桜の花を咲かせる不思議な大イチョウ――。桶川市加納の「医光寺」境内にある巨木の秘密を、
地元の主婦今川さんが4年がかりで解き明かし、1冊の本にまとめた。“イチョウ桜”の謎を探る
中で知った加納地区の歴史や言い伝え、圏央道の建設で変わる風景なども盛り込み、
7月中旬に「ふしぎな桜」の題で自費出版する。
大イチョウは樹齢約500年で、幹回り約6・5メートル、樹高約16メートル。地上3・5メートル
ほどの所に開いた穴から桜の木が生え、二十数年前から薄紅色の花をつけるようになった。
今川さんがイチョウ桜を知ったのは、2005年4月。読売新聞埼玉版で「世にも珍し
“イチョウ桜” 無人の寺でひっそり満開」の記事を読み、「貴重な地域資源。この謎を
調べることで地域おこしにつながらないか」と思い立った。早速、近所の人たちに話を聞くと、
「誰かが苗木を投げたらイチョウの洞(うろ)にはまって成長した」「どこからか種が飛んで
きたらしい」など諸説あったが、どれも定かでなく、はっきりしたことは分からなかった。
しかし、根気強く檀家(だんか)を回って取材を重ね、ついに桜の苗木を「植えた」当事者に
出会った。詳しく尋ねると、40〜50年前の彼岸、3月16日に檀家の役員が交代するにあたり、
「最後だから記念に」と総代の荒井忠男さん(故人)が発案し、大イチョウの洞に土を入れ、
桜の苗木を挿したことが分かった。幹にハシゴをかけ、役員7人のほか5人ほどが手伝って、
バケツで100杯近くも土を入れたという。
植えた年は、記録もないため特定するのに苦労した。昨年4月、医光寺近くに住む
荒井さんの孫が、「寺に六地蔵を寄進した日、役員の作業を見ていた」という親類の話を聞き、
連絡を受けた今川さんが地蔵の台座に彫られた日付を確かめ、1965年と突き止めた。
こうした縁もあって、荒井さんの孫が本の装丁などを手伝うことになり、本には忠男さんに
関する手記のほか、加納地区を通る圏央道の建設予定地の風景写真なども収めた。
市内にある古代の遺跡や中世の城跡なども盛り込み、資料的価値も持たせた。
今川さんは「桶川には誇れる宝物がたくさんある。皆で守り、郷土の歴史に目を向けて
もらえれば」と話している。
読売新聞:
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/news/20090616-OYT8T01312.htm 画像:「ふしぎな桜」を自費出版する今川さん(右)と、装丁などを手伝った荒井さん
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20090616-281909-1-L.jpg 桜の花を咲かせた大イチョウの木
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20090616-281936-1-L.jpg