入院中の子どもたちを励ましたい−。出雲市大社町の花火師、多々納恒宏さん(46)が
「こどもの日」の五日夜、島根大医学部付属病院(同市塩冶町)から見物できる河川敷で、
自慢の花火を打ち上げる。費用はすべて賛同者の寄付で賄う。花火職人の心意気が五月の
夜空を彩り、病気と闘う子どもたちに感動と勇気を与える。
二年前の春、同病院近くの小料理屋で、当時の看護師長だった田浪幸子さん(61)から
入院中の子どもたちの様子を聞いた。「大型連休中も自宅に帰れず、でも、頑張っているのよ」。
その一言が花火職人の心に火を付け、「おれが(花火を)上げてやる」と意気込んだ。
一カ月後の「こどもの日」。約束通り多々納さんは自腹を切って夜空に大輪の花を咲かせ、
病院の窓越しやベッドサイドから見詰めていた子どもたちの間から歓声が上がった。
最初は「一回切りの花火大会」で済ませるはずだった。だが、小料理店を営む木次茂さん(55)が
「子どもたちの喜ぶ顔が浮かんできた」と感激。翌年の花火打ち上げに備え、募金箱を用意した。
善意の輪に支えられ、今季で三回目を迎える花火大会。今回は「五月五日」にあやかって
五十五発を用意。定番のボタン、キクなど花形はもちろん、ニコちゃんマークや星、ハート形
なども準備し、趣向を凝らす。
「今年も上がるかな」と、病棟で待ちわびる子どもたち。「病気に負けず、頑張っている子どもたちは
すごい。子どもたちの笑顔の花が咲き、少しでも元気になってくれたら」と話す多々納さん。”絆(きずな)”
という名の花火が、皐月(さつき)の夜を彩る。
▽ソース:山陰中央新報 (2009/05/05)
http://www.sanin-chuo.co.jp/news/modules/news/article.php?storyid=511964006 ▽画像
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