275 :
名無しさん@ピンキー:
「はい。じゃ、あとは左上の2番。一番ひどい前歯ね。これは痛み出すかもしれないから
早めにやってあげたいんだけど。ちょっと見せてくれる。」
香緒里の顔を自分の方に向けさせ、唇をめくりあげる。
「ずいぶん変色してるわね。これだったら気付いてたでしょう。うーん、これはちょっと厄介だから
もう少し後で集中してやりましょう。」
「あの・・・その歯、どうなるんでしょうか」
気になったので、思わず聞いてしまった。
「どうって?まあ、削って、神経を取ることになるだろうから、根がちゃんとしてれば、
土台を立てて、歯をかぶせることになると思うわ」
「それって、差し歯、ですか。」
香緒里が差し歯はイヤだと言っていたのを思い出した。
「そう、差し歯だけど?」
萩原先生が不思議そうに答える。
「差し歯・・・」
香緒里が青ざめていた。
「こんなにボロボロにしておいて、何言ってるの?ひょっとしたら、差し歯にもできないかもしれないわよ。
根っこまでやられてたら、抜くしかないから、両脇の歯を差し歯にして、くっつけて歯を入れるしかないわね。
これは、レントゲンを見た限りでは、どっちとも言えないんだけれど。」
276 :
名無しさん@ピンキー:04/09/06 03:27 ID:MVaOPK2R
重苦しい雰囲気だった。
助手が、カチャリ、カチャリ、と、治療の準備を始める。
「ま、とにかく、始めましょう」
椅子がゆっくりと倒され、萩原先生の目がいっそう厳しくなった。
「一番奥からやるつもりだけど、麻酔が効くようになってるかどうか、見せてね。」
口調は優しくもどっている。
左手にミラー、右手に探針を手にして、香緒里の口の中を覗き込む。
「あぅ!」
香緒里が跳ねた。
「まだちょっと充血してるようね。今日は無理だわ。もう少し落ち着かせましょう。
じゃ、下の歯からにしましょうか。左下の5番ね。」
一瞬、ホッとした顔を浮かべた香緒里だったが、
「一応、C2だから、麻酔せずに削っていきます。」
と言われ、目を見開いて怯えているのがわかった。
277 :
名無しさん@ピンキー:04/09/06 03:31 ID:MVaOPK2R
「我慢できなくなったら、ちゃんと麻酔するから大丈夫よ。」
横から、助手がなぐさめるように言った。
「はい、じゃ、あーん。」
ミラーでしばらく見た後、萩原先生は、先を選んで、器械にはめた。
不安そうに横目で見つめる香緒里。
「ちょっと見にくいから、ワイダーつけてくれる?」
「はい。」
助手は立って、プラスチックの道具を持ってきた。
なんだろう・・・
見ていると、助手は、それを香緒里の唇にはめた。
すると・・・可愛い香緒里の口が、無理やり大きく開かされていた。
目を離せずにいると、香緒里がそれに気付いて、泣き出しそうな顔をした。
「じゃ、削りますよー」
278 :
名無しさん@ピンキー:04/09/06 03:49 ID:MVaOPK2R
助手が、J字型の器械を持って、香緒里の口に入れた。<BR>
ジュボボ・・と音がする。<BR>
「バキュームっていうの。唾液を吸い取るのよ」<BR>
と、助手が教えてくれた。<BR>
チュイーン、と音をさせながら、ドリルが歯に近付いていった。<BR>
「痛くなったら、左手上げてね」<BR>
香緒里が体を固くした。<BR>
キュゥーン、キュゥーン、<BR>
音を響かせながら、香緒里の歯をドリルがえぐっていく。<BR>
キュィーン、イィィィィィィィン、チュイン、チュイン、<BR>
ドリルの音は続く。<BR>
「あー、けっこう中で広がってる、頑張って」
279 :
名無しさん@ピンキー:04/09/06 03:50 ID:MVaOPK2R
あ。やり直し。
助手が、J字型の器械を持って、香緒里の口に入れた。
ジュボボ・・と音がする。
「バキュームっていうの。唾液を吸い取るのよ」
と、助手が教えてくれた。
チュイーン、と音をさせながら、ドリルが歯に近付いていった。
「痛くなったら、左手上げてね」
香緒里が体を固くした。
キュゥーン、キュゥーン、
音を響かせながら、香緒里の歯をドリルがえぐっていく。
キュィーン、イィィィィィィィン、チュイン、チュイン、
ドリルの音は続く。
「あー、けっこう中で広がってる、頑張って」
280 :
名無しさん@ピンキー:04/09/06 03:59 ID:MVaOPK2R
キュイーン、イーン、<BR>
どのくらい削ったころだろうか。<BR>
「あぅ!」<BR>
香緒里の悲鳴が上がり、左手が上がった。<BR>
「もうちょっとだからねー、ちょっと我慢して。」<BR>
香緒里の足先に、ぎゅっ、と力が入った。<BR>が、まだ終わる気配はない。<BR>
キュィーン、キュゥーン、<BR>
「あー、こっちも広がってる・・」<BR>
「あ、はああ、んぁ、ぁぁぁ」<BR>
香緒里が泣き出し、脚をばたばたさせ始めた。<BR>
「あと少しだから」
281 :
名無しさん@ピンキー:04/09/06 04:00 ID:MVaOPK2R
ぐはー、まただ・・
キュイーン、イーン、
どのくらい削ったころだろうか。
「あぅ!」
香緒里の悲鳴が上がり、左手が上がった。
「もうちょっとだからねー、ちょっと我慢して。」
香緒里の足先に、ぎゅっ、と力が入った。
が、まだ終わる気配はない。
キュィーン、キュゥーン、
「あー、こっちも広がってる・・」
「あ、はああ、んぁ、ぁぁぁ」
香緒里が泣き出し、脚をばたばたさせ始めた。
「あと少しだから」
282 :
名無しさん@ピンキー:04/09/06 04:01 ID:MVaOPK2R
キュゥゥゥゥゥゥン。
ドリルが口からようやく離れる。
ワイダーもはずされ、椅子が起こされる。
「口ゆすいでね」
くちゅくちゅ。すこしホッとした顔で、香緒里が口をゆすぐ。
「はい。もう一度倒しますよー」
ふたたびワイダーが付けられる。
助手がバキュームを手に取る。
えっ、終わりじゃなかったのか・・・・
「意外と大きく広がってたから、もう少し削らないと。」
香緒里が怯えた顔をしたが、口は強制的に開けられているので、
逃げることもできない。
キュィィィィン、
ドリルがふたたび、口に入っていった。
そろそろ限界だ。寝まふ。
どうも、美人ペアを活かしきれてないな・・
書き直しキボン。
283 :
名無しさん@ピンキー:04/09/06 04:19 ID:sCiNuTJv
乙!めっちゃ萌えた〜。
続き少しだけ書くよ。
シュゥン、シュゥン。
少しずつ、本当にほんの少しずつ香緒里の歯は削られていく。
「あ、う、ぁあ…あっ、んぅっ」
そのたびに香緒里がのどの奥で呻く。
手はチェアをきつく掴み、足は絶えずうごめいている。
「神経に近いから少し痛いと思うけど、神経にはまだ触ってないからね。」
手を止めずに荻原先生は言った。
歯を削られている香緒里は、肯くことも出来ずに、涙を流すばかりだ。
口も強制的に開けられていて、香緒里の自由になるのは足ぐらいのものだ。
その足は椅子を蹴り続ける。
284 :
名無しさん@ピンキー:04/09/06 04:33 ID:sCiNuTJv
チィッ、チィン、シュゥンン…
「はい、終わり」
無限にも思われた時間が終わり、香緒里の口から再度ワイダーが外された。
口をゆすぐ香緒里に荻原先生が声をかける。
「神経は取らずに済んだわ。神経を保護する薬を入れて、型を取って、
今度金属の詰め物を入れますからね。じゃあお願いね。」
最後の一言は美人助手に向けた言葉だ。
美人助手はてきぱきと薬とセメントを練り合わせ、荻原先生に手渡した。
椅子を倒し、香緒里に口を開かせる。
ノズルの着いたチューブを香緒里の口に入れ、ボタンを押した。
シューッ、シューッ
どうやら歯を乾かしているらしい。
風もしみるのか、香緒里は声こそあげないものの、またもびくん、と跳ねた。
「動かないで、口も閉じないで下さいね」
助手が言ったが、すでに香緒里は口を半分閉じていた。
「……もう一回開けて、はい、あーん」
助手が軽くため息をつきながら言い、再度香緒里の歯を乾かした。
シューーーッ、シューッ
香緒里は目をぎゅっと閉じて、懸命に我慢している。
同じく寝まス。
真っ昼間から続きやらせてください。
「じゃ、型取るわね」
荻原先生はそういって、香緒里の口にセメントの乗った金属のトレイを入れる。
「ちょっとかんで・・しばらくこのままで」
香緒里は、トレイをかんだまま変な顔をしている。
俺がその顔を見つめていると、香緒里はまた泣きそうな顔をしたので、ちょっと視線をはずす。
診察室を見ると、だいぶ近代的な雰囲気である。
小学校のころの歯医者はもっと怖いイメージがあったのだが、最近は少なくとも見かけはよくなった気がする。
・・まぁ、香緒里を見ていると、変わったのは見かけがけのようだが・・。
「トレイはずしますねー」
助手はそういうと、香緒里の口からトレイを抜いた。
ピンク色のゴムのようなものに、確かに歯の型が付いている。
助手はそれを持って、奥の方に引っ込んでいった。
「じゃ、この歯は仮詰めしておくから。口あけて」
荻原先生がそういうと、香緒里は弱々しく口を開けた。
助手はまだ戻っていないので、先生が歯を乾かす。
シュッ、シューッ
ぎゅっと目を閉じて耐える香緒里。
「口閉じちゃダメよ」
先生はそういって、台の上の棒を火で温め、金属の棒で切って香緒里の口の中に持って行く。
「ちょっと我慢してねー」
そして、穴の開いているところにぎゅっと押しつける。
足がびくんと跳ね、目尻から涙がこぼれる。
「はい、今日はこの歯は終わり・・口ゆすいでいいわよ」
先生はそういうと、器具を台に起き一旦マスクをはずした。
香緒里は、ぼんやりとした目で先生を見て、そして口をゆすいだ。
先生が、立ち上がって手洗い場の方に行く。
どうやら先生もだいぶ疲れたようだ。
「・・大丈夫?」
俺が香緒里に聞くと、香緒里は弱々しい声で
「・・ん、大丈夫」と答えた。
そんなことを話しているうちに、助手を連れて荻原先生が戻ってきた。
「さて、じゃ今度は、前神経取ったとこ見るわね。きれいだったら薬入れ替えるだけだから」
そういうと、マスクをつけて器具を手に取る。
香緒里は、何も言われなくとも口を開いた。
前治療した歯に詰めてある詰め物を、ピンセットで引っかけて取る。
「んー・・元々中で炎症起こしてたみたいね・・」
荻原先生はそういうと、この前の治療で使ったネジのようなものを手に取った。
それを見た香緒里の顔が、すこしこわばる。
「ちょーっと痛いかもしれないけど、麻酔しても変わらないから・・」
そういいながら、針を歯の穴にゆっくりと押し込んでいく。
「んぁっ・・」
先生が、立ち上がって手洗い場の方に行く。
どうやら先生もだいぶ疲れたようだ。
「・・大丈夫?」
俺が香緒里に聞くと、香緒里は弱々しい声で
「・・ん、大丈夫」と答えた。
そんなことを話しているうちに、助手を連れて荻原先生が戻ってきた。
「さて、じゃ今度は、前神経取ったとこ見るわね。きれいだったら薬入れ替えるだけだから」
そういうと、マスクをつけて器具を手に取る。
香緒里は、何も言われなくとも口を開いた。
前治療した歯に詰めてある詰め物を、ピンセットで引っかけて取る。
「んー・・元々中で炎症起こしてたみたいね・・」
荻原先生はそういうと、この前の治療で使ったネジのようなものを手に取った。
それを見た香緒里の顔が、すこしこわばる。
「ちょーっと痛いかもしれないけど、麻酔しても変わらないから・・」
そういいながら、針を歯の穴にゆっくりと押し込んでいく。
「んぁっ・・」
289 :
名無しさん@ピンキー:04/09/06 11:03 ID:JA0zS8b0
香緒里は痛そうに顔をしかめたが、荻原先生は黙って奥に針を進めていく。
目が真剣そのものだ。
そして、ゆっくりと針を抜く。
「あぁっ・・」香緒里が声を上げるが、お構いなしで次の針を選ぶ先生。
涙がまたこぼれ出すが、手はだらんと下がっている。その手をぎゅっと握る。
そして、また針を入れては抜いていく。先生の目が、険しさを増していく。
「んっ・・んあぁっ」香緒里の声が、静かな診察室に響いていた。
根の治療が一段落したらしく、荻原先生は器具を台においてゆっくりと息を吐いた。
香緒里は、もうぐったりとしている。
先生は、マスクをはずしてゆっくりと説明を始めた。
「えっとね・・この歯は、根の先で炎症起こしてるから、しばらくこの治療繰り返さないとダメだわ。
長期戦になりそうだけど、頑張ってね」
香緒里は、それを聞いて呆然とした顔をした。あの治療を繰り返すのはヤダ、と顔に書いてある。
「・・しばらくって、どのくらいかかるんですか?」
俺が代わりに先生に聞くと、先生は
「それは、香緒里さんの根の具合次第だから・・最低でも後3回ぐらいかかりそうね。
5回以上やってダメなら、歯を抜く方向で考えるけど・・」
といった。