GTS(喰い系)スレッド

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756751より続き
 ごくん!

 伊奈子は6年3組の総勢40名――正確には、先に食道へ飛び込んだ倫佳を除く39名の塊を、音を立てて
飲み込んだ。
「助けてぇー!」
「いやだぁーッ! 早くここから出たいー!」
 全身唾液まみれの生徒たちは自分たちを否応なく食道へ突き落とそうとする舌の動きに抵抗し、ある者は
必死の形相で味蕾に掴まりながら踏ん張り、ある者は真っ暗闇の口腔にテカテカと光る口蓋垂へ手を伸ばし
なんとか助かろうとする。その光景に、普段はあれほど大事な価値観として教え込まれているはずの協力しか
助け合いなんてものは微塵も感じられない。誰も彼もが、自分だけは助かりたい一心で行動していた。
「先生! 江狭くんが閉じこめられました!」
 生徒の1人は舌の付け根で踏ん張っていたが、唾液で足を滑らせ気管の奥底へ真っ逆さまに転落して行った。
そして次の瞬間、無惨にも軟口蓋が閉じられ38人の塊は大きく開かれた食道へと突き落とされたのであった。

 嚥下の瞬間、伊奈子は何とも形容のし難い優越感に浸っていた。昔から「喉元過ぎれば熱さ忘れる」と言うが、
さっきまであれほど気持ち悪いと思っていたはずの「つぶ人間」たちが自分のふくらみかけた胸の奥底をまるで
地下水脈のように伝う食道の中で筋肉の激流に揉まれ、彼らのサイズから見ればきっと体育館のように広大な
胃袋の中へ送り込まれるのだ。その中で彼らは自分とひとつになる。
 そのことに想いを巡らせた伊奈子にとって、自分の中のつぶ人間たちはこれ以上無いと言うぐらいに愛おしい
存在となっていた。

(つづく)