猫にまつわるエッセーや詩、小説などを集め月1回発行している「ねこ新聞」が、
今月で100号を迎えた。「猫の自由奔放な魂を紙面に生かす」という編集方針の下、
これまでに作家や女優ら300人を超す著名人が寄稿。編集長が病に倒れ、
一時休刊した時期もあったが、猫を愛する人たちに支えられてきた。
◇94年創刊
「ねこ新聞」は94年7月に創刊。スタッフは編集長の原口緑郎さん(68)と
副編集長で妻の美智代さん(67)、愛猫のタルちゃん(4)とコウちゃん(2)。
原口さんはかつて、ベイルートに事務所を構え貿易やコンサルタント会社を経営。
30、40代のころは日本と中東を行き来する忙しい生活を送っていた。日常的に
戦争や内紛の悲惨な実態を目の当たりにする毎日。かかわっていたプロジェクトの失敗も
重なり、「人間同士のいざこざには疲れた。人をほっとさせる楽しい仕事がしたい」
と考えるようになったという。
そんな時、幼いころの記憶がよみがえった。神戸で開業医をしていた父は十数匹の
猫を飼っていた。「猫に囲まれて本を読んでいる時が一番幸福だった」
事業を整理し、54歳の時、「ねこ新聞」を始めた。やはり猫好きの美智代さんも協力。
創刊号は、表紙をボードレールの有名な詩「猫」で飾り、作家の松谷みよ子さんや
女優の水谷八重子さん、落語家の林家木久蔵さんらがエッセーや評伝を寄稿してくれた。
実用的なペット情報誌とはひと味違う紙面に愛読者は順調に増えていった。
1周年を目前にした95年5月、原口さんは脳出血で倒れた。9時間に及ぶ手術。
命はとりとめたが左半身に重い麻痺(まひ)が残り、今も車いす生活を送る。
ねこ新聞は11号で休刊になった。
「ねこ新聞をもう一度出したい」。必死でリハビリに取り組んだ。徐々に回復し、
6年後の01年2月に復刊を果たす。夫婦ともに60歳を超えていた。「障害のある
夫と2人で、やっていけるか不安もありました。でも、第二の人生を人の安らぎになる
仕事をしたいという一念で頑張れた」と美智代さん。
復刊時、「富国強猫」という新しいスローガンを掲げた。「ねこがのんびり平和に
暮らせる国こそ真に豊かな国」との思いからだ。タブロイド判8ページ。猫を主題にした
古今の文学作品や寄稿文に加え、絵画やイラスト、写真などを多数掲載するスタイルは
創刊以来変わっていない。本紙夕刊(毎日新聞)でも、その抜粋を月1回掲載している
(原則22日、東京本社版)。
記念号となる100号はエッセイストの村尾清一さんが巻頭文、映画監督の
山田洋次さんと作家のあさのあつこさんがエッセーを寄せた。
読者の投稿「ねこがくれた幸せな日々」も3ページにわたり掲載されている。
「経営的には厳しいが、生きている限り発行を続けたい」と原口さんは話している。
年間購読料は5280円(送料込み)。問い合わせは猫新聞社(TELなどソース参照)。
ソースは
http://mainichi.jp/life/housing/news/20080617ddm013100139000c.html 100号を迎えた「ねこ新聞」。左が創刊号
http://mainichi.jp/life/housing/news/images/20080617dd0phj000009000p_size5.jpg 月刊「ねこ新聞」
http://www.nekoshinbun.com/