【古都奈良のたからもの】(1)金地螺鈿毛抜形太刀 猫がスズメを追う奇抜な鞘飾りが魅力
柄は銀鍍金(ぎんときん)、鞘には沃懸地螺鈿(いかけじらでん)
が施されている。毛抜き形の透かしを施した柄の彫金も素晴らしいが、
金粉をまき詰めた沃懸地の鞘に貝の真珠層を切った螺鈿が白く輝いて美しい。
さらに注目されるのが《竹林で猫がスズメを追う》という
鞘の奇抜な図柄である。猫は平安時代から愛玩されたが、
日本には、近世までデザインや絵画の主題になる例がない。
最近の研究で、中国宋代の絵画によく似た姿の猫が見いだされ、
その影響が指摘された。
しかし、この図様の魅力は、1匹の猫の移り変わる姿態を
極細の画面に見事にとらえたことにある。
竹は画面いっぱいに伸びて区切りはないが、時間は移り変わっている。
絵巻に見られる「異時同図」の技法であり、素材は中国的でも、
デザインとしては優れて日本的だと思う。
(以下ソース)
※元記事:
http://sankei.jp.msn.com/culture/arts/081101/art0811011938001-n1.htm 産経新聞 平成20年11月01日