「災いを追い出し、福を招く」とされる福岡県宮若市の縁起物「追い出し猫」。
地元のまちおこしグループが手掛けるキャラクター商品の売上高が2008年度、
この不況の中で過去最高を記録した。災いも不況も追い出したいと切望する
世相に加え、かわいらしい「ゆるキャラ」的な魅力も相まって、幅広い世代から
人気を集めている。
■「ゆるキャラ」ブームも後押し
追い出し猫は約400年前、寺にすみついて住職を襲った大ネズミを、数百匹の猫が
命懸けで追い払ったという地元の民話に由来する。同市の住民団体「宮若追い出し猫
振興会」(安永孝義会長)は1996年から、ほうきを持ったにらみ顔と笑顔が表裏一体と
なったキャラクター人形(陶器製)を販売してきた。
タオルやせんべいなど関連グッズも手掛け、2002年度に過去最高だった約720万円の
売り上げを記録。その後は伸び悩んだが、08年度に入って強まる一方の「不況風」を
追い風に人気が復活。売り上げは前年度比33%増の約790万円に上り、6年ぶりに
記録を更新した。
手軽に縁起を担げるところが人気のようで、おなかにある小判の表に「敗北」「落第」などの
追い出したい言葉、裏に「勝利」や「合格」などの招きたい言葉を書くこともできる。
さらに「ゆるキャラ」のような愛らしさは贈答用にも役立つ。「かわいいから5つの
『追い出し猫』を玄関や床の間などに飾っている」。北九州市八幡西区、会社役員
小水政博さん(60)は、個人事務所を開業した友人にもプレゼントし「こんな時期なので
不況に負けないで」と“御利益”を願う。
企業も注目し、サンリオ(東京)が昨年10月、携帯ストラップ「ご当地キティ宮若追い出し猫
バージョン」を発売したところ、わずか3カ月で4500本が売れた。
ジェイアール九州バス(福岡市)は4月、宮若市を通過する「直方線」の主要バス停の
デザインに追い出し猫を採用。観光客の利用増に赤字路線からの脱却をかける。
地元では飲食店がクッキーの発売を検討する動きも始まった。
振興会は将来の登録商標の出願も視野に入れているが、安部勉事務局長は
「便乗商品はまだ増えそう。知名度がアップし『猫の手も借りたい』忙しさになれば」と、
まずは相乗効果に期待している。 (筑豊総局・山路健造)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/local/fukuoka/20090521/200905210026_000.jpg 売り上げが伸びた追い出し猫。にらむ顔もかわいらしい
=2009/05/21付 西日本新聞夕刊=
ソース
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/97018