お母さんは正義のヒロイン

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オリジナル

「…そうなんですかぁ」
早紀は一瞬寂しそうな表情を見せた。
「やっぱりお母様が恋しいのかしら?」
闇蜘蛛姫が優しく声をかけると、早紀はいつもの明るい笑みを浮かべて、
「いいえ!姫様の側にいられたら全然寂しくなんかないですよ!」
そういうと早紀は闇蜘蛛姫に一礼して、出て行った。
「うふふ。健気な娘ねぇ」
「そうですねぇ。かわいそうですよねぇ。早紀ちゃん」
メイドはそう言いながらもニコニコと機嫌が良さそうだった。
「うふふ。ところで…」
闇蜘蛛姫はメイドに目を移した。見据えられ、ビクッとするメイド。
「今回のお仕事でなにかいいことでもあったのかしら?」
相変わらず優しく聞く闇蜘蛛姫。
「えっ!?え〜っとぉ…。な、なんにもないですよぉ。あは、あはは…」
メイドは闇蜘蛛姫に問われ、しどろもどろになっていた。
「うふふ。そう」
それだけ言うと闇蜘蛛姫はカメラを取り出した。年季の入ったポラロイドカメラ。
それを見たメイドは表情を変えてあせり始めた。
「うふふ。いくわよ」
パシャッ!
出てきた写真を手にした闇蜘蛛姫は妖しい笑みを浮かべた。
「うふふ。可愛い娘たちね」
585439:2005/05/20(金) 13:10:56 ID:jE//e+9V
オリジナル

その写真にはこの場にいない少女の姿が写っていた。闇蜘蛛姫は近未来の映像を具現化する力を持っているのだ。
最近では人が見たものを具現化することができるようになったらしい。
メイドが見てきたもの。それは二人の少女であった。高校生くらいであろうか。それぞれ赤と青のコスチュームを身に纏い、
薙刀のような武器を持って勇ましく戦っている姿。そして二人とも美少女と呼ぶに相応しい容姿だった。
「え〜っとぉ…」
言い訳するメイド。
「うふふ。貴女にしては今回連れてきた女の子の数が少ないと思ったわ。ふ〜ん。美少女戦士ってところかしらね。この娘たち」
どこまでも優しく言う闇蜘蛛姫。
「お、お言葉ですけどぉ、姫様は今回お父上様の仇が討てたじゃないですかぁ!今度は私にもぉ…」
メイドは言い終わらないうちに俯いてしまった。
「お父様の仇?うふふ。違うわよ」
闇蜘蛛姫はメイドの言葉に思わず吹き出してしまった。
「ただの暇潰しよ。ふふふ。でも、貴女がそこまで言うなら、この娘たちは貴女にあげるわ。
もちろん、ちゃんと連れて来られれば、だけどね」
からかうように言う闇蜘蛛姫。その言葉にメイドの顔はパァッと明るくなった。
「もちろん連れてきます!やったぁ!絶対連れてきて、二人とも私のペットにしてやるぅ!」
メイドは喜び勇んで出て行ってしまった。
闇蜘蛛姫の手には、まだ数枚の写真が残っていた。
その写真には戦いに敗れ、捕らわれた美少女戦士たちが写っていた。その他にも楽しそうに調教するメイドの姿が写った写真もある。
しかし、最後の写真を見て、闇蜘蛛姫は思わず吹き出した。
それは首輪に繋がれペットになった美少女戦士の写真だったのだが、そのリードを持つ飼い主はメイドではなく、早紀だったのだ。
「うふふ。あらあら。あんなに喜んで出て行ったのに。かわいそうに。教えてあげた方がいいのかしら?
でもそれじゃあの娘たち喧嘩しちゃうかもしれないわね。ふふふ」

《完》