虫歯&銀歯の女の子   

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217名無しさん@ピンキー
左上の歯は、抜かずに残すことになった。香緒里も少しほっとした様子だ。
今日はその歯を治して、他の歯は順に治していくらしい。

今日の分の治療が始まった。
香緒里が泣いていたのを察してか、俺も出て行けとは言われずに済んだ。
神経がすでに死んでいるので麻酔はしないらしい。
おきまりのキュイーンという音とともに、香緒里の口の中にドリルが入れられた、
キュイーン、チィーン、シュイィン。
香緒里の歯が削られていく。
「あっ、ああ、うー」
香緒里は、口端からよだれを垂らしながら、眉間にしわを寄せ、呻いている。
手にも一層の力がこもり、腰から下がうずうずと動いている。
「痛くはないでしょう?がんばって」
小さく香緒里が肯くのを見て、歯医者は更にドリルを進めた。
「はい、今日はもう削らないよ」
見ると、香緒里の小さな歯にあった、大きな汚らしい虫歯はなくなっていて、
代わりに更に大きな綺麗な穴が空いていた。
218名無しさん@ピンキー:04/09/05 01:38 ID:9nwAlaXl
次は、神経を取ってしまうらしい。
ものすごく小さなねじのような物が、香緒里の歯に力任せに押し込まれていく。
ぐっと押されると、香緒里の足がびくん、と跳ねる。
「少し響きますか?でも、これは麻酔しても変わらないからね、頑張って」
先ほど押し込まれた小さなねじが、今度は力任せに引っ張られる。
「あっ」香緒里が小さく叫ぶ。
それにはお構いなしで、別の小さなねじがまた、
香緒里の、無惨にもぽっかり口を開けた歯に押し込まれては抜かれていく。
香緒里はすっかり怯えきったのか、
ねじを押し込まれるときたまに体に力を入れるだけで、あとはだらりとしている。
つないだ手は妙に熱い。
219名無しさん@ピンキー:04/09/05 01:43 ID:9nwAlaXl
そうこうしている間に根の治療も終わったらしい。
「薬を詰めましたからね、次見て綺麗だったら、金属をかぶせる準備をしましょう。」
「あ、あの…それって…」
終わったのに安心したのか、香緒里が自主的に聞く。
「いわゆる銀歯ですよ。周りを全部覆ってしまう。神経を抜いた歯は脆いからね」
香緒里は呆然とした表情だ。
歯医者がたたみかけて言う。
「あのね、大野さん。今日は歯磨きしてきた?」
「…はい」
「口を開けて」
香緒里の口の中に、細い棒が差し込まれる。
少しいじって取り出した棒の先には、薄黄色いもやもやした物が付いていた。
「歯垢ですよ、大野さん。たくさん残ってます。
 歯磨きをしたのとできたのは違うんですよ。」
香緒里はまた、今にも泣きそうな顔をしている。
220名無しさん@ピンキー:04/09/05 01:50 ID:9nwAlaXl
「それにね、前歯なんてそんなに虫歯になるところじゃない。
 特に若い女の子なら気をつけるからね。
 でもあなたは、下の歯は綺麗だが、上は全部虫歯だ。
 恥ずかしいことですよ。」
「……はい」
「全部治すまでにしばらくかかるからね。それまでちゃんと歯磨きして。
 これ以上広げないこと。
 ところでそちらは?」
「……彼氏です」
「仕上げ磨きをやって貰うといいよ。自分だと手加減するでしょう。」
「……」
221名無しさん@ピンキー:04/09/05 01:56 ID:9nwAlaXl
帰り際、恥ずかしいのか香緒里は、妙に早足になっていた。
「香緒里」
「…」
「怖かった? でももうそこまで痛くなくなっただろ?
 次からも頑張って通える?」
香緒里は返事をせずに、足を止めた。
「あのさ…仕上げ磨き、やってくれない?
 ちゃんと磨いてた、って昨日言ったけど、嘘なの。
 磨かないで寝ちゃったり、適当ですましたりしちゃうの。
 もう、自分が信用できないから…」
真っ赤だ。相当恥ずかしいのだろう、手が震えている。
「…わかった。その代わり、自分でもうまく磨けるように練習しろよ」
「うん」


治療編、こんな感じかな。
唇めくったり、残りの虫歯が痛くなったりする歯磨き編、誰かお願いします。