お母さんは正義のヒロイン

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序章3「青い影」
黒い獣は獲物の体を軽々と担ぎ上げ、狙いを定めた。
彼女は理解していた。ブラウスとスカートを引き裂いただけで、まだ彼女の体に下着は残っていたが、こいつはパンティの上から彼女を貫くつもりなのだと。
欲情だとかレイプなどという表現では足りない、「目の前の雌を貫こうとする本能」がこいつを衝き動かしているのだと。
獣の黒い肉棒が彼女の秘部を守る薄い布に触れた瞬間だった。
「やめなさい!」
鋭い声が静寂を裂き、獣は一瞬、動きを止めた。
次の瞬間、小さな影が獣の背後から何かを振り下ろした。その巨体からは想像もつかない俊敏さで獣は飛び退く。
「なんて速さなのかしら。一撃で終わりだと思ったんだけど……」
小さな影の正体は、全身を青いコスチュームで覆った女性だった。顔は大仰なヘルメットで隠れていて分からない。
獣との対比で小さな影に見えたが、女性にしてはかなりの長身だろう。手も足もすらりと長い。
青い戦士は手に持った細身の剣を化け物に突きつけた。
「その子を放しなさい。言葉が分かるならだけど……」
言い終わるのを待たずに、化け物は獲物を抱えていない方の腕で青い戦士に襲いかかった。野太い爪が空を切った。
「グ……ギャァッ」
だが、悲鳴を上げたのは化け物の方だった。
無防備だった背中に攻撃を受け、その激痛で獲物を放してしまう。
女性は、地面に衝突する前に青い戦士が素早く抱きとめた。

化け物の背中には小さな刃が何本も刺さっていた。
「ブルー、やっぱり言葉の通じるような相手じゃなかったようですね」
化け物の背後から攻撃を加えたのは、同じ型のコスチュームとヘルメットを装備した仲間だった。ただし、こちらの女性の身につけているものは全て真っ赤だった。
「ええ。やはり害獣は退治するしかないわね」
剣を構え直す青い戦士。細い刃に月の光が不気味に照り返される。
897名無しさん@ピンキー:2005/07/04(月) 01:23:50 ID:nbCWEQui
あっ!投稿中だったの!?すまん!!
898879:2005/07/04(月) 01:25:11 ID:MYwYU0XM
序章4「遅れてきたイエロー」
赤い戦士の大型の銃はしっかりと黒い獣に向けられている。
背中の激痛に息を荒げながらも、化け物は冷静さを失わなかった。眼前の赤い敵が持っている飛び道具に用心しながらも、青い方の刃物への警戒も怠らない。
最初に青い戦士が襲ってきたときの一刀をかわさなかったら、自分の腕は切り落とされていたはずだ。こいつらは危険すぎる、と本能が告げている。いったん退くべきだ。
このままでは分が悪いが、逃げ出そうにもこの二人はわずかな隙も見逃さないだろう。
しばらく三者が睨み合い、互いの出方を伺う状態が続いた。
と、不意にドスドスドスと足音を響かせながら誰かが向かってきた。
「ごめん! ピンクたちは連絡つかなくてさ〜」
声の主は黄色いコスチュームをまとい、無様な足音を響かせながらやってくる。走るたびに豊かな腹の肉や二の腕が揺れている。
化け物の姿に気づき、ぎょっとして立ち止まった。
「うわっ、でかっ……。本当に化け物だ。連続レイプ事件の犯人は大柄だって調べはついてたけど、こんな……」
「イエロー、油断しないで!」
赤い戦士が警告した。先の二人は化け物が出てくることを予想していたのに対し、イエローと呼ばれた仲間は、どうやら普通の痴漢か強盗でも捕まえるための張り込みと誤認しているようだった。
眼前の異様な光景に動けなくなってしまう。
が、すぐに気を取り直したらしく、腰につけていた鞭の柄をつかみ、
「やっつけてやる!」
渾身の力で化け物に横なぎに叩きつけようとした。化け物は軽々と飛んでかわしてしまう。
標的を見失った鞭はそのままの勢いで空を切り、その先にいる青い戦士を目掛けて振り抜かれようとしている。
バシッ。
青い戦士はかろうじて剣で身を守ったが、不意だったせいもあり、力負けしてバランスを崩してしまう。
その隙を化け物は見逃さなかった。
グッと身をかがめたかと思うと飛び上がり、次の瞬間には小学校の周囲に張られた高いネットの上に立っていた。
化け物は真夜中の空気を震わせるほどの恐ろしい声で吼えた。
「おぼえていろ! きさまらはただではすまさん!! 三匹とも犯し食らってやる!」」
二度目の跳躍で、黒い化け物は見えなくなった。