お母さんは正義のヒロイン

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970退魔戦士 有子
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真理が用具室のドアに手をかけたのと、五時間目の始業を知らせるチャイムが鳴るのとは
ほぼ同じであった。この時点で誰も体育館に姿を現さないということは、この時間にここ
を使用するクラスがない、ということと考えていいだろう。
これで外の様子を気にせず戦えるというものである。真理はドアを開け用具室の中へと足
を踏み入れた。

バレーやバスケットのボール、マット、跳び箱など体育用具が整然と並べられている。比
較的整理が行き届いているな、と真理は思った。
魔の気の方はというと、やはりこの一角から感じられる。先ほどよりは少し強まった感も
あるのだが、まだまだ微細であり過去に戦った魔物とは比べられないほど弱い。昨日一条
家で感じた邪気が100だとすれば1にも満たないだろう。

(雑魚か・・・)
真理は少しがっかりした。どうやら貴裕本人でも彼が送り込んできた魔物の類でもなさそ
うである。なにかの拍子に低級の魔物がここに出現してしまった、というところだろうか。
(まぁ、魔の存在には違いないから、丁重にお相手してあげるか)
真理がそんなことを考えていると、後ろからふふふ、という子供の笑い声が聞こえてきた。

「誰?」
彼女はその声に反応して、後ろを振り返る。そこには跳び箱の上にちょこんと座った少年
がこちらを向いて笑っている姿があった。どうやら、魔の気はこの少年が発しているよう
である。
一瞬、貴裕かと思った真理ではあったが、前に見た写真とは少し雰囲気が違うようである。
第一こんなに微弱な気の訳がない。