福島県二本松市で伝統人形の工房を営む斎藤徹さん(66)が、人形を動かす
「ばね」に使うセミクジラのひげを探していることを伝えた河北新報の記事
(昨年11月29日付朝刊)をきっかけに、仙台市の男性2人が斎藤さんに1本ずつを寄贈した。
斎藤さんは「いくら探してもなかった。とても、うれしい」と喜んでいる。
「うちにあるのが多分、セミのひげでは」と、新聞を読んですぐに電話したのは
太白区の自営業盛野正さん(69)。40年以上前に知人から譲り受け、家に飾っていた。
先月上旬、斎藤さんが本物のセミクジラのひげと確認。長さ約210センチで
保存状態も良かった。盛野さんは「困っているのなら、どうぞ活用してください」と、
その場で寄贈を申し出た。
先月中旬には、宮城野区の遠藤博さん(69)からも吉報が届いた。
遠藤さんは商業捕鯨をしていた大洋漁業に長く勤務。約30年前、捕鯨船の
元乗組員からセミクジラのひげをもらったという。
遠藤さんは「工芸品の素材として貴重なのは知っていた。役立ててくれる人に
贈りたいと思っていた」と話す。長さ約160センチで状態も良く、先月下旬、
仙台を訪れた斎藤さんに譲り渡した。
伝統人形の生命感あふれる動きは、セミクジラのひげで作るばねが不可欠。
だが、乱獲によってセミクジラの捕獲は1937年から国際的に禁止され、
新しいひげの入手は絶望的な状況だ。
斎藤さんは約10年分を確保していたが、2人の寄贈で倍以上に増えた。
1メートルほどの短いひげしかなかったため、これまで作れなかった
ぜんまいも今後は作れる。斎藤さんは「ここ一番の時に使いたい」と張り切る。
クジラのヒゲの保管情報などは記事の掲載後、宮城県や福岡県、東京都などから
十数件が寄せられたが、2人のもの以外は違う鯨のひげだった。
材料不足の危機は去ったが、斎藤さんは「人形文化の継承のため、
セミクジラが浜に揚がった場合などにひげを確保、保管する仕組みが
ほしい」と話している。 最終更新:1月17日(月)6時12分
河北新報 - Yahoo!ニュース
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