◇着ぐるみ一筋30年、ゆるキャラ支える町工場
全国各地で“ご当地キャラ”“ゆるキャラ”が相次いで誕生する中、
30年前から着ぐるみ製造を手がける埼玉県鴻巣市の中小企業
「ファニークラフト」に注目が集まっている。
プラスチック製造から転身した先見の明に加え、「イメージ通りの
かわいい仕上がり」が武器。著名アニメから警察本部のマスコットまで
幅広く受注し、業界では知る人ぞ知る工場に成長した。社長の
上條さんいわく、「うちの着ぐるみは体にフィットする。
ちっとも“ゆるく”ありません」。
約500平方メートルの工場には、基本パーツの発泡スチロールや
型紙が所狭しと並び、5人の従業員が黙々と作業する。手がけた
着ぐるみは数千体。5年ほど前から製造が追いつかず、
注文を断ることもあるという。
自宅の庭に建てた25平方メートルほどの鉄骨平屋工場が上條さんの
原点だ。物作りが好きで、装飾品などを手がけていた。
転機は35年ほど前、仕入れ先の発泡スチロール製造会社の社長から
持ち込まれた相談だった。「着ぐるみを作りたいのだが、作り方が分からない」
発泡スチロールで型を作ってきた上條さんの頭にはイメージがすぐに浮かび、
「やってみます」。1週間後、見事な出来栄えの着ぐるみが完成。
「これからはキャラクターの時代。これはいける」と上條さんは直感した。
1980年頃から着ぐるみ専門に切り替え、大手企業などに売り込んだ。
「原画通りに仕上げる」との評判が徐々に広まる中、87年には
力強い味方が現れた。映像専門学校で特撮を学んでいた
アルバイト佐々木邦泰さん(43)だ。
ガンダムやウルトラマンを愛する佐々木さんだが、着ぐるみを作らせてみると、
意外にも「かわいい」と顧客に大好評。上條さんは、「イラストを見ただけで
立体像が頭に浮かぶ」と言う佐々木さんをそのまま雇い入れた。
現在は工場長だ。
同社に絶大な信頼を置くのは、ゲームセンター景品製造「システムサービス」
(東京都)の宣伝担当・木村宏史さん(40)。「ほかの工場とは出来が違う。
資料以上のかわいいものができる」。2004年に売り出し中のクマの着ぐるみを
発注、ゲームセンター店頭に登場させたところ、人だかりができた。以来、
業界では着ぐるみPR法が広がったという。
最近は、大手メーカーのほか、全国の自治体などから注文が相次ぎ、
埼玉県の「コバトン」や、新潟県警の「ひかるくん」「ひかりちゃん」なども
手がける。5年ほど前には、娘婿の吉村さんも入社し、製作にあたる。
1体50万円前後。人気は出ても、月10体以内の製造ペースを上げることはない。
「愛される着ぐるみを丁寧に作っていきたい」と上條さんは考えている。
(一部省略)
ソース(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100714-OYT1T01239.htm ▽工場を支える佐々木さん(右)と、社長の上條さん(中央)、吉村さん
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20100714-430443-1-L.jpg ▽包丁で発泡スチロールを削る工場長の佐々木さん
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20100714-430413-1-L.jpg