【巨大娘】はぐれ巨大娘ほのぼの派【ほのぼの系】

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89610ぺーじ
水穂の巫女
1

気がつけば、僕の生活にとって、その神社の巫女さんはかけがえのない存在だった。
優しく、美しく清らかで、そして、いつも笑顔を絶やさないでいた……。


埼玉県水穂町、僕の住んでいる町だ。
東京との県境にあって、S鉄道によって区内へ電車一本で行ける町だ。
ただ、周辺の大きなベッドタウンに比べると、田園風景が周辺にはかなり残っていて、通っていた小学校にも農家の子がたくさんいた。
そして、僕。
どこにでもあるような普通の家の、どこにでもいるような普通の小学五年生。
誰でも通う普通の学校の、誰でも取るような普通の成績の、まるで普通の小学生だった。
特技と言うものも、少し、人より足が速いくらいだった。
ただ、僕には人とは違う自慢があった。
僕の家の裏に、大きな山がポツンとあるんだ。
ただ、それだけ。でも、僕の山みたいで、それが自慢だった。

その裏の山に、「水穂神社」と言う大きな神社がある。
町の真ん中にある神社よりも、大きな社を構えている。
ここ町に昔からいる神様をまつっているらしい。
神様、という人を、僕は今までに見たことがない。
先生に聞けば、「神様は、本当はいないのよ。」と言う。
近所の農家のおばあちゃんに聞けば、「お山の神社に氏神様がいるんだよ。」と言う。
どっちが正しいのか、分からない。
だから、今まで隣にありながら入ったこともない、神社へ入ってみることにした。
89710ぺーじ:02/12/13 22:44 ID:8vMyY2J+
ある春のぽかぽかとした土曜日、僕は家に帰って、ランドセルを玄関にほっぽると、昼ごはんも食べずに裏山へ走った。
家の門を出れば、山への道がすぐあって、山を登る石段のまん前には大きな鳥居が立っている。
僕は石段を半分まで上がると、もと来た道を見下ろした。
水穂町の畑のど真ん中を走る電車と、それを縦に跨ぐ送電線、そして、駅前の町の中心が見えた。
その奥には、関東山地と狭山丘陵が控えている。
その、低い山並みを見て、僕はトトロを思い出した。
八国山に、トトロの森があると聞いて、友達と自転車で八国山まで行ったけど、トトロは全然見つからなかった。
それをお母さんに言うと、「トトロは本当はいないのよ。」と、先生みたいなことを言った。
僕が、初めて夢を壊された時のこと。がっかりして、その夜はもうご飯も食べずに寝てしまった記憶がある。

「はぁっ、はぁっ。ふぅ…」

僕は、肩で息をして、やっと頂上にたどり着いた。
閉じられたつるべ井戸、対の灯ろう、そして、神社の大きな社があった。
とは言っても、僕の家より少し大きいくらいだった。
石畳でぺたぺたと音を鳴らしながら、僕は社へ近づいた。
お賽銭箱が、扉のまん前でその大きな口を構えていて、やっぱり神社なんだ、と言う実感がわいた。

僕は社の扉に手をかける。
ギギィと、ちょうつがいの音だけが響いた。
少し開けて中に入ると大きな部屋が目に入ってきた。
板張りの床は、少し冷たかった。
靴を脱いで中に入ると、神棚があるのが分かった。
近所のおばあちゃんちにあるような神棚より、もっと大きい。
神棚の前にある真新しいロウソクには、火が点っている。
誰か、住んでいるのかな…。ふと、そう思う。
おっかない神主さんでもいるのかな…。
89810ぺーじ:02/12/13 22:47 ID:8vMyY2J+
目を凝らすと、扉のある箱のようなものが一番奥にあった。
僕の好奇心は、すぐにその箱へ移った。

「何だろう、これ…。」

社の中にまたもう一つの社があるような、そんな感じの大きな箱。
僕はその箱の扉をおそるおそる開いてみた。
入り口の扉より軽い音がして、扉が開いた。

「…わぁっ…」

中には、小さな石像が入っていた。
近くを流れる柳川の橋の隣にあるお地蔵さんと、同じ石の色だった。
でも、胴長短足なお地蔵さんとは違って頭が小さく、身体も縦に長かった。
それに何よりも、その像の頭は女の人のだった。
後に長い髪があって、本で見たような、大航海時代の船の女神像みたいだった。

「…これが…神様?」

僕はその石像を手に取ろうとした。

その時、後ろでミシッと、木の床を踏む音がした。
びっくりして振り向くと、扉の、ガラスで雨から守られている和紙の障子越しに、大きな影があった。
影は、その白い障子の上まで届いていた。
そして、僕が開かなかった、中から見て左側の扉の端を、長い指がつかんでいた。
89910ぺーじ:02/12/13 22:50 ID:8vMyY2J+
(うわっ…まずい!!)
僕は足音を忍ばせて、それでも急いで、神棚の下に隠れた。
光の届かない奥まで入り込み、がたがたと震えた。
震え出すと同時に、扉がきしんだ。
そして、大きな影は部屋の中へ一歩を踏む。

ミシッ、ミシッ。

規則正しい音で、ゆっくりと、その足がどんどん神棚に近づいてくる。
足袋を履いているのが、神棚の脚先に分かる。

(見つかりませんように…見つかりませんように…。)

とにかく僕は祈った。
僕は、その影の上には鬼の顔があるんじゃないか、と思った。
とにかく怖かった。
90010ぺーじ:02/12/13 22:51 ID:8vMyY2J+
パタン。

足袋が歩みを止めると、上の箱の扉を閉まる音が聞こえた。
僕が少し顔を出しても、そこは死角になっていて、足袋の足しか分からない。
と、足袋が僕のほうに向いた。
慌てて僕は頭を神棚の下に戻した。
足袋は、僕の真ん前で止まった。
まるで、僕がここにいるのが分かっていたかのように。
真っ赤なカーテンが足袋の上にあった。
そして、そのカーテンが足袋にかぶさった。
多分、しゃがんだのに違いない。

「そんなところに入ってはいけません。」

声がした。
男の人の声じゃなくて、女の人、しかも若い女の人の。
透き通るような、優しい声だった。
僕は、おそるおそる顔をその下から出した。
優しそうな、そして綺麗な女の人の顔があった。
純白の着物のような服、そして、真っ赤な袴。
腰まで届きそうな髪が、入ってきた風で揺れていた。
その女の人は、僕の目と目が合うと、ニコッと微笑んだ。

「こんにちは。」
「…こ…こんちわっ…。」

僕と、その巫女さんとの出会いだった。
90110ぺーじ:02/12/13 22:55 ID:8vMyY2J+
…最初はこんな感じです。
埼玉県だめぽ町…という架空の町です(w
…パクリだとか言われそう…
中もとい小みたいな文章ですみません。