>>697つづき
全身がその場に現れると、貴裕はニコニコ笑いながらパチパチと皐月に拍手を送る。
「いやぁ〜、すごいねぇ皐月さん。僕びっくりしちゃったよ」
そう言う貴裕の顔は余裕の表情だ。今の戦いで皐月の実力を把握したということだろう。
「あら、ずいぶん余裕じゃない、貴ちゃん。わたしの力はまだまだこんなものじゃないわ
よ」
それは強がりでもなんでもなかった。先ほどの戦いで皐月は実力の十分の一も出してはい
ない。闇の力が作用しない昼間の戦いとはいえ、あれだけの数の魔物を倒すのにその程度
の力ですむ皐月の力は計り知れないものがあった。
「夜ならともかく、昼間なら勝てはしなくても、負けることはないわよ。ふふっ、丁度い
いわ。わたしの孫を返してもらいましょうか!」
そう言って皐月は破邪の扇を構える。
「生意気だなぁ、皐月さんは。じゃあ、その実力を見せてもらおうか!!」
貴裕の胸が弾け無数の触手が再びその姿を現した。前回よりも数が増えている。
縦横無尽に動き回り、皐月を捕らえようとする触手たち。だが、そんな動きを見透かすか
のようにスイスイと触手をかわしていく皐月。着物の裾から見え隠れするふくらはぎが艶
かしい。