217 :
名無しさん@ピンキー:
「ここで、立ち上がらなきゃ、プロレスじゃないってことね・・・」
必死に頭を振って、朦朧とさせるダメージを振り払いながら、なんとか半身を起こそうとすると
「あんまりちょろちょろ動き回られると予定がくるってしまってよ?お嬢ちゃん。少しおとなし
くしていただくわ。」
「え?」
もはや何のためらいもなく、清羽子は奈々菜の足を取ると、その場に背を向けてどっかと座り
込み、痛めた左足首を一気に締め上げる。
「うわあっつ!!!!」
やはり応急処置したとはいえ、怪我は怪我なのだ。アドレナリン沸騰で痛みを忘れていたのも
あるのだろうが、それにしてもとてつもない直接的な痛みが、脳髄まで駆け上がる。
『キャロライン、これはねちっこい徹底的な足潰しだ!!これで奈々菜の機動力を奪いさるのか?!苦しがる奈々菜!!
悲鳴をあげる!!翼が、翼がおられてしまうのか?!これでは飛べない〜〜〜〜!!!』
「こいつう!!!」
慌ててがら空きの清羽子の首を後から取ろうとするが、痛みが意志を上回る。
「うわあああああ!!!!」
がむしゃらにもがきまくる奈々菜。
意外にもあっさりと技を解く清羽子。
慌てて離れる奈々菜に向かい、清羽子はこともなげに言う。
「大丈夫よ。ペットの小鳥と同じ。遠くまで飛べないように羽を二三本抜いただけよ?」
「・・・」
軽くステップしてダメージを確かめる奈々菜。絞められた痛みは尾を引いているが、大丈夫、動ける。
「じゃあ、そろそろ行きますわよ!!」
大げさに右腕を振り上げ、一直線に奈々菜につかみかかる清羽子。
「そんなの!!」
真正面から受け止める奈々菜。(もう一度極めてやる!!)
すかさずもう一度飛びつき腕ひしぎを慣行すべく、ぐっと下半身にためをつくる。
(ずきん!!!!)
「うわ!!」
左足首にとてつもない激痛。
「いったでしょ?あなたには、あたくしのフィニッシュを受けるために立ち上がるだけの
翼しか残っていないのよ!」
「な?!」
そのままがくっと膝を突く奈々菜。激痛で、一定以上の負荷を足首にかけられない。
「倒れるほどじゃないでしょ?もう一〜二度はロープに走っていただかないと・・・」
顔面を鷲掴みにして奈々菜を引き吊り起こすと、力任せにロープに飛ばす。
(だったら今度こそ受けきってやる!!!)ロープに背をつけたその時だ。
いきなり、がつん!!と鈍い衝撃が足首をはじき飛ばす。
「?!」
激痛を感じるより速く、奈々菜はその場で宙に舞っているのを感じる。
理由は全く分からない。次の瞬間には横殴りにマットに叩きつけられているのを感じている。
真横になった視界の先には、まだリング中央で待ちかまえる清羽子の姿。
(え?な、なに?)
考えるまもなく、今度は後頭部に強い衝撃を感じ、一瞬にして視界が真っ暗になる。
「○×△$%!&`@!!!!」
何事か意味不明の英語らしい叫びがうっすらと聞こえる。
218 :
名無しさん@ピンキー:02/03/24 19:16
ばたん、と不意に会議室のドアが開く。
「おそくなりましたぁ!!」
「なりましたので〜!!」
奈々菜と深久美だ。制服姿のまま、なだれ込むように息を切らせて駆け込んで来る二人。
「奈々菜!!」
思わず席を立つ神津奈。
「あ、かずな、大丈夫大丈夫!!へへへ・・・」
体勢を取り直して笑う奈々菜の脇には松葉杖。
左足には、ギプスこそしてはいないものの、
痛々しい分厚い包帯が足首を覆っている。
「捻挫捻挫!!ちょっと靱帯痛めちゃったみたいだけど、二週間もすれば完全に元通りだって!」
「お前、あたまはどうなんだ?頭はだいじょうぶ?」
「ちょっとかずな、それじゃあたしが頭悪いみたいじゃん!!大丈夫だよ!!ただの脳震盪!
それだけで異常無し!!」
「そう・・・なら・・いいんだよ・・・」
ふうっと力が抜けたように元の椅子に座り込む神津奈。
苦笑しながらよしよしと神津奈の頭をなでるマデリーン。
「あ、亜紀良さん、どうもご心配おかけしました。」
奈々菜は鞄から医師の診断書を出し、
亜紀良に渡しながら頭をぺこりとさげる。