美術家の岡本太郎(1911〜96年)が、横浜市金沢区の並木幼稚園の園児のために約30年前に
制作し、傷みが激しかった壁画「海辺の太陽」が修復され、9月1日に同園で園児らによる除幕式が
行われる。修復には、企業の最先端技術や職人の技が駆使され、原色を大胆に使った岡本の原画の
色彩を鮮やかに再現した。
壁画は1980年の同園開設に合わせ、同園理事長の小嶋禮子さん(72)らが岡本に制作を依頼した。
「幼稚園に巨大な壁画。面白いじゃないか」と岡本は快諾。現地を訪れ、同園近くの海を見て
「海にちなんだ作品がいい」と、鮮やかなブルーを背景に、太陽が輝き、赤い魚が跳びはねる原画を
描いた。
岡本の指導で業者が同園の外壁に完成させた壁画は幅10メートル、高さ7メートル。
当初、保護者らからは「奇想天外だ」などの声もあがったが、次第に「本物の芸術作品に触れられる」
と同園のシンボルになった。
しかし、タイルがはがれるなど傷みが目立つようになったため、開園30周年に合わせ、
元々の色遣いを子どもたちに見せたいと、小嶋さんが、知人で建設関連の企画・調査などを手がける
タイセイ総合研究所の杉本賢司上席研究員(59)に修復を依頼。杉本さんは、協力企業を募り、
タイル工事を衛生陶器大手のINAX、画像処理を音響・映像機器大手のパイオニアが担当。
修復専門業者の職人も加わった。
作業は今年5月に始まり、まず原画と、開園2、3年後に撮影された壁画の写真を高感度カメラで撮影、
二つの画像を合成し、壁画の大きさに引き伸ばした。その上に、約23万枚のガラスモザイクタイルを
並べて固定し、下地にはり付けて完成させた。タイルは以前の12色から23色に増やし、
原画の色彩をより忠実に再現し、耐久性も向上させた。
小嶋理事長は「岡本さんの偉大な作品の影響を受け、まっすぐな子どもたちに育ってくれると思う」
と話していた。
ソースは
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kanagawa/news/20090828-OYT8T00167.htm 実物大の壁画の写真の上に約23万枚のタイルを並べる職人。手前は原画を写した写真
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20090828-550585-1-L.jpg 壁画の前に立つ岡本太郎(右)と小嶋理事長(中央)ら(小嶋理事長提供、1980年撮影)
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20090828-550592-1-L.jpg