虫歯&銀歯の女の子   

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164パラレル化スマソ
続きが書かれてるけど、
漏れは別のを家で書いてたんでせっかくなので披露
163より心理戦っぽいな

「嘘よ。痛くないし。」
顔が少しこわばっている。
舌の感触では、奥歯よりも大きい穴のようだったし、
気付いてないなんてありえない。
そういえば・・・
香緒里はこの夏、大好きなカキ氷をあまり食べなかった。
しみるのだろうか?
「見てみよう。もっかい見せて。」
ライトをつけて見てみるものの、暗くなってきていてよく見えない。
ダッシュボードからペンライトを取り出す。
165パラレル化スマソ:04/09/02 10:57 ID:gtl+DybO
光を当てた瞬間、歯の間から黒ずんでいるのが、透けて見えた。
ふだん見ているときは、きれいな白い歯だと思っていたが、
強い光が当たると、縁が白濁している。
「けっこう大きいよ。」
眉間に皺を寄せてみせる。
香緒里が悲しそうな顔をする。
「隣の歯も…。あぁ、反対側の歯の間も、黒い…かも」
香緒里は今にも泣き出しそうだった。
「他にもあるんじゃないの。口あけて、全部見せて。」
目を見開いて、唇を閉じそうになるのを、指で押さえて開かせる。
「意地悪じゃなくて、心配してるんだよ?」
香緒里は素直にこくり、と頷いて、おそるおそる口を開いた。
166パラレル化スマソ:04/09/02 11:49 ID:gtl+DybO
左手の親指でぐいっ、と開けて、右手のペンライトを当てながら覗き込む。
さっきよりも光が強い分、奥までよく見える。
笑ったとき、上の右の一番前の奥歯がキラっと光るのは知っていた。
こうしてみて見ると…
「けっこうたくさん、虫歯、あるんだね」
とっさに閉じようとするのを押さえつける。
痛いと言っていた歯は、前から2番目だったが、
その後ろは十字に銀が詰められていて、
そのまた後ろの歯は、、前半分が白く濁り、
前の歯との間に黒い穴が小さく開いていた。
「痛いのは、さっきの歯だけ…じゃないよね」
口を開けられたまま、首を振って抵抗する香緒里。
「またお茶で確かめてみる?」
「ヤっ」
言った瞬間、涙がぽろり、とこぼれる。
167パラレル化スマソ:04/09/02 12:29 ID:gtl+DybO
これはちょっと意地悪だったか。
でも…
見た感じでは、痛がっている左側だけじゃなく、
右側も似たようなものなのだ。
いや、もっとひどいかもしれない。
前から3番目の奥歯は、銀が左より少し大きく詰められているが、
その前の歯は、銀歯との境が茶色く、やや溶けたようになっているし、
一番奥の歯は、よく見えないが、向こう側がやはり、虫歯のようだった。
一番前の奥歯も、白い詰めものがしてあるようだが、その周りは黒っぽく縁取られ、
歯全体が黒ずんでいる。
「本当に、心配なんだよ。こんなに、虫歯だらけで。痛くないの?」
ぽろぽろと涙をこぼしながら、なぜか香緒里は赤くなったように見えた。
168パラレル化スマソ:04/09/02 12:46 ID:gtl+DybO
「痛いなら、言いなよ?」
優しく聞くと、香緒里の目に、すがるような表情が宿った。
「やっぱり痛いんだね。どこ?一番奥?右?」
香緒里は黙って、左の上の歯を指した。
「えっ、上…?」
見にくいので、シートをもっと倒し、下から覗くようにする。
すると…
指差した歯は、下の歯なんかとは比べ物にならない、大きな穴が、ぽっかりと開いていた。
「何だよこれ!」
驚いて、口を開いていた手を離す。
香緒里は、ひっく、ひっく、としゃくり上げながら、
「銀歯が…取れちゃって…でも、歯医者は嫌だから…」
と言う。
「痛くないの?痛いよな、これは」
「最初は痛くなかったの…でも…ここんとこ痛くて…」
「いつから?痛み止め、あったと思うけど、やろうか?」
「先週から…でも、もう痛み止め、効かないの…」
ひっく、ひっく。
169パラレル化スマソ:04/09/02 13:09 ID:gtl+DybO
可哀相に…
「なんで、こんなになるまで放っておいたのさ。」
「歯医者…嫌い…」
「いや、それはわかるんだけどさ、ひどいよ?あの虫歯。」
「うん…」
「他の歯だって、ほとんど虫歯みたいだし」
「でも…嫌なの。」
こっちが心配しているのに、
嫌としか言わない香緒里に、少し腹が立ってきた。
「子供じゃないんだからさ。」
「わかってるけど…」
「だいたいそんなに虫歯だらけになるなんて、」
また香緒里は赤くなった。
「ちゃんと歯磨いてんのか?」
ますます赤くなっていく。
もしかして…
170パラレル化スマソ:04/09/02 13:37 ID:gtl+DybO
「虫歯だらけ、が、恥ずかしいのか?」
さらに赤くなって、こくん、と頷く。
「その虫歯だらけの口を、歯医者にも見せたくないってこと?」
「もうっ、虫歯だらけ虫歯だらけって言わないでよ…」
「だって、そうだろ?見たところ、ほとんど全部虫歯だったし」
「…全部見てないくせに。」
少し恥かしそうに、なじる。
「見て欲しいのか?」
「ぅ、ん。」
「じゃあ、もう一回開けて。」
「あーん、って言って。」
不思議な気分だった。
たかが歯を見るのがこんなに、なんというか…
「…何言ってんだ。ま、いいか、じゃ、あーん。」
香緒里が、すんなり口を開ける。
171パラレル化スマソ:04/09/02 13:37 ID:gtl+DybO
「下は見たんだったな、えーと、でも、何かコメントした方がいいの?虫歯だらけだ、とか。」
香緒里が腹を小突く。
「ちゃんと綺麗にしてあるんだけど、どうして、虫歯がこんなに。」
またしても香緒里は真っ赤になってしまった。
これではまるでHではないか。
「数えてみよう。下は・・3本かな、治してあるの。」
こくり。香緒里が頷く。
「でも、治してないのが、いち、に、さん、3本と、虫歯っぽいのが1本」
やはり、現実を突きつけられると、恥かしいだけでなく、やや怖いようだ。
香緒里の顔が少し固くなった。
「あと、治してある歯も1本、やられてるっぽいな」
えっ、という顔をする。
「ああ、そうだ、確かめてみようか、」
香緒里がイヤイヤをするが、そこはしっかり押さえつける。
右の一番手前の歯を、こつこつ、と、爪で叩いてみる。
「あッ、イッッ」
172パラレル化スマソ:04/09/02 13:51 ID:gtl+DybO
「やっぱり虫歯になってるんじゃない?これで4本か。」
また、香緒里の顔が歪む。
その奥は…叩くのは難しいな、そうだ、境目に…
香緒里の口から手を離して、トポトポ、とお茶を注ぐ。
湯気が立ち上った。
「はい、もう一回、あーん。」
渋る香緒里に、
「ちゃんと開けないと、調べられないだろう?開けなさい。」
と強く言ってみる。
香緒里は、赤くなって、また素直に口を開けた。
「虫歯だらけなのはわかってるんだから、もうちょっと大きく開けて。」
さらに大きく開かせる。
銀歯と、手前の歯の間あたりに、熱いお茶を垂らしてみる。
「ああああっ」
ぎゅっ、と眉間に皺を寄せて、香緒里がびくん、と跳ねる。
さきほどのように睨むかと思ったが、不安そうな目でこっちを見ている。
「ごめん、痛かったか、でも、ここもけっこう大きい虫歯になってるわけだ。」
だんだん、本当に診察しているような気分になってきた。
「下の歯は、虫歯が5本。早く治さないとね。じゃ、上を見せて。」
173パラレル化スマソ:04/09/02 14:15 ID:gtl+DybO
少し顎を上げさせて、上の歯を覗き込んだ。左からだ。
やっぱり、ひどいな。
さっき見た、前から3番目の歯は、
大きく穴が開いている、というか、ほとんど歯が残っていない。
前から3番目の歯は、どこも銀歯なのかな?
ちら、と右に目をやると、やはり銀が入っている。
初めて生える大人の奥歯だから、しっかり磨きましょう、と習った気がする。
香緒里は、これを虫歯にしてしまったんだな、と思うとドキドキしてきた。
じっと黙っていたので、香緒里が、不安そうな顔で見ている。
「ああ、ごめん、この歯は、抜かないといけないんじゃないかな」
またも涙がにじんできた。
指で、ちょん、と触りたかったが、さすがに痛いだろう。やめておこう。
その前後の歯は、間の歯がないだけに、見やすかった。
奥の歯は、歯が接していたあたりに茶色く小さい穴が開き、中で穴が広がっているのが
うっすらと透けて黒っぽく見える。
手前の歯は、奥から、少し大きめの穴があいていた。
間の歯がひどいせいで、気にならないが、この2本も、けっこう大きい虫歯だろう。
「この痛い歯の両脇の2本も、ひどい虫歯になってるね。痛い?」