◇「21の1等星すべて一夜で観察」挑戦7年目ついに成功
21の1等星すべてを一夜で眺める――。毎年1月、沖縄・石垣島でそんな観測に
挑む人々がいる。石垣島天文台と地元のNPO法人「八重山星の会」の人たち。
2004年から挑戦してきたが、天候不順などに阻まれてきた。今年は1月15日、
部分日食に新月という好条件がそろい、7年目にしてついに成功した。
同日午後11時すぎ、石垣島天文台。暗闇に一筋のレーザー光線が伸びた。
「これが『むりかぶし』ですよ」。星の会の新崎さんが冬の天の川の
近くを示してくれた。むりかぶしは「群星」と書き、八重山地方ですばる(プレアデス星団)の意。
天文台の望遠鏡の名前にもなっている。その近くに、おうし座の1等星アルデバランが輝いていた。
北緯24度の石垣島など、国内でも緯度の低い地域では、本土では見えない南十字星を含む
21個の1等星が観測できる。03年に石垣島天文台の建設が決まったのを機に、天文台と
星の会は一晩で全部を見る観測会を企画。夜の長い1月から2月初めごろを狙って年に1回、
徹夜の観測を試みてきた。題して「1等星マラソン」だ。
しかし、雨や雲に邪魔されたり、街の明かりに星がかき消されたり。今年こそはと、
日の入り前に部分日食がある15日の観測を決めた。月が出ない新月でもあるからだ。
夕方、天文台には約30人が集まった。部分日食を見たあと、
午後6時25分の日没と同時に1等星を探す。
最初の観測は午後6時45分。アルデバランなど四つの1等星が見えた。空はくっきりと澄み、
雲もほとんどない。聞こえるのはクジャクと石垣牛の鳴き声だけ。暖を取るための鍋を囲みながら、
メンバーから「今年はいけるかもしれないぞ」と声が上がった。
日付が変わって街の灯が徐々に消えると、ダイヤモンドを吹き付けたように夜空を星が埋め尽くす。
南十字星が昇ってきた。十字の一番下と左側の1等星は水平線ぎりぎり。かすむ水平線に目をこらす。
午前5時過ぎ、雲のすき間から何とか南十字星の四つの星が見えた。かすかな星のまたたきに、
ため息がもれた。
わし座のアルタイルを残して、時計は午前6時半を回った。東の空がうっすらと桃色を帯び、
メンバーに焦りがにじむ。「あれじゃないか?」。双眼鏡をのぞいていた星の会の黒島さんが叫んだ。
パソコン上で計算した星の位置と、星空を何度も見比べる。「21個目、達成だ!」。歓声と拍手が起きた。
「石垣の星空の美しさを改めて知ることができた」。会の代表の通事(とうじ)さんは感激をかみしめた。
徹夜の疲れも吹き飛んだ様子。充実した笑顔を浮かべていた。
ソース(朝日新聞)
http://www.asahi.com/science/update/0126/SEB201001260009.html http://www.asahi.com/science/update/0126/SEB201001260009_01.html ▽画像
http://www.asahi.com/science/update/0126/images/SEB201001260010.jpg ▽「1等星マラソン」で空を見上げる八重山星の会のメンバーら
http://www.asahicom.jp/science/update/0126/images/SEB201001260011.jpg