507 :
ヒトイヌ:
「あらあら美里さん、今からあんまり煽ったら、未宇さん大変ですよ?」
「ゴメンナサイ! あたしは通いしかできないから、羨ましくて、つい……」
「今度準備しているものは、アクリル経験者の未宇さんにはちょっとヌルいかもしれませんね。自由に動けるし。
まだ全部じゃありませんけど、ちょっと御覧になります?」
時子さんは店の奥に準備された品物の前に私達を案内した。
以前着せられたものに似た全身の革スーツ、全頭マスク、ブーツ、口枷?、首輪、手枷、足枷、犬耳?、しっぽ?
「あと檻がまだ来てないんですよ。これは私には作れないので外注しましたから」
「檻……って?」
目の前に並んだ品々から想像できることは1つ。
それに檻が加われば、私の恐ろしい予想はほぼ的中してしまう。
「命ぎりぎりのやりとりに比べれば、別な生き物に作り変えられて暮らすなんて、ヌルいですよね」
「はうぅ!!」
声を上げたのは美里ちゃん。
「アハ、美里さんに飛び火しちゃいましたか」
時子さんはどこからか、サッと手錠を出し、美里ちゃんに後ろ手に手錠を掛けると床に転がした。
「アハァ! アハァ! イ、イ、イ、犬にされた未宇さん! 早く! 早く見たい! いじめたい!」
美里ちゃんの叫び声を聞き、私は体中の血流が沸騰し、意識が混濁しそうだった。
言わないで!
わかってるってば!
死刑になる人に、『お前は死ぬぞ』って言わないで!