岩手・宮城内陸地震で被災した宮城県栗原市栗駒文字地区で、日本最古の染色技法・正藍染
(しょうあいぞめ)を受け継ぐ3代目の千葉まつ江さん(79)が8日、染料を作る「藍だて」を始めた。
昨年は震災で、染色をやり遂げられなかった。反物を洗う二迫川も濁流に変わり果てたが、澄んだ
流れに戻りつつある。千葉さんは伝統の濃紺を生み出せる喜びをかみしめている。
工房に入った千葉さんの目が職人のまなざしに変わる。藍の葉を丸めた藍玉30キロ、木灰、
26度の湯を古い木おけに入れた。藍の香りがほんのりと漂う。ふたをし、藍だての初日を終えた。
「この日を楽しみにしていた」。千葉さんから笑みがこぼれた。1週間後には、朝晩かき混ぜる
作業を始める。自然の温度で発酵させるため、染める時期は5月下旬から1カ月ほどに限られる。
千葉家では、震災で裏山が崩れ、家の前を流れる二迫川の濁りも引かなかった。「来年、藍染めが
できるように」と願い、避難生活に入った。
自宅に戻ったのは昨年9月。裏山崩壊の危険は収まっていないが、翌年に向け、準備を進めた。
千葉さんは「避難中、畑で藍の手入れをなかなかできなかった。川もきれいになったけれどまだまだ。
染める時期にはもっと澄んでいてほしい」と心配ものぞかせる。
初代の故あやのさん=国重要無形文化財(人間国宝)=、2代目よしのさん(99)=県無形文化財=
の教えを思い出し、励みにするという。「いい色が出ればいいなあと思う」と晴れ晴れとした表情で語った。
▽ソース:河北新報 (2009/05/09)
http://www.kahoku.co.jp/news/2009/05/20090509t15039.htm ▽画像
http://www.kahoku.co.jp/img/news/2009/20090509006jd.jpg