べて、
はるかに開放感があるように感じられた。
何せ、この広い世界に火星探査・開発用サイボーグとなった私と未来、そして、
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグのみさきの三人のサイボーグアストロノーツしかいないのである。
人口密度から言っても、最高の開放感が味わえてしかるべきであった。
私たちは、10日間の惑星探査宇宙船周辺の探査活動を終了し、12日ぶりに休息をとるために
火星探査用ベース基地である惑星定住用カプセルに戻り、火星探査・開発用サイボーグ用メンテナンスチェアーに
横たわった。私たちサイボーグアストロノーツでも、生体の機能を考えると10日間の連続探査活動は、
かなりの重労働であることに代わりはないのである。
私たちは、火星探査・開発用サイボーグ用メンテナンスチェアーで、火星探査・開発用サイボーグの身体に
異常がないかを入念にチェックされ、異常がないことを確認した上で、少し長めのレストモードに移行していった。
異常のチェックと判定は、みさきの仕事になっている。私たちの機能が正常作動しているのか、
長期連続活動での負荷の有無といったデータは、今後の火星植民地化計画プロジェクトでの
火星定住用サイボーグの開発の重要不可欠のデータになるのである。
そして、そのデータを管理するのは、みさきの役割となっていたのである。
「はるかも未来も今回の活動においての火星探査・開発用サイボーグ体の異常は全くないし、
順調にサイボーグ体が機能しているわ。私自身も自己診断のデータをとったけど、全て順調に機能している。
三人とも、全て順調よ。ただし、明日から、火星探査用バギーを使用したり、もっと長期で長距離の探査活動に
入っていくから油断は禁物よ。特に、火星探査用バギーへエネルギーを補給したり、
火星探査機材へのエネルギー補充のために二人の股の部分のエネルギー交換用コネクターを使用するとき、
埃などに十分注意してね。使用する旅のメンテナンスと使用後の股のコネクターカバーがしまっていることの確認と
自動洗浄が行われているかの確認を怠らないでね。
私たちサイボーグアストロノーツの身体は、デリーケートなところもあるから、何か起こることがないように
最大の注意を払ってね。カバーの開閉もコネクター洗浄も自動処理だからといって安心したらだめだからね。
そう言った故障につながる要素を確認することが、人間と機械の中間系としての私たちを火星探査に
火星に送り込んだ理由だからね。この広い火星の荒野にいるのは、私たち三人だけなのだから、
無駄な処理に時間をかけることは許されないから、故障修理などという時間の無駄が生じないようにして下さい。
そして、無駄と言うだけならいいけど、故障が重大事態につながったら、二度と地球に生きて戻れないと
言うことなんだからね。」
みさきの言葉は、事実として、非常に重い注意喚起であった。私と未来は、みさきの言葉を真剣に受け止め、
注意と確認を自分に言い聞かせた。
そして、私たちは、次の探査活動に向けての休息として、レストモードに入っていったのであった。
1Y228D00H00M00S。
今日から、火星のさらに遠くの範囲を探査する活動にはいるために火星探査用バギーを使った活動になる。
火星探査用バギーは、私たち火星探査・開発用サイボーグがペダルをこぐことにより、
時速250q以上のスピードを出すことも可能である。私たち自身が自力で120q以上で走ることが
出来るのだが、バギーと協調により、130q以上の速度を加速させることが出来るのであった。
私と未来は、火星探査用バギーの整備をまず行って火星探査用バギーに以上のないことを確かめた。
そして、火星探査用バギーが収納されている収納用カプセルから、火星探査用バギーを出して、私と未来は、
火星探査用バギーに探査用機材を積み込んだ後、火星探査用バギーに乗り込んだ。
火星探査用バギーのシートには、火星探査・開発用サイボーグの股間の部分にちょうど当たるように
エネルギー供給用コネクターがついていた、私がシートに座ると私の股間のコネクターカバーが開き股間の
エネルギー供給用コネクターに自動的にシートのコネクターが接続された。
私と未来には、みさきのように股間のコネクターを接続されても、快感を得るようなシステムを
取り付けられていないので、何事もなかったかのようにコネクターが接続されていった。
私と未来の火星探査・開発用サイボーグのふたりは、少なくとも、地球帰還後まで、
聖人君主でいなければならないのであった。そして、私がシートのシートベルトを締めて
火星探査・開発用サイボーグの身体を固定すると火星探査用バギーのコックピットの透明強化樹脂製の
風防カバーが自動的に閉まった。私は、脚を火星探査用バギーの走行アシストペダルの脚を固定した。
私は、未来に合図をして、火星探査用バギーのハンドルを握り、走行アシストペダルをこぎ始めた。
私と未来を乗せたそれぞれの火星探査用バギーは、静かに火星の赤い荒野に走り出していった。
第2回火星探査旅行の始まりであった。
今回の探査は、惑星探査宇宙船のある赤道上のアマゾニス平原から、南へ下り、南極までの探査になる。
この最初の探査旅行も全ての光景が、20分遅れのライブで、地球上に映像が届けられたのであった。
私と未来は、75日間に及ぶ探査旅行をこなしていった。そして細かな地形データや地質データなどを
きめ細かく集めていった。
私たちが活動する姿に、地球上の全人類が三度歓喜したのであった。
1Y295D00H00M00S。
火星上では、火星の赤い荒野の探査が、火星探査・開発用サイボーグのはるかと未来の2体により、
順調に進められていた。そして、これ以上ないほどのデータが順調に集められていた。
そして、地球上では、クリスマス休暇を迎えようとしていた。
宇宙開発事業局の火星環境標準室では、火星上と同じ事をシミュレーションしている2体の
火星探査・開発用サイボーグと1体の惑星探査宇宙船操縦用サイボーグの3体のサイボーグアストロノーツが、
疑似宇宙探査旅行を行って、サイボーグアストロノーツ体の基礎データを順調に集めることに
成功していたのである。
渥美浩と高橋美紀そして、橋場望の3体のサイボーグアストロノーツたちは、
火星上の3体のサイボーグアストロノーツたちと違って人知れずに活動をしていたが、
重要なデータを宇宙開発事業局にもたらしていた。そして、火星植民地化プロジェクトの基礎データを
提供し続けていたのであった。
そんなサイボーグアストロノーツたちが活動を精力的にこなしているときだった。
首相の澤田が、宇宙開発事業局を極秘に訪問したのである。表向きは、クリスマス休暇とニューイヤー休暇を
連結した久方ぶりの長期休暇という名目で国民の前から身を隠して、宇宙開発事業局に来たのである。
澤田と一緒に澤田の秘書の中山陽子、副首相の三谷紘子、国防大臣の橋本紀子、
科学技術大臣の寺田カレンの4人の澤田にとっての腹心も一緒だった。
中山、三谷、橋本、寺田の4人は、悲壮な決意を持った表情をしていた。
寺田の晴れやかな表情と対照的であった。
宇宙開発事業局の局長であり、澤田瑞穂の信頼すべき親友でもある木村玲子が、
5人を宇宙開発事業局の玄関で出迎えた。
「首相、ようこそ。そして、皆さんご苦労様です。」
「玲子、今日から休養を使ってお世話になるんだから、いつものプライベートな呼び方でいいわ。」
澤田の言葉に、瑞穂は、口調を変えた。心おきなく信頼し会える友人としての会話になった。
「瑞穂、本当にいいの、後悔しても知らないわよ。」
「玲子、私に後悔なんて気持ちはないわ。これからのこの国のことを考えて、
そして、人類存続のことを考えた上で、私が、その責務を負えるのなら後悔はしないの。」
玲子の言葉は、後悔というものを微塵も持たないきっぱりしたものであった。
木村は、その言葉に気おされながら、
「瑞穂分かったわ。でも、他の4人の皆さんの決意は悲壮に感じるけれど・・・。」
その言葉を聞いて、4人の中で、三谷が答えた。
「それは、瑞穂のように固い信念を持っていて、自分の言い出した計画の推進だからいいけど、私たちは、
やはり、心配や恐怖を決断にいたるまで、心に乗り越えるハードルがいっぱいあったもの。
でも、今は、決断はみんな揺るぎないものなの。玲子さん、よろしくお願いします。」
玲子は答えた。
「判りました。それでは皆さん、処置室にご案内します。ついてきてください。もう一度確認しますが、今日、
この玄関を入ったら、人間本来の姿で、再び、玄関を出ることはないのだけれど、いいのですね。」
瑞穂はもちろんだが、他の4人も同意をすることをうなずきで表現し、玲子の後に続いた。
玲子は、中山、三谷、橋本、寺田をそれぞれの処置室に案内した。
そこには、ふたりのサポートヘルパーが待っていたのである。
そして、最後に澤田を彼女のために作った特別処置室に案内した。
そこには、如月えりか中尉と、山田クリス少尉、高橋まりなの3名が、サポートヘルパーとして待っていた。
「瑞穂、今日は、あなたが、常日頃不味いと言っているここの食事で夕食会を行うわ。最後の晩餐なんだからね。
落ち着いたら、私の部屋に来て、待っているから。」
玲子は、そう言い残すと特別処置室を出て行った。
瑞穂は、如月えりかに声をかけた。
「えりか、はるかは、順調にミッションをこなしているようだね。」
「瑞穂さん、ありがとうございます。私も安心しているの。
でも、私ももう少し経てば、機械と電子部品がほとんどのサイボーグアストロノーツになるのだから、
お姉ちゃんが地球に帰還するときは、サイボーグアストロノーツの姉妹の再開抱擁と言うことになるよね。
二人とも機械仕掛けの人形に限りなく近い人間の姉妹の再開の抱擁なんて絵になるかしらね。」
「なるよ絶対。大丈夫、私が首相権限でニュースのトップにしてあげるから安心しなさい。」
「瑞穂さん、相変わらずだね。口の悪さは・・・。」
「はるか、いつも一言余計だよ。」
「ごめん。ごめん。ところで、ようこそ、宇宙開発事業局の特別処置室へ。
私と山田少尉、高橋さんの三人が、瑞穂さんのサポートヘルパーです。
これから、ラバーフィットスーツの瑞穂さんへの装着処置をサポートします。よろしくね。」
「こちらこそ、よろしく。確か、まりなさんは、はるかがお世話になったスタッフだったわね。
従姉妹共々お世話になります。よろしく。」
「覚えていただいていて光栄です。首相。」
「瑞穂でいいわ。」
「瑞穂さん、困ったことがあったら何でも言って下さいお手伝いします。よろしくお願いします。」
まりなに続いて、山田が声を瑞穂に掛ける。
「同じくお世話を今回させていただきます。山田です。よろしくお願いします。」
「確か、美々津少佐をサポートした第2期サイボーグアストロノーツ候補だったわね。えりかと一緒に次の次になると思うけど、火星への任務についてもらうわ。我が国の命運がかかっているからよろしくお願いします。」
しばらくして、えりかが、木村の元に澤田を案内した。
「局長。澤田首相をお連れしました。」
「どうぞ。入ってもらってください。」
木村のことばに澤田が答えて、局長室に入っていった。
「玲子、入るわよ。えりかもここに居て。」
そう言われてえりかも一緒に局長室に入っていった。
そして、木村に誘われて、澤田は局長室のソファに座った。えりかも木村に促され、一緒に座った。
えりかにとっては、通常の人間が座りやすいソファというものは、バックパックが邪魔していて、
非常に座りにくいものであった。ラバーフィットスーツを装着されたアストロノーツたちにとっては、
ラバーフィットスーツ装着者専用メンテナンスチェア以外の椅子というのは、
休養することの出来ないものになっていたのであった。木村や数人の例外はあるが、
ラバーフィットスーツ装着者の宿命であった。
そんなえりかの姿を見ている澤田に向かいえりかが言った。
「瑞穂さん。基本的には、ラバーフィットスーツ装着者は、私のように普通の人間の生活は
不自由なものになってしまいますし、地球上ではいろいろな制約があるの。そんな身体にすすんでなるなんて。
本当にいいの。」
えりかがそう言うと、木村も、
「瑞穂、本当にいいんだね。一度ラバーフィットスーツを装着してしまうとあとには戻れないんだよ。」
「二人とも、何を深刻になっているのよ。私の腹はもう決まっているよ。火星を誰よりも早く植民地化し、
我が国の国民を移民させるために誰かが、植民地の為政者として火星に行く必要があるのよ。
それも、普通の国民を統治するための優位に立てるような身体を持つ人間が為政者として移民する必要があるの。
そして、私は、その為政者の代表になることが、私の政策の最重要事項なの。
その為の準備として、ラバーフィットスーツ装着者になることは、必要不可欠だと考えられるから、私は、
早いうちにラバーフィットスーツになる必要があるの。後悔とかという感情は微塵もないわ。
早く処置を始めて欲しいのよ。はるかたちが、火星のデータをいっぱい集めて帰還して、それを分析して、
植民地化を急ぐ必要が世界情勢を分析すると、どうしても必要なの。それが私の政治家としてやるべき仕事なの。
だから、ラバーフィットスーツを装着して、普通の人間の身体と違ってしまうことぐらい苦痛じゃないの。
このまま、火星定住型サイボーグへの手術をして欲しいくらいだわ。」
澤田の決意を聞き、木村が
「瑞穂、わかったわ。それにしても瑞穂らしいわね。明日から、ラバーフィットスーツ装着処置を行うから、
覚悟してね。それから、火星に往くときは、私も一緒よ。一人だけ往かせないわ。
だけど、副首相は、火星要員から外れていたはずなのに、何で一緒にラバーフィットスーツの装着処置を
受けるようになったの?私は理由を聞いていなかったわ。瑞穂の大事な地球上の後継者の一人でしょう。」
「玲子だけじゃなく、私と紘子しか知らないことだけど、ちょうどいいから、玲子とえりかには話しておくわ。
彼女は、火星植民計画のためのラバーフィットスーツ装着やサイボーグ改造予定じゃないの。
彼女は、地球のこの土地で生き残り、我が国を守るために生き残ることを考えての処置として
ラバーフィットスーツ装着処置を私と一緒に受けるの。同じ目的で今回ラバーフィットスーツ装着処置を
受けるのは、紀子も含めて、二人なの。」
えりかが口を出す。
「ということは、核兵器や化学兵器を使用した戦争の可能性が高いと言うことなの。」
澤田はあっさりと
「えりか。その通りよ。我が国の周辺で、我が国を巻き込んだ大きな戦争が起こる可能性が高いという判断を
私たちはしているの。
だから、何があっても地球上で我が国の指導者が生き残れるようにしておかなければならないの。
その為の対策として、私の後継者として地球に残る人たちも、生き残れるようにするための処置として、
彼女たちもサイボーグ手術を受けさせておく必要があると判断したと言うことなの。」
木村が
「瑞穂はそこまで考えて処置をしているんだ。わかったわ。
全力を尽くしてのラバーフィットスーツ装着処置をしてあげる。この先、確かに地球で生きていくよりは、
火星で生きていき、場合によっては、木星や土星にいける道を探った方が良さそうだわ。」
その様なくらい話が一段落したころ、他の4人が局長室に到着した。木村はそれに気付き、みんなに言った。
「それでは、今日は、最後の晩餐をしましょう。生身の姿で皆さんが固形物の食事をするのは最後になります。
ですから、心おきなく楽しんで下さい。」
澤田が続けた。
「ただし、一生記憶に残るほど不味いこと請け合いよ。ここのメンバーに味のことを言っても無駄だからね。
なんと言っても、食事というものをする必要がないし、出来ない人たちばっかりなんだからね。覚悟はいい?
でも、私たちも口からの食事の必要が無くなって、食べるという習慣が無くなるんだから、今日は楽しむのよ。」
澤田は、そう言うと食卓に座った。みんなも澤田に続いて座席に着いた。
そして、晩餐が始まり、木村とえりかを除く5人は、食事を楽しみ、明日からの処置に備えた。
そして、それぞれの処置室に帰っていった。
1Y295D00H00M00S。
翌日、澤田は特別処置室のラバーフィットスーツ装着処置用寝台の上に全裸でしかもM字開脚で
固定されていた。
澤田は、固定されて完全に動けないことに新鮮な戸惑いを覚えていた。
「えりか、処置台に固定されるってこういう事なんだ。」
「これから、サディスティックな拷問のようなラバーフィットスーツ装着処置の始まりだよ。」
えりかがそう言ってからかった。それをクリスとまりなが楽しそうな声で笑っている。
「もう始まっているよ。昨日からおむつ装着なんて、特殊なプレイ以外何ものでもないじゃない。
しかもM字開脚だよ。」
「まあ、そう言わないで下さい。ここのメンバーは、みんなトイレも必要ないようになってしまっているんですから。
それに、これからの処置ではその格好をしていてもらうのが都合がいいのです。勘弁して下さい。」
薄桃色の医療スタッフ用のラバーフィットスーツを装着されたドクターの前田の声がした。
「今回、首相にラバーフィットスーツの装着処置を行う医療スタッフの前田緑です。そして、私の右にいますのが、
技術スタッフの佐藤絵里ドクターです。」
「よろしくお願いします。」
薄い黄色のラバーフィットスーツを装着された佐藤が、軽く会釈した。
前田が、
「それでは処置を開始します。」
前田の一言で処置が始まった。
澤田は、事前に自分がどの様な処置を施されるのかを打ち合わせしていたのであろう、
処置の具体的な説明を受ける気などなく、すぐに処置にはいることになんの疑問も持っていなかった。
澤田の処置は、体内の消化器に残っているものを体外に排出するための消化器洗浄から始まった。
ほんの1〜2時間で消化器官が全て空になった。
そして、全身の感覚剥奪処置の為の特殊全身麻酔の投与を受けた。
澤田は、解毒剤を投与されるまで完全に身体から視覚と聴覚以外の感覚を失うことになる。
見たり聞いたりすることと、喋ること以外は何も出来ない、感じないという状態が続くのであった。
えりかが、
「この状態を私も経験しているけど、何か変な感覚になるから我慢していてね。」
と声をかけた。
「大丈夫、私に何が起こるのかを見れるのが楽しいから退屈もしないと思うわ。」
そう言う澤田を洗浄室で洗浄と同時に永久脱毛と汗腺などを処置し、ラバーフィットスーツと皮膚が
癒着しやすくする処置を行った。
澤田の栗毛色の綺麗なロングヘアがみるみる抜け落ち、彼女の綺麗に処理されている体毛も
根本から抜け落ちていった。普通のラバーフィットスーツ装着者に使っている薬より、
短期間でラバーフィットスーツ装着適合皮膚を作るために強いものが澤田に使われていたのである。
彼女の皮膚は、2日間で完全に毛根も汗腺もないラバーフィットスーツを装着に適合する皮膚になったが、
その代わり、皮膚に炎症が起きたため、その治療に1日かかったため、4日目にラバーフィットスーツを
装着する処置に入ったのである。
まず、排卵促進剤で30分に1回の排卵が2日間連続させる処置がとられ、
澤田の卵子を100個近く採取することに成功した。採取された卵子は、素早く冷凍保存された。
澤田は48時間連続で性的刺激のため絶頂を迎え続けた。
卵子の採取が終わったとき、さすがにタフで知られる澤田もヘトヘトになっていた。
「ねえ、えりか、もうしばらく性的興奮はいいわ。遠慮する。」
「瑞穂さん、もう、性的興奮というものを味わうことも出来ないし、その欲求も奪われた身体になるんですよ。
しばらくと言わず、永久に味わえないと思いますし、それでも欲求不満にならないようになってしまいますから、
安心して下さい。」
「それはよかった。私、セックスに興味がなかったから、ちょうどいいわ。」
澤田は、文字通り、政治に捧げた一生を送っていたため、澤田の言葉は強がりでは決してなかったのである。
澤田の本格的処置は、消化器官の処置から行われた。
小腸の30%と大腸の半分と直腸の一部が残されその他は除去された。
そして、直腸の先端が、人工肛門に接続された。そして、人工肛門は、彼女の肛門の位置に取り付けられた。
食道と胃、十二指腸は取り除かれ、小腸に高濃度栄養液供給管が直結された。
そして、尿道が尿貯留タンクを経由して人工尿道が直腸壁を貫通し、人工肛門に取り付けられた。
彼女の排泄は全ておしりから行われることになった。
この処置は、澤田がバックパックや生命維持管理システムから離れて活動することが多いことを配慮しての
処置なされている。彼女は、膀胱と尿貯留タンクで液体排泄物を貯めることが出来るので、最長72時間、
バックパックや排泄管理システムに接続しなくても済むようになっている。
小腸に接続された高濃度栄養液供給管の先端は、高濃度栄養液貯留タンクに接続され、
高濃度栄養液供給簡易タンクが、体内に留置された。そして、澤田の背中に外部高濃度栄養液補給弁が
取り付けられた。タンクと供給管で結ばれた。
つぎにガス交換が据え置き型人工心肺に連結され、人工血液への血液交換が行われ、その間に、
澤田の肺が切除され、液体栄養液ガス交換システムと液体呼吸液貯留タンクが体内に納められた。
肺を介さないガス交換システムと液体呼吸液貯留タンクにより60時間の間、バックパックを背負ったり、
生命維持管理システムに連結されなくても生命維持できるようになったのである。
そして、背中の部分にバックパックと体内呼吸システムの接続弁が取り付けられた。
澤田の立場と仕事内容を考えて、生命維持管理システムやバックパックと短時間で
接続したり外したりが出来るように改良されているのだ。
つぎに頭部の処置が行われた。ヘルメットを着脱しても大丈夫な特殊構造に頭部の処置が行われた。
まず、眼球部は、眼球表面を完全にコーティングするようなカバーがまぶたと眼球の間に入っているの。
そして、カバーと眼球の間に液体呼吸液が流れる構造になっている。呼吸液が、液体呼吸液貯留タンクから
循環するように細いパイプが頸部を通り、目の部分につながれた。
口腔部と鼻腔部は処置も通常のラバーフィットスーツ装着者と違い鼻腔部は外から目立たないようにふさがれ、
口腔部には、食物を高濃度液体栄養に変換できる装置が取り付けられていて、
口腔部から食事を摂らなければいけないときのカモフラージュに使用されることになる。
それから口腔部の奥に簡易型音声発生器を取り付けられていて、耳の部分に簡易型集音機が取り付けられた。
そして、小型蓄電池が鼻腔部の奥に付けられた。このような処置で、バックパックとヘルメットを付けなくても、
60時間は、通常の人間のように振る舞っていられるのであった。
ここまでのハードな処置にも、澤田はびくともしなかった。
そして、いよいよラバーフィットスーツの装着の処置をおこなう時が来た。
澤田のために作られたラバーフィットスーツの入ったケースが運ばれてきた時、澤田が絶句した。
「これを着るの・・・。」
澤田の絶句の意味はすぐにわかった。澤田が装着するラバーフィットスーツは、頭部から脚までの
全身一体型で、まるで全裸の澤田の抜け殻のように見えた。
「瑞穂はそれを着るんだよ。」
木村の声が聞こえた。
「だって、これじゃ全裸と変わらないじゃないの。」
「瑞穂、そうだよ、その上から、普通の下着や服を着て通常生活を送るんだよ。
あなたは、バックパックを付けて生活することが私より少ないんだからこっちの方が便利よ。」
木村の言葉に瑞穂が反論した。
「だって、ラバーフィットスーツとバックパックの標準帯での生活もあるんだよ。全裸状態じゃ洒落にならないわ。」
「それは大丈夫、ラバーフィットスーツ単体でバックパックを付けた標準体の状態になった時は、
瑞穂のラバーフィットスーツは、薄い紫色に変色するようになっているの。その辺は安心して。」
「それを聞いてホッとしてけど、ラバーフィットスーツを装着しても普通の服を着なきゃいけないなんて面倒だわ。」
「仕方ないでしょ。海外の公式の場にラバーフィットスーツ姿で出席というのは現在は出来ないでしょ。」
「玲子の言うとおりだわ。早くラバーフィットスーツを装着して。」
えりかが、
「相変わらず、わがままなんだから、瑞穂さんは・・・。では、ラバーフィットスーツ装着を始めます。」
そう言うと、澤田へのラバーフィットスーツ装着処置が再び始まった。
体毛の全くない澤田の予備処置の終わった身体に下半身から順番にラバーフィットスーツが融着されていく。
澤田の本来の色白の皮膚に忠実に近づけられた色になっているラバーフィットスーツが
つま先から頭までを覆い尽くし、背中の熱処理ジッパーが永久的に閉じられ、背中のバルブ類や目の部分や
口腔部の処理が終わった。耳の部分と毛髪が無いのと少しゴムの光沢が感じられるのを除けば、
今までの澤田の身体と何も代わりがなかった。続いて、バックパックとヘルメットを装着されると澤田の
ラバーフィットスーツが自然に薄紫に変わっていった。
ラバーフィットスーツを装着した澤田は、自分の姿に満足そうに言った。
「なるほど、色が変わるんだ、あのままじゃどうなるかと思ったけどね。
ラバーフィットスーツの装着の結果に満足したわ。」
「瑞穂さん。ラバーフィットスーツの装着とバックパックとヘルメットの着脱作業、
バックパックを外した状態のメイクになれるための訓練を受けてください。」
「えりか、わかったわ。」
澤田はそう言うとラバーフィットスーツに慣れる訓練を行うためのトレーニングルームに向かった。
澤田の装着したラバーフィットスーツのシステムは、バックパックとヘルメットは、ワンタッチの操作で着脱が
可能だったし、ラバーフィットスーツ単体の状態の時は、耳たぶとカツラも本人のものを忠実に再現したものを
装着し今まで通り、下着や服を着て、澤田がラバーフィットスーツ装着者であることがまったくわからないように
なっていた。
2日間に渡る、ラバーフィットスーツの慣熟訓練が終わり、澤田は、木村がいる局長室に入っていった。
木村が席を勧めるとラバーフィットスーツ姿になった澤田が席に着いた。
「瑞穂、ラバーフィットスーツの装着感はどう?」
「何とも言えないわね。何か常に全身を押されているような窮屈な感じがしていたけど、慣れれば、
暑さ寒さなんて関係ないし快適そのものだわ。
それに、食事やトイレも気にしなくて仕事が出来るなんて素晴らしいわ。」
「そのまま、国会や来賓の出迎えにでないでね。」
「玲子。気を付けないとやらかすかもしれないわ。せいぜい気を付けるからね。」
「瑞穂、首相がラバーフィットスーツを装着したことは、極秘事項なんだからね。
側近以外には悟られないように慎重にしてね。」
「もちろんよ。私の頭の中にある計画は、まだ序の口だもの。
ここで、極秘事項が暴露される状態には絶対しないわ。」
澤田と木村の会話が一段落したところで、局長室に澤田の秘書の中山陽子、副首相の三谷紘子、
国防大臣の橋本紀子、科学技術大臣の寺田カレンの4人が入ってきた。
彼女たちもラバーフィットスーツを装着された姿で入ってきた。
しかし、4人のラバーフィットスーツのタイプはそれぞれ違っていた。
副首相の三谷紘子のラバーフィットスーツは、澤田と同じくバックパックやヘルメットを外している時間が
長い事を想定したタイプのラバーフィットスーツを装着されていた。
国防大臣の橋本紀子、科学技術大臣の寺田カレンの二人に装着されたラバーフィットスーツは、
木村玲子が着ているラバーフィットスーツと同じタイプのもので、バックパックやヘルメットを
外すことを想定しているのだが、着ていることを悟られないようにする必要がないため、
ラバーフィットスーツを着ていることがはっきりわかるタイプだった。彼女たちのラバーフィットスーツは、
木村と同じく白のラバーフィットスーツを装着されていた。
そして、澤田の秘書の中山陽子に装着されたラバーフィットスーツは、
普通のタイプのラバーフィットスーツであった。
彼女は秘書であり、人前に姿を見せることは少ないことラバーフィットスーツを装着された秘書という話題づくりを
狙っての装着である。彼女のラバーフィットスーツは、明るい緑色をしていてゴムの感触と光沢感があった。
三谷が、
「意外とラバーフィットスーツの装着感というのは、素晴らしいですね。
脱ぐことが出来ないという代償を払っても着てよかったと思います。
ただ、生命維持管理システムとの接続の時間を気にしないといけないというのが玉に瑕かな。」
そう言うと、中山が、
「私なんか、ラバーフィットスーツを完全に脱ぐことが出来ないし、私は、
地球上なのに宇宙空間にいるみたいです。でも、このラバーフィットスーツにくるまれている限り、
暑いとか寒いとかと言う感覚が無く、常に快適な状態でいられるし、疲れることがないし、素晴らしいわ。
でも、この姿でずっといなければならないなんて両親にどういおうかしら。」
と言っておどけた。
「出口に迎えの車を差し回しました。それぞれの私邸と公邸、公用車、専用機などに生命維持管理システムなど、
ラバーフィットスーツで生きていくために必要な装備を積み込むことも完了しています。
ラバーフィットスーツでの生活を充分に楽しんでください。楽しい休暇、ご苦労様でした。」
木村がそう言うと、
「玲子も、皮肉がうまくなったこと。それでは、公務に戻りましょう。それから、火星探査チームは順調なの?」
「瑞穂。お褒めいただきありがとう。火星の3体のサイボーグアストロノーツたちは、順調に活動を続けているわ。
その映像も逐一入ってきています。安心してください。」
「わかったわ。また来ます。」
澤田は、そう言うと車に乗り込み、4人のラバーフィットスーツ装着者と共に公務に戻っていった。
今日はここまで。
少し長く書きました。
いよいよ、地球側で動きが出てきたところまでかな。
153 :
C,W:2005/10/02(日) 23:52:57 ID:j6/mbCyM0
>改造を始めます YES/NO
「ちょっと、待ってよ。私、もう改造なんて嫌よ」
YESと入力しようとした僕を止めたのは銀色の晴香の手だった。
「でも、このままじゃ勝てないよ。現状で出来る最強の改造をしないと。また、負ける気か?」
「う、でも、こんなの嫌よ。あなたが戦いなさいよ」
「無理なのぐらい知ってるだろ。何回試したんだよ?」
初期設定でサイボーグになった人間以外改造はできない。このゲームが始まってすぐに何度も試した事だ。だから、サイボーグになれるのは今は晴香だけだ。
「うぅ、でも何で私だけなのよ?」
「仕方ないだろ。そういう設定になっちゃったんだから。それにこのまま進めれば、千鶴姉さんと、茜も仲間になる筈だろ」
そう、TVゲーム「Cyborg Warriors」では、最初に登録したキャラが徐々に仲間に加わっていく筈だ。
一人目は晴香、二人目は千鶴姉さん、三人目は妹の茜が登録されている。
「うん、けど、姉さんや茜ちゃんは無事なの?」
「多分、大丈夫だろう。少なくとも、仲間にならないでやられる事は無いはずだ」
「そうなの?」
「ああ、けど、そのためにはイベントを進めないと。晴香がやられたから余計な時間がかかっちゃったよ」
「うん」
「で、さっきの改造を始めるよ」
僕は隙を突いてYESを押した。
「あ!」
「CW−1HARUKA、再改造を開始します」
コントロールルームに機械音声が響き渡り、晴香の動きが止まる。
「やったわね」
「改造が終わるのを待ってるからね」
「この人でなしー!」
作業員に運び出されながら、晴香は非難の声を上げたが僕は無視を決め込んだ。
154 :
C,W:2005/10/02(日) 23:54:03 ID:j6/mbCyM0
Cyborg Warriors
3人のサイボーグを指揮して敵を倒す。シミュレーションゲームで有名なC.B.Rの最新作であるこのゲームを始めたが全ての始まりだった。
キャラエディッタで自由にキャラが設定できるのが売りのこのゲーム、選んだのは幼馴染の晴香と、姉の千鶴、妹の茜だった。
3人を写真で画像取り込みし、細かい設定を入力し、最後にスタートボタンを押した時だった。
多分落雷だろう、凄い音がして世界が真っ白になった。
真っ黒な空間で気がつくと晴香と千鶴姉さん、そして茜の3人が立っていた。
「CW−1 HARUKA」
機械音声がすると、晴香の周りが明るくなる。
「CW−2 TIZURU」
次は、千鶴ねえさんにスポットがうつり、
「CW−3 AKANE」
最後に茜の周りに光が差し込んだ。
三人とも突然の事に驚いている。僕自身も驚いているんだ。当たり前の事だろう。
そうこうしていると、
Cyborg Warriors
と、大きな文字が現れ、再び世界が光に包まれた。
次に気がつくと、軍服のようなものを着て椅子に腰掛けていた。
155 :
C,W:2005/10/02(日) 23:55:30 ID:j6/mbCyM0
「司令、適応者をお連れしました」
同じような服(もちろん女物だ)を着た女性が急に話かけてきた。
「司令? 適応者?」
俺の事か? 適応者って? さらに混乱していく。
『お通ししろ』
勝手に口が開き許可を出す。
すぐに入り口と思しきドアが開き、軍服の男二人と入院着のような服に身を包んだ晴香が入ってきた。
「耕一。何がどうなってい『柚原 晴香です』え?なっ、何?」
『私が司令の柏木耕一です』
また勝手に言葉が出た。それは晴香の方も同じようだ。
だが、喋り終わると同時に周囲の人間の動きが止まる。
それと同時に、胸のポケットの中でバイブレーターが激しく自己表示を始めた。
「ちょっと、耕一何がどうなっているの?」
晴香が不安6割、怒り4割といった表情で叫んだ。
「俺もわかんないよ」
不安なのはこちらも一緒だ。何が起きているのか分からない。
「ただ、もしかするとゲームの中に入っちゃったのかも…」
「は? 何言ってるの?」
仕方ないから、俺は全て話す事にした。
「Cyborg Warriors」を買った事、エディッタで3人を入力した事、雷?が落ちたこと、雑誌やOHPにあるオープニングそっくりだということ。
「耕一、勝手に私を使ったの?」
「いじゃんかよ。それより、それ所じゃないだろ」
「そうね。それでこれはどうなってるの?」
「わかんない」
「わかんないって、耕一どうするのよ? あ、そのバイブしてるのは何?」
「あ、ああ」
取り出すと、ポケコンのようなものだった。
156 :
C,W:2005/10/02(日) 23:56:17 ID:j6/mbCyM0
開くとスクリーンには
>選択肢
>なんと声を掛けますか?
>A.済まない。こんな事をさせてしまうなんて…
>B.これからよろしく頼む
>C.今日から貴様は我々の命令に従ってもらう
「選択肢だ…」
横から晴香が覗き込んだ。
「何これ?」
「どうも選ばないといけないらしい」
「…」
「…」
「本当にゲームなのね」
「そうみたい」
「どうするの?」
「どうしよう?」
「うーん、私はAかな」
横から手を出して操作しようとするが、手はスカッと空を切る。
「あれ?」
同じように繰り返すが、触る事すらできないようだ。
「なんで〜?」
「どうやら俺しか触れないようだな」
C,W乙。萌えますな。これからも期待してます。
なんか、野望に燃えすぎてる首相が真っ先に精神崩壊起こしそうな気がしますがw
つーか生物・化学兵器を使った戦争を仕掛ける気マンマンな上に、国民みんなを見捨てて
自分だけ助かる処置をあらかじめしておくとは非道すぎる…。
つーわけで非道な香具師には非道な結末を、主人公達には幾分マシな結末をキボンヌ
159 :
C,W:2005/10/03(月) 03:59:44 ID:lKzxc4E30
まあ、晴香が選んだんだし、
「よし、それじゃあAにしよう」
Aを選択。
『済まない。こんな事をさせてしまうなんて…』
『いえ、私が志願したんです』
『ああ。これから共に頑張ろう。我々は君を全力でバックアップさせてもらうよ』
『はい。よろしくお願いします』
晴香が笑顔で返して、自動会話は終了した。
「これからどうなるの?」
「もちろん改造だろ…」
「マジ?」
「マジ」
「嫌よ」
「嫌って言っても…」
そういった次の瞬間、晴香は敬礼し踵を返して部屋を出て行った。
「いやー!」
断末魔のような悲鳴が聞こえて扉が閉じた。
扉が閉じた次の瞬間、また世界が静止した。
ポケコンを開くと、晴香のステータス画面が映し出された。
>ステータス変化
>好意 50 → 65 (+15)
>意思 80 → 90 (+10)
>CW−1のランクが変化します 協力者 → サイボーグ戦闘要員ランクE
うわー、マジゲームだよ… ステータス管理されてるんだ…
160 :
C,W:2005/10/03(月) 04:00:51 ID:lKzxc4E30
次という部分をクリックする。
>改造タイプを選んでください
>A.万能型義体AP−T2
>B.射撃型義体RP−T3
>C.格闘型義体BP−T4
全部人型の義体だ。細かいステータスが表示されているが、一人目はAでやるのがお勧めと言う説明書の記述を思い出す。
まあ、Aだろうな。
Aを選択する。
>パワー 3 → 30
>スピード 4 → 30
>射撃 1 → 35
>格闘 1 → 35
>人間性 100 → 80
一気にステータスが上がった。初期値は… 仕方ないな。
これからが大変だ。
OKの部分をクリックした。
「改造が終了したようです」
晴香の改造が終わったようだ。
「もう会えるのか?」
「はい、起こしてあげてください」
そう促され手術室へと向かった。
161 :
C,W:2005/10/03(月) 04:03:52 ID:lKzxc4E30
そこにいたのは銀色の身体の少女だった。
まるで晴香の身体を顔だけ残して銀色に染め上げたようだった。
「もう目を覚ますはずです」
技官が説明をする。
するとすぐに晴香が目を開けた。
「晴香。気分はどうだ?」
周囲を見回し、身体を見下ろした。
「本当に改造されちゃったんだ…」
「ああ」
「でも、ちょっとカッコいいかな」
そう言って、晴香は微笑んだ。
「でも、もうこれ以上の改造はごめんよ」
それから1ヶ月の晴香のスケジュールは身体に慣れることがメインだった。
今までとは全く違う身体の仕組み、人間離れしたパワーとスピード、それに慣れるのは中々時間がかかった。
「初の実戦だ。緊張するなよ」
通信回線の向こうにいる晴香に声をかける。
「大丈夫、緊張しても筋肉の収縮なんてしないもの」
声が少し震えがある。撃たれても大丈夫だと言っても、やはり緊張しているのだろう。
「落ち着いて、いまの晴香なら楽勝だぞ」
「うん、じゃあ行くわ」
そして数分後、制圧完了。ミッション成功の連絡を受けることになった。
162 :
C,W:2005/10/03(月) 04:08:40 ID:lKzxc4E30
「死亡者0、逃亡者0、被弾0。見事な仕事ぶりだな」
笑いながら晴香に語りかける。
「うん、なんとかやれたわ」
笑顔で返す晴香。
「この調子で行けば、無事にゲームクリアできそうだ」
「うん、私も頑張るわ」
近寄ってきた晴香が目を瞑った。
そのまま、唇を重ねた。ファーストキスは冷たかった…
>ステータス変化
>好意 65 → 80 (+15)
>意思 90 →100 (+10)
>人間性 80 → 90 (+10)
163 :
C,W:2005/10/03(月) 04:12:52 ID:lKzxc4E30
まずは、最初の選択肢でAを選んだ場合の純愛ルートを。
機会があったら、Cを選んだ場合の鬼畜ルートを。
>>130 おじいさんおばあさんたちのマッサージ機で一人遊びなんて
ヤギーってば極悪(笑
それと前作の亀感想ですが
アニーと茜ちゃんのハッキング対決とか見てみたかったり
(ハッキングされちゃうのがヤギーなのはお約束)
>>163 Cの場合をキボン(;´Д`)ハァハァ
>>164 マッサージ器でオナーにーしたままバッテリー切れしておじいさんたちに間違えて
粗大ごみで捨てられてそのままスクラップだなんて。。。そんな。
俺だったら粗大ゴミ置き場に捨てられてるヤギーお持ち帰りだな
手足外した状態で充電・再起動させて…(;゚∀゚)=3ハァハァ
168 :
3の444:2005/10/04(火) 02:31:31 ID:sUXphgXF0
ギシッ、 ギシッ
真っ暗なはるにれ荘の廊下に、 私の妙にゆっくりした足音だけが響く。 ちょっと異様な光景。
私の眼はどんな暗いところでも、 はっきり物が見えるようにできていて、 だから、 まあ、 こんなふうに
誰にも悟られないように明かりを消したままの廊下をこっそり歩きたいときには便利なのかもしれないよ。
でも、 せっかくのそんな機能も静まり返った廊下に響く私の足音で台無しになっちゃう。 外見だけ普通の
人間に似せて作ってあるけど、 実際は義体なんて金属の固まりみたいなもの。 私の体重は見かけに
よらず120kgくらいあるんだ。 だから、 私が足を一歩進めるごとに、 板張りの頼りない造りのはるにれ荘の
廊下はどうしても軋んだ悲鳴を上げてしまう。 私は、 その度に、 誰か部屋から出てきやしないかと不安に
なって、 ついつい後ろを振り返ってしまうんだ。
でも、 私がゆっくりした足取りでしか進めないのは、 それだけじゃない。 私、 下着もつけずに直に
ジーンズを穿いている状態なんだ。 それでいて、 できるだけ音を立てないように、 そろそろ内股で歩く
ものだから、 ジーンズの固い生地が、 私のアソコや、 すっかり剥き出しになってちゃったクリを絶妙に
刺激して、 足を進めるたびにうめき声を上げたくなるような快感が全身を襲って、 声を抑えるのに必死。
普段だったら、 なんてことないんだろうけど、 さっきのやりかけの一人Hで中途半端に身体が熱くなって
いるのと、 こんなとこ誰かに見られたらどうしようってスリルで、 身体が敏感になっているんだろうね。
いつの間にか、 住人にバレないようにするためにゆっくり歩いているんだか、 快感を得るためにゆっくり
歩いているんだかよく分からない状態になってる私。 全く、 さっきのカップルのこと、 窓際でHなんかやる
な、 なんて人に言えた義理じゃないよね。 あきれた。 いやらしすぎる自分にあきれた。
幸い誰にも見つかることなく、 一階の奥にあるホールに辿りつくことができた。
件の電マがある場所は、 ちゃーんと覚えてる。 テレビの横の囲碁板の上でしょ。 いつも、 西村のおじ
いちゃんが、 夜にへたくそな囲碁打ちながら使ってるんだもんね。
(あった、 あった)
169 :
3の444:2005/10/04(火) 02:32:21 ID:sUXphgXF0
私の予想通り、 囲碁板の上の碁石入れの横にそれはあった。 手の平に収まっちゃうサイズの水色の
小型のマッサージ機を興奮に震える手で掴みあげる。 目的を達成した私は、 ついでに、 すぐ横にある
洗面台の鏡を覗きこんだ。 今の私って、 どんな顔してるのか気になったからね。 そしたら、 案の定、 鏡に
映った女の子、 眼鏡の奥の眼がいやらしそうに光ってた。 なんだか、 昼間の私とは別人みたい・・・。
嫌だ、 嫌だ。 あんた誰誘ってるのさ。 こんな顔してるとこ、 とても人には見せられそうにないよう。
(おっと)
その時私の眼に止まったのは、 洗面台のすぐ横にかかっている、 タオルを干すのに使っている洗濯
バサミ。 普段だったら、 そんなこととても思いつきそうにないんだけど、 頭がHモードに切り替わっちゃっ
てる今の私はどうかしてる。 洗濯バサミを乳首に挟んだら、 どんなに気持ちいいだろうって思っちゃったんだ。
もう、 やるなら徹底的にやってしまおう。
(ヤギーはMなんだな。 そんなことして喜んでるのか?)
(違うよう、 アンタがやれっていうからだよう。 アンタが悪いんでしょ。 こんなこと、 私したくないよう)
頭の中で、 さっきの男が私を揶揄する。 私は口先では否定しながらも、 右手は男になったつもりで、
Tシャツの裾を捲くり上げて、 ブラを器用にずらしていく。 もうすっかり充血して堅く尖ってしまった桜色の
乳首が、 ブラの圧迫から解放されてちょこんと顔を出した。 充血だってさ。 はは。 血なんか、 一滴も
流れてないこの身体で、 そんなことあるわけない。 ホントは、 私の頭が感じている性的興奮を、 サポート
コンピューターが、 ただの電気信号に置き換えて、 作り物の身体をそれらしく反応させてるだけ。 分かっ
てるよ。 そんなこと分かってる。 でも、 妄想の中くらいは、 暖かい生身の身体ってことにさせてよ。
左の乳首をそっとつまみあげて、 洗濯バサミで挟んでみる。 挟んだ瞬間、 本物そっくりの、 でも、
合成樹脂かなんかでできた作り物の乳首が、 洗濯ばさみに圧迫されて、 いびつに歪む。 軽い痛みを
伴った期待通りの甘い快楽が、 全身に突き抜ける。
170 :
3の444:2005/10/04(火) 02:33:12 ID:sUXphgXF0
「うぅん!」
(どうしたの? 感じてるの? こんなことで?)
私の頭の中で、 調子に乗った男が意地悪そうに笑ってる。 そうして、 また私の手を操って、 右の
乳首も同じように洗濯バサミで挟んでから、 ブラを元の位置に戻したんだ。 洗濯バサミの厚みの分だけ
ブラの締め付けが厳しくなって、 着ているTシャツも胸の部分がいびつな形になっちゃった。 端から見たら、
乳首に何か細工をしているのは、 Tシャツ越しにも一目瞭然。 でも、 両胸からもたらされる甘美な刺激の
とりこになった私には、 そんなことを気にするような理性はとうの昔に吹き飛んでしまっていた。
(それから、 これも中に入れたまま、 部屋に戻ろうね)
私の妄想はエスカレートするばかり。 私は、 ただ、 電マを持ち帰って部屋で楽しむつもりだったんだよ。
それなのに、 頭の中に住み着いた男は、 アソコに入れたまま部屋に帰れって命令するんだ。
(そんな・・・。 嫌だよう。 誰かに見つかったらどうするのさ)
(本当は期待してるくせに)
こんなことをしてるのは私がいやらしいからじゃないんだ。 変態だからじゃないんだよう。 私は命令
されて仕方なくやってるだけなんだからね。 そう自分に言い聞かせた私は、 期待に震える手で、 ジーンズの
ベルトを緩めて、 ボタンを外した。 そして、 手の平サイズの小さな電マをあそこにあてがって、 うまくクリに
当たるように押さえつけた。
「ぁぁっ!」
ずーっとお預けをされていたクリは久々の刺激に大喜びして、 淫乱な電子の妖精をさかんに私の頭に
流し込む。 目が眩んで、 膝がガクガク震えた。 あそこから、 ぐちゅっていういやらしい音をたてて愛液が
溢れた。 ただ、 電マをクリに当てただけで、 もうイきそう。 声も抑えられそうにないよ。 でも、 今日は一回
だけなんだから。 一回だけなんだから、 まだイっちゃ駄目。 私は歯を食いしばって、 必死に嵐が身体を
通り過ぎ去るのを待った。
171 :
3の444:2005/10/04(火) 02:43:25 ID:sUXphgXF0
身体が落ち着くのを見計らって、 電マがずれないように、 いつもより穴一つ分きつくベルトをしめて、
気持ち内股の姿勢をとる。
それから―
電マのコンセントを握り締めた私は一人苦笑い。 これを動かすのに使えそうな電源っていったら、
やっぱり、あそこしかないよね。
着ているTシャツ左脇腹のあたりを軽く捲り上げる。 私の左脇腹のところには、 小さいけど、 でもはっきり
分かる形で四角く肌に継ぎ目があるんだ。 その継ぎ目の部分を軽く押すと、 バネの力でパカっと開いて、
暗灰色に塗られた複雑な形の機械装置に囲まれた白いプラスチック製のコンセントプラグの接続端子が
顔を出す。 普通のニンゲンを装った表皮の下に隠された、 冷たい機械。 今の自分の本性を思い知らされて、
今までの高ぶった気分がちょっとだけ冷めてしまう。
ホントは、 こんな機能使いたくないよ。 せっかくのHな気分のときに、 自分の身体が機械だって思い知ら
されるのは、 やっぱり嫌だもん。 でも・・・でもさ。 人に見られるスリルを味わいながら、 あそこにあてた電マを
動かしながら、 廊下を歩く。 そんなとこ、 想像しただけで、 あそこがじんわり濡れてくるような気がするよね。
それって、 どんな世界まで、 私をつれていってくれるんだろうか? 未知の快楽に対する期待感がないって
いったら嘘になる。
私は、 早く電マを動かしたいのと、 結局やっぱり私は人形なんだっていう想いが合わさった、 なんだか
複雑な気分で、 電マのコンセントプラグを体内の端子に差し込んだ。 で、 スイッチはちゃんと右手で持って、
これで準備完了。 これがホントの自家発電だね。 はは。 この私の使ってるCS-20型義体の開発者だって、
まさかこんなことにコンセントプラグ接続端子が使われるだなんて、 思いもしなかっただろうなあ。
(スイッチ、 入れたいんだろ。 入れてごらんよ。 変態娘さん)
172 :
3の444:2005/10/04(火) 02:44:10 ID:sUXphgXF0
頭の中の声に後押しされて、 右手で堅く握り締めた四角い電マのスイッチボックスを思い切ってONにする。
ぶーんって間の抜けたモーター音が響いて、 私のあそこにあてがったものが勢いよく震えた。
「ぁ・・・ちょ・・・ま・・・・」
スイッチを入れた瞬間、 私の予想をはるかに超えた鋭い快感が、 あそこから脳のてっぺんまでつーんと貫く。
(やばい。 ダメだ。 イっちゃう)
あわててスイッチを切ったけどもう遅かった。 今まで、 何度となくイク寸前で寸止めされていた私の身体は、
電マの刺激に五秒と耐えられず、 立ったままの姿勢でたやすく絶頂まで押し上げられてしまった。
カラン。
乾いた音をたてて、 手からこぼれて落ちた電マのスイッチが床に転がった。
「ぅ・・・・ぅぅ・・・ぅぅ」
膣がびくんびくんと震えて、 そこから生まれた快楽が体中に広がって頭の中が真っ白になった。 必死に
口をふさいで、 自然に漏れてしまう獣じみたあえぎ声を抑える。 眼をぎゅっとつぶって、 身を捩じらせながら、
全身で快感を受け止めたあと、 私はどっと膝から床に崩れ落ちた。
(い、 今のは無し。 今のはノーカウントだよね)
まだ、 絶頂感の残滓が残る身体を両手で抱きかかえながら、 私は思う。
そう、 今のは無しだよ。 今のでイクつもりなんて、 私にはこれっぽっちもなかったんだ。 ただ、 私が油断
してただけなんだから。 心の準備がなかっただけなんだから。 こんなので、 終わりにできるわけ、 ない。
173 :
3の444:2005/10/04(火) 02:52:28 ID:sUXphgXF0
ヤギー妄想エスカレート中。
手の平サイズに小さくて、コンセント式で、スイッチがコードの
途中にあるような電マなんて、ないだろって突っ込みはやめて
下さいw
>>164 アニーとアッカの全面対決についてはいつかやろうと思っているネタです。
もちろんおもちゃになるのはヤギーですよ。
>>166-167 こういうヤギーも見てみたい気がします。誰か書いてくれないかなあと
私も希望してみたり。
174 :
C,W:2005/10/04(火) 18:08:45 ID:UVT/rF7m0
>功績値が溜まりました
>CW−1のランクが変化します サイボーグ戦闘要員ランクE → サイボーグ戦士ランクD
「で、パワーアップのための再改造が出来るようになったんだ」
「嫌!」
取り付く島も無い…
「そろそろ敵も強くなるし、パワーアップしとかないとマズイぞ」
「大丈夫だって。今の所、全然苦戦するような事は無いし、やばくなってから考えようよ」
「大丈夫かなぁ… そろそろボスが出てくる頃なんだが…」
この心配はすぐに当たる事になった…
>強制任務です
スケジュール管理画面で現れた文字は、ボスの出現を表していた。
「晴香、本当にボスが来たぞ」
「大丈夫。今まで通りやればいけるわ」
自信満々な晴香をみて、こちらも少し自信が出る。
「よし、全力で行って来い」
「うん」
結果的にこの考えは甘かったと言う事になる…
「この程度で勝てると思っていたとは… 笑わせるな」
任務先にいたのは今までの敵とはレベルの違う相手だった。
「我輩の技術力は貴様らのそれを上回っている様だな」
大型のロボットが吐き出した大口径の機銃は晴香の手足を打ち抜いていた。
「そんな… 強すぎる…」
Dr.Mと名乗ったマッドサイエンティスト風の老人が高笑いし、ロボット共に消えた。
「YOU LOSE」
俺達の初めての敗北だった。
175 :
C,W:2005/10/04(火) 18:10:36 ID:UVT/rF7m0
回収された晴香は生命維持モードに入っており意識を失っていた。
即座に回復処置が行われ、翌日には元通りになっていた。
「再改造の必要がある」
そう切り出したのは俺だった。
「それだけは嫌だって言ったでしょ」
そう言うと、晴香は司令室を出て行ってしまった。
>ステータス変化
>好意 80 → 70 (−10)
好意が減ったか… まあ、当たり前だろう。
それから数日間話し合いを続けたが、結果は決裂し、最終的にとった手段は強制的に改造する事だった。
>ステータス変化
>パワー 35 → 60
>スピード 34 → 60
>射撃 37 → 65
>格闘 38 → 70
>人間性 90 → 50
改造の結果、戦闘力は大幅に上がった。これであの敵には確実に勝てるだろう。
だが、人間性の低下がきつい。このままにしておく訳にはいかない。
そんなことを考えていた俺に追い討ちがかけれた。
>強制改造によるステータス変化
>好意 70 → 45(−25)
>意思 100 → 70(−30)
>人間性 50 → 35(−15)
マズイ。さらに下がるのか…
本気で対策を考えないとやばい事になる。
176 :
C,W:2005/10/04(火) 18:11:41 ID:UVT/rF7m0
「よくも、やってくれたわね。私の意思なんて無視なのね」
顔合わせるなり、怒りに震えながら叫んだ。
「仕方ないだろ。勝たなくちゃならない。それとも、このまま負け続ける気か?」
「ふん。もう好きにすればいいわ。どうせ私を道具扱いして、クリアすればいいでしょ」
晴香の機嫌は直りそうも無かった…
>強制任務の再チャンスです
次週のスケジュール決定時に現れた文字はチャンスの到来を示した。
「く、我輩の最高傑作が… アレさえ完成していれば…」
Dr.Mは負け惜しみをしながら消えた。
「勝てた… 耕一。私勝てたよ」
前回全く歯が立たなかった敵に、晴香は圧勝する事ができた。
「やっぱり、ちゃんとやらないと勝てないのかな…
嫌だけど、勝つためには改造しないといけないみたい…」
「ああ、出来れば次以降もまめにパワーアップしたいんだ」
「うん、考えておくね」
「それより、この奥調べた方が良いよね。
Dr.Mもなんか作りかけの物があるって言ってたし」
「ああ、気をつけてくれ」
「うん」
アジトの奥にあったのは、想像もしていないものだった。
「あれって、千鶴さんだよね」
「ああ、姉さんに間違いない」
顔は間違いなく千鶴姉さんだ。だが、首から下に繋がってるのは肌色の肉体ではなく、作りかけの銀色の機械だった。
>>C,W
乙。萌えました!今後の強制改造が楽しみです。
178 :
3の444:2005/10/07(金) 02:12:23 ID:DoxQxLN+0
自分の部屋に戻るまで、 私、 いったい何回イきそうになって、 何回電マのスイッチをカチカチ切ったり
つけたりしただろう。 いったい何度壁や、 階段の手すりにもたれかかって、 がくがく震える下半身を支えた
だろう。
私、 こんな時に、 あーん、 なんて可愛らしいよがり声出せないよ。 口から漏れるのはぅーぅーっていう
獣じみた可愛らしさのかけらもないあえぎ声だけ。 生き物らしさの欠片もない機械の身体のくせにさ、 これ
じゃ人間どころか動物と一緒だよね。 もう、 いいよ、 私、 ただの快楽に狂ったメスでいいよ。 それでも、
機械なんかより、 ずっとましなんだ。
両方の乳首とあそこから絶え間なく全身に送り込まれる快感に、 頭が朦朧として、 もう、 何がなんだか、
よく分からない。 ジーンズの厚い生地も、 もう外からはっきり分かるくらい、 その部分だけ湿って色が変
わっちゃった。 万が一誰かに出くわしたら、 たとえ胸や股間のへんな膨らみをうまく隠したとしたって、 私が
何をしているかなんて、 きっとバレバレだよね・・・。 そう思ったらますます興奮して、 すぐ絶頂の淵まで
追い込まれてしまい、 あわてて私のあそこを思うままに蹂躙していた電マのスイッチを切った。 今、 シーン
ズに手を突っ込んで、 クリを軽く撫でたとしたら、 それだけで確実にイける自信があるよ。 もう、 イかせて。
私、 イきたいよ。
でも、 油断したら滅茶苦茶に動きそうになる右手を必死で自制する。
(まだだよ。 まだイかせてあげない)
私の頭に住み着いた男は意地悪そうにそう言った。
そう、 まだイっちゃ駄目。 なんとかハイツのあの部屋でHしてるあなたを見ながら私もイくんだから。
あの女の子と一緒にイかせてもらうんだから。 だからまだ駄目なの。 駄目なの!
179 :
3の444:2005/10/07(金) 02:13:36 ID:DoxQxLN+0
期待を込めて、 部屋のドアを開く。
そして、 電気を消して、 鍵をちゃーんと閉めて、 よろめくような足取りで窓際に向かった。
でもね・・・。
例の部屋の窓にはカーテンがしっかり下りてるの。 それに明かりも消えちゃってる。
(もう終わっちゃったっていうの? そんな・・・、 そんなぁ・・・)
よくよく考えれば、 Hなんて激しいスポーツと同じだよね。 だから、 そう何回も繰り返しできることじゃない。
私みたいな義体でもなければさ・・・。 うっかり、 自分を基準に物を考えちゃってたけど、 実は私の身体の
ほうが規格外。 電マを取って、 すぐ戻ってくるつもりだったのに、 なんやかやで部屋を出てから15分も経っ
ちゃってるんだ。 もう終わってたって、 ちっともおかしくないよ。
でも・・・でもさ、 ここまで盛り上がっちゃった私の気持ちをどうしてくれるんだよう! イきたくてもジーンズ
もぐちょぐちょになっちゃうまでずーっと我慢してた私の身体をどうしてくれるんだよう! そりゃあ、 今だって、
あそこがむずむずするよ。 ジーンズだって、 気持ち悪いくらい濡れてるよ。 でも、 こんな白けたムードで
クリさわって無理やりイったところで、 かえってストレスたまっちゃいそうだよ。
(こうなったら、 もう、 あれやるしかないよ)
そう、 ホントは、 やりたくない。 でも、 あれ、 やるしかない。
私は、 自分の首筋を引っかくように触って、 サポートコンピューター用の接続端子の蓋を開いた。 そして、
机の一番上の引き出しからケーブルを取り出して、 私のパソコンと、 サポートコンピューターを繋いでから、
パソコンのスイッチを入れる。
ぶーんと唸り声を上げてパソコンが立ち上がる。 暗い部屋が、 ぼんやりしたモニターの淡い、 白い光に
つつまれる。 と、 同時に私の視界に新しいデバイスがどうしたこうしたって緑の字が踊る。 サポートコンピュー
ターが外部のコンピューターと接続したっていうお知らせが義眼のディスプレイに表示されたってわけ。 で、
y.yagee17って私のサポートコンピューターのアクセスコードをパソコンに打ち込む。 これで、 接続作業完了。
180 :
3の444:2005/10/07(金) 02:14:33 ID:DoxQxLN+0
私の義眼は、 モノを見るだけじゃなく、 見たものを画像としてサポートコンピューターに記録することだって
できる。 パソコンとサポートコンピューターを繋げば、 その画像をダウンロードすることだってできちゃうんだ。
ちょっと便利でしょ。 普段は義体についている機能なんて極力使わない私だけど、 この機能だけは実は
結構お気に入りだったりする。 私は生身の身体の頃から写真を撮るのが好きで、 カメラを持って町をウロ
ウロなんてこともしてたんだけどさ、 カメラを取り出すとどうしても映される人は身構えちゃって、 なかなか
自然な表情が撮れないんだよね。 でも、 義眼のカメラ機能を使うと、 当たり前のことだけど、 撮られている
人は、 写真を撮られているなんてことにちっとも気付かないから、 驚くほど自然体のいい表情が撮れるんだよ。
それが面白くって、 今の私には全然必要じゃないのに、 八百屋のおばさんが働いてるとこの写真が撮りたい
ためだけに、 意味もなく宮の橋の駅前商店街で野菜を買ったりしたもんだよ。 その野菜は結局みんなで
食べてくれってアニーにあげたんだけどね。
うー、 話がわき道にそれました。
何が言いたいかっていうと、 さっきの二人のHも、 実は録画済みなんだ。 それも、 ふっふっふっ、
動画でね。 だから、 それを見て、 さっきの気分を思い出しながら、 その・・・オナるのもさ、 悪くないよね。
ていうか、 そうでもしなきゃ、 今の私の身体は静まらないよ。
あーあ、 電力出力用のコンセントプラグ接続端子も、 義眼のカメラ機能も、 私はぜーんぶひとりHの
ために使いました。 義体を開発した人、 怒るかなあ。 怒るだろうな、 きっと。 はは。 せっかくの一人Hまで、
こんなふうに機械の力を借りるなんてこと、 ホントはしたくないんだけど、 でも、 生殺しのまま、 ムラムラした
気分で宿題なんて、 できるはずないじゃないかよう。 大丈夫、 大丈夫。 一回ちゃんとイったら、 宿題は
ちゃんとやります。 どんなに時間がかかっても、 たとえ徹夜しても仕上げてみせます。 だから許して、
お願いだよう。
181 :
3の444:2005/10/07(金) 02:24:12 ID:DoxQxLN+0
もうエロだかなんだか分からなくなってきました。
次回投下で終了予定です。
音声データはどう?
さすがに自分の痴態をカメラに収める事はできないだろうけど、
喘ぎ声録音してセルフハァハァ…
いっそ、サポコンに快楽信号の送出命令送り込んで
何もしないでエクスタシー、ってのも面白そうだが。
録画したデータがのちのちまで残ってて法定メンテのときにケアサポーターの
松原さんに見つかってニヤニヤされる、とかあったらワロス
つないだコンピューター経由でクラッキング&ウイルス感染だなんて
なんてかわいそうなやぎーさん
185 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/07(金) 23:52:07 ID:0/a2M69u0
これってアニーにはばれまくってそうな…
あの管理人は把握しているだろう、対応端末があったら遊びたがるのでは…
186 :
3の444:2005/10/08(土) 01:30:45 ID:R+DgUm/e0
動画をサポートコンピューターからパソコンに落としたから、 あとはマウスをかちっとクリックするだけ。
それだけで、 さっきのHが見れるんだ。 でも、 その前に・・・。 私は、 眼鏡を外すと、 両手でTシャツの
裾を掴んで勢いよく捲り上げて、 床に放り投げた。 これから私の身体に起こる快楽への期待にうち震えて
うまく動かない指先をなんとか操ってブラのホックを外す。 私のあそこから溢れたものでぐしょぐしょになって
しまったジーンズを足で蹴飛ばすように脱ぎ捨てて、 湯たんぽみたいにほかほかに温まった電マを右手で
鷲掴みする。
あっという間に素っ裸になった私は、 もう一度眼鏡をかけ直すと、 パソコンのモニターに向かって椅子に
足をかたっぽだけ上げて、 腰に、 電マを握り締めた右手を当てて、 挑発的なポーズを作ってみた。 と、
いっても両方の乳首に洗濯バサミを挟んだままだし、 左脇腹の蓋が開いて電マのコンセントが突き刺さって
るし、 首筋にはパソコンとの接続ケーブルが繋がったまま。 色っぽいなんてとても言えない実に間抜けな
格好なんだけどさ。
(さあ、 私を犯してよ。 思いっきり、 身体が壊れちゃうくらい激しくね。 じゃ、 ないともう私は満足しないん
だから)
妄想の中で、 私はモニターの向こう側にいる男を煽る。
外出する予定のない時は、 面倒くさいからカムフラージュシールなんて貼ってない。 だからパソコンの
モニタの弱弱しい光に照らされて白く浮かび上がる私の身体は、 はっきりいって継ぎ目だらけ。 両肩も、
両脇腹も、 首筋も、 身体中のそこかしこに外部接続端子の蓋がついている、 人形じみた全身義体。
(ヤギーの身体、 とても綺麗だ。 白くて、 柔らかくて)
でも、 頭の中の男は、 私に向かって愛しげにそう言って抱き寄せてくれる。 そう、 私は男に抱かれた
つもりになって、 両腕で自分の身体をぎゅっと抱きしめたんだ。
所詮虚しい一人芝居なのかもしれないよ。 でも、 せめて空想の中だけでも、 綺麗な生身の身体の
女の子でいさせてよ。 私の身体が冷たい機械だってことを忘れさせてよ。
187 :
3の444:2005/10/08(土) 01:31:53 ID:R+DgUm/e0
マウスをクリックすると、 たちまちモニターには、 さっき私がみた光景そのまま、 女の子が窓枠に手を
あてて、 男を後ろから受け入れている画像が浮かぶ。
私も女の子と同じ姿勢をとることにした。 机の脇にある本棚に上半身を預けて、 両足を心持開き気味に
してお尻を突き出す。 そして、 電マを思いっきりクリに押し当てるとスイッチを入れた。
カチン。
「あっ、 あっ、 あっ、 あっ」
電マの単調な震動だって、 私の妄想にかかれば、 的確に私の感じるツボをついて、 どんどん高みに
持ち上げてくれる男の魔法の指と同じ。 乾きかけた電マは、 たちまち私から溢れたもので濡れた。
「いいよう。 いいよう。 気持ちいいよう」
恥も外聞もなく欲望をストレートに言葉にしてぶちまけてしまう。 大丈夫。 多少声を出したって、 隣の部屋
までは聞こえるはずがない。 その安心感が、 さらに私の口から露骨な言葉を吐き出させる。
「もっと、 もっと欲しいんだよう。 あなたが欲しいんだよう」
(どうして欲しいんだい。 いってごらん)
「あなたの、 あれを、 私のあそこに入れてっ!」
(あそこって、 どこ?)
男は白々しくすっとぼける。
「意地悪しないでよう。 私、 もう我慢できないよう」
私は、 電マのスイッチを本棚に置くと、 頭で身体を支えながら右手をあそこに持っていった。
モニターの中の男の動きに合わせて指を一本あそこに差し入れる。 じゅぷっといういやらしい音をたてて、
私の指は欲望の穴に吸い込まれた。 その瞬間、 私のあそこが別の生き物みたいに蠢いたかと思うと、
ぎゅっと指を締め付ける。
「ああっ!!」
たまらずガクリと腰が落ちそうになる。 ただ指を入れただけで軽くイってしまった。 でも、 まだ終わりじゃない。
まだ最後まで昇りつめたわけじゃない。
188 :
3の444:2005/10/08(土) 01:33:18 ID:R+DgUm/e0
画像の中では、 男がピッチを早めている。 それにあわせて私の指も一本から二本。 二本から三本と次第に
エスカレートする。 男の動きにあわせて指を動かす度に、 腰が抜けそうになるほどの快感が全身に広がった。
私の動きにあわせて本棚がガタガタ揺れる。
女の子が突然、 自分の乳房をもみしだいた。 それにあわせて、 私もいったんあそこから指を抜いて、
左胸を握り締める。 愛撫というには激しすぎるくらい滅茶苦茶に。 丸い乳房が様々な形に歪む。 乳首を挟んで
いた洗濯バサミがパチンという音をたててどこかに弾け飛んだ。 その間中、 電マを握り締めた左手はずーっと
クリに当てたまんまで、 全身が融けてしまいそうな快楽を送り続けている。
「私、 もう駄目だよう。 駄目だよう」
呻き声のトーンが一オクターブ上がった。 絶頂はすぐそこまで来ている。
いつの間にか、 画像は終わっていた。 でも、 私には関係ない。 もう、 パソコンのディスプレイなんて目に
入っていない。 だって、 今はもうあの女の子は私自身なんだから。 男に犯されているのは私なんだから。
「あーっ、 あーっ、 あーっ!」
口から漏れる言葉が意味をなしていないただのわめき声になった。 でも、 頭では何も考えられないくせに、
指だけはなんの遠慮もなく私の身体の中をかきまわす。 力強く、 激しく。 もっと、 もっと、 もっと!
「!!!っ」
身体を襲う強烈な快感に身を捩る。 いやいやするみたいに激しく頭を振る。 顔から眼鏡がずり落ちたけど、
そんなことにはかまっていられない。
189 :
3の444:2005/10/08(土) 01:42:29 ID:R+DgUm/e0
「もう私イっちゃうよう。 ねえ、 イっていい? イっていい?」
切羽詰まった声で男にせがむ。
(もうイちゃうのかい。 全くヤギーはいやらしいな)
頭の奥で男が笑った。 そして、ぐいっと深く私の中に突き入れて、 クリをぎゅっと身体に押し込むように潰す。
(もう・・・だめ)
「もう私、 駄目だから。 駄目だからぁ。 ダメダメダメダメっ!」
ぎゅっ、 ぎゅっと膣が激しく収縮して私の指を締め付ける。 一回、 二回、 三回。 その度に電気仕掛けの
淫魔が生み出されて、 身体中の電線を駆け抜けて私の全身を蹂躙する。 頭の中で何かが爆発して、 ぎゅっと
閉じた目の奥で火花がチカチカ光る。 私は鋭い快感に身をまかせて全身を震わせて、 本棚を引っ掻きながら
床に崩れ落ちた。
190 :
3の444:2005/10/08(土) 01:44:55 ID:R+DgUm/e0
ごめんなさい。終わりませんでした…orz
あと一回。オチだけつけさせて下さい。
191 :
3の444:2005/10/10(月) 02:17:22 ID:lhH8Ovhd0
ゴンっ!
鈍い衝撃。 何か重くて固いものが、 背中にぶつかった。 身体に痛みを感じる間もなく、
どさどさどさどさ
土砂降りの激しい雨みたいな騒々しい音をたてて、 うつぶせの姿勢のまま絶頂の余韻でまだ身体を
びくびく震わせている私の周りに、 本が崩れ落ちた。
それで何が起きたか分かった。 私、 イった時、 本棚を掴みながら床に倒れちゃったものだから、 イク
のと同時に本棚をひっくり返しちゃったんだ。 一人Hでイきながら、 本棚の下敷きになるなんて、 私って
なんて間抜けなんだろう。 こんなとこ知り合いに見られでもしたら、 それこそ自殺ものだ。
せっかくこれから落ち着いて宿題に取り掛かろうと思った矢先に、 また、 余計な仕事を増やしてしまった。
あー、 情けない、 情けない。
私はうんざりした気分で、 顔を覆い隠すように乗っかってるマンガ本を手で払いのけようとして、 ある
ことに気がついた。
動かない。
手が全然動かせないんだよう。 手だけじゃないよ。 足も、 身体も何もかも。 瞬きすらできない。
一瞬義体のバッテリーが切れちゃったのかと思ったけど、 すぐにそんなはずはないって思い直す。 私、
さっき充電したばかりだもの。 第一まだ節電モードにだって、 なってなかったよ。
私の身体、 いったいどうしちゃったんだろう。 何が起こったんだろう。 得体の知れない恐怖に、 背中が
すーっと冷たくなった。 背筋が凍るだってさ。 はは。 今の私の身体が、 そんなこと感じとれるわけない。
そんなのは生身の頃の感覚をおぼろげに覚えている私の脳みそが生み出す幻想なんだ。
感覚?感覚だって?
それでまたおかしなことに気づく。 身体が動かないどころか、 全身の感覚が全くなくなっちゃってる。 イっ
てしまった時の身体が壊れちゃうかと思うくらいの深い絶頂感も、 本棚が背中にぶつかった時の痛みも、
嘘みたいに消え失せてる。 それどころか、 お腹が床にくっついてる感覚すら無くって、 まるで宙に浮かんで
いるみたい。
192 :
3の444:2005/10/10(月) 02:19:10 ID:lhH8Ovhd0
間抜けなモーター音を響かせて震え続けているはずの電マの音も、 ぶーんっていう唸り声を上げて立ち
上がっているはずのパソコンの音も、 何もかも聞こえない。
眼だけは見えているみたいだけど、 なんか変。 顔を覆い隠しているマンガ本の隙間から、 壁に掛かって
いる古時計がちらっと見えるんだけど、 その時計、 1時40分を指し示したっきり、 全く動いていない。 おまけに
ビデオの静止画像みたいに視界に変なノイズが入ってる。 これ・・・見えてるんじゃない。 私が見た最後の
画像を延々と映し続けているだけだよ。
どうしよう、 義体、 壊れちゃったよう。 私、 これから宿題しなきゃいけないのに。 徹夜してでも2ページ
分の翻訳をしなきゃいけなかったのに・・・。 だいたい、 私の義体、 なんで壊れちゃったんだろう。 まさか、
本棚が身体の上に落っこちたから? 義体ってその程度で壊れるくらいやわなわけ? こんな安っぽい義体で、
イソジマ電工は宇宙空間でも深海でも耐えられるとか言って自慢してるわけ? 冗談も休み休みにしてほしい
よね。
もし義体に何らかの異常が発生した場合、 すぐイソジマ電工に連絡が入ることになっている。 で、 カスタ
マーセンターの人が、 義体が発信する救難信号を頼りに助けに来てくれることになっているんだ。 しばらく
このまま我慢していてれば、 きっと誰かが来て、 私を府南病院に運んで、 ちゃーんと義体を元通りに直して
くれるはずだよ。 だから、 このまま行き倒れってことにはならないはず。
だけどさ・・・。 それって・・・つまり・・・カスタマーセンターの人に、 今の私の姿を思いっきり見られちゃうって
ことだよね。 今の私、 どんなカッコしてると思う?
193 :
3の444:2005/10/10(月) 02:20:25 ID:lhH8Ovhd0
素っ裸で、 右の乳首に洗濯バサミを挟んで、 電マは動きっぱなしのあそこにあてっぱなし。 おまけに
電マの電源には体内バッテリーを使ってる。 で、 パソコンはさっきのサポートコンピューターからダウンロード
したH画像を際限なく繰り返してる。 とどめは、 潰されたヒキガエルみたいな情け無いカッコで本棚の
下敷き・・・。こんな恥ずかしくてみっともない姿をカスタマーセンターのお兄さんに見られるってわけ? 嫌だ!
嫌だ! 絶対嫌っ! そりゃあ、 さっき一人羞恥プレイはやりましたよ。 でも、 一人放置プレイだなんて、
そんなの私の趣味じゃないよ。 コラ、 このポンコツ義体め。 さっさと動いてよう。 私の言う事聞いてよう。
お願いだから。 お願いだから・・・。
私はしばらくの間、 気合いで身体を動かそうと力んでみた。 いや、 力んだつもり。 でも、 気合や根性で、
義体の故障が直るわけがない。 当然のことながら、 私の呼びかけに義体は全くの無反応。 指一本動かせ
ないし、 瞬き一つできない。 ノイズだらけの静止画像とはいえ、 眼が見える分、 感覚遮断よりはまだマシ
だけど、 こうして義体が使い物にならなくなっちゃうと、 今の私は自分の力では何一つできない、 人形の
中に閉じ込められた無力な脳みそにすぎないってことを嫌というほど思い知らされてしまう。
今、 何時なんだろう。 結局、 宿題、 できなかったな。 もういいよ。 もう、 どうでもいいよ・・・。 どうせ、
このまま起きていたところで、 何もできやしないんだ。 だったら、 もう寝ちゃおう。 ふて寝して、助けを
ゆっくり待つしかないよ・・・。、
目が覚めると、 私はベッドの上に寝かされていた。 見覚えのある真っ白けの部屋。 いつもの、 府南病院の
義体科の診察室だ。 結局、 私、 ここに運ばれてきちゃったんだね。
ベッドから起き上がって、 腕を伸ばしたり、 無意味に足をバタバタさせてみたり。 ちゃーんと、 元通り、
私の思い通りに動いてくれる。 とりあえず、 身体は直っているみたいだ。 よかった、 よかった。
でも・・・私がここにいるってことは、 カスタマーセンターの人に、 私の痴態、 思いっきり見られたね。
あの人、なんていったっけか。 確か篠田さん? 私、 もう二度とあの人と顔を合わせられそうにないよ。 あーあ。
194 :
3の444:2005/10/10(月) 02:30:06 ID:lhH8Ovhd0
息の出ないため息を一人でついていると、 ノックの音がして、 私の担当ケアサポーターの松原さんが、
長い黒髪をなびかせながら、 いそいそ部屋に入ってきた。
「松原さん。 私の身体、 どうなっちゃったんですか? いきなり身体が動かなくなって、 何も感じられなくなって。
こんなこと、 はじめてなんですけど」
松原さんは私の問いかけには何も答えず、 仏頂面で、 ベッドで寝ている私に分厚い冊子を手渡す。
(これは・・・)
私の使ってるCS-20型義体の取り扱い説明書だった。 しかも、 ご丁寧に付箋までつけちゃって。 ここを
読んでみろってことだろうか? 私、 自分が電化製品になっちゃったような気がして嫌だから、 今まで義体の
説明書なんか、 ほとんど目を通したことない。 だいたい、 みんな、 自分の身体の説明書なんて、 あるの?
そんなのなくたって、 自分の身体のことくらい、 自分で把握してるでしょ。 私だって、 そうだよ。 この義体
だって、 もう三年以上使っているんだ。 もう、 私の身体も同然だよ。 説明書なんか読まなくたって、 自分の
身体くらい、 自分で把握してるつもりだよ。
そう思ったけどさ、 松原さんの手前断るわけにはいかないよね。 反抗したら恐いし。
付箋のついてるページを嫌々めくると、 今度は黄色の蛍光ペンで塗られた一文が眼に入った。 何が
書かれているか、 目で追いかける。
『一度に多種多量の感覚データを義体が感知すると、 サポートコンピューターが感覚信号を処理しきれず、
機能停止をする恐れがありますので、 くれぐれもご注意ください』
ふーん、 そうなんだ。 初めて知ったよ。 それで?
195 :
3の444:2005/10/10(月) 02:31:09 ID:lhH8Ovhd0
『(注1)サポートコンピューター、 ハードディスク内に、 動画等、 大量のデータを必要とするファイルを置きすぎ
ますと、サポートコンピューターの処理速度が低下し、 最悪の場合、 機能停止の原因となります。 つきましては、
定期的にサポートコンピューター内の不要データを削除するなどして、 常に最適な動作環境を保つよう心がけて
ください』
ぎくっ!
『(注2)特に女性型義体の性行為については、 大量の感覚データを使用しますので、 ある種の特殊なプレイ
(3P、 SM等)は、 度が過ぎるとサポートコンピューターの機能停止の原因となります。 女性型義体のユーザーの
皆様につきましては、 上記に該当、 又はそれに準ずる特殊な性行為はなるべくお控えいただき、 ノーマルな
行為にてお楽しみ下さるようお願い致します』
ぎくぎくぎくっ!
よ、 よ、 余計なお世話だよう! 何がノーマルな行為でお楽しみくださるように、 だ! 説明書なんかにHの
やり方までお説教されたくないっ! 私は3PもSMプレイもしてないよ。 ただ、 乳首に洗濯バサミを挟んで、
サポートコンピューターからパソコンにダウンロードした動画を見ながら電マを使って一人Hをして、 イった瞬間に
本棚が倒れて、 本棚と本のシャワーに潰されただけじゃないか・・・。 そんなの至ってノーマル・・・じゃないよね・・・orz
恐る恐る、 上目使いに松原さんの顔色を伺う。 説明書の、 こんなとこに、 ご丁寧に線まで引いちゃってるって
ことは、松原さん・・・私のしてたこと・・・全部知ってるね・・・。 サポートコンピューターのログ、 全部解析したんだね。
「あえて、 何も言いません。 ただ、 説明書はよく読みましょうね」
松原さん、 一言それだけ言うと、 意味ありげにニヤっと笑った。
嫌嫌っ! もー嫌っ! 何事もやりすぎには気をつけようね。
おしまい
196 :
3の444:2005/10/10(月) 02:34:14 ID:lhH8Ovhd0
以上で、「一人遊び」終了です。
前スレで、サポートコンピューター処理落ちのネタをくれた方、
有難うございました。
松原さんテラワロス
ちょwwwwwwヤギwwwwwww
そういうオチだったか。テラワロス
ということは下宿の管理人も、その凄惨な現場に踏み込んだ訳か。
・・・アニーだっ!!w
200 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/10(月) 16:57:35 ID:Z3bhceTH0
やぎーさん、本当に面白い人だな。
体にコンセントがあるのと、目がデジカメなのはとっても便利そう。
ヤギーたんが生身の人間に絶対できない事をしてしまうのが、
ただの機械になってしまったからでは無くて、あくまで確かに
人格も意思もある一人の人間であるからこそなのが萌え!!
これがアンドロイド娘とかだと単なる「フツーのオナニー」に
なっちゃうから、フツーのオナニー以上には萌えないんだよな。
しかし、説明書に(注2)が載っているって事は、
過去に特殊なお楽しみで昇天したまま昇天しかけたユーザーが居たか、
深町さんに様々なアブノーマルなプレイが要求されていたって事だよな。
それと、快感信号が脳に送られたままフリーズ→廃人直行せずに済んで良かったと言うか、
何にしても、ヤギーよ・・・。
保守
204 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/14(金) 20:11:55 ID:+YvgwIMt0
就職活動編でイソジマ電工試験を受けてたけど。就職するとこの時の記録とか出てきて、新型サポートコンピュータ用に
深町さんとテストする羽目になるのでは.…こういうのってメーカーに記録残りそう。
アニーにもばれてそうだし…
アニーには確実にばれてるわな(笑
206 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/15(土) 10:48:45 ID:BC4DZ0JK0
>>204 高給ダッチワイフ開発用のデータ収集とかに使われるとか。
データが社内に技報で回覧されてたり
ttp://vita.holy.jp/works1.html こんなネット小説を見つけた。
このスレ的にはサイボーグ少女監禁調教モノになるんだろうか?
(作者の意図は全然違うんだろうけどw)
女の子の身体の七割が機械化されてる割には、余り機械っぽさがないのが
チト不満ではあるが、ストーリーは楽しめた。
こんなふうに知られざる逸品を紹介してくれると嬉しい。
なんかオススメはありませんか?
アニメ「SoltyRei」は観た?
サイボーグとかが出てくるアニメっぽい。
よく見ると脇役とかにサイボーグ娘とかが結構いる。
主人公もサイボーグ娘っぽいんだが…サイボーグかアンドロイドかは今のところ不明のようだ。
209 :
207:2005/10/16(日) 02:56:15 ID:TCBgieiI0
>>208 知らなかったよ。ありがとう。主人公変な髪形だなw
公式サイトにいってみたんだが、誰がサイボーグ娘なのか全く分からず。
それらしいシーンがあるのでしょうか。今後チェックしてみます。
最近新作投下ないね
ショボーン
1Y320D00H00M00S。
澤田たちのラバーフィットスーツの装着が終わったころ。私たちは、火星で順調に探査の任務をこなしていた。
2日前に南極までの第一次探査旅行を終了し、今日からは、北極に向けての探査旅行に
出発することになっていた。今度の探査旅行は、火星の北半球の山岳地帯や渓谷の調査も行うため、
220日の長期の探査旅行になる予定であった。私たち、火星探査・開発用サイボーグにとってもかなり大変な
長期旅行になる予定である。
そのため、万一の火星探査・開発用サイボーグ体の故障や事故に備え、修理機材やメンテナンス機材を
火星探査用バギーに貨物車を連結して、その上、予備の無人バギーに修理に必要な部品や機材を搭載して、
基地に待機させ、みさきからのコントロールにより、無人運転させることができる態勢を整えての出発となった。
地球上で映像を見ている人々は、その物々しい準備風景に今回の探査旅行が、
何事もなく進むように祈るような気持ちで、探査旅行の出発を視ていたのである。
準備が整い、みさきに
「行ってきます。留守はよろしくね。」
と声をかけると、
「はるか、未来。今度は無理をしないのよ。危ない真似をしないでね。
補充部品なんていう物は使わないに越したことがないのだから、第二次探査チームに
そのまま残してあげるぐらいでいいんだからね。」
とみさきが心配して答えてくれた。
「ありがとう。みさき、心配しなくても、危険な真似はしないから安心して。」
未来が答えた。
みさきは心配してくれるが、私たちの身体の構造は、火星での探査のため、どのような衝撃があっても、
それに耐えるだけの設計がなされているのであった。つまり、かなりのことがあっても故障したり、
破損したりすることはないのである。生身の人間のアストロノーツなら、即死という場面でも私たちは、
傷一つ付くことはなかった。勿論、無人探査機材よりも安全という判断が聞くので、
危険に曝される確率も低かったのである。
そこに、地球の宇宙開発事業局のコントロールセンターから交信が入った。
「如月大佐、望月未来中佐。美々津少佐も心配して声をかけていると思うけど、無理はしないで下さい。
私たちは、2体の火星探査・開発用サイボーグが、故障や破損のない状態でたくさんの火星のデータを
地球に持ち帰ってくれればいいのですから。この前の探査旅行みたいなことも起こして欲しくないのです。
安全が一番なのです。いいですね。これは命令です。」
長田部長であった。人工眼球内の映像と音声の長田部長に強い口調で釘を刺された。
みんながこうまで言うのは、私と未来に前科があるのだ、それは、前回の南極往復探査の後半に、
事故を起こしているのだ。
それは、クレーターを調査しようとして、クレーターのかなり急な斜面を降りているときに脚を滑らせて未来が
80メーターの高度を滑落してしまったのだ。そして、それを助けようとして、私も降りることがかなり困難な斜面を
下っているときに滑落するという二重遭難事故を起こしていたのだった。普通の人間は勿論、
無人惑星探査機材であってもただでは済まないどころではなく、大破して、
この探査計画の中止という事態にもつながりかねないような大事故なのであるが、幸い、私たちは、
人間の本能と機械の保護機能が連動して受け身をとれたし、火星探査・開発用サイボーグは、
設計上かなり頑丈に造られているため、このぐらいの事故では、何事も起こらないような造られていたため、
かすり傷一つ、部品の損傷一つなかったのである。しかし、その事態以降、私たち以外は、
私たちの行動に過剰な反応を示しているのである。
しかし、みさきにしても、地球上のスタッフにしても、今回の探査プロジェクトの大切な機材が壊れてしまったら、
計画が第一段階から躓くということになるのと、私たちを人間として気遣うのと相まって、
心配してくれているのであった。
私は、長田部長とみさきに
「今度は、無茶をしません。安全第一な行動をします。」
と約束をして、未来と二人での長期探査旅行に出発した。
確かに、あの事故のあとは、二人でみさきに手伝ってもらい、入念な点検を行ったりとかえって
大変な思いもしたことも事実であったので、未来と二人で、今度は無理厳禁と誓い合っている。
だから、今度は無茶なことをすることはないであろうと心に誓っての出発であった。
火星の赤い大地を猛スピードで走ることは気持ちよかった。大気の薄い火星であっても、
これだけのスピードでの走行なら、生身の人間だったら、頬に感じる風が気持ちいいのではないかと思う。
もっとも、生身の人間は、宇宙服を着ていなければ生きていけないから、頬に風なんて感じることは
できないだろうし、もちろん、今の私たちのように身体の見えている部分から内部に至るまでの大部分を
機械部品と電子機器に取り替えられてしまった火星探査・開発用サイボーグには、
感じることはできないことであるのだが・・・。
ただ、私たちは、人工皮膚に付いているセンサが、火星の大気の状態や火星探査用バギーの走行中の
風圧データを忠実に記録しているため、データを人工眼球内にディスプレーして風を楽しむことの
代わりとして楽しむことができたので、これは、生身の人間が宇宙服に閉じこめられての火星探査の体験より
恵まれていると心の中で自分を慰めていたのである。
1Y500D00H00M00S。
私たちの火星北半球の探査旅行が、順調にプログラムを消化していき、終盤に差し掛かった頃、地球上では、
この火星植民地化計画の重大な計画決定がなされ、このプロジェクトが加速度的に動き出そうとしていた。
第一次探査チームのここまでの大成功と澤田の安定的な政権運営の中での澤田の野望実現があいまっての
計画の加速であった。
そして、もう一つの私たちの身体の技術を応用したプロジェクトも計画決定をされたのである。
この国が生き残るため、澤田が考える最善の二本柱のプロジェクトが共に動き出したのであった。
私たち、第一次火星探査チームに使われた技術など、ほんの試験的な物にすぎなかったと言うことは、
私たちが地球に帰還したときに私たちが嫌というほど感じることになるのであった。
私たちは、何も知らずに火星での第三回探査旅行の終盤の任務をこなしていたのである。
そのころ、宇宙開発事業局の木村の元を首相の澤田と副首相の三谷が密かに訪れていた。
彼女たちは、火星植民地化計画の期間の短縮と新たなプロジェクトの実行が、決定されたことを木村に告げて、
協力を求めるためにやってきたのである。協力といっても、もう実行することが決まってしまったので、
木村に今後どの様にこの二つの計画の中核を担ってもらうかを説明に来たと言った方がよいのであった。
澤田と三谷にとって木村を中核に据えない計画の実施などあり得なかった。
木村の手腕と信頼は絶大なものであった。
木村は、澤田と三谷に席を勧めた。二人は、ラバーフィットスーツにヘルメットと
バックパックを装着したラバーフィットスーツの通常装備の状態でやってきていた。
「私たちは、今、通常のラバーフィットスーツ装着者の状態だから、このソファじゃ座りにくいのよ。」
澤田が、そう言って、木村の誘いを断ろうとした。
「瑞穂。大丈夫よ。私も、二人のいでたちを聞いていたから、私にとって一番楽なラバーフィットスーツの
通常装着状態になっているわ。
だから、普通のソファだったら座りにくいんだけど、ここのソファは、ラバーフィットスーツ装着者にも
座りやすいように座面の体位サポート能力を高めた特注のソファなの。
座ると、バックパックの出っ張りも吸収して包み込むような座り心地が得られるの。
私もラバーフィットスーツ装着者なんだから、この部屋で、ラバーフィットスーツ通常装着状態で
座りにくい様になっている椅子は、一つもないから安心して座って下さい。」
「わかったわ。それじゃあ、心置きなく座らせてもらうわ。」
澤田がそう言って、三谷と共に、その応接用ソファに座ると木村が言うとおり、二人の身体が
ラバーフィットスーツを装着した体型と彼女たちが好む体位に合わせて沈み込んでいき、
もっとも楽な体勢を作り出した上で、その体勢を保持しながら、二人の身体を包み込んだ。
木村も、対面する席に座り椅子に包み込まれた。
「本当だ、玲子さん凄いわね。私と首相の私邸にも欲しいわ。」
「わかりました。今度手配します。でも、おふたりは、バックパックを外している方が多いから、
このような椅子を用意するより、ラバーフィットスーツメンテナンス用チェアだけで充分だと思い
手配しなかったのです。気が付きませんで申し訳ありません。
私のようなラバーフィットスーツのバックパックとヘルメットを暫くは外せるタイプのラバーフィットスーツを
装着した橋本大臣、寺田大臣、そして、バックパックとヘルメットを外すことが不可能なラバーフィットスーツを
装着した中山秘書には、こういうタイプの椅子を用意してあげたのですが、おふたりは、
ラバーフィットスーツのバックパックとヘルメットを装着している期間が短いので、配慮が足りずに失礼しました。」
三谷が、
「玲子さん。確かにその通りだわ。私と首相は使用頻度から言ったら、あなたの言う通りかもしれないわ。
わがままを言ってごめんなさい。でも、私も、人目を気にしないときは、ラバーフィットスーツの
通常装着状態でいることが多くなったので、ラバーフィットスーツメンテナンスチェアだけじゃ物足りなくなったの。
首相も同じ気持ちみたい。」
「そう言うって事は、瑞穂も紘子もラバーフィットスーツに慣れたと言うことなの。」
木村が質問すると、澤田が答えた。
「私も紘子もラバーフィットスーツの生活に慣れたわ。というよりも、ラバーフィットスーツ装着者の生活に
満足しているの。ヘルメットやバックパックを装着したラバーフィットスーツ通常装着状態が一番楽に
感じられるわ。
私と紘子は、短い時間しかこの姿でいれないけど、この姿が一番なの。出来る限りこの姿でいたいのよ。
陽子や紀子、カレンは、最初はラバーフィットスーツの生身の人間とは違った生活スタイルに
戸惑っていたみたいだし、陽子は、ラバーフィットスーツもヘルメットも脱ぐことが出来ず、
バックパックも外すことが出来ない事に不便さとショックがあったみたいだけど、今は、
3人ともラバーフィットスーツの生活に慣れたみたいだわ。
5人とも、生身の人間に戻るというラバーフィットスーツのない生活なんて考えられないと思っているわ。
ただし、1日に一回は、生命維持管理システムとラバーフィットスーツ用メンテナンスチェアで
接続されないといけないことの不便さを感じるわ。
私は、早くこの煩わしさと決別するためにサイボーグに改造して欲しいぐらいよ。」
玲子がまた質問した。
「でも、口からものを食べれないし、味もわからない。涙を流すことも出来ないとか、性欲の管理抑止と
性器閉鎖カバーとクリトリスの除去といった人間としての感情や快楽の除去をされた状態に慣れるまでに
時間がかかったんじゃないの。」
今度は紘子が答えた。
「私と首相は、政治家として、国民のトップに立った時から、人間の欲望を封印していますから、余り、
食事をとれなくなって、煩わしいことが減ったし、性欲やセックスに関しても、興味を捨てていますから、
何も寂しいとか悩んだと言うことはなかったです。もっとも、陽子さんは少し、セックスできないことに
悩んでいたけど、彼女も切り換えが早いから、仕事に集中できるって言ってましたし、紀子さんは、
夫に自分が貞操帯を永久に装着されたのと変わらない状態だから、自分だけがセックスできないのは
不公平だといって、永久装着型の貞操帯を装着したと言ってましたし、カレンさんは、許嫁に自分と今後も
一緒にいるなら、自分と同じようになって欲しいと迫って、ペニスの除去と睾丸の体内収納処置を
行わせちゃいました。余談ですけど、彼女の許嫁は、肛門も前立腺をカレンさん以外がさわれないように
鍵付きの人工弁で閉じられておまけに人工肛門による排泄に切り替えられちゃったんです。」
やはり、鉄の女5人衆と言ったところだと思って、玲子は、頭を抱えてしまう。
男性の受難を可哀想に思えてしまった。
「瑞穂も、紘子もラバーフィットスーツの生活を気に入ってくれて嬉しいわ。
ところで、今日は、二人揃ってここにやってきた理由はなんなの。」
「そうだ、玲子、重要なことをまだ話していなかったわね。」
「瑞穂、ラバーフィットスーツの装着感の報告の方が重要なことな程度のことなの。」
「玲子、そうじゃないのよ。だけど、余りにも、ラバーフィットスーツの装着感が感激だったものだから。」
「玲子さん。私も首相と同じで。すみません。」
「わかったわ。それで?」
木村は話を始めることを澤田に促した。
「玲子、単刀直入に言うわ。あなたに新しいプロジェクトの統括責任者として指揮を執ってもらいたいの。」
「プロジェクトの指揮を執るのはいいけれど、火星植民地化計画の指揮はどうするの。」
「玲子さ。もちろん、今の宇宙開発事業局の局長として、火星植民地化プロジェクトの指揮も執り続けてもらいます。」
「ということは、兼務しろと言うことなのね。
当然、瑞穂と紘子の二人で揃って私を口説きに来たと言うことは、新プロジェクトもかなり手が
焼けるプロジェクトと言うことなのね。」
木村の答えを待っていたかのように、澤田が話し始めた。
「玲子、さすがに話が早いわ。その通りよ。兼務してもらいたい部署は、軍事医学研究所の所長なの。
そして、指揮を執ってもらいたいプロジェクトは、強化兵士開発プロジェクトなの。」
「ということは・・・。」
「その通り、今後起こる可能性が否定できない核戦争や化学戦争に備えるため、
火星に人類を移住させると同時に、地球の我が国土においても生き残れる国民とそれを守る兵士の二つの
サイボーグを開発していくことを平行して行うことを決定したわ。そして、二つを同時進行できる能力のある人間は、
玲子しかいないと判断したの。幸い、地上用サイボーグと特殊戦参加型サイボーグの開発研究と
火星探査・開発用サイボーグ、惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ以外のタイプのサイボーグアストロノーツの
開発研究にめどを付けて欲しいの。
ただし、玲子は、火星移民の指導者として、私と同じくサイボーグとしての改造手術を受けて火星に行くから、
終盤の指揮は、紘子と紀子がおうことになっているから、安心してちょうだい。」
木村は、何が安心なのかと心の中で思ったが、澤田の下した決断を実務でのサポートを引き受けるのは、
自分しかいないという使命感と澤田への信頼感の方が揺るぎなかったので、
「わかったわ、瑞穂。お引き受けします。」
もう、そう言うことしか頭の中にはなかったので、思った通りに答えた。
「ありがとう、玲子。」
澤田が、そう答えると、木村が、
「ところで、計画の中で、ラバーフィットスーツの兵士版や国民が核兵器や化学兵器で、
犠牲にならないようにするための簡易型の地上用ラバーフィットスーツの開発や
火星用簡易ラバーフィットスーツの開発も二つのプロジェクトの中で早急に行っていくことも変更ないのよね。」
「玲子。その通りよ。それも含めて、二つのプロジェクトの指揮。よろしくね。」
澤田にそう言われて、木村は、
「わかりました。」
と短く答えた。
こうして、この日から、二つのプロジェクトが、二つの部局で、木村の指示の元に動き始めたのであった。
今日はここまでにします。
この物語も終盤に来ています。
このあと新作も構想していますので、
ひとまずこの物語の完結まで付き合ってください。
うーむ、今回は男にはちょっときつめの話だな。
この世界の日本女性は強いね。
222 :
3の444:2005/10/19(水) 02:32:14 ID:wWFORWAU0
「さあ、 我が愛しのお姫様。 おうちに帰ろうか」
デパートの地下の駐車場。 父は、 おどけたようにそう言ってながら、 車のドアを開いて、 うやうやしく
私を招き入れようとした。 きっと、 コンタクトレンズを買うことができなかった私を気遣って、 笑わせてくれ
ようとしたんだ。
「今晩は何を作ろうかしら。 今日は、 いろいろ食材を買い込んだから、 何でも作れわよう。 裕子が好き
なタコ焼だって、 百個くらい作れちゃうわよう」
お母さんは、 おかしそうに笑いながらと、 どっさり食べ物の入った大きなビニール袋を後ろのトランク
に押し込んだ。
そして、 私達八木橋一家は、 何事もなく、いつものように車に乗り込んだ。
でも、 私は知っている。 このあと、 何が起きるか。 みんなが、 どうなっちゃうか、 私は知っている。
(駄目だ! 駄目だ! 駄目だ! この車に乗ったら駄目なんだ。 そうしたら、 私達は・・・私達は・・・)
でも、 私は、 後部座席に腰掛けて、 膨れっ面で窓の外を見るだけ。 コンタクトが買えなかったから
って、 それがなんだっていうのさ。 この車から降りようって、 みんなに言わなきゃいけないのに。 力ずく
でも車を止めなきゃいけないのに。 馬鹿、 馬鹿、 私の馬鹿。 どうして、 声が出せないんだよう。 身体
が動かせないんだよう。 ふてくされて駐車場の柱なんて見ている場合じゃないんだよう。
「あら、 いつまでも怒ってないで、 なんとかいいなさいよう」
お母さんが、 後ろを振り向いて笑う。
(違う、 怒っているんじゃないんだ。 声が出せないだけなんだ)
私の気持ちとは裏腹に、 車は滑るように軽快に走り始める。
そして・・・
そして・・・
223 :
3の444:2005/10/19(水) 02:33:22 ID:wWFORWAU0
私は、 弾けたように身体を起こした。 勢いよく起き上がったものだから、 ベッドのスプリングが軋ん
だ音をたてた。
まだ眼鏡をかけていない、 輪郭のぼやけた私の視界に入るのは、 病室の真っ白な壁、 壁際に置か
れた愛想のかけらもない角ばった灰色のコンピューター、 そして、 そこから伸びて、 私の寝ているシー
ツの中にもぐりこむ、 目が痛くなるくらい鮮やかな原色に塗られたコードの数々。
(夢、 だよね・・・)
夢の内容はいつも少しずつ違うけど、 結末は同じ。 私の夢の中で、 何回両親と隆太は死んだんだ
ろう。 いったい、 いつまで、 私はこの悪夢を見続けなければならないんだろう。
こんなふうに、 心を鋭いナイフで切り刻まれるような悪夢を見ても、 目が覚めるたびに寝汗がぐっち
ょり、 なんてことも、 心臓がどきどきする、 なんてことも、 もう、 ない。 昔の習慣でシーツを掛けて寝て
はいるけど、 ホントは、 こんなことする必要なんかない。 だって、 私が風邪を引くことなんて、 ありえな
いんだから。 あと5分、 あと5分とか言いながら、 体温でほかほか温まった布団にくるまってぬくぬく過ご
すようなことも、 できない。 今の私の肌は、 手の平とか、 ごくごく僅かな部分をぬかして、 布団の暖かさ
を感じ取れるようにはできていない。
私は、 シーツを蹴飛ばして足元のほうに追いやると、 両膝を身体のほうに引き寄せて、 ベッドの上
で体育座りの格好をした。 私の着ている真っ白で、 ぶかぶかの、 不恰好な入院服の裾や肩口から、
まるで私を操る操り糸みたいに、 たくさんのコードが伸びていて、 壁際の、 あのコンピューターに繋がっ
ていた。 あやつり糸。 はは。 その比喩はある意味正しいよ。 このコードのもうかたっぽは、 私の身体
のあちこちにある接続端子に繋がって、 身体中のありとあらゆるデータを吸い上げては、 コンピュータ
ーに送り込んでいるんだ。 今の私は人形だ。 機械に操られた人形みたいなものなんだ。
224 :
3の444:2005/10/19(水) 02:34:07 ID:wWFORWAU0
じぃっと自分の手の平を見つめた。 眼鏡をかけていない、 ぼやけた画像からでも分かる、 非の打ち
所のない白くて細くて長い指。 なんで、 私の手、 こんなにきれいなんだと思う? それはこの手が作り物
だからだよ。 手だけじゃない。 足も、 身体も、 手を見つめているこの目だって、 全部作り物。 今の私
に、 本当の私って言える部分は、 もう脳みそしか残されていないんだ。
私は交通事故に遭った。 一緒に車に乗っていた両親と弟は死んでしまった。
私だけは生き残った。 でも、 私は命と引き換えに、 脳みそ以外の全ての肉体を失ってしまった・・・。
私はベッドの傍らの小机の上に置いてある眼鏡をかけると、 軽くため息をつきながら、 全身の接続
端子に突き刺さっている検査用のケーブルを順繰りに引き抜いていく。 最後に、 壁のコンセントから、
義体の充電用のコンセントプラグを引き抜く。 右脇腹にある、 プラグを収納する小さなハッチの中にあ
るボタンを押すと、 コンセントプラグは掃除機よろしくしゅるしゅる軽快な音をたてて、 私の右脇腹に吸
い込まれていった。
そう、 私の義体は電気仕掛け。 体内のバッテリーの電力が切れると身体が動かなくなっちゃうから、
寝る前に充電する癖をつけておくように、 ケアサポーターのタマちゃんから、 口がすっぱくなるほど言わ
れている。
身体中を這い回っていたコードぐるぐる巻き地獄からようやく解放されたら、 今度は、 さっきの小机
の引き出しから、 白くくすんだ色のプラスチックの容器を取り出して、 中に入っているピンク色のカプセ
ルを一粒つまみ上げて、 口に放り込む。 ケアサポーターのタマちゃんは、 これを食事っていうけど、 で
も、 これは、 もう食事なんて言えないよね。 はっきりいって、 命をつなぐためのただの作業だよ。
ほかほか上がっている炊き立ての温かいご飯も、 狐色にこんがり焼きあがったトーストも、 今の私に
は必要じゃないし、 そもそも、 食べる機能さえない。 大体にして、 食べたところで味なんかもう分からな
い。 私に残ったわずかな生身の部分を生かすためには、 一日三回、 この栄養カプセルを飲み込むだ
けで充分。 機械仕掛けの身体は、 ごはんなんか食べなくても電気さえあればちゃーんと動いてくれる。
225 :
3の444:2005/10/19(水) 02:44:23 ID:wWFORWAU0
義体化手術から一ヶ月。 新しい機械の身体を操って元の身体と同じように動かせるようになるまでの
リハビリは苦しかったよ。 きつかったよ。 足がうまく動かないものだから、 何度も何度も転んで、 埃だら
けになった。 うまく動かない手を操って、 糸を結んだり、 解いたり、 左手で書いたみたいなへったくそな
字を何度も何度もノートが真っ黒になるまで書いたりした。 余りにも身体が思い通りに動かないものだか
ら、 ヒステリックに叫んだり、 タマちゃんに八つ当たりしちゃったりもした。
でも、 最近分かってきたこと。 本当に辛くて、 きついのは、 思い通りに身体が動かせないことじゃな
い。 身体なんて、 こうしてリハビリすれば、 前と同じように動くし、 走ったりすることだってできる。 本当
に辛いのは、 私の身体が季節の移ろいを肌で感じたり、 食べ物をたべて美味しいと思ったり、 花の匂
いをかいだり、 そうした、 人が当たり前のように持っている感覚を失ってしまったこと。 そして、 その感
覚は、 私がいくら頑張ってリハビリしても、 いくら私が望んでも、 もう二度と取り戻せないんだ。 義体な
んて、 見かけは人の身体そっくりでも、所詮は機械で、 生身の肉体とはとうてい比べ物にならない。
当たり前のことかもしれないけど、 私はようやくそのことに気がつきはじめていた。
私の頭の奥には、 脳と直結する形でサポートコンピューターっていう小さなコンピューターが入って
いる。 義体の受けた電気信号は、 ここで、 脳が受け取れるような情報に変換された上で、 脳に送ら
れているんだ。 でも、 サポートコンピューターの処理能力には限界がある。 人間の五感が感じ取る全
ての刺激を忠実に再現しようとしたら、 サポートコンピューターはパンクしちゃう。 だから、 視覚とか
聴覚とか、 触覚とか、 痛覚とか、 生きていくうえで絶対必要な、 最小限の感覚しか私には残されてい
ない。 味覚や、 嗅覚や、 それから温度感覚なんてものは、 義体として生きるうえでは、 さして重要では
ないと判断されて、 切り捨てられてしまった。
226 :
3の444:2005/10/19(水) 02:45:06 ID:wWFORWAU0
タマちゃんや、 吉澤センセイは、 私のことを人間だって言う。 ヒトの魂は脳に宿る。 だから、 例え身
体が全て機械になってしまったとしても、 私が人間であることには間違いないんだって言ってくれる。 で
も、 本当にそうだろうか? いくら脳みそがあるとはいえ、 人として持っていて当たり前の感覚を失ってし
まった分だけ、 私は人間から遠ざかって何か別のモノになっちゃったんじゃないだろうか? いつものよ
うに悪夢から目覚めて、 こうして朝の作業をする度に、 私はそう思ってしまうんだ。
227 :
3の444:2005/10/19(水) 02:47:20 ID:wWFORWAU0
今回のお題は「義体換装」
天からの贈り物に続く話です。全体でいう第二話目になります。
>manplusさん
鉄の女たちの伴侶の男たち哀れ!
サイボーグ少女ものには「勝手に体をいじくられる」という描写があったりしますが、
この話では最初の「自分の意志に関係なく」改造されてしまったヒトたちなので
ある意味鬼畜描写でしょうか(笑)
>3の444さん
ヤギモノ、いつも楽しみに愛読しています。
応援してます。
それと、なにげに「〜よう」という八木橋さんの語尾が好きです。w
お母さんもそういう話し方なんですね。
哀しい回想シーン(夢)だけど、なんかちょっと発見。
生身の時とそっくりな義体に、これから入る八木橋さん。
どんな感じなんでしょう。
231 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/20(木) 20:42:03 ID:uYQ/IZUS0
強く生きていて前回の話か…
強くいきてくれ…
232 :
3の444:2005/10/23(日) 03:02:46 ID:WbLm7BeA0
目覚めたところで、 リハビリのはじまる時間までは、 特に何もすることはない。 大抵は、 テレビをつ
けてベッドに寝そべりながらワイドショーを見る。 これが、 私の朝の時間の過ごし方。 一応、 病院の敷
地内ならどこに行こうが自由ってことになっているけど、 外に出ると「ああ、可哀想な義体の人がいる」っ
ていう視線を嫌でも感じることになるから、 私は用事がない限りは極力部屋に引きこもることにしてるん
だよね。
この日も、 いつものように、 天然ボケが売りの舌足らずな女性アナと、 どんなボケも冷静に受け流
すベテラン男性アナのやり取りをぼんやり眺めていた。 ニュースが一段落して、 本日の星座占いのコー
ナーをやっていた丁度その時だよ。 病室のドアが勢いよく開いて、 タマちゃんが飛び込むような勢いで
部屋に入ってきたんだ。 タマちゃんが、 ノックもなしに部屋に入ってくるなんて、 はじめてのことだ。
「八木橋さーん、 朗報でーす。 ろーほー」
よっぽど急いで駆けてきたんだろう。 タマちゃんの息、 弾んでる。
(朗報? 朗報っていい知らせのことだよね。 一体なんだろう)
キョトンとする私の前で、 タマちゃんは、 しばらくの間、 深呼吸を繰り返して息を整えたあと、 もった
いぶるように、 ゆっくりと口を開いた。
「八木橋さんの新しい義体、 こっちに届いたよ」
「え? ホント?」
私は思わず身を乗り出した。 もう、 芸能界のだれそれの熱愛発覚なんて下らないニュースは全く耳
に入らない。 私にとっては、 こっちのほうがよっぽど大ニュースだ。
身体ができた。 私の新しい身体ができた。
作り物の機械の身体かもしれないけど、 生身の頃の私そっくりの、 世界に一つしかない外見の新し
い身体ができた。
「ふふふ、 八木橋さん。 そんな明るい顔、 久しぶりに見せてくれたね。 やっぱり朝イチでお知らせしてよ
かったでーす」
タマちゃんは、 私の反応に満足そうにうなずいた。
233 :
3の444:2005/10/23(日) 03:04:08 ID:WbLm7BeA0
いつになったら私の身体ができるのか、 私は毎日のようにタマちゃんに聞いていたんだ。 だから、 タ
マちゃんは、 私が、 この日が来ることを、 どんなに待ち望んでいたか、 よーく知っている。 だからこそ、
できるだけ早く、 このことを私に知らせてくれようとして、 わざわざ病室まで走って来てくれたんだよね。
タマちゃん、 ありがとう。 本当にありがとう。 新しい身体ができたことも嬉しいし、 タマちゃんが、 私のた
めに一生懸命走ってくれたことも嬉しい。
今の私の外見は、 生身の頃の私とは全然違う。 もし、 今の私を友達とか高校の先生が見たとして
も、 あの、 陸上部のヤギーだって気付く人は誰一人いないだろう。
タマちゃんが教えてくれたんだけど、 義体になった人は、 本当なら、 生身の時の姿そっくりの義体に
入ることになってるんだって。 これは、 法律できちんと決められていることらしい。 だから、 綺麗な外見
の義体を用意して、 全く別人に変身する、 なんてことはできない。 せいぜいが、 太目の身体を多少細
身に作るとか、 胸を大きめにするとか、 黙認されるとしても、 その程度。 だから、 病気が原因で義体
化手術をする場合、 患者は手術前に自分の義体の外見を確認して、 承諾書にサインをすることになっ
ている。 手術後に、 こんなの私じゃない、 なんて言われてクレームになっても困るからだそうだ。
でも、 私みたいに事故とかで緊急に義体化手術が必要な場合には、 自分専用の義体ができるまで
待って、 患者が確認する、 なんて余裕はないから、 まず、 標準義体っていう病院に在庫として常に用
意されている出来合いの義体に入ることになるんだ。 そして、 自分専用の義体が出来上がるまでの
間、 しばらくは、 この仮の姿で我慢しなくちゃならないんだって。
234 :
3の444:2005/10/23(日) 03:05:02 ID:WbLm7BeA0
確かに、 標準義体の出来は悪くないよ。 胸は大きいし、 その割に腰はちゃーんとくびれていて、 ス
タイル抜群。 顔だって、 ちょっとしたアイドルなみ。 芸能人でいえば、 夢崎ひなたクラス。 ひょっとして、
友達が、 私のことを見たら羨ましがるかもしれないよ。 でもさ、 みんながみんな、 同じ顔、 同じスタイル
だったとしたら、 どう思う? イソジマ電工の義体カタログ写真で、 にっこり笑っている女の子も、 隣の病
室の佐々波さんも、 もちろん私だって、 本来は、 それぞれ違う心を持った別々の人間のはずなんだ。
なのに、 同じ標準義体を使っているから、 身長も体重もスリーサイズも、 顔立ちも、 何から何までぜー
んぶ同じ。 これじゃ、 まるで、 おもちゃ工場で大量生産された人形と一緒だ。 私だって、 昔は、 もっと
綺麗な顔に生まれたかった、 とか、 もっとスタイルがよければよかったのに、 とかいろいろ思ったりもし
たよ。 でも、 こんな形で夢が実現しても、 ちっとも嬉しくないよ。
もう一つ嫌なことがある。 この身体は、 イソジマ電工製のもっともありふれた女性型義体。 っていう
ことはつまり、 この病院で働いている人から見れば、 私が全身義体だってことは外見からバレバレなん
だ。
病室から、 私がいつも通っているリハビリセンターに辿りつくまでには、 義体科だけじゃなくて、 いろ
んな病棟を通り抜けなくちゃいけない。 だから、 他の科の看護婦さんとか、 お医者さんとも、す れ違っ
たりするんだけど、 みんな、 すれ違うたびに、 ちらっと私のほうを見るんだよね。 決して綺麗だって思っ
て私のことを見ているわけじゃない。 機械の身体ってどんなかなっていう単純な好奇心とか、 事故にあ
ってこんな身体になってしまって可哀想っていう哀れみの気持ちとか、私 じゃなくてよかったっていう安堵
と、 それと裏返しの優越感、 きっと、 そんなことを思いながら私のことを見ているんだよ。 そうに決まっ
てる。
235 :
3の444:2005/10/23(日) 03:15:56 ID:WbLm7BeA0
だから、 私は、 この身体が嫌い。 アイドル並みの容姿でなくても構わない。 胸なんか大きくなくてい
い。 昔の私の姿をした義体に一日でも早く入りたい。 たとえ、 似ているのは外見だけで、 中身は似ても
似つかない機械の塊だったとしても、 それでも、 このお人形さんよりはずーっと、 ずっとましだ。 新しい
自分だけの身体に入っちゃえば、 全身義体の哀れな女の子って言いたげな、 例の視線を浴びなくてす
むし、 ひそひそ話を背後に感じながら、 肩身の狭い思いをしてリハビリセンターに通う必要もない。 自
由に病院の中を歩き回っても、 義体科のセンセイやケアサポーターの人たちを抜かせば、 私の身体が
機械だなんて気がつく人はいない。 最高だ! 今日の占いでは、 射手座の運勢は最悪だったんだけど、
そんなことはもうどうでもよくなっちゃったよ。
「私の義体、 今どこにあるの。 見たい。 すぐにでも見てみたい!」
もうゴロ寝なんてしてられない。 私は、 飛び跳ねるようにベッドから降りた。
「第二診察室だって。 今、 吉澤先生が、 義体の調整をしているところ。 あ・・・ちょっと、 八木橋さん、 ど
こ行くの!」
タマちゃんの話なんか、 最後まで聞いていられない。 新しくて懐かしい自分の分身との対面に胸をは
ずませて、 私は廊下を駆け出した。
府南病院は、 広いうえに、 むやみやたらとエレベーターがあったり、 階段があったりで、 迷宮さなが
らに複雑な構造の大病院。 しかも、 どこもかしこも真っ白な壁で、 景色に特徴というものがない。 だか
ら、 慣れないうちは、 リハビリセンターから自分の病室に自力で戻ることができず、 迷ったりもした。 で
も一ヶ月もここにいれば、 流石に自分に関係ある施設くらいは、 どこにあるか完璧に把握しているつも
り。 ましてや、 義体科の第二診察室の場所は、 もう何度も行ってるから、迷 うはずもなく、最 短距離で
突っ走ることができる。 久しぶりに会う恋人の姿をホームの端っこに認めて、 彼に向かって一目散に駆
け出すときって、 きっとこんな気分だろう。
236 :
3の444:2005/10/23(日) 03:16:45 ID:WbLm7BeA0
この時間は、 待合室には誰もいない。 突然現れた私に向かって、 何か言いたげな受付の女の子を
わざと無視して、 そのまま待合室を突き抜けて、 一気に第二診察室の観音開きのいかにも重そうな鉄
製の扉の前まで行ってしまう。
(この部屋の中に、 私の新しい身体があるんだ)
そう思ったら興奮して力の調節がうまくできなくって、 なんだか借金取りが居留守を決め込んでいる
家を追い込むときみたいに、 荒々しい強い調子で、 ノックしてしまう。
しばらくして、 ドアがごろごろ重そうな音を立てて開いた。
顔を出したのは、私の予想通り、 私の担当医の吉澤センセイだったけど、 センセイの反応は、 私の
予想と違ってた。
「や、 八木橋さん! や、 僕は、 てっきりタマかと思った・・・」
センセイは、 目の前に立っているのが私だと分かると、 まんまるの目を白黒させて、 そう言ったっき
り絶句。 でも、 もっと驚いたのは、 センセイじゃなくて、 私だ。 センセイが、 両手で大切そうに抱えてい
るそれって、 私の、 私の・・・
(生首じゃないか!)
「あ・・・あ・・・」
生じゃないでしょって脳内突っ込みをする余裕すらなく、 私は酸欠状態の金魚みたいに、 口を無意
味にぱくぱくさせながら後ずさりする。 すぐ足がついていかなくなって、そ の場にぺたりとへたり込んでし
まう。 余りの薄気味悪さに、 背中から恐怖が毛虫みたいにぞわぞわ這い登ってきて、 私の頭をかき回
す。
「嫌―――――――っっ!!」
義体科に響き渡る私の悲鳴。
自分の首を見る破目になるなんて、 やっぱり、 今日の運勢は最悪だ。
237 :
3の444:2005/10/23(日) 03:18:43 ID:WbLm7BeA0
今日はここまで。
自分そっくりの義体と対面するというのは、いかにも義体ならではって
シチュで、私的には萌えシーンです。
確かに、自分そっくりの生首があったら怖いですね。
それを誰かが抱えているなんてのは、尚更・・・
世にも奇妙な物語ですな。
1Y540D00H00M00S。
火星上では、私と未来が順調に探査活動をこなして、ベース基地に帰還した。
私と未来の体内の記録保存用大容量ハードディスクには、もの凄い量の火星のデータが蓄積されていった。
それでも、記憶容量のほんの僅かな領域にデータが蓄積されているに過ぎないのである。
空き容量がまだまだある状態なのであった。私たちの体内に搭載されたハードディスクの容量には
半ばあきれてしまうものがあった。
私と未来が、ベース基地のエアロックでクリーンシャワーを浴びて、居住エリアに戻った。
久しぶりの我が家といった感じであった。
「お帰りなさい。待っていたわ。長期探査旅行の成功おめでとう。」
みさきが祝福で迎えてくれる。
「帰って早々、お決まりなんだけど、はるかと未来は、火星探査・開発用サイボーグ用メンテナンスチェアに
入って、サイボーグ体のチェックとメンテナンスを受けてください。」
みさきの指示がとんだ。私と未来はそれに従って、火星探査・開発用サイボーグ用メンテナンスチェアに入り、
サイボーグ体を固定した。これから24時間は、動く自由を完全に剥奪された上で、
サイボーグ体の徹底的なチェックとメンテナンスが行われるのである。私たちは、その間、
半覚醒状態におかれた上で、機械的なチェック作業が繰り返されるため、私たちにとって辛く厳しい時間を
過ごすことになる。そして、その辛い24時間が終了し、24時間のレストモードによる休息が与えられた。
私と未来は、24時間という時間通りに意識が睡眠状態に入り、24時間経過後、機械的にアクティブモードに
移行して覚醒状態となったのであった。
「おはよう、お目覚めはいかがかしら。今日は、地球から、重要な通信が入るから、そのまま、覚醒状態で、
メンテナンスチェアに待機しているようにと、宇宙開発事業局のコントロールルームから、指示が入っています。」
「みさき、わかったわ、この状態で待機します。」
私がそう言い終わると、地球からの通信映像と音声が、私たちの体内に入ってきた。
人工眼球内に木村局長のシルエットのラバーフィットスーツが映った。
そして、その横に、薄い紫色のラバーフィットスーツを装着された人物が現れた。
見慣れない色のラバーフィットスーツの人物の声が聞こえてきた。
「首相の澤田です。火星上で任務遂行中の3名のサイボーグアストロノーツの皆さん。
任務は順調に遂行されているようですね。私は、とても嬉しく思っています。」
その声は、紛れもなく、瑞穂さんの声だった。そうである、首相の澤田瑞穂女史の声であった。
私たちがいないあいだの地球で何が起こったのであろう。
国家元首がラバーフィットスーツを装着するなんていう状況は何なのだろうかと真剣に悩んでいると、
瑞穂さんの明るい声が聞こえてきた。そして、その説明で重大な情報の全てを聞くこととなった。
「みんなは、私がラバーフィットスーツを装着していることを不思議に思っているのでしようね。
実は、3人が火星に飛び立ってから、火星植民地化計画が前倒しで進められることになりました。
そして、今後、起こる可能性の高い、我が国が巻き込まれるような規模の核戦争や化学戦争に備えて、
地球上の我が国の戦争に備えた対策として、サイボーグ兵士の製造と重要人物の核、
化学戦対策用防護型ラバーフィットスーツの装着、国民への簡易型ラバーフィットスーツの有償装着計画が
実行されると同時に、火星への移民の早期実現を図ることに火星植民地化計画の最終目標が
変更になったのです。その中で、私が、火星の初代最高統治官として、赴任する予定になっています。
そして、火星に統治官として移民する全ての人間が、火星定住型サイボーグへの改造処置を
受けることになったのです。そして、もちろん、移民希望の国民は、ラバーフィットスーツ装着か
サイボーグへの改造処置を受けることになるのです。そして、我が国の国民は、火星と地球上で生き残りの道を
探ると同時に、新天地の火星から、さらに遠い惑星の植民地化計画を推進することが決定されたのです。
私は、その前段階として、ラバーフィットスーツを装着して、次の段階の処置への準備をはかることになったのです。」
私たちがいない間に火星への進出計画がかなりのペースアップが図られていることに
私たち火星の3人のサイボーグアストロノーツたちは、驚きを隠せなかった。
瑞穂さんの言葉はさらに続いた。
「そして、火星植民地化計画のプロジェクトが加速したことで、3人が火星にいる間に第2次火星探査チームが
到着することになると思います。火星での探査に空白を作らないようにするためです。」
木村局長が澤田首相の後をついで説明してくれた。
「皆さん、木村です。今、澤田首相がお話しされたように我が国のサイボーグ計画と火星進出計画が加速度的に
早い展開になっています。その為、本来は、3人が地球に帰還後、火星探査の引き継ぎを
第2次火星探査チームと行い、第2次火星探査チームを火星に送り込む予定を前倒しに行う予定です。
順調にいけば、皆さんが火星を飛び立ち、地球に帰還する120日前までに第2次火星探査チームが到着して、
火星上で任務の引き継ぎを行うことになると思います。
それまで、故障の無いように、注意を払って行動してください。3人の持って帰ってくるデータを心待ちにしています。
頑張ってください。」
そう言って、地球からの映像が終わった。
私たちは、暫し、事態の把握に時間を要した。第2次火星探査チームの到着が早まる。火星への移民、
軍事目的のサイボーグ手術等、私たちの想像を超えた計画が動き出したのであった。
それでも、私たちの集めて、体内のデータ蓄積用大容量ハードディスクに蓄積した貴重なデータや探査の際に
採取した多くのサンプルが、重要さをましていくことになるのであった。
つまりは、私と未来それにみさきが、第1次火星探査の残された期間を完璧に
こなしていかなければならないことに変わりはなかったのであった。
地球での事態が、どうなっているのかは、私たちが地球に帰ってから、詳しく知ればいいことなのであった。
私たちは、今度は、430日の日数を費やし、火星の赤道上を火星の裏側に向けて、探査すると同時に、
火星のオリビア山やバボニス山といった山への登山探査、マリネリス渓谷の完全探査を行うための
探査旅行への出発に向けての準備に取りかかった。
1Y510D00H00M00S。
私たちは、今度は、430日にも及ぶ、大探査旅行に出発したのであった。
今度も大がかりな探査旅行であり、未来と二人で協力し合いながらでなければ、
成功しないほどの困難な探査旅行であるはずであったのである。
「みさき、行ってくるね。留守は頼んだよ。」
「任せてちょうだい。二人とも、無理はしちゃだめだよ。壊れちゃったら、元も子もないんだからね。
私たちには、サイボーグ体の修理に使っている時間は与えられていないんだからね。
特に、プロジェクト全体の予定が大幅にスピードアップされたから、第2次探査チームが来るまでにしておかないと
いけないことが山のようになったんだからね。気を付けてくれなかったら、消化しきれないことになるわ。」
みさきの言葉は優しくも手厳しいものだった。
「わかっています。無茶はしません。安全に気を遣い、必ず無事に帰ってまいります。」
私がそう言って、未来と二人で、探査旅行に出発したのであった。
そのころ、地球では、第2次火星探査チームの選抜が行われると同時に第一次火星開発チーム、
第2次火星開発チームの選抜が行われていた。
「第2次火星探査チームのメンバーには、神保はるみ少佐、進藤ルミ中佐、大谷直樹少佐の3名を指名します。
3名のサイボーグアストロノーツとしての改造種別ですが、惑星探査宇宙船操縦用サイボーグとして
大谷直樹少佐、火星探査・開発用サイボーグに進藤ルミ中佐、神保はるみ少佐を決定しました。
第2次火星探査チームのリーダーは、神保はるみ少佐にお願いします。」
ブリーフィングルームに集められたラバーフィットスーツを装着されいつでもサイボーグへの改造手術に
望めるようになっているサイボーグアストロノーツの候補者たち、そして、サイボーグアストロノーツに
改造されるためのリストにリストアップされている職員、技術者、医療技術者、それに宇宙飛行士に対し、
木村が火星植民地化プロジェクトへの正式参加の為、そして、火星への旅立ちの準備としての
サイボーグ改造手術処置の被験者を指名していたのであった。
木村は続けた。
「そして、火星植民地化プロジェクトが、前倒しのスケジュールで実行されていくことが決まりました。
我が国の火星でのコロニーをいち早く造り、火星での我が国の優位性を早期に確立するためです。
火星のコロニーに移住する指導者は、どの様な過酷な状況でも生き残ることが出来るように、
火星定住型サイボーグへの手術を受けた上で火星へ旅立つことになる予定です。
そして、コロニーの住民も火星定住用の最新型ラバーフィットスーツを装着させて送り込む予定です。
その為、第2次火星探査チームに続いて、火星での指導者としても活躍してもらうことも視野に入れた上で、
火星のコロニーへの開発のための第1次火星開発チームも第1次火星探査チームが帰還すると同時に
送り込むことになると思います。そして、第1次火星探査チームが持ち帰ったデータの分析を早期に完了した上で、
第2次火星開発チーム、第1次火星移住部隊を火星に送り込むことが決定されました。
そこで、第1次、第2次の開発チームのメンバーもここで同時に指名し、第2次火星探査チームのメンバーの
サイボーグアストロノーツへのサイボーグ改造手術が完了すると同時にサイボーグアストロノーツへの改造手術を
行うことになりました。その上で、地球上や月面でのサイボーグ体の慣熟訓練の期間を多く取る事になったのです。」
そして、木村が、第1次、第2次火星開発チームのメンバーの指名を始めた。
「それでは、第1次火星開発チームのメンバーを発表します。如月えりか少佐、山田クリス中尉、沢田美花大尉、
三上絵里少尉、清水隆少尉、水谷美雪ドクター、長井詩織ドクター、前川渚職員、田中沙央理職員、
田島博職員の10名を火星探査・開発用サイボーグとして、南マリヤ中尉を惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ
として火星に送り込みます。チームのリーダーは、如月えりか少佐にお願いします。」
第1次火星開発チームから、惑星探査宇宙船の大型化が図られるため、
積み荷である火星探査・開発用サイボーグも多く積み込むことが出来るのであった。
木村はさらに続けた。
「つぎに第2次火星開発チームメンバーの発表をします。結城ミチル中佐、坂田満中尉、佐久本夕紀中尉、
木下はつみ中尉、木内真美中尉、高井望ドクター、水谷美衣ドクター、高橋萌大尉、守口宏美中尉、
高橋まりな職員の10名を火星探査・開発用サイボーグとして、西谷亜里砂中尉を
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグとして火星に送り込む予定です。
このチームのリーダーを、結城ミチル中佐にお願いします。そして、今、発表した23名のメンバーは、
今からすぐに、第2次火星探査チームから、順次、サイボーグアストロノーツになる為の改造手術の処置を
受けてもらいます。
そして、今後は、ここにいる全ての人間が、今、発表した25名のメンバーに何かが起こった時の控えとなります。」
木村は、そこまで一気に言ってから、一呼吸置いてさらに話をした。
「それから、今回、惑星探査船を月の周回軌道上で、3隻造るため、その作業のため、
田中美晴大尉を含めて12名のアストロノーツと富田まつり主任を含む12名の宇宙機材技術者を
宇宙空間作業用サイボーグとしてのサイボーグアストロノーツへのサイボーグ改造手術の処置を
受けてもらうことになります。宇宙空間での惑星探査宇宙船建造の作業の効率性を高めるためです。
この24名に関しても、すぐにサイボーグ手術の処置にはいってもらいます。」
木村の言葉を長田が受けて、
「それでは、神保はるみ少佐、進藤ルミ中佐、大谷直樹少佐の3名は、サイボーグ手術処置室へ移動してください。
すぐにサイボーグアストロノーツへのサイボーグ改造手術を開始します。
また、田中美晴大尉を含めて12名のアストロノーツと富田まつり主任を含む12名の宇宙機材技術者を
宇宙空間作業用サイボーグとしてのサイボーグアストロノーツへのサイボーグ改造手術の処置もすぐに
おこなうようになります。田中美晴大尉と富田まつり主任もサイボーグ手術処置室へすぐに移動してください。
そして、今指名された残りのメンバーは、サイボーグ手術被験者準備室の居住エリアに移動してもらいます。
そこで、サイボーグ手術の処置開始の日まで暮らしてもらうことになります。それでは、解散します。」
長田の言葉で解散したサイボーグアストロノーツの候補者の中で、神保はるみ、進藤ルミ、大谷直樹、
田中美晴と富田まつりの5名が、サイボーグ手術の処置室に誘導されていった。
これから、二度と人間の姿に戻ることの出来ない身体にされるために、機械に支配された人間となるために
処置室に移動していくのであった。
過酷な手術を何回も何回も受け続けて、3週間以内に彼女たちは、全く生身の人間と違った新しい身体になることに
なるのであった。
特に、大谷は、男性被験者として始めて惑星探査宇宙船操縦用サイボーグに改造されるのであった。
彼は、男性としての性器を失ったうえ、手脚のない全く違った生き物になるのであった。
大谷にとって、性器を失ったことに匹敵する精神へのショックを乗り越えることになるのであった。
1Y540D00H00M00S。
地球上に新に5名の宇宙人、サイボーグアストロノーツが誕生した。
その中で、大谷直樹は、手脚を除去され、電子機器がほとんどの身体の部分を占める処置に耐え抜いた。
精神的に、男性器を失い、手脚を失うという屈辱的な処置に耐え抜いたのであった。
そして、残りの4名と共に人間として残された部分がほとんど無い身体に慣れるための慣熟訓練に入っていった。
田中美晴と富田まつりの2名は、宇宙空間の無重量空間での作業に適した身体に変わっていた。
脚を取り外され、背中と脚があった後の付け根に姿勢制御用及び、推進用イオンロケットエンジンが
取り付けられており、手も本来の物が取り去られ、その代わりに、宇宙空間での細かい作業に適したマニピュレーターに
取り替えられていた。しかも、マニピュレーターは、多くの作業を同時にこなせるように左右2本ずつ合計4本の
マニピュレーターがついているという姿になっていた。
そして、身体を覆う人工皮膚は、太陽電池パネルを兼ねたラバーメタルスキンになっており、
白いゴム質の皮膚になっていた。
そして、ゴーグル状のどんなに暗い環境下でも小さいものから遠くまで見ることが出来る人工眼球になっていた。
聴覚は、宇宙空間での作業を中心に考えられたサイボーグアストロノーツのため、
コミュニケーションサポートシステムのみの仕様になっていた。
大谷と同様に専用の移動用台車でサポートヘルパーによって訓練エリアに運ばれていった。
大谷と田中、富田は、もう永久に地球上では、自分で何も動くことが出来ないようになってしまったのであった。
田中と富田に取り付けられたマニピュレーターはデリケートなものなので、地球上では、
使用できないようになっているからである。
ただし、大谷と田中、富田の違いは、大谷が、何らかの生命維持システムと接続されているか、
定期的に生命維持システムに接続されないと生命維持が出来ないのに対し、田中、富田が改造された
宇宙空間作業用サイボーグのタイプは、火星探査・開発用サイボーグと同様に、
完全に環境から自立している点であった。
彼女たちは、自分たちが任務の遂行のため、必要とされるまで、訓練エリアで、過酷な慣熟訓練を消化して、
サイボーグアストロノーツとして目的に応じたサイボーグ体の使い方に慣れる事になるのであった。
そして、5名のサイボーグアストロノーツが、サイボーグ改造手術処置室を再び生まれつきの生身の身体に
戻ることが出来ない機械部品と電子機器がほとんど全ての身体になって出て行くと同時に、
第1次火星開発チームの11名と宇宙空間作業用サイボーグとしての改造を待つメンバーのうち合計11名の
アストロノーツと宇宙機材技術者の合計22名が、サイボーグ改造手術処置室に入って、
サイボーグアストロノーツに改造手術処置を受けることになった。この中には、如月えりかの姿もあった。
彼女は、火星にいる如月はるかと共に、サイボーグアストロノーツの姉妹となるのであった。
如月えりかたち11名は、初期型火星探査・開発用サイボーグを、より火星に適応するように改良を加え、
探査目的ではなく、火星に植民地を作るための開発作業に重点をおいた二次型火星探査・開発用サイボーグであった。
えりかは、サイボーグアストロノーツ改造手術用処置台に固定されていた。
苦しい思いをして装着されたラバーフィットスーツは、既に脱がされて、ラバーフィットスーツを装着されるために
処置を受けた身体で全裸のまま横たえられていた。
ラバーフィットスーツを着るために調整されてオリジナルの人体とは少し違ってしまった自分自身の身体を
モニター越しに眺めながめていた。
えりかの身体には、髪の毛もなければ、体毛も全て無く、毛根が完全に無くなっていて、
まるでセルロイドの人形を見ているようであった。そして、足や手の指先に目を移すと、そこには、
爪というものがなかった。体毛の除去と併せて、爪も化学処理により、
二度と生えてこないようにされているのであった。ラバーフィットスーツを着ていると手先の部分は、
爪の役割をするものが、ラバーフィットスーツ自体についているので、違和感が無く過ごしてきたのだが、こうして、
ラバーフィットスーツを脱がされてみると、あるべきところにあるものがないのは、可笑しいものだと思えてしまう。
もちろん、ラバーフィットスーツを装着されるために変更を加えられた身体の箇所は数多くある。
性器だって、カバーがされて、使うことも出来なければ、性感を感じることも出来なかったし、呼吸器官には、
呼吸液が充填され、大気を呼吸することは永久に不可能な状態になっているし、目だって、特殊なゴーグルを
取り付けられ、呼吸液が循環するようになっていて、涙腺を除去されてしまい、泣くことだって出来なければ、
瞬きも出来ない。
他にだって、耳も、口も何もかもが、ラバーフィットスーツを装着されるためだけに変更されていた。
このような状態も立派なサイボーグ体ではないのだろうかとえりかは思った。
そして、今、火星で自分よりももっと人間とはかけ離れた姿になって活動を続けている姉のはるかも、
同じような状況下に置かれていたことがあることを考え、彼女はどの様な感情を抱いて、
サイボーグアストロノーツになる前の準備段階を過ごし、ラバーフィットスーツを脱がされた身体を
見つめていたのだろうかと思った。きっと、自分のように、この不自然な身体を悲しみと違和感で
見つめていたのだろうと思った。
そんなことを考えているうちに、えりかの火星探査・開発用サイボーグへの手術の開始の時が来たのであった。
サポートヘルパーの今井あずみが、やってきて、声をかけた。
「如月少佐、サイボーグ手術の開始時間になります。執刀医をご紹介します。柏田真純ドクターと
蓮実玲ドクターです。」
白いラバーフィットスーツを装着されている今井の横に薄い桃色のラバーフィットスーツを
装着されている医療スタッフの柏田真純と薄い黄色のラバーフィットスーツを装着された技術スタッフの
蓮実玲の二人が立っていた。
「如月少佐。卵子採取作業も終了し、いよいよ、生まれながらの肉体と別れを告げないといけない時がきました。
みんなに言われたと思いますが、覚悟を決められていますね。」
柏田に問いかけられ、えりかは、短く、
「覚悟はとうにしています。」
とだけ答えた。
「わかりました。それでは執刀を開始します。」
今度は蓮実がしゃべってきた。
えりかは、姉のはるかが、火星探査・開発用サイボーグになったときから、いつでも、
姉妹そろってサイボーグアストロノーツになることを覚悟していたのである。
そのため、今更、覚悟を決めるということはなかったのであった。
えりかのサイボーグアストロノーツへの手術は、まず、骨格が金属置換システムで複合金属が主成分の骨に
された。そして、内臓器官の改造手術は、呼吸器官の改造手術から始められた。
彼女のオリジナルである生体の肺や心臓が、取り除かれて、液体循環式ガス交換型内臓人工心肺システムと
静穏型高性能ロータリーポンプ式人工心臓へ取り替えられた。姉のはるかに使用された人工器官よりもはるかに
改良されたシステムになっていて、酸素発生システムと二酸化炭素処理装置の互換性が高められ、
ガス交換システムが大幅に小型化されていた。続いて、消化器官が機械化された。内蔵システムは、
液体栄養を人工血管を通して残された生体部分や生体ベースの改造が行われている器官に送るシステムと
老廃物の除去システム、機械部分へのエネルギー搬送システムがコンパクトに収められた。視覚システムは、
火星での微弱な光でもよりよく視覚を確保できるように改良され、地球への帰還を想定していないこともあり、
火星で活動中の火星探査・開発用サイボーグに使われたものよりも遙かに高性能になっていた。
しかし、地球上の光度においては、人工眼球に光線シールドを貼り付けておく必要があった。
えりかの視覚システムは、火星専用に作り替えられた結果、地球上の光線下では、明るすぎて視覚システムが
使い物にならないのであった。
もう、地球上では、光線シールドを貼り付けた状態でないとものを見ることが出来なくなってしまっていた。
また、第1次火星探査チームの火星探査・開発用サイボーグに内蔵されている大容量記録用ハードディスクは、
データを持ち帰る必要がないので、大幅に小型化されていた。
その代わり、全てのシステムが小型化されたために生まれた空間に、人工筋肉や骨格をより超人的に
動かすことの出来るようにするための補助動力炉や動作サポートシステムが納められると共に、
火星上の二酸化炭素をエネルギーに転換するためのシステムの増強がはかられた。
また、火星での植民地のリーダーとして植民者を統率していくのに必要なシステムが内蔵されたのである。
そして、バックパックが、少し小型化されると共に、フロントパックが不要になったのであった。
そして、第1次火星探査チーム及び、第2次火星探査チームとして改造手術により生まれた
火星探査・開発用サイボーグと区別がつくように改良型火星探査・開発用サイボーグの
太陽光エネルギー蓄積パネル内蔵の人工皮膚の色が、濃紺に変更されていた。
ある意味では、より、サイボーグらしい身体になったといえるであろう。
えりかは、25日間に渡って生まれたままの肉体から、機械と電子機器がほとんどをしめる最新型の
火星探査・開発用サイボーグへと変わり続けていった。
えりかは、自分が変化していく一部始終を自分の視覚によって見ていなければならず、自分の身体が、
機械部品と電子機器のかたまりになっていくことを強烈に認識せざるを得なかったのである。
えりかは、その一部始終において、自分の姉であるはるかはどの様に思ったのだろうと考えながら、
自分を客観的に観察することが出来たのであった。
そして、自分が火星人として、完成品となった時、自分の身体がどのように変わったのか実際に慣熟訓練を
受けるのが待ち遠しいとさえ思ったのであった。
そして、最新型の火星探査・開発用サイボーグへのサイボーグアストロノーツ改造手術処置が完了し、
慣熟訓練のため、火星標準環境室に移動することになったのであった。
もう、地球に戻れることのないミッションの始まりであった。
えりかをはじめとした第一次火星開発チームの11名のメンバーと宇宙空間作業用サイボーグに
改造手術処置を受けた11名の合計22名の改造手術処置が終わると、次は、第2次火星開発チームの
被験者11名と宇宙空間作業用サイボーグの被験者の残り11名の合計22名が、
サイボーグアストロノーツとしての改造手術処置を受けたのであった。
これで、実際に火星にいるサイボーグアストロノーツと模擬環境で火星生活のシミュレーションを
行っているサイボーグアストロノーツと併せて、55名が、サイボーグアストロノーツに
改造されたことになったのであった。
今日はここまでにしておきます。
ついにえりかまでサイボーグにしてしまいました。
サイボーグになった人間が増えてきてしまいました。
サイボーグ化の手術の描写がしつこいかもしれませんが、
私も、手術のシーンに萌えるものですから、
この部分のフェチなので個人の好みとして許してやってください。
3の444様
確かに、自分の生首を見たら、誰もびっくり状態ですよね。
それから、次回の作品は、ヤギーが、特殊環境の作業用の
サイボーグと対面する作品を期待します。
個人的リクエストということで・・・。
腕や脚の数が生身より多かったりするのって、脳がコントロールできるもんなんだろうか…。
奇形とかで腕や脚が多い人がそれなりにコントロールできたりするのは、そういう風に脳が育つからだろうし。
(生まれつき腕脚が無い人でも幻肢現象が起きたりするので、ボディーイメージそのものは生まれたときから「腕2本、脚2本」で脳に刻まれているみたいだけど)
突然腕脚が増えても一応コントロールできたとしても、脳に与える影響とかいろいろ難しい問題はありそう。
「奇形で脚の多い人でも脳に問題は見られないが、悪影響がない証拠がないからそういうサイボーグを作るのは禁止」とかいう規制があったりしそう。
腕が4本のかわりに脚が無くて体が固定されている(脳には2本が腕、2本が脚として神経接続されている)とか、
腕4本、タイヤ2本で、腕の2本とタイヤ2本が切り替え式で脚として接続されてたりとか、
そういう形だと萌え。
下半身がキャタピラとか、人魚とか、そういう生身を逸脱した形状・機能の義体が、どんな風に脳に接続されていて
どんな感覚でコントロールしているのか想像するのって萌え。
ついでに、下半身がキャタピラとかタイヤとかに改造されて、うまく操れなくて「リハビリ訓練」してるサイボーグ娘って萌え。
お魚くわえたドラ猫を激しくドリフトしながら追いかける4輪サイボーグ娘。
257 :
名無しさん@ピンキー:2005/10/27(木) 22:43:03 ID:odlPdn+r0
>>255 なんか階段かなんかで虐めたい。
でも、マンコはどこに消えるのだろうか?それを考えるとつまんね。
>>257 どこかについてるんでない?
どこについてんのか考えるのがもまいさんの妄想の出番だというに。
259 :
3の444:2005/10/28(金) 21:06:36 ID:CxeDZ+rv0
「ありゃ、 間に合わなかったか・・・」
ようやく私に追いついたタマちゃんは、 私の首を抱えて唖然としている吉澤センセイと、 床にへた
りこんで、 がくがく震えてる私を交互に見つめて、 舌を出して苦笑い。
「まだ、 義体の調整中だから、 あとで見に行きましょうって言おうとしたのに、 まさか、 いきなり駆け
出すなんて・・・。 八木橋さん、 よっぽど楽しみにしてたんだね」
タマちゃんはそう言いながら私の横にしゃがんで、 震える私の背中をそっと優しく撫でてくれる。
タマちゃんが言うことには、 全身義体は女性用の小さめのものでも、 重さがぜんぶで120kgくらい
あるから、 そのまんまだと重すぎて運ぶのには不便。 だから、 運びやすいように、 手とか足とかを
分解した状態で届けて、 病院で組み立てるんだそうだ。
でも、 そんなこと何も知らなかった私は、 のこのこ義体診察室に入って、 自分自身のスプラッタ
ーショーを見せ付けられる破目になったってわけ。 興奮して、 人の話を最後まで聞かないで勝手に
走っていった私が悪いんだけど、 楽しみにしていた自分との再会が、 こんな形になっちゃうなんて、
ショックだった。 お前はもう人間じゃないんだ。 調子に乗るなよって、 うわついた心を神様に釘さされ
たような気がしたんだ。
だから、 午前中のリハビリトレーニングが終わったあとで、 たまたま廊下ですれ違った吉澤セン
セイから、 義体の組み立てが終わったって聞いた時も、 私は、 はっきり言って見に行きたくはなかっ
た。 どうしても、 さっきの自分の生首の、 まるで死体みたいに生気のかけらもなく虚ろに開かれた眼
を思い浮かべちゃうからね。 でも、 義体換装するときには、 本人のチェックが絶対必要なんだって。
義体をしっかり見たうえで、 これで問題ないですって直筆でサインしなきゃいけないんだって。 だか
ら、 しょうがない。 私は嫌々、 タマちゃんに引きずられるように、 義体診察室に向かったんだ。
260 :
3の444:2005/10/28(金) 21:07:31 ID:CxeDZ+rv0
「八木橋さん。 もう、 ちゃーんと組み立て終わってるから大丈夫。 そんなに恐がらないで」
タマちゃんは、 まるでお化け屋敷に入るのを恐がる子供みたいに怯えて、 診察室の入り口で立
ち尽くしている私の手を引っ張って、 診察台に導く。
タマちゃんの言うとおり、 診察台には、 私自身が生まれたまんまの姿で横たわっていた。 私の形
容は間違ってないよ。 確かに、 この身体、 生まれたてのほやほや。 もっとも、 お母さんのお腹の中
からじゃなくて、 イソジマ電工の工場から生まれたんだけどさ。 はは。
生まれたまんまの姿って言っても、 やっぱり生身の身体そっくりとはいかない。 まるで天蓋つきの
ベッドみたいな診察台の、 ちょうど天蓋にあたる部分に、 大きな機械が置いてあって、 その機械か
らコードが何本も、 弦草みたいにぶら下がって義体のあちこちに接続されているし、 身体だって手と
いい足といい、 首の部分といい、 継ぎ目だらけで、 本当に人形みたいだ。
でも、 作り物の身体だったとしても、 自分の裸を他人に見られるのは恥ずかしい。 それが、 たと
えケアサポーターのタマちゃんだったとしても。
「恥ずかしいから、 服着せてあげてよう」
「気持ちはよーく分かります。 でも、 このあと、 継ぎ目を消すための皮膚のコーティング作業がある
から、 服なんか着せたら作業の邪魔になっちゃうの。 我慢してね」
そういうことなら仕方がない。 ちょっと恥ずかしいけど人形じみた身体のままよりは、 はるかにま
しだもんね。
「もっと、 近づいて、 顔、 よくみてごらん」
タマちゃんが、 そっと私の背中を押した。
(私の義体、 どんな顔してるんだろう。 さっきは、 恐くてほとんど見れなかったけど、 ちゃーんと、 私
そっくりにできているんだろうか?)
私は、 期待と不安がないまぜになったような、 複雑な気持ちで診察台に近づいた。
261 :
3の444:2005/10/28(金) 21:08:58 ID:CxeDZ+rv0
私が眠ってる。
寝返り一つうたないけど、 息だってしていないけど、 でも、 眠っているようにしかみえない。 ほん
のりと赤味のさした、 いかにも健康そうな、 つやつやした肌。 まるで、 白雪姫に出てくる毒りんごを
食べて、 永遠に眠らされてしまったかのような、 静かな寝顔。 カッコイイ王子様のキスじゃなくて、
110Vの家庭用電源で目覚める身体なのかもしれないけど、それでも、 魂のないただの人形だなん
て、 とても信じられない。 鏡で見慣れた私の顔そのものじゃないか。
今、 私の使っている標準義体の出来を考えれば、 イソジマ電工が高い技術力を持っていること
は、 分かってたはず。 でも、 目の前にある、 義体の出来は私の想像を超えていた。 確かに、 標準
義体と同じように、 身体のあちこちに、 コンピューターなんかと繋ぐための端子があるよ。 組み立て
が終わったばかりで、 皮膚のコーティングはまだだから、 肌の継ぎ目だって目立つよ。 それは、 義
体だもん、 ある程度はしょうがないよね。 でも、 顔とか体つきは、 もとの生身の身体そのまんま。 ち
ゃーんと服を着さえすれば、 昔の私と瓜二つのに見えるはず。 もしも、 私に生身の身体があって、
この義体と一緒に並んだとしたら、 おじいちゃんだって、 きっと、どっちが本当の私か区別つかないよ。
(これなら、 友達をごまかせるかも・・・)
どんなに外見がそっくりだったとしても、 結局この身体は機械仕掛けのお人形。 ただの私の魂の
入れ物にすぎない。 暖かい生身の身体は二度と私の手には戻ってこない。 分かってる。 そんなこ
と、 分かってるよ。
でも、 この身体なら、 黙っていれば学校のみんなに義体だってバレないんじゃないだろうか。 事
故にあって、 大怪我をしたけど、 ちゃーんと治療して、 怪我も元通り完治しました。 そういえば、 き
っとみんな信じてくれるんじゃないだろうか。 私はそう思った。
自分に嘘をついて、 みんなに嘘をついて生きることになるのかもしれない。 でも、 それでかまわ
ないよ。 自分の身体が機械になっちゃった、 なんて言う勇気、 私にはないもの・・・。
262 :
3の444:2005/10/28(金) 21:18:31 ID:CxeDZ+rv0
「八木橋さん、 どうかしたの? 義体、 気に入らなかった?」
義体の顔を見つめたまま固まっちゃった私を見て、 タマちゃんが不安そうな面持ちで言った。
「ううん。 大丈夫。 なんでもないんだ」
ホントはなんでもなくなんか、 ない。 もしも、 自分の身体とかけはなれた姿の義体だったら、 あき
らめて機械の身体になった自分を受け入れられたかもしれない。 でも、 なまじっか、 外見だけは自
分と同じ姿をしているだものだから、 昔の身体との違いをかえって敏感に感じて、 新しい身体を受け
入れることもできず、 友達に打ち明けることもできず、 ずーっと、昔の幻影を引きずって生きていくこ
とになるのかもしれない。 せっかく、 あんなに待ち望んだ、 私だけの新しい身体が目の前にあるの
に・・・、 ううん、 だからこそ、 全身義体になってしまった自分の未来の姿をかえってリアルに思い描
いて、 悲しくなってしまう。 ここまで元の身体を再現してくれたイソジマ電工の人達に、 感謝しなきゃ
いけないのにね。
「八木橋さんって、 本当はこんな顔だったんだね。 初めて見たけど、 私の想像通りの可愛い子でした」
こういう時、 私の気持ちを察してくれてるのか、 天然なのか、 イマイチよく分からないんだけど、
とにかく、 あまり深く突っ込んでこないのがタマちゃんのいいところだ。 今も、 はじめましてーって私
の義体に向かって手を振って、 落ち込みかけた私の気持ちをなごませてくれた。 それで、 ちょっとは
気持ちがラクになったよ。
「タマちゃん、 違うよ。 ホントの私はこんな顔だよ」
私は眼鏡を外すと、 義体の顔に掛けてあげた。
「やっぱり、 眼鏡かけるつもりなのね。 いい加減、 やめたらいいのに」
まるで眼鏡をかけっぱなしで眠っているかのような私の義体を見て、 苦笑いするタマちゃん。
「で、 どう。 これで問題ないかなあ? 問題なければ、 長く見積もっても一週間以内には義体換装手
術に入れると思いまーす」
問題ですか。 問題といえば。
「胸・・・、 もっうちょっと大きかったと思うんだけど」
嘘。 ホントはだいたい、 こんな大きさだった。 でもさ・・・いや・・・その、 これからの成長分も加味
していただけないかなあ、 と思ったんだ。 ちょっとだけね。
263 :
3の444:2005/10/28(金) 21:19:20 ID:CxeDZ+rv0
「ちゃーんと、 元の身体どおりに再現されてます」
タマちゃんは、 やけにきっぱりと言ってくれた。
「ケチ」
むくれる私。
「ふふふ。 でも、 足はちょっとだけ長くなってるよ。 義体の基礎骨格が5cm刻みでしか用意されてな
いから、 もとの身体より、 ほんの少し背が高くなってまーす。 その分は足で調整したから、 前より若
干足が長くなってるんだって。 ま、 ちょっとしたサービスでーす」
つまり、 昔より多少はスタイルが良くなったってことだ。 さすがに、 そのくらいの役得はないとね。
「髪、 ヘンだよ」
髪型は私の希望通り、 両肩にかかる程度のセミロング。 でも、 頭のてっぺんの部分にある髪だ
け、 ちょこんと上に浮き上がったようになっていて、 なんだかヘンな感じ。 気になったから、 その部
分をつまみ上げたら、 まるで針金みたいな感触で、 ぐにゃりと曲がって、 ひどい寝癖がついてるみ
たいになっちゃった。
「あ、 これは、 髪にカムフラージュしたアンテナでーす。 ほら、 万が一、 外でバッテリーが切れて、
行き倒れになったら大変でしょ。 そういった時のために、 義体には通信装置が内臓されてます。 そ
れ用のアンテナね。 一応目立たないようにはなってるけど、 どうしても気になるようだったら、 髪型を
工夫したりしてみてね」
「アンテナね。 ははは・・・」
もう笑うしかないよね。 髪の毛がアンテナになってるって? それじゃあ、 まるで「ゲゲ●の●太
郎」じゃないか。 じゃあ、 この義体の目玉はしゃべったりするのって、 よっぽど聞いてやろうと思った
けど、 やめといた。 とにかく、 頭には触られないように気をつけなきゃと、 固く心に誓う私なのでし
た。
264 :
3の444:2005/10/28(金) 21:27:46 ID:CxeDZ+rv0
今日は、ここまで。
580さんに描いていただいているヤギーの挿絵の髪形に対する
設定らしきものを加えました。
あれはアンテナだということでお願いします。
manplusさん
実は、リハビリ編に、宇宙開発事業団の人を登場させて、ヤギーを
勧誘するというネタを考えていました。
なので、もし八木橋ワールドに如月さんがいたなら、どんなふうに
ヤギーを誘うのかなあ、なんて考えています。
義体の人は、自分で自分の体見てしまうのですね。遊体離脱ですね。
通信装置で義体の人どうし話せてしまうのでしょうか?
できるのだったら、テレパシーもOKということですね。
無線でこっそり内緒話。
>>255 >>256 石原藤夫「ハイウェイ惑星」みたいなところに若い女性を100人くらい拉致ってきて裸で飼育してみたい。
サービスエリアみたいなところだけでエサを与えれば、車輪生活をするしかない。
長期にわたって車輪生活してると手足はだんだん溶けてしまう。(ここは漏れの脳内設定)
ふだんは人間ゴーカート→車輪生物が死んだら完全ダルマ娘→(゚д゚)ウマー
2Y270D00H00M00S。
火星上での私と未来は、430日に及ぶ火星上の大探査旅行を終えて、ベースキャンプに帰還した。
普通の人間の表現ならば、長く辛い旅行もやっと終わりという表現になるところだろうが、
私と未来の火星探査・開発用サイボーグの身体のシステムは、順調に作動し続けて、
火星での活動に何の不便も不都合もきたさずに任務を遂行し終えたのであった。もちろん、
機械と電子部品の身体が、疲れや辛さを訴えるわけがないので、旅行中の自身のサイボーグアストロノーツ体の
メンテナンスに注意すれば、困難の起きようもない通常の行動による普通の探査活動なのであった。
私と未来は、久しぶりのベースキャンプに帰投し、居住区内のメンテナンスチェアーに取り付けられ、
徹底的なチェックとメンテナンスを10日間に渡って行われた。この間は、当然ながら、
メンテナンスチェアーに固定され、自分の意思では全く動くことが出来ない退屈で苦痛な気分になるものであった。
それでも、次の探査旅行に行くための重要な休養期間であるため、私も未来も退屈を我慢し続けた。
もちろん、私たちよりも辛い時間を過ごしているのは、惑星探査宇宙船のコックピットに
取り付けられてこの任務に入ってからずっと動くことを許されていない、みさきであることは間違いなかった。
そして、そんな彼女が気を遣って私と未来の気分を紛らわせてくれていることが、
私たちにとっての清涼剤のようになった。
2Y280D00H00M00S。
私たちは、今度は、赤道上の探査活動旅行に出発することになっていた。今度の旅は、
365日余りの探査活動になる予定であった。
私と未来は、再び探査旅行の準備に取りかかっていた。そんなところへ地球上の宇宙開発事業局の
コントロールルームからのメッセージが届いた。
その内容は、火星開発プロジェクトがさらに重要プロジェクトになり、前倒しの計画になったこと、その為、
新に49名のサイボーグアストロノーツ手術処置被験者が、サイボーグアストロノーツへと改造されたこと、
そして、私たちが火星を離れる360日前に第2次火星探査チームの3体のサイボーグアストロノーツが、
火星に到着することが私たちに明かされたのであった。
そして、最後の360日は、4名の火星探査・開発用サイボーグでの探査活動を行うようにミッションが
変更されたことが告げられたのであった。
私たちの仲間と過ごす時間が長くなったことは、喜ばしいことであった。
当初の計画では、私たちが火星を離れる10日前に第2次火星探査チームが到着することになっていたのであった。
そして、引き継ぎ作業程度しか協働ワークが出来ないようなスケジュールになっていたのである。
それが、計画の前倒しにより、360日もの間、火星の探査活動をはじめとした協働ワークが、
出来るようになったのである。私と未来そしてみさきは、はるみ、ルミ、直樹との再会を楽しみにしながら、
探査旅行に出発したのである。
2Y425D00H00M00S。
神保はるみ、進藤ルミ、大谷直樹の3名のサイボーグアストロノーツが、
サイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセルに積み込まれて、月面基地への移動を開始された。
彼女たちのモードがアクティブモードに切り替わると、彼女たちは、突然のことのような速さで、
サイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセルに移動を命じられたのである。
そして、サイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセルの中で、3名のサイボーグアストロノーツは、
安全な移動を目的として、完全に動くことができないように固定され、
サイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセルが、密閉されたのであった。
そして、サイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセル搭載用特別輸送車に積み込まれ、、
月面基地連絡宇宙船打ち上げ基地のある首都沖合150qに浮かぶ人工島に向けて出発していった。
サイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセル搭載用特別輸送車から、
海中潜水艦型サイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセル搭載用特別輸送船に積み直され、
月面基地連絡宇宙船打ち上げ基地のある首都沖合150qに浮かぶ人工島に運ばれていった。
そして、地下ロケット打ち上げサイロに係留中の月面基地連絡宇宙船に
サイボーグアストロノーツ搬送用カプセルごと積み替えられ月面基地連絡宇宙船に
積み荷としてサイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセルが固定された。
そして、神保はるみ、進藤ルミ、大谷直樹の3名のサイボーグアストロノーツが、
サイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセルごと積み込まれた月面基地連絡宇宙船は、
月面基地に向けて出発したのである。 月面基地に到着すると 神保はるみ、進藤ルミ、
大谷直樹の3体のサイボーグアストロノーツは、サイボーグアストロノーツ搬送用カプセルごと運び出され。
月面基地内に作られた火星植民計画用サイボーグ待機カプセルにサイボーグアストロノーツ搬送用カプセルを
連結され、サイボーグアストロノーツ搬送用カプセルから出されて、
火星植民計画用サイボーグ待機カプセルに設置されたサイボーグメンテナンスチェアに据え付けられ固定された。
2Y428D00H00M00S。
神保はるみ、進藤ルミ、大谷直樹の3体のサイボーグアストロノーツは、2日間に渡っての徹底的な
サイボーグアストロノーツ体のシステムチェックと数少ない生体部分のメディカルチェックを受けた後、
神保はるみ、進藤ルミの2体の火星探査・開発用サイボーグは、月面上にでることを許可され、
月面上での最終活動訓練と最終調整を始めた。
神保と進藤は、月面を自由に歩き回ったり、月面上で股間のエネルギー交換用コネクターのカバーを開き、
お互いのエネルギーの交換の訓練を行ったりした。股間同士をコネクターで接続している姿は、
レスビアンを楽しむ姿のようであった。
一方、大谷は、再び、サイボーグアストロノーツ運搬用カプセルに積み込まれ、
サイボーグアストロノーツ運搬用シャトルで、月周回軌道上で最終調整を行われている
惑星探査宇宙船「希望2号」に運ばれていった。そして、惑星探査宇宙船操縦用サイボーグとして、
惑星探査宇宙船「希望2号」の最終調整を行うことになっていた。
大谷は、サイボーグアストロノーツ搬送用カプセルのまま、コックピットに運び込まれると、
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ取り付け位置に、身体拘束ベルトにより、完全に固定されていった。
大谷は、この任務が終了し、火星から、地球に帰還するまで、美々津みさき同様に全く、
この位置から1ミリたりとも動くことが出来ない状態で過ごすことになっているのだった。
そして、大谷の両脚、両手の切断面のコネクターに無数のケーブルを30のコネクターセクションになったものを
脚に各10グループ、手に各5グループが接続されていった。
コードケーブルが接続するたびに大谷は、性的絶頂感を味わうことになり、喘ぎ声やよがり声をあげた。
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグのストレス軽減のための性感システムなのだが、
ケーブルを接続されることでしか性的興奮を得られないようになっていたのであった。
次に股間の部分のコネクターに太いケーブルが差し込まれ、接続時防護カバーがその部分を覆うように
取り付けられ大谷が、大きな喘ぎ声を出した。
股間の部分のコネクターも同じような構造になっていて、ここに外部コンピュータと内臓ハードディスクとの
接続ケーブルを差し込んだり、エネルギー外部供給用および、受給用コネクターにケーブルを
差し込むと快感が得られることになっているのだった。そしてケーブルの接続が全て終了し、
バックパックやフロントパックに生命維持系統やエネルギー供給系統のチューブやケーブルが次々と
接続されていき、そして、最後に頭部のコネクターにケーブルが次々に接続され、
宇宙船との同化作業が終了した。七年間、宇宙船としての感覚しか味わえない生活が大谷を待っていたのである。
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグとしての任務に大谷が入っていった。
まず最初に惑星探査宇宙船の全体の機械チェックに入っていった。
大谷は、惑星探査宇宙船の最終調整の任務に入っていき、神保と進藤の搭乗を待つことになったのである。
2Y443D00H00M00S。
月面での訓練とシステムのチェックを終了し月面基地の火星植民計画用サイボーグ待機カプセルの
メンテナンスチェアで、待機していた神保と進藤のもとへ大谷からの惑星探査宇宙船の準備が
整ったという知らせが入った。
すぐさま、神保はるみ、進藤ルミは、サイボーグアストロノーツ搬送用カプセルに移され、
身動きが出来ないように拘束ベルトによって固定された。そして、惑星探査宇宙船「希望2号」に
積み込まれるためにサイボーグアストロノーツ運搬用シャトルへの積み込みが開始されたのであった。
惑星探査宇宙船「希望2号」に着くと、コックピットまで、サイボーグアストロノーツ搬送用カプセルのままで
運ばれた二人は、惑星探査宇宙船の船内作業職員により、コックピット内の
火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルまで運ばれ、
サイボーグアストロノーツ搬送用カプセルのハッチが開けられた。
惑星探査宇宙船「希望2号」の船内作業職員に促され、神保と進藤は、
火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルに収まった。神保はるみ、
進藤ルミは、右手の近くにある拘束ベルト自動装着ボタンを押すように指示され、
ボタンを押すと自動的に拘束ベルトがをグルグル巻きにしていき、サイボーグアストロノーツの力を
持ってしても、完全に動くことができなくなってしまった。
そして、火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルのカバーが自動的に閉じられて、
火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルの中にパッキングされてしまった。
すべてが順調ならば、約七ヶ月間の間、この動くことができない状態で火星までは積み荷として運ばれ、
火星に着陸した直後に火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルから解放されることになるのだった。
来る日も来る日もコックピット内の決まった風景しか見れないようになってしまったのだった。
そして、惑星探査宇宙船「希望2号」の船内で、出発を待つことになるのであった。
2Y445D00H00M00S。
神保はるみ、進藤ルミを積み込み、大谷直樹が宇宙船の一部になってしまった惑星探査宇宙船「希望2号」は、
最終秒読みを終わり、月の周回軌道を離れるため、メインエンジンに点し、姿勢制御エンジンを全開にして、
月の軌道上を離脱していった。
火星での如月はるか、望月未来、美々津みさきに再び会うことを楽しみにしながら、
火星へ向けて出発したのであった。
2Y446D00H00M00S。
地球上では、来るべき、化学戦争や核戦争に対応するために、軍事医学研究所でのサイボーグ兵士の
第一弾の改造手術も行われていた。
これで、澤田が考える国民をサイボーグや二度と脱ぐことの出来ない機密服を装着させ、
惑星植民地の火星と、地球本国で、精鋭によっての生存計画が始まったのであった。
澤田は、自分の立てた計画が順調に進んでいることに満足していた。
この数年から十数年の間に選抜された人間が、地球上の国土と火星の新天地に別れて、
新たな建国に向かっていくことになるであろう。その選抜された人間は、為政者の立場で選抜された人間は、
どの様な状況でも生存できて、支配者としての優位性が保証されるように、身体的犠牲を払うことにはなるが、
サイボーグとして、機械部品と電子機器、生体の複合体であるサイボーグに改造された上で、
生存していくことになるであろう。二度と脱ぐことが出来ないラバーフィットスーツを装着されるのが、
被支配者として選抜される人間であった。ラバーフィットスーツを装着事で、行動の制限という意味があるのだ。
ラバーフィットスーツ装着者は、生命維持システムに24時間に一度は、必ず、接続していなければ、
呼吸液や高濃度栄養や排泄物の交換が不可能になるため、生命維持装置の管理を支配者側が行うことにより、
支配者に従わなければ、生命維持が不可能になるからであった。澤田自身、
このラバーフィットスーツを装着してみて、始めて、いちいち、生命維持のために呼吸液の交換や、
高濃度栄養液の補給、排泄液や排泄物の除去、ラバーフィットスーツのメンテナンスを行うことの煩わしさや、
それに伴う自由性が無くなることでの被征服感を膚で味わい、ラバーフィットスーツが、
見えない牢獄につながれているかのごとき拘束感があることを悟った。ラバーフィットスーツは、
地球上でも火星上でも被支配者の証となる事に間違いなかった。
そして、ラバーフィットスーツ装着者は、被支配者としての従属の代価として、
サイボーグとなった為政者たちのもとで、安定的な快適な生活を送ることが保証されるのである。
何故なら、サイボーグになった為政者たちは、最強の兵器としての抑止力や新天地での開拓作業の最高の
推進機械となれるからであった。
澤田にとって、為政者と被支配者の理想的な共生社会がそこに生まれると信じていたのであった。
澤田は、毎日配信される火星からのサイボーグアストロノーツたちの視覚から送られてくる映像と
聴覚から送られてくる音声に期待と希望をふくらませる国民に第二次火星探査チームの出発という
新たな刺激を与えることに成功した。
澤田瑞穂が進める火星植民地化計画が、国民の圧倒的支持を受け続け、澤田瑞穂率いる現政権の支持も
圧倒的なものとなっていた。
前回の総選挙から、地球のカレンダーでも薄手に3年が経過していた。
ここで、澤田は、再度の政権維持を行うために議会を解散し総選挙に出たのであった。
澤田自身にとって、地球上のこの国の首相として行う総選挙はこれが最後となるはずであった。
次回の総選挙は、政権の委譲を行う予定の三谷紘子が行うはずであろう。
澤田自身は、火星の地で為政者として行動しているか、その準備をしているはずであった。
しかし、現在は、ラバーフィットスーツ装着者としての生活を満喫していた。
彼女と三谷のラバーフィットスーツは、特別製であるから、かなり長い時間、
ラバーフィットスーツ装着者生命維持システムと連結されなくても、活動が可能であったが、それでも、
定期的に、ラバーフィットスーツ装着者生命維持システムと連結しなければならなかったが、それさえも、
赤ん坊がへその緒で繋がれている感覚を想像して、楽しくさえあったのである。三谷にしても、
ラバーフィットスーツ装着者の立場を楽しんでいた。三谷についても、地球上の祖国の指導者として、
澤田と相前後して、どんなことがあっても生き残れるようになるためにサイボーグの身体になるはずであった。
この国がどんな事態になっても、二人は生き延びていかねばならないと澤田は思っていたのであるし、
国民も二人の指導者に対し、生き続けて欲しいと思っていたのである。
澤田のもとに、明るい緑色の人影が近づいてきた。その人影は、澤田の秘書である中山陽子であった。
中山は、通常型のラバーフィットスーツを装着されているため、常時、ラバーフィットスーツを
脱ぐことができない装着者の一人であった。
「首相。党首討論会が、今日の20時から、テレビの生で入っています。資料はここにおいておきます。
私は、夜に備えて、ラバーフィットスーツ装着者用生命維持システムと連結して、
ラバーフィットスーツの身体をリフレッシュしておきます。2時間ほど、お暇をいただきます。」
「ご苦労様。どうぞ、ラバーフィットスーツメンテナンスチェアで休養してちょうだい。
私も、ここで、党首討論会の内容を予習しておくわ。」
「わかりました。それでは失礼します。補給を終了して、時間になったら、お迎えに参ります。」
そう言って中山は執務室を退出した。
中山の場合、ラバーフィットスーツ装着者用生命維持システムに一日一度は、接続する処置を怠ると
生命の危機に直結することになるのだった。
実際には、もっと長い時間の間、ラバーフィットスーツ装着者用生命維持システムとの接続は必要ないのだが、
習慣づけをしておくことと用心の意味も兼ねて、一日一度という間隔がラバーフィットスーツ装着者には
義務づけられていたのだ。
中山の居室にあるラバーフィットスーツ装着者用生命維持システムは、クイックチャージが
可能なシステムであった。首相秘書という立場を考えて、宇宙開発事業局で特別に開発してもらったものであった。
彼女は、居室に戻り、ラバーフィットスーツ装着者用生命維持システムと連結されているメンテナンスチェアーに
身を委ねた。中山の身体は、自動的にメンテナンスチェアーに拘束され、中山の身体やバックパックの
コネクターにチューブやケーブル類が自動接続された。この瞬間が中山にとって、
人間性を捨てたと感じる瞬間であった。しかし、彼女にとっては、澤田と共に、
今以上の状態になる準備としか考えていなかったのである。
今の不便な状態をより良く改善されることが楽しみでもあったのだ。それが、たとえ、機械部品や電子機器に
肉体が置き換えられる処置であっても好かったのである。
そして、ラバーフィットスーツに閉じこめられた身体は、彼女の激務にとって、疲れない身体を手に入れたと
同じなのであった。だから、むしろ好都合であったのだった。しかも、首相秘書にとって疎かになりがちな
健康管理を毎日、自動的に受けられるのであるから、これほどいいものはないぐらいにしか思わなかったのである。
ただ、一時期は、愛する人と、肉体関係がもてないことの悩みを感じたことがあったのも事実であるが、
仕事に集中できるという切り替えをしてからは、その感情も吹き飛んだし、今は、彼氏とプラトニックな良い関係を
構築でき、とても充実した気分に包まれていた。そして、早く、彼氏にもラバーフィットスーツを
装着して欲しいと考えるようになったのである。彼女にとっては、もう脱ぐことができないこの服は、
自分にとって最高の生活形態であった。親兄弟に自分の今の姿を見せたときは驚かれもしたし、
悲しまれもしたが、今は、この姿をみんなが受け入れてくれているのも彼女にとっては有り難いことだった。
中山は、ラバーフィットスーツの整備が整ったことをゴーグル内のサインで確認すると、
メンテナンスチェアーから、起きあがり、澤田を迎えに行った。
今日は、党首討論会で、今までの圧倒的な澤田への指示を確実にする重要な討論会であったので、
中山自身も気合いが入っていた。
そして、いつも変わらないペースの澤田に気合いを入れて送り出していくつもりだった。
中山は首相執務室に向かって歩を進めていった。そして、待っていた澤田と共に公用車に乗ってテレビ局に
向かっていったのである。
2Y460D20H00M00S。
地球時間の午前四時過ぎ、今回の選挙の大勢か決した。
澤田の今回も圧勝であった。圧勝というよりも地滑り的な大勝という方が適当かもしれなかった。
澤田の今の内政外交への厚い支持と共に、火星に対する植民地化の推進への支持、そして、
軍事上の外交手腕、そして、大まかにしか知らされていないが、国土防衛、有事の国土保全計画が国民や
国土を最大限に守ることの努力といった諸々ことが支持を受けたのであった。
澤田は、選挙の大勝の結果を軍事医学研究所で、木村と共にサイボーグ兵士の被験者の手術の視察中に
中山から聞いたのであった。
このことで、地球に残り為政者として国土と国民を統治する精鋭たちの選抜とサイボーグ化手術の処置も
加速度的に進められることだろう。そのとき、今手術を受けている被験者も中心的な存在になるのである。
「彼女は、自分がこのような処置を受けることは最初に知らされていなかったドナーだから、
如月はるか大佐のように自分の身体と心の調和がとれるまでに、少し時間が必要かもしれないけど、
如月大佐同様、リーダーシップやサイボーグの適正は抜群だから、紘子の重要な側近となること間違いなしよ。」
木村は、このドナーの適正に頼もしいものを感じていた。そして、その言葉を聞いた澤田もまた、今、
目の前で機械部品と電子機器の身体を与えられている被験者に期待の念を抱いて見つめていたのである。
そして、澤田は、自分の遠大な計画の成功をこの時に確信していたのである。
「瑞穂、おめでとう。」
木村が声をかけた。
「ありがとう。でも、これからが本当の戦いになるわ。この国の周辺はいついかなる戦争が
起こってもおかしくない状況だと思う。だから、それに対抗する対策と、生き残る対策が必要なの。
玲子、あなた協力引き続きお願いします。」
澤田は、短く木村の祝辞に応え、祝勝会場の記者会見の席に向かっていった。
木村は、いよいよ、火星に行く準備を私もしなければならないと心の中で呟いた。
今日はここまでにしたいと思います。
火星への探査チームの第2部隊が火星に
送り込まれました。
3の444様
リハビリ編楽しみにしております。
はるかの存在をヤギーワールドに現れさせたら、
ヤギーはどう思うのか私も考えています。
高橋まりなタンもついにサイボーグ化
ハァハァ
四肢切断者の断端が、場合によっては(稀に?)性感帯になる事もあるようだが、
みさきタンのコネクタとかもそれに近い感じなんだろうか?
283 :
3の444:2005/11/02(水) 01:30:11 ID:yBiKtQIC0
今日の午後は、 リハビリ訓練の予定は入っていない。 イソジマ電工の本社に向かうっていう
タマちゃんを病院の待合室で見送ったら、 あとは特に用事はなくて、 好きに過ごしていいってこ
とになってる。 とはいっても、 病院の外を自由に散歩できるわけじゃないし、 一目で義体って分
かっちゃう標準義体の身体で、 病院の中をうろつくのも気が進まない。 だから、 結局は、 大人
しく病室に戻って、 入院したての頃におじいちゃんが買ってきてくれた、 もうセリフの隅々まで暗
記してしまった漫画本を繰り返し読むくらいしか時間の潰しようがない。 ある程度病気が治っち
ゃうと、 入院生活はとてつもなく退屈だって聞いていたけど、 全く同感。
入院してから、 一ヶ月。 単調なリハビリトレーニングを繰り返して、 テレビを見て、 漫画を読
んで、 そんな退屈な毎日は、 もううんざりだよ。 早く友達と会って話しがしたいよ。 学校に行き
たいよ。
待合室から病室に戻る道すがら、 一面ガラス張りの病院の大ホールで広い空を見上げた。
病院に来たばかりの時は、 入道雲が我が物顔でのさばっていた青空には、 今は、 いわし雲が
のんびり泳いでる。 夏から秋へ、 私の身体は何も感じられなくても、 そんなことはおかまいなし
に時は過ぎ、 季節は移る。 学校だって、 私がいなくいても、 きっと当たり前の日常が繰り返さ
れているはずだ。
(みんな、今頃どうしてるんだろう。私のこと、忘れてないだろうか)
クラスメートの顔が、 一人一人、 頭の中に浮かんでは消えた。
機械仕掛けの義体を一応は不自由なく操れるようになるまで回復したっていっても、 前とは
似ても似つかないこの身体、 この姿で友達に会えるわけない。 声だって、 昔の私の声とはゼン
ゼン違うから、 みんなと電話で話すこともできない。 私だけが一人ぼっちで取り残されているん
だっていう不安と焦りと孤独感に、 時々心が押しつぶされそうになる。
284 :
3の444:2005/11/02(水) 01:31:11 ID:yBiKtQIC0
でも、 もう大丈夫。 さっき、 私はイソジマ電工の義体購入契約書にサインをすませたばか
り。 換装手術は、 できるだけ早くっていう私の希望を入れて、 一週間後、 義体の細かい機器
の調整が終わり次第すぐにということに決まったんだ。 これで、 やっと私も、 こんな借り物の身
体じゃなく、晴れて、 もとの生身の身体そっくりの自分自身の身体を手に入れることができる。
みんなと会うことができる。
換装手術が終わったら、 すぐにでも、 みんなに電話しよう。 それから、 お見舞いに来てもら
おう。 そして、 連絡しないでごめんね。 心配かけてごめんね。 でも、 私、 もう怪我もすっかりよ
くなったから安心してねって言うんだ。
はやくこいこい手術の日。 はやくこいこいお友達。
そう思ったら、 単調で孤独で張り合いのない毎日でも、 楽しく過ごせるような気がするよね。
「よお、眼鏡ザル」
ぼんやり、 空を見上げていたら、 唐突に声をかけられた。 無理に押し殺したような低い声。
この病院で、 私のことを、 こんなふうに呼ぶ人は、あの人しかいない。
「こ、 こんにちは」
軽く会釈する私。
声の主、 私の隣の病室の住人、 佐々波さんは、 腕を組んで、 廊下の手すりに寄りかかっ
て、 ニヤニヤ笑ってる。
佐々波さんも、 私と同じ全身義体。 そして、 私と同じように事故が原因で義体化手術を受け
た人。 お互い身の上を語り合ったことはないけど、 聞かなくても分かってる。 佐々波さんも、 私
も、 同じ顔、 同じ背丈、 同じ声、 鼻の高さも、 目の大きさも、 きっと、 胸の形だって1ミリの狂
いもなく一緒。 双子だって、 私くらいの年になれば、 お互いに、 ちょっとづつ違いがあるはずだ
よ。 私達が、 双子以上、 まるで、 鏡を見ているみたいに瓜二つなのは、 私達の身体が、 規
格化された工業製品、 標準義体だっていう何よりの証拠。 服だって、 同じようにセンスのかけ
らもない真っ白の入院服を着ているから、 私達の外見上の違いなんて、 眼鏡をかけてるか、
かけてないか、 ただそれだけしかない。
285 :
3の444:2005/11/02(水) 01:32:18 ID:yBiKtQIC0
でも、 いくら見かけが同じでも、 義体の中に入っている心まで一緒ってわけじゃない。 私は
八木橋裕子、 そして、 彼女は佐々波玲子。 私達はそれぞれ違う人間で、 その証拠に性格だっ
てゼンゼン違う。 れっきとした女子高生の私と違って、 佐々波さんは、 仕草も、 しゃべり方も、
まるで男の人のそれなんだ。 私も、 よく男っぽいとか、 さばけてるとか友達に言われたりするけ
ど、 それは、 あくまでも女の子にしてはってことだよね。 でも、 佐々波さんは、 私なんかとレベ
ルが違う。 男っぽいというより、 外見はともかく中身は男の人そのものって感じ。 佐々波さん
が、 今何歳で、 生身の頃、 どんな顔をしてた、 なんてことは知らないけど、 女性型の標準義
体に入ってるからには、 女性ってことには間違いないはず。 でも、 彼女が普通の女の子だとは
私にはどうしても思えない。
「なんか、 用ですか?」
私はつとめて無表情につっけんどんに言って、 目に見えない言葉のバリアーを自分の周り
に築き上げる。
正直言って、 私は、 この人が苦手だ。 眼鏡ザルって私のことをからかうのも気に食わない
し、 自分だって私と同じ全身義体のくせに、 いっつも私のことを人形呼ばわりするのも気に食わ
ない。 それから、 標準義体だから仕方がないっていっても、 私と同じ姿をしていることも嫌。 だ
から、 できることなら、 顔をあわせたくないし、 しゃべりたくない。
「ふん、 ずいぶんご挨拶だな」
佐々波さん、 唇をかたっぽだけ吊り上げながら、 吐き捨てるように言う。 そんな、 無理して
低い声で話さなくてもいいのに、 と私は思う。
「なんか、 いいことでもあったのか?」
「いや・・・別に何も」
佐々波さんは、 顔をそむけて足早に立ち去ろうとする私の肩を、 無理やりつかんで引き戻し
た。
「隠すなよ。 さっき、 ずいぶん楽しそうに空見てただろ」
「・・・自分の義体・・・見てきました。 一週間後に換装手術だそうです」
不機嫌だってことをあからさまに伝えるために、 佐々波さんに負けないくらい低い声で、 私
はぼそっとつぶやく。
286 :
3の444:2005/11/02(水) 01:42:39 ID:yBiKtQIC0
「ふん、 自分の人形なんか見て楽しいのか。 相変わらずお気楽だな」
そう言って、 鼻で笑う佐々波さん。 また、 人形って言ったね。 もう、 カチンときた。 相手にし
たら、 ますます調子づかせるって分かっていても、 一言いわずにはいられない。
「そ、 それでも、 元の私の身体とそっくりだったんだ! 誰だって自分の元の身体に戻れたら嬉
しいじゃないか。 違うの? 喜んじゃいけないの?」
彼女の挑発に乗って、 私は思わず声を荒げてしまう。 私たちの脇を通りすぎていく看護婦さ
んが、 怯えた目で私を見た。 同じ姿、 格好をした二人の言い争い。 ハタから見たらとっても奇
妙だろうね。 でも、 そんなこと気にしてられない。
所詮作り物の機械の身体。 私だって、 そんなこと分かってるよ。 でもさ、 自分で思うならま
だしも、 人にそんなこと言われたくない。 ましてや、 私達、 同じ機械の身体の人間同士が、 お
互いを人形って言い合うなんて、 そんな悲しいことがあるだろうか? ホントなら、 今の私達二人
は、 どんなケアサポーターよりもお医者さんよりも、 一番お互いの気持ちを分かり合える立場に
いなきゃいけないはずなのに。
「確かに作り物の機械かもしれない。 昔の身体とは比べ物にならないのかもしれないよ。 でも、
義体の中に入っている私たちは機械でも人形でもない、 自分自身じゃないか。 人にどう思われ
ようと、 私は絶対人形なんかじゃないし、 佐々波さんだって人形じゃない。 なのに・・・なのに、
どうして私たちで、 そうやって傷つけあうようなことを言わなきゃいけないんだよう。 そんなの馬
鹿みたいだよ。 やめようよ」
「自分の人形が、 好きで好きでしょうがないみたいだな。 これがホントの自分の身体ってか。 ふ
ん、 馬鹿くせえ!」
佐々波さんの怒鳴り声に、 廊下を行きかう人たちの足が止まる。 私達を遠巻きにするよう
に人のわっかができて、 みんな何かひそひそ話してる。 これ以上騒ぎにならないうちに、 不毛
な罵りあいは、 やめるべきなのかもしれない。 でも、 私も、 もう後にひけない。
287 :
3の444:2005/11/02(水) 01:44:12 ID:yBiKtQIC0
「好きだよ! 好きじゃいけないの? 私はこんな人間味のない身体よりも、 たとえ見た目だけ、
形だけのことだとしても、 元の身体とそっくりな義体がいい。 そして、 少しでも昔の面影を感じて
いたいよ。 それのどこがいけないんだ! 佐々波さんだって、 自分の身体を見たら、 きっと同じ
気持ちになるはずなんだ!」
「ギャーギャーうるせーな。 オレは生まれてから今まで、 本当の自分の身体なんてどこにもいや
しなかったよ。 自分の身体を見たら同じに気持ちになる、 なんて、 勝手に自分の考えをオレに
押し付けんな!」
「本当の自分の身体なんてどこにもいやしない・・・それって、 どういうこと?」
佐々波さんが、 ふと口にした不思議な一言に引っかかった私が、 鸚鵡返しに聞き返すと、
佐々波さんは今までの剣幕が嘘のように、 むっつり押し黙ってしまった。
「なんでもない。 今の話は忘れろ。 口が滑っただけだ」
やっと口を開いたと思ったら、 私から目をそらして、 不機嫌そうにそうつぶやく。
「いいか、 今の話は全部忘れろ。 くだらねえ」
佐々波さんは、 最後にもう一度、 念を押すと、 くだらねえ、 くだらねえってつぶやきながら、
人の輪をかき分けて、 立ち去っていった。
288 :
3の444:2005/11/02(水) 01:44:45 ID:yBiKtQIC0
(本当の自分の身体なんて、 どこにもいやしない)
小さくなっていく佐々波さんの後ろ姿を見つめながら、 さっきの彼女の言葉を頭の中で反芻
する。
一体どういうことだろう。 自分の身体がないなんて、 そんなことがありうるだろうか? じゃ
あ、 標準義体に入る前の佐々波さんは、 何者だったんだろうか? 分からない、 考えれば考え
るほど、 分からない。
よくよく考えれば、 この奇妙な隣人は謎だらけ。
佐々波さんは、 話した限りでは、 どう考えても男としか思えない。 ボーイッシュとか、 男っぽ
いとか、 そういう次元は軽く超えて、 男そのものと言っていい。 でも、 使っている標準義体は女
性型。 なんでだろう?
私が義体化手術を受けて、 自分の病室に移ってきたときには、 佐々波さんは、 もう、 だい
ぶ義体慣れしているみたいだった。 それを考えれば、 義体でのキャリアは、 私より少なくとも一
ヶ月以上は長いはず。 なのに、 いつまでたっても佐々波さんは義体換装しようとしない。 なんで
だろう?
自分の部屋に戻っても、 何も手につかず、 ベッドに寝そべって、 天井を見つめながら、 じー
っと佐々波さんのことを考えていた。 でも、 いくら考えても、 納得のいく答えは浮かんでこなかっ
た。
289 :
3の444:2005/11/02(水) 01:54:10 ID:yBiKtQIC0
今日はここまでです。
なんだかややこしい展開になりそうなんですけど
うまくまとめられるよう頑張ります。
サイボーグとおなべさん。世界で唯一の話でしょう。
たぶん。調べてませんけど。
ところで、11月5日土曜日NHKスペシャルの
“サイボーグが人類を変える”は必見でないでしょうか。
はじめまして。(といいつつかなり前からromってたですが)
今度のおはなしはとっても気になっちゃいます。私自身がMtFビアンなので。
私がサイボーグフェチになったのも、きっとMtFな事と無関係ではない気がします。
>>291 お前全然空気読めてないよ?
ウザいからカエレ!!!!!
293 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/05(土) 23:36:28 ID:CWiqSPDT0
>>292 貴殿こそ話の伏線が読めてないのかもね。
でも
>>291氏の発言はスレ違いだとも思う。
読者として最後まで楽しみに行きましょうYo.
>>292 いるよなーこういう
>>291みたいな香具師。
ホント迷惑なんで来ないでほしい。マジで。
つーかここサイボーグに萌える男のためのスレだぜ?
き し ょ い カ マ な ん ざ 用 は ネ エ ! !
もう二度と来るな。書き込むだけじゃなく見るのも禁止。
こんな人間のクズみたいなカマが女義体に入るような未来が来ると思ったら猛烈に萎えたよ。
奴ら女のフリしてだますのが趣味だからな。女サイボーグ体(でも中身は男)なんて タ チ ワ リ ー
おえええええええええええ
世の中の秩序を乱して喜ぶようなテロリスト野郎は逝ってこい
どれだけ社会に迷惑かけてるとおもってんだ?変態女装野郎めが
気に入らないならレスしないでスルーしたらどうよ。
無駄なレスが増えると作品が読みづらくなる。
>>295 そう思いたいが、ああいうバカはビシっと言ってやらないと、ここに居てもいいって勘違いしやがるからな。
まったく困ったものだが。
別に
>>291さんを擁護するつもりはないんだけどさあ。
>>296さん。あんたがMtFにどんな恨みもってるかは知らないが、
もうちょっと言葉を選んだら?
冷静にレスを見返してみることだ。どっちがスレに対して迷惑か。
時々湧くよな
ここ21禁だよな?って思わせるような奴
>>290 >NHKスペシャルの“サイボーグが人類を変える”
途中から見ました!(日経のサイトで立花氏が概略書いてたのも見てます)
脳と機械の直結・付加された電気デバイスに対する脳の適応はSF既出。
欠損部部位補完治療のオプションで「自由に動くウサ耳・猫シッポ」希望。w
でも、電子回路で脳の機能を一部代替しちゃうのはSF超えてますよね。汗
記憶・性格に関するところまで脳に細工できるとなると…。精神って何よ?
スレ違い・長文レスごめん。話の続きよろ〜
>>290 見逃した…(つДT)一生の不覚
>>300 >でも、電子回路で脳の機能を一部代替しちゃうのはSF超えてますよね。汗
>記憶・性格に関するところまで脳に細工できるとなると…。精神って何よ?
人形姫の世界ここにアリ、って感じだな。
詳細は知らんが、民間で公表できるって事は、
軍事レベルではもっと進化してると見るべきであって…(゚Д゚;)
>>300 >見逃した
NHKスペシャルだから再放送されるはず。ちゃんと期待を裏切らないふうになってた
NHKが久々にまともに見えた(立花隆氏も(笑)でもどちらかというと養老たけし氏のほうが適任かも)
>人形姫の世界ここにアリ、って感じだな。
>詳細は知らんが、民間で公表できるって事は、
>軍事レベルではもっと進化してると見るべきであって…(゚Д゚;)
番組中でも米軍の研究者?がねずみを脳に電極をさして操るシーンが出てきた。
米軍はかなりサイボーグ技術に対して本気っぽい(一応キリストの国だけど
大丈夫だろうか。ねずみだからいいのかな?)米軍がショッカーみたいに
思えたのはNHKの悪意なのかかガチなのか…
>見逃した
>NHKスペシャルだから再放送されるはず。
11月8日(火)午前0:15〜1:29(7日(月))深夜の放送です。
>>299 それだけど、完全に人間の脳と同じ機能のある機械(最初からきかいの脳)
ができれば・・・。
304 :
299:2005/11/06(日) 14:20:47 ID:GeeAvljq0
>>304 それはロボット(アンドロイド)であってサイボーグじゃない。
スレ違いになってしまうから特に言及しないのが吉。w
NHK見た見た。久しぶりに背筋が寒くなった。SF越えてるよね。
女子忠孝生を操って(;´Д`)ハァハァ
>>304 厳密なことを言うとそれをエミュレートできるソフトがあればいいだけだけど。
307 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/07(月) 10:39:14 ID:5lj2zjuE0
>290
見ました。
小説 ”A−10奪還チーム出動せよ” の脳波操縦装置や
映画 ”ファイヤーフォックス” の機能が実現すると言う事か...。
309 :
3の444:2005/11/07(月) 22:03:40 ID:Hdmpr8uG0
でも、 一つだけ分かったことがある。 よくよく考えれば、 佐々波さんは、 全身義体。 身体に生身
の部分なんて脳以外には何一つない。 だったら、 男とか女とか、 そういう性別に何の意味があるん
だろう。 何の意味もないよね。 そして・・・私もね。
私は、 こんな身体になっても、 心だけは昔のままで、 だから自分は人間なんだって思っている
し、 さっき佐々波さんに向かってそう言い放ちもした。 でも、 私に心があって、 れっきとした人間だっ
てことに間違いはないにしても、 女だって言えるだろうか? 例え脳みそが残っていたとしても、 子
宮も卵巣も失って、 女性としての肉体も失って、 それでも女の子ですって言い切れるだろうか?
この身体は女性型の義体だし、 私に与えられるはずの新しい義体も、 もちろん昔の私をかたどっ
たものだから、 当然女の子の形はをしている。 でも、 ただそれだけ。 いくら外見だけは普通の女
の子を装っていたとしても、 今の私の身体に入っているのは、 機械部品とバッテリーと生命維持装
置とコンピューター。 義体でも、 性器はちゃんとついていて、 試した限りでは、 人なみに感じること
もできるし、 好きな人と一つになることだって、 できるって言われては、 いる。 でも、 それが何だと
いうんだろう。 将来母親になることもできない作り物の機械の身体なんて、 ただのダッチワイフとど
こが違うって言うんだろう?
そう思ったら、 無性に悲しくなった。 大声で泣き叫びたかった。 泣いてもなんの解決にもならないっ
てことはよく分かってる。 でも、 泣くことで、 一時でも、自分が女ではなくなってしまったという恐怖
から逃れたかったんだ。
でもね。 もう私の目から涙なんてでない。 ベッドの中で布団にくるまって、 頭を抱えて胎児みたい
に丸まって、 行き場のなくなった恐怖心に耐えるしかないんだ。 いつまでも。 いつまでも。
その日見た夢も、 いつもと同じ、 例の悪夢だった。
今日のリハビリは、 平均台に乗っかって、 片足上げて、 かかしみたいに一本足でバランスを取
る訓練。 もちろん、 義体には、 リモコン人形よろしくコードがつながれていて、 タマちゃんの座って
いるメインコンピューターのモニタ画面に身体のデータが逐一送られている。
310 :
3の444:2005/11/07(月) 22:04:29 ID:Hdmpr8uG0
もう、 ちゃんと歩けるし、 走れるのに、 この後に及んでまだこんなことをしなきゃいけないのは、
馬鹿馬鹿しいし、 何より退屈だ。 でも、 ごくごく微妙なバランス感覚のズレが、 後々大きな狂いにな
っちゃうそうで、 義体の調整は慎重すぎるくらいで丁度いいんだってさ。
「ねえ、 八木橋さん。 今日はずいぶん元気がないみたいだけど、 何かあったの? また、 いつもの
嫌な夢を見たの?」
タマちゃんはモニター画面から顔を上げて、 平均台の上で両手を広げて、 ゆらゆらバランスを取っ
ている私に向かって、 心配そうに眉をひそめた。
タマちゃんに、 自分は女なんだろうか、 なんて悩みを話したって、 私に生身の身体が戻るわけじゃ
なし、 何の解決にもなりはしない。 そう思ったから、 私は感情を押し殺して、 つとめて平静に振舞っ
ているつもりだったんだけど、 このケアサポさんには、 何も隠せないみたいだ。
自分の気持ちを見透かされて、 ちょっとどきどきしながら、 そのままの姿勢で私は切り出してみ
た。
「私って・・・人間だよね」
「なにを今更」
タマちゃんは、 小鳥がさえずるような明るい声で笑った。
「でも・・・私は女ですか?」
「八木橋さんは、 かわいい女の子でーす。 何を言ってるの」
タマちゃんは、 急にまじめな顔になってじっと私の眼をみつめた。
「女って、 何だろう? 脳みそが女だからって、 今の私は女って言えるんだろうか?」
「じゃあ八木橋さんは、 自分のことを男の子だと思ってるの? 違うでしょ。 男じゃなかったら、 あな
たは女。 この世に人間は男と女の二種類しかないの」
「私は自分ではもちろん女だって思ってる。 でも、 まわりの人はどう思うんだろう。 まわりの人から見
たら、 全身義体なんて、 女とか男っていう以前にただの機械の塊にしか見えないんじゃないかって、
そう思ったら私、 不安でたまらな、 あっ!」
しゃべることに気を取られすぎて、 うっかり平均台から落ちてしまった。 私のところにあわてて駆
け寄るタマちゃん。
311 :
3の444:2005/11/07(月) 22:06:09 ID:Hdmpr8uG0
「あのね・・・。 タマちゃん。 私恐いんだ・・・。 もしも、 私の身体が機械になっちゃったって知ったら、
私のカレシは私のことを女って見てくれないんじゃないか? 私の事を愛してくれないんじゃないか?
そう思ったら不安でたまらないんだ。 タマちゃん、 どうしよう。 私、 どうしたらいいんだ! 教えてよ。
ねえ、 教えてよ!」
タマちゃんは何も悪くないのに、 話しているうちにだんだん感情が高ぶって、 ついには私はタマちゃ
んを睨み付けて、 なじってしまう。 ずーっと心の奥底に押さえつけていた恐怖が、 わあっと堰をきっ
たように頭の中に溢れ出して、 頭がおかしくなっちゃいそうだ。
私にだってカレシがいる。 親にも、 みんなにも内緒だけど、 彼と一回だけHしたことだってある。
はじめてのHは、 ちょっと痛かったけど、 でも、 これからもずーっと一緒なんだって思って幸せな気
分になった。 時々は喧嘩もしたけれど、 でも心底嫌いになることなんかないし、 別れることもない。
そんなことは地球がひっくり返ったって、 あるはずがないって無邪気に思ってた。 まさか、 あれが、
私の生身の身体での最初で最後の想い出になるなんて思ってもいなかった。
はじめて武田から告白されたときは、 なんで私なんかがいいんだろうって不思議だった。 同じ陸
上部でも、 彼は二年生なのに長距離のエースで、 私はただの補欠選手。 勉強だって、 彼は私なん
かよりずっとできるし、 私なんてクラスではゼンゼン目立たないけど、 彼は明るいキャラでクラスの
人気者で、 一年生に彼のことが好きな子が何人かいるのを私は知っている。 彼は私と同じクラスに
いて、 同じ空気を吸っているけれど、 でも、 彼は別の世界の人間。 なんとなくそんな風に思ってい
たから、 憧れてはいても、 恋愛感情なんてなかったし、 ましてや武田が私のことが好きなんて思っ
てもいなかったから、 私は嬉しかったことよりも驚きが先立ったんだ。
312 :
3の444:2005/11/07(月) 22:07:29 ID:Hdmpr8uG0
だって、 私達に共通しているのは、 陸上部ってことと、 一年の時から同じクラスだったってこと
と、 高校に入学したとき、 出席番号順に振り分けられた席がたまたま隣同士で、 お互いが学校で
初めて言葉を交わしたのが相手だったってことだけ。 それも
「消しゴム落ちたよ」
なんていうスッゴイ下らない会話でね。 とても運命の出会いなんていえるようなシロモノじゃない。
だから、
「なんで、 あんたが武田君と付き合ってるの」
そう言われたことも一回や二回じゃない。 その度に、 武田は慰めてくれたけど、 私は悔しかっ
た。 でも、 はい、 そうですね。 私には相応しくないので、 貴女が付き合ってください。 そう言うほど
私はお人よしじゃないし、 諦めがよくもない。 アンタ達が文句なんか言えないくらい、 武田と付き合う
のに相応しい女になってやればいい。そう思って、 私は頑張った。 学校の勉強も、 陸上部の練習も
ね。 どっちも辛かったけど、 でも武田がいるから私は頑張ってこれた。 武田には本当に感謝してる。
武田のことが大好きだっていう気持ちに変わりはない。 でも、 今は、 正直言って会うのが恐い。
ううん、 会うだけなら、 いい。 会って話すだけなら、 義体を換装したあとだったら、 きっと武田も私
の身体には気がつかないだろう。 だけど、 身体を求められたらどうする? いくら、 生身の身体そっ
くりっていっても、 機械がぎっしりつまった120kgもある身体を抱いたら、 どんな男でも、 何かおかし
いって気がつかないだろうか? たとえ気がつかなかったとしても、 大好きな人を騙して、 何も産み
出すことのない機械の身体を抱かせていいんだろうか?
それとも、 私は身を引くべきなんだろうか。 大好きな人だからこそ、 その人の幸せを願い、 機械
の身体の私は、 自ら別れを切り出すべきなんだろうか。
そんなの嫌だ!
私の身体は、 嘘だらけ。 人の形をした、 ただの人形。 でも、 私にただ一つ残された人間として
の心だけは嘘じゃない。 自分の気持ちに嘘なんかつけない。 別れたくない。 いつも一緒にいてほし
い。 これからも。 ずっと、 ずーっと。
313 :
3の444:2005/11/07(月) 22:17:14 ID:Hdmpr8uG0
でも、 私の身体が機械だって分かっても、 それでも彼は私のことを女として見てくれるだろうか。
私を愛してくれるだろうか。 そもそも今の私に人を愛する資格があるんだろうか。
私は恐い。 この身体で人を愛してしまうことも、 この身体のことを知らない人から愛されること
も、 恐い。 身体を全部失って、 脳だけになってしまっても、 それでも、 人の心を持ち続けなければ
ならないなんて、 こんな苦しいことがあるだろうか? 人の心を持っているから、 人を愛してしまう。
人に愛されてしまう。 もう、 愛することも、 愛されることも、 その愛に応える事もできない身体のくせ
に。
「なまじっか、 人の心を持っているから、 人を好きになっちゃうんだよ。 いっそのこと、 私に心なん
か、 なければよかったのに。 義体化と一緒に人の心も消えてしまえばよかったのに。 どうせ、 私の
身体なんて全部機械の塊なんだ。 脳みそも機械になったって、 今更大して変わりはしないんだ。 生
きることがこんなに苦しいなら、 機械そのものになっちゃったほうがずっと楽だよ・・・」
この一ヶ月、 タマちゃんが、 どんなに私の支えになってくれたか、 知っている。 どんなに励まし
続けてくれたか、 知っている。 だから、 私の漏らしたこの言葉を聞いて、 どんなに傷つくか分かって
いる。
それでも、 私は、 言ってしまった。 身体から溢れる言葉を抑えられなかった。 ごめんね、 タマちゃ
ん。 私、 一生懸命頑張ったけど、 新しい機械の身体になじめるように努力したけど、 やっぱり義
体には向いてなかったみたいだね・・・。
神様、 仏様。 お願いです。 私に人の暖かいからだをください。 人を愛することのできるからだを
ください。 でも、 もしも、 それがかなわない願いなら、 私の心を消してしください。 私をただの機械
にしてください。 お願いです。
314 :
3の444:2005/11/07(月) 22:19:39 ID:Hdmpr8uG0
今日はここまでです。
今回はお約束の悩めるヤギーです。
お疲れ様です。楽しませてもらいました。
とうとうヤギー最大の影、悪夢の高校生活を描かれるのですか……。
読めるように心の準備をしなくては。
新人さんの書き込み見かけないな…続き楽しみにしてたんだけど…
このスレたてた新人さんの書き込み見かけないな…続き楽しみにしてたんだけど…
2Y595D00H00M00S。
火星では、私と未来が今回の探査旅行の終盤にさしかかっていた。
マリネス渓谷の調査のため未来と渓谷を下っていた時だった。突然の落石に未来が巻き込まれた。
落石した巨石が未来の右足を下敷きにした。
幸い、右足が巨石に下敷きになっている以外、未来のサイボーグ体に異常はなかった。
しかし、私の火星探査・開発用サイボーグ一人の力では、どうしょうもないほどの巨石であった。
このままでは、未来の脚が修復不能になる可能性があった。
私は、その場に立ちすくんだ。
”落ち着くんだ”と心に言い聞かせた。しかし、未来の動けなくなった姿を見るととても平常心ではいられなかった。
私は、かろうじて平常心を保った状態で判断を下した。
この場面は、私の胸のビーム砲で巨大岩石を砕くしかなかった。瞬時の判断で、みさきに話しかけた。
「みさき、未来が巨石の下敷きになった。
未来のサイボーグ体に異常はないけれど、下敷きになった右足を早く岩の下から取り出さないと
修復不可能になる可能性があるの。私の胸のビーム砲を使用して岩を砕くしかないの。
それ以外岩を取り除けないの。胸のビーム砲を使用します。使用許可の追認をお願いします。」
「はるか。了解しました。ビーム砲使用を追認します。慎重に使用してください。
未来に危害のないように使用してください。」
「了解。みさき、ありがとう。」
私は、そう言うと、未来にむかい、
「身体に岩の破片が飛ぶことも考えられるから、注意して。」
未来は、冷静に
「了解よ。」
そう答えた。
未来の状態は、普通の人間だったら、気絶しているどころかショック死していても
おかしくない状況だが、不幸中の幸いなことに、私たちは、火星での探査活動を目的に生身の肉体に
大量の機械部品と電子機器を取り付けられた火星探査・開発用サイボーグなのである。
脚だって、機械と生体の複合体になっているため、こんな状態でも、苦痛というものを感じないし、脚だって、
修復可能な状態なのである。
私は、私の胸に内蔵されたビーム砲二門の効率的な火力を補助コンピューターで割り出し、
素早くビームを発射した。二回に渡る照射で、岩は砕け散った。
私は、未来のもとに駆け寄り、未来の身体を引きずるようにして、火星探査用バギーの座席の
サイボーグシステムチェックに座らせた。そして、右脚の状態を確認した。未来のサイボーグ体の右脚は、
膝から下は、ブーツのような補強してある人工皮膚の強度に守られて損傷がなかった。大腿部に一カ所、
人工骨が砕けている箇所が発見された。それ以外は、全く損傷はなかったのが不幸中の幸いである。
少し、人工皮膚が裂けたり、傷が着いたところはあるが、それは大したものではなかった。
私と未来は、すぐさま、探査旅行を中止し、未来を私のバギーに乗せ、未来のバギーや機材車をみさきの
サポートによる自動操縦に切り替えて、ベースキャンプに戻ることにした。
ベースキャンプに帰還すると、エアシャワーももどかしく、未来をベースキャンプ内の
火星探査・開発用サイボーグ専用メンテナンスチェアに未来のサイボーグ体をくくりつけて、破損箇所の分析を
行った。その結果は、大腿部に15pに渡って人工骨の粉砕箇所が見受けられた。
そして、脛部に3カ所の人工皮膚の破壊が確認され、さらに大腿部にも3カ所の皮膚の破損箇所が
発見されたのである。
私は、すぐさま、未来の修理に取りかかった。
未来は終始ここまでの間、言葉を必要以上に発することはなかった。
「未来、我慢してるのね。何でも言っていいんだよ。」
私がこういうと、未来は、
「サイボーグって悲しいよね。痛みも感じないし、こんな大事故でも、死ぬことが出来ないんだから。」
「未来、何を言うの。サイボーグアストロノーツだから、大切な命が守れたんだよ。私たちは、何が何でも、
この火星で死ぬことは出来ないんだよ。再び、人間の故郷である地球の大地に立たなくちゃいけないんだよ。
その為に、サイボーグになって強靱なボディーを手に入れたんだから。」
「でも、はるか。私たちは、本当の人間じゃないよね。」
「いいえ、違うわ。私たちには、オリジナルの感情や意識がある以上、人間なんだと思うわ。
たとえ、身体のほとんどが、機械部品や電子機器に置き換えられても人間は人間だもの。」
「そうだね。はるかの言うとおりだわ。私たちは、人間の改訂増強版なんだし、その意味で、始めて火星の地を
歩いた人間なんだよね。誇りを持たないといけないんだよね。」
「そうだよ。未来。さあ、修理を開始します。」
私は、そう言うと未来の修理に取りかかった。
まず、大腿部の人工皮膚を切開し、培養液に保存された。
人工骨を粉砕された大腿部の大腿骨の補修できる長さに加工し、粉砕された人工骨を除去し、
その部分に新に用意した人工骨を挿入した。そして、両端をつなぎ合わせて、
接続部を補強用人工骨接続テープで、補強した。そして、生体接着剤を使い大腿部をもとの状態に接合した。
そして、6カ所の人工皮膚を張り替える処置を施した。
全ての修理が終了した。私たちは、火星探査・開発用サイボーグの修理の処置を嫌と言うほど訓練しており、
このぐらいの修理は慣れたものとなっていた。
そして、この間の映像が地球に配信されており、全世界の人々が固唾をのんで、
未来の自己から修理完了までを見ていたのであった。
そして、未来が無事修理完了した時、地球上では安堵の溜息が起こったほどであり、未来が悲劇のヒロイン、
私が、救世主として、称賛を受けたのであった。そして、地球上にサイボーグアストロノーツの優位性が、
認識されていくと共に、サイボーグアストロノーツになる事への憧れの念も強まっていったのであった。
そのことが、サイボーグアストロノーツの支持やサイボーグに人間を改造する事への支持に
つながっていくのであった。
私たち、火星のサイボーグの運命が、ドラマのように感じているのであった。だから、今回の事故も、
地球上の人々にとっては、ドラマの盛り上がりの1シーンの様に受け止めていたのであった。
私たちにとっては、もちろんのことだが、重大な事故であり、最小限ともいえる損害で食い止めることができたし、
もう、七海のように仲間を失うことは、なんとしても避けたいことだったのである。
「ねえ、未来、みさき。ここまで来たら、何が何でも、地球にスーパーヒロインとなって帰還しようよ。
その後、地球上でどんなに見せ物のような生活になっても構わないから、とにかく、
これ以上事故の無いように今まで異常の細心の注意を払って行動しよう。」
未来が答えた。
「そうだね。私が今まで使ってきた人間の身体だったら、ここで療養生活とか、リハビリが必要だけど、
今の身体は、そう言うものが必要ないから、明日から、残りの探査活動を再開しよう。」
「未来、意気込みはわかるけど、地球の宇宙開発事業局のコントロールセンターから、
未来の火星探査・開発用サイボーグの身体の損傷が軽微だといっても、もっと精密に検査を行うように指示が
届いているわ。しばらく徹底的なメンテナンスを行った後、2Y600D00H00M00Sに探査旅行の残りの行程を
短縮行程にて再開するように指示が出たわ。
未来は、メンテナンスチェアに完全固定の上、徹底的なメンテナンスを行うこと、そして、はるかも、
胸のビーム砲を使用したり、事故の二次被害の可能性があるから、メンテナンスチェアーにて、
身体のメンテナンスをすると共に、ビーム砲の使用時の身体データを取得するようにとの指示があったわ。
だから、二人とも、暫くは、動けないことになるわ、ゆっくり休息して下さい。」
「わかったわ、みさき。でも、宇宙開発事業局としても、突発的な状況だったけど、
胸部内蔵型ビーム砲の使用データが取得できて、最高の探査旅行だったかもね。」
「はるかの分析力は恐ろしいわ。本部はそのように考えているみたい。胸部内臓ビーム砲の実戦使用データが
取得できたことが今回の探査旅行のミッションの最大の収穫だと言っているらしいわ。
やっぱり、私たちは、あくまでも、宇宙開発事業局にとって、人間ではなくて、色々なデータを
取得するための実験材料であり、火星探査機材なんだね。」
みさきがそうつぶやくように言った。
「それでも、はるかが、さっき言ったように地球にスーパーヒロインとして帰還しようよ。
みさきもはるかも前向きに考えて、ミッションを成功させよう。私、もう一度地球の地を踏みたいもの。」
「そうだね。そのためにも、休養をとりましょう。未来、火星探査・開発専用サイボーグ用メンテナンスチェアーに
固定されるわよ。いいわね。」
私はそう言って未来を促し、二人それぞれの火星探査・開発用サイボーグ専用メンテナンスチェアーに
身を委ねた。
私と未来は、火星探査・開発用サイボーグ専用メンテナンスチェアーに固定された上で、
サイボーグ体の様々なチェックとデーター取得を行われたのである。その間、私も未来も、強制的に
レストモードにされていた。私たちは、数日間、アイドリング状態で過ごしたのであった。
2Y600D00H00M00S。
私と未来は、再び、強制的にアクティブモードにモドされた上、探査旅行の残りの行程を行うために
ベースキャンプを後にした。
もう慣れてしまったが、私たちには、寝るとか起きるといった基本動作を選択する自由さえないのであった。
本当に、タイマーで自動電源オンオフを繰り返す電気製品や機械と全く同じなのであった。この動作に関しては、
残念ながら、サイボーグアストロノーツという存在になってしまった私たちにとっては、
自分の意思が介在できない動作になってしまったのだ。
私たちサイボーグは、やはり人間ではなく、アンドロイドに近い存在なのかもしれない。
2Y655D00H00M00S。
私たちは2日前に探査旅行から帰還し、昨日までメンテナンスチェアにサイボーグ体を拘束され、
身体のチェックを行われていた。そして、やっと今日解放されたのである。
また、今日は、はるみやルミ、直樹が火星日到着する日であった。
みさきが、火星にむかう惑星探査宇宙船「希望2号」の惑星探査宇宙船操縦用サイボーグである直樹と
交信をにより、惑星探査宇宙船「希望2号」は、順調に航行を続けており、予定通りの航行を続けて、今日、
火星に軟着陸を行う予定になっていた。
私たちは、はるみとルミ、直樹と久しぶりに会うことを心待ちにしていたのである。
2Y655D12H00M00S。
みさきが割り出した着陸予定時間に私たちの居住棟のすぐ隣に軟着陸したのである。
私と未来は、居住エリアから外に出て、惑星探査宇宙船「希望2号」に近づいた。惑星探査宇宙船「希望2号」の
ハッチが開き、はるみとルミが出てきた。そして、私と未来を見つけ近寄ってきたのである。
「はるか、未来、ご苦労様、本当に久しぶりだね。」
はるみが話しかけてきた。
私たちは、しばしば、地球の情報や仲間のことなどを聞いたり、こちらの火星でのことを話した。
ひとしきりの再会の喜びが一段落して、惑星探査宇宙船「希望2号」を中心としての第2ベースキャンプの
設営を始めた。ベースキャンプの大きさは、第1ベースキャンプの2倍の規模になっていた。
そして、第1ベースキャンプと連結された新しいベースキャンプが完成したのである。
そして、私たち4名とみさきと直樹によって明日からの共同探査活動の予定の確認が行われた。
普通の人間の宇宙飛行士なら、宇宙食での歓迎パーティーとなるのであろうが、
私たちサイボーグアストロノーツにとっては、ものを食べるという作業は必要なくなっている為、
少しの仲間同士の会話を楽しむ時間を過ごすことにしたのである。
私と未来をはじめとした火星にいるメンバーは、もう5年半もの間、食べ物を食べるという人間としての習慣を
奪われた状態が続いていることを改めて思い知ることになった。
もう、食べ物の味などというものは忘れてしまっているし、食べるという習慣自体、自分たちの現在の
身体にとって必要では、無くなっているのであった。私たちが活動していくためのエネルギーは、人間の時と違い、
自分自身で作ることが出来るのであり、全く周囲から独立した存在として活動できるようになるため、
本来の人間の身体を機械部品と電子機器に置き換えられたのである。
それが、ここにいる6体のサイボーグアストロノーツの正体であった。
私たちは、つきぬほどの話をしながら、いつの間にか、6体での火星生活の第一日目が過ぎていったのであった。
地球上の人々は、この火星でのサイボーグアストロノーツたちの再会に歓喜の表情で見ていたのであった。
この時に、火星植民地計画への民意がさらに高まっていったのである。
地球上の人々は、火星上のサイボーグアストロノーツが、いろいろな苦労を克服しての仲間との再会と
火星の未知の大地のマッチングに酔っていた。
澤田は、このチャンスに火星への植民者決定権や催行時期を決定する権限などの火星植民計画の
重要な権限を澤田に集中する法案を可決させることに成功した。
もう、ほとんど、火星への移民を行う澤田の野望を阻害する要因はなくなっていたのであった。
後は、地球上での我が国の国民の一部の生存を保証する計画の決定と火星への移民の実行であった。
澤田は、澤田も含めた選ばれた指導者たちのサイボーグか手術のタイミングも考えていた。政治の道具として、
効果的な時期を選ばなければならないだろうと思っていた。
自分自身の身体も政治のため、国民のために道具にする覚悟は出来ていたのであった。
2Y658D00H00M00S。
私たちは、火星探査の任務を4体のサイボーグアストロノーツで行うために、はるみとルミの
火星探査・開発用サイボーグの身体の徹底的なメンテナンスチェックを2日間で行って、今日から、
火星の南半球の探査旅行に出かける準備に入った。
今度の探査旅行が、第一次火星探査チームの私と未来にとっての最後の探査旅行であり、
第二次火星探査チームのはるみとルミにとっては最初の探査旅行になるのであった。
今回の火星探査旅行の期間は、350日前後となる予定であった。
準備が整い、4体の火星探査・開発用サイボーグが、ベースキャンプを後にしていった。
「どう。火星の大地に踏み出した感想は?」
私の問いかけに、はるみが、
「もの凄く感動している。自分の身体をサイボーグアストロノーツの機械部品と電子機器の
身体にするという犠牲を払っても来た甲斐があったわ。」
ルミも、
「この光景の中にいるということが嬉しいわ。今この時、サイボーグアストロノーツの
火星探査・開発用サイボーグに改造手術処置を受けて良かったと思える瞬間ね。」
二人とも前向きに自体をとらえ、火星探査を最高の栄誉と考えて行動を開始したのであった。
彼女たちは、自分がサイボーグになったことを誇りにさえ思っているのである。
私たちの探査旅行は、順調に進んでいった。
地球上では、多くの我が国の国民が、火星の植民地化がさらに身近なものになったという思いを持ち、
自分たちの移民地建設を望むような意識が強くなっていった。
ただし、人々は、かなりの過酷な土地での生活に適応した身体処理が必要になるだろうことも
理解するようになっていて、火星に行くために、身体処理を受けるチャンスを求める動きも盛んになってきていた。
民意が、サイボーグという人間の存在を肯定すること、その存在になることへの違和感の解消に
向かっていったのである。
そして、火星での優秀な指導者が必要であるという世論が高まっていった。
その中で、澤田が火星での指導者になって欲しいという民意も形成されていった。
澤田は、この機会を逃さなかった。協力政党や野党の党首と次々と会談をして、
火星植民地のリーダーに澤田が納まることの約束と、地球上の次期指導者に三谷紘子を据えることを
約束を取り付けた。
そして、火星の為政者として、協力政党や野党からも火星へ行く候補者を出させることに成功した。
澤田は、国民の中からも火星移民の候補者を選出すると発表した。希望者を国民から募ることで、
開かれた火星移民計画をイメージさせ、限られた人間しか行けない星というイメージを払拭する狙いがあった。
しかし、身体の改良が必要であり、そのことに、精神的、肉体的に耐えられる肉体であることが条件として
アナウンスされた。
選考された国民が、火星に行くための準備をするのは、かなり先の話になるということが現時点では、
決まっていた。しかし、火星行きの切符を手にしたい人間の数は多く、選考定員の100倍にも及んだ。
それだけ人気の高いミッションであり、この計画でのサイボーグアストロノーツたちから送られてくる映像が、
刺激的であることで、サイボーグへの憧れがふくらんだと同時に、地球上の緊張感の高まりの表れであった。
そして、国民に政府が、火星移民計画に本腰を入れて取り組む事を示すため、澤田は、
自分を含めた数人の火星植民地の指導者になる予定の人間の火星定住対応型サイボーグへの改造手術を
行うことを公表した。
そして、澤田は、自分が火星定住型サイボーグへの手術を受ける時に、地球上のこの国の舵取りを
三谷紘子に禅譲すると発表した。
この発表を火星での火星探査・開発用サイボーグたちの活躍に酔いしれる国民は、
大歓迎で受け入れると共に、応募した火星移民希望者が旅立つ日を心待ちにし、
それに憧れる国民という民意が形成されていった。
澤田は、第一次火星探査チームの帰還に合わせて自分も含めた火星植民地のリーダーが、
火星定住型サイボーグとして、第一次火星探査チームを出迎えるという青写真を描いていたのだった。
澤田は、自分と中山や寺田の3名が、火星定住型サイボーグへの改造手術を最初に受けることを
決断したのである。火星に移民する指導者として、火星人となって火星からの帰還者を出迎える演出が現状では、
国民に一番アピールできる演出なのであった。 第一次火星探査チームが火星を離れた直後というタイミングが、
自分自身のサイボーグアストロノーツへの改造手術のXデーとした。
そして、火星定住型サイボーグであり、首相として、火星からの帰還者を出迎えた後、
三谷にこの国の宰相の座を禅譲し、火星へと旅立つのである。三谷は、橋本共に、時期を見て、
地球上での悲惨な戦争でも生き残ることが出来る核・化学・生物兵器戦対応型サイボーグへの改造手術を
受けてもらうことになるであろう。本人たちは、その覚悟を既にしているが、国民に不安の無いように、
新指導者を替えることと、人間の改訂増補版の指導者を据えることの民意をどの様に
形成していくかが課題だった。
しかし、お誂え向きという言葉は不謹慎なのであるが、隣国がきな臭さをさらに増している状況が発生し、
全面戦争も起こりかねない緊張が少しずつ増しているのであった。
澤田は、その緊張状態をどこで利用するかが鍵であったし、どの様に利用するかも考慮しなくてはならなかった。
しかし、澤田には、その時の目算がこの時立っていたのである。
そして、その目算は、大正解を引き出す結果となるのだが、この時は、
澤田の頭の中だけにしまわれた青写真であったのだった。
3Y340D00H00M00S。
私たちが火星探査・開発用サイボーグ4体で行う大探査旅行も何事もなく終了をした。
私と未来は、最後の火星上でのメンテナンスを受けるため、メンテナンスチェアにサイボーグ体を固定した。
はるみとルミにとっては、初めての火星上でのメンテナンスになる。
長期探査旅行のダメージがサイボーグアストロノーツの身体にないかどうかを点検し、
整備するために必要なことであった。
4日間にも及ぶ、火星探査・開発用サイボーグ専用メンテナンスチェアにサイボーグ体を固定された時間が
退屈な時間が過ぎていった。
3Y344D00H00M00S。
私たち4名の火星探査・開発用サイボーグは、火星探査・開発用サイボーグ専用メンテナンスチェアに
サイボーグ体を固定された状態を解除し自由の身になった。
私と未来は、火星を離れる準備をみさきと共に開始した。6日後に火星を離れる事が決まっているのだ。
地球時間での4年間に及ぶ火星での生活による探査活動を終了し、地球に向けて帰還するのであった。
私たちは、地球への旅立ちの準備に追われた。
惑星探査宇宙船「希望1号」の火星離陸準備のチェックをみさきがおこない、直樹が補助して順調に行われている。
そして、私と未来は、自分たち、火星探査・開発用サイボーグの身体の最終チェックと
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグであるみさきの身体のチェックをはるみとルミに手伝ってもらいながら行った。
全ての作業が順調に行われた。
地球上では、澤田たちの火星定住型サイボーグへの改造手術の日が迫っていた。
自国内の世論をまとめた澤田であったが、国際世論は当初澤田にとってきびしいものであった。
国際社会のマスコミは、澤田の計画を耳にした時、「史上最悪の独裁者」「現代のマッドサイエンティスト」
といった論調に終始した。
各国の反応も、狂気の計画であるという反応が大勢を占めた。
しかし、各国の反応は、火星を一国の権益に出し抜かれた敗者のやっかみも多分に含まれていたのである。
しかし、その論調が変わってきたのは、この国を取り巻く情勢が、抜き差しならないものであることを各国が
認識した時であった。澤田以上の狂気の独裁者が周辺国に存在することを各国が認識すると共に、
澤田の決断は、勇気ある決断と評価を受けることになる。
そして、澤田が、核戦争や化学戦争といった非常の戦争に巻き込まれた時のために、対核、
対化学戦争にも生き残ることが出来るサイボーグの研究が完了し、
開発計画が進められているという情報が流れるに至って、澤田が率いるこの国が、
第2の警察国家として注目されるようになった。
そして、澤田の決断を評価し、指示する首脳が飛躍的に増大すると共に、
火星移民計画に自分の国も乗せてもらいたいという意志を示す元首が急増した。
澤田は、完全に、全世界のスーパーヒロインの地位を手にしたのであった。
しかし、周辺諸国の焦臭さは、澤田の計画が世界に指示されるに従って、増していった。
近隣の数カ国は、完全に敵対国として、警戒を強めていたのであった。
3Y350D00H00M00S。
私と未来、みさきが火星を離れる日がやってきた。今までの長期間にわたり収集した火星のデータを地球に
持ち帰り、火星植民地化のためのデータにするのである。私たちの任務は地球に帰還して、
データをマザーコンピュータに吸い上げるために、データ交換用処置台に取り付けられるまで完了しないのである。
はるみとルミ、直樹に別れを告げ、私と未来は、惑星探査宇宙船「希望1号」に乗り込んで、
コックピット内の火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルに横になり、
再び完全拘束ベルトにより火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルの中に固定された。
火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルのふたが閉まり、火星からの離陸を待つのみとなった。
再び、私と未来は、単調な210日間のアクティブパートとレストパートの単純な繰り返しの日々が続くのであった。
全ての準備が整った。惑星探査宇宙船「希望1号」のハッチを閉めることをみさきが行った。
そして、火星からの出発の時が来た。
3Y350D10H00M00S。
惑星探査宇宙船「希望1号」のメインエンジンに2年240日ぶりに火が入る。
轟音と共に火星の赤い大地から惑星探査宇宙船「希望1号」が離れていく。
火星上の惑星探査宇宙船「希望2号」の映像が小さくなるのをメインモニターで見つめることが出来た。
赤い大地がどんどん遠くなっていく。火星の大地で活動するために普通の人間を捨てた私たちが、
地球という火星用のサイボーグにとって暮らしにくい場所に連れ戻されていくのであった。
火星周回軌道に程なく入り、火星の重力を利用し地球へ向けての軌道に入っていった。
私と未来、みさきの3体のサイボーグアストロノーツは、地球に向けての道をたどりはじめたのであった。
地球上では、全世界の人々が、火星から地球に帰還するサイボーグアストロノーツの3体の姿に
注目していたのであった。
これから、このサイボーグアストロノーツたちが、どんなデータや火星のサンプルを持ち帰るのか、
210日後を心待ちにする日々が始まったのである。
コックピットのメインモニタースクリーンに映る赤い星がどんどん小さくなっていくのがわかった。
私たちは、地球に本当に帰還しているのであった。地球に帰還した後、私たちは、この醜い姿のまま、
記者会見や帰還報告会といった活動を行ったり、研究材料になったりするため、
このままの姿でいなければならないのだ。
私たちは、きっと、人類の動く記念碑として、生涯の間、奇異の目に晒され続けるに違いなかった。
私たちは、それでもこのサイボーグアストロノーツという機械部品と電子機器にほぼ全てを置き換えられた異形の
身体で生きていかなくてはならないのであった。
私たちに死を選ぶ権利はないのだし、元の温かい血の通う人間本来の身体に戻れる権利もないのであった。
それでも、私は、生き続けられる限り生きていこうと思った。
地球上で、温かい太陽を浴びて暮らせることを願っていた。
「もうすぐ、地球に帰れる。」
心の中でそう思い、無事に帰れることを祈った。
どんな姿になろうとも、私は、自分が生を受けた星で暮らしていきたかったし、それが当たり前だと思っていた。
しかし、私の運命は、私の願いが叶わない方向に動き出そうとしていた。
しかし、この時の私は、そんなことは、思っても見ないことだったし、奇異の目に晒されても、
地球にいれるものだと思っていた。
今日はここまでです。
いよいよ、はるかたちが地球に向けて帰還することになります。
地球到着までの間にもいろいろなことが起こることになります。
いよいよ大詰めとなってきましたので、
少し気合いを入れて書こうと思います。
333 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/10(木) 15:49:58 ID:IC57BO4v0
【癒された心】
ここはある地下通路。そこにひとりの少女が横たわっていた。
彼女の体はかなりボロボロで、左手足を失い、その中から
機械が見えていた。少女は幼いころテロ事件に巻き込まれ、
家族と生身の体を失った。そのため、無事だった脳と生殖
器以外のすべてを義体化せざるおえなかったのだ。それで
も彼女は必死に生きてきた。みんなに機械人形とバカにさ
れても、大人から冷たくあしらわれても。そして誰も信じ
ることができなくなった少女は、施設から脱走した。施設
の特殊部隊が追いかけてきても、彼女は義体の能力で逃げ
延びることができた。
そして数年の月日が経った…。少女はある地下水路に作ら
れたバラックを住処とし、売春をしながら毎日の生活を送
っていた。Hをしている間だけは、自分が人間だというこ
とを思い出させてくれる。少女はたった一つ残された生身
の部分であるアソコを感じながら自分がまだ生身だったこ
ろの昔を懐かしんでいた。でも、いくらこんなことをして
も自分が元の生身の体に戻るわけでも、楽しかった家族と
の生活が戻るわけでもない。機械の体は、彼女に本当の安
らぎを与えることはなかったのだ。そして運命の日。いつ
ものように彼女は売春の仕事から帰ったそのとき、突然バ
ラックが爆破された。特殊部隊がここをかぎつけたのだ。
少女は命からがら逃げ延びたが、重傷を負ってしまった。
そして、この通路に逃げ込んだのだった。このまま死にた
くない…。そう思った少女は、痛みを忘れるために残った
右手でパンツを脱いで、たった一つの生身の部分であるア
ソコをいじりだした。
334 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/10(木) 15:51:30 ID:IC57BO4v0
すこしずつアソコをいじりながら少女はまだ小さかったころ
のことを思い出していた。(あのころはよかったな…パパと
ママと一緒で、毎日が楽しくって…。いたずらして怒られた
こともあったっけ…。あの事件がなかったら、今頃あたしも
…)少女の目にひとすじの涙がこぼれ落ちた。(あたしの人
生ってなんだったんだろう。あたしはこんなことのために生
きているわけじゃないのに…。でも、こんなところで死にた
くない。あたしはもっと生きたい。やりたいことだっていっ
ぱいあるし、叶えたい夢だってある。だから…)少女は四つ
んばいのまま、少しずつ前へ進んだ。失った手足からはビク
ッ、ビクッと震えながら義体用の人工血液が少しずつ流れ出
ていき、いじりすぎて気持ちよくなったアソコからは、唯一
自分が人間だという証である愛液が次々と流れ落ちていく。
それでも少女はかまわずに通路の出口へと進んでいった。
335 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/10(木) 15:53:00 ID:IC57BO4v0
少女はゆっくりと出口に向かって進んでいく。途中何度か休みながら、
なんとか外へ出ようと残った右手足を動かしながら、外へ出ようとし
た。失った手足の傷口から激痛が走り、気を失いそうなときもあった。
それでも彼女は外へ出たい、自由になりたいの一心で通路の出口に向
かった。それからしばらくすると、先の方にかすかな光が見えてきた。
(ああ、出口だ。やっとあたしは自由になれるんだ)少女は這いなが
ら光の方へ向かっていった。光はしだいに大きくなり、少女の顔を照
らしていく。そしてついに、通路から出ることができたのだ。外は夜
だったが、月の光が少女をやさしく照らし出した。(きれいなお月様
…なんだか心が休まるみたい…)少女はもっと近くで満月を見るため
に、がらくたが積み重なった山の頂上に向かって這い出した。途中何
度も転げ落ち、所々服や皮膚が裂けていったが、よく見えるところで
満月を見たいと思ったので、がんばってがらくたの山の頂上をめざし
た。
336 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/10(木) 16:02:10 ID:IC57BO4v0
どのくらいの時間が経ったのだろうか、少女はほとんど裸になりなが
らも山の頂上に着いた。失った左の手足の傷口からは皮膚がぼろぼろ
に裂け、人工筋肉は切れた部分からほどけ落ち、人工神経や血管が露
出した。残った右手足も所々皮膚がなくなって、スーパースチールの
骨と人工筋肉だけの状態になっていた。背中も服と皮膚が破れ落ち、
人工筋肉が見えていた。それでも彼女は満足そうな笑みを浮かべてい
た。(月ってこんなに大きくて、優しいんだ…。まるでパパやママの
よう…)少女はほとんど骨だけになった右手を月の方にのばした。
(パパ…ママ…逢いたい…もう一度…逢って…抱きしめたいよ…)
少女は両親のことを思い出したのか、いつのまにか両目から溢れるば
かりの涙を流していた。
337 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/10(木) 16:03:15 ID:IC57BO4v0
すると、どこからか聞き覚えのある声が聞こえたような気がした。
(え…逢いにきてくれたの…パパ…ママ…!!)その声の主は彼
女の両親だった。(これは夢かもしれない。でもあたし、それで
も嬉しい!!)少女は最後の力を振り絞って起き上がった。目の
前には懐かしい父と母の笑顔があった。少女は父の胸の中へ飛び
込んでいった。(パパ!ママ!あたし、寂しかったよ、辛かった
よ。でも、もういいよね。もう手を離さなくてもいいよね…だっ
て、こんなに嬉しいことってないもの…)少女は嬉しさのあまり、
ぎゅうっと抱きしめた。(もう、苦しいことや、辛いことなんて
思い出さなくていいんだ。これからはずっとパパやママのそばに
いられるもの…)そう思いながら彼女は目を閉じた。
こうして少女は家族のもとへと旅立っていった。それが少女にと
ってよかったかどうかは知る由もない。しかし、彼女は今までの
人生のなかで一番幸せな時を過ごすことができた。少女は、本当
の安らぎを手に入れたのだ。
全米が泣いた
>>333-
まず特殊部隊に追われる理由が不明。
特殊部隊から易々と逃亡するのも?
でも平易で読みやすい文章は好印象。
段落を2〜3行に留めて、段落ごとに
空行を入れるとさらに見易くなるかも。
SSとして適当な長さで終わってるのも良い。
まずはお疲れさま。次の主人公はもう少し
幸せにしてやって欲しいな。w
340 :
今何時?:2005/11/11(金) 23:40:32 ID:UxFBaNUIO
【オーバーホール】
晩秋の折り、寒風身を刺す季節となりました。赤城はるな様におかれましてはいかがおすごしでしょうか。さて、今年も恒例のオーバーホールの季節がやってまいりました。つきましてはご予約の上、ご来院ください。
斎藤病院サイボーグ科 斎藤雄一
でんわ
0495-〇〇〇-××
あぁ〜あ...
オーバーホールや〜だなぁ...
341 :
今何時?:2005/11/12(土) 00:02:41 ID:TxAu2gAsO
「なんで? なんでなの? なんで機体メーカーの人はメンテナンスフリーの機体を開発してくんないの...」
あたしはひとりで欝になってた。
だってオーバーホールだよ?バラバラだよ? 機体とはいえ人工ながら血もかよってれば排泄さえするこの体。おもいっきりスプラッタビデオじゃない。
それよりも嫌なのは機体装着者用の病衣を着ること。
哀しいかなあたしはポッチャリーナ。
スクール水着みたいなデザインでスケスケの病衣を着ると気になる二の腕、お腹、太股の隠し様がないのね。 おまけにおっぱいばっかりがバカみたいに大きいし...
オーバーホールまであと二日
>>340 赤城はるなと聞いて久しぶりに神様はサウスポーを思い出した。
こういう子を
「機体のくせに恥ずかしがってんじゃねーよ」
と罵倒してウルウルさせてみたい。
3Y351D00H00M00S。
地球上では、昨日の第1次火星探査チームの火星出発が話題になっていた。
サイボーグアストロノーツたち3体が、いつ地球に帰還するのか、無事に帰還できるのか、
どの様なデータを持ち帰るのかと言った話題が、マスコミを賑わせ、全世界の人々の話題の中心となった。
冷めやらぬ、全人類の興味と希望の中で、火星移民隊の指導者たちの火星定住型サイボーグへの
改造手術の開始が発表された。
全世界の人々が好気と火星への特権階級への羨望の目を送っていた。
澤田をはじめとした火星定住型サイボーグが、第1次火星探査チームの地球帰還までの話題の
中心になることであろう。
3Y360D00H00M00S。
澤田が、中山、寺田と共に宇宙開発事業局に到着した。
澤田は、宇宙開発事業局のプレスルームに直行すると早速、木村と共に記者会見に臨んだ。
自分がサイボーグアストロノーツとして、火星に移民する為にサイボーグ改造手術を受けることになったこと、
自分が手術中の国政を副首相の三谷に任せることを発表した。火星への移民計画が順調に進んでいて、
計画の結実の第一弾として自分たちの火星定住型サイボーグへの改造手術が当てはまることなどを記者会見で
発表したのだ。
記者たちは、澤田たちの勇気と火星移民計画をたたえる論調を発表した。
この国が、サイボーグという人間の身体を機械部品と電子機器で置き換えて過酷な環境の中で生存を
保証する方法を賛辞を持って受け入れたのであった。
澤田は、会見を終わり、木村と共に、局長室に戻っていった。
「瑞穂、いよいよ、あなたの身体を火星での永住に適するように変更することになるけど、本当にいいのね。
後悔はないわね。」
「玲子、もちろんよ。私が、自分がこうだと決めたことを後悔したことがある?
それよりも、玲子も一緒に手術を受けるのだから、あなたの方が後悔しているんじゃないの?」
「私は、もう、この仕事を受けた時から覚悟してるから、後悔なんてないわ。それに、私は、身体の構造上、
もうサイボーグと言っていいような状態だから、サイボーグとしての強化手術に過ぎないから、
あまり劇的な変化をする時の決意とは違うと思っているわ。」「それは、私も同じでしょう。
前回のラバーフィットスーツ装着時にの時に大幅に身体をいじられているもの。」
「瑞穂が言うとおりだわ。だから、逆に瑞穂のサイボーグ手術は普通のラバーフィットスーツを
装着した陽子さんよりはるかに簡単に行えることになるんだけどね。」
「私は、それだけサイボーグに近い存在にされているということなんだよね。サイボーグの強化手術か・・・。」
「それでは、瑞穂、処置室に移動するわよ。もう陽子さんと寺田大臣は手術処置室に入っているわ。」
木村が澤田を促して、二人は、火星定住型サイボーグへの身体の変更のため処置室に移動した。
それぞれの処置室に入っていった。
澤田の処置室には、濃紺の人工皮膚に包まれた如月えりかと医療スタッフの前田緑が薄桃色の
ラバーフィットスーツを装着された姿で、そして、技術スタッフの佐藤絵里が、薄黄色のラバーフィットスーツを
装着された姿で待っていた。
「一足先に改良型火星探査・開発用サイボーグに改造されてしまったわ。私の手術も成功しているし、
現在55名のサイボーグたちは、順調に任務をこなしたり、準備のための訓練に励んでいるわ。
火星植民地化計画は、順調に進んでいる証拠よ。」
地球上での視覚確保のために視覚保護シールド用ゴーグルを取り付けた如月えりかが話しかけた。
「えりか、その濃紺の人工皮膚似合っているわ。訓練は順調のようね。
私も、火星に移民できる身体にこれからなるわ。」
「瑞穂さん、ありがとう。後は、もっと訓練を積んで、火星に行くだけよ。
お姉ちゃんが帰ってくるのを出迎える任務が残っているけど・・・。
それから、今日から、瑞穂さんの火星定住型サイボーグへの改造手術処置のお世話をさせてもらうわ。
よろしくお願いします。」
「えりか、こちらこそよろしくね。それに、前田ドクターと佐藤ドクターよろしくお願いします。
おふたりも、火星移民メンバーに入ったそうね。お先に火星で活動できる身体になって、火星で待っています。」
澤田の言葉に、前田が答える。
「ありがとうございます。首相。私たちも、すぐに後を追わせていただきます。
火星の大地に立てること楽しみにしています。その前に首相という重要人物の処置をさせていただきます。
それでは処置を開始させていただきます。まず、ラバーフィットスーツを脱いでもらうことからはじめます。
処置の一部始終をごらんになっていただきます。ご自分に施された処置を認識していただくためですので
ご勘弁ください。」
「私は、自分の処置を見ていたいから、気にしないで下さい。さあ、始めてください。」澤田の言葉に、前田が、
「それでは、火星定住型サイボーグ改造手術処置を開始します。身体の感覚剥奪処置を開始します。
如月少佐、パネルの操作お願いね。」
こうして、澤田のサイボーグアストロノーツへの手術が開始された。
澤田は感覚を剥奪され、視覚と聴覚のみとなった。痛みやかゆみなどの他の感覚は全く感じることはなかった。
そして、コミュニケーションの手段として話をすることも可能であった。
如月えりかが問いかけた。
「瑞穂さん、後気分はどう?」
「えりか、気分といっても何にも感じないわ。ただ、声が聞こえて、私の前のモニターを見ることが出来て、
話せるだけ。」
「瑞穂さん、それでいいの。前田ドクター、感覚剥奪処置は完了です。完璧に状態になっています。」
「それでは、ラバーフィットスーツを脱がせる処置を開始します。」
佐藤ドクターが指示を出した。
澤田のラバーフィットスーツの裏側と皮膚の間にラバーフィットスーツ専用剥離剤が注入され、
ラバーフィットスーツを脱がせる作業が開始された。ラバーフィットスーツ専用剥離剤の効果が
現れるまで数時間、澤田はそのまま放置された。
「身体の感覚はないけど、何か熱くなったように感じるわ。」
付き添いの如月えりかに澤田は話した。
「瑞穂さん、剥離剤が効いてきた証拠よ。生体皮膚が化学反応を起こしているんだわ。」
「感覚が普通にあったら気絶しても不思議じゃないわね。」
「そうね。かなりの激痛があっても不思議じゃないんだって。
さて身体の方は、データ的にも、もうラバーフィットスーツを脱げるようだわ。
ドクターを呼びますね。ラバーフィットスーツを脱いだ自分の姿を見ると自分が
人形になったみたいでなんか変な感じになるよ。でも、瑞穂さんの場合、ラバーフィットスーツ自体が透明で、
いまも人形のように見えるから違和感を感じないかもしれない。」
「えりか、そう言うものなんだ。じっくり、ラバーフィットスーツを着るために改良された私の全裸を見るのが
待ち遠しいわ。」
「それじゃ、すぐに見れますよ。首相。」
佐藤ドクターがそう言って、ラバーフィットスーツのジッパーを専用の道具を使用して開封していった。
澤田の身体は、ちょうど昆虫の脱皮のように透明のラバーフィットスーツから取り出された。
ラバーフィットスーツ専用剥離剤を洗い流し、生体皮膚を安定させるための
ラバーフィットスーツ専用生体皮膚安定処置剤を前田と佐藤と如月の3人で手早く澤田の全身に塗りつけた。
澤田は、処置台に上がった時に、バックパックやヘルメットを外した状態だったので、バックパックやヘルメットを
外す処置は必要なかったが、処置室のラバーフィットスーツ装着処置者専用の生命維持装置と澤田を接続した。
これで、澤田を火星定住型サイボーグへの改造手術の準備は整ったのである。
生体皮膚の安定を待って手術を開始するばかりの状態になったのであった。
「瑞穂さん、久しぶりの生の全裸は如何ですか?」
如月えりかのちゃかしに澤田は、
「本当に貴方が言うとおりだわ。まるで、マネキン人形を見てる見たい。私の身体だとはとても思えないわ。
爪もないし、体毛だって一本もないもの。えりかもこの不思議な光景を見たのね。
そして、これが、本来の人間の身体の見納めなのね。さすがに感傷的になるわ。
でも、私は、火星で生きれる身体を手に入れるための処置を受けるこれからのことの方に関心があって、
感傷に浸っている暇はないわね。」
澤田は、感傷で決意が揺らぐことがないほど、自分の下した人生の決断に自信を持っていたのであった。
「さあ、ラバーフィットスーツを装着した時と同様に、卵子を保存の為に採取します。排卵促進剤を投与します。
首相。48時間、絶頂の連続に浸ってください。最後の性感の絶頂を楽しんでください。」
前田は、そう言うと特殊排卵促進剤を澤田に投与した。薬が投与されると同時に澤田の身体に生理が、
30分おきに襲ってきて、30分に一度の排卵が起きるようになった。澤田は絶頂と生理を30分に一度繰り返し、
前田は、96個の澤田の卵子を採取し冷凍保存を施した。
澤田にとって身体感覚のない中での絶頂感を何度も何度も味わった後果ててしまう。
こうして、48時間持続した最後の性的興奮が終わったのであった。
そして、澤田は、性器のない新しい身体に変身する時がやってきたのだった。
「瑞穂さん。いよいよ、火星定住型サイボーグへの改造手術を開始する日が来ました。」
如月えりかが、澤田に話しかけた。
「いよいよ、火星人へ変身できるんだわ。ワクワクしてるわ。えりか、一緒に火星の大地に植民地を作るんだよ。
今から楽しみだわ。」
「瑞穂さんらしいわ。」
そんな会話が交わされている時、前田と佐藤が入ってきた。
「首相。いよいよ。今日から、火星定住型サイボーグへの改造手術の本番を迎えることになります。
数日後には、完全な火星生活適応型の身体になります。地球人類としての身体の見納めになります。」
「いいわよ。もうこの身体に未練はないわ。手術を開始して、前田ドクター、佐藤ドクター。」
澤田の決意は揺るぎなかった。前田が、
「それでは、手術を開始します。まず、呼吸システムの処置に入ります。
如月少佐、外付け型人工心肺システムの用意をお願いします。
人工血液も火星定住型サイボーグ用に開発した高濃度型ガス交換循環液に置換しますから、
高濃度ガス交換循環液を用意して下さい。」
「わかりました。」前田は指示を出すと同時に手早く、澤田の身体を切開し、澤田の身体は、
内臓が完全に見渡せる状態に切開された。
前田は、澤田の身体の心臓につながる動脈と静脈を素早く外付け型人工心肺システムに取り付けた。
これで、澤田は、心臓を介さないでの血液循環システムに切り替えられたのである。
そして、澤田の身体に流れていた白い色をした人工血液は、外付け型人工心肺システムに吸い取られ、
代わりに、高濃度ガス交換循環液が澤田の身体に供給されていった。 澤田の身体に供給されている呼吸液は、
従来の人工血液としてサイボーグアストロノーツに使用されているものより、
ガス交換効率とガス含有濃度を飛躍的に高めた呼吸液であった。この呼吸液を澤田の
身体に取り付けられる新型火星定住型サイボーグ用バックパックのクローズド型ガス交換機から、
心臓の代わりに組み込まれる高性能ロータリーポンプの仲介で体内に循環させる仕組みになっていた。
そして、この新しい呼吸液は、澤田の人工皮膚で生成されたエネルギーをバックパック内の
生体エネルギー変換システムにより生体用に変換されたエネルギーが液が、高濃度栄養液の代替物として、
バックパック内の生体部エネルギー交換機で、循環液に混入されて、生体部分に供給され、
体内の老廃物と交換されるようになっていた。
従って、体内での栄養物の補給と老廃物の除去の動作が全てバックパック内で完結するようになっていた。
若干の排泄物が人工膀胱経由で排泄されるだけになったのであった。
そのため、火星定住型サイボーグは、体内の空間を有効に利用できるようになったのであった。
前田は、呼吸液貯蔵タンクを取り出し、循環液の詰まった新しいタンクを澤田のもともと肺のあった場所に
組み込み、澤田の生体心臓を取り出し、取り出した場所に、循環液循環用ロータリーポンプを取り付けタンクと
接続した。
そして、タンクから伸びるチューブを背中から体外に伸ばした。
そして、チューブの端を外置き型火星定住型サイボーグ改造手術専用生命維持装置に接続した。
さらに、循環液循環用ロータリーポンプから伸びる人口血管を外置き型人工心肺システムから外した動脈と
静脈に注意深く接続したのである。
この結果、最終的にバックパックを取り付けるまでの間、澤田のガス交換と栄養補給および老廃物の排泄は、
外置き型火星定住型サイボーグ改造手術専用生命維持装置でおこなわれることになった。
不要になった小腸や大腸、直腸といった生体内臓が取り出され、人工肛門や栄養液を供給するためのバルブが
澤田の身体から取り除かれていった。
そして、澤田の生体肝臓や腎臓といった血液浄化用の内臓類が新型の血液浄化解毒用システムという名の
高性能人工器官に置き換えられた。この人工器官は、肝臓、膵臓、腎臓といった内臓機能を小型の機械に
代替したものであった。
このシステムが血管に取り付けられ、もう一方が人工膀胱の役割を果たす排泄物貯留タンクにつなげられ澤田の
体内に納められた。
そして、排泄物貯留タンクは、接続チューブを背中から体外に出され、
外置き型火星定住型サイボーグ改造手術専用生命維持装置に仮に接続された。
これによって、澤田の内臓部分は、ほぼ全て機械部品に置き換えられた形になった。
そして、澤田の体内には、広いスペースが確保された。その身体の空いた広いスペースには、
人工皮膚で生成されたエネルギーを貯蔵するタンクと、澤田の記憶や思考を補助するコンピュータや
ハードディスクが搭載されることになった。そして、火星の移民たちが、澤田に忠誠を維持するためのシステムも
搭載された。
澤田の体内に埋め込まれたタンクは、呼吸循環液のタンクと、エネルギー貯留タンクの二つであり、
これらのタンクは、火星定住型サイボーグに組み込まれたエネルギー生成システムや酸素生成システム、
二酸化炭素再生システムなどの火星定住型サイボーグの生命維持のための重要なシステムが
故障した場合でも、これらの貯留タンクにより、最大240時間生命維持が可能になっていた。
もちろん、機械や電子機器の器官へのエネルギー供給も同様の時間可能になっていた。
また、エネルギー貯留タンクは、澤田の胸に取り付けられる予定の光子ビーム砲のエネルギーとしても利用され、
光子ビーム砲をエネルギー無補給の状態で、10時間打ち続けることが出来るように設計されていた。
実際には、エネルギー生成システムから無限にエネルギーの供給を受けるので、
半永久的に打ち続けることが出来るのであった。そして、コンピュータやハードディスク、そして、
大量の電子機器は、澤田が火星上の植民地での移民者の統治に必要なシステムが
全て詰め込まれているのであった。
澤田の首から下は、機械部品と電子機器のかたまりと表現されるものになった。
澤田は、意志を持つ火星のマザーコンピュータと言ってもいい存在になるのであった。
頭部の改造が始まり、目は人間の目よりもはるかに解像度が高く、地球上の明るさからかせいの夜以上の
暗さまでの光度に対応でき、しかも、遠くのもの、そして、物陰のものが見えるような高性能な
人工眼球に置き換えられた。彼女の目は、緑色にひかるゴーグルのようなものになった。
これは視界を拡大するために必要な処置であった。
聴覚は、コミュニケーションサポートシステムと高性能集音機を兼ね備えた人工聴覚に、そして、
口の部分には、人工音声合成機とコミュニケーションサポートシステムの発信器が取り付けられた。
嗅覚は、人工のセンサーに置き換えられ、臭いの分析もできるようになっていた。
澤田の感覚システムは、普通の火星定住型サイボーグと違い守秘機能が完璧になるようになっていた。
そして、彼女の体内の電子機器や生命維持システムなどの機械部品や電子機器、そして、
ごく僅かに残った生体部分を守るための骨格の変換が行われ、カルシウム主体の人間の骨から、
元素変換器によって、成分をチタニウムとセラミックの合成金属に変換された軽くて強い素材に変換された。
そして、骨格の関節部分には、彼女のパワーを20倍以上に増幅させるための補助モーターが取り付けられた。
そして、筋肉も人工筋肉と生体筋肉の生化学合成処置により常人の50倍の能力としなやかさ、弾力性、
強度を持つように改造されていった。そして、切開された澤田の身体は丁寧に生体接着剤を使用して元通りに
修復された。そして、人工皮膚と生体皮膚の融着作業がはじめられた。
澤田の新しい皮膚となるスーパーラバーメタルスキンは、光沢のあるゴム質の赤色をしていた。
この人工皮膚は生体皮膚と融合し、生体皮膚と変わらない機能を持ち、そして、強度があり、耐熱、耐薬品等の
耐性機能が優れていた。
そして、この皮膚は、火星の光や二酸化炭素をエネルギーや酸素に変換する機能を持っていた。
さらに、エネルギー、酸素生成機能を持つ素材が、火星探査・開発用サイボーグのものと比べると
素材が4層にしかれているため、5倍の能力を持っていた。
そして、人工皮膚の厚みが増したため、人間本来の皮膚のような弾力性も実現することができたのであった。
脚の部分は、膝から下が白いロングブーツを履いたように見えるような人工皮膚になっていて、この白の部分は、
硬めの素材になっており、他の、火星の地表などを効率的に踏みしめることができ、
脚のパワーを無駄なく伝えられるようになっている。もちろん脱ぐことができないのだが、
外見的に見栄えのよいスタイルになるように工夫されているのであった。人工皮膚融着剤で脚から丁寧に
澤田の身体に貼り付けられていく継ぎ目のない人工皮膚が、頭部まで澤田の身体の全てが覆われた。
数時間後には、人工皮膚融着剤により、人工皮膚と生体皮膚は全く融合してしまうのである。
そして、澤田の頭部の保護のため、メタルファイバースキン製のヘルメット上の人工皮膚が融着されて、
その部分に人工感覚器が取り付けられた。
そして、火星定住型サイボーグの生命維持や機能の中枢となる重要器官のバックパックが、
澤田の背中に永久固定された。バックパックは、サイボーグアストロノーツの呼吸やエネルギーの交換を
行う重要器官であり、補助コンピューターやコミュニケーションサポートシステムのメインシステムなどの
重要機器が詰まっていて、外部は、メタルファイバースキン製となっていた。また、バックパックにはもう一つの
機能がある。
それは、火星定住型サイボーグのサイボーグ体内で発生する熱を熱交換システムによって放出する機能と、
熱交換エネルギーを電子エネルギーに変換し、サイボーグ体内の電子機器に体内に取り付けられた貯留電池を
経由して再供給する機能があることであった。
澤田の火星定住型サイボーグへの改造が全て終了し、澤田の身体は、脳を覗いた全てに手が
加えられたことになった。火星での定住に耐えられる身体となったのであった。
「これで、私は、火星人になったのね。」
澤田が如月えりかに問いかけた。
「そうだよ。瑞穂さん。これで私と同じように、いいえ、私以上に火星に適応した身体を持つことになったんだよ。」
澤田が、自分の新しい身体を隅々まで点検するように見つめて、
「早く火星の住人になりたいわ。未開の大地を走り回った感想をはるかに聞きたいし、
みんなと一緒に楽しみたいわ。」
澤田は、処置台からゆっくりと起きあがり、前田の指示に従い、新しい身体が正しく機能するのかのテストを
行うため、テストルームに移動していった。
テストルームには、今回、一緒に火星定住型サイボーグへの改造手術を受けた木村、中山、寺田の3名が
火星定住型サイボーグとなった姿で入っていた。
澤田は彼らの姿を確認して、
「みんなも、火星人になったわけね。これからもよろしく。」
そう言った。
「私たちの人工皮膚なんかより、はるかに派手な色ね。
瑞穂が選んだ色は、あなたのお好みの色だといっていたけど、あなたが火星のどこにいても、目立つわね。
私たちは、人工皮膚の色は、薄い茶色になったの。火星の大地にとけ込みやすい色を指定したのよ。
工作活動の時便利でしょ。それに、この色も、渋くて良いでしょ。」
木村がいった。
「他の二人から笑い声が聞こえる。」
テストルームで、機械の調整をしていた火星開発用サイボーグが、
「皆さんの新しい身体の機能テストを開始します。」
と声をかけた。火星開発・定住用サイボーグに一足早く改造手術を受けて、新しい身体を手に入れた水谷だった。
4人は、彼女の指示に従い、自分たちの新しい身体をフルに使うための機能テストと、
馴化訓練が開始されたのだった。
彼女たちの機能テストと馴化訓練は、順調に進み、四日後には、彼女たちは自分の新しい身体を自由に
使いこなせるようになっていた。
普通の被験者であれば、このまま、さらにトレーニングを宇宙開発局で繰り返すのであるが、
この4人には公務があるため、彼女たちは、この後すぐに公務の場に戻っていった。
そして、公務の合間を縫って、サイボーグとしてのトレーニングをこなすことになるのであった。
3Y400D00H00M00S
澤田たち、火星定住型サイボーグになった政府首脳が、初めて国際舞台の場に姿を現したのだった。
国際会議の会議場に澤田が姿を現した。会議場内の各国の首脳から、歓声やうめき声が聞こえた。
澤田の変わり果てた姿に複雑な反応があがったのであった。
澤田が、壇上に上がった姿は、真っ赤な宇宙服を身につけた異星人そのものであった。
彼女は、演壇のマイクではなく、彼女のバックパックに音響システムからのケーブルを接続して、
会場内のスピーカーへ彼女の声が聞こえるようになっているのであった。
肉声をそのまま音響システムに伝達することが出来るからであるし、コミュニケーションサポートシステムの
特性によるものであった。
各国の首脳たちにとっては、現実の世界の出来事とはとらえることがとうてい出来ず、
事態の把握に苦労する首脳が数多くいた。
目の前に、環境の違う世界で生存するために作りかえられた人間が、国の代表者としてスピーチしている姿は、
確かに異様であった。その現実を飲み込むことは並大抵のことではなかったのであった。
そんな周囲の見方を気にする澤田ではないことは明らかだった。彼女は、火星開発の重要性、そして、
火星に生存権をのばすことが人類の未来の新しい選択だということ、火星での人類の存続は、
人体を改造することが今の技術の中では一番有利であること、今の世界情勢から、国の生き残りの方法として、
火星移住を急がなければならなかった事情をわかりやすくスピーチすると共に、
火星の開発にパートナーとなる友好国が名乗り出てくれれば、その国の重要人物や開発のための
エリートたちに火星で生きることに適した身体の提供の用意があり、共同開発をすることが理想であり、
南極条約上の南極以上に公平な土地利用をして、人類の共通国家を火星に建設する主導役を引き受けることを
熱く語りかけたのであった。
各国の首脳は、その熱い思いに感銘を受け、火星での人類共通の国家建設のために協力を申し出る国が、
多く出ることになった。
澤田の行動は成功したのであった。
会議後、澤田主催のレセプションに、協力を申し出た各国首脳が、参加すると共に、
大国の首脳も協力や協議を澤田に申し込むために参加したのだった。
レセプションには、木村、中山や寺田と一緒にえりかも参加していたのであった。
えりかは、火星環境標準室から、サイボーグ搬送用カプセルを使用して、レセプション会場に運び込まていた。
レセプションの席は、さながら火星探査・開発用サイボーグや火星定住型サイボーグの
サイボーグアストロノーツの見本市という様相を呈していたのだった。
各国首脳は、澤田と話したり、その他の首脳やえりか、中山と話しながらも、
彼女たちの姿そのものに興味の中心が集まったのも当然のことだった。サイボーグというシチュエーションと
その宇宙服を着ているような容姿は、充分に好奇心の対象だったのだ。火星に送り込んだサイボーグの実物を
目の当たりに出来るのであるから、誰でも興味が湧くのは当然のことであったのだ。
澤田にしては、自分の信念があるから、自分の身体のことを好奇心で見られても何とも思わなかったし、
えりかにしても、もう、サイボーグアストロノーツとしての生活がかなり長くなって、
見られることへの戸惑いなど全くなくなってしまっていたので、好奇心の瞳に対してもへっちゃらだったのである。
「えりか、自分の身体の公表範囲での説明は十分にしてあげるのよ。」
コミュニケーションサポートシステムを通じて、澤田からの指示がとんだぐらい、
見られることに慣れてしまっていたのだった。
彼女たちの性能を目の当たりにして、さらに各国の首脳たちは、澤田に対して、
畏敬の念を持つようになったのであった。
そして、澤田の求めたサイボーグアストロノーツ外交は、成功裏に終わったのであった。
今日はここまでです。
はるかたちが火星から帰ってきた時に、
地球は全く別の世界になっている設定にしてみました。
>manplus様
ついに首相までがサイボーグに改造されて話が盛り上がってまいりました
ハンドル名の由来は小説「マンプラス」でであると最近気づきました(違ったらすみません)
ところで、これだけサイボーグがいっぱい出てきた上に登場人物がいっぱい出てきたので
もうそろそろまとめサイトみたいな物を作ってくれるとうれしいのですが。
新人さんの話の続きもみたいな〜
358 :
無名:2005/11/13(日) 15:58:53 ID:299fxsPi0
【かなちゃんと生きる道】
それはある夕方の出来事だった。家族三人が乗った車が大型トラックに激突すると
いう事故がおきてしまった。三人は私が勤務している病院に運ばれたが、車に乗っ
ていた両親は即死状態、後部座席に乗っていた少女も両足と左腕を失い、内臓も破
裂した状態だ。
「このままでは、この子も死んでしまう。今すぐ手術をしなければ間に合わない。
特殊手術室へ運ぶぞ」私たちはこの子を特殊手術室に運んだ。特殊手術室とは、義
体専用の手術室で、義体のストックや専用の手術台、医療器械などが常備されてい
る。普通なら家族の許可が必要だが、このような緊急のときには特別に許可なしで
義体化手術を行うことができる。しかし、彼女は義体化してまで生きたいと思うだ
ろうか。両親も死んで、身寄りもいない、たった一人になってまで生きたいと思う
のだろうか。
そのときだった。彼女の残された右手が私の袖を引っ張ったのだ。もう意識がない
というのに。(そうか、この子は生きたがっているんだ。一生懸命生きたいと思っ
ているんだ)私は決心した。この子を救おうと。この子を生かしてあげたいと。私
たちは特殊手術室に入った。義体化手術は難航し、のべ12時間にも及んだ。なん
とか手術は成功した。彼女は集中治療室へと運ばれていった。私は近くのソファー
に座り込んだ。やるだけのことはやった。あとは術後の様子を見るだけだ。私はそ
のまま眠りについてしまった。
359 :
無名:2005/11/13(日) 16:05:11 ID:299fxsPi0
それから三週間がたった。彼女はようやく起き上がれるようになった。リハ
ビリのおかげで手もある程度動くようになった。昨日から歩く練習も始めた。
私は彼女を診察するために病室へと向かった。「301号室、ここだな」札
には、和多田かなと書かれてあった。彼女の病室は義体専用の個室となって
いる。病室に入り、かなちゃんにやさしく声をかけた。「かなちゃん、調子
はどうかな?」「うん、けっこういいよ。くまさんも持てるようになったし。
このままなら早く退院できるかも」彼女は診察のときも、お気に入りのくま
のぬいぐるみを手放さなかった。かなちゃんが私と会うのは二度目だ。最初
に会ったときは身動きできない状態だった。動けなくて退屈だったかなちゃ
んに、くまのぬいぐるみをプレゼントしたことがきっかけで仲良くなったの
だ。
「それはよかった」「おにいちゃん、ありがとう。かな、おにいちゃんたち
のおかげで、またかけっこしたり、遊んだりできるもの」かなちゃんはうれ
しそうだ。でも、かなちゃんの体はもう普通ではなくなってしまった。交通
事故によって、脳と一部の内臓を残してほとんど全身を義体化したからだ。
つまり、かなちゃんはこれから一生、機械なしでは生きられない体になって
しまったのだ。それでもかなちゃんは、生きる道を選んだ。たとえ機械の体
になっても、一生懸命生きることを選んだのだ。このままいけば、かなちゃ
んは元気になるだろう。だが、不安もあった。両親のことだ。彼女は両親が
死んだことをまだ知らない。それに、退院しても身寄りがいない彼女を引き
取ってくれる人が現れるという保証もない。どうすればいいだろうか。
360 :
無名:2005/11/13(日) 16:07:27 ID:299fxsPi0
「ねえ、おにいちゃん、どうしたの?気分でもわるいの?」悩んでいる私を
見て、かなちゃんは心配そうだ。「い、いや、だいじょうぶ。それよりかな
ちゃん、ちゃんと看護士さんの言うことを聞くんだよ。じゃ、またね」私は
かなちゃんの病室を後にした。不安ばかりが頭に募ってくる。なんかいい方
法はないだろうか。そうだ。引き取る人がいないのなら…。私は計画を実行
するため、院長室に向かった。
「和多田かなを引き取るだと?」私は反対されるのを覚悟して院長にそのこ
とを話した。「神無月、おまえ本気で言ってるのか?」「彼女は両親も何も
かも失ってしまったんです。このまま引き取り先がいないのなら、私が引き
取りたいのです。たしかに義体を維持するのにはお金がかかるかもしれませ
ん。でも、彼女が一人ぼっちになるくらいなら、たとえどんな事があっても
彼女の面倒を見てあげたいのです。もし院長が私の立場ならどうなりますか。
見捨てるわけにはいかないでしょう。だから、かなちゃんを引き取らせてく
ださい!おねがいします!!」さすがの院長も折れたのか、しぶしぶと答え
た。
「わかった、君の所へ引き取らせる手続きをしよう。退院後のアフターケア
もサポートしよう。ただし、条件がある。彼女にはすべてのことを話すこと。
そして、彼女の許可をもらうこと。その二つのことを守ってほしい」自分の
口で言わなければならないのか。それを言ってしまったら、かなちゃんはシ
ョックを受けてしまうだろう。でも、いつかは言わなければならないことだ。
私は決心した。言おう。私の口からすべてを話そう。かなちゃんだって強い
子だ、分かってくれるだろう。
361 :
無名:2005/11/13(日) 16:09:23 ID:299fxsPi0
次の日の朝。私は真っ先にかなちゃんのいる病室へと向かった。正直言って
本当のことを言うのには抵抗がある。でもここで言わないと彼女は一生後悔
するだろう。私は病室のドアをノックした。「はい、どうぞ」重々しくドア
を開ける。そこには、ベッドに寝ているかなちゃんと女性看護士が一人いた。
かなちゃんはちょうど朝食を食べ終わっていた後だった。「君、ちょっと席
をはずしてくれないかな、かなちゃんに大事な話があるから」この事はかな
ちゃんと二人っきりで話さなければならない。看護士は食べ終わっていたプ
レートをもって病室を後にした。
「ど、どうしたの?おにいちゃん、そんな深刻な顔して。やっぱり調子悪い
んじゃ」「い、いや、だいじょうぶ、それよりかなちゃん、大切なお話があ
るんだ。実は、かなちゃんのお父さんお母さんは、もう会えない所へいって
しまったんだ」それを聞いたかなちゃんは今にも泣き出しそうな顔になった。
「それに、君の体は事故のせいで…」「そんなの分かってた。お父さんもお
母さんもいくら入院してたって、かなに会うことはできたもの。でも、会い
にこなかったから、本当にいなくなっちゃったんだって、もう会えないんだ
って…頭で分かってても、死んだなんて認めたくなくて…、かな、これから
どうすればいいの?こんな体になって生きてても、一生一人ぼっちになるの
はいやだよぉ」認めたくなかった現実を突きつけられた今のかなちゃんの心
境は、とても深い、悲しみのどん底にいるに違いない。
362 :
無名:2005/11/13(日) 16:16:07 ID:299fxsPi0
「大丈夫、かなちゃんは私が面倒を見るよ。その方がかなちゃんにもいいと
思うんだ」するとかなちゃんは、溢れるばかりの大粒の涙をながし、よろめ
きながら私の胸の中へ飛び込んできた。「うわぁぁぁん、ごめんね、おにい
ちゃん。ごめんねぇ。」そんなこと気にしなくていいんだよ、かなちゃん。
大丈夫、これからはずうっといっしょだよ。私はかなちゃんの体を抱きしめ
た。たとえ機械の体でも、かなちゃんはとても温かい心を持っている。そう、
それが人間である証なのだから。
そのことがあってから、私は一日に一回はかなちゃんの病室へ出入りするこ
とになった。あるときは診察のために、あるときはリハビリのために。そし
てあるときはお見舞いも兼ねて。そのたびにかなちゃんは少しずつ元気を取
り戻していった。それがよかったのか、かなちゃんは三週間位で歩けるよう
になったのだ。そして、退院の日。私はかなちゃんを自分の家まで送るため、
仕事を休んだ。病院に着いたときには、もうかなちゃんはロビーで看護士達
に囲まれていた。「よかったね、かなちゃん。神無月さんの家で暮らせるよ
うになって」「退院おめでとう、かなちゃん」看護士たちがかなちゃんにエ
ールを送る。「ありがとう看護士のおにいちゃんおねえちゃん。みんなのお
かげで、かな、こんなに元気になったよ」かなちゃんもそれに答える。私は
少し離れた場所で、院長と話していた。「神無月君、これでいいんだね。彼
女を育てる自信はあるのかね」院長の問いに私はこう答えた。「はい。これ
からも彼女の世話をするつもりです。うちにいたほうがかなちゃんも安心で
きますし、私もそうしたいと思っていますから。さびしい思いはさせないつ
もりです」院長はかなちゃんがいる所へ顔を向けた。「君はかなちゃんのお
かげで、医者としても、人間としても一回り成長したようだな。私も、かな
ちゃんと共に新しい人生を送ることを心から願っているよ」「ありがとうご
ざいます!」私は院長に向かって頭を下げた。そう、私とかなちゃんの新し
い人生は今始まったばかり。これからどんな事があっても絶対にかなちゃん
を支えてあげよう。私は心からそう誓うのだった。
363 :
無名:2005/11/13(日) 16:22:33 ID:299fxsPi0
はじめまして。私無名と申します。私の小説いかがだったでしょうか。
サイボーグというジャンルは初めてなので、ちょっと分かりにくいと
ころがあるかもしれませんが、よろしければご感想をお聞かせください。
これから先も、不定期ですが短編を発表したいとおもいますので、よろ
しくおねがいします。
>>363 無名さん、乙!
読みやすくてハートフルないい作品だと思いますよ。私は好きだな。
でも神無月先生褒められすぎ。院長物分り良すぎ。
独身?男性医師が業務範囲を超えて患者に接するんだから止めろよ>院長
この設定じゃ、一歩間違えたら鬼畜系。_| ̄|○
神無月先生の設定年齢を少しあげて、何気に嫁さんとの相談シーン入れて
「義体の維持費は保険と公的補助金でなんとかなる。普通の子供を育てる
くらいでやっていけるはず。かなちゃんに暖かい家庭をあげたいんだ」
って言わせてあげるとmore betterだったんじゃない?
(妹萌え要素がさがるから賛否分かれるところかも。)
乱文失礼しました。これからにも期待してます。
365 :
3の444:2005/11/14(月) 02:49:00 ID:C46LU5Az0
パチパチパチパチ。
私達二人だけのはずのリハビリセンターに乾いた拍手が響く。
あわてて振り返ると、 私のすぐ後ろに私と瓜二つの姿、 格好の女性が立っていた。
「さ、 佐々波さん! いつの間に」
絶句する私を尻目に、 彼女は、 黒髪をなびかせながら身軽な動作で平均台に飛び乗った。 そして、 い
つもの、 人を小馬鹿にするような笑いを浮かべながら、 床にへたりこんでいる私を見下ろした。
「オマエもようやく分かってきたみたいじゃないか。 オレ達は所詮機械人形なんだよ。 どんなに人間とそっく
りでも、 もう人間とは別モノなんだ。 だから、 人を愛したいとか愛されたい、 なんて思うのは諦めな」
「なんで、 あなたがここに?」
タマちゃんが血相を変えて立ち上がった。 いつも私と接するときの穏やかな顔とはまるで別人みたいな、
険しい顔つきだ。
「なんだよ、 汀。 オレがここにいちゃ悪いかよ。 暇だったからメガネザルをからかいに来たんだよ。 心を消
して欲しいなんて、 ずいぶん面白いことを言ってるじゃないか?」
佐々波さんは、 平均台のけば立った木の繊維をむしり取ると、 タマちゃんに向かって指で弾き飛ばして
挑発した。
「あなたはいつまでそうやって、 自分の殻に閉じこもって逃げるつもりなのかしら? 人のことを馬鹿にするこ
とで、 自分が救われるとでも思っているのかしら? 厳しいことを言うようだけど、 あなたは意気地なしね。
玲子さん。 ふふふ」
タマちゃんは、 精一杯虚勢を張る不良学生をたしなめる百戦錬磨の体育教師さながらに、 佐々波さん
の挑発を余裕たっぷりに受け流すと、 さもおかしそうに笑った。 タマちゃんの言葉を聞いた、 佐々波さんの
アイドルみたいな綺麗な顔が、 醜く歪んだ。
「その名前、 もう一遍言ってみろ。 殺すぞ」
佐々波さんは、ひらりと平均台から飛び降りると、 右手でタマちゃんの胸倉を掴見上げる。 背の低いタ
マちゃんは、 たちまち爪先立ちになるまで引っ張り上げられてしまった。 このままじゃ、 タマちゃんが、 殺さ
れちゃうよ。 佐々波さんを、 止めなきゃ、 止めなきゃ。
366 :
3の444:2005/11/14(月) 02:49:56 ID:C46LU5Az0
「タ、 タ、 タ、 タマちゃんに何するんだ! やめなよ! きゃっ!」
私は精一杯勇気を振り絞って佐々波さんに飛びつこうとした。 そのつもりだったんだけど、 自分の身体
に繋がってるコードをうっかり踏んずけて、 バランスを崩して転びそうになっちゃったんだ。 お陰で、 身体に
変な勢いがついちゃったんだろうね。 頭から、 うまく佐々波さんの腰に突っ込む形になって、 私は佐々波さ
んもろとも地面に転がった。 幸いなことに、 タマちゃんは、 佐々波さんが、 突然飛び掛ってきた私に驚いた
隙に、 腕を振りほどいて上手く逃げ出せたみたい。
「てめえ、 邪魔しやがって!」
私の下敷きになった佐々波さんは乱暴に私を突き飛ばした。 呻き声を上げて、 なすすべもなく、 床を転
がる私。 すばやく立ち上がった佐々波さんは、 私の腕を踏みつけた。
「い、 痛いっ! な、 何するんだよう」
「ふん。 まず、 オマエからぶっ壊してやろうか?」
佐々波さんは私に向かって憎憎しげにそう言うと、 腕を踏む足に力を込めた。 このままだと、 私、 本当
に壊されちゃうかもしれない。
「タマちゃん、 助けてっ!」
激痛に耐え切れず、 悲鳴を上げる私。 タマちゃんを助けるために佐々波さんに飛び掛ったのに、 逆に
タマちゃんに助けを求めるなんて、 私ってなんて情けないんだろう。
タマちゃんは、 私のピンチにあわてる風もなく、 白衣の胸ポケットから小さな黒い箱を取り出して、 かち
っと、 箱についている赤いボタンを押した。 そのとたん、 佐々波さんは、 糸の切れた操り人形みたいに、
私の上に崩れ落ちちゃった。 あのボタンは義体のスイッチで、 佐々波さんは、 義体の電源を落とされたに
違いない。 力の強い義体の人を相手にしなきゃいけないんだもの。 いざって時のために、 やっぱりそういう
道具もケアサポさんは、 持ってるよね。
「あーあ、 こういうことは余りしたくないんだけどね」
折り重なるように床に倒れている私たちを見下ろしながら、 タマちゃんは深いため息をついた。
367 :
3の444:2005/11/14(月) 02:50:56 ID:C46LU5Az0
「八木橋さん。 助けてくれてありがと。 腕はなんともない? まあ、 あのくらいで壊れるようなやわな義手じゃ
ないから大丈夫だとは思うけどね」
タマちゃんは、 私の上で動かなくなった佐々波さんをごろんと転がして、 佐々波さんの下敷きになってい
た私を助け起こしてくれた。
「汀っ、 てめえ、 オレの身体に何をしたっ。 元に戻せよ」
佐々波さん、 身体が動かせなくなっても、 声は出せるみたいだ。 でも、 さっきまでの勢いはどこへやら。
私達二人に見下ろされて、 怯えた負け犬みたいに、 弱弱しく毒を吐いている佐々波さんは、 私の目にはひ
どく哀れに映った。
「ごめんなさい。 義体の電源を切らせてもらいました。 暴れないって約束するなら、 元に戻してもいいけど
ね」
「オマエこそ、 二度とオレのことを玲子って呼ぶな」
「そうね。 私も迂闊でした。 ごめんなさい。 れいじさん。 でも、 どんな理由であっても男が、 かよわい女に
手を上げるのは感心しませんけど? ねえ、 八木橋さん。 ふふふ」
タマちゃんは、 私に向かって、 いたずらっ子みたいな無邪気な表情で微笑んだ。
佐々波さんは、 玲子って名前で呼ばれることに我慢できず、 れいじっていう男みたいな名前で呼んでほ
しいらしい。 男が女に手を上げるだなんて、 タマちゃんも佐々波さんを、 れっきとした男として扱っているみ
たいだ。 でも、 佐々波さんの身体は女性用の標準義体。 女性じゃなければ、 そんな身体のはずはないよ
ね。 昨日、 佐々波さんは、 「本当の自分の身体なんてどこにもありはしない」って言っていた。 そのことと、
今の二人のやり取りと、 何か関係あるんだろうか。
私は黙って二人の言葉に耳を傾けることにした。
「今日も、 彼女・・・来るそうです。 今日こそは、 彼女に会ってもらいますよ。 それともまた、 いつものように
逃げるつもりですか?」
「嫌だよ。 オレは、 あんな化け物なんかに会いたくなんかないね」
368 :
3の444:2005/11/14(月) 03:07:24 ID:C46LU5Az0
「でもね、 佐々波さん。 今日の話し合いで、 男か、 女か、 どっちの義体を使うか決めるんでしょ。 もう、 義
体換装に決められた期日までには時間がありません。 もしも今日決められなかったら、 こっちで勝手に義
体を選んで強制換装するしかないんです。 あなた、 それで本当にいいの? 彼女の気持ちはどうなるの?」
「どっちだって、 同じだよ。 どう転んだって、 所詮機械だろ。 あんたの気が済むようにすればいいさ。 そう
だ。 オレの代わりに、 メガネザルを使えよ。 どうせ、 オレ達は姿格好が全く同じ量産型の人形なんだか
ら、 オレの代わりにこいつが出たって分かりゃしないだろ」
突然の佐々波さんの言葉にびっくりする私。 なんでいきなり、 そんな話になるのさ。
「な、 何言ってるんだよう。 よく分からないけど、 今日は大切な話をしなきゃいけないんでしょ。 そんな話、
私が知らない人となんか、 できるわけないじゃないかよう」
冗談じゃない。 いくら私と佐々波さんが同じ標準義体だからって、 性格も仕草も全く違う私が佐々波さん
になりきることなんか不可能だって、 冷静に考えれば分かりそうなものだ。 だいたい、 佐々波さんの彼女っ
て何なんだよ。 私が、 その彼女とやらに会って、 恋人ごっこをしなきゃいって訳? 私は至ってノーマルなん
だからね。 そんな趣味ないんだからね。 でも、 まあいいや。 そんな馬鹿げた考え、 タマちゃんが同意する
はずないよ。
私は、 いつも冷静沈着な判断を下す、 小さな巻き毛のケアサポさんのことを、救いを求めるように、 ち
らりと横目で見た。 でも、 タマちゃんの反応は、 私の予想とゼンゼン違っていた。 タマちゃんは、 私と佐々
波さんを交互に見比べたあとで、
「それ・・・いい考えかもしれない」
と、 静かにつぶやいたんだ。
369 :
3の444:2005/11/14(月) 03:09:19 ID:C46LU5Az0
今日は、ここまでです。
どのように話を進めるか苦労してなかなか筆が進まなくて申し訳ございません。
manplusさん
保管庫の件、もしスペースがないようでしたら、宜しければこちらで作りましょうか?
このスレ専用の保管庫ということで、歴代スレの他の作品についても、作者の同意が
得られたものについては全て掲載したいと思っているのですが、作者の方々如何でしょうか?
無名さん
こんな話を書いている私だけに、無名さんの作風、好きですよ。
かなちゃん、同じ境遇のもの同士、きっとヤギーと仲良くなれることでしょう。
私としては、もうちょっと義体ならではの表現を出してくれるともっと嬉しいのですが。
370 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 03:26:06 ID:6i7j+4z70
>無名さん
おお、期待の新作!いい感じですね。
個人的には、そろそろ生身も一部残った(首から上は生身の部分が大体で、
首から下が全部機械とか、その程度)サイボーグの女の子の話が読みたいです。
位置付け的には「ヤギーたん」とか「かなちゃん」みたいに障碍者で非戦闘
モノって感じで。
一部生身のが残っている事で、却って体が断ち切られて機械にすげ替えられた
感じとか、残った生身のありがたみとか、それでも機械の体「も」活用する
決心とか、そういうのが引き立つと思います。
生身の顔という精神的より所が残っているからこそ人の体の機能・形を逸脱
するような義体を使えるとかいう話も読みたいですね。
あ、もちろんヤギーもかなちゃんも、これはこれで良いです。
>>369 >歴代スレの他の作品
絵も入ります?
最近すっかり文章スレになりましたが、昔はむしろ絵中心だったんですよね。
371 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/14(月) 05:57:11 ID:7zKWnLVS0
>>364 そう思う。
昨日、某列車で盲人の若い妊婦と若い兄やんのカップルと向かい合わせになったんだけど
話を聞いてると、事故で全盲になったねぇちゃんをボランティアの兄ちゃん(医者?)がやって、
まわりから反対され、既成事実的にデキ婚した。って、感じらしい。
家族はデキ婚されてしまえば納得するしかないわけだが・・・・
その業界や団体からは絶縁、破門状態なので、資格を生かして国内だけど移住するらしい。
これが現実だと思う。
372 :
3の444:2005/11/15(火) 00:46:35 ID:aPkCzDK70
>>370 絵ももちろんいいと思います。
ただ、相当前のスレになってしまうし、作者さんがはたして
まだここを見てくれているかどうか…。
保守
374 :
無名:2005/11/18(金) 15:22:26 ID:sB1YqHYo0
【かなの健康診断】
こんにちは、わたしかなでーす。今日は検査のため神無月のお兄ちゃん先生が勤め
ている病院にいます。なんで元気なのに病院で検査するかって?それは、かながサ
イボーグだからなの。かなは一年くらい前、交通事故で大けがをして、それからこ
の体になったの。最初はとても辛かったし、リハビリも大変だった。それに、なに
より辛かったのは、お父さんお母さんをその事故で亡くしたこと…。なんでお父さ
んお母さんが死んでかなだけが生き残ったんだろうって、始めはそう思ったし、泣
いたりもした。でも、これはお父さんお母さんが、かなに生きていてほしいってい
う思いが、かなを生きかえらせたんだと思うの。だからかなは、お父さんお母さん
の分まで生きなくちゃいけないって、そう思ったんだ。かなは義体になっちゃった
けど、この体は冷たい機械じゃなくて、温かい心を持った体。生きてる証でもある
んだよ。でも、かなの体のことは友達にもクラスメイトにも言えない。かなが機械
だって知られたら、気味がられるかも知れないもの。隠し通すことは悪いとは思う
んだけど、友達に迷惑かけたくないから、絶対に言えないんだ。だから今日の検査
も風邪ひいたことにしてお休みしたんだよ。
375 :
無名:2005/11/18(金) 15:23:45 ID:sB1YqHYo0
「やあ、かなちゃん。今日も元気かい」あっ、やぎ先生だ。「こんにちは、
やぎ先生」「ンメェーッ、って、僕は宮木だってーの」このお兄ちゃんは宮
木博信先生。ここの病院に就職してまだ三か月の新米のお医者さんなの。い
っつもこんなボケをかましたりしてるんだけど、かなと一緒に遊んだりして
くれるとってもいい先生なんだ。「そういえばかなちゃん、今日は定期健診
に来たんだよね。健診が終わったらまた何かして遊ぼうか」「気持ちは嬉し
いんだけど、やぎ先生、今仕事中だよね。仕事のほうが大事だよ」そうだよ
ね、やぎ先生はここのお医者さんだもの、他の患者さんの診察もあるもんね。
「そうだね。じゃあ、今度のお休みのときにでも遊ぼう。約束だよ」「うん」
というわけで、やぎ先生と別れたかなは、やっと別館にある診察室の前へた
どり着いたんだ。ここは義体患者の診察室。本館にある普通の診察室よりも
スペースが広いんだけど、一番の違いは義体専用の診察ベッドがあることか
な。あとは普通の診察室とそんなに変わらないかなぁ。とりあえずかなは自
分が呼ばれるまで、診察室の前にある長椅子に座って待つことにしたよ。
376 :
無名:2005/11/18(金) 15:25:09 ID:sB1YqHYo0
それから四十分くらい待って、やっとかなを呼ぶアナウンスが聞こえてきた。
『和多田かなさん、診察室にお入りください。』かなは診察室へ入ったんだ
けど、中へ入ってビックリ。そこには神無月のお兄ちゃん先生がいたんだ。
とはいっても、お兄ちゃん先生は義体科の担当医だから、そこにいても不思
議じゃないんだけどね。「かなちゃん、体の調子はどうだい?どこか痛むと
ころはないかい」お兄ちゃん先生はかなを助けてくれた命の恩人なんだ。身
寄りのないかなをわざわざ引き取ってくれたのも、そのためにいろいろな手
続きをしてくれたのも、お兄ちゃん先生のおかげなんだ。「それじゃかなち
ゃん、そこのベッドへ横になって」かなはお兄ちゃん先生の言う通りに診察
ベッドの上に横になった。そうすると上の方から輪みたいなものが近づいて
きた。このベッドにはかな達義体の患者の中を検査する装置が入ってて、輪
の形をしたスキャンを潜り抜けることで良いところと悪いところをチェック
してくれるシステムになってるんだよ。かなが生まれる前は、検査するシス
テムもまだちゃんとしたものじゃなかったんだって、お兄ちゃん先生が言っ
てた。なかでも全機械式の義体患者は、体をバラバラにしないといけなかっ
たらしいよ。でも、この装置が開発されてからは義体を検査する手間が減っ
たんだって。機械と人工細胞のハイブリット義体が開発されたのも、検査し
たりメンテナンスしたりする手間が減った原因でもあるんだけどね。輪が下
の方へ下がって、とりあえず検査は終了。あとは外で結果が出るのを待つの。
もしどこか悪いとこがあったら別の診察室で検査し直して、必要なときはメ
ンテナンスルームでその部分を直したり交換したりするんだよ。あと一年に
一回は大掛かりな検査があるんだけど、かなは三ヵ月ほど前にやったから今
日はやらないでいいんだ。
377 :
無名:2005/11/18(金) 15:35:35 ID:sB1YqHYo0
それから十分くらい経ったころに、かなを呼ぶアナウンスが流れた。『和多
田かなさん、第二診察室にお入りください』あれっ、第二診察室だって。ど
こかおかしい所あったのかなぁ。とにかくかなは第二診察室へ行くことにな
った。今日の第二診察室の担当は、すこし太り気味の大平先生。義体のこと
を知り尽くしてる、この病院の凄腕医師なんだって。さっそく大平先生はか
なの顔を見て、「きみ、すこし肌が乾燥しているみたいだね」なんて言った
の。特別な機器なんか使わないで悪いとこを当てちゃうなんて、大平先生っ
てすごいよ。伊達に24年も義体医師してるわけじゃないね。でも、なんで
肌が乾いてるんだろう。「きみはあまり水を飲んでいないだろう。きみの体
はハイブリットだから、普通の人より水分を取らないと駄目なんだよ。そう
しないと、きみの体はカサカサに乾燥してしまうぞ」そ、そうだったぁ、か
なの体は水分を多く摂らないと皮膚が干からびちゃうんだった。これからは
気をつけないと。「先生、あとはどこが悪いんですか?」大平先生はにこっ
と笑って、「あとはいたって健康だ。大丈夫だよ」って答えてくれた。でも、
これだけで終わりなんて、あっけないな。もっと重大な事だと思ってたんだ
けどなぁ。
378 :
無名:2005/11/18(金) 15:37:39 ID:sB1YqHYo0
というわけで、今回の検査の結果は異常なしでした。まあ、肌のことはさて
おき、こんなに今の体が健康だなんて、なんか不思議な気分だったりする。
とはいっても、走っても人並みに疲れるし、触られたりつねったりしても痛
みを感じるし、食べ物を食べてもおいしいって感じるから、つい自分の体が
義体だって事を忘れてしまうんだけどね。でも検査でここにくると、やっぱ
り自分は義体患者なんだ、ってつい思っちゃうの。それでもかなはここにき
てよかったと思う。だって、お兄ちゃん先生も、やぎ先生も、大平先生もみ
んなみんな大好きな人ばっかりだから、ここに来るのが待ちどおしくなっち
ゃうんだ。
379 :
無名:2005/11/18(金) 16:00:34 ID:sB1YqHYo0
こんにちは、無名です。今回はかなちゃんの検査の話を掲載しました。やっぱりサイ
ボーグものでは、検査シーンが必要だと思って掲載してみました。この話ではかなち
ゃん視線で話が進みますが、これは患者側の視線で検査の話をした方がいいと思って
そうしてみました。今回もよかったらご感想をお聞かせください。
3の444さん、はじめまして。かなちゃんもヤギーさんと同じ境遇なので、もし合
えることがあるなら、けっこう仲良しになれると思います。
かなちゃんはかなり高度な義体みたいだから、ヤギーが会ったら拗ねそう。(笑)
>380
既に時代が違うっぽいから昔の苦労話とかしてそう
かなちゃんって何歳?
一人称にするならそれらしい言葉を選んで語らせないとね。
383 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/19(土) 10:34:44 ID:g80jt7aZ0
>無名さん
読みたいけど読む気がしない。ぱっと見た目、黒いかたまりのような文章。
なんで適当なところで改行しないの?
文章って当然中身も大事だけど、見た目も大事じゃないかな?
読み手が読んでくれてなんぼのものでしょ?
384 :
382:2005/11/19(土) 13:25:23 ID:ae8DTqOj0
>>383 激しく同意。
小説は台詞ごとに改行するのが一般常識。(文庫本とか見てみて!)
でもネットの掲示板では改行数や表示行数が制限されるから加減も必要。
段落の最初は字下げするのも常識なんだけどネットでは???
段落を2〜3行に留めて、段落ごとに空行を入れると見易くなる。
余談ながら…日本語は単語ごとに分かち書きしないかわりに
漢字を目安にして単語に分割して読むんだよね。
今回主人公を「かな」って名前にしたのは少し失敗かも。
「先生、かなのことどう思っているのかな?好きなのかな?かなは好きだよ」
ベタベタだけどありそうな文章。で、読みにくい。_| ̄|○
385 :
382:2005/11/19(土) 13:40:18 ID:ae8DTqOj0
更に余談。(
>>384を踏まえて、もう少し高度な話?)
主人公の一人称にした時点で、主人公のボキャブラリの範囲で地の文が語られる。
小学生が語ってるって時点で使用する漢字を限定した方がらしく見える。
平仮名が増えると単語の切れ目が分かりにくくなるから読み易いように
改行や句読点を含めたレイアウトで工夫しなきゃならない。
でも掲示板では改行数に制限がある。
逆に改行や句読点を無視して小学生っぽい文章を狙うのもテクニック。
それっぽいけど読みやすい文章にするのはかなり大変だろうと予想。
どっちにしても内容がしっかりしてないと無意味なこだわりになるだけ。
ストーリーを構築する能力があるんだから、後はそれを上手く表現する
技法を手に入れたら鬼に金棒なわけですよ。がんばれ!
386 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/19(土) 14:40:35 ID:nOy0CYcB0
漏れは妙に知識豊富で賢い小学生とかも好きなんだけどな…。
>>386 それにしては、この「かな」ってぇ子はヴァカっぽく見える。
いっそヤギーシリーズの茜タソみたいに、高知能低人格に開き直ってくれた方が。
388 :
382:2005/11/20(日) 01:47:54 ID:WXKhY3n20
>>386 激しく同意。
そんな貴殿には「たったひとつの冴えたやりかた」byティプトリーがお勧め。
(SFだけど、サイボーグものに非ず。スレ違いゴメン)
389 :
382:2005/11/20(日) 02:06:17 ID:WXKhY3n20
>>387 「子供らしい語り口」と「ヴァカっぽい語り口」って違うのですが...。
口調は同じでも、知識やボキャブラリに限界はあっても、その範囲で
知性を感じさせることはできるわけで...。
会話を通じて主人公の理解力を示してみたり...。
地の文で使うには難しい言葉は相手に喋らせてみたり...。
何気なく子供っぽい感想を言わせて見たり...。
いろいろ方法はあると思います。
例えば...(って例示するのは僭越なので自粛モード。w)
次の作品にも期待してますから無名さんにはがんばって頂きたいと
思います。乱筆失礼しました。
>無名氏
主人公が子供(=本人からの技説はほぼ不可)という重い枷を咬ませて
挑んで来た意気込みに拍手!
手厳しい添削もこのスレへの愛ゆえなのでがんがれ!
391 :
390:2005/11/21(月) 13:46:49 ID:1nEukwhl0
「本人から、あるいは本人を交えた技説はほぼ不可」ですた。
お詫びの上訂正致しまつ。
392 :
207:2005/11/21(月) 21:11:30 ID:DMaWSchH0
>>390 「子供には技術的説明は不可能」とのことですが、本当でしょうか?
稚拙ながらやはり例示させて頂きます。
(ひとつの提案として理解ください。)
---
>このベッドにはかな達義体の患者の中を検査する装置が入ってて、
>輪の形をしたスキャンを潜り抜けることで良いところと悪いところを
>チェックしてくれるシステムになってるんだよ。
ベットに横になると、円い機械がゆっくりと動いてきました。
「先生、こんな機械でギタイの調子って分かるの??」
「あぁ、この機械を通すと義体から情報が読み出せるんだよ。
もし調子が悪いところがあると異常な数値として検出できる...。
かなちゃんにはちょっと難しいかな?」
「えっと、『おかしなところがない?』ってギタイに聞いてるんですね?」
「そうそう。」
お兄ちゃん先生は、ちょっと嬉しそうに笑いました。
「昔はあちこち分解して調べてたけど、今は随分楽になったよ。」
「ふーん」
ムツカシイことは分からないけど、機械同士でお話して悪いところを
調べられるなんてびっくりしました。わたしもギタイと仲良くなれたら
もっといろんなことができるようになれるのかなぁ。
---
いかがでしょう?
394 :
3の444:2005/11/23(水) 01:41:02 ID:ZKnqscIR0
「ま、 マジかよ。 本気でメガネザルをあいつに会わせるつもりなのか?」
タマちゃんのつぶやきを聞いてうろたえたのは、 私よりもむしろ佐々波さんのほう。 電源を落とされて首
から下を全く動かせない佐々波さんだけど、 その分、 目を見開いたり、 口をぽかんと空けたりと、 顔の表
情が細かくくるくる動いた。
「あら、 あなた、 会いたくないんじゃなかったの? あなたの代わりに八木橋さんに会ってもらう。 いいアイデ
ィアじゃない?」
タマちゃんは、 いたずらっ子みたいな顔をして、 佐々波さんを覗き込んだ。
「そ、 そうなんだけどさあ」
「じゃあ、 別に八木橋さんが会っても構わないよね」
「べ、 別にいいけどさっ」
拗ねて膨れっ面で、 そっぽを向く佐々波さんは、 なんだかとても可愛らしくて、 変な言い方だけど、 ホン
トの女の子みたいなんだ。 なーんだ、 佐々波さん、 自分のことを人形だ、 とか機械だ、 とか言うくせに、 ホ
ントは恋人のことが気になってるじゃないか。 本心を隠そうとして、 かえってロコツに態度に出てしまうのが
おかしくって、 私は、 思わず自分が大変な役割を押し付けられそうになっていることも忘れて、 くすくす笑っ
てしまった。
確かに、 私の身体は人間らしい部分なんて、 何一つない冷たい機械だ。 身体だけじゃない。 私が受け
取る感覚だって所詮コンピューターが作り出した、 ただの電気信号。 それは、 佐々波さんだって同じこと。
私達、 瓜二つの全身義体のサイボーグだもんね。 でもさ、 どんな子か知らないけど、 そんな佐々波さんを
好いてくれる人だっているってことを知っただけで、 なんだか自分のことのようにうきうき嬉しい気分になって
くるよね。
「じゃ、 そういうことで、 八木橋さん、 お願いしまーす」
不意に私の方を向いて、 一方的にそう宣言するタマちゃん。 今度うろたえるのは私の番だ。
「た、 た、 タマちゃん。 どういうつもりか知らないけどさ。 私は、 佐々波さんの恋人とかいう人に会う気はこ
れっぽっちもないからね」
395 :
3の444:2005/11/23(水) 01:42:11 ID:ZKnqscIR0
佐々波さんが、 そんなに彼女のことが好きなら、 何も、 私に佐々波さんを演じさせなくたって、 素直に
佐々波さんに会わせてあげればいいじゃないか。 私はそう思った。
私と佐々波さんは、 どんなに今の外見が似ていたとしたって、 別人なんだ。 どんなにうまく演技したって
絶対ばれるに決まってるよ。 本当に、 佐々波さんの恋人って人が、 佐々波さんを愛しているんだったら、
なおさらだ。 私のおじいちゃんだって、 以前の私とは似ても似つかない姿になった標準義体に入った私のこ
とを、 すぐに私だって分かってくれたんだよ。 仮に、 私のうっかりミスで、 二人の仲を引き裂くことになった
らどうするのさ。 そんな、 責任重大なこと、 私、 とても引き受けられそうにないよ。
「まーまー。 じゃあ、 ここからは女同士、 仲良く作戦会議しましょうか? 男の方は席を外してくださーい」
なおも一方的に話を進めるタマちゃん。 私の話なんてこれぽっちも聞かずに、 もう一度、 手に握り締め
た小さな機械のスイッチをカチリと押した。 佐々波さんの電気を回復させてあげたんだ。 男の方だなんて、
やっぱりタマちゃん、 佐々波さんを男として扱うんだね。 変なの。
「分かったよ。 消えればいいんだろ、 消えれば」
「男」の佐々波さんは、 ぶつぶつ不平を言いながら立ち上がって、 案外素直に、 それでも恨めしそうに
タマちゃんをひと睨みしてから、 リハビリセンターから立ち去っていった。
「さて」
佐々波さんいなくなって、 また「女」だけになったリハビリセンター。 タマちゃんは、 急にまじめな顔つき
になって私の目をじっとみつめた。 突然のタマちゃんの変わりように、 緊張して思わず身を固くする私。
「八木橋さん。 さっき、 あなたは、 心があるから人のことを好きになっちゃうんだって、 だから、 人の心なん
て、 いらないんだって、 そう言ったよね」
ああ、 そのことか・・・。
「さっきは、 ごめんね。 タマちゃん。 でも、 大丈夫。 私と同じ全身義体の佐々波さんを好いてくれる人だっ
ているんだ。 私だって、 頑張らなきゃ、 と思ったよ。 人間らしい心を持ち続けていれば、 きっといいことあ
るよって思うことにしたよ」
396 :
3の444:2005/11/23(水) 01:44:33 ID:ZKnqscIR0
あんな意地悪なおとこ女サイボーグにだって、 好いてくれる人がいるんだ。 女が女を好きになる。 私に
はとても考えられないけど、 それでも機械の身体を愛してくれる人がいるってだけで素晴らしいじゃないかと
思った。 このメガネザルだって、 負けていられないんだからね。
「佐々波さんって、 彼女がいるんだね。 好きな人がいて、 佐々波さんが機械の身体って知ってて、 それで
も愛してくれる人がいるんだね。 なんだか、 羨ましいよ」
「佐々波さんって面白いでしょ。 彼女、 ううん、 彼か。 彼は、 すごい恥ずかしがりやさんなの。 本当はね、
好きな人の前に出たくて出たくて堪らないくせに、 いつもああやって逃げてばかりいるの。 ふふふ」
タマちゃんは、 軽やかに笑った後で、 声のトーンを少しばかり下げた。
「でもね、 彼女に会いたがらないことには、 もう一つ理由があるの。 佐々波さん、 自殺したのよ。 ビルから
飛び降りてね。 彼女を残して死のうとして、 それでも死に切れなくて、 全身義体になってしまった自分を激し
く責めてるの。 彼女にも合わせる顔がないって思っているのね」
佐々波さんも、 私と同じ標準義体。 ということは、 重い病気の果てに、 覚悟の上で義体化したわけじゃ
なく、 私のように、 突発的な事故でいやおうなしに機械の身体になってしまったんだと思ってはいたけど、 ま
さか自殺とは思わなかった。 何か事情があって、 世の中を恨みながら自殺したのに死にきれず、 でも身体
は全て失ってしまった。 冷たい機械の身体になって、 生き続けなければならなくなってしまった。 それは、
どんなに苦しくて辛いことだろう。 佐々波さんが、 事あるごとに自分は人形だ、 機械だって言い続けている
理由がなんだか分かったような気がした。
「性同一性障害って言葉、 聞いたことあるかしら?」
佐々波さんが自殺未遂の結果義体になってしまったことにショックを受けて黙り込んでしまった私に向か
って、 タマちゃんは不思議なことを聞いてきた。
せーどういつせいしょーがい? 聞いたことあるような、 ないような。
「それって男なのに、 男が好きになったり、 女なのに女が好きになったりする人たちのことだったっけ?」
397 :
3の444:2005/11/23(水) 01:54:42 ID:ZKnqscIR0
「それは同性愛でーす。 性同一性障害っていうのは、 なんて言えばいいのかな? えーと、 つまり八木橋さ
んは、 女の子でしょ。 自分のことを女性と認識しているし、 身体も女性でしょ」
「昔はね。 今はただの機械だけどね。 はは」
「そういうことを言わない! どんな体でも八木橋さんが女の子ってことには変わりはないんだからね」
タマちゃんは、 厳しい声で私を叱りつけた。 ただの冗談なのにさ。 そんなに怒ることないじゃないかよ
う。
しゅんとなった私を尻目にタマちゃんは話し続ける。
「でもね、 ごく稀に自分は女性だと認識しているのに身体が男だったり、 逆に自分は男性だって認識して
いるのに身体が女だったりすることもあるの。 そういうふうに、 心の性と身体の性が一致していないことを
性同一性障害って言っているの。 そういう人たちは、 身体は男でも心は女だったりするから、 当然女の人
を好きになるよね。 でも、 他人から見たら同性愛でも、当の本人から見たら、 自分を男と思ってないから、
フツーの恋愛と同じってことになるよね。 自分が男だと分かっていて男の人を好きになる同性愛者との違い
はそこね」
「つまり、 タマちゃんは、 佐々波さんは、 その性同一性障害だって言いたいんだね」
タマちゃんは黙って頷いた。
女性型の標準義体に入っているくせに、 仕草や話しぶりが男にしか見えないこと。 そして、 女なのに彼
女がいるらしいこと。 自分のホントの身体なんてどこにもありはしないって言っていたこと。 玲子って言われ
ただけで怒りはじめたこと。 私の中でもやもや膨れ上がっていた佐々波さんにまつわる謎の一つ一つが、
タマちゃんの話ですっかり)解けちゃった。 佐々波さんは、 女の身体と男の心を持っている人。 そういうこと
なんだね。
398 :
3の444:2005/11/23(水) 01:55:57 ID:ZKnqscIR0
タマちゃんが語ってくれた佐々波さんについての話は要約すると(それでも長くなるけど)、 こんなことだっ
た。
佐々波さんの家は大金持ち。 もし何事もなければ、 佐々波さんは、 いわゆるハイソなお嬢様としてお淑
やかに育ち、 同じくらいのお金持ちの御曹司と結ばれて、 お手伝いさんに囲まれて、 一生電車なんかには
縁がない、 そんな暮らしをしても不思議じゃなかったんだってさ。 でも、 彼女は神様のいたずらで、 男の心
と女の身体を持って産まれてきてしまった。 今の時代だったら、 そういう場合、 抵抗無く性転換手術をする
人も多いけど、 そういう家って、 いわゆる世間体ってものを気にするから、 佐々波さんは、 無理やり女の
子として育てられたんだって。 そして、 やっぱり無理やりに、 男の人と望まない結婚をさせられそうになった
んだ。 でも、 佐々波さんは、 そのことに耐えられなくて、 飛び降り自殺をしてしまった。 結果的には、 義体
化手術のお陰で、 命だけは助かったんだけどね。
で、 義体化してしばらくしたら、 フツーの人だったら、 当然、 昨日私が見たような、 もとの身体とそっくり
に作られた義体に入ることになるよね。 でも、 佐々波さんのように性同一性障害って診断された人に限っ
て、 男性型の義体に入るか女性型の義体に入るか本人が選ぶことができるんだって。 男として生きるか、
女として生きるか決められるってわけ。 義体化する時の精神的ショックを少しでも和らげるための救済処置
なんだって。 だから、 佐々波さんが、 今まで自分の身体のことで、 そんなに苦しんでいたなら、 義体化は
男として生まれ変わる絶好のチャンス、 そう思ってもいいはずだったんだ。
でもね、 おかげさまで、 縁談は破談になったわけだけど、 全身義体になった佐々波さんのことを佐々波
さんの両親は一度もお見舞いに来なかったんだって。 ただの一度もね。 子供も産めない全身義体になっち
ゃったら、 娘としての価値なんかない、 ましてや息子としての価値なんて、 あるはずがない。 そういうことな
んだそうだってさ。 ひどいよね。 だから、 佐々波さんが、 あんなふうに捻くれてしまって、 男だろうと、 女だ
ろうと、 どうせただの機械、 たいして違いがないって投げやりになっちゃうのも無理ないんだよ。
399 :
3の444:2005/11/23(水) 01:57:29 ID:ZKnqscIR0
だけど、 いつまでも標準義体に入っているわけにはいかないんだ。
『義体化の際には、 生身の頃の姿と同じ形をした義体を使用することとする。 事故等で、 やむを得ず標準
義体を使用している場合は、 義体化手術より三ヶ月以内に再度、 本義体への換装手術を行なうこととす
る』
これが義体法っていう法律で定められているルールなんだって。 性同一性障害って診断された人の場
合、 もし女だったら、 男だったら、 どんなふうに成長するかというのを遺伝子解析して、 義体化手術や、 義
体換装の際に性転換することになるわけ。 心とは一致しない女の姿の義体だけれども、 自分が産まれ育っ
た身体とそっくりの義体。 心とは一致するけれども、 自分は一度も見たことがない、 ゼンゼンなじみのない
男の義体。 佐々波さんは、 そのどちらの身体を選ぶか、 三ヶ月という限られた時間の中で決めなければい
けないんだ。 もし、 本人が決められなかったとしたら、 無理やりにでも、 どちらの性の義体にするかケアサ
ポーターやお医者さんが決めるしかない。 その場合、 大抵はもとの性のままにするんだけどね。 誰だって
他人の人生の責任を負いたくないもの。 それが一番無難だよね。 でも、 それが果たして本人の幸せにつ
ながるのか、 それは分からないよ。
でもね、 一人だけ。 佐々波さんの性を決める権利がある人がいる。 佐々波さんが、 機械の身体になっ
てしまっても、 それでも佐々波さんを愛して、 毎日この病院に来るただ一人の人。 それが佐々波さんが、
両親に隠れて付き合っていた恋人なんだ。
「患者の秘密をペラペラ他人に話す。 これ、 ホントはやっちゃいけないことなんでーす。 バレたら始末書も
の。 ううん、 始末書で済むかどうか・・・」
タマちゃんは、 長い話を終えると、 ペロっと舌を出して苦笑い。
400 :
3の444:2005/11/23(水) 02:08:50 ID:ZKnqscIR0
「ケアサポーターっていうのは、 因果な商売なのよね。 未来に絶望して自殺した人を、 死の世界から無理
やり引き戻したのは私。 佐々波さん、 さぞかし、 私を恨んでるでしょうね。 でも、 私は信じている。 今はそ
うは思えなくても、 いつか、 生きていてよかったと思い返す日が来ることを信じてるよ。 八木橋さん、 あなた
にもね。 いつ佐々波さんや、 あなたが、 そう思ってくれるなら、 私はいくら恨まれたってかまわないのです。
あなたや、 佐々波さんや、 世の中の義体の人のためなら、 社内規定なんてクソくらえ。 たとえ規定を破っ
たとしても、 患者のために動かなきゃいけないときだってある。 それがケアサポーターだもの。 私は使える
ものなら、 どんなものでも使いまーす」
そういって胸をはるタマちゃんの小さな身体、 ずいぶん大きく見えた。
「で、 八木橋さん、 お願い。 今回は、 あなたを使わせてください」
例のいたずらっ子みたいな表情を)顔に浮かべて、 ペコリとお辞儀するタマちゃん。
タマちゃん、 そうきたか!
今度は、 私が苦笑いする番だ。
「あなたが見たもの、 聞いたものの全ては、 別室のモニターで見ることができるし、 聞くこともできる。 私達
がマイクで話したことは、 あなたの頭の中にだけ直接伝えることができる。 恥ずかしがりやの佐々波さん
も、 こういう間接的な形なら恋人に会ってくれると思うの。 私にはできない、 全身義体のあなたにしかできな
い人助け。 どう、 やってみる気はない?」
「えと、 つまり、 私に、 テレビカメラの代わりになりなさいっていってるの?」
「そう。 でも、 ただのテレビカメラじゃない。 意思のあるテレビカメラでーす。うまく、佐々波さんを演じて彼女
の本音を聞きださなきゃいけない。 そんなこと、 テレビカメラにはできないでーす」
401 :
3の444:2005/11/23(水) 02:09:34 ID:ZKnqscIR0
考えてみれば、 私は自分の冷たい機械の身体を嫌だと思うばかりで、 機械の身体だからできることだっ
てある、 なんてこと考えたこともなかった。 きっと、 タマちゃん、 佐々波さんのためばかりじゃなく、 私が機
械の身体を素直に受け入れて、 自分に自信が持てるようにって、 そんなふうに言ってくれたんだと思う。 そ
して、 こんなすごいケアサポーターだってできないことが、 今の私にはできるんだ。 私は、 人に頼られてい
るんだ。 そう思ったら、 なんだか嬉しくなった。
「分かった、 やってみるよ」
私の言葉に、 にっこりと笑うタマちゃん。
私は、 もう一度、 自分に言い聞かせるように、 ゆっくりと呟いた。
「私、 やってみる」
402 :
3の444:2005/11/23(水) 02:17:41 ID:ZKnqscIR0
今日はここまでです。
4代目スレの487さんに半年越しの遅レス。
こうなります(笑)
無名さん
ハイブリット式義体いいなあ。ヤギー羨ましがりそう。
ハイビリット式義体って機械式義体よりはるかに値段が高そうですよね。
かなちゃんも成長期で、アッカみたく、このあと何度も義体換装する
のでしょうから、神無月先生の財布も大変です。
3Y560D00H00M00S。
いよいよ私たちの乗った惑星探査宇宙船「希望1号」は、月の周回軌道上に到着したのであった。
私たちは、やっと地球の影響圏に帰ってきたのだった。
地球上での出来事が緊迫性を増していることなどこの時点では、全く知るよしもなかったのだった。
月の周回軌道上に惑星探査宇宙船「希望1号」が停泊するのを待ちかまえたように、船外作業員が、
船外の係留作業に入っていった。私たちが旅に出たときから、地球時間で六年の月日が流れていた。
その間に、地球側の火星移民計画などの宇宙開発計画が飛躍的に進んでいるのか月周回軌道上に
「希望一号」よりはるかに大きい惑星船が数隻、建造が進んでいるのが、モニターから確認できた。
そして、その作業に従事する技術者に姿にみさきがクローズアップしてくれた。
「はるか、未来、メインモニターを見て!」
みさきに言われて、私たちは、メインモニターに視界を移動した。
そこには、惑星船を建造する作業員の姿が大写しになっていた。
彼らは、船外作業用アンドロイドかと最初は思った。
下半身や背中のバックパックに取り付けられた推進姿勢制御用推進システムを駆使して、
惑星船の作業に従事していた。その姿は、脚が無く、手の変わりに4本のマニュピレーターで
作業をしているのであった。まさにSF映画のシーンを見ているようだった。その中の一体が、
「希望一号」に気づいて、交信を求めてきた。みさきが交信許可を出すと、その一体から交信が即座に入ってきた。
「如月大佐、望月中佐、美々津少佐。お帰りなさい。皆さんを月面基地までお送りした田中です。
覚えていらっしゃいますか?」
その声は、私たちの存在を羨ましいと言った田中さんの声だった。
私の中のデータ保管用ハードディスクからデータを参照して照合しても間違いなく彼女の
音声データであることが確認された。
ということは、宇宙空間で惑星船建造の作業をしているのは、アンドロイドではなく、
新型のサイボーグアストロノーツなのであった。
「懐かしいわ。もちろん覚えています。やっと故郷まで帰ってきた気分よ。」
「それは良かった。私も、念願のサイボーグ化手術を受け、宇宙空間作業用サイボーグとして、
このように我が国の宇宙開発計画に従事しています。宇宙空間での作業性のために、
地上での機能を全て取り上げられましたが、宇宙空間で何の制約もなく作業が出来て、
私の希望がかない幸せです。
地球上でも色々なことがありましたので、環境の変化に皆さんは戸惑うかもしれませんが、
我が国の宇宙開発がよりぺーが上がったので、私たちサイボーグが理解された社会になっていますよ。
れから、大佐たちの帰還はものすごいピックニュースになりますよ。
スター扱いで戸惑わないように心の準備をして下さいね。皆さんの帰還作業補助部隊が間もなく到着します。
私は、作業に戻ります。」
そう言って田中さんが作業に戻っていった。
「はるか、私たちまるで浦島太郎だね。サイボーグが、たくさんいる世界になったなんて信じられない。
もっと驚くこともあるんだろうね。地球に帰還するのが怖くなっちゃった。」
未来の言った言葉は、3人の共通した感想だった。
一体地球では何がどう変わっていったのであろうか?興味と恐怖の入り交じった感情が芽生えてきた。
そんな私たちの感情はお構いなしに、帰還作業が進んでいくことであろう。
どんなにサイボーグアストロノーツを理解してくれる社会になろうとも、私たちは、
火星移住のための調査機材という存在に変わりはないのだ。
私たちの意志とは関係なく、私たちの身体に蓄積された火星の調査データーを地球の宇宙開発事業局は
待っているのだ。無事な帰還をして欲しいのは、私たち全体ではなく、私たちの身体に
搭載されたデータ蓄積用ハードディスクなのであった。
私たち本体は、補充が効くが、貴重なデータがたくさん詰まったデータベースは替えがないのであった。
しばらくすると、私たちの地球帰還作業のための部隊が、月面基地連絡宇宙船を操縦して、
惑星探査船に接舷して、「希望一号」のエアロックのメインロックを解除するようにみさきにリクエストが入った。
みさきはすぐに、そのリクエストを受諾し、月面基地連絡宇宙船が、「希望一号」とドッキングが完了した。
作業員がサイボーグ搬送用カプセルを三個運んで、コックピットにやってきた。
私と未来は、コックピットの火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセル拘束ベルトを解除して、
火星探査・開発用サイボーグ惑星間搬送用保護カプセルのカバーを開けて、コックピットの中に出て、
サイボーグ搬送用カプセルの中に入った。そうすると作業員により、サイボーグ搬送用カプセルの中に
拘束ベルトによって固定された。そして、サイボーグ搬送用カプセルのハッチが閉じられた。
私と未来の地球までの荷造りが完了した。
続いて、作業員は、みさきの荷造りにかかった。
作業員は、みさきの身体固定用コントロールシステムのリリースボタンを押した。
すると、みさきの身体に取り付けられたケーブルやチューブ類が外れ、
拘束ベルトが惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ用据え付け場所の壁面に収納された。
みさきの身体から、ケーブルやチューブ類が外れる時、みさきは、「あーーん。」という大きなあえぎ声を上げた。
ケーブルやチューブ類を付けたり外したりするたびに彼女は性的な興奮を感じることが
出来るようになっているのである。彼女にとって、本当に久しぶりの直接的刺激であった。
そして、作業員は、みさきの身体を抱き上げて、
惑星探査船操縦用サイボーグ専用サイボーグ搬送用カプセル固定され、
ケーブルやチューブ類が再び接続された。みさきは、再び、ケーブルやチューブが接続されるたびに、
彼女は性的な興奮刺激の快感を味わうことになったのであった。みさきのカプセルも閉じられ、
3人の荷造りが終了し、3人がつめられたカプセルが、月面基地連絡宇宙船の
サイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセル固定エリアに固定された。
そして、みさきのカプセルには、惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ専用の生命維持システムが接続され、
私たち3人の地球への最後の旅の準備が整った。
月面基地連絡宇宙船が、「希望一号」から、離脱し、地球への軌道を地球へと向かっていった。
3Y563D00H00M00S。
私たち3人が地球の地上基地に着陸するときが来た。いよいよ地球に帰還するときが来たのだった。
本当に何年ぶりに見る青い惑星なのだろう。地球がどんどん大きくなっていくのが分かった。
昔のアニメのキャラの台詞じゃないけれど、地球の何もかもが懐かしく感じる。やっぱり、生まれ育った、
青い星の方が、赤い星よりいいに決まっている。でも今の私の立場は、火星で暮らすために造りかえられていて、
地球上で暮らすには、色々な不都合が感じられる存在なのに、やっぱり、
地球で生まれたという人間の郷愁だけは改造できないのだと思った。
そう言う意味で、身体の形状は変わってしまっていても、人間であることに変わりがないのだと思うとなんだか嬉しかった。
月面基地連絡宇宙船の操縦士のアナウンスが入る。
「地球大気圏再突入します。耐ショック姿勢を確認して下さい。」
そう言う間もなく、宇宙船は、大気圏に再突入していった。
そして、間もなく、月面基地連絡宇宙船は、着陸予定の宇宙開発事業局の敷地内の滑走路への最終着陸態勢に入っていった。
軽い衝撃がサイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセル越しに私の身体に伝わってきた。
私は、無事に任務を終えて、地球に帰ってきたのだ。えりかや、まりなさんにもうすぐ会えるのだ。
そんな感情がおさえきれなくなった。懐かしい地球の空気に触れたい。
たとえ、機械の身体であっても、センサーによる感触で地球を充分に満喫しようと思った。
月面基地連絡宇宙船の機体が、駐機場に停止した。
エアロックが開けられて、作業員が搭乗してきた。
サイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセルの固定解除の作業にかかった。
私たち3名が各自入れられたサイボーグ搬送用カプセルが、船外に運び出された。
地球上の太陽光を浴びて、私たちのサイボーグ搬送用カプセルは、
宇宙開発事業局の本部の建物に運び出されていった。
私たちを出迎えたメンバーは、みんな火星用に造りかえられたサイボーグだった。
生身の人間が一人もいなかった。ひときわ目立つ人工皮膚の火星用サイボーグが瑞穂さんで、
濃紺の人工皮膚に包まれたサイボーグの中に、えりかやまりなさんがいることが確認できた。
私たちが地球を離れていた間に、火星開発計画が急ピッチで進められ、
サイボーグになった人間が増えたとは想像できたが、その中に首相の姿があるということには驚いたし、
えりかが、サイボーグになって出迎えてくれることも覚悟していたが、まりなさんまで、
サイボーグになっているとは思いもよらなかった。最初は、ラバーフィットスーツを着用している状態かと思ったが、
私の対人アナライズシステムが彼女たちが、サイボーグであることを私に知らせたのであった。
私も、未来も、みさきも、何でこのようなことになるのかまるで狐につままれたような気持ちだった。
「如月大佐、望月中佐、美々津少佐。お帰りなさい。
これから、バイオハザードセキュリティーエリアに移ってもらい、サイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセルから、
出てもらうようにします。
何はともあれ、任務完了ご苦労様です。あなた達は、世界が熱狂的に帰還を待っていました。
私が代表して、出迎えの挨拶をいたしました。」
瑞穂さんの声だった。本当に彼女は、サイボーグになったのだった。
「お帰りなさい。3人の帰還を宇宙開発事業局の全員が、待ち望んでいました。本当にご苦労様。」
声の主は、木村局長だった。木村局長も、サイボーグに自らを改造していたのであった。
「お姉ちゃん、お帰りなさい。待っていたわ。私もサイボーグとして、第一次火星開発チームとして、
約3ヶ月後に火星に旅立つことが決定したの。お姉ちゃんと行き違いにならなくて、地球上で会えてよかった。」
えりかが声をかけてきた。彼女ももう元の姿に戻れない身体になっていたのであった。そして、驚いたことには、
まりなさんまでもが、火星にいく準備を終えていたのだ。
つまり、火星探査・開発用サイボーグへの改造手術を完了され、サイボーグとして、機械と電子部品の身体を
手に入れていたのであった。
「はるかさん、お帰りなさい。私は、再来月出発予定の第二次火星開発チームのメンバーになりました。
はるかさんと同じようにサイボーグの身体を手に入れることが出来ました。私は、開発の最前線ではなく、
後方支援ですが、火星の大地で、我が国の移民地を創る任務にあたります。」
まさか、まりなさんまでとは思っていなかった私はいささか面食らってしまった。でも、気を取り直して、
「皆さん、ただいま帰りました。地球からのパックアップに助けられ、任務を完了して、
再び地球に帰還することが出来ました。された調査任務の全てを無事完了しています。
私の身体に蓄積された手データーは、必ず、火星植民地化計画に役立つデーターであると確信しています。」
私は、3人を代表して、短くコメントした。
私たちのサイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセル越しの帰還セレモニーは、プレスが、同時中継で、
熱烈に同時中継を行っていた。
「それでは、三体のサイボーグアストロノーツをバイオハザードセキュリティーエリアに運びます。」
私たちは、火星で未知の最近と遭遇している可能性もあるため、バイオハザードセキュリティーエリアで、
サイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセルから出され、考えられる全ての殺菌処置を施された上で、
地球の大地に立てると言うことであった。
私たちは、この惨めな囚人運搬の光景を全世界にさらしながら、バイオハザードセキュリティーエリアに
移動したのであった。バイオハザードセキュリティーエリアの
サイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセル連結ポートに接続され、
バイオハザードセキュリティーエリア側のエアロックの操作によって、
サイボーグアストロノーツ搬送用移動カプセルの蓋が開けられ、ラバーフィットスーツによって
セキュリティーエリアへの侵入を許されている作業員によって、私たちの拘束が解かれていった。
そして、私たちは、バイオハザードセキュリティーエリアに移動し、その中の会見エリアのサイボーグ専用チェアに
座らせられた。
もちろん。みさきも職員に抱きかかえられるようにして運ばれ、惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ専用の
サイボーグ専用チェアに乗せられた。みさきに関しては、さながら、石膏の上半身の彫刻が、
運ばれるような印象を受けてしまった。しかし、みさきは、自ら能動的に動くことが不可能であるから仕方なかった。
会見場は、ガラス越しに向かい合う席が、バイオハザードセキュリティーエリアの外側にも作られていた。
そこに、浩、美紀、望の緊急補充用バックアップチームの3名の姿があった。本当に懐かしかった。
そして、瑞穂さんや、木村局長、えりか、まりなさんなどが、続々と入ってきた。
そして、ガラス越しの席に着席して、私たちの帰還セレモニーが始まった。
「改めてお帰りなさい。」
瑞穂さんが話し始めた。
「出迎えが全員サイボーグと言うことに驚いたと思うけど、あなた達が地球を離れて、
任務遂行中に火星移住計画を加速することを決定しました。
というのも、我が国を巡る環境が最悪の状態になったため、火星への移民も全て、サイボーグか、
ラバーフィットスーツ装着者で構成することになり、その移民者の選抜も済んでいます。
そして、私たち政権担当者の中で、私や寺田、中山などが、火星移民団の責任者になるために、
一足早く火星定住型サイボーグとしての改造手術を完了しました。
後は、3ヶ月後と4ヶ月後に出発する火星開発チームの後に永住のために出発することになるのです。
だから、この数ヶ月で、何十人にも及ぶ選抜者が火星での定住に耐える身体を取得しています。
そして、あなた達が持ってきたデータを元に、さらに多くの選抜者に火星に適した身体を与えることになっています。
地球上に残る国民も、出来る限りの選抜者が、対核、化学戦、生物兵器戦に備えたタイプのサイボーグ兵士や
サイボーグ体を持つ指令者へと順次、改造手術を行われているのです。
そして、一般国民で地球に残る人たちも、出来る限りの人に、特殊戦防護用ラバーフィットスーツの装着を
進めています。
この国の国民は、数年後には、サイボーグかラバーフィットスーツ装着者にほとんどがなるはずです。
でも、この国の安全が保証されている時間は少ないのです。間に合う限りの国民を救うつもりなのですが・・・。」
「首相は、出来る限りを尽くしています。
もちろん、腹心の三谷副首相達を地球の国土防衛の最高責任者として対応させ、地球と火星の二つの国土と
国民を守ることにしています。三谷副首相達数名の指導者が、耐核戦争、耐生物化学兵器戦用サイボーグへの
改造手術も終了しているのです。」
木村局長が、瑞穂さんの言葉を補足した。私たちが地球を離れる頃より、この国を取り巻く事態がさらに
緊迫してきていた。それでサイボーグが増えていたし、田中さんが言っていたように、サイボーグという存在が
理解されやすい社会になっていたのであった。
「はるかや未来、みさきは、火星に最初に降り立った人類として、地球で見せ物にならなければならなかった
当初の予定が、変更されたんだ。僕たちもそうだが、火星探査・開発用サイボーグとして、
再度火星にいくことになったんだ。今度は、地球に帰ることがない出発になるんだよ。」
浩が教えてくれた。
「お姉ちゃん、まりなさん達と火星で暮らすことになるんだよ。私も一緒だよ。」
長田部長という素体で作成された火星定住型サイボーグが、
「その通りよ。我が、宇宙開発事業局は、火星に全て移動することになったわ。
局員全員が火星へ定住することを命令されて、サイボーグ若しくは、火星定住型のラバーフィットスーツの
装着者とされてしまったの。もちろん私たちの家族も、火星定住型ラバーフィットスーツの装着を完了しているわ。」
木村局長が続けた。
「如月大佐、望月中佐、美々津少佐は、最近の洗浄殺菌処置が終了後、体内に蓄積されたデーターの
吸い上げを行います。
そして、その後、如月大佐については、サイボーグ体の最改造を行い、他の二人については、
最新システムへの保管処置を受けてもらい。再出発に備えてもらいます。」
「再改造ですか?」
私がそう言うと、木村局長が、
「火星でのリーダーの一人として、それにふさわしいサイボーグ体へ、今の身体よりももっと適したものへの改造を
受けてもらうのです。
あなたは、火星移民地のリーダーの一人に選ばれたのです。そのための特別なサイボーグ体なのです。
機械の身体をいじるのですから、最初に改造されたときほどの苦しみがないから安心して。」
木村局長は簡単に言うが、私の身体の再度の改造と言うことは、もっと人間離れしてしまうことであろう。
おそらく、瑞穂さんのような最新型のタイプに改造されるのであろうが、そうなれば、
火星でのみ生命を維持できればいいような身体になることであり、
もう地球に戻ることは可能性すらなくなってしまうということなのだった。
でも、このままで、地球で過ごさなくてはならないよりも数段、私たちサイボーグアストロノーツにとっては、
好いことでもあったのだった。
「さあ、久しぶりで束の間の地球の大気に機材をさらしてみたいでしょうから、
すぐに殺菌処置を開始するわね。
引き続き、閉じこめられた空間で、我慢して生活してね。それが終わったら、取材とか、撮影で、
地球上をどうしてもらう日々がしばらく続くからね。」
長田部長がそう言うと、私たちは、ラバーフィットスーツ姿の作業員から、殺菌処置室に移動するように促された。
殺菌処置室は、小型の高圧タンクのような構造をしていて、私たちの身体にあった、
サイボーグ専用メンテナンスチェアーが置かれていた。私たちがその部屋のサイボーグ専用
メンテナンスチェアーに拘束されたのを確認して、作業員は、部屋のエアーロックを閉じてしまった。
私たち3人がタンクの中に隔離されたのだった。私たちが持ち帰ったデーターにおいては、
地球上に危害を加えるような最近や微生物は発見されていないため、このような処置は、
私たち3人が最後となると思われる。もっとも、地球に帰還を果たす火星探査・開発用サイボーグ自体が、
私たち三体のみになるだろうから、無駄な施設であったと後世に評価されると思えた。
しばらくして、この部屋の中は、殺菌液で完全に満たされたのであった。
地球を出発する前に受けたプール訓練のように、私たちの身体は、完全に液体の中に没してしまったのであった。
そして、液体に圧力と温度がかけられて、高圧高温の状態の液体に一週間もの間、
居なければならなかったのであった。
3Y570D00H00M00S。
消毒殺菌液が抜かれていき、私たちは久しぶりに液体の中の世界から解放された。
そして、部屋の入り口のエアロックが開けられ、作業員によって、私たちは、サイボーグ専用メンテナンスチェアの
拘束を解除された。
私たちは、みさきを抱えた作業員と共に、バイオハザードセキュリティーエリアを出て、
情報管理室に連れて行かれた。
ここでも私たちは拘束ベルトで、火星探査・開発用サイボーグ専用データ交換ベッド、
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ専用データ交換ベッドに寝かされ拘束された。
そして、私たちの股間のカバーが外され、データー交換専用コネクターにマザーコンピューターからの
データ取得用ケーブルが接続された。
私の隣でまた、みさきのあえぎ声が聞こえた。
私と未来は何事もなかったように股間にケーブルが差し込まれた。
私たちが集めた火星での活動で収集したデータやみさきの航行データの吸い上げは、
高速アクセス機能を利用しても、優に140時間のランタイムが必要だった。
つまり、私たちは、まるまる6日間このベッドに拘束され続けたのであった。
私は、この間、半覚醒状態の中に置かれていた。
そして、火星での活動や今まで自分に起こったことが、夢うつつの中で浮かんでは消えていった。
マザーコンピューターにデーターが吸い上げられるときに、脳の記憶中枢とデーター蓄積用ハードディスクの
リンクによって起こる現象だと言うことであった。
また、一度吸い上げられたデーターは、私の補助記憶として、ハードディスクに圧縮されて送り返され
蓄積されていたのだそうであった。
私たちにとっての拘束された生活はこれで終わりではなかった。
さらに24日間の長期にわたり、サイボーグ専用メンテナンスチェアーに縛り付けられ、
レストモードのまま、私たちの身体の徹底的なメンテナンスチェックと修理が行われた。
これは、私たちの身体の専門的な点検の目的もあるが、それ以上に、火星で、実際に探査活動を
行ったサイボーグアストロノーツの身体の長期的な使用状態におけるパーツの消耗度や耐久性などのデータを
採ることが重要な目的であったのであった。この任務の仕上げといえるものであった。
実際に、火星で過ごし地サイボーグ体のデータは、やはり、シュミレーターで過ごしたチームのデータと
比べて格段に重要性の高いものであり、今後のサイボーグアストロノーツの生産や、
今まで改造手術を受けたサイボーグアストロノーツの改良に大きく役立ったのであった。
私たちのデーターにより、欠陥とされた部品がすべてのサイボーグアストロノーツの同じ部品の交換という形で、
緊急に行われたりもしたのであった。
3Y600D00H00M00S。
私と未来とみさきの3人は、この日やっと自由の身となったのであった。
もっとも、みさきは、自由の身と言っても、全く自らの身体で動くことが出来ない手足のないダルマと同じなので、
惑星探査宇宙船操縦用サイボーグ用の移動台車に乗せられて、
サポートヘルパーが移動の手伝いを行うのではあるが、今までのように拘束はされていないのであった。
「やっと自由になれた気がする。」
そう未来が言った。私もそう思った。
「自由といっても、動けないから変わらないよぅ。」
というみさきのおどけた不満が聞こえて、3人は、緊張の糸が解けていった。
そんな私たちを木村局長やえりか達が局長室で待っていてくれた。
局長室に置かれた椅子は、以前と違い、ほとんどが、サイボーグが座れるような椅子になっていた。
そして、木村局長自身のサイボーグアストロノーツの身体をメンテナンスするための専用のメンテナンスルーム
まで作られていたのであった。
「如月大佐、望月中佐、美々津少佐。改めてお帰りなさい。任務ご苦労様でした。
火星ではいろいろあったみたいだけれど、3人の精力的な探査活動任務の遂行のおかげで、
予想以上に火星のデータが蓄積できました。
感謝します。ここにいるメンバーは、私も含めて、あなた達が集めてくれたデータのおかげで、安心して、
火星に移民できることになりました。
もちろん第二次探査チームのデータも必要になってくると思うけれど、それは、火星で受け取ることになると思います。
もう、火星から、帰還する火星用のサイボーグアストロノーツは、いないと思います。
全てが、火星に定住をすることになりました。もちろん私や澤田首相も含めてです。
あなた達も、再調整や再改造の処置を受けてもらって、火星への定住のための指導的立場を担ってもらいます。
いいですね。」
「了解しました。でも、正直言って、木村局長の言葉の全てについて、戸惑うことばかりであることは事実です。
私たちは任務終了後、このかわり果てた身体で地球上で生きた資料としての人生を送る覚悟で戻ってきたのですから。」
「それは当然だと思います。でも、これは否応のない命令ですし、
火星での生活に適したサイボーグアストロノーツを地球で遊ばせておく余裕が無くなったことを理解して下さい。」
木村局長は、ぴしゃりと言った。もちろん、私たちにとって、木村局長の命令を拒絶することは出来ないので、
再度火星に赴き、そこでの新しい人生を送ることになるのだと言うことは理解できたし、覚悟も出来たのであった。
もちろん、私たちの身体は、火星で生きていく方が、地球で生活するよりもはるかに楽なのであった。
なぜならば、火星での生活に適した身体なのだからであった。
でも、覚悟が出来たとはいえ、地球への教習を捨てきれているわけではない自分がそこにあった。
3Y601D00H00M00S。
この日から、記者会見やテレビ出演、講演会といった毎日が続いた。私たちのことはの凄く人気があるらしく、
会見場や講演会場は常に人が多かったし、視聴率も好い状態が続いた。
私たちの話で、興味を示す内容は決まっていた。もちろん火星での体験談がメインに聞きたいことなのだろうが、
それよりも、私たちの身体のこと、つまり、サイボーグアストロノーツの身体の構造や、能力、そして、私たちが、
サイボーグアストロノーツになったときの心境といったことを聞きたがったのである。
私たちの身体への好奇心や憧れといった感情や嫌悪感や悲壮感といった感情が入り交じったものであった。
私たちは、会場への移動は、常に、専用車や専用の飛行機を使用し、世界全体を飛び回った。
専用の移動手段があてがわれているのは、私たちが特別な待遇を受けているからではなく、私たちの身体が、
専用の座席を持った移動機材でないと運べないと言うことであった。
当初は、サイボーグ搬送用カプセルを使って移動するという案もあったが、やはり、
もっと人間的な運び方をしないと特別な存在という箔がつかないと言うことから、
わざわざ移動用の専用機材を製作したのだった。
3Y640D00H00M00S。
私たちは講演旅行も一段落したところであった。
私たちは、瑞穂さんに呼ばれて、首相官邸に赴くことになった。
首相官邸には、瑞穂さんや中山さん、寺田大臣達が待っていた。
そして、瑞穂さんの傍らに、見慣れないタイプのサイボーグが私たちを出迎えた。
その見慣れないタイプのサイボーグこそ、三谷副首相であった。そのことは、瑞穂さんの紹介で判った。
「紹介するわ。彼女が、私の腹心で、地球上の我が国の舵取りを私達が火星に旅立ったらお願いしてある、
三谷副首相よ。」
「紹介を受けました。三谷です。よろしくお願いします。火星からの帰還ご苦労様です。
そして、再出発でまた大変になるでしょうけれど頑張って下さい。」
三谷は紹介されて、そう言った。
彼女の身体は、私たちの身体と比べると硬質感のある金属に近い感じのある人工皮膚に覆われていた。
三谷副首相は、私たちの視線を感じたのか自分のサイボーグ体について簡単に説明してくれた。
「私の身体は、映画のアンドロイドのように金属感や硬質感があると思ったのですよね。私の人工皮膚は、
核戦争や、生物化学戦やそれに類するテロにあっても被害を受けることがないような構造になっている
フルメタル硬化樹脂型人工皮膚になっていて、火星定住型サイボーグである皆さんと違い地球での戦争でも
生き残れることを目標にして造りかえられているのです。
ですから、昆虫の外骨格のような装甲をイメージした人工皮膚になっています。
そして、護身用に胸に光子砲を2門、手の指の先端にも、小型光子銃を計十丁内蔵されています。
そのほかの生命維持システムなどは、皆さんとあまり変わりがありません。
ただし、地球上での軍事活動や指揮を行うために、地球上でのタキオン粒子通信システムが採用されていたり、
体内の電子機器が外部影響を受けることがないようになっていたり、電子線に対する対策も、
より高性能になっています。また、逆に高度電子戦能力も付けられています。
さながら、生きた作戦司令本部というような機能になっています。皆さんよりもより兵器に近い存在になっています。
パワーも皆さんよりも大きい出力を実現できるようになっています。
ただし、指揮命令順位が、澤田首相の下位になっていますので、澤田首相にクーデターを起こすことは
不可能ですけどね。
もし起こすとしたら、私の身体の中の自爆装置がすぐに作動することになっています。
私が敵の手に落ちて、脱出不可能と判断された場合も、自動的に自爆装置が稼働するようになっています。
そう言うことなので、一生澤田首相についていきますがね。」
そう言ってから、彼女の悪戯っぽい笑い声が聞こえた。
もちろん、そんなことは冗談に決まっていることはこの場にいる全てのサイボーグが、判っていることだった。
ここにいる全てのサイボーグは、澤田に対しての信頼と忠誠を確認している中なのである。
もちろん、彼女の言うように、指揮命令系統遵守回路によって、
指揮命令系統が最悪でも守られるようになっているのであるが。
三谷副首相の身体は、サイボーグ兵器と言うにふさわしいものであり、火星上で活動する我々とはやはり異質であった。
彼女でこのように思うのだから、完全に兵装を施された戦闘用のサイボーグ兵士は、
もっと兵器らしくなっているのだろうということが想像できたのである。
「紘子は地球上の祖国の指揮を執ることになるから、あなたとも、やり取りをする機会が
増えると思って紹介したの。さて、本題にはいるわよ。」
瑞穂さんが切り出した。
「あなた方は、再度の準備を行ってもらった後、私と一緒に火星に旅立つことになったのです。
その準備にかかって欲しいのです。玲子にもその旨を伝えてあるけれど。
再度火星に言ってもらい、私の片腕になってもらいます。
指揮権の順位もかなりの上位ランクの火星での指導者になるから、そのつもりでいて欲しいの。
地球は、紘子達に任せて、火星と地球上の二つの土地での我が国の優位を確立し、火星側では、
そこを足掛かりとして外惑星への領土拡大策を採っていこうと思っています。
そして、あなた達は、玲子と一緒にその政策の中心としての指揮を執ってもらいます。」
「判りました。」
私たちに答えの選択肢はそれしかなかった。火星に再びいくことがここで決定したのである。
私たちは、翌日から、火星へいくための準備に再び入っていった。未来やみさきは、
身体の部品のごく一部を取り替えられたり、付け加えられる程度のものであったが、私への処置は、
大幅なものとになった。
私は、翌日から、火星へいく準備に入った。
サイボーグ処置専用台に寝かされた私は、身体の全てを分解され、新しい部品と取り替えられたり、
電子機器のバージョンアップをされたり、機械部品の改良作業を行われた。
まるで、バラバラ死体のようになった身体の光景が、私の視覚に飛び込んできた。
私の身体もこの処置により、もっともっと機械に近い存在になるのだった。今回、私に施された処置は、
消化システムを完全に取り外され、呼吸システムと統合それた。
人工血液が、瑞穂さんに使用された呼吸液に入れ替えられた。
この呼吸液の特徴である栄養分と酸素などのガスの併用配給システムをフルに利用することにより、
私の身体はごく微量の排泄物も排泄する必要が無くなり、生体部分が必要なガス交換と栄養分の交換が、
呼吸液だけで行われ、そのリサイクルも、バックパックで完全に行うことが出来るようになったのであった。
その結果、私は、今よりももっと外部環境から独立する存在となったのであった。
ただ、緊急事態のため、体内に、呼吸液の貯留タンクと使い終わった呼吸液の貯留タンクが、取り付けられた。
このタンクは、バックパックの機能が故障したときに、修復までの間、10日間の生命維持が可能になっていた。
そして、機械や電子機器の部分へのエネルギー供給と廃棄物の処理のために、小型分子融合炉を中心とした
エネルギー循環システムが私の腹部に取り付けられた。
そして、胸に仕込まれている光子ビーム砲の強化と、そのエネルギー供給システムの増強がはかられた。
また身体の空いた部分には、今まで取り付けられていたハードディスクや補助コンピューターに変わって、
新開発された超小型大容量ハードディスクと超小型スーパーコンピューターが取り付けられ、
今までの私の情報処理能力が飛躍的に引き上げられた。そして、視覚システムの能力も大幅に引き上げられ、
明度が大幅に向上することになった。これによって、火星の夜で見にくかったものがはっきりと見えるようになった。
私の視覚は、火星の夜でも、地球の昼と変わらないほどの物体認識性が与えられると共により遠くのものを
見たり、透視能力が高まったりした。聴覚システムは、より多くの情報を取得するために、
可聴範囲が波長的にも、範囲的にもかなり広がった。
そして、電波が、デジタルや高性能粒子通信波が傍受できるようになると共に発信も可能になったため、
コミュニケーションサポートシステムが、特殊暗号通信という方式のコミュニケーションも可能になった。
このシステムは、瑞穂さんとのホットラインや地球上の三谷副首相との交信、
火星や地球の指導者とのコミュニケーションに使用されることになる。そして、嗅覚システムや、
口のあった部分に取り付けられた分析システムの充実が図られた。そして、駆動系も新たに造りかえられ、
新しい筋肉組織駆動モーターや関節組織駆動補助モーターにより、
私の駆動系の性能も飛躍的に向上したのであった。
それに合わせて、バックパックも小型で高性能なタイプに変更され、今までのような宇宙服を
着ているような容姿よりも、はるかにバックパックが目立たなくなった。
その代わりバックパックの背部に二機のイオン推進機が取り付けられ、跳躍の補助や同時に
取り付けられた通常はバックパック内に収納される翼によって、短距離の飛行も火星上で可能となった。
また、このシステムにより、宇宙空間での独立行動性能が向上したのであった。
そして、人工皮膚も、瑞穂さんと同じスーパーラバーメタルスキンへの変更処置が行われた。
私は、あらかじめ、今度の人工皮膚の色を明るいパールブルーにしてもらうように希望を出していた。
私の人工皮膚は、今までの濃い緑色から変更され、希望通り、ファッショナブルなパールブルーになった。
ただし、脚の部分のロングブーツ状になった人工皮膚は、バランスを考えて黒になってしまった。
私は、もう再度は変更がきかないので、私の希望を叶えてもらったのでった。私はこの皮膚の色に満足であった。
こうして、一度バラバラにされた私は、再度人というか人型ロボットの形に組み上げられていった。
そして、私は、いままでの火星探査・開発用サイボーグから、高性能火星定住型サイボーグへと
変更されたのであった。今までの身体とは格段に人間離れしてしまっていることは間違いのないことであった。
もう、ここまでの変更を受けてしまったら、自分を人間だと言い張れる自信が私にはなかった。
そして、前田ドクターと、佐藤ドクターの見守る中での新しい身体の馴化訓練を終え、
再び火星に飛び立つ準備が完了したのであった。
前田ドクターも、佐藤ドクターも、身体は、火星への定住のため、サイボーグ体になっている事は
言うまでもなかったのである。
私は、火星への出発の間をみさきと未来と一緒に公務をこなすことになった。
今日はここまでにします。
もう少しでクライマックスになると思います。
もう少し辛抱してお付き合いください。
3の444様
お心遣いありがとうございます。
スレの保管庫を作ろうと思っているのですが、
自分としては、なかなか忙しくてそこまでの時間がないのが、
実情です。
もし、そうしていただけるのなら、スレの保管のことお願いいたします。
保守
423 :
無名:2005/11/26(土) 17:16:48 ID:xow/ogp80
【謎の転校生】1
キーンコーンカーンコーン。五月のよく晴れた日。今日も小学校での一日が始まる。
わたし和多田可奈はギリギリで三年三組の教室にすべり込んだ。ふう、なんとかセー
フ。毎日遅刻寸前で教室に入るのもいい加減やめたいんだけど、ついつい寝坊しちゃ
うんだよね。とか思ってるうちに先生が教室に入ってきた。
「それでは、出席をとるぞ」
かなの担任の先生は日野光二っていう名前で、今年入ったばっかりの新人の先生。時
々ドジをしたり、物忘れてしたりするからちょっと頼りないんだけど、かなたち生徒の
ことを大切に思ってる先生なの。ドジっぷりを見てると、なんかやぎ先生のこと思い出
しちゃうなあ。二人でドジ対決したらどっちが勝つんだろう。
「…和多田かな、おい、和多田かな!」
し、しまった。かなは出席番号が最後だから、たまにだけど返事を忘れちゃう時があ
るんだ。ごめんね、先生。
「は、はい」「これで何回目だ、返事しなかったのは」「す、すいません」
まいったなあ、また赤っ恥かいちゃったよ。これから気をつけないとだめだわ。そん
なこんなで出席が終わったんだけど、先生がこんなことを言い出した。
424 :
無名:2005/11/26(土) 17:17:51 ID:xow/ogp80
「今日は重大なお知らせがあるんだ。荘野くん、入っておいで。」
教室の引き戸が開いて、男の子が中に入ってきた。転校生かなあ?
「紹介しよう、今日からみんなと一緒に勉強することになった荘野まさる君だ。荘野君
は昨日この町に引っ越したばかりで、まだここのことを知らない。だからみんな、荘野
君が分からないことは、教えてあげるように。」
へーっ、荘野君かぁ、けっこう頭良さそう。なんか真面目って感じするなぁ。あとで勉
強教えてもらおうかなぁ。
というわけで教室の中は荘野君の話題でいっぱいになった。荘野君はどこから来たの?
とか、趣味は何かな?とか。けっこう無茶なこと言うのもいたっけ。でも、荘野君はそ
んなに喋らなかったみたいで、少しずつだけど荘野君の話題はなくなっていった。まあ、
そのほうが話しかけやすくなるんだけどね。
425 :
無名:2005/11/26(土) 17:19:32 ID:xow/ogp80
そして放課後。かなは後片付けがあって、遅くまで学校に残ることになったんだけど、
そのとき偶然教室にいた荘野君と目が合っちゃったんだ。なにか話をするチャンスだ
と思って話しかけてみたんだけど…。
「あれ、荘野君、早く帰らないの?お母さんが心配してるよ」
でも荘野君はこんなことを言ったんだ。
「ほっといてくれよ、僕には誰も心配してくれる人なんていないんだ」
そう言って教室を出ていってしまった。なんでそんなこと言うんだろう、って最初は
思ったんだけど、もしかしたら荘野君、お母さん亡くなったんじゃないかなって思っ
たの。お母さんが交通事故か病気で亡くなって、そのショックでこんな態度をとった
んじゃないかな、って。かなも一年半前にお父さんお母さんを交通事故で亡くしてる
から、その気持ちよく分かるよ。だから明日、荘野君を慰めてあげようと思ったんだ。
次の日の昼休み。かなは荘野君のことを探したんだけど、全然見つからなかった。
教室にもいないし、校庭に出て遊んでるわけではないみたいだし、いったい何処へい
ったんだろう。そうしてるうちに昼休みの時間がなくなってきた。もー、何処行った
んだよー。せっかく話そうとしたのにー。結局昼休みには荘野君を見つけることがで
きなかった。
426 :
無名:2005/11/26(土) 17:29:44 ID:xow/ogp80
こうなったら放課後、荘野君が帰るときに後をついていって、そのときに話すきっかけ
を作るしかない。あー、早く放課後にならないかなあ。そう考えてるうちに五時間目が終
わるチャイムが鳴った。今日は授業が五時間目までなので、これで帰れるんだ。さっそく
かなは荘野君の後を追うことにした。玄関口を出て、校門を出て左の道へ。でも、これっ
てなんかストーカーっぽく見えないかなあ。こそこそ跡をついてきてるから、そう見える
のかも。と、とにかく荘野君を見失わないようにしないと。
しばらく歩道を進んでいくと、なんか大きくて高級そうな蒼い自動車が道の脇に止まっ
ていた。荘野君はその自動車に乗り込んで、ドアを閉めた。へー、荘野くんの家ってけっ
こうお金もちなんだ…。そう思ってるうちに、荘野君の乗った自動車が動き出してしまっ
た。ま、まずい!かなは猛ダッシュで自動車に追いつこうとしたんだけど、追いつくこと
ができなかった。くっそー、もっと早く走れたらなあ。かなの身体は義体だけれど、早く
走れるようには作られてないし、人並みに疲れるようにできてるからへとへとになるんだ。
だから、自動車に追いつくことなんて、絶対にムリ。こんなときだけは、自分の無力さを
感じちゃったよ。
次の日の朝。今度こそ荘野君に話しかけようと、かなはすこし早く学校へ行った。これ
ならちゃんと話せるかも。でも、今日に限って荘野君は早く学校に来なかった。おかしい
なあ、昨日は早く学校に来てたって聞いたのに…。他のクラスメイトが教室へ入ってきて
も、荘野君は姿を現さなかった。どうしたんだろう荘野君、やっぱりあのこと根に持って
るのかな…。なんか不安になってきたよお。
427 :
無名:2005/11/26(土) 17:30:51 ID:xow/ogp80
結局荘野君は学校に来なかった。放課後、先生に呼ばれて、
「この連絡版のデータ、荘野の家まで持っていってほしいんだけど、いいかな。
一番仲がいいのはお前みたいだし、お前が持っていったら荘野のやつも喜ぶだろう。」
なんて言われたよ。でもこれはまたとないチャンスだ。これで荘野君の家の場所が分か
るから、直接話すことができる。さっそくメモパッドに地図のデータを転送してもらい、
すぐに学校を後にした。
地図によると、学校から10キロほど離れた郊外のようなんだけど、普通の家や畑ばっ
かりで、お金持ちが住むような立派な建物は見つからなかった。
「えーと、たしかここのはずなんだけど…」
とにかくここのあたりを探すしかない。かなは大きな家があるかどうか、ここの周りを
探してみた。
「あれ、あんな所に白い建物が…」
かなは森の近くにある立派な建物を見つけた。こんな所に家?なんか隠れ家みたいだな
あ。近くの門まで来たとき、この家がどこか変なことに気がついた。
「…なんだよ、これ…」
ここは家というよりも、何かの施設みたいな建物だったのだ。
〈つづく〉
428 :
無名:2005/11/26(土) 17:45:57 ID:xow/ogp80
こんにちは、無名です。皆さんのご意見ご感想、そしてアドバイスをどうも
ありがとうございます。
まず、読みにくいと言われましたのでなんとか読みやすいようにしました。
ある程度分けましたので前より読みやすくなったと思います。
それと、今回は数回にお話を分けました。今回は1回で書ききることが難し
いと判断しましたので分けることにしました。
みなさんのアドバイスなどを参考にしてより良いお話を作って生きたいので、
これからもよろしくおねがいします。
>>428 どういう環境で書いてるのかわからんけど、とりあえず単語の途中で改行が
入るのは読みにくいので何とかしたほうがよいかと
>>423の冒頭ならこんな感じかな
書籍でも通常はこんな感じでしょ
> キーンコーンカーンコーン。五月のよく晴れた日。今日も小学校での一日が始まる。
> わたし和多田可奈はギリギリで三年三組の教室にすべり込んだ。ふう、なんとか
> セーフ。毎日遅刻寸前で教室に入るのもいい加減やめたいんだけど、ついつい
> 寝坊しちゃうんだよね。とか思ってるうちに先生が教室に入ってきた。
430 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/26(土) 19:27:20 ID:xow/ogp80
たしかに単語の途中で改行したほうが読みやすい。
それさえできればけっこう読みやすくなるので、もう少し精進してほしい。
431 :
429:2005/11/26(土) 19:36:27 ID:JnfjSUlG0
>書籍でも通常はこんな感じでしょ
通常はこんな感じじゃなかった(英文ならワードラップがあるけど)
何を勘違いしてたんだろう・・・
アンドロメダで機械の体にしてもらいに逝ってくる
鉄郎!あの赤いネジを撃ちなさい!!
>431
そんなところに行くよりもビルドベースに(ry
一年位前にWOWOWでやっていた映画版?しか見たことのない確実にここの平均年齢を下回っていると思われる
受験の終わった受験生の私って・・・
436 :
鳥:2005/11/27(日) 00:48:47 ID:NWAC1tJU0
>>392で紹介されているサイトについて
SFとかサイボーグって仕掛けを差し引いても素直に面白い作品。
絶対一読の価値あり。内容も良いけど読みやすさも含めて良い!
読みにくい日本語を書いてる香具師は行って勉強して来い!って感じ。
WEBで小説を書くときの書式として真似して良いんじゃないか?
書式を真似したから作家としての独自性が失われるもんじゃないしね。
437 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/27(日) 03:16:17 ID:voq9+iqT0
つーかさ、いいかげん初心者物書き叩きやめないか?
せっかく一生懸命書いてくれてるのに叩くばっかりじゃ、読んでるこっちまで
いい気分でいられなくなるよ。ホント。
シロウトなんだから巧くなくて当たり前だろ。プロじゃないんだから。
アドバイスするのはいいけど、「こうすればもっと良い」はいいけど
「勉強してこい」はありえねーだろ。
>>437 誤解を招く書き方をしてすまなかった。
サンプルを提示して参考にしたらどうだ?って書いてるんであって、
つまり「こうすればもっと良い」って書いてるつもりなんだが。
だいたい見所ない奴には何も言わない&適当な世辞は言ってない。
それに素人だから上手くなくて当然って言い方は逆に失礼だ。
439 :
3の444:2005/11/27(日) 19:01:03 ID:sXIMst/k0
叩いてるわけじゃなく、アドバイスをしているように見えるのだが。
真に作者のためを思うなら、直すべきところも指摘してあげた方が親切だと思うよ。
441 :
名無しさん@ピンキー:2005/11/28(月) 01:26:55 ID:GsVn6KfV0
>>440 >読みにくい日本語を書いてる香具師は行って勉強して来い!って感じ。
これを好意的に解釈するのは無理があり過ぎると思いますが
>>441 普通に流してた。
偉そうなのはスルーすればいいと思う。
443 :
3の444:2005/11/30(水) 08:10:21 ID:0h7umJE00
私は今、 一人で佐々波さんの病室にいるんだ。 一応気晴らしにテレビをつけてはみたものの、 佐々波
さんのふりをするために眼鏡を外しちゃったから、 ぼやけてあんまりよく見えないし、 だいいち、 腰を落ち着
けて見る気分にはとてもなれなくて、 義体に接続されたコードをずるずる引きずりながらあっちへウロウロ、
こっちへウロウロ。
“八木橋さん。 そうやってあんまり落ち着き無く動かれると、 私、酔っちゃいそうでーす。 リラックスリラック
ス”
頭の中に、 タマちゃんの脳天気な声が響く。 その場にいない人の声がを聞こえるっていうのは、 何だか
とっても不思議な感じだ。 まるで自分がエスパーにでもなったみたいな気分だよ。
今、 私のサポートコンピューターは、 病室にある義体管理用のコンピューターを介して、 タマちゃんたち
ケアサポさんが常駐しているサポートセンターのメインコンピューターと直接繋がっている状態。 だから、 眼
鏡をかけていない私の義眼に映し出されるぼやけた画像は、 サポートセンターにいるタマちゃんの眼の前
のモニター画面にも転送されているし、 私が聴いた音もタマちゃんのつけているヘッドホンに筒抜け。 私が
伝えようと思ったことは、 声に出さなくても、 タマちゃんには私の声として伝わるし、 タマちゃんがマイクに向
って放った声は、 サポートコンピューターで、 あたかもその場にタマちゃんがいるみたいに、 音声に変換さ
れて、 私に伝わるってわけ。
「うー、 無理だ。 リラックスなんてとても無理だよう」
ホントは口に出さなくても、 伝えようと思うだけで、 タマちゃんは音声データとして認識してくれるみたいな
んだけど、 思念だけで物事を伝えるって行為に慣れていないから、 ついつい口を動かして膨れっ面で愚痴
をこぼしてしまう。
444 :
3の444:2005/11/30(水) 08:14:33 ID:0h7umJE00
私の聞くもの見るもの全てがタマちゃんに筒抜けなんて、 ただでさえ落ち着かない気分なのに、 その
上、 佐々波さんのふりをして、 恋人と相談して、 男の義体にするか、 女の義体にするか決めるなんて、 人
の人生にも関わる大事なことをまかされてしまって、 緊張するなっていうほうが無理だよ。 影でこっそりタマ
ちゃんが行動を指示してくれるっていっても、 それを実行するのは私なんだからね。 自慢じゃないけど、 私
はもともとプレッシャーに弱くて、 ボーリングをしたら、 スペアを取った後は必ずガーターになっちゃうくらいな
んだよ。 普段は足が結構速いほうだったのに、 運動会になるとスタートで転んだりしたこともあるしね。 いく
ら機械の身体になったっていっても、 脳みそだけはもとのまんまだから、 この情けない性格は、 残念ながら
ちっとも直っていないんだ。
“うーん、 なんだかできの悪いビデオを見せられている気分でーす。 画像のピントは合ってないし、 視線が
あちこちさまよってゆらゆら揺れてるし”
タマちゃんは、 そんな私の気持ちなんかおかまいなしに、 相変わらず呑気な事を言っている。 視力0.1
のぼやけた視界を延々見せられるタマちゃんには同情するけど、 少しは私の身にもなってほしいよね。
でも、 落ち着き無く佐々波さんの病室をウロウロ歩き回ったお陰で、 気がついたことがあるよ。
遊び心の欠片も感じられない、 無機質な白壁に囲まれた六畳ほどの大きさの部屋。 本当は今の身体に
は大して必要ではないけれど、 人間らしさを装うためだけに置いてあるベッドと枕と毛布。 私達を機械の身
体だって自覚させるために置いてあるとしか思えない、 義体検査用の灰色のコンピューターとモニターディ
スプレイ。 佐々波さんの病室も、 私の病室も、 部屋の作りは全く一緒。
でもね。 一つだけ私の病室と違っているところがあるんだ。 私、 目が悪いから(ていうか自分からわざ
と、 近視になるように義眼の視力調整をしてるんだけどね)、 佐々波さんの病室に入ったときには気付かな
かったんだけど、 よくよく見れば、 壁のあちこちに、 葉書くらいの大きさの小さな水彩画が、 丁寧に額に入
れて飾ってあるんだ。 この部屋、 まるで、 小さな美術館みたい。
445 :
3の444:2005/11/30(水) 08:15:36 ID:0h7umJE00
興味を惹かれた私は、 そうしないと見えないから、 鼻先を絵に触れるくらい近づけて、 小さな絵を、 一
つ一つ眺めていった。
まるで燃えているみたいに、 山一面真っ赤に染まった紅葉、 今にも川魚に襲い掛かってやろうって羽根
を振り上げた、 かわせみの雄姿、 小さな絵のそれぞれに自然の風景が生き生きと描かれていた。 本当に
小さな絵だけど、 それがあるだけで、 この無彩色の、 機械の検査室にしか見えない義体患者用の病室だ
って、 暖かい自然の温もりに包まれているような、 そんな気さえしてきた。
「ずるい! なんで、 佐々波さんの部屋にだけ、 絵がこんなにたくさんあるのさ。 私の部屋にだって一つくら
い欲しいよう」
ついタマちゃんに向って不平を漏らしてしまう私。
どうして、 佐々波さんの部屋にばかり、 こんなにたくさん絵があって、 私のところにはないんだろう。 こ
れって、 患者差別だよ。 私はそう思ったんだ。 この絵は、 全部、 府南病院に最初からあったもの、 そう思
い込んでいたからこそ、 タマちゃんに文句をつけたんだよ。
だから、 タマちゃんから、 この絵、 全部佐々波さんが描いたんだって聞かされて、 私、 びっくりしたよ。
“佐々波さん、 絵を描くのが大好きだって、 佐々波さんの恋人から聞いたから、 リハビリの一環で、 絵を描
いてもらうことにしたのでーす。 私の前じゃ、 文句しか言わないくせに、 一晩たつと、 一枚絵ができてるの。
ホント素直じゃないよね”
そう言ってタマちゃんはくすくす笑った。
タマちゃんは、冗談めかして言ってるけど、 自殺を図って、 でも死に切れなくて、 そのうえ義体になって
しまった佐々波さんを、 ここまで立ち直らせるのは、 並大抵の苦労じゃなかったはずだ。 それが、 ケアサ
ポーターの仕事だものってタマちゃんは事も無げに言うかもしれないけど、 誰にでもできることじゃないよ
ね。 私には、 すごいケアサポさんが付いてくれているんだって、 あらためて思ったよ。それから、佐々波さ
んについての認識も改めなきゃいけないね。こんな、プロ顔負けの素敵な絵を描くなんて、あなたは、ただの
おなべさんじゃないんだね。
446 :
3の444:2005/11/30(水) 20:07:18 ID:3rnzdLUo0
私は、 美術の成績がそれほど良かったじゃないし、 ましてや絵の良し悪しが分かるほどの知識もセンス
もないよ。 けれど、 そんな私でも、 夏の砂浜を描いた絵から、 照りつける太陽のじりじりした暑さや、 むわ
っとした粘り気を帯びた海の匂いまで感じることができたんだ。 砂浜の真ん中にポツンと一つだけ描かれた
ビーチパラソルの作り出す真っ黒な日陰に思わず逃げ込みたくなったくらいだもの。 それから、草原を走る
馬の絵は、 私が昔モンゴルで受けたような爽やかな乾いた風が、 私に向かって吹いてくるみたいだった。
私の機械の身体は、 もう季節の移り変わりを肌で感じることはできないけれど、 でも、 心で感じることはで
きるはずだよって、 佐々波さんの絵から教えられた気がしたんだ。
佐々波さんは、 自分のことをお人形さんだって言ってたけど、 決してそんなことないよ。 こんな風に、 自
然の息遣いをそのまま絵にすることができるような人が、 機械のはずがないじゃないか。 佐々波さんの代
わりに、 佐々波さんの書いた絵の一枚一枚が、 「オレは生きてるんだ」って叫んでるよ。 私には、 その声
が聞えるよ。
佐々波さん、 もっと素直に自分の本心を口に出せばいいのに。 それは、 決して恥ずかしいことなんかじ
ゃないよ。 馬鹿だね。 男ってホントに馬鹿だよね。
“八木橋さん、 心の準備はいいの? もう彼女、 来ちゃうよ”
タマちゃんにそう言われるまで、 私は、 そんなことを思いながらずーっと佐々波さんの絵を眺めていたん
だ。
447 :
3の444:2005/11/30(水) 20:17:20 ID:3rnzdLUo0
今日はここまでです。
448 :
207:2005/12/02(金) 21:21:50 ID:/EiwfzPm0
>>448 俺は知ってた。
というか、最新作のきつね女も面白そうジャン。
昔読んだなぁ。良い話だよね。ただし微妙にスレ違い。w
451 :
無名:2005/12/03(土) 14:15:18 ID:KVWAkO460
【謎の転校生】2
「なんでこんな所が荘野君の家なの…」
町のはずれにある白い建物、そこが荘野君が住んでいる家だった。
でも、こんな所はとてもじゃないけどお金持ちの家って感じじゃない。まるで孤児院みたいな感じだ。
かなは恐る恐る門をくぐり、玄関のチャイムを鳴らした。
「はい、どちらさまですか?」
呼び出しに出たのは若そうな女の人の声だった。
「あの、すいません。ここに荘野まさる君はいますか?」
「ああ、まさる君のお友達ね。どうぞ中へ入って」
玄関のドアが開いた。さっそく中へ入ると、そこには待合用の椅子が6つほど、左のスペースに
置かれていた。右の方には管理室のような部屋のドアがあった。これじゃあ、どう見たって普通の家
じゃないよね。
そのドアが開いて、中から25、6歳くらいのメイドみたいな格好をしたお姉さんが麦茶を持って
やってきた。
「どうぞ、ここへかけて待っててね。すぐまさるくんを呼んでくるからね」
管理人のお姉さんは待合テーブルの上に麦茶を置いて、奥のほうへ消えていった。そうか、やっぱり
荘野君は親がいないんだ。だからここへ引き取られたんだね。そう思うとかなは、もしかしたら自分も
こうなっていたかもしれないと、考えてしまった。
(もし、かながこんな所に入ってしまったら、どうなっていただろう。今のように楽しく暮らして
いけただろうか)
だめだ、そんなこと考えてちゃ。今日は荘野君に会うために来たんだから。もっと明るい話題を
考えなくちゃ。
かなは麦茶を一気に飲み干した。ふう、これで落ち着いた。
452 :
無名:2005/12/03(土) 14:19:48 ID:KVWAkO460
それから十分ほど時間が経って、管理人のお姉さんと荘野君がやってきた。
「…何のようだよ」
荘野君はふてくされてるような表情でかなをジローっと見ている。
とにかく話題つくりから始めないと。
「しょ、荘野君、これ、連絡用のメモリーカード。先生が届けてほしいって言われたから」
「ああ、どうもな」
「あの、荘野君、何か悩み事とかない?よかったらかなが相談に乗るよ」
よし、なんとか話に乗せることができたぞ。あとは荘野君の反応なんだけど…
でも、荘野君の反応は思ってたのとは違ってた。
「悩み事なんか、これっぽっちもない!用がないなら帰ってくれよ!」
荘野君は奥の方に走って戻ってしまった。どうして?なんでそんなこと言うんだよお。
せっかく相談に乗ろうとしたのに。
「かなちゃん、ごめんね。あの子、交通事故に遭ってからこんな調子なのよ」
管理人のお姉さんが悲しそうな顔で荘野君のことを心配していた。
453 :
無名:2005/12/03(土) 14:21:44 ID:KVWAkO460
「それって、どういうことなんですか?」
「まさる君は三年ほど前、飛行機事故に遭って両親とお姉さんを亡くしたの。
まさる君自身は奇跡的に生き延びたんだけど、身体を義体化しないと助からなかったの。
それ以来、まさる君は誰にも心を開かなくなってしまった。私にもほとんど話をして
くれないほどなのよ」
そ、そうだったんだ。荘野君はかなと同じサイボーグなんだ。
「前の学校でも、自分が普通の人間じゃないと分かってしまって、クラスメイトに
変な目で見られたときもあったの。それが原因で、登校拒否してしまったこともあったわ。
あなたの学校へ転校したのも、そういうことがあったからなのよ」
「それじゃ、荘野君が学校のみんなと話をしたがらないのも、お昼休みにどこか行っちゃうのも、
自分がサイボーグだという事を隠すためだったの?」
「そうかもしれないわね」
もう、いても経ってもいられない。かなは立ち上がって荘野君が走っていったほうへ走ろうとした。
「どこいくの?」
「荘野君の部屋へ行って話をしたいの。かなは荘野君の気持ちが痛いほど分かるから、
もう一度逢いたいんだ」
「気持ちはわかるけど…まさる君の部屋、わかるの?」
うっ…、そ、そうだった。分かるはずないのに、かなったらあわてんぼだなあ。
そういうわけで、かなは管理人のお姉さんに荘野君の部屋まで案内してもらった。
でも、ちょっと心配だなあ。ちゃんと話を聞いてくれるかどうか分かんないし…。
とにかく、会って話をしなくちゃ。そうしないと始まらないもんね。
454 :
無名:2005/12/03(土) 14:29:03 ID:KVWAkO460
コンコン。お姉さんが部屋のドアをたたいた。
「まさるくん、かなちゃんが話をしたいんですって。ドアを開けて」
「こっちには用なんてねえよ。帰れっていっただろ」
な、なんだよ。こっちが心配してんのに、なにその態度は。
こうなったら意地でも話を聞いてもらうからね。
「荘野君、ドア開けてよ。かなは荘野君のことが心配なんだよ。
荘野君がどんなにつらい思いをしたのか、かなにはよく分かるんだよ。
だからおねがい、ドアを開けてよう」
カチャ。かなの想いが届いたのか、荘野君はドアの鍵を開けてくれた。
「…入れよ、少しだけなら話、聞いてやるよ」
荘野君はすこしふてくされてかなたちを部屋の中へ入れた。部屋の中は
パソコンや組み立てキットが置かれていて、なんか小学生って感じがしない部屋だった。
でも意外ときれいに片付けられてるねえ。かななんか片付けるの好きじゃないから、
整理整頓なんてほとんどしないんだけど。
「…で、何の話だ」
「荘野君、お姉さんから話は聞いたよ。お父さんたちを亡くしたんだってね。
それで荘野君、こんな風になっちゃったんだね…」
「同情のつもりかよ?そんなこと、お前に分かるのか?両親がいて、ぬくぬくしてるお前に!」
「ちがうよ!かなもお父さんお母さんいないんだよ。だから、荘野君の気持ちわかるんだよ」
「わかるもんか、そんなもん!家族を失って、こんな身体になってまで
生きなくちゃならない僕の気持ちなんか!」
荘野君はまるで敵を見るような目でかなをにらんだ。なんで?なんでそんな目で見られなくちゃいけないの。
かなは荘野君のことを心配してるだけなのに…。
めそ…
456 :
無名:2005/12/03(土) 14:31:29 ID:KVWAkO460
「他のみんなだってそうさ。僕が機械人間だと分かったとたん、まるでロボットを見るような感じで
僕を見るんだ。そして、おまえはメカだ、マシンだって冷たく言い放つんだ。僕はそんなことを言う
奴らが憎い。だからあいつらに復習してやるのさ。学校のホストコンピュータを乗っ取って生徒という
生徒を混乱させてやるんだ!」
知らなかった。荘野君がこんなにも学校を憎んでいるなんて。機械の身体のせいでこんなに苦しんでいるなんて。
でも、止めなきゃ。荘野君を止められるのは同じ身体を持つ、かなだけだもの。
「荘野君、機械の身体なのは、君だけじゃないよ。かなだって、同じ機械なんだよ」
荘野君とお姉さんは驚きの顔を隠せなかった。それもそうだよね。かなが義体だということを
ばらしちゃったんだから。でも、荘野君はこんなことを言い出したんだ。
「じゃあ、証拠を見せてみろよ。義体なら、端末のひとつくらいあるはずだからな」
荘野君は首筋にあるコネクターカバーを指差した。たしかに機械式の義体なら、
背中に点検用のコネクターがあるはずだ。でも、かなの義体はハイブリットタイプだから、
コネクターを出すことができない。どうしたらかなが義体だって証明できるだろう。
「どうした、お前の言ったことはハッタリか。今だったら許してやってもいいぞ」
分かったよ、だったら見せてやろうじゃないの!
上着を脱ぎ捨てたかなは、近くにあったドライバーを右手に持って、左肩に突き刺し、
ぐりぐりと傷口を広げた。バチバチッ。刺したところから火花を散らして人工皮膚が焼き焦げ、
そこから赤茶色の人工筋肉が見えた。
「…どう、これでかなが義体だってわかったでしょ…?だから荘野君、復讐なんて
バカなことはやめてね…。おねがい…だから…」
頭の中でアラーム音が鳴りっなぱなしだ。やっぱこんなことするなんて、バカだよね。
でもこうでもしないと、かなが荘野君と同じだって分かってもらえないから、こうするしか
なかったんだ。ああ…気が遠くなっていく…。ごめんねお兄ちゃん、大事な身体をこんなにして…。
周りがグラグラゆれながら、かなの意識は闇の中へ消えていった。
457 :
無名:2005/12/03(土) 14:33:18 ID:KVWAkO460
「おい、しっかりすんだ、かな!」
気が付いたときにはかなはベッドで横になっていた。ベッドのそばには、
神無月のお兄ちゃんが心配してかなのことを見ている。どうやら天王病院へ運ばれたようだ。
「…おにいちゃん…」
「お兄ちゃん、じゃないだろう!まったく、お前は何を考えているんだ!
自分で自分の身体を傷つけるなんて!もう少し遅れていたら大変なことになっていたんだぞ!!」
そうだよね、こんなことしたんだから怒られるのは当たり前だよね…。
「ご、ごめんなさい…」
「分かればいいんだ。もう二度とそんなことしちゃ駄目だぞ。あと、連絡してくれた微笑荘の
管理人さんたちにもお礼を言っておくんだよ」
あっ、そうだ!荘野君はどうなったんだろう。こんなことをしたから、怒ってるかもしれない。
謝らなくちゃ。そのとき、ドアをノックする音が聞こえた。
「し、失礼します」
病室のドアが開いて、荘野君が入ってきた。なんか自分が悪いことをしてしまったような顔をしていた。
「ごめん、お前が本当に義体だったなんて…疑ってごめん」
「いいんだよ荘野君、こっちこそ迷惑かけてごめんね。でも、もう相手を憎んだりするのはやめてね。約束だよ」
「わかった、約束する。でも、僕が義体だということがばれてしまったら、どうするんだ?」
「そのときはかなも自分が義体だってことを言うよ。それでみんなに理解してもらおうよ。大丈夫、
みんな怖がったりしないから」
「…本当に信じていいんだな、お前のことを」
よかった、これで荘野君は人を恨んだり、憎んだりすることなんてしないはず。学校のみんなとも仲良くできるね。
「あ、あと…和多田…」
「なに?何が言いたいの?」
「和多田、僕の…僕の友達に…なってくれないかな…」
おー、と、友達かー。もちろんかなはOKだよー。でもね、和多田って言っちゃあ、だめだよ。そう、
友達だったらこう言うんだよ。
「かなって呼んでよ。友達だもん、こう言わないとね」
「じゃあ、僕のこともまさるって呼んでいいぜ」
まさる君は今までにない笑顔を見せてくれた。
これがきっかけで、まさる君はかなの友達になったんだ。
458 :
無名:2005/12/03(土) 15:01:14 ID:KVWAkO460
こんにちは、無名です。謎の転校生の後編をお送りしました。
今回の話はかなちゃんと対になるキャラを出そうとして、まさる君
を出しました。自分の殻に閉じこもっているまさる君を、かなちゃんが
救い出そうとする話にしようとしましたが、いかがでしたでしょうか。
ご意見、ご感想をお待ちしています。
さて次回は、神無月先生メインの話を書く予定ですが、もしかしたら
年内には発表できないかもしれません。(色々忙しくなってきましたから)
できれば年内に発表したいのですが、できなかったら来年の初めくらいには
発表したいと思います。
>>無名さん
いいじゃん。次も楽しみにしてるよ!
久しぶりに萌えたよ、、、
ありがとう。
461 :
3の444:2005/12/06(火) 03:33:04 ID:npU7O9eW0
ノックの音に続いてドアがゆっくりと開かれる。 私は息をのんで、 病室の灰色のドアを見つめた。
部屋に入ってきたのは、 きちんとしたスーツに身を包んだすらっとした長身の女性。 年齢は、 二十台後
半、 ちょうどタマちゃんと同じくらいだろうか。 美術館に置いてある彫刻を思わせるような、鼻筋の通った整
った顔立ちの人だった。
彼女は、 テレビの前で間が抜けたように突っ立っている私を認めると、 なんだか思いつめたような固い
表情で、 私のもとに歩み寄った。
「まだ、 その姿のままなのね・・・」
彼女はぽつりと独り言のようにつぶやくと、 そのまま彼女の意思の強さを表しているような大きな目で、
私のことをじっと見つめた。
私や佐々波さんが取りあえず入っているイソジマ電工製の標準義体の身長はちょうど160cm。 大きすぎ
ず、 小さすぎず、 日本女性の平均値を取って、 この高さに設定してるんだって。 その私が、 ちょっと上目
づかいにしなければ、 彼女の顔を見ることができないなんて、 ずいぶん大きな女の人だ。 私は、 佐々波さ
んみたいなおなべさんと付き合う女の子っていうのは、 小さくて可愛らしい女の子なんだろうなって勝手に思
い込んでいたんだけど、 どうやら私の偏見だったみたい。 私の目の前で、 身じろぎもせず、 私のことをまっ
すぐ見つめている女性は、 凛々しくて、 カッコイイ。 大きな会社で、 バリバリ働いているキャリアウーマンな
んだろうか、 と勝手に想像した。
彼女の名前は、 タチバナカズミ。 佐々波さんは、 彼女のことをカズミって呼んでいる。 それが、 さっきタ
マちゃんから仕入れた彼女についての予備知識。 でも、 私がカズミさんについて知っているのはそれだけ。
それ以外のことは何一つ知らない。 思わず、 はじめましてって言いそうになって、 私はあわてて言葉を飲
み込んだ。
彼女も、 黙りこくって私を見つめるばかり。 私達の間に気まずい空気が漂った。
462 :
3の444:2005/12/06(火) 03:36:58 ID:pZtNW4MS0
“タマちゃん、 どうすればいいの?”
なんて声をかけたらいいのか分からなくて、 たまらず、 ケアサポさんの控え室で、 この様子をじっくり見
ているはずのタマちゃんに助けを求める。 もちろん、 実際には声なんか出してはいない。 有線通信とやら
で、 この声は私とタマちゃんにしか聞えない仕組みなんだ。
だけど、 タマちゃんの指示が飛ぶ前に、 カズミさんが口を開いた。
「久しぶりね」
手を伸ばして、 私の頬っぺたをそっと撫でるカズミさん。
「手術のあと、 一回会ったっきりだもんね。 あとは、 何回ここに来ても、 あなたは会ってくれなかったよね」
カズミさんは、 そう言って、 寂しげに力なく微笑んだ。
「うー、 ごめんなさい」
佐々波さんのことなのに、 自分には関係ないことなのに、 私はなんだか自分自身が責められているよう
な気になって、 胸が苦しくなった。 そして、 私は、 反射的に拳を握りしめて、 唇をかみ締めてしまう。 辛い
とき、 何かに耐えなきゃいけないとき、 私が思わずしてまう仕草だ。
それを見たカズミさんは、 いぶかしげに眉をひそめた。
“うーって言わないの! 何度言ったらわかるの?”
すかさず、 タマちゃんから、 突っ込まれる。
そうでした。 私は今、 身も心も佐々波さんになりきらなきゃいけないのでした。 でも、 姿かたちは佐々波
さんそのものとはいえ、 心まではなかなか演じきれるものじゃない。 うっかりした隙に、 ついつい素の自分
が出てしまう。 気をつけなきゃ、 と自分に言い聞かせる。
幸い、 カズミさんは、 目の前の義体に入っている人の正体が、 佐々波さんじゃないなんて気がつく様子
はなかった。 ほっとすると同時に、 佐々波さんのふりをして、 カズミさんを騙しているっていう罪悪感に、 ち
くりと胸が痛んだ。
463 :
3の444:2005/12/06(火) 03:39:06 ID:pZtNW4MS0
「話は汀さんから聞きました。 女の身体のままでいるか、 男の身体に変えるか、 どちらか選ばないといけな
いんだって?」
カズミさんは、 相変わらず固い表情を崩さすに、 私に聞いた。
話がいきなり本題に入って思わず身を固くする私。
「そ、 そうなんだよ。 カズミは、 どうしたらいいと思う?」
慣れない男言葉で話すのは、 なんだか気恥ずかしい。 でも、 恥ずかしいとか言ってる場合じゃない。
佐々波さんが、 男の姿を選ぶべきなのか、 女の姿を選ぶべきなのか、 恋人であるカズミさんの意向を
聞くこと。 それが、 意思のある操り人形としての私の役目なんだ。
カズミさんは、 佐々波さんに、 男と女と、 どっちになってほしいと思うんだろうか? 女の姿だったら、
佐々波さんが、 まだ生身の肉体を持っていた頃と中身はともかく外見だけは一緒になる。 きっと、 カズミさ
んにとっても馴染みのある姿だろう。 それとは逆に、 男の姿だったら、 いくら遺伝子解析をするとはいって
も、 昔の佐々波さんとは、 かけ離れた姿格好になっちゃうのは間違いないよね。 でも、 佐々波さん自身
は、 自分が男だと強く思っている。 そして、 意識は男なのに身体は女だっていうギャップにすーっと苦しみ
続けてきたっていう。 そのことは、 佐々波さんの恋人であるカズミさんなら、 よく知っているはずなんだ。
どちらを選ぶにしても、 とても難しい問題。 でも、 必ずどちらかに決めなければいけないこと。 彼女は、 い
ったいどんな答えを出すんだろう?
私は、 彼女が口を開くのを、 ドキドキしながら、 今か今かと待ち構えた。 いや、 ホントは、 ドキドキする
ような心臓なんて、 もうないんだけどね。
でも、 カズミさんの答えは、 私が予想もしなかったものだった。
「どっちでも、 好きにすればいいよ。 だって、 もう、 私には関係ないことだもの・・・」
相変わらず、 寂しそうに微笑みながら、 カズミさんは、 初めて私から目をそらした。
464 :
3の444:2005/12/06(火) 03:49:23 ID:pZtNW4MS0
「そ、 それって、 どういうことなの?」
あわてて聞き返す私。 ホントは、 「それって、どういうことなんだっ!」って男っぽく言わなきゃいけなかっ
たのかもしれないけど、 カズミさんの予想外の返答に、 うろたえてしまって、 そこまで頭が回る余裕なんか
あるわけない。 関係ないってどういうことなんだよう。 あなたたちは、 恋人同士のはずじゃないか。 そんな
答えっておかしいよ。
私は、 大きく息を飲み込むと、 次の、 カズミさんの言葉を待った。
カズミさんは、 感情を極力表に出さないようにしているのか、 押し殺したような静かな声で、 でもきっぱり
と言い切った。
「今日はね、 私、 あなたにお別れを言いにきたの」
「え?」
私は、 もう一度、 間が抜けた声で聞き返す。 カズミさんの言ったこと、 決して聞こえなかったわけじゃな
い。 ただ、 彼女の言うことが信じられなかったんだ。 信じたくなかったんだ。
カズミさんは、 続けた。
「お別れよ。 私、 もう疲れちゃった。 いくらあなたのことが好きでも、 あなたは、 私のこと、 まるで信じてく
れないもの。 私、 あなたが、 こうして機械の身体になってしまって、 そのことで、 親からも見捨てられたっ
て聞いてしまっていたから、 あなたが簡単に人を信じることができなくなってしまうのも無理ないと思ってた。
でも、 私なら、 あなたのことを変えられる、 変えてみせるって思ってたの。 だって、 私は、 あなたの身体の
ことなんか関係なく、 ずーっと、 あなたの心に惹かれていたんだもの。 昔から、 ずーっとね。 我侭で、 あま
のじゃくで、 でも、 とても純粋な、 少年みたいな、 あなたが好きだったんだもの。 たとえ、 身体が機械にな
っても、 心があなたのままなら、 私はそれでよかったし、 あなたにも、 私の言うことなら伝わる。 私は、 そ
う思ってた。 でも、 それって私の傲慢で勝手な思い込みだったんだよね。 結局、 最後まで、私の言うことを
信じてもらえなかったね」
カズミさんは、 そこまで一息で言うと、 くるりと後ろを向いた。
465 :
3の444:2005/12/06(火) 04:04:07 ID:pZtNW4MS0
「あなたのこと、 今でも愛してる。 世界中の誰よりもすてきな男性だと思ってる。 あなたと知り合えて、 本当
に楽しかったよ。 今まで、 ありがとね」
最後まで落ち着いた、 乱れの無い声だった。 でも、 そんな彼女の肩が小刻みに動いている。 私、 分
かるよ。 きっと、 今、 カズミさんは、 泣きたいのを一生懸命こらえているに違いないんだ。
タマちゃん、 どうしよう。 私、 彼女に向かって何て答えたらいいんだろう。
佐々波さん、 この通信、 聞いてるの? あなたは、 本当にそれでいいの? 彼女を引き止めなくていい
の? 私達、 全身義体の人間には、 普通の人と付き合う権利なんてない。 本気でそう思ってるの? そんな
馬鹿な考え、 もうやめようよ!
佐々波さん、 あなたは、 私が想像もできないような、 辛い目に遭ってきたのかもしれないよ。 そして、
あんまり悲しいことがありすぎて、 自分のことを機械だって思ったほうがラクに生きれる、 そう思ってしまうよ
うになっちゃったのかもしれないよ。 人を信じられなくなってしまうのも無理ないのかもしれないよ。
でもさ、 彼女のあなたを愛する気持ちは本物だよ。 そんなの、 私にだって分かる。 あなただって、 本当
は気がついているはずだよ。 だったら、 もう一度、 人を信じてみようよ。 彼女の愛に応えてあげようよ。 自
分がどんな姿になったとしても、 愛してもらえる。 今の私にとって、 こんな羨ましいことはないんだよ。
どこまでが自分の心の中で思ったことで、 どこからがタマちゃんや、 佐々波さんに伝えようとしたことな
のか、 頭が混乱して、 なんだかよく分からなかった。
“そうか、 分かったよ。 じゃあ、元気でな”
唐突に頭の中に、 タマちゃんのつぶやきが響く。
“え?”
“八木橋さん。 聞こえなかったの? 正しい答えは 「そうか、 分かったよ。 じゃあ、 元気でな」 よ。 ハイ言っ
て”
466 :
3の444:2005/12/06(火) 04:05:34 ID:pZtNW4MS0
私は耳を疑った。 タマちゃんの言葉とは、 とても思えなかった。 そんなこと口にしたら、 この二人はホン
トに終わりになっちゃうじゃないか。
“なんで、 そんな悲しいこと言わなきゃいけないの? 私は、 嫌だよ。 絶対嫌だからね。 タマちゃんだって、
佐々波さんの本当の気持ちは知ってるはずじゃないか”
いくらタマちゃんでも、 そんなこと言うなんて、 許せない。 私はそう思った。 たかだか、 有線の通信で、
どこまで、 私の感情が伝わるか分からない。 でも、 電線を焼きらんばかりの強い怒りを、 この通信にはこ
めたつもりだった。
“うわ、 なにするの、 やめあせdfgyふじこlp;!!! “
突然、 タマちゃんの悲鳴を感知して、 私はうろたえた。 まさか、 私の怒りが通じたわけじゃないよね。
“どうしたの、 タマちゃん、 どうしたの? タマちゃん! タマちゃん!”
“・・・・・・”
私の呼びかけに、 なんの回答もない。 どうしよう。 タマちゃん、 いったい何があったんだよう。 一人ぼっ
ちで、 この状況をどうやって切り抜けたらいいんだよう。 私分からないよ。
「じゃあ、 さようなら。 私の愛しい人。 いつまでも元気でね」
とうとう、 カズミさんは、 病室のドアノブに手をかけた
私は、 どうすることもできず、 彼女の後ろ姿を見つめるばかり。 ごめん、 タマちゃん。 佐々波さん。 や
っぱり私じゃ、 なんの役にも立てなかったよ。
467 :
3の444:2005/12/06(火) 04:07:16 ID:pZtNW4MS0
“待ってくれ!”
突然、 通信が回復した。 と思ったら、 タマちゃんじゃなかった。 その声は、 佐々波さん! 佐々波さん、
タマちゃんから無理やりマイクを奪い取ったんだね。
“佐々波さん? 今まで、 どこにいたの。 今までのやり取り、 全部知ってるの?”
“ずーっと聞いてたさ。 メ ガネザルが、 一人でオレの部屋にいたときからずーっとな。 そんなことはどうでも
いいから、 待てってくれって言ってくれよ! は、 や 、く!”
「待ってくれ! ! !」
私は叫んだ。 目をつむって、 思いっきり。 部屋中の額縁をびりびり揺らすつもりで。
カズミさんが、 びくっとして立ち止まった。
“後ろからカズミを抱け、 思いっきりだ”
“あの、 私一応オンナなんですけど・・・”
“このさい、 そういうことは関係ないんだよ! は、 や、 く!”
“ふふふ、 佐々波さん。 やーっと、 その気になってくれたのね”
タマちゃんが、 突然通信に割り込んできたかと思うと嬉しそうに笑った。
“じゃあ、 八木橋さんの身体、 ちょっと貸しあげてね。 ごめんね八木橋さん。 はい、 いーち、 に、 さーん”
次の瞬間、 私の身体が自由を失って前のめりに倒れた。
468 :
3の444:2005/12/06(火) 04:28:35 ID:pZtNW4MS0
今日はここまでです。
無名さん
かなちゃん、無茶するなあ(笑)
しかし、腕を突き刺したくらいで壊れちゃうとはずいぶん
やわな義体ですね。そこがいい、という話もありますが。
>腕を突き刺したくらいで壊れちゃう
壊れた腕が強制パージされて、なおすまでのしばらくの間「不便だなー」とか
言いながら片腕が無い生活ってのも萌えなんだがw
>ヤギーのテレパシー
どういう仕組み?
脳を改造されてないんだったら「思うだけで通信」ってのは無理のような気も。
脳を改造しないのがイソジマ義体のウリなんだし。
(そして無改造脳だから慣れない体でのリハが萌えどころな訳だがw)
現在確かに「考えるだけでコンピューターを操作」って技術が現実にあるけど
電極刺されまくった脳を無改造と呼ぶには無理があるし。
筋電義手みたいに外から信号を拾うのも無理っぽいし。
(そもそも筋電義手が拾うのは神経信号では無くて筋電)
神経系を(義体のセンサーでは無く)サポートコンピューターの仮想世界に
繋ぎかえてしまう方法もあるけど、義体が神経系で制御されなくなるから
サポートコンピューターが適当に信号を送ってても突然表情が不自然になったり
(発声関連の筋肉は顔やその周辺にあるから)、突然黙ったり(発声まわりの
筋肉に繋がる神経系を乗っ取られているんだから当然)と、切り替え式でも
はた目に不自然に見えてしまうのは避けられない気がする。
(ちなみに、神経系が切れちゃった生身の顔の場合、各種筋肉が垂れ下がって
顔が崩れることすらあるそうな(怖))
>腕を突き刺したくらいで壊れちゃう
壊れた腕が強制パージされて、なおすまでのしばらくの間「不便だなー」とか
言いながら片腕が無い生活ってのも萌えなんだがw
>ヤギーのテレパシー
どういう仕組み?
脳を改造されてないんだったら「思うだけで通信」ってのは無理のような気も。
脳を改造しないのがイソジマ義体のウリなんだし。
(そして無改造脳だから慣れない体でのリハが萌えどころな訳だがw)
現在確かに「考えるだけでコンピューターを操作」って技術が現実にあるけど
電極刺されまくった脳を無改造と呼ぶには無理があるし。
筋電義手みたいに外から信号を拾うのも無理っぽいし。
(そもそも筋電義手が拾うのは神経信号では無くて筋電)
神経系を(義体のセンサーでは無く)サポートコンピューターの仮想世界に
繋ぎかえてしまう方法もあるけど、義体が神経系で制御されなくなるから
サポートコンピューターが適当に信号を送ってても突然表情が不自然になったり
(発声関連の筋肉は顔やその周辺にあるから)、突然黙ったり(発声まわりの
筋肉に繋がる神経系を乗っ取られているんだから当然)と、切り替え式でも
はた目に不自然に見えてしまうのは避けられない気がする。
(ちなみに、神経系が切れちゃった生身の顔の場合、各種筋肉が垂れ下がって
顔が崩れることすらあるそうな(怖))
471 :
3の444:2005/12/10(土) 22:34:17 ID:+BZlUbd00
(うわわわ!)
身体の力を失って倒れこむ私の眼の前に、 病室の床が、 まるで画像をどんどん拡大していくみたいに
大きくなって迫ってくる。 いきなり身体が言うことを聞かなくなるなんて、 わけがわからない。
突然の事態に、 私は頭がパニックになって、 思わず悲鳴を上げた、 つもりだった。 でも、 喉の奥にあ
るスピーカーから声が出てくれない。 手も動かせないから、 身体をひねって受身を取るなんて器用な真似
ができるはずもなく、 私はきれいに棒立ちの姿勢のまま倒れて、 したたかに鼻の頭を床にぶつけた。
重くて固いものを落としたときのような鈍い音が病室中に響いた。
(ぎゃっ!)
もしも生身の身体だったら、 きっと鼻血がどばどば出て、 床を血だらけにしちゃっただろう。 そのくらい
の勢いで床に鼻っ柱をぶつけたんだ。 でも、 お陰様で、 今の私の身体はただの機械製品だから、 鼻血な
んか流さないし、 たんこぶもできないし、 どんなに痛くたって涙もこぼれない。
けれど、 悲鳴の一つも上げられない、 腕一本動かせない身体のくせに、 床に鼻を打ちつけた瞬間の、
一瞬呼吸が止まっちゃうかと思うくらいの耐え難い痛みだけは、 しっかりと私の脳に伝えてくれた。 どうや
ら、 身体は動かせなくても、 感覚器官はしっかり働いているみたいだ。 全く、 ありがた迷惑な話だけどさ。
「れいじ君! 大丈夫?」
部屋を立ち去ろうとしていたカズミさんが、 身を翻して、 倒れた私に向かってあわてて駆け寄ってくるの
が足音で分かった。
全然大丈夫じゃない。 うつぶせに床に倒れたまま、 1ミリたりとも身体を動かせないなんて、 大丈夫なわ
けがない。
“タマちゃん、 ひどいよ。 痛いじゃないかよう。 私の身体にいったい何をしたんだよう”
私の抗議に答えたのはタマちゃんじゃなくて佐々波さんだった。
“悪いな、 メガネザル。 ちょっとだけ、 お前の身体、 貸してくれ”
“なんだよう。 佐々波さん。 身体を貸すってどういうことなのさ”
“こういうことさ”
佐々波さんが、 そう言い終わるや、 「私」は立ち上がった。 ううん、 違う。 私は立ち上がろうとなんかし
てない。 この身体が、 私の意志なんかおかまいなしに勝手に立ち上がったんだ。
472 :
3の444:2005/12/10(土) 22:35:15 ID:+BZlUbd00
なんなのこれは?
“佐々波さんのサポートコンピューターと、 八木橋さんの義体の神経系を接続してみたの。 義体のコントロ
ール、 しばらく佐々波さんに貸してあげてね”
すかさずタマちゃんが、 情況説明してくれた。
つまり、 今、 私の義体を動かしてるのは、 佐々波さんってことだ。 私の意識は、 義体の隅っこに追い
やられて、 何一つできず、 小さくなって、 ただじっと黙っているしかないってわけだね。 この義体のご主人
様は、 私のはずなのにさ。
せっかく佐々波さんもその気になってくれたことだし、 ここは本人にまかせたほうが上手く事が運ぶのか
もしれないよ。 そんなことは分かってる。 分かってるけどさ。 やっぱり自分の身体をアカの他人が好き勝手
に動かされるのは面白くないよ。
膨れっ面で、 ふて腐れる私。 ま、 身体を召し上げられて意識だけの存在になっちゃった今の私に、 膨
れっ面も何もないんだけどね。
「大丈夫だ。 なんともない」
佐々波さんは、 「私」の様子を心配そうに見守っているカズミさんを見上げた。 義体の感覚は、 私と
佐々波さんと二人で共有しているわけで、 今、 私が感知している、 近視のせいで輪郭のぼやけたカズミさ
んの顔の画像を、 当然、 佐々波さんも見ていることになる。
“うわ、 なんだこりゃ。 おい、 メガネザル。 ひでー目だな。 何も見えねーぞ“
案の定、 佐々波さん、 私に向かってぶつくさ不平を言った。
そりゃ、 そうだよ。 だって、 私の義眼の視力設定は左右とも0.1ないんだもの。 眼鏡をかけなきゃ、 何も
見えないよ。
“私、 アンタのふりをするために、 わざわざ眼鏡を外したんだからね。 勝手に私の義体を使っておいて文句
言わないでよ “
“分かったよ。 でも、 頭の中で、 ぶつくさ言われると集中できねーからこれ以上余計なことはしゃべるなよ“
これじゃ、 どっちがこの身体の持ち主か分からない。 でも、 まだ言い足りないことは山ほどあったけど、
佐々波さんの言う通り、 これを最後に私は黙ることにしたよ。 せっかくの二人だけの時間だもん、 私がでし
ゃばって邪魔したら悪いよね。 少しだけなら、 この身体、 佐々波さんの好きに使っていいよ。
473 :
3の444:2005/12/10(土) 22:36:45 ID:+BZlUbd00
「カズミ・・・ごめんなさい」
立ち上がった「私」は、 カズミさんに向かって、 深々と頭を下げた。
「どうしたの? いきなり」
カズミさんは、 ぽかんと口を目を大きく開いて「私」を見つめた。 漫画だったら、 はてなマークが、 カズミ
さんの頭上をぐるぐる回っているところだ。 カズミさん、 きっと、 いきなり謝られて、 戸惑っちゃってるんだ。
構わず「私」は続ける。
「オレはカズミを捨てて、 自殺しようとしました。 ごめんなさい。 それから、 こんな身体になってしまいまし
た。 ごめんなさい。 カズミの優しさに甘えてずーっと我侭を言いたい放題だったかもしれません。 ごめんな
さい。 カズミにも見捨てられるかと思ったから恐くて会えませんでした。 見捨てられるくらいなら、 自分から
振ったことにしたほうがましだと思ってしまいました。 カズミを信じることができませんでした。 ごめんなさい。
本当にごめんなさい」
「私」は、 カズミさんに向かって頭を下げた。 ごめんなさいって言う度に、 何度も、 何度も。 ハタから見
たら、 滑稽で馬鹿みたいに思えるくらいにね。
でも、 私には佐々波さんを笑うことなんてできないよ。
もしも、 もしもだよ。 そんなことゼッタイ考えたくないことだけど、 もしも、 おじいちゃんに、 お前は裕子じ
ゃない。 ただの機械人形だって言われたとしたら、 私どうなっちゃってただろう? ホントなら、 一番自分の
ことを愛してくれるはずの家族に裏切られる。 そんな辛い経験をしたら、 誰も信じることができなくなっちゃう
のも無理ないよ。 人と会うことが恐くなってしまうのも、 無理ないよ。
だから、 そんな苦しみを乗り越えて、 自分のしてきたことを振り返って素直な気持ちで謝ることのできる
佐々波さんは、 すごいと思った。 身体は、 女の子なのかもしれないけど、 やっぱり男の人の強さを持って
いる人なんだ、 と思った。
474 :
3の444:2005/12/10(土) 22:47:35 ID:+BZlUbd00
ようやく顔を上げた「私」は、 今度は真っ直ぐカズミさんを見つめた。
カズミさんの瞳には、 もう、 さっきの戸惑いの色はなく、 真剣なまなざしで、 言葉の続きを待っていた。
「でも、 こんなオレを今でも愛してると言ってくれて、 ありがとう。 世界中の誰よりもすてきな男性だと思って
くれてありがとう。 だから、 オレも言うよ。 オレもカズミのことを世界中の誰よりもすてきな女性だと思ってい
ます。 だから、 カズミ! 行かないでくれ。 オレだって今でもオマエのことが・・・」
好きなんだ。
小さな声で、 つぶやく佐々波さん。 そんな声じゃ、 私にしか分からないよ。 ああ、 じれったいなあ。 この
恥ずかしがりやめ!
“佐々波さん、 頑張れ。 もっと大きな声で言わなきゃ、 カズミさんに伝わらないよ“
黙って見守っていようと決めた私だけど、 佐々波さんに煮え切らない態度にじりじりしてついつい口出し
してしまう。
“うるせえ。 オマエが聞いてるから、 恥ずかしいんだよ。 いいから、 黙ってろよ“
佐々波さんは、 照れをかくすかのように、 ぶっきらぼうな調子で私に言った。 というか、 私に通信した。
あなたは男で、 私は女。 生まれついた心の性は違うけど、 でも、 同じ機械の身体を持つものどうし。 い
わば、 同志ってやつだ。 今の私は、 ちっぽけな意識だけの存在かもしれないけど、 それでも、こうしてあな
たのことを応援してるよ。 だから、 今のあなたは一人じゃない。 二人分の勇気があるはずだ。 機械の身体
でだって幸せになれるっていう私の希望だって背負っているんだ。 頑張れ。
「え、 何、 よく聞こえなかったんだけど、 私のことがどうしたって?」
カズミさん、 いたずらっぽい微笑みを浮かべて、 しらばっくれる。 そのカズミさんの笑顔に勇気付けられ
たように、 「私」は顔を上げてゆっくりと、 一言、 一言かみ締めるように言った。
「オレは、 オマエのことが、好きなんだ!」
言葉と同時に佐々波さんは、 カズミさんを抱き寄せた。 と、 いっても、 カズミさんのほうが、 「私」より背
が高いから、 どうしても「私」がカズミさんの胸に顔をうずめる形になって、 どうにも格好がつかない。
475 :
3の444:2005/12/10(土) 22:48:38 ID:+BZlUbd00
冷静に二人を観察している私は、 どうしてもそんな風に思っちゃうんだけど、 佐々波さんは必死だ。 今
度は、 カズミさんの頭を、 壊れ物を抱くみたいにそっとつかんだ。 そして、 二人して、 しばらくの間、 じぃっ
と見詰め合ってる。
やがて、 カズミさんは、 目をつむった。
“ま、 まさか、 佐々波さん、 この私の身体で、 カズミさんにキスしようとしてるの? “
こんな時に声をかけたら悪いかなって思ったけど、 やっぱり聞いて確かめずにはいられない。
今、 義体を操ってるのは、 佐々波さんかもしれないけど、 義体の受ける身体感覚は私のサポートコンピ
ューターにも入ってくる。 て、 いうことは、 佐々波さんがカズミさんとキスしたら、 その感触は、 寸分たがわ
ず、 私にもフィードバックされちゃうってことなんだよ。 全く、 冗談じゃないよ。
前言撤回。私、この身体、佐々波さんの好きにつかっていいって思ったけど、やっぱり、キスはだめー!
確かに、 カズミさんは、 女の私から見ても綺麗で魅力的な人だとは思うよ。 でもさ、 私には、 そんな趣
味なんてこれっぽっちもないんだからね。 キスするなら、 やっぱり男の人がいいよ。 ていうか、 女同士なん
て気持ち悪いだけ。 できることなら、 今はそういうことはやめて欲しい。 そういうことは、 あとで、 二人っき
りになってから、 ちゃんと自分の身体でして欲しい。
でも、 佐々波さんは、 私の言葉が聞こえているはずなのに、 まるで無視するんだ。 佐々波さんの頭の
中には、 今この瞬間、 佐々波さんとカズミさんの二人きりしか、 いなくなっちゃってるんだね。 きっと。
「私」の唇が、 カズミさんの軟らかい唇に触れた。 もちろん、 いい大人同士。 それだけですむはずがな
い。 「私」はカズミさんの唇をひとしきりはげしく吸ったあと、 作り物の舌を、 カズミさんを求めて、 力強く彼
女の口の中に入れる。 カズミさん、 うっとりした表情で目を閉じたまま、 「私」の動きに応える。 口の中で、
なんだか別の生き物が蠢いているみたい舌を絡ませあう二人。
おえー、 おえー。
476 :
3の444:2005/12/10(土) 22:49:18 ID:+BZlUbd00
すれ違い続けていた二人が、 お互いの本心を確かめ合った末に交わす激しい口付け。 きっと、 感動の
場面だろうね。 外から見ていればね。 でも、 この場面に巻き込まれて、 女の子とディープキスする感覚ま
で強制的に共有しなければならない私にとっては、 迷惑以外の何者でもない。
それに、 ただ、 キスするだけだったらまだいいよ。 さっきから、 私の身体、 どんどん熱く火照ってきてる
気がするんだよね。 あそこもなんだかむずむずするし・・・。 佐々波さん、 キスするだけならまだしも、欲情
しちゃってるね。 機械の身体でも、 そういうことができるように作られているのは、 嬉しいことだし、 別に
佐々波さんが一人で、 そういう気分になるのはかまわないんだけどさ、 私まで、 巻き込まないでほしいよ
ね。 私まで変な気分になっちゃうじゃないかよう。 女の子とキスして、 しかも感じてるなんて、 私、 まるで変
態になったみたいじゃないかよう!
477 :
3の444:2005/12/10(土) 22:58:39 ID:+BZlUbd00
今日はここまでです。
>>469 スイマセン。余り考えずに好き勝手に書いてます。
な、もんで設定とは違ってきている部分も多々あると思いますが
ご勘弁を。
イソジマ電工が、脳を無改造に近い形で使っているとは謳っている
ものの、義体を操るためには、脳に電極ではないですが、それなりの
加工はしているのではないかと思っています。
ヤギーには悪いけど。
ヤギー・・・不憫なやつ(笑笑笑)
GJっす!
>>478 こうして少女は大人になっていくのさ...。w
GJ!
480 :
Dark Mater:2005/12/12(月) 00:07:02 ID:9JikZh6a0
人類の夢、そう言っても過言ではなかった物の一つ、自動機械…。
その暴走は、当時の人が思っていたよりもずっと早かったと言う…。
「アレ」等が星の半分を支配してから、いったい何年の月日が経っただろうか…。
世界は、もはや年月を数えることさえも忘れさせてしまうほど過酷な時代となった。
481 :
Dark Mater:2005/12/12(月) 00:42:10 ID:9JikZh6a0
暗く、そして長い廊下を三人の黒服と一人の白衣を着た女性が歩いていた。
「神菜女医、本当に研究の成果は挙がっているのだろうな。」
「何度も言っているだろうよ、そんなに焦りなさんな。」
「今回の実験、失敗すれば我々の敗北は確実。
もう少し自覚を持って応えたまえ。」
神菜と呼ばれた女医は不機嫌に黒服の一人に言う。
「ごほん、サイボーグ…もとい機械化人体No,0は手術・カウンセリング共に完全な成功を収めてますので御安心下さい。」
レ○フォース・・・・・・。(スマソ
483 :
Dark Mater:2005/12/12(月) 01:08:34 ID:9JikZh6a0
三人の黒服が歓喜の声をあげた。
…どうやら先程から何度も執拗に問われていたのだろう、
神菜女医は片手で髪をももしゃくった。
天然パーマでウェーブのかかった特徴的な長い髪がさらにアトランダムに曲がっていく。
四人は小さい防火扉のようなドアの前に立った。
神菜女医はドアに手をつけ強く押す。
手をつけた部分が光り手相指紋を確認する。
押し扉式の扉が開き、中の部屋を見せる。
484 :
Dark Mater:2005/12/12(月) 01:24:35 ID:9JikZh6a0
「おぉ…!」
三人の黒服が声をあげる。
部屋の中に居るもの、それは紛れもなく機械…しかし、所々はみ出す生体部品は、それが元は生き物…人間であったことを感じさせた。
そこで先程まで不機嫌だった筈の神菜女医がおもむろに一言。
「これが、逆転への第一歩だよ、機械共。」
485 :
Dark Mater 作者:2005/12/12(月) 01:39:10 ID:9JikZh6a0
どうも初カキコです。
気に入って頂ければ幸いですが、いかんせん初心者なもので、3の444様や先輩方の作品をよく読んでかかせて頂きます。
宜しくお願いします。
>482…レ○フォース…?;
ま、まさかいきなり慨出ですか!?;
>>485 タイトーのシューティングゲームで、自動機械(もちろん人間が作ったもの)に
地球丸ごと乗っ取られて、地球上の生命が全滅させられただけでなく、
宇宙に逃げ延びた分も含めて全生命が滅ぼされそうになったので、しかたなく
地球を破壊しにいくというストーリーのがある。
正確には、主人公(自機のパイロット)は人間ではなくてアンドロイドなのです
が、当初サイボーグ実験をやってもみんな発狂してうまくいかなかったから
という理由でアンドロイドが採用されてるので、ストーリーもゲームの雰囲気
も音楽もやたらサイバーなのです。
ちなみに、続編(二作目はストーリーの繋がりが全くないので三作目)で、
機械に少女を接続したら機械が謎の暴走を起こして殺戮を開始するという
話が明らかにされます。
>>485 できるだけ書き上げてから、まとめて投下したほうがいいと思うよ。
今回の内容くらいならギリギリ1レスに収まるくらいだしね。
ともあれ、新作投下乙でした!
自動機械というのがイマイチよく分からないんだが、世界を管理する
コンピューターってことだろうか?それが地球を支配している世界
というと、つまりはターミネーターのような世界?
今回は、いいところで切れてしまいました。続きを是非お願いします。
質問。
女子高生が先生にだまされて警察で所長好みのヒーローに改造されちゃうんだけど妙に明るいノリのSS知らない?
名前ど忘れしちゃって。サイトには楽園のバナーが貼ってあったと思うんだけど、知ってたら教えてください。
489 :
Dark Mater:2005/12/13(火) 00:51:48 ID:GZqZe0Y60
誰かが年月を数えるようになってから50年が経った…。
世界は、地獄から少しずつ離れていっていた…。
そう、これは人外と人外の戦う世界に生きた幾つもの魂の哀歌である…。
Dark Mater
Page1・鬼女、来たる
屍が地に敷かれ、民家からは火が挙がり、
鼻を刺す死臭とオイルの臭いが辺りに広がる…。
逃げまとう人々に容赦なく異形の怪物は爪をむける。
悲鳴があちこちに木霊する。
しばらくしてまた別の異形が姿を表す。
機械化人間兵、サイボーグ兵達である。
しかし、機械兵達の猛攻はすさまじく、兵達を近寄らせない。
既に何体ものサイボーグが屍と化している。
その時、一際高い建物からの一発の弾丸が、機械兵の象のような体に穴を開けたかと思えば、大爆発を起こした。
突然の事態に戸惑う機械達。の真上の建物から一人の少女が飛び降りた。
490 :
Dark Mater 作者:2005/12/13(火) 01:10:37 ID:GZqZe0Y60
はい、>487様のアドバイスに習い、一喝して書いてみました。
>486様、素敵情報有り難う御座います。
話の内容はどっちかと言うとサイボーグではありませんがキ○エに近いです。
一体のマシーンがどんどん増殖、人体への寄生を繰り返し増えていく、と。
力尽きたので今日はここまで。
491 :
3の444:2005/12/13(火) 21:30:40 ID:QoSnt8db0
「ふふっ。 れいじクン、 私の勝ちよ」
佐々波さんとカズミさんの二人にとっては至福の、 そして、 私にとっては苦痛以外の何物でもない、 長く
て激しいオトナのキスを終えたあと、 カズミさんは、 まるで駆けっこ競争に勝ったおてんば少女みたいな勝
気な笑顔を浮かべた。 激しいキスのせいで、 ちょっぴり剥げかかった口紅にもおかまいなし。 私、 カズミさ
んって、 もっと、 クールな人かと思っていたけど、 実は、 けっこう激しい性格なのね。 彼女のことが、 だん
だん分かってきたよ。
それにしてもカズミさんの言う勝ちって、 いったい何のことだろう?
カズミさんの突然の一方的な勝利宣言にあっけに取られる私。 何か言おうとしかけて口を開きかけたま
ま固まってしまった佐々波さんだって、 きっと同じ気持ちのはず。
でも、 続いて彼女の口から飛び出した言葉は、 私たちをもっと驚かせるものだった。
「ここまでやらなきゃ、 キミは本気にならないって汀さんは言っていたけど、 本当に汀さんの言う通りになっ
たわ。 ううん、 キスまでしてくれるなんて、 私の予想以上。 れいじクン、 ありがとね」
カズミさん、 今度は「私」のほっぺたに軽めのキス。 もちろん「私」は、 彼女にされるがまま。
つまり、 カズミさんが別れ話を切り出したのは、 タマちゃんの考え出した策略だってことだよね。 その話
が本当なら、 私も佐々波さんも、 今までずーっとタマちゃんの手の平で踊っていただけってことになる。
“タ、 タマちゃん、 ホントなの?“
あわててタマちゃんを問いただす私。
すぐに、 例の有線通信で、 タマちゃんからの返事がくる。
“ありゃりゃ、 カズミさんばらしちゃったね。 でも、 八木橋さん。 しーっ。 今は黙って二人を見守りましょう“
私には、 ばつの悪そうな顔をしながら、 立てた人差し指を唇に当てているタマちゃんの姿がカンタンに想
像できたよ。
492 :
3の444:2005/12/13(火) 21:31:32 ID:QoSnt8db0
面と向って、 カズミさんと会うことができない佐々波さんのために、 佐々波さんと同じ姿格好をしている私
を身代わりにすることを考え出したり、 本当はカズミさんのことが好きなくせに、 本心をなかなか打ち明ける
ことができない佐々波さんのお尻を叩くために、 カズミさんには、 あえて別れ話を切り出させたり、 私には、
「じゃあ、元気でな」なんて別れの言葉を言わせようとしたり、 森の子リスみたいな可愛らしい見かけによら
ず、 タマちゃんは策士だよね。 よくもまあ、 次から次へといろんな手を思いつくもんだ。
自分の義体を人に好き勝手に操られる。 それは、 確かに余り気分のいいものじゃない。 身体のコント
ロールを失って床に頭から落ちたときは本当に痛かったし、女どうしでキスをしたあげく、 自分の意思に反し
て身体が勝手に感じてしまうのも、 なんか悔しかった。
でもさ、 いくら、 担当患者を立ち直らせるためとはいえ、 私の義体を佐々波さんに使わせてみたり、 面
会に来たカズミさんに嘘をつくようにお願いしたり、 そんなことが、 イソジマ電工のケアサポさんのマニュア
ルに載っているんだろうか? そんなはず、 ないよね。
全ては、 人を信じることができない佐々波さんの心を救うため、 そして、 たとえ機械の身体であっても、
普通の人と同じように恋していいんだって、 私に教えるために、 タマちゃんがマニュアルなんか関係なしに、
自分自身の頭で一生懸命考えて仕組んだことなんだ。 そう思ったら、 私、 タマちゃんのことを非難なんか、
できないよ。 タマちゃん、 あなたはすごい人です。 私は、 あなたを尊敬します。
「じゃあ、 お別れって言ったのは演技ってことか。 ひっでーな、 汀め」
佐々波さん、 口先では、 汀さんのこと、 ぶつくさ不平を言ってる。 けど、 心の中は、 私と同じ気持ちの
はず。 その証拠に、 佐々波さんの口調からは怒りの色が全く感じられない。
「そう演技。 私には別れる気なんか、 これっぽっちもなかったんだから。 れいじ君に引き止められなかった
らどうしよう、 どうしようって、 そればっかり考えて、 内心どきどきしてたの。 でも、 私は賭けに勝った。 君
は、 私のこと、 引き止めてくれた。 嬉しかったよ」
カズミさんは照れたような、 はにかんだ笑みをみせた。
493 :
3の444:2005/12/13(火) 21:32:21 ID:QoSnt8db0
「でもね、 男の姿をとるか、 女の姿をとるか、 どっちでも好きにすればいいって言ったのは私の本心。 私
ね、 安心したんだ。 ずいぶん久しぶりのキスだったけど、 そして、 その間に、 あなたの身体が、 こんなふ
うに見慣れない外見に変わってしまったけれど、 でも、 今こうして目を閉じて君とキスしてみたら、 やっぱり
れいじ君は、 れいじ君で、 昔と何一つ変わってないってことが分かったの。 私、 君が、 どんな姿になっても
大丈夫だから。 だから、 自分の身体のことは、 そして自分の人生のことは、 ちゃんと自分で決めましょう。
ね?」
まるで子供にでも諭すみたいに、 優しく「私」に声をかけるカズミさん、 なんだか、 私には天使のように
見えたんだ。 カズミさん。 ありがとう。 生身の肉体を失って、 機械の身体になってしまった私達にとって、
昔と何一つ変わっていないって言ってもらえることほど、 嬉しいことはないよ。 ねえ、 佐々波さん、 そうだよ
ね。
佐々波さんが静かに口を開く。
「オレ、 今までいろいろ我侭なことを言って、 カズミを困らせてきた。 だから、 どうせなら、 ついでにもう一
つだけ、 我侭を言わせてもらえないか?」
佐々波さんが、 どんな表情をしているのか、 今の私には見ることができない。 でも、 同じ身体を共有し
ている私には、 肩に必要以上に力が入って、 コチコチに緊張している様子がまるで自分のことのように伝
わってきた。 佐々波さんが、 ただのわがままじゃない、 何かとても大事なことを言おうとしているのが、 痛
いほど伝わってきた。
秒針のコチコチ時を刻む音がうるさく感じられるくらい、 静かな一瞬ののち、 佐々波さんは言葉を続け
た。
「なあ、 カズミ。 これからの人生、 二人で生きて、 二人で決めるっていうわけには、 いかないだろうか?」
「ちょ・・・それって」
佐々波さんの言葉にうろたえるカズミさん。 いや、 うろたえたのは、 カズミさんだけじゃない。 私だって
そう。 そして、 私には、 タマちゃんが、 ごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。 ケアサポセンターで、 この様
子の一部始終を冷静に見守っているはずの、 タマちゃんでさえ、 どきどきしている。
二人で生きて、 二人で決める。 その言葉の意味するものは、 一つしかないよ。
494 :
3の444:2005/12/13(火) 21:34:26 ID:Kpfq3HmZ0
「今すぐにとは、 言わないよ。 オレ、 頑張って、 もっとカズミに相応しい男になる。 その時は、 オレと・・・」
佐々波さん、 そこで また、 一呼吸置いた。 カズミさんは、 身じろぎ一つせず、 真っ直ぐ「私」を見つめな
がら、 次の言葉を待っている。
「結婚してください!」
言っちゃった。 佐々波さん、 とうとう言っちゃったよ。
「返事の前に一つだけ聞かせて。 れいじ君、 自分で何言ってるか分かってる? 同じ性別同士じゃ、 結婚で
きないんだよ?」
佐々波さんのプロポーズを、 まるで自分のことのように浮かれて聞いていた私だけど、 当事者のカズミ
さんは、 私なんかよりずっと冷静だった。
よく考えたら、 カズミさんの疑問は、 もっともだよね。 外国では、 同じ性の人どうしが結婚した、 なんて
話も聞くけど、 ここは日本だもの。 佐々波さんが、 いくら心は男だって主張しても、 そして、 たとえ、 今の
佐々波さんが、 肉体を失って心だけの存在だったとしても、 戸籍上はあくまでも女。 日本では法律上、 女
どうしの結婚は認められていないはずだよ。 前、 ニュースの特集で、 私そんな話を聞いたことがあるもん。
だから、 佐々波さんが、 カズミさんと合法的に結婚する手段はただ一つ。 義体換装のときに男の義体
に入って性転換するしかない。 いくら、 心の性と一致する身体になるっていっても、 生身の頃の自分と全く
違う姿になるのは、 勇気がいることに違いないよね。
「一度決めたら、 もう身体を交換することはできないって汀さんは言ってたよ。 あなたは後悔しないの?あな
たにその覚悟はあるの?」
カズミさんの口調はあくまでも厳しい。 けど、 それは当然のことだ。
義体換装は一度きり。 その結果が、 もし、 気に食わなくても、 後悔しても、 二度目はない。 ずーっと、
その身体で生き続けなければいけない。 自分の愛する人が、 この先ずっと後悔しながら生きていくのをそ
ばで見続けていくのは、 カズミさんにとっても辛いことに違いないもの。
でも、 佐々波さん、 男らしかった。
495 :
3の444:2005/12/13(火) 21:35:25 ID:Kpfq3HmZ0
「もう男として、 覚悟は決めた。 後悔なんか、 しない。 カズミと一緒なら、 どんな苦しいことも乗り越えて行
ける気がする。 オレ、 一生お前のことを大事にするよ」
なんの迷いもなく、 そうやってきっぱりと言ってのけたんだ。 格好よかったよ。
佐々波さんの固い決意を聞いたカズミさんの頬がうっすらと桜色に染まる。 そして、 照れを隠すかのよう
に、 にっこり笑いながら「私」のおでこを指でピンってはじいたんだ。
「わがままで、 あまのじゃくで、 自分勝手な甘えんぼさん。 私、 そんな、 あなたのどこに惹かれちゃったん
だろうね。 ははは」
カズミさんは、 口ではそんなことを言いながら、 なんだかとても嬉しそう。 そうだよね、 好きな人から一
生、 お前のことを大切にするって言われて、 嬉しくない女の人なんていないよね。
「だけど、 私、 れいじ君のことよーく知ってる。 れいじ君は、 嘘だけはつける人じゃない。 私、 あなたを信じ
ます」
大きな眼をめいっぱい細めて微笑むカズミさんの瞳から、 涙が一筋ぽつりと流れ落ちた。
「じゃあ返事は?」
恐る恐るカズミさんの顔を上目遣いに覗き込む佐々波さん。
「もちOKよ。 だから、 一生大事にしてね」
カズミさんは、 薄緑色のハンカチで涙をふくと、 満面の笑みを浮かべながら言った。
「や、 や、 やったぁ!」
佐々波さんの上ずった叫び声。
“やった、 やった!“
これは、 私の声。 もう遠慮なんかしなくていいよね。 思いっきり、 祝福してあげるよ。 佐々波さんの頭
が割れちゃうくらいの大声でね。 嫌っていってもやめてやらないんだから。
“佐々波さん、 おめでとう “
タマちゃんも心なしか涙声だ。 自殺未遂の末に全身義体になってしまい、 両親にも見捨てられた性同一
性障害。 その面倒をずーっと見続けてきた、 タマちゃんの苦労は、 きっと私なんかじゃ計り知れないくらい
大きなものだっただろう。
496 :
3の444:2005/12/13(火) 21:36:18 ID:Kpfq3HmZ0
おめでとう。 タマちゃん。 タマちゃんの苦労も報われたね。
“ははっ。 やったぞ。 オレは、 やったぞおー。 おーいメガネザル、 聞いてるか? 汀、 聞いてるか?“
“聞いてるよ。 佐々波さん、 よかったね。 本当によかったね“
おめでとう。 そして、 私に勇気をくれてありがとう。
「やった、 やった、 やった」
興奮の余り、 握り締めた両拳を無意味に上げ下げして、 ダンスを踊るみたいに身体をくるくる回しなが
ら、 病室を彷徨う佐々波さん。 完全に我を忘れて、 舞い上がっちゃって、 さすがのカズミさんも、 呆れ顔。
そして、 とうとう、 病室に置いてある灰色のコンピューターとぶつかって・・・。
プツン!
義体とコンピューターを繋いでいたコードが抜けちゃった。 同時に、 全身からすうっと力が抜けて、 また
さっきみたいに転びそうになった。 あわてて、 傍らのベッドにしがみつく私。
あ、 今、 私、 自分の意思で身体を動かしたよ。
試しに、 両手を握ったり、 開いたりしてみる。 動く、 私の思い通りに身体が動く。 コードが抜けた拍子
に、 義体とケアサポセンターとの回線が切れちゃったんだ。
“タマちゃん、 佐々波さん、 聞える? “
さっきみたいに、 二人に呼びかけてみる。 でも、 何の答えも返ってこない。 身体が、 自分の思い通りに
動くようになったのは嬉しいけど、 よりによって、 こんな時に・・・。 どうしよう。
私は、 ちらりとカズミさんのほうを振り返った。
「じゃ、 お祝いに、 もう一回、 キスしよっか?」
私と目を合わせたカズミさん、 どんと来いと言わんばかりに両手を広げる。 ああ、 案の定こうなった。
でも、 せっかく、 ここまでうまく事が運んだんだ。 今更、 私が、 キスなんてできません、 なんて興ざめな
ことを言って場の雰囲気を台無しにするわけにはいかないよね。 やっぱり・・・orz
497 :
3の444:2005/12/13(火) 21:37:39 ID:IOEeVMJP0
「うー」
私は、 重い腰を上げて、 よろよろとした足取りで、 カズミさんに近づいた。
(ごめん、 武田。 私だって、 したくてするんじゃないんだ。 許してね)
心の中で、 何度も何度も武田に謝る。 私が、 誰か他の人とキスしたなんて知ったら、 あいつ、 いった
いどんな顔するだろう。 しかも相手は、 男じゃなくて、 女。 そりゃあ、 怒るに決まってるよね。
カズミさんに、 くるまれるように抱きつかれた私は、 目をぎゅっとつぶって、 かすかに震えながら、 カズミ
さんの頬っぺたに軽くキス。 今の私じゃ、 これが精一杯だよ。
「何それ? なんの真似?」
カズミさんは、 あからさまに、 不満顔だ。
「どうしたの。 もっと積極的にいきましょ」
そう言って、 色っぽいしぐさで髪を掻き揚げながら微笑んだかと思うと、 強い力で私を抱きしめる。 そし
て、 激しいキス。 私は無理やりといった感じで口をこじ空けられて、 舌を入れられた。
(ひいっ!)
声にならない悲鳴を上げる私。 当然のことながら、 誰にも伝わらない。
カズミさんの要求はキスだけじゃなかった。 キスなんて、 ほんの序の口だったんだ。 カズミさん、 激しい
キスをしながらも、 右手をそろそろと、 下のほうに伸ばして、 私のあそこを、 服の上からそっと指で撫で付
けたんだ。
「ぁっ」
カズミさんの腕の中で、 ひくんと身体が震えた。 あそこを軽く、 掃くような指使いで撫でられる。 ただ、
それだけで、 思わずしゃがみこんじゃいそうなくらい鋭い快感が、 私の身体を突き抜けた。
498 :
3の444:2005/12/13(火) 21:38:49 ID:IOEeVMJP0
今の、 私の身体が受け取る快楽は、 一見、 生身の頃とそっくり忠実に再現されているように思えるけ
れど、 所詮は、 作り物の擬似的なデジタル信号にすぎない。 タネを明かせば、 義体のいろんなところが受
け取ったデジタル信号を、 サポートコンピューターが、 生身の身体の感覚に似せた信号に作り変えて、 私
の脳みそを騙しているだけなんだ。 でも、 そんなこと分かってるけど、 生身の身体に限りなく近い、 この感
覚、 私は好き。 性感っていうのは、 人間が当たり前のように持っている感覚のほとんど全てを失ってしまっ
た私にとって、 残された数少ない人間らしい感覚だからね。 まあ、 そんな知ったかぶりをするほど、 昔の
身体で経験しているわけじゃないんだけどさ。
でも、 いくら好きっていったって、 時と場合によりけりだよ。 こんなふうに、 女の人にあそこを撫でられて
までして、 感じたりしたくはないよ。 私は至ってノーマルな嗜好なんだからね。 そんな趣味ないんだからね。
きっと、 佐々波さんのせいだ。 さっきのキスの時、 佐々波さんが、 感じまくっていたせいで、 身体に余韻が
残っちゃったんだよう。
「れいじ君、 可愛いよ」
私の反応に満足げな笑みを浮かべたカズミさん、 長いキスを終えると、 今度は私の耳を口にぱくっと加
えた。 その間中右手は休まずに、 ちろちろちろちろ蠢き続けて、 私に絶え間なく快楽を送り続ける。
「カ、 カズミ。 い、 今は、 やめとこうよ。 あとで、 時間があるとき、 じっくりとしよ・・・!!!ぅ」
私の力ない声は、 カズミさんに、 着衣ごしに軽くクリをなでられただけで、 カンタンにかき消されてしまっ
た。
「れいじ君。 もう、 濡れてきたよ。 感じやすいのは身体が変わっても、 もとのまんま」
嬉しそうなカズミさん。
セックスの時は、 きっとおなべの佐々波さんがカズミさんを攻めているんだろうなあって、 私は勝手に妄
想していたんだけど、 どうも様子が違うみたい。 二人のセックスは、 どっちかというと、 カズミさんが攻め
で、 佐々波さんは、 カズミさんの腕の中であえぎっぱなしなんだろうか。 まるで、 今の私みたいにね。
499 :
3の444:2005/12/13(火) 21:39:29 ID:IOEeVMJP0
って違ーう。 私、 こんなことされてる場合じゃない。 犯される。 このままだと私、 カズミさんに犯されちゃ
うよ。 でも、 だからといってカズミさんを突き飛ばして逃げるわけにもいかない。 私、 どうすればいいんだよ
う。 なんでいつもいつも、 こうなっちゃうんだよう!
コンコン!
いきなりのノックの音に、 あわてて私から離れるカズミさん。
遠慮がちにドアが開かれて、 見慣れた巻き毛の女性がドアの隙間から顔をのぞかせる。
「タマちゃん!」
救いの神の登場に、私は佐々波さんを演じなければいけないことも忘れて、 つい、 いつもの調子で叫んでしまった。
タマちゃんが、 私に向って、 パチリとウインク。
(た、助かったぁ)
ほっとしたら、 力が抜けて、 私は膝から床に崩れ落ちてしまった。
タマちゃんのはからいで、 私はうまく病室を抜け出して、 佐々波さんと入れ替わる。 その後、 タマちゃん
を交えて佐々波さんとカズミさんが話し合った結果、 佐々波さんの義体換装手術は一週間後、 私と同時に
行うことに決まったんだって。
こうして、 佐々波さんと、 カズミさんの面会は、 タマちゃんの目論見どおり、 いや、 目論見以上の成果
を上げて終わったのでした。
そして、 三人が話し合っている間、 放っておかれた私は、 中途半端に火をつけられた身体を持て余し
たあげく、 自分の病室に戻って、 一人寂しく身体を慰めたのでした。 とほほ・・・。
500 :
3の444:2005/12/13(火) 21:45:27 ID:IOEeVMJP0
今日はここまでです。
長かった物語も、ようやく、次回(か、その次)の投下で終了です。
もう、このスレも容量がやばいですが、何とか間に合うかな?
Dark Mater作者様
新作投下、お疲れ様です。一緒にスレを盛り上げていきましょう。
ところで「キ○エ」ってなんですか?
>> Dark Mater様、乙!いいですねー。期待してます。
ヤギー・・・wwwww
3の444様 乙!
>>3の444
とても面白かった。乙!
でも色々と気になってしまった。
自分の体にとり憑かれたんなら、自分の(の体)がどんな顔しているのか
見えなくても分かると思う。筋肉に力が入った感覚はあるはずなので。
自分の意志と関係なしに力が入るから、きっとつったり痙攣したりした様な
風に感じるのだろうと思うけど。
あと、同性とのキスとかその先(藁とか、特にこんな全く体が言うことを
聞かない状況では、絶対深い心の傷を負うと思う…orz
多分この状況では、たとえヤギーにそのケがあっても深いトラウマになるのは
避けられないと思う。同性愛じゃ無い人が異性に襲われてもフツーにレイプ
になるわけだから。
つーかタマちゃん、義体が物としてしか見なされない法律でも、素で詐欺罪・
窃盗罪・傷害罪・不正アクセス防止法違反罪・下手すると強制猥褻共犯未遂罪
くらいは適用されそうな気がする…(汗
なんか厳しいことを言っちゃったけど、割と緻密な心理描写とか、リアルな
(リアルっぽい?)風景描写・科学考証がヤギー物語の魅力の一要素だと思うので。
505 :
Dark Mater:2005/12/15(木) 02:14:57 ID:Iu54y2pd0
機械達はまるで生き物の様に唖然とした、否。
意志の有る物ならば何者でもそうなるだろう。
一瞬前までは明らかな勝利を納めていたはずなのに
気づきもしない位置から突然の奇襲を受けたのだから。
サイボーグ?
否、それらしい異形は見当たらない。
上から一人の人間が落ちてくるだけだ…?
人間…?
次の瞬間、機械兵の一体が両断された。
「…!」
機械達がその場から離れる。
しかし少女の手に握られていたのは、ライフル。
撃たれた機械達が次々と爆発していく。
どうやらライフルには裂薬弾が詰まっているようだ。
機械達の残りは少女に向かって突進した。
しかし、少女は剣らしき物体を何処からか手に取り、そして振る。
506 :
Dark Mater:2005/12/15(木) 02:35:40 ID:Iu54y2pd0
巨大な機械兵の足を難なく斬り裂く少女。
機械にも感覚を感じる機関は在るのだろう。
呻き声らしき音を発し、じたばたと足掻く機械。
先程屍と化した人間達…
皮肉にもその苦痛が機械に理解された瞬間であった。
しかし最早遅かった。
機械は遭遇してしまった、許すことを忘れてしまった[鬼女]に…
もがく機械にかぶさった影を見上げた瞬間、それはただの鉄塊と化した。
507 :
Dark Mater作者:2005/12/15(木) 02:59:50 ID:Iu54y2pd0
>3の444様
こ…光栄の至りです。
質問はまた何時かお答します。
508 :
Dark Mater:2005/12/16(金) 00:00:41 ID:dfX4kTos0
人間世界と機械世界…
星を分断する二つの世界。
今、最前線を駆ける「鬼女」の活躍が
両世界で話題となっていた。
「おい、見ろよ。」
「あの女が鬼女かよ。
返り血でドロドロじゃねえか。」
機械兵の核は人に寄生する。
故に機械兵には血肉の通う物も少なくはないと言う。
実際、サイボーグ兵達の視線の先でサイボーグ輸送トラックに乗り込む18前後の少女は血糊で白い人工肌を紅く染め上げていた。
「あの実力なら一個小隊持てるんじゃないか?」
「実際軍にそれを依頼してるらしいが、あれについて行ける奴なんていると思うか?」
「無理無理。」
サイボーグの一体は軽く笑い飛ばした。
509 :
Dark Mater:2005/12/16(金) 00:50:20 ID:dfX4kTos0
私の名はもう忘れた…。
ただBal-31Aというシリアルナンバーと鬼女という呼び名だけ。
だが私はそれでいいと思っている。
シリアルナンバーは私が化け物の懸族となったことを思いだせ、
鬼女の名は機械共を恐怖の底へと叩き落とす。
それで十分。
私は呼ばれたままにカウンセリングルームへと足を運ぶ。別に精神異常がある訳ではない、呼ばれて来たのだ。
サイボーグの発明者であり権威。
神菜 無双女医の部屋へ…
通常のブラウザで見る場合、上げまくった方が探しやすいと言うのはわかるけど
常駐とは言わないまでも2chをよく見るのなら2chブラウザを使うといいですよ
どこまで目的のスレッドが下がっていっても関係ないし
書いたものが実際どう見えるのかプレビューも見れるし(AA作成にはもってこいかも)
それより次スレ立てないと容量危ないよ。
今494KBだから500KBまであと少し。
513 :
3の444:2005/12/20(火) 01:35:16 ID:zk1/knH40
私の大事な宝物
私は今、 研究室で一人っきり。 それをよいことに、 ホントは、 次の講義の予習をしなきゃいけないの
に、 今をときめく天才アーティスト、 中里忠弘様の生写真を眺めて、 うっとりしていた。 ああ、 こんなカッコ
イイ人が彼氏だったらいいなあ、 なんてね。 この写真、 コンサート会場のアルバイトをしたっていう、 バイト
仲間の石塚さんから、 無理を言って譲ってもらったもの。 はっきりいって私の宝物だ。
そこへジャスミンが、 いつになく蒼ざめた顔色で、 研究室に入ってきた。 あわてて写真をノートの間に挟
んで、 勉強を再開する私。
ジャスミンは、 研究室に入るなり、 私が放っている「今、 私、 超忙しい。 話しかけるな」ビームを、 お嬢
様育ち特有の鈍感バリアーで、 やすやす突き抜けると、
「ちょ、 ちょっと、 ヤギー、 これ見てよ」
と言いながら、 私のシャツの左袖をひっぱった。
しばらく、 ジャスミンを無視していた私だけど、 とうとう根負けして、 いかにも面倒くさそうに、 ゆっくりと
顔を上げた。 そして、 ジャスミンが私の眼の前でひらひらさせている写真を、 興味なさげにつまみ上げる。
「これ、 この前みんなでキャンプに行ったときの集合写真じゃんないか。 ふーん、 ようやく出来上がったん
だ」
棒読みに近い、 抑揚の無い口調の端々に、 関心のなさをにじみ出したつもり。 今、 私、 それどころじ
ゃないんだってば。 忠弘様に見とれて、 勉強がゼンゼン進んでないんだよう。
でも、 ジャスミンは、 おかまいなしに話し続ける。
「これ、 心霊写真じゃないかと思うんだけど、 ヤギー、 どう思う?」
心霊写真というフレーズと、 彼女の声色に、 ただならぬものを感じた私は、 もう一度、 注意深く写真を
見直した。 心霊写真なんて、 滅多にお目にかかれるものじゃないからね。
でも、 この写真、 どう見ても、 健全な、 ただの集合写真にしか見えなかった。
「なあんだ。 何が心霊写真だよ。 なんでもないじゃないかよう。 期待して損したね。 さ、 勉強、 勉強」
私は、 写真を放り投げた。
514 :
3の444:2005/12/20(火) 01:36:32 ID:zk1/knH40
「キャンプの参加人数覚えてる?」
なおも、 必死に食い下がるジャスミン。
「8人でしょ。 幹事は私だったんだから、 間違えるわけないよ。 さ、 勉強しよ」
ため息混じりに答える私。
「写真に写っている人数、 もう一度、 よーく、数えてみて」
もう一度私の前に写真を突き出すジャスミン。 その剣幕に押されるように、 渋々写真を受け取る私。
「いち、 に、 さん、 し・・・・・・はち。 全員いるよ。 なんの問題もないじゃないかよう。 ひょっとしてジャスミン、
私のことからかってる?」
「あいやー、 分からないの? 全員いるから変なんじゃない」
ジャスミンは、 顔をしかめた。
「ヤギー、 この写真とったの、 誰だか覚えてる?」
「私だよね。 確か」
私の記憶が確かなら、 ジャスミンは、「写真を撮るのが一番うまいのはヤギーだから、 私、 ヤギーに撮
ってもらうことにする」って言って、 私にカメラを預けたんだよね。 間違いない。
「私も、 はっきり覚えてる。 この写真を撮ったのは、 ヤギーだよ。 じゃあね、 写真を撮っているはずのヤギ
ーが、 どうしてここに映っているの?」
ジャスミンの指差すその先に、 私がいた。
確かに、 ジャスミンの言うとおりだ。 河原で、 テントをバックにとった、 ごくありきたりな仲間内での集合
写真。 でも、 ここに、 本来私はいるはずないんだ。 だって、 私はこのカメラを構えていたんだもの。 じゃ
あ、 みんなから少し離れたところにぽつんと立って、 でも楽しそうにカメラに向かって手を振っているあなた
は・・・いったい誰?
ううん、 私、 知ってる。 あなたが誰か私、 よく知ってるよ。 まさか、 こんなところで会うとは思わなかった
けどね。
515 :
3の444:2005/12/20(火) 01:37:33 ID:zk1/knH40
「これ、 生霊ってやつじゃないかと思うの。 ヤギー、 今すぐ入舸浦に行こう。 天后宮の媽祖さまにお祈りし
て、 生霊を追い払ってもらおう」
ジャスミンは自分の信じる中華街の神様の名前を挙げると、 私の腕をぐいっとつかんだ。 彼女、 普段
から武術をやってるだけあって、 きゃしゃな腕をしているくせに結構な力なんだよね。 これが。
「い、 いや、 私、 講義があるからさ。 ほら、 ジャスミンだって、 出なきゃだめなんじゃないの?」
冗談じゃない。 ただでさえ、 碌に勉強していないことがバレバレで教授に睨まれてるのに、 その上、 欠
席なんかしたら私、 どうなっちゃうんだよう。
「講義なんて、 どうでもいいでしょ。 それどころじゃないよ。 無理にでも連れて行くからね。 義をみてせざる
は勇なきなりっ!」
結局、 ジャスミンに引っ張られて、 無理やり天后宮まで連れてこられてしまった。
ジャスミンの仕草を真似しながら、 黒光りする媽祖さまの像に向かってお祈りする私、 いったいなんなん
だろうね。 とほほ。
ジャスミンは、 中国語でわけのわからないことをつぶやきながら、 紙にくるまれた写真を火の中に投げ
入れる。 たちまちのうちに、 写真は、 真っ赤な炎に包まれた。
516 :
3の444:
(でも、 あなたは無事だよ)
例の写真は、 ちゃーんと私のポケットの中に入ってる。 今、 ジャスミンが燃やしたのは、 私が、 ジャスミ
ンの隙を見てすりかえた、 私の大事な中里忠弘様の写真だよう・・・うわーーーーん!
それから、 この、 一見なんの変哲もない集合写真は、 私の大切な宝物になった。
私は今でも、 悲しいこと、 辛いことがあると、 この写真を見ることにしている。 そして、 あなたのことを思
い出して、 勇気付けてもらうんだ。
今の私は、 脳みそだけ。 昔、 私と一身同体だったあなた、 私自身の身体は、 どこか私の手の届かない
遠い世界に行ってしまった。 でも、 私は決して一人ぼっちじゃない。 私には見ることができなくても、 住む
世界は違っていても、 あなたは、 やっぱり今でもちゃんと私のそばにいて、 私のことを見守ってくれている。
今、 こうしている間もきっと。
そうだよね。
「ねえ、 ヤギー。 中里忠弘のコンサートツアー中止だってさ。 バイクに乗って事故って骨折しちゃったんだっ
て」
ジャスミンが、 読んでいた音楽雑誌の記事を私に指し示す。
「えっ? マジ?」
あわてて、 ジャスミンから雑誌をひったくる私。
『中里忠弘、 バイク事故で全治三ヶ月』っていう極太ゴシックの見出しが目に飛び込んだ。
こ、 これって、 私のせい? 違うよね。 ただの偶然。 そうに決まってるよ。 ははは。
おしまい
以上、スレ埋め立てでした!