福島市のクラシックカメラ愛好家、篠原さん(73)のコレクションが、このほど998台に達した。
1千台の大台は目の前だ。大好きだった酒をやめ、ローンを限度額ギリギリまで使い、26年間買い集めた。
その総額、なんと6千万円以上という。
●きっかけは……
壮大な道楽の始まりは、たまたま借りた国産の一眼レフカメラ「ゼンザブロニカS2」だった。
篠原さん47歳のとき、法事で親族40人の集合写真を撮るため、太幅フィルムが入るこのカメラを
中古カメラ屋で借りた。数日後、仕上がった写真を見て写りの良さにびっくり。4万1千円で購入した。
買ったはいいもののカメラの知識は皆無。入門書によると二眼レフ、スプリングカメラ、ボックスカメラなど
いろいろ種類があるらしい。もともと収集癖の持ち主。「種類ごとに1台ずつ集めよう」と考えた。
が、「止まらなくなっちゃったんだな」。
地元テレビ局に勤める篠原さんの月給は、会社員の平均より高かったが、カメラは1台数万から数十万円も
する。2人の娘は当時高校生。家族に迷惑をかけまいと、節約生活が始まった。
●飲みたいときは……
仕事帰りの「ちょっと1杯」をやめ、どうしても飲みたいときには営業先の接待を入れた。
そうして工面したお札を握りしめ、毎週末、東京のカメラ屋へ。お金はすべてカメラにつぎ込んだ。
順調なことばかりではなかった。篠原さん68歳、コレクションが855台に達した頃、築32年の自宅の
壁に老朽でひびが入った。住む家か、必死で集めた宝物か――。コレクターとして厳しい選択を迫られた
篠原さん。悩んだ末、大事なコレクションのうち161台を買った値段の2割程度で売り、修理費に
充てた。泣く泣くリフォームした家は地震にびくともしなくなったが「本当に残したかった。
あのカメラたち、今でも夢に出てくるんですよ」。
いよいよ1千台が近づいた。998台になったのは今月22日のこと。1年前から計画していた
京都・大阪への旅行を、新型の豚インフルエンザの国内感染で中止にして、横浜市のカメラ店で
旅費になるはずだった15万円をカメラ2台に替えた。
コレクションのうち最も高価なのは39年製の「セイキキヤノン」で125万円。
古いのは1880年製の「ルエーベル組み立て暗室」だ。
●大台達成は……
集めたカメラは孫に受け継がせたいのだが、高1の孫は今のところ興味がないらしい。娘には念のため、
売値の目安や、売り先を伝えてある。
妻は「家計には迷惑をかけなかったからいいけど、私は興味ありませんね」。
あと2台で大台達成だが、年内には難しそうだという。「買うのは本当に欲しいものと決めているし、
ローンも5台分残っているから」。とはいえ、「上手なカメラ買いは即断即決」が持論。
「『明日また考えよう』と思っても、翌日にはまずない。
中古市場は水物。みんな欲しがっているものは同じなんだね。欲しいものが出てきたら困っちゃうな」。
悩みは尽きない。
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コレクションのうち573台は、会津若松市日新町の「末廣クラシックカメラ博物館」(TELはソース参照)に
展示されている。入場料は大人300円、高校生以下100円。
ソースは
http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=07000000905270006 篠原さんが手にしているのは70年に発売され、二眼レフの最高峰と呼ばれたドイツ製の「ローライフレックス3・5F」
http://mytown.asahi.com/fukushima/k_img_render.php?k_id=07000000905270006&o_id=4771&type=kiji.jpg